特許第5750506号(P5750506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750506
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】脳刺激のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20150702BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   A61N1/36
   A61N1/05
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-501304(P2013-501304)
(86)(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公表番号】特表2013-521985(P2013-521985A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011028540
(87)【国際公開番号】WO2011119377
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2013年11月22日
(31)【優先権主張番号】61/316,691
(32)【優先日】2010年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507213592
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】モフィット マイケル アダム
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン ディヴィッド カール リー
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−522004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳刺激のための装置であって、
長手方向表面、近位端、及び遠位端を有するリードと、
前記リードの前記遠位端近傍の前記リードの前記長手方向表面に沿って配置された複数の電極とを備え、前記複数の電極は、第1のセットの電極と、第2のセットの電極とを含み、前記第1のセットの電極および第2のセットの電極の各々は、露出表面を有する少なくとも4つにセグメント化された電極を含んでいて、前記露出表面の各々は、中心点を有していて、
前記第1のセットの電極の前記少なくとも4つのセグメント化された電極は、前記リードの周りで第1のらせん経路に配置され、前記第2のセットの電極の前記少なくとも4つのセグメント化された電極は、前記リードの周りで第2のらせん経路に配置され、前記第1のセットの電極の中心点間の距離は、前記第2のセットの電極の中心点間の距離と異なる、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1のセットの少なくとも4つのセグメント化された電極の前記中心点の各々は、前記リードの前記長手方向表面の一部の周りで均一に分布される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のセットの少なくとも4つのセグメント化された電極の前記中心点の各々は、前記第1のセットのセグメント化された電極のうちで最も近い1つから半径方向に72度だけ離れて配置される、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のセットの少なくとも4つのセグメント化された電極の前記中心点の各々は、前記第1のセットのセグメント化された電極のうちで最も近い1つから半径方向に90度だけ離れて配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のセットの少なくとも4つのセグメント化された電極の隣接した中心点は、前記第1のセットのセグメント化された電極のうちで最も近い1つから半径方向に120度だけ離れて配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の電極は、まさに8個のセグメント化された電極を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のセットのセグメント化された電極は、前記第2のセットのセグメント化された電極と異なる形状を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2のセットのセグメント化された電極は、ダイヤモンド形状である、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のセットのセグメント化された電極は、円形である、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のセットの少なくとも4つのセグメント化された電極は、前記長手方向表面の周りに少なくとも1巻きの全巻きを備える配列で配置される、請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1のセットの少なくとも4つのセグメント化された電極は、前記長手方向表面の周りに2巻きの全巻きを備える配列で配置される、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のセットの少なくとも4つのセグメント化された電極は、前記中心点が、前記リードの前記長手方向表面の一部の周りで均一に分布するように構成されかつ配置される、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の装置と、前記リードに結合されることができる制御モジュールとを備える、植え込み型刺激装置。
【請求項14】
前記植え込み型刺激装置は、深部脳刺激のための装置である、請求項13に記載の植え込み型刺激装置。
【請求項15】
前記制御モジュールは、前記第1のセットのセグメント化された電極を使用して第1の周波数で組織を刺激し、かつ、前記第2のセットのセグメント化された電極を使用して、前記第1の周波数と異なる第2の周波数で組織を刺激するように構成されかつ配置される、請求項13に記載の植え込み型刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深部脳刺激を含む脳刺激のための装置に関する。また、本発明は、実質的に円筒状のリードの周りに実質的にらせん状の所定経路上に配置された複数の電極を有するリードを使用する、脳刺激のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
深部脳刺激は、例えばパーキンソン病、ジストニー(筋緊張異常症)、突発性震え、慢性の痛み、ハンチントン病、レボドパ誘因性運動障害及び硬直、動作緩慢、てんかん発作、摂食障害、並びに気分不調など、各種状態を治療するのに有用である。典型的には、端部又は端部近傍に刺激電極を備えたリードは、脳内のニューロンへ刺激を与える。磁気共鳴イメージング(MRI)又はコンピュータ化されたX線断層写真撮影(CT)走査は、標的ニューロンに所望の刺激を与えるためにどこに刺激電極を配置すべきかを決定するための出発点を示すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
挿入の際、電流はリード長に沿って導入され脳内の標的ニューロンを刺激する。この刺激は、典型的には、リード上に配置されたリング形状の電極により与えられる。電流は、電極の各々から、リードの軸線に沿って任意の所定の長さで同じように全ての方向に放出される。電極の形状に起因して、電流の半径方向の選択性は最小である。このことは、隣接するニューロン組織の不要な刺激、不要な副作用、及び適切な治療効果を得るための持続時間の増加につながる。更に、現行の方法は、刺激プロファイル内に、刺激を与えることができない空所又はデッドスポット、領域を含む場合が多い。これらの領域があると、リードの配置変更が必要となり、場合によってはリードを取り外して異なる方向に埋め込むことが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態は、脳刺激のための装置である。本装置は、長手方向表面、近位端、及び遠位端を有するリード、及びリード遠位端近傍のリード長手方向表面に沿って配置される複数の電極を含む。複数の電極は、各々が中心点をもつ露出表面を有する少なくとも4つのセグメント化された電極を含む。少なくとも4つのセグメント化された電極は、中心点の各々がリードの遠位端の長手方向表面の周りで、異なる長手方向位置及び異なる半径方向位置に配置されるように構成及び配置される。
【0005】
別の実施形態は、脳刺激のための装置である。本装置は、長手方向表面、近位端、及び遠位端を有するリード、及びリード遠位端近傍のリード長手方向表面に沿って配置された複数の電極を含む。複数の電極は、各々が中心点をもつ露出表面を有する少なくとも4つのセグメント化された電極を含む。少なくとも4つのセグメント化された電極の中心点は、リード長手方向表面の周りで、実質的にらせん状の経路上に配置される。
【0006】
本発明に関連する参考例は、患者の頭蓋骨内へ装置を挿入する段階を含む脳刺激のための方法である。この装置は、長手方向表面、近位端、及び遠位端を有するリード、及びリード遠位端近傍のリード長手方向表面に沿って配置される複数の電極を含む。複数の電極は、中心点をもつ少なくとも4つのセグメント化された電極を含み、少なくとも4つのセグメント化された電極はリードの長手方向表面の周りでらせん状の経路上に配置される。前記方法は、複数の電極で陽極電流又は陰極電流の少なくとも1つを発生させて複数の電極を使用して標的ニューロンを刺激する段階を更に含む。
【0007】
本発明の非限定的及び非包括的な実施形態を以下の図面を参照して説明する。図面において、種々の図面を通して特段の定めのない限り同じ参照番号は同じ部分に言及するものである。
本発明をより理解するために、添付図面と併せて読む必要がある以下の詳細な説明を参照できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による、リード長に沿った種々の電極レベルに沿う半径方向電流ステアリングの概略図である。
図2A】本発明による、複数のリング電極を有するリードの一部の概略斜視図である。
図2B】本発明による、複数のセグメント化された電極及び2つのリング電極を有するリードの一部の概略斜視図である。
図3A】本発明による、複数のリング電極を有するリードの一部の概略斜視図であり、1つの実施可能な刺激プロファイルが示されている。
図3B】本発明による、図3Aのリードの一部及び関連する刺激プロファイルの概略断面図である。
図4A】本発明による、らせん経路上に配置される複数の電極を有する第1の実施形態のリードの一部の概略斜視図である。
図4B】本発明による、らせん経路上に配置される複数の電極を有する別の実施形態のリードの一部の概略斜視図である。
図4C】本発明による、らせん経路上に配置される複数の電極を有する第3の実施形態のリードの一部の概略斜視図である。
図5】本発明による、らせん経路上に配置される複数のダイヤモンド形状の電極を有する1つの実施形態のリードの一部を示す概略図である。
図6】本発明による、2つのらせん経路上に配置される複数の電極を有するリードの一部の概略斜視図である。
図7】本発明による、リード及びスタイレットの1つの実施形態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、深部脳刺激を含む脳刺激のための装置に関する、更に、本発明は、実質的に円筒状のリードの周りに実質的にらせん状の経路上に配置される複数の電極を有するリードを使用する、脳刺激のための装置に関する。
【0010】
深部脳刺激のためのリードは、刺激電極、記録電極、又は両者を組み合わせたものを含むことができる。施術者は、記録電極を使用して標的ニューロンの位置を決定した後、これに応じて、記録リードの取り外し及び刺激リードの挿入を行うことなく、刺激電極を配置することができる。いくつかの実施形態において、同じ電極を記録及び刺激のために使用することができる。いくつかの実施形態において、別々のリードを使用することができ、一方のリードは標的ニューロンを特定する記録電極を備え、他方のリードは標的ニューロン同定後に一方のリードに取って代わる刺激電極を備える。リードは、該リードの周りに離間した記録電極を含み、標的ニューロンの位置をより詳細に決定できるようになっている。少なくともいくつかの実施形態において、リードは、記録電極を使用してニューロンの位置を探し出した後に刺激電極が標的ニューロンと整列できるように回転可能である。
【0011】
深部脳刺激のための装置及びリードは従来技術に記載されている。例えば、米国特許公開番号2006/0149335(「脳刺激のための装置及び方法」)、及び同時係属中の米国出願番号12/237,888(「脳刺激システムのための非円形遠位端を備えるリード及びその製作方法及び使用方法)を参照されたい。これらの引例の各々は、それぞれの開示内容全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0012】
図1は、リード110の長さに沿った種々の電極レベルに沿う半径方向の電流ステアリングの概略図である。図2Aに示すようなリング電極220を備える従来のリード構成では、リードの長さ(z軸)に沿って電流をステアリングできるだけである。従って、図2Aから分かるように、刺激の中心は、どのようなレベルでもリード長(図1のz軸)に沿って変位可能である。他の実施形態において、複数のセグメント化された電極をリード本体の表面の周りに位置決めすることにより、電流は、z軸方向と同様、x軸方向及びy軸方向でもステアリングすることができる。図2Bに示すように、リング電極220に加えて又はリング電極220の代わりに、複数セットのセグメント化された電極をリード250の長さに沿って配置することができる。複数セットのセグメント化された電極の使用により、三次元での電流ステアリングが可能となる。いくつかの実施形態において、リード260の半径方向距離r、及び円周角度θは、各々の電極に導入される陽極電流(刺激は主に陰極の近くで発生するが、強い陽極は同様に刺激を引き起こす場合があることを認識されたい)の割合により規定できる。少なくともいくつかの実施形態において、複数のセグメント化された電極に沿った陽極及び陰極の構成により、刺激の中心をリード本体260に沿った種々の異なる位置に変位することができる。少なくともいくつかの実施形態において、別個の陽極又は陰極(例えば、リードに結合された植え込み型パルス発生器に設けられた陽極又は陰極)が使用可能であることを理解されたい。
【0013】
従って、図2Bに示すような半径方向にセグメント化された従来のリードは多次元で制御可能であるので、深部脳刺激用機器のプログラム可能性を改善するのに役立つ。良好な制御を行うことで、治療が望ましくない領域の刺激は最小限にすること又は回避することができる。更に、刺激の中心の制御により、治療を施すために必要な時間を低減できる。
【0014】
半径方向にセグメント化されたリードは、刺激される領域の良好な制御をもたらすことができるが、依然として選択的な刺激を行うことができない空所又はデッドスポット、領域が刺激プロファイル内に存在する場合がある。空所又はデッドスポット領域を刺激するために、リードは患者体内で巧みに動かすことを必要とする場合もある。いくつかの実施例では、適切な刺激を得るために、リードを取り外して二度目に植え込むことを必要とする場合もある。従って、デッドスポットは効果のない治療の原因となる場合がある。
【0015】
図3Aは、複数のセグメント化された電極を有するリードの一部を使用した半径方向の選択的刺激の概略斜視図である。リード300は、リード本体310上に配置された多数のセグメント化された電極320を含む。セグメント化された電極320はリード300の周りの領域330を刺激できる。図3A及び図3Bから分かるように、刺激330の領域は、図1を参照して前述したように、三軸方向全てにおいて制御できる。
【0016】
図3Bは、図3Aのリード300の一部と、前記一部に関連した刺激プロファイルの概略断面図である。図3Bに示すように、刺激の領域330は、リード本体310の周囲に配置されている。各セグメント化された電極に導かれる電流量を制御することにより、刺激プロファイルは所望通りに変更できる。例えば、1つの実施形態において、刺激プロファイルは、目標領域340の外側では刺激が起こらないように制御できる。この方式の制御は、リード300が目標領域340の中心に配置されていない場合に有用である。このような状况では、刺激プロファイルの制御は、刺激を目標領域内に限定するために有用である。
【0017】
図3Bに示すように、半径方向にセグメント化された電極は刺激プロファイルの制御に有用であるが、依然として刺激プロファイル340内には刺激を得られない空所又はデッドスポットが存在する場合がある。これらのデッドスポットは、通常、セグメント化された各電極の間の領域に位置する。デッドスポット350は、効果のない刺激及び治療時間の増大につながる。
【0018】
電極の数及び電極の位置により、実施可能な刺激プロファイル及び刺激プロファイル内のデッドスポットの数が決まる。電極の位置決めは、以下に「中心点」と呼ぶ電極の中心を参照して説明できる。中心点はリードの周りであればどこにでも置くことができる。いくつかの実施形態において、中心点を所定のリード長手方向範囲の周りに均一に分布させることで、より望ましい刺激プロファイル及び選択性プロファイルを得ることができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、中心点は、円筒形リードの周りのらせん経路上に配置される。図4Aは、リード本体410の周りのらせん経路415上に配置される複数の電極を有するリード400の一部を示す1つの実施形態の概略図である。各電極450の中心点は、電極450の配置を表示するために示されている。図4Aは1つの実施形態を示しており、リード400は8個の電極450を有し、各々が中心点を有し、長手方向長さ6mmのらせん経路415に沿って配置される。
【0020】
図4Aに示すように、電極450の中心点は、リード本体410の周りでらせん経路415上に配置することができる。電極の配置は、らせん経路の1つの全巻き内に配置された電極の数を参照して説明できる。いくつかの実施形態において、電極は、らせん経路415の各々の全巻きが2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、10個、12個、14個、又は16個の電極450を含むように配置できる。
【0021】
リード本体410の周りのらせん経路415の巻数は任意とすることができる。いくつかの実施形態において、らせん経路415は、リード本体410の周りに1つの全巻きを形作っている。いくつかの他の実施形態において、らせん経路415は、リード本体410の周りに2巻、3巻、4巻、又は5巻の全巻きを形作っている。らせん経路415の巻数はリード400上に配置された電極450の個数に比例できること、及びらせん経路415は1つ又はそれ以上の全巻きに加えて部分的な巻きを含み得ることを理解されたい。例えば、8個の電極450を有する実施形態において、らせん経路415は、各巻きが4個の電極を含むように、リード本体410の周りに2巻きを形作ることができる。リード400上に配置される電極の数は任意とすることができる。いくつかの実施形態において、リード440上に2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、14個、又は16個の電極を配置できる。同様に、少なくともいくつかの実施形態において、らせん経路415が形作る巻数は、半巻から5巻きの全巻きの範囲とすることができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、電極450は、2個の電極450が半径方向で同じ位置に配置されないように、リード400の遠位端の長手方向表面の周りに配置されている。いくつかの実施形態において、電極450は、2個の電極が長手方向で同じ位置に配置されないように、リード400の遠位端の長手方向表面に沿って配置されている。電極450のらせん経路415を有する実施形態のような、いくつかの実施形態において、電極450は、電極450が長手方向の異なる位置及び半径方向の異なる位置に配置されるように、らせん経路415の周りに配置することができる。
【0023】
図4Bは、らせん経路415上に配置された複数の電極を有するリード400の一部の別の実施形態の概略斜視図である。図4Bから分かるように、図4Bのらせん経路415は図4Aのらせん経路415と類似している。しかしながら、図4Bのリード400上に配置される電極の数は、図4Aのリード400の上に配置された電極の数よりも少ない。詳細には、図4Bのリード400上に配置された電極の数は、図4Aのリード400上に配置された電極の数のわずか半分である。従って、らせん経路415に沿った電極450の数をより少なくすることにより、異なる刺激プロファイルを得ることができる。らせん経路415に沿って、図4Bのリード400の中心点の間の距離は、図4Aのリード400の中心点間の距離の2倍であることを理解されたい。
【0024】
少なくとも他のいくつかの実施形態において、らせん経路415自体を変更して異なる刺激プロファイルを得ることができる。図4Cは、らせん経路415上に配置される複数の電極を有するリード400の一部の第3の実施形態を示す概略斜視図である。図4Cに示すように、らせん経路415は、リード400の所定長さに沿って、図4A及び図4Bに示すらせん経路415個よりも多くの巻きを含む。所定のらせん経路415により、らせん経路415に沿って所望通りの任意の数の電極450を配置することができる。
【0025】
従って、いくつかの実施形態において、各電極450の間の間隔は、らせん経路415とリード400の軸線との間の角度で定義される、らせん角度を変更することで調整できる。いくつかの実施形態において、らせん角度は5度から90度の範囲である。このように、各電極450の間の間隔は、所望通りに適切ならせん角度、電極数、巻数を選択すること又はこれらを組み合わせることで調整できる。らせん角度を選択する代わりに、らせん経路415の長手方向長さ及び巻数を選択してらせん経路415を得ることができる。例えば、いくつかの実施形態において、らせん経路415の長手方向長さは3mmと15mmとの間の範囲にすることができる。いくつかの実施形態において、長手方向長さは15mm、20mm、25mm、30mm、又は40mmを超えない。いくつかの実施形態において、長手方向長さは少なくとも1mm、2mm、3mm、5mm、又は10mmである。らせん経路415の長手方向長さ及び巻数を選択することにより、らせん経路415を決定して電極を分布させることができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、電極450は、電極450の各中心点がらせん経路415に沿って最も近い隣接電極450の中心点から同じ距離になるように、らせん経路415の周りで均一に分布させることができる。例えば、電極450の位置は、らせん経路415に沿って隣接する電極450の各中心点の間の距離が、2mmから4mm離れる(例えば、2mmから2.6mm離れる)ように選択される。少なくともいくつかの実施形態において、らせん経路415自体は、電極450がリード表面の周りに均一に分布するように選択され、各電極450は最も近い4個の電極450から同じ距離だけ離れる。例えば、リード400は、各電極450の中心点が最も近い4個の電極450から2.43mm離れるように選択される。各電極450の間の距離を短くすることで、刺激プロファイル内で空所又はデッドスポットの数を低減できる。
【0027】
もしくは、各電極の間の距離は、リード本体の周りの各電極の間の半径方向の角度で定義できる。いくつかの実施形態において、隣接する各中心点の間の半径方向の角度は各々の電極に関して同一である。例えば、らせん経路に沿って隣接する各中心点の間の半径方向の角度は、10度から270度の範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、らせん経路に沿って隣接する各電極の間の半径方向の角度は少なくとも30度である。少なくともいくつかの他の実施形態において、らせん経路に沿って隣接する各中心点の間の半径方向の角度の角距離は、少なくとも15度、少なくとも30度、少なくとも45度、少なくとも60度、少なくとも72度、少なくとも90度、少なくとも120、又は180度である。
【0028】
いくつかの実施形態において、電極は、電極の各中心点の間の距離の合計が最小となるようにリードの長手方向表面の周りに配置することもできる。例えば、いくつかの実施形態において、最初に長手方向長さが選択される。この長手方向長さは、周囲に電極が配置されることになるらせん経路の長さを定義する。次に、費用関数が、任意の中心点から任意の他の中心点までの最短距離の最大化として定義される。費用関数を評価することにより、結果として生じたらせん経路を得ることができ、電極を所望通りにらせん経路上に配置できる。
【0029】
電極を位置決めするために使用するパラメータ又は方法に関わらず、中心点をリードの周りに均一に分布させることにより、不要な箇所を刺激することなく、所定の標的箇所を刺激できる確率が高くなり、植え込み後にリードの位置決めのための調整を少なくすることができる。換言すれば、選択的に刺激できる能力が向上する。
【0030】
図5は、らせん経路上に配置された、ダイヤモンド形状のセグメント化された電極を有するリードの一部の1つの実施形態を示す概略図である。図4A図4B、及び図4Cと同様に、図5は、リード本体510の周りでらせん経路550上に配置される複数の電極520を有するリード500を示す。リード500は複数の電極を含むが(2つの電極が後部に配置される)、リード500上には任意数の電極を配置できる。図5の電極は、長手方向長さが7.5mmのらせん経路550の周りで、リード本体510上に配置さる。巻数は図4の巻数と同じであり、長手方向長さが増加しているので、図5のらせん経路はより大きならせん角度を有することになり、結果的に各電極520の間の間隔がより大きくなっている。
【0031】
電極は任意の形状及び寸法をもつことができる。電極は、同じ形状とすることができるし、或いは、異なる形状とすることができる。また、電極の断面形状は様々とすることができる。いくつかの実施形態において、図5に示すように、電極はダイヤモンド形状である。少なくともいくつかの他の実施形態において、電極の断面形状は、円形(図4A図4B図4C及び図6)、長円形、矩形、正方形、又は三角形とすることができる。更に、異なる形状の多数の電極を有するリードを形成することができる。例えば、単一のリードは、円形電極及びダイヤモンド形電極の両方を有することができる。電極は任意の所望の構成で配置できる。例えば、いくつかの実施形態において、第1の形状の電極と第2の形状の電極とを交互に配置した電極とすることができる。
【0032】
図6は、2つのらせん経路上に配置された複数の電極を有するリードの一部を示す概略斜視図である。この実施形態は「二重らせん」配列と呼ぶことができる。本実施形態において、第1のらせん経路615は、リード本体610の周囲に沿って規定される。第1のセットの電極650は、第1のらせん経路615上に配置される。第2のらせん経路625は、リード本体610の周囲に沿って規定できる。第2のセットの電極650は、第2らせん経路625上に配置できる。
【0033】
図6に示すように、いくつかの実施形態において、第2のらせん経路625は、第1のらせん経路615とは反対方向に回転するように規定できる。例えば、第1のらせん経路615の方向は、らせん経路がリード本体610の近位端からリード本体610の遠位端に向かって反時計方向に回転するように規定される。第2のらせん経路625は、らせん経路がリード本体610の近位端からリード本体610の遠位端に向かって時計方向に回転するように規定される。少なくともいくつかの他の実施形態において、第1のらせん経路615及び第2のらせん経路625は同じ方向に回転するよう規定することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、第1のらせん経路615及び第2のらせん経路625は合同とすることができる。もしくは、第1のらせん経路615及び第2のらせん経路625は異なる巻数、らせん角度とすること、両者はリード本体610の異なる長さにわたって延びることができる。更に、第1のらせん経路615に配置される電極数と、第2のらせん経路625上に配置される電極数とは異なることができる。また、電極650の各中心点の間のらせん経路に沿った距離は、2つのらせん経路の間で異なることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、2つのらせん経路に沿って配置される電極の形状は異なっている。例えば、第1のらせん経路615上の電極は円形として、第2らせん経路625上の電極は図5に示すようなダイヤモンド形とすることができる。また、らせん経路の各々は、2つ、3つ、又はそれ以上の形状の電極を含むことができる。
【0036】
また、2つのらせん経路は、標的組織を異なるように刺激するよう構成できる。例えば、第1のらせん経路615上に配置された第1のセットの電極650は、組織を第1の周波数で刺激するが、第2のらせん経路625上に配置された第2のセットの電極650は、組織を第2の周波数で刺激するよう構成できる。刺激プロファイルのいかなるパラメータも変更できることを理解されたい。いくつかの実施形態において、第1のらせん経路615及び第2のらせん経路625は、異なる大きさ、異なる持続時間、又はそれらの任意の組み合わせで刺激する。他の実施形態において、第1のらせん経路615上に配置される第1のセットの電極650は刺激電極とすることができ、第2のらせん経路625上に配置される第2のセットの電極650は記録電極とすることができる。これらの電極の寸法及び形状は、同じであることができ、或いは、異なることができる。
【0037】
このように、標的組織を治療するために異なる刺激プロファイルを得ることができる。例えば、第1のセットの電極650及び第2のセットの電極650は交互に駆動できる。もしくは、2つのセットの電極650は両方同時に駆動することができる。各々の電極が別個の又は指定された導体に結合される実施形態において、リード610の一方側の電極のみを駆動することができる。
【0038】
図7は、脳刺激のための装置700の1つの実施形態を示す。この装置は、リード710、リード710の周りにらせん状に配置された複数の電極720、電極を制御ユニットに接続するためのコネクタ730、及び患者の脳内へのリードの挿入及び脳内でのリードの位置決めの助けとなるスタイレット760を含む。スタイレット760は硬質材料で作ることができる。適切な材料例は、タングステン、ステンレス鋼、又は合成樹脂である。スタイレット760はハンドル770を有することができ、リード内への挿入並びにスタイレット及びリードの回転を助けるようになっている。コネクタ730は、好ましくはスタイレットを取り外した後にリード710の近位端に嵌合する。
【0039】
1つの実施例の作動において、患者の頭蓋骨又は頭蓋に頭蓋ドリルを用いて穴をあけること(バリ(burr)と呼ばれることが多い)、及び硬脳膜又は脳外皮を凝固及び切開することにより、脳内の所望の位置にアクセスすることができる。リード710はスタイレット760の助けによって頭蓋骨及び脳組織内に挿入できる。リードは、例えば、定位固定フレーム及び微小駆動モータシステムを使用して、脳内の標的位置に案内できる。いくつかの実施形態において、微小駆動モータシステムは完全に又は部分的に自動化することができる。微小駆動モータシステムは以下の1つ又はそれ以上の作動、すなわちリードの回転、リードの挿入、又はリードの後退を(単独で又は組み合わせて)行うことができる。いくつかの実施形態において、標的ニューロンに刺激される筋肉又は他の組織に結合された測定機器、又は患者又は臨床医に対応するユニットは、制御ユニット又は微小駆動モータシステムに結合することができる。測定機器、ユーザ、又は臨床医は、標的ニューロン又は他の組織による刺激電極又は記録電極への反応を示すことで、更に標的ニューロンを特定して刺激電極の位置決めを助長することができる。例えば、標的ニューロンが震えを経験した筋肉に向けられる場合、測定機器は、筋肉を観察して、ニューロンの刺激に応答した震え周波数又は震え振幅の変化を示すために使用できる。もしくは、患者又は臨床医は、筋肉を観察して、その観察結果を示すことができる。
【0040】
深部脳刺激のためのリード710は、刺激電極、記録電極、またはその両者を含むことができることを理解されたい。少なくともいくつかの実施形態において、リードは、記録電極を使用してニューロンを探り当てた後、刺激電極が標的ニューロンと整列するように回転可能である。
【0041】
刺激電極はリードの周囲に配置されて標的ニューロンを刺激することができる。以下の記載は刺激電極を説明しているが、説明した刺激電極の全ての構成は、記録電極の配置の際にも同様に利用できることを理解されたい。
【0042】
前述のように、上記の刺激電極の構成は、記録電極を利用する場合にも使用できる。いくつかの実施形態において、標的ニューロンにより刺激される筋肉又は他の組織に結合された測定機器、又は患者又は臨床医に対応するユニットは、制御ユニット又は微小モータシステムに結合できる。測定機器、ユーザ、又は臨床医は、標的筋肉又は他の組織による刺激電極又は記録電極への反応を示すこと、更に標的ニューロンを特定して刺激電極の位置決めを助長することができる。例えば、標的ニューロンが震えを経験した筋肉に向けられる場合、測定機器は、筋肉を観察して、ニューロンの刺激に応答した震え周波数又は震え振幅の変化を示すために使用できる。もしくは、患者又は臨床医は、筋肉又は他の生理的なパラメータ、又は患者の自覚的な反応を観察し、又はこれらを組み合わせて、観察結果を示すことができる。
【0043】
前記の詳細な説明、実施例、及びデータは、本発明の構成の製作及び使用の説明をもたらす。本発明の多くの実施形態は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施できるので、本発明は添付の請求の範囲に属している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7