特許第5750495号(P5750495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5750495締結構造、該締結構造を用いた基板処理装置及び該締結構造に用いられるワッシャ付被締結部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750495
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】締結構造、該締結構造を用いた基板処理装置及び該締結構造に用いられるワッシャ付被締結部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20150702BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   F16B5/02 F
   F16B43/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-254137(P2013-254137)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2014-142058(P2014-142058A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年9月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-281986(P2012-281986)
(32)【優先日】2012年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 靖之
(72)【発明者】
【氏名】日野 忠義
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−057653(JP,U)
【文献】 特開2002−303314(JP,A)
【文献】 特開2009−224432(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175118(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
F16B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトと、該ボルトに螺合可能な雌ねじ部が設けられた基材と、該ボルトを挿通可能な貫通孔が設けられた被締結部材とを備え、前記ボルトが前記貫通孔に挿通されて前記雌ねじ部と螺合することにより、前記被締結部材が前記基材に締結される締結構造であって、
前記被締結部材の前記基材との対向面及び前記基材の前記被締結部材との対向面のうち何れか一方に、内縁が円形状の座繰り部が形成され、
前記ボルトを挿通可能であり、なお且つ、前記座繰り部に強嵌合される、外縁が外接円の存在する多角形状である可撓性ワッシャを更に備え、
前記ワッシャは、前記被締結部材が前記基材に締結された状態において、厚み方向に圧縮された状態であることを特徴とする締結構造。
【請求項2】
前記ワッシャの外縁は、正奇数角形状であることを特徴とする請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
ボルトと、該ボルトに螺合可能な雌ねじ部が設けられた基材と、該ボルトを挿通可能な貫通孔が設けられた被締結部材とを備え、前記ボルトが前記貫通孔に挿通されて前記雌ねじ部と螺合することにより、前記被締結部材が前記基材に締結される締結構造であって、
前記被締結部材の前記基材との対向面及び前記基材の前記被締結部材との対向面のうち何れか一方に、内縁が内接円の存在する多角形状である座繰り部が形成され、
前記ボルトを挿通可能であり、なお且つ、前記座繰り部に強嵌合される、外縁が円形状の可撓性ワッシャを更に備え、
前記ワッシャは、前記被締結部材が前記基材に締結された状態において、厚み方向に圧縮された状態であることを特徴とする締結構造。
【請求項4】
前記座繰り部の内縁は、正奇数角形状であることを特徴とする請求項3に記載の締結構造。
【請求項5】
前記基材は、基板処理装置が具備するチャンバの壁材であり、
前記被締結部材は、前記チャンバの内側から前記壁材に締結されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の締結構造。
【請求項6】
請求項5に記載の締結構造を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか1項に記載の締結構造に用いられるワッシャ付被締結部材であって、
前記基材との対向面に前記座繰り部が形成された前記被締結部材と、
前記座繰り部に強嵌合された前記ワッシャとを備えることを特徴とするワッシャ付被締結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と被締結部材とを備え、該被締結部材が該基材に締結される締結構造に関する。また、本発明は、該締結構造を用いたプラズマ処理装置等の基板処理装置、及び該締結構造に用いられるワッシャ付被締結部材に関する。特に、本発明は、基材と被締結部材との間にワッシャを介在させることで基材と被締結部材とのシール性を高め、かつ、被締結部材を基材から取り外す際にワッシャが抜け落ち難く取扱いが容易になる締結構造、該締結構造を用いた基板処理装置及び該締結構造に用いられるワッシャ付被締結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボルトによって被締結部材が基材に締結される締結構造が知られている。具体的には、ボルトと、該ボルトに螺合可能な雌ねじ部が設けられた基材と、該ボルトを挿通可能な貫通孔が設けられた被締結部材とを備え、前記ボルトが前記貫通孔に挿通されて前記雌ねじ部と螺合することにより、前記被締結部材が前記基材に締結される締結構造が知られている。このような締結構造は、プラズマ処理装置等の基板処理装置においても用いられている。
【0003】
プラズマ処理装置として、例えば、プラズマ雰囲気下において、シリコン基板をエッチングするプラズマ処理装置が知られている。該プラズマ処理装置は、エッチングガスが供給されるチャンバと、チャンバに供給されたエッチングガスをプラズマ化するアンテナと、チャンバ内に配置されシリコン製の基板(ウエハ)が載置される基台とを備えている。アンテナ及び基台には、高周波電力を出力する電源装置が接続されている。電源装置からアンテナ及び基台に高周波電力が供給されると、チャンバに供給されたエッチングガスがプラズマ化されることで、ウエハがエッチングされる。なお、エッチングガスは、例えば、ハロゲン系ガスとされる。具体的には、フッ素系ガス、塩素系ガスとされる。
以上のような構成を有するプラズマ処理装置にも、前述のようにボルトによる締結構造が用いられており、例えば、チャンバの壁材を基材として、主としてチャンバの内側から該基材に所定の機能を奏する被締結部材が締結される。
【0004】
前記プラズマ処理装置では、チャンバに供給され、プラズマ化されたエッチングガスが化学変化することによって、フッ化物、塩化物等の異物が発生する。このため、クリーニングガスをチャンバ内に供給し、クリーニングガスで、発生した異物をエッチングすることにより、異物を除去している。しかしながら、エッチングガスやクリーニングガスによって、被締結部材等の表面に化学変化が発生する場合がある。具体的には、チャンバに供給されたエッチングガスやクリーニングガスによって、チャンバの壁材の内面や、壁材に締結された被締結部材の表面が腐食する場合がある。また、チャンバの壁材の内面や、壁材に締結された被締結部材の表面に堆積した異物が、クリーニングガスで除去しきれない場合もある。このため、被締結部材については、被締結部材をチャンバの壁材から取り外した後、クリーニングガスで除去しきれずに被締結部材に堆積した異物を除去したり、腐食の発生した被締結部材を交換する等の定期的なメンテナンスが行われている。しかし、チャンバの壁材については、容易に取り外すことができないため、定期的なメンテナンスが困難であることが問題となっていた。特に、チャンバの壁材に設けられた雌ねじ部の表面に、化学変化に起因した異物の堆積や腐食が発生することが問題となっていた。つまり、プラズマ処理装置内に生じた異物の堆積や腐食が、パーティクルや金属コンタミネーションとなって、ウエハを汚染することが問題となっていた。
【0005】
特許文献1には、ボルトと、被締結部材(第1の部材)と、基材(第2の部材)と、ボルトのボルト頭と被締結部材との間に挟み込まれるワッシャとを備える締結構造が提案されている。
【0006】
特許文献1に記載の締結構造によれば、ボルトのボルト頭と被締結部材との間にワッシャが設けられているため、水などの液体がボルトのボルト頭と被締結部材との間から被締結部材及び基材に設けられたねじ孔内に浸入することを防止できる。このため、特許文献1に記載の締結構造をプラズマ処理装置に適用すれば、エッチングガス(以下、プラズマ化したエッチングガスを含む)、異物等の物質がボルト頭と被締結部材との間から被締結部材及び基材に設けられたねじ孔内に浸入することを防止できると考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の締結構造は、ボルトと被締結部材とのシール性を高めることを目的としており、被締結部材と基材とのシール性を高める手段については開示されていない。このため、例えば、特許文献1に記載の締結構造をプラズマ処理装置に適用すると、被締結部材と基材との間に、エッチングガス、異物等の物質が浸入した場合には、基材に設けられたねじ孔に物質が浸入することを防止することができないと考えられる。また、ワッシャは、ボルトのボルト頭によって被締結部材に挟み込まれているに過ぎないため、被締結部材を基材から取り外すためにボルトを取り外す際にワッシャが抜け落ち易いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−106868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、基材と被締結部材とのシール性を高め、かつ、被締結部材を基材から取り外す際にワッシャが抜け落ち難く取扱いが容易になる締結構造、該締結構造を用いた基板処理装置及び該締結構造に用いられるワッシャ付被締結部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、被締結部材の基材との対向面及び基材の被締結部材との対向面のうち何れか一方に座繰り部を形成し、例えば、座繰り部の深さよりも大きな厚みを有するワッシャを座繰り部に嵌合させることで、被締結部材が基材に締結された状態において、ワッシャが厚み方向に圧縮された状態とすれば、基材と被締結部材とのシール性を高めることができることを見出した。
【0011】
具体的には、本発明者らは、基板処理装置の場合、基材(チャンバの壁材)に設けられた雌ねじ部の表面に化学変化(デポや腐食)が発生する原因は、雌ねじ部にボルトが螺合していたとしても、基材と被締結部材との間に入り込んだエッチングガス、異物等の物質が雌ねじ部に浸入するためであることを見出した。そして、基材と被締結部材との何れか一方に座繰り部を形成し、座繰り部に可撓性のワッシャを嵌合させることで基材と被締結部材との間に圧縮されたワッシャを介在させれば、基材と被締結部材とのシール性が高まり、雌ねじ部の表面の化学変化を抑制することができるという知見を得た。
【0012】
しかしながら、外縁が円形状である一般的なワッシャを内縁が円形状の座繰り部に嵌合させたのでは、被締結部材を基材から取り外す際に、ワッシャが座繰り部から抜け落ちるおそれがあり、取扱いが困難になるという問題が生じる。特に、基板処理装置においては、被締結部材を取り外す作業は、クリーンルーム内で行われるため、クリーン手袋を手に装着した状態で作業を行う必要がある。クリーン手袋を装着した状態では、基材に被締結部材を締結させているボルトを取り外し難くなるため、被締結部材を基材から取り外す際に、ワッシャが座繰り部から抜け落ちるおそれが高くなり、更に取扱いが困難になる。このため、本発明者らは、内縁が円形状の座繰り部に嵌合させるワッシャの外縁の形状を変更することで、ワッシャが座繰り部から抜け落ち難くなる可能性があるという推察の下、さらに鋭意検討を行った。その結果、外縁が正多角形状である等、外接円の存在する多角形状のワッシャを用いることを考えた。
ワッシャの外縁が円形状である場合、内縁が円形状の座繰り部にワッシャをしっかりと嵌合させるためには、ワッシャの外縁の直径を座繰り部の内縁の直径よりもわずかに大きくする必要がある。つまり、外縁が円形状のワッシャでは、ワッシャの外縁が変形し難いため、ワッシャの外縁の直径が大きくなりすぎると、ワッシャを座繰り部に嵌合させ難くなる。このため、ワッシャの外縁の直径が大きくなりすぎないようにする必要がある。
一方、ワッシャの外縁が正多角形状である等、外接円の存在する多角形状である場合、座繰り部にワッシャを嵌合させれば、ワッシャを平面視したときに、座繰り部の内縁とワッシャの外縁との間には、ワッシャの外縁の各頂点以外の部位に隙間が生じる。このため、多角形状のワッシャの外縁が前記隙間に向けて変形し易くなり、その結果、大きなワッシャを座繰り部に嵌合させ易い。つまり、座繰り部に嵌合させることができるワッシャの外縁の直径(外縁が多角形状のワッシャの場合は、外縁の外接円の直径)の最大値は、ワッシャの外縁が円形状である場合よりもワッシャの外縁が多角形状である場合の方が大きい。よって、同じ座繰り部に嵌合させる場合、外縁が多角形状のワッシャは、外縁が円形状のワッシャよりも、大きな外接円の直径となるように設計可能である。本発明者らは、用いる多角形状のワッシャの外縁の外接円の直径が大きければ大きいほど、座繰り部にワッシャが嵌合された際にワッシャの外縁から座繰り部の内縁に加わる付勢力が大きくなるため、座繰り部にワッシャが強嵌合され易くなる、つまり、ワッシャが座繰り部から抜け落ち難くなるという知見を得た。
【0013】
本発明は、上記の本発明者らの知見に基づき完成されたものである。すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、第1の手段として、ボルトと、該ボルトに螺合可能な雌ねじ部が設けられた基材と、該ボルトを挿通可能な貫通孔が設けられた被締結部材とを備え、前記ボルトが前記貫通孔に挿通されて前記雌ねじ部と螺合することにより、前記被締結部材が前記基材に締結される締結構造であって、前記被締結部材の前記基材との対向面及び前記基材の前記被締結部材との対向面のうち何れか一方に、内縁が円形状の座繰り部が形成され、前記ボルトを挿通可能であり、なお且つ、前記座繰り部に強嵌合される、外縁が外接円の存在する多角形状である可撓性ワッシャを更に備え、前記ワッシャは、前記被締結部材が前記基材に締結された状態において、厚み方向に圧縮された状態であることを特徴とする締結構造を提供する。
【0014】
本発明に係る締結構造によれば、ボルトが被締結部材に設けられた貫通孔に挿通されて基材に設けられた雌ねじ部と螺合するため、被締結部材が基材に締結される。ここで、締結後の被締結部材とボルトとの密着部分の面積は、一般的には、基材と被締結部材との密着部分の面積よりも小さいと考えられる。従って、締結後の被締結部材とボルトとの密着部分には、ボルトによる集中的な荷重がかかり、高い応力が生じ易いため、ボルトと被締結部材との間がシールされる。このため、物質(プラズマ、固体、気体、液体等)がボルトと被締結部材との間から雌ねじ部に浸入することを抑制可能である。そして、本発明に係る締結構造によれば、被締結部材の基材との対向面及び基材の被締結部材との対向面のうち何れか一方に座繰り部が形成される。この座繰り部の内縁は円形状であるため、外縁が外接円の存在する多角形状であるワッシャが座繰り部に嵌合された際、ワッシャを平面視したときにワッシャの外縁を構成する各頂点が、座繰り部の内縁に当接する。また、内縁が円形状の座繰り部に強嵌合される可撓性のワッシャが、ボルトを挿通可能であり、被締結部材が基材に締結された状態において、厚み方向に圧縮された状態であるため、締結後の基材と被締結部材との間にワッシャが密着した状態で介在することになる。締結後の基材と被締結部材との間にワッシャが密着した状態で介在する態様としては、ワッシャが厚み方向に圧縮されて被締結部材と基材とが接する態様(例えば、圧縮されたワッシャの厚みが座繰り部の深さと略同一になる態様)、又は、ワッシャが厚み方向に圧縮されるが被締結部材と基材とが接していない態様(例えば、圧縮されたワッシャの厚みが座繰り部の深さよりも大きい態様)を例示できる。締結後の基材と被締結部材との間にワッシャが密着した状態で介在することにより、基材とワッシャとの密着部分と、被締結部材とワッシャとの密着部分との双方で、基材と被締結部材との間がシールされるため、基材と被締結部材とのシール性を高めることができる。その結果、基材と被締結部材との隙間に物質(プラズマ、固体、気体、液体等)が入り込んだとしても、物質が基材に設けられた雌ねじ部に浸入することを抑制可能である。
【0015】
ここで、本発明において、可撓性を有するワッシャが座繰り部に強嵌合されるとは、座繰り部を下向きにしたとしてもワッシャが落下しないようにワッシャが座繰り部に嵌合されることを意味する。座繰り部を下向きにしたとしてもワッシャが落下しないようにワッシャが座繰り部に嵌合される態様としては、座繰り部の円形状の内縁の直径よりも、座繰り部に嵌合される前のワッシャの外縁の外接円の直径の方が大きく、ワッシャが座繰り部に嵌合されたときにワッシャの変形を伴う態様、又は、ワッシャが座繰り部に嵌合されたときにワッシャの変形を伴わないものの、ワッシャの外縁が座繰り部の内縁に当接し(すなわち、座繰り部の円形状の内縁の直径と、座繰り部に嵌合される前のワッシャの外縁の外接円の直径とがほぼ等しい)、ワッシャの外縁と座繰り部の内縁との間の摩擦力によりワッシャが保持される態様を例示できる。図3は、外縁が正5角形状のワッシャ4Aが内縁が円形状の座繰り部32に嵌合される前後の状態の一例を示す説明図である。図3(a)はワッシャ4Aが座繰り部32に嵌合される前の状態を示し、図3(b)はワッシャ4Aが座繰り部32に強嵌合された状態を示している。なお、図3は、ワッシャが座繰り部に嵌合されたときにワッシャの変形を伴う状態の理解を容易にするため、変形の程度を誇張して示している。
【0016】
前述の通り、プラズマ処理装置では、エッチングガスにより異物の堆積(デポ)や腐食が被締結部材に発生するため、1〜2ヶ月毎に、被締結部材を基材(チャンバの壁材)から取り外して、被締結部材若しくはそれに付随する部材に付着した異物を除去する又は腐食した被締結部材若しくはそれに付随する部材を新しい被締結部材に交換する等のメンテナンスを行う必要がある。特に、座繰り部が被締結部材に形成される構成の場合、被締結部材を新しい被締結部材に交換する一方、交換前の被締結部材に用いていたワッシャを転用しようとすると、ワッシャを交換前の被締結部材に形成された座繰り部から取り外し、新しい被締結部材に形成された座繰り部に取り付けることになる。
上記のようにワッシャの座繰り部からの取り外し・取り付けを繰り返すことで、ワッシャの外縁が摩耗したり、あるいは、座繰り部への長時間の取り付けにより、ワッシャの外縁にクリープ変形が生じる可能性がある。しかしながら、本発明における外縁が外接円の存在する多角形状であるワッシャは、前述のように外接円の直径を大きく設計できるため、外縁が円形状のワッシャよりも座繰り部に強嵌合される状態を維持し易い。つまり、被締結部材を基材から取り外してメンテナンスを行う際に、ワッシャが座繰り部から抜け落ち難い状態を維持し易く、取扱いが容易になる。
【0017】
なお、外縁が外接円の存在する多角形状のワッシャ、例えば正多角形状のワッシャでは、外縁の外接円の直径が同じである場合、頂点の数が増えれば増えるほど、基材及び被締結部材に密着するワッシャの上面及び下面の面積が大きくなる。基材及び被締結部材に密着するワッシャの上面及び下面の面積が大きくなれば大きくなるほど、基材と被締結部材とのシール性が高まる。つまり、基材と被締結部材とのシール性を高めるためには、ワッシャの外縁の頂点の数を増やすことが好ましい。この点で、例えば、外縁が正多角形状のワッシャの場合、ワッシャの外縁が正5角形状以上の正多角形状であることが好ましい。
しかしながら、ワッシャの頂点の数が過度に増えれば、ワッシャの外縁が円形状に近づくため、前述の通り、ワッシャを座繰り部に嵌合させ難くなる。つまり、過度に頂点の数を増やすことは、嵌合させ易さの観点から望ましくない。この点で、例えば、外縁が正多角形状のワッシャの場合、ワッシャの外縁が正15角形状以下の正多角形状であることが好ましい。
すなわち、ワッシャの外縁が正n角形状(nは5以上であり、15以下である整数)であることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の手段において、前記ワッシャの外縁は、正奇数角形状であることが好ましい。
【0019】
以下に述べるように、ワッシャの外縁が正奇数角形状の場合と正偶数角形状の場合とでは、ワッシャが円形状の座繰り部に嵌合されるとき、嵌合させ易さに差が生じる。図4は、外縁が正5角形状のワッシャ4Aと正6角形状のワッシャ4Bとをそれぞれ内縁が円形状の座繰り部32に嵌合させる方法を説明する説明図である。図4(a)、(b)に示すように、ワッシャ4を座繰り部32に嵌合させようとするときは、通常、ワッシャ4を傾けた状態で、ワッシャ4を平面視したときにワッシャ4の外縁を構成する2つの頂点(例えば、図4(a)に示す外縁が正5角形状のワッシャ4Aの頂点A及びB、図4(b)に示す外縁が正6角形状のワッシャ4Bの頂点D及びE)を最初に座繰り部32の内縁に当接させることになる。ワッシャ4の外縁を構成する1つの頂点のみが座繰り部32の内縁に当接している状態では、ワッシャ4が横揺れ可能な不安定な状態になるからである。
【0020】
次に、上記の当接箇所を支点としてワッシャ4を座繰り部32に向けて回動することで、ワッシャ4を座繰り部32に嵌合させていく。この際、外縁が正5角形状のワッシャ4Aでは嵌合過程の最後に座繰り部32の内縁に当接する頂点は1つのみ(図4(a)に示す頂点Cのみ)であるのに対して、外縁が正6角形状のワッシャ4Bでは最後に2つの頂点(図4(b)に示す頂点F及びG)が同時に座繰り部32の内縁に当接することになる。つまり、外縁が正5角形状のワッシャ4Aの方が、外縁が正6角形状のワッシャ4Bよりも、最後に座繰り部32の内縁に当接する頂点の数が少ないので、ワッシャ4の変形を伴う箇所が少なくなる。このため、外縁が正5角形状のワッシャ4Aを座繰り部32に嵌合させるために必要な力、すなわちワッシャ4の変形に要する力が小さくて済み、嵌合させ易くなる。
【0021】
ワッシャ4の外縁が正5角形状以外の正奇数角形状の場合も、嵌合過程の最後に座繰り部32の内縁に当接する頂点は1つのみであるため、2つの頂点が同時に当接する正偶数角形状の場合よりも嵌合させ易くなる。このため、嵌合させ易さの観点より、前述のように、ワッシャ4の外縁は、正奇数角形状であることが好ましい。
なお、ワッシャ4の外縁が正偶数角形状の場合であっても、最初に1つの頂点のみを座繰り部32の内縁に当接させ、この当接箇所を支点としてワッシャ4を回動して座繰り部32に嵌合させれば、最後に座繰り部32の内縁に当接する頂点は1つのみとなり、ワッシャ4Aを座繰り部32に嵌合させるために必要な力は少なくて済む。しかしながら、前述の通り、ワッシャ4が不安定な状態での作業になるため、好ましい嵌合方法ではない。
以上のように、上記好ましい構成によれば、ワッシャの外縁が正奇数角形状であるため、正偶数角形状である場合に比べて、ワッシャを座繰り部に嵌合させ易いという利点が得られる。
【0022】
前記課題を解決するためには、前述した第1の手段のように、内縁が円形状の座繰り部と外縁が外接円の存在する多角形状(例えば、正多角形状)の可撓性ワッシャとの組み合わせが考えられる一方、内縁が内接円の存在する多角形状(例えば、正多角形状)の座繰り部と外縁が円形状の可撓性ワッシャとの組み合わせも考えられる。内縁が内接円の存在する多角形状の座繰り部に外縁が円形状のワッシャを嵌合させる場合も、ワッシャを平面視したときに、座繰り部の内縁とワッシャの外縁との間には、座繰り部の内縁の各頂点の近傍部位に隙間が生じる。このため、前記隙間に向けてワッシャの外縁が変形し易くなり、その結果、大きなワッシャを座繰り部に嵌合させ易い。つまり、座繰り部に嵌合させることができるワッシャの外縁の直径の最大値は、座繰り部の内縁が円形状である場合よりも座繰り部の内縁が多角形状である場合の方が大きい。内縁が多角形状の座繰り部に嵌合させるワッシャの外縁の直径が大きければ大きいほど、座繰り部にワッシャが嵌合された際にワッシャの外縁から座繰り部の内縁に加わる付勢力が大きくなるため、座繰り部にワッシャが強嵌合され易くなる、つまり、ワッシャが座繰り部から抜け落ち難くなる。
【0023】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、第2の手段として、ボルトと、該ボルトに螺合可能な雌ねじ部が設けられた基材と、該ボルトを挿通可能な貫通孔が設けられた被締結部材とを備え、前記ボルトが前記貫通孔に挿通されて前記雌ねじ部と螺合することにより、前記被締結部材が前記基材に締結される締結構造であって、前記被締結部材の前記基材との対向面及び前記基材の前記被締結部材との対向面のうち何れか一方に、内縁が内接円の存在する多角形状である座繰り部が形成され、前記ボルトを挿通可能であり、なお且つ、前記座繰り部に強嵌合される、外縁が円形状の可撓性ワッシャを更に備え、前記ワッシャは、前記被締結部材が前記基材に締結された状態において、厚み方向に圧縮された状態であることを特徴とする締結構造としても提供される。
【0024】
本発明の第2の手段についても、前述した本発明の第1の手段と同様の作用効果を奏する。
前述のように、可撓性を有するワッシャが座繰り部に強嵌合されるとは、座繰り部を下向きにしたとしてもワッシャが落下しないようにワッシャが座繰り部に嵌合されることを意味する。第2の手段において、座繰り部を下向きにしたとしてもワッシャが落下しないようにワッシャが座繰り部に嵌合される態様としては、座繰り部の内縁の内接円の直径よりも、座繰り部に嵌合される前のワッシャの円形状の外縁の直径の方が大きく、ワッシャが座繰り部に嵌合されたときにワッシャの変形を伴う態様、又は、ワッシャが座繰り部に嵌合されたときにワッシャの変形を伴わないものの、座繰り部の内縁にワッシャの外縁が当接し(すなわち、座繰り部の内縁の内接円の直径と、座繰り部に嵌合される前のワッシャの円形状の外縁の直径とがほぼ等しい)、ワッシャの外縁と座繰り部の内縁との間の摩擦力によりワッシャが保持される態様を例示できる。図7は、外縁が円形状のワッシャ4Cが内縁が正5角形状の座繰り部32Cに嵌合される前後の状態の一例を示す説明図である。図7(a)はワッシャ4Cが座繰り部32Cに嵌合される前の状態を示し、図7(b)はワッシャ4Cが座繰り部32Cに強嵌合された状態を示している。なお、図7は、ワッシャが座繰り部に嵌合されたときにワッシャの変形を伴う状態の理解を容易にするため、変形の程度を誇張して示している。
【0025】
本発明の第2の手段において、前記座繰り部の内縁は、正奇数角形状であることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、前述した第1の手段においてワッシャの外縁を正奇数角形状にする場合と同様に、座繰り部の内縁が正奇数角形状であるため、正偶数角形状である場合に比べて、ワッシャを座繰り部に嵌合させ易いという利点が得られる。
【0026】
本発明の第1の手段及び第2の手段に係る締結構造をプラズマ処理装置等の基板処理装置に適用する場合、前記基材は、例えば、基板処理装置が具備するチャンバの壁材とされ、前記被締結部材は、前記チャンバの内側から前記壁材に締結される。
【0027】
斯かる構成によれば、基材(チャンバの壁材)と被締結部材とのシール性が高まるため、デポの原因となる異物やチャンバ内に供給されるエッチングガスが、チャンバの壁材と被締結部材との隙間から、チャンバの壁材に設けられた雌ねじ部に浸入することが抑制される。このため、雌ねじ部の化学変化(デポや腐食)の発生を抑制することができる。
【0028】
また、前述のように、ワッシャの座繰り部への取り外し・取り付けを繰り返すことで、ワッシャの外縁が摩耗したり、あるいは、座繰り部への長時間の取り付けにより、ワッシャの外縁にクリープ変形が生じたとしても、ワッシャが座繰り部に強嵌合される状態を維持し易い。つまり、被締結部材をチャンバの壁材から取り外してメンテナンスを行う際に、ワッシャが座繰り部から外れて、チャンバ内に落下することを防止可能である。
【0029】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記締結構造を備えることを特徴とする基板処理装置としても提供される。
【0030】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記締結構造に用いられるワッシャ付被締結部材であって、前記基材との対向面に前記座繰り部が形成された前記被締結部材と、前記座繰り部に強嵌合された前記ワッシャとを備えることを特徴とするワッシャ付被締結部材としても提供される。
【発明の効果】
【0031】
以上に説明したように、本発明によれば、基材と被締結部材とのシール性を高め、かつ、被締結部材を基材から取り外す際にワッシャが抜け落ち難く取扱いが容易になる締結構造、該締結構造を用いた基板処理装置及び該締結構造に用いられるワッシャ付被締結部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る締結構造を備えるプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、図1に示す締結構造の具体的構成を示す断面図である。
図3図3は、外縁が正5角形状のワッシャが内縁が円形状の座繰り部に嵌合される前後の状態の一例を示す説明図である。
図4図4は、外縁が正5角形状のワッシャと正6角形状のワッシャとをそれぞれ内縁が円形状の座繰り部に嵌合させる方法を説明する説明図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係る締結構造を示す断面図である。
図6図6は、本発明の第3の実施形態に係る締結構造を示す断面図である。
図7図7は、外縁が円形状のワッシャが内縁が正5角形状の座繰り部に嵌合される前後の状態の一例を示す説明図である。
図8図8は、外縁が正9角形状のワッシャを示す6面図及び断面図である。
図9図9は、外縁が正5角形状のワッシャを示す平面図である。
図10図10は、外縁が正15角形状のワッシャを示す平面図である。
図11図11は、本発明に係る締結構造に用いられる他のワッシャの例を示す平面図である。
図12図12は、本発明に係る締結構造に用いられる他のワッシャの例を示す平面図である。
図13図13は、本発明に係る締結構造に用いられる他のワッシャの例を示す平面図である。
図14図12は、本発明に係る締結構造に用いられる他のワッシャ及び座繰り部の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1の実施形態>
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の第1の実施形態に係る締結構造について、基板処理装置の一種であるプラズマ処理装置に用いられる場合を例に挙げて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る締結構造を備えるプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。図2は、図1に示す締結構造の具体的構成を示す断面図であり、図2(a)は締結構造を構成部品ごとに分解した分解断面図を表し、図2(b)は締結された状態の締結構造の断面図を表し、図2(c)はワッシャ4の平面図を表す。具体的には、図2は、図1の領域Wの拡大図であるが、図1とは天地を逆に示している。
【0034】
図1に示すように、本実施形態のプラズマ処理装置100は、締結構造101を備える。また、プラズマ処理装置100は、チャンバの壁材2を備えるチャンバ20と、コイル状に形成され、チャンバ20の上部に巻きかけられるように配置されるアンテナ5と、アンテナ5に接続される電源装置6と、チャンバ20内に配置される基台7と、ガス供給管8と、排気管9とを更に備える。
【0035】
電源装置6から高周波電力がアンテナ5に供給されると、アンテナ5の電磁誘導により、チャンバ20内に磁界が形成される。形成された磁界によって誘起される電界により、ガス供給管8からチャンバ20内に供給されたエッチングガスがプラズマ化され、このプラズマによって、基台7に載置される基板(ウエハ)Uがエッチングされる。排気管9は、チャンバ20内からエッチングガスを排気する。なお、エッチングガスは、例えば、ハロゲン系ガスとされる。具体的には、フッ素系ガス、塩素系ガスとされる。
【0036】
プラズマ処理装置100が備える締結構造101は、具体的には、図2(a)、(b)に示すように、ボルト1と、基材としてのチャンバの壁材2と、被締結部材3と、ワッシャ4とを備える。
【0037】
ボルト1は、例えば、ステンレス鋼(SUS)から形成され、表面には耐腐食用のコーティングが施されている。
【0038】
チャンバの壁材2は、ボルト1に螺合可能な雌ねじ部21を備えている。雌ねじ部21としては、例えば、インサートナットを例示することができるが、チャンバの壁材2に直接雌ねじが加工されたものであってもよい。なお、インサートナットは、例えば、ステンレス鋼(SUS)から形成されており、具体的には、エンザート(商品名)や、ヘリサート(商品名)を用いることができる。
雌ねじ部21の表面に耐腐食用のコーティングを施したとしても、ボルト1の取り付け、取り外しを繰り返すことによりコーティングが剥がれてしまう場合がある。雌ねじ部21がチャンバの壁材2に直接雌ねじが加工されたものである場合には、チャンバの壁材2を容易に取り外すことができないため、雌ねじ部21に再びコーティングを施すことは困難である。また、仮にチャンバの壁材2を取り外すことができたとしても、一般的にチャンバの壁材2は大型であるため、チャンバの壁材2が備える雌ねじ部21に再びコーティングを施すことは用意ではない。なお、チャンバの壁材2がアルミから形成される場合には、チャンバの壁材2に直接雌ねじを加工すると、何度もボルト1による締結を繰り返すことで雌ねじ部2が潰れるおそれがある。このため、チャンバの壁材2がアルミから形成される場合には、壁材2に直接雌ねじが加工された雌ねじ部21を採用することは困難である。
また、雌ねじ部21がインサートナットである場合には、前述のようにチャンバの壁材2を容易に取り外すことができないことに加えて、雌ねじ部21のみを容易に取り外すこともできないため、、やはり雌ねじ部21に再びコーティングを施すことは困難である。
従って、通常、雌ねじ部21の表面にコーティングは施されない。なお、雌ねじ部21がステンレス鋼(SUS)から形成されるインサートナットである場合には、完全に腐食を防止することができないものの、安価に比較的耐食性を有する雌ねじ部21を提供可能である。
【0039】
本実施形態の被締結部材3は、ガス孔33を備えている。具体的には、被締結部材3は、複数のガス孔33を備えており、ガス供給管8から供給されたエッチングガスを、被締結部材3に設けられたガス孔33を介して、チャンバ20内に均一に分散して供給することができる。
本実施形態の被締結部材3は、チャンバ20の頂部に取り付けられたガス供給管8から供給されたエッチングガスを分散させる機能を有するため、チャンバの壁材2のうち、チャンバ20の頂部に位置する部位(上壁)に取り付けられている。しかしながら、本発明の被締結部材としてはこれに限られるものではなく、チャンバの壁材2に設けられる雌ねじ部21の化学変化(デポや腐食)の発生を抑制する目的又はその他の種々の目的を有する被締結部材をその目的に応じたチャンバの壁材2の部位(例えば、チャンバ20の側壁や下壁など)に取り付けることが可能である。
【0040】
また、被締結部材3は、ボルト1を挿通可能な貫通孔31を備えている。また、本実施形態の締結構造101では、被締結部材3のチャンバの壁材2との対向面に内縁が円形状の座繰り部32が形成されている。
【0041】
ワッシャ4は、可撓性を有し、例えば、シリコーン、テフロン(登録商標)、ポリイミド、ピーク(PEEK)等の樹脂から形成される。また、本実施形態のワッシャ4は、ワッシャ4を平面視したときにワッシャ4の中央にボルト1を挿通可能な穴を有し、少なくとも被締結部材3がチャンバの壁材2に締結される前において座繰り部32の深さdよりも大きな厚みtを有し、なお且つ、座繰り部32に強嵌合される、外縁が正多角形状のワッシャである。
本実施形態では、好ましい態様として、ワッシャ4の外縁が正奇数角形状とされる。ワッシャ4の外縁が正奇数角形状であれば、前述したように、外縁が正偶数角形状のワッシャの場合に比べて、ワッシャ4を座繰り部32に嵌合させ易い。具体的には、図8図10に示すように、外縁が正5角形状、正9角形状、正15角形状のワッシャを例示することができる。
図8(a)は、外縁が正9角形状のワッシャ4Dの正面図を示す。図8(b)は、ワッシャ4Dの背面図を示す。図8(c)は、ワッシャ4Dの右側面図を示す。図8(d)は、ワッシャ4Dの平面図を示す。図8(e)は、ワッシャ4DのA−A断面図を示す。なお、ワッシャ4Dの左側面図は右側面図と対称に表れ、底面図は平面図と対称に表れるため、図示を省略する。図9は、外縁が正5角形状のワッシャ4Aの平面図を示す。ワッシャ4Aの底面図は平面図と対称に表れる。また、ワッシャ4Aは、ワッシャ4Dと同一の厚みを有し、ボルトを挿通可能な穴の直径はワッシャ4Dと同一である。図10は、外縁が正15角形状のワッシャ4Eの平面図を示す。ワッシャ4Eの底面図は平面図と対称に表れる。また、ワッシャ4Eは、ワッシャ4Dと同一の厚みを有し、ボルトを挿通可能な穴の直径はワッシャ4Dと同一である。
なお、図2(c)に示しているワッシャ4は、図8に示すワッシャ4Dと同様に、外縁が正9角形状のワッシャの場合を例示したものである。
【0042】
本実施形態の締結構造101では、ボルト1が被締結部材3に設けられた貫通孔31に挿通されてチャンバの壁材2に設けられた雌ねじ部21と螺合するため、被締結部材3がチャンバの壁材2に締結される。ここで、締結後の被締結部材3とボルト1との密着部分の面積は、一般的には、チャンバの壁材2と被締結部材3との密着部分の面積よりも小さいと考えられる。従って、締結後の被締結部材3とボルト1との密着部分には、ボルト1による集中的な荷重がかかり、高い応力が生じ易いため、ボルト1と被締結部材3との間がシールされる。このため、エッチングガス(以下、プラズマ化したエッチングガスを含む)や異物等の物質が、ボルト1と被締結部材3との間から雌ねじ部21に浸入することを抑制可能である。
【0043】
座繰り部32の内縁は円形状であるため、外縁が正多角形状のワッシャ4が座繰り部32に嵌合された際、ワッシャ4を平面視したときにワッシャ4の外縁を構成する各頂点が座繰り部32の内縁に当接する。また、内縁が円形状の座繰り部32に強嵌合される可撓性のワッシャ4が、ボルト1を挿通可能であり、少なくとも被締結部材3がチャンバの内壁材2に締結される前において座繰り部32の深さdよりも大きな厚みtを有するため、締結後のチャンバの壁材2と被締結部材3(被締結部材3の座繰り部32)との間にワッシャ4が密着した状態で介在することになる。締結後のチャンバの壁材2と被締結部材3との間にワッシャ4が密着した状態で介在することにより、チャンバの壁材2とワッシャ4との密着部分と、被締結部材3とワッシャ4との密着部分との双方で、チャンバの壁材2と被締結部材3との間がシールされるため、チャンバの壁材2と被締結部材3とのシール性を高めることができる。その結果、チャンバの壁材2と被締結部材3との隙間に、エッチングガスや異物等の物質が入り込んだとしても、物質がチャンバの壁材2に設けられた雌ねじ部21に浸入することを抑制可能である。このため、雌ねじ部21の化学変化(デポや腐食)の発生を抑制することができる。つまり、雌ねじ部21の化学変化(デポや腐食)に伴って発生するパーティクルや金属コンタミネーションによりウエハUが汚染されることを抑制可能である。
【0044】
本実施形態では、座繰り部32の深さdは締結前のワッシャ4の厚みtの70%の寸法とされている。具体的には、ワッシャ4の厚みtが1mmであり、座繰り部32の深さdは0.7mmとされている。チャンバの壁材2と被締結部材3とのシール性を高めるためには、チャンバの壁材2とワッシャ4との密着部分の表面粗さ、及び、被締結部材3の座繰り部32とワッシャ4との密着部分の表面粗さがそれぞれ小さいことが望まれる。しかしながら、たとえ座繰り部32の表面粗さを小さく加工できるとしても、チャンバの壁材2の表面粗さが小さいとは限らない。このため、本実施形態のワッシャ4の上面(被締結部材3の座繰り部32と密着する部分)及び下面(チャンバの壁材2と密着する部分)は、表面粗さが小さくされている。つまり、ワッシャ4が可撓性を有するため、締結後にはチャンバの壁材2の表面粗さと座繰り部32の表面粗さとに合わせてワッシャ4が変形することによって、チャンバの壁材2と被締結部材3との間がシールされ、チャンバの壁材2と被締結部材3とのシール性を高めることができる。
【0045】
本実施形態のプラズマ処理装置100では、エッチングガスにより、異物の堆積(デポ)や腐食が被締結部材3に発生する。このため、1〜2ヶ月毎に、被締結部材3については、被締結部材3をチャンバの壁材2から取り外した後、被締結部材3又はそれに付随する部材に堆積した異物の除去や、腐食の発生した被締結部材3又はそれに付随する部材の交換等の定期的なメンテナンスが行われる。
そして、被締結部材3を新しい被締結部材3に交換する一方、交換前の被締結部材3に用いていたワッシャ4を転用する場合には、ワッシャ4を交換前の被締結部材3に形成された座繰り部32から取り外し、新しい被締結部材3に形成された座繰り部32に取り付ける。
【0046】
上記のように、被締結部材3のメンテナンスを行う際にワッシャ4を転用する場合、ワッシャ4の座繰り部32からの取り外し・取り付けを繰り返すことで、ワッシャ4の外縁が摩耗したり、あるいは、座繰り部32への長時間の取り付けにより、ワッシャ4の外縁にクリープ変形が生じる可能性がある。しかしながら、上記の摩耗やクリープ変形が生じたとしても、外縁が正多角形状のワッシャ4は、外縁が円形状のワッシャよりも外接円の直径を大きく設計できるため、外縁が円形状のワッシャよりも座繰り部32に強嵌合される状態を維持し易い。つまり、被締結部材3をチャンバの壁材2から取り外してメンテナンスを行う際に、ワッシャ4が座繰り部32から抜け落ち難い状態を維持し易く、取扱いが容易になる。換言すれば、被締結部材3をチャンバの壁材2から取り外してメンテナンスを行う際に、ワッシャ4が座繰り部32から外れて、チャンバ20内に落下することを防止可能である。
【0047】
<第2の実施形態>
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の第2の実施形態に係る締結構造について、基板処理装置の一種であるプラズマ処理装置に用いられる場合を例に挙げて説明する。なお、本発明の第1の実施形態と同様の部分についての説明は省略し、主として第1の実施形態と異なる部分について説明する。図5は、図2に示した締結構造と同様に、本発明の第2の実施形態に係る締結構造を示す断面図であり、図5(a)は締結構造を構成部品ごとに分解した分解断面図を表し、図5(b)は締結された状態の締結構造の断面図を表し、図5(c)はワッシャ4の平面図を表す。図5(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る締結構造101Aは、ボルト1と、基材としてのチャンバの壁材2Aと、被締結部材3Aと、ワッシャ4とを備える。なお、図5(c)に示しているワッシャ4は、外縁が正9角形状のワッシャの場合を例示したものである。
【0048】
本実施形態の締結構造101Aでは、チャンバの壁材2Aは、ボルト1に螺合可能な雌ねじ部21Aと、座繰り部22Aとを備えている。具体的には、チャンバの壁材2Aの被締結部材3Aとの対向面に内縁が円形状の座繰り部22Aが形成されている。そして、被締結部材3Aは、ボルト1を挿通可能な貫通孔31Aを備えている。
【0049】
本実施形態のプラズマ処理装置100Aでは、被締結部材3Aをチャンバの壁材2Aから取り外してメンテナンスを行ったとしても、ワッシャ4がチャンバの壁材2Aに形成された座繰り部22Aに嵌合されているため、ワッシャ4を座繰り部22Aから取り外す必要はない。また、ワッシャ4が座繰り部22Aに強嵌合されており、被締結部材3Aをチャンバの壁材2Aから取り外してメンテナンスを行う際に、ワッシャ4が座繰り部22Aから抜け落ち難く、取扱いが容易になる。つまり、被締結部材3Aをチャンバの壁材2Aから取り外してメンテナンスを行う際に、ワッシャ4が座繰り部22Aから外れて、チャンバ20内に落下することを防止可能である。
【0050】
以上に説明したように、第1の実施形態及び第2の実施形態においては、締結構造に用いられるワッシャ4の外縁が正多角形状であることを特徴としている。そこで、外縁が正多角形状のワッシャを用いることによる効果について確認する試験を行った。具体的には、ワッシャを嵌合させる座繰り部の穴径を変化させたときに、樹脂製で外縁の外接円の直径が12mmである正9角形状のワッシャと、該ワッシャと同じ材質の樹脂製で外縁の直径が12mmである円形状のワッシャとを座繰り部に嵌合できるか否かについて確認する試験を行った。これらのワッシャは、いずれも5mmのねじ径を有するボルトを挿通可能である所謂M5用ワッシャである。なお、各寸法の公差は、いずれも±0.05mmである。
【0051】
より具体的には、種々の穴径の座繰り部を上部に設けた嵌合試験材に対し、外縁の外接円の直径が12mmである正9角形状のワッシャを手動で押し込んだ。このときに、容易に嵌合できたか、容易に嵌合できなかったが過度に押し込めば嵌合できたか、又は過度に押し込んでも嵌合できなかったかについて評価した。その後、ワッシャを座繰り部に嵌合できたものについては、ワッシャが嵌合された嵌合試験材の天地を逆にしたときに、ワッシャが座繰り部に嵌合されたままであるか、又は座繰り部から落下するかについて評価した。外縁が円形状のワッシャについても、同様に評価を行った。
【0052】
この試験結果を表1に示す。なお、表1において、「○」は容易に嵌合できたことを、「△」は容易に嵌合できなかったが過度に押し込めば嵌合できたことを、「×」は過度に押し込んでも嵌合できなかったことを意味する。また、「落下」は、ワッシャが嵌合された嵌合試験材の天地を逆にしたときに、ワッシャが座繰り部から落下したことを意味する。
【表1】
【0053】
表1に示すように、外縁が正9角形状のワッシャは座繰り部の穴径が11.8mmであっても嵌合させることができるが、外縁が円形状のワッシャは座繰り部の穴径が11.85mm以下になれば嵌合させることができなかった。つまり、正9角形状のワッシャの外縁の外接円の直径が円形状のワッシャの外縁の直径と同じ(設定値12mm)であれば、外縁が正9角形状のワッシャは、外縁が円形状のワッシャよりも、座繰り部に嵌合可能な座繰り部の穴径の範囲が広い(穴径を小さくしても嵌合することができる)ことがわかった。このことから、仮に座繰り部の穴径が一定であれば、外縁が正9角形状のワッシャは、外縁が円形状のワッシャよりも、座繰り部に嵌合することができるワッシャの外接円の直径の範囲が広くなる(外接円の直径を大きくしても嵌合することができる)といえる。以上の結果から、座繰り部の穴径が一定である場合に、ワッシャの外縁の外接円の直径が経時変化によって小さく変化したとしても、外縁が正9角形状のワッシャは、外縁が円形状のワッシャよりも、座繰り部に強嵌合される状態を維持し易いことが期待できる。つまり、外縁が正9角形状のワッシャは、外縁が円形状のワッシャよりも、座繰り部に嵌合可能なワッシャの外縁の外接円の直径の範囲が広くなるといえるため、嵌合させるワッシャの外縁の外接円の直径を大きく設計することで、ワッシャの外縁が摩耗により小さくなったとしても、あるいは、座繰り部への長時間の取り付けによりワッシャの外縁にクリープ変形が生じたとしても、座繰り部に強嵌合される状態を維持し易いことが期待できる。
表1に示すように、外縁が正9角形状のワッシャでは、座繰り部の穴径が12mmであっても、嵌合させた後に嵌合試験材の天地を逆にしてもワッシャが座繰り部から落下しなかった。これに対して、外縁が円形状のワッシャでは、座繰り部の穴径が12mm以上になれば、嵌合させた後に嵌合試験材の天地を逆にするとワッシャが座繰り部から落下した。この結果の違いが生じたのは、ワッシャの寸法の公差が原因であると考えられる。すなわち、例えば、座繰り部の実際の穴径が仮に設定値12mm通りであったとすれば、外縁が正9角形状のワッシャは、外縁の外接円の実際の直径が12mm以上(最大で12.05mm)であり、外縁が円形状のワッシャは、外縁の実際の直径が12mm未満(最小で11.95mm)であったことが原因であると考えられる。前述のように、外縁が正9角形状のワッシャは、外縁が円形状のワッシャよりも、座繰り部に嵌合可能なワッシャの外縁の外接円の直径を大きく設計できる。このため、寸法公差を考慮して、座繰り部の穴径の設定値よりも十分に大きめに設計することで、摩耗やクリープ変形が生じなくても座繰り部から落下するといった事態を確実に回避することが可能である。
【0054】
<第3の実施形態>
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の第3の実施形態に係る締結構造について、基板処理装置の一種であるプラズマ処理装置に用いられる場合を例に挙げて説明する。なお、これまでに述べた第1の実施形態や第2実施形態と同様の部分についての説明は省略し、主として第1の実施形態や第2の実施形態と異なる部分について説明する。図6は、図2及び図5と同様に、本発明の第3の実施形態に係る締結構造を示す断面図であり、図6(a)は締結構造を構成部品ごとに分解した分解断面図を表し、図6(b)は締結された状態の締結構造の断面図を表し、図6(c)は座繰り部32CをB方向から見た図を表す。図6(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る締結構造101Cは、ボルト1と、基材としてのチャンバの壁材2と、被締結部材3Cと、外縁が円形状のワッシャ4Cとを備える。
【0055】
本実施形態の締結構造101Cでは、被締結部材3Cのチャンバの壁材2との対向面に内縁が正多角形状の座繰り部32Cが形成されている。ただし、本発明の締結構造はこれに限られるものではなく、チャンバの壁材2の被締結部材3Cとの対向面に内縁が正多角形状の座繰り部を形成してもよい。なお、図6(c)に示している座繰り部32Cは、内縁が正9角形状の場合を例示したものである。
【0056】
本実施形態の締結構造101Cにおいても、内縁が正多角形状の座繰り部32Cに強嵌合される外縁が円形状のワッシャ4Cが、ボルト1を挿通可能であり、少なくとも被締結部材3Cがチャンバの壁材2に締結される前において座繰り部32Cの深さよりも大きな厚みを有するため、締結後のチャンバの壁材2と被締結部材3C(被締結部材3Cの座繰り部32C)との間にワッシャ4Cが密着した状態で介在することになる。締結後のチャンバの壁材2と被締結部材3Cとの間にワッシャ4が密着した状態で介在することにより、チャンバの壁材2とワッシャ4Cとの密着部分と、被締結部材3Cとワッシャ4Cとの密着部分と双方で、チャンバの壁材2と被締結部材3Cとの間がシールされる。本実施形態では、ワッシャ4Cの外縁が円形状であるため、外縁の外接円の直径がワッシャ4Cと同じである外縁が正多角形状のワッシャを用いるよりも、チャンバの壁材2及び被締結部材3Cに密着するワッシャ4Cの上面及び下面の面積が大きくなる。従って、チャンバの壁材2と被締結部材3Cとのシール性を更に高めることができる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第1〜第3の実施形態では、被締結部材3、3A、3Cをそれぞれチャンバの壁材2、2A、2にチャンバ20の内側から締結する締結構造101、101A、101Cを例に挙げて説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、被締結部材をチャンバ20の壁材に外側から締結する構成とすることも可能である。また、本発明の締結構造の適用先はプラズマ処理装置に限られず、被締結部材を基材に締結することが必要な他の装置(例えば、プラズマ化されないエッチングガスを使用する基板処理装置)などに用いることも可能である。
【0058】
また、第1及び第2の実施形態では、ワッシャの外縁が正多角形状である場合を、第3の実施形態では、座繰り部の内縁が正多角形状である場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限られるものではない。第1及び第2の実施形態において内縁が円形状の座繰り部に嵌合させるワッシャとしては、その外縁が正多角形状でなくとも、図11に示すように、外縁が外接円Cの存在する多角形状であるワッシャ4Fであれば良い。また、図12図13に示すように、外縁の一部(各頂点以外の部位)に、三角形(図12)や略円形(図13)のノッチNが設けられているワッシャ4G、4Hであっても良い。同様に、第3の実施形態において外縁が円形状のワッシャを嵌合させる座繰り部としては、その内縁が正多角形状でなくとも、内縁が内接円の存在する多角形状であるワッシャであれば良い。
【0059】
さらに、第1〜第3の実施形態では、ワッシャが、少なくとも被締結部材がチャンバの壁材に締結される前において座繰り部の深さよりも大きな厚みを有する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限られるものではない。本発明の締結構造に用いられるワッシャは、被締結部材が基材(例えば、チャンバの壁材)に締結された状態において、厚み方向に圧縮された状態でありさえすれば良い。第1〜第3の実施形態のように、被締結部材がチャンバの壁材に締結される前において座繰り部の深さよりも大きな厚みを有するワッシャの場合、座繰り部が形成された被締結部材又は基材(例えば、チャンバの壁材)に対向する基材又は被締結部材の面が平坦であれば、被締結部材が基材に締結された状態において、ワッシャは厚み方向に圧縮された状態となる。ただし、本発明は、これに限られるものではなく、例えば、図14(a)に示すように、座繰り部32が形成された被締結部材又は基材(図14(a)に示す例では被締結部材3)に対向する基材又は被締結部材(図14(a)に示す例では基材2)の面に凹部23が設けられている場合であっても、座繰り部32の深さと凹部23の深さとの合計値よりもワッシャ4の厚みが大きければ、被締結部材3が基材2に締結された状態において、ワッシャ4は厚み方向に圧縮された状態となる。また、図4(b)に示すように、座繰り部32が形成された被締結部材又は基材(図14(b)に示す例では被締結部材3)に対向する基材又は被締結部材(図14(b)に示す例では基材2)の面に凸部24が設けられている場合であっても、座繰り部32の深さと凸部24の高さとの差よりもワッシャ4の厚みが大きければ、被締結部材3が基材2に締結された状態において、ワッシャ4は厚み方向に圧縮された状態となる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・ボルト
2、2A・・・基材
3、3A、3C・・・被締結部材
4、4A、4B、4C、4D、4E、4F、4G、4H・・・ワッシャ
21、21A・・・雌ねじ部
22A・・・座繰り部
31、31A・・・貫通孔
32・・・座繰り部
100・・・プラズマ処理装置
101、101A、101C・・・締結構造
U・・・ウエハ
図1
図2
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