特許第5750503号(P5750503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5750503-回転電機 図000002
  • 特許5750503-回転電機 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750503
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/14 20060101AFI20150702BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   H02K9/14
   F16J12/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-272208(P2013-272208)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126689(P2015-126689A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨井 健悟
(72)【発明者】
【氏名】善家 孝夫
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−095149(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1816726(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/14
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の外周に設けられた回転子鉄心、この回転子鉄心の外周と間隔を保って設けられた円筒状の固定子鉄心を有する回転電機本体と、
この回転電機本体の周囲を包囲する圧力容器と、
この圧力容器内の前記回転電機本体の外周を囲む位置に、それぞれ前記回転軸の軸方向に沿って配置された複数本の冷却パイプとを備え、
前記回転電機本体は、前記圧力容器内において下方に偏心して設けられ、前記冷却パイプは、この圧力容器内の上部空間内に、下部空間より多くの本数が設置されており、
前記圧力容器は、前記回転軸の貫通部分に開口を有し、この開口は、前記回転軸を回転自在に支持するベアリングブラケットの周囲部分により閉鎖され、このベアリングブラケットは、その外面の、前記回転軸を中心とした円周上に配置された複数のボルトにより前記開口の周縁に一体的に締結され、
前記複数のボルトが配置される円周は、前記回転電機本体の外周より外側に位置し、前記複数の冷却パイプの幾つかは、それらの端部が、前記円周上の、前記複数のボルト間に配置されている
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数本の冷却パイプを、回転電機本体を収容する圧力容器内に設けた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータなどの回転電機では、運転中に生じる熱を効率よく外部に放出して冷却する必要があり、そのための冷却構造に関する多くの提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
回転電機の構造として、所謂耐圧防爆形がある。この耐圧防爆形の回転電機は、回転子及び固定子からなる回転電機本体を圧力容器内に収容し、内部で爆発が生じても、その爆発圧力が外部に伝播しないように構成したものである。このような回転電機の冷却構造としては、圧力容器内において、回転軸方向に沿う複数の熱交換式の冷却管を、回転電機本体を囲むように配置し、運転時に回転電機本体から生じる熱を外部に放出するように構成している。このような回転電機では、複数の冷却管は、上述したように回転電機本体の外周を囲むように配置されるので、回転電機本体の下部外周にも多くの冷却管が存在することになる。
【0004】
通常の回転電機を設置する場合は、回転電機の下部外周が設置面上に接するように、回転電機のフレームに形成された脚板により据え付けられる。しかし、上述した構造の場合、回転電機本体の下部外周にも多くの冷却管が存在することから、回転電機本体の下部外周が設置面上に位置するように据え付けると、回転電機本体、及びその外周を囲むように配置された冷却管を収容する圧力容器の下部外周は、設置面より下方に膨らむことになる。このため、設置箇所に、設置面より下方に膨らんだ部分を収容するためのスペースを確保しなければならず、スペース確保のための凹部形成加工が必要となり、標準的な設置箇所には設置できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−245512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、通常の設置面への据付が可能となる冷却構造を備えた回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態による回転電機は、回転軸の外周に設けられた回転子鉄心、この回転子鉄心の外周と間隔を保って設けられた円筒状の固定子鉄心を有する回転電機本体と、この回転電機本体の周囲を包囲する圧力容器と、この圧力容器内の前記回転電機本体の外周を囲む位置に、それぞれ前記回転軸の軸方向に沿って配置された複数本の冷却パイプとを備え、前記回転電機本体は、前記圧力容器内において下方に偏心して設けられ、前記冷却パイプは、この圧力容器内の上部空間内に、下部空間より多くの本数が設置されており、前記圧力容器は、前記回転軸の貫通部分に開口を有し、この開口は、前記回転軸を回転自在に支持するベアリングブラケットの周囲部分により閉鎖され、このベアリングブラケットは、その外面の、前記回転軸を中心とした円周上に配置された複数のボルトにより前記開口の周縁に一体的に締結され、前記複数のボルトが配置される円周は、前記回転電機本体の外周より外側に位置し、前記複数の冷却パイプの幾つかは、それらの端部が、前記円周上の、前記複数のボルト間に配置されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る回転電機の上部を開放して示す縦断面図である。
図2図1の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1及び図2で示す回転電機は、圧力容器11内に回転電機本体12を収容して構成される。回転電機本体12は、回転軸13の外周に設けられた回転子鉄心14、及び円筒状を成し、その内周が回転子鉄心14の外周と間隔を保って設けられた固定子鉄心15を有する。圧力容器11は、この回転電機本体12の周囲を、間隔を保って包囲する。また、その左右端面を構成するフレーム111の、回転軸13が貫通する部分には開口が形成され、これら左右の開口は、それぞれベアリングブラケット17により一体的に閉鎖されている。
【0011】
ベアリングブラケット17は、回転軸13を回転自在に支持するベアリング部18を有し、このベアリング部18の周囲部分19が、圧力容器11の、前述した左右端面の開口を閉鎖するように設けられる。すなわち、このベアリングブラケット17は、図2で示すように、その周囲部分19の外面の、回転軸13を中心とした円周19a上に配置された複数のボルト21により、フレーム111の開口周縁に一体的取り付けられている。複数のボルト21が配置される円周19aは、回転電機本体12の外周、より具体的には固定子鉄心15の外周より外側に位置している。
【0012】
圧力容器11の左右端面を構成するフレーム111の、図2で示す下部左右には、据付用の脚板111aが一体に形成されている。なお、図2中、22は外部接続用のケーブル、23は端子箱用のフランジである。
【0013】
圧力容器11内には複数本の冷却パイプ25が、回転軸13の軸方向に沿って設けられている。この複数の冷却パイプ25は、熱交換式のもので、その両端は圧力容器11の両端面を構成するフレーム111を貫通して外部に通じており、外部から空気などの冷却媒体が流通するように構成されている。また、この複数の冷却パイプ25は、回転電機本体12の外周を囲む位置に配置されている。
【0014】
ここで、回転電機本体12は、圧力容器11内において、図2で示すように下方に偏心して設けられている。このため、圧力容器11内には、下部空間より容積の大きな上部空間が生じる。複数の冷却パイプ25は、図示のように、多くがこの圧力容器11内の上部空間内に集中して配置され、下部空間より多くの本数が設置される。
【0015】
また、複数の冷却パイプ25の幾つかは、図2で示すように、それらの端部が、複数のボルト21が配置される円周19a上の、ボルト21が配置されていない部分、言い換えれば、複数のボルト21間に配置されている。この複数のボルト21が配置される円周19aは、前述のように、固定子鉄心15の外周より外側に位置しているが、複数のボルト21がベアリングブラケット17をフレーム111の開口周縁に締結する構造上、円周19aの位置は、固定子鉄心15の外周に極めて近い位置となる。このため、この円周19a上に両端を開口する冷却パイプ25も、固定子鉄心15の外周の極近くに位置する。
【0016】
このように、複数の冷却パイプ25の幾つかを、固定子鉄心15の外周近くの位置にまで配置したことにより、その分、圧力容器11内における冷却パイプ25の収容容積を縮小することができる。
【0017】
上記構成において、回転電機の運転時に回転電機本体12に生じる熱は、圧力容器11内に設置した複数の冷却パイプ25により熱交換され、外部に放出される。この実施の形態では、複数の冷却パイプ25の多くを圧力容器11内の上部空間内に集中して配置しているが、回転電機本体12に生じる熱は圧力容器11内を上昇するため、この発生熱を効率よく外部に放出させることができる。
【0018】
また、複数の冷却パイプ25の多くが圧力容器11内の上部空間内に配置されているため、回転電機本体12の下部外周には、図2で示すように殆ど冷却パイプ25が配置されない。すなわち、前述したボルト21が配置される円周19a上の幾つかの冷却パイプ25以外は、回転電機本体12の下部外周には冷却パイプ25が配置されない。したがって、この下部外周が下方に膨らむことはなく、図2で示した脚板111aにより、平板な設置面上に設置しても、膨らんだ部分を設置するためのスペースを確保するための凹部形成加工を設置箇所に施す必要はなく、この実施の形態による耐圧防爆形の回転電機を、一般の回転電機と同様の標準的な設置箇所に設置することができる。
【0019】
また、一般に耐圧防爆形の回転電機では、圧力容器の容積が大きいと、内部で爆発が生じた場合、爆発圧力が高くなり、圧力容器の板圧を厚くするなど耐圧強度を高める必要が生じる。このため、全体的な形状の大形化及び重量増加を招いていた。そこで、この実施の形態では、前述のように、複数の冷却パイプ25の幾つかを、それらの端部が円周19a上に配置して、固定子鉄心15の外周に近くの位置にまで配置したことにより、その分、圧力容器11内における冷却パイプ25の収容容積を縮小した。したがって、圧力容器11の容積を縮小できるので、内部で爆発が生じた場合、爆発圧力を低く抑えることができ、全体的な形状の小形化及び軽量化を実現することが可能となる。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0021】
11・・・圧力容器
111・・・圧力容器の端面を構成するフレーム
111a・・・脚板
12・・・回転電機本体
13・・・回転軸
14・・・回転子鉄心
15・・・固定子鉄心
17・・・ベアリングブラケット
18・・・ベアリング部
19・・・周囲部分
19a・・・円周
21・・・ボルト
25・・・冷却パイプ
図1
図2