特許第5750508号(P5750508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5750508多環芳香族炭化水素含有量が低いプロセスオイルを製造するためのプロセス
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  • 特許5750508-多環芳香族炭化水素含有量が低いプロセスオイルを製造するためのプロセス 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750508
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】多環芳香族炭化水素含有量が低いプロセスオイルを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 21/12 20060101AFI20150702BHJP
   C10G 21/30 20060101ALI20150702BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   C10G21/12
   C10G21/30
   C08L21/00
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-510724(P2013-510724)
(86)(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公表番号】特表2013-529239(P2013-529239A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】ID2011000001
(87)【国際公開番号】WO2011145086
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2014年4月16日
(31)【優先権主張番号】P00201000338
(32)【優先日】2010年5月17日
(33)【優先権主張国】ID
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512297664
【氏名又は名称】ピーティー プルタミナ (ぺルセロ)
(73)【特許権者】
【識別番号】512297675
【氏名又は名称】ピーティー プラ バルタマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メリアナ,ヤナ
(72)【発明者】
【氏名】スプリヤテニ,ヌニク
(72)【発明者】
【氏名】タンダン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】スディヤモコ,バンバン
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/013096(WO,A1)
【文献】 特開2010−229315(JP,A)
【文献】 特開平11−80434(JP,A)
【文献】 特表2001−517262(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第839891(EP,A2)
【文献】 中国特許出願公開第101092491(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
C08L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
a.異なる動粘性率を有する1つ、2つ、又は3つの種類の蒸留物芳香族抽出物(DAE)を混合して、100℃における動粘性率が24cSt〜67cStの範囲にあり、かつ密度が0.98kg/リットル〜1.20kg/リットルの範囲にあるDAE供給原料を得る工程であって、前記DAEは、溶媒の分離後の潤滑油処理で溶媒抽出プロセスから得られた抽出物であり、前記混合の比率が、前記所望されるDAE供給原料を得るように、前記DAEの種類のそれぞれの成分の100℃における動粘性率に基づいており、前記混合工程がインラインまたはオフラインで行われ、容器における撹拌によって完了する、工程、
b.上記の工程aにおいて得られるDAE供給原料をインライン様式またはオフライン様式で希釈剤と混合して、密度が0.75kg/リットル〜0.85kg/リットルの範囲にあるDAE供給原料の混合物の流れを得る工程であって、前記希釈剤がn−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンおよびイソオクタンより選択される、工程、
c.上記の工程bにおける前記DAE供給原料の混合物の流れを、22℃〜35℃(室温)の範囲にある等温条件を有する抽出器に向かわせる工程、
d.上記の工程cにおける前記DAE供給原料の混合物の流れを極性溶媒と接触させ、向流による液液抽出プロセスが22℃〜35℃(室温)の範囲にある等温条件で行われる工程、
e.ラフィネート混合層と抽出物混合層とを、カラムの下部部分に設置される制御機器を介して得るように、前記抽出器における境界層の分離プロセスを調節する工程、
f.上記工程eにおけるラフィネート混合物の流れを溶媒回収装置に向かわせて、前記溶媒および前記希釈剤を前記ラフィネート混合物から分離して、3重量%未満の多環芳香族(PCA)および10mg/kg未満の合計8種の多環芳香族炭化水素(8種Grimmer PAH)および1mg/kg未満のベンゾ(a)ピレン(BaP)を含有する最終製造物(TDAE−1)、または3重量%〜20重量%の範囲にあるPCAおよび10mg/kg未満の8種Grimmer PAHおよび1mg/kg未満のBaPを含有する製造物(TDAE−2)を得る工程であって、極性溶媒の工程dにおけるDAE供給原料の混合物に対する比率によって、得られる製造物TDAE−1またはTDAE−2が確定される、工程、
g.上記工程eにおける前記抽出物の混合物の流れを溶媒回収装置に向かわせて、前記抽出物混合物から前記溶媒を分離して、高い芳香族含有量の抽出物である、またはHACE(高芳香族濃度抽出物)と呼ばれる最終製造物を得る工程、
h.上記の工程fおよび工程gにおいて分離される前記溶媒および前記希釈剤を次回の抽出プロセスにおける再利用のために容器に集める工程
によって行われる、処理された蒸留物芳香族抽出物(TDAE)を製造するためのプロセス。
【請求項2】
前記極性溶媒は、フルフラール、N−メチルピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなるグループから選択された1つであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記工程bにおいて適用される前記操作条件が20℃〜70℃の範囲にある温度および0.3〜3.0の範囲にある希釈剤の前記DAE供給原料に対する比率であり、その結果、密度が0.75kg/リットル〜0.85kg/リットルの範囲にあるDAE供給原料の混合物が得られる、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記希釈剤の前記比率が1.0であることを特徴とする請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記工程dにおいて適用される操作条件が22℃〜35℃の範囲にある温度および1.7〜2.0の範囲にある前記極性溶媒のDAE供給原料の混合物に対する比率であり、その結果、3重量%未満のPCAおよび10mg/kg未満の8種Grimmer PAHおよび1mg/kg未満のベンゾ(a)ピレンを含有するTDAE−1が得られ、非発ガン性のプロセスオイルとして分類することができる、請求項1乃至請求項4の何れか一項記載のTDAE−1を製造するプロセス。
【請求項6】
前記工程dにおいて適用される操作条件が22℃〜35℃の範囲にある温度および0.5〜1.7の範囲にある前記極性溶媒の前記DAE供給原料の混合物に対する比率であり、その結果、3重量%超〜20重量%の範囲にあるPCAおよび10mg/kg未満の8種Grimmer PAHおよび1mg/kg未満のベンゾ(a)ピレンを含有するTDAE−2が得られ、非発ガン性のプロセスオイルとして分類することができる、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のTDAE−2を製造するプロセス。
【請求項7】
8重量%〜20重量%の範囲にあるPCAおよび10mg/kg未満の8種Grimmer PAHおよび1mg/kg未満のベンゾ(a)ピレン(BaP)およびASTM D2140に基づいて計算された25重量%を超える芳香族成分を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項4及び請求項6の何れか一項に記載のプロセスによって得られるTDAE−2。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスオイルを潤滑油処理での蒸留物芳香族抽出物(distillate aromatic extract)(DAE)の再抽出によって製造するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、多環芳香族炭化水素(PAH)の含有量が低く、かつ、多環芳香族(PCA)の含有量が20重量%以下である処理された蒸留物芳香族抽出物(TDAE)をもたらす、DAE供給原料からの液液抽出プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスオイルの世界中の需要は、約250,000トンを消費した欧州を含めて、年間、約1,000,000トンと推定される。このプロセスオイルは様々なタイプからなり、例えば、DAE、残留芳香族抽出物(residual aromatic extract)(RAE)、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvate)(MES)およびナフテン系オイルなどからなる。
【0003】
ゴム産業におけるプロセスオイル利用の最近の開発においては、プロセスオイルが発ガン性物質として分類されるので、プロセスオイルの使用を制限するための欧州委員会による取り組みがある。欧州委員会は、10mg/kg未満の量による8種類の多環芳香族炭化水素(8種Grimmers PAH)(それらのうちの1つが1mg/kg未満の量によるベンゾ(a)ピレン(BaP)である)からなるプロセスオイルにおける発ガン性化合物のレベルに関する、規制指令2005/69/EC(欧州法)を公表している。8種Grimmers PAHの限度は、3重量%未満の多環芳香族(PCA)含有量に等しいと推測される。この規則は2010年1月1日に発効している。示されたPAHの8物質は、ベンゾ(a)ピレン(BaP)、ベンゾ(e)ピレン(BeP)、ベンゾ(a)アントラセン(BaA)、クリセン(CHR)、ベンゾ(b)フルオランテン(BbFA)、ベンゾ(j)フルオランテン(BjFA)、ベンゾ(k)フルオランテン(BkFA)およびジベンゾ(a,h)アントラセン(DBAhA)である。8種Grimmer PAH含有量の測定はガスクロマトグラフィー質量分析計同位体希釈法(GCMS−SIM)によって行うことができ、一方、PCA含有量はIP−346法に従って重量測定法により分析することができる。
【0004】
上述の欧州法の結果として生じ得る難問は、ゴム企業が、それらの製造の過程で調節を行う必要があるということである(例えば、得られたDAEを、TDAE、処理された残留芳香族抽出物(TRAE)、MESおよびナフテン系オイルのような代替製造物に変更する必要がある)。この調節は、製造されている代替プロセスオイルのタイプに依存して変化するさらなる製造コストを引き起こす。最も低いさらなる製造コストは、TDAEタイプのプロセスオイルが選ばれるときに得られ得る。
【0005】
代替プロセスオイルを製造するための多くの努力が、とりわけ、PCA化合物のレベルを3重量%未満にまで低下させる目的で、TDAEを製造するために液液抽出法を利用して行われている。本発明においては、IP−346分析法は芳香族化合物の一群としてのPCA化合物の量を測定することができるだけであるが、この一群の芳香族(PCA)に含有されるPAH化合物の一群も同様に分析されなければならない。
【0006】
欧州委員会の2005/69/EC(欧州法)において公表される重要な検討事項の1つにより、許容された限界を超える量による8種Grimmers PAH(とりわけ、ベンゾ(a)ピレン(BaP))のレベルは、発ガン性で、変異原性で、かつ、毒性であると見なされ、それにより、欧州法域内における製造および販売が禁止されるという規制が確認された。PAHの存在は、ベンゾ(a)ピレン(BaP)をマーカーとして使用して定性的かつ定量的に検出することができる。発ガン性化合物および変異原性化合物を測定するための一般に知られている方法が、ASTM E 1687−98法(金属加工液における未使用基油の発ガン可能性を求めるためのAmes試験法)、および、同様に、化学物質の試験のためのOECD指針(No.471(1997))に基づくAmes試験である。本発明において、AMES試験の方法は、変異原性化合物に対して非常に感受性がある微生物としてサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)TA1535を使用する。
【0007】
本発明において、同位体希釈法に基づくガスクロマトグラフィー質量分析計(GCMS)が、DAE供給原料およびTDAE製造物に含有されるPAHを分析し、計算するために適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
前者の方法は、本発明に最も関連するプロセスオイル製造の中で、欧州特許第0417980号A1のプロセスオイル製造に関する。この欧州特許文献では、使用される供給原料は、100℃の温度における動粘性率値が30.5cStの値に限定される抽出物であり、これに対して、本発明では、より柔軟性である。これは、使用されている抽出物供給原料は、100℃の温度における動粘性率の値が5cSt〜100cStの範囲にあり、好ましくは10cSt〜80cStであり、より好ましくは15cSt〜70cStであるからである。さらに欧州特許第0417980号A1の特許文献では、使用される処理方法が非常に複雑であることが見出され、例えば、温度システムおよび擬似ラフィネート(pseudo−raffinate)の流れの出現に関する非常に厳密な制御が要求される。これらの条件の両方は特別な機器およびエネルギーを必要とし、これに対して、本発明では、使用される希釈剤により、プロセスの流れが単純化され、その結果、欧州特許第0417980号A1において生じる擬似ラフィネートの流れを層流状にすることができる。この欧州特許文献は、抽出カラムにおける温度の厳密な制御がカラムの上部部分で50℃〜90℃の範囲であり、カラムの下部部分において20℃〜60℃の範囲であることを記載する。この状況は本発明では起こらない。なぜならば、温度が22℃〜35℃(周囲温度)で抽出カラムの全体において等温的に制御されるからである。その結果、処理のための費用が欧州特許第0417980号A1の費用よりも安価になる。米国特許第6802960号B1の米国特許文書において述べられる前者の関連方法では、第2の抽出物製造物における芳香族化合物含有物の成分が最少20重量%であり、これに対して、本発明では、芳香族化合物の成分が25重量%を超えており、それどころか、31重量%〜37重量%にまで達し得ることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前者の方法は、本発明に最も関連するプロセスオイル製造の中で、欧州特許第0417980号A1のプロセスオイル製造に関する。この欧州特許文献では、使用される供給原料は、100℃の温度における動粘性率値が30.5cStの値に限定される抽出物であり、これに対して、本発明では、より柔軟性である。これは、使用されている抽出物供給原料は、100℃の温度における動粘性率の値が5cSt〜100cStの範囲にあり、好ましくは10cSt〜80cStであり、より好ましくは15cSt〜70cStであるからである。さらに欧州特許第0417980号A1の特許文献では、使用される処理方法が非常に複雑であることが見出され、例えば、温度システムおよび擬似ラフィネート(pseudo−raffinate)の流れの出現に関する非常に厳密な制御が要求される。これらの条件の両方は特別な機器およびエネルギーを必要とし、これに対して、本発明では、使用される希釈剤により、プロセスの流れが単純化され、その結果、欧州特許第0417980号A1において生じる擬似ラフィネートの流れを層流状にすることができる。この欧州特許文献は、抽出カラムにおける温度の厳密な制御がカラムの上部部分で50℃〜90℃の範囲であり、カラムの下部部分において20℃〜60℃の範囲であることを記載する。この状況は本発明では起こらない。なぜならば、温度が22℃〜35℃(周囲温度)で抽出カラムの全体において等温的に制御されるからである。その結果、処理のための費用が欧州特許第0417980号A1の費用よりも安価になる。米国特許第6802960号B1の米国特許文書において述べられる前者の関連方法では、第2の抽出物製造物における芳香族化合物含有物の成分が最少20重量%であり、これに対して、本発明では、芳香族化合物の成分が25重量%を超えており、それどころか、30重量%〜37重量%にまで達し得ることが記載されている。
【0010】
先行技術のTDAEの製造において使用される参照は、3重量%の最大含有量を有するPCA化合物であり、これに対して、本発明では、8種Grimmer PAHの要件を3重量%未満のPCAのレベルにおいて、かつ、3重量%〜20重量%の範囲にあるPCAレベルにおいて満足させるための努力がより好ましいことに留意されたい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態において、最初の供給原料、すなわち、DAE−1、DAE−2およびDAE−3が、2つのDAE供給原料または3つのDAE供給原料を一度に混合することからなるDAE供給原料に処理される。DAE−1、DAE−2およびDAE−3は、それぞれ異なる動粘性率を有する蒸留物芳香族抽出物(DAE)を表している。DAE供給原料の処方の成分を決定することが、これら3つのDAEの100℃の温度での動粘性率(すなわち、それぞれ、DAE−1:14cSt〜17cSt、DAE−2:19cSt〜35cSt、および、DAE−3:52cSt〜95cSt)に基づいて規定される。これら3つのタイプのDAEを混合することにより、100℃の温度における動粘性率が24cSt〜57cStほどであり、かつ、密度が0.99kg/リットル〜1.20kg/リットルであるDAE供給原料がもたらされる。
【0012】
本発明は、下記のような工程により行われるTDAE製造プロセスを開示する:上記混合プロセスから得られるDAE供給原料をインラインまたはオフラインで希釈剤と混合して、密度が0.75kg/リットル〜0.85kg/リットルであるDAE供給原料の混合物の流れを生じさせる工程;DAE供給原料の混合物の流れ方向を、等温温度条件を有する抽出器に向かわせる工程;DAE供給原料の混合物の流れをある種の溶媒(例えば、フルフラール、N−メチルピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)など)と接触させて、向流液液抽出を適切な等温温度(すなわち、22℃〜35℃)で行う工程。
【0013】
抽出カラムにおいて、ラフィネートの混合物と、抽出物の混合物との間における分離プロセスであって、両方の混合物の境界層を、カラムの下部区域に設置される制御機器を介して定めることができる分離プロセスが存在する。ラフィネートの混合物を形成するためのカラムにおける供給原料滞留時間は5分〜30分の範囲である。ラフィネート混合物の流れが、溶媒成分(フルフラール、NMPおよびDMSOなど)および希釈剤をラフィネートの混合物から分離して、最終製造物のいわゆるTDAEを製造するために溶媒回収装置に導かれる。本発明において、得られた2つのタイプのTDAE(TDAE−1およびTDAE−2)はともに、10mg/kg未満の8種Grimmer PAHおよび1mg/kg未満のBaPを含有する。TDAE−1は3重量%未満のPCAを含有し、一方、TDAE−2は3重量%〜20重量%のPCAを含有する。
【0014】
極性溶媒が依然として多い抽出物の混合物の流れが、非常に高い芳香族含有量の、いわゆる高芳香族濃度抽出物(HACE)を有する抽出物を取り出すために溶媒から分離され、これにより、溶媒成分(フルフラール、NMPおよびDMSOなど)と、次回の抽出プロセスで使用されるために1つの特定の容器に分離された希釈剤とが集められる。
【0015】
下記の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のいくつかの態様をさらに記載するために含まれる。本発明は、本明細書中に示される具体的な実施形態の詳細な記載との組み合わせでこの図面を参照することによってよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】DAE供給原料のブレンド混合、DAE供給原料の混合物、ならびに、TDAE−1およびTDAE−2の製造に関するプロセスの概略的な流れである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、本明細書中下記において例示されるような実施形態、ならびに、添付された図面に関連して記載されるが、それらは、本プロセスの詳細および操作の様式に関して本発明の最良の形態を表すために意図されないことを理解しなければならない。実際、様々な改変および変化が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることが、当業者には明白である。具体的な用語が用いられているが、それらは、一般的かつ記述的な意味において意図されるだけであり、限定する目的のためには意図されない。
【0018】
図1は、TDAE−1およびTDAE−2の製造の流れ図である。流れ(1、2および3)により、DAE供給原料(4)を得るための、1つ、2つまたは3つのタイプのDAEを混合するプロセスが例示される。この混合プロセスは、100℃の温度での所望される動粘性率(すなわち、24cSt〜67cSt、0.98kg/リットル〜1.20kg/リットルの密度)において行われる。処方の決定が、DAE−1、DAE−2およびDAE−3のそれぞれの各成分についての100℃の温度での動粘性率に基づく。混合プロセスはインラインまたはオフラインで行われ、容器における撹拌により完了する。DAE供給原料が利用可能となった後、プロセスは、DAE供給原料の混合物(6)を、希釈剤(5)をDAE供給原料の混合物の流れに溶解して、0.75kg/リットル〜0.85kg/リットルのDAE供給原料の混合物の密度を得ることによって作製し、さらには、抽出器(7)に導くことにより続けられる。同時に、極性溶媒(8)の流れが向流法によりDAE供給原料の混合物(6)と接触し続け、その結果、ラフィネート相の混合物(9)および抽出物相の混合物(12)を別々に形成する。その後、ラフィネート相の混合物および抽出物相の混合物は、回収装置(10および13)にそれぞれ導かれて、溶媒および希釈剤のすべてを連続再利用のために回収するのと同時に、TDAE−1およびTDAE−2の製造物と、HACE製造物(14)とをもたらす。
【0019】
本発明におけるTDAE−1およびTDAE−2の製造のためのプロセスは、DAE−1、DAE−2およびDAE−3の成分を混合することによってDAE供給原料を作製することによるか、または、ただ1つだけのタイプのDAEを使用することにより開始される。混合様式は、2つまたは3つのタイプの上記DAEに対して適用することができる。処方の決定は、DAE−1、DAE−2およびDAE−3の各成分についての100℃の温度での動粘性率に基づいており、その結果、それらにより、100℃における動粘性率が24〜67の間であり、かつ、密度が0.98kg/リットル〜1.20kg/リットルであるDAE供給原料がもたらされる。混合プロセスはインラインまたはオフラインで行われ、それらを容器において撹拌することにより完了する。
【0020】
その次のプロセスは、DAE供給原料と、C5〜C8の範囲にある炭素原子の鎖を有するアルカン化合物/パラフィンの希釈剤と混合することである。希釈剤と、DAE供給原料との間における混合の比率は0.3〜3.0であり、好ましくは1.0である。これは、DAE供給原料の流れの中への希釈剤の流れの量を制御することができ、かつ、DAE供給原料の流れの中への希釈剤の流れの量を定め、その結果、密度が0.75kg/リットル〜0.80kg/リットルの間であるDAE供給原料の混合物をもたらす機器を使用して行われる。
【0021】
その後、DAE供給原料の混合物のこの流れは、抽出器(7)での液液抽出プロセスにおける次回の供給原料になる。他に類を見ないが、この抽出器はいくつかの区画からなり、この場合、それぞれの区画が、1つの静的ディスクと、所望される操作条件に従って回転可能である1つのタービン攪拌機とを備える。タービン攪拌機は、完全な抽出プロセスが0.05kg/リットルの最少密度差で行われ得るように、流れのそれぞれを分散させて液滴になるように機能する。
【0022】
抽出器におけるDAE供給原料の混合物の抽出プロセスは、ある種の溶媒(例えば、フルフラール、NMPおよびDMSOなど)を極性溶媒として使用して行われる。操作条件は、75RPM〜100RPMの範囲にある攪拌機の回転速度、および、0.5〜2.0の範囲にある、ある種の溶媒(例えば、フルフラール、NMPおよびDMSOなど)と、DAE混合物供給原料との比率とともに、抽出器の上部および下部における等温温度が22℃〜35℃で達成されるような様式で定められる。DAE混合物供給原料に対する極性溶媒の比率が1.7〜2.0の範囲にある場合、10mg/kg未満のPAHおよび1mg/kg未満のBaPを含有し、かつ、3重量%未満のPCAを有するTDAE−1がもたらされる。加えて、DAE混合物供給原料に対する極性溶媒の比率が0.5〜1.7の範囲にあるときには、10mg/kg未満の8種Grimmer PAHおよび1mg/kg未満のBaPを含有し、かつ、3重量%未満のPCAを有するTDAE−2がもたらされる。
【0023】
抽出プロセスは、DAE供給原料の混合物を滞留させ、その結果、ラフィネートの混合物の層と、抽出物の混合物の層とが形成されるようにするために15分〜30分の時間を必要とする。このプロセスの間、他の通常の抽出プロセスで生じるような擬似ラフィネートは存在しない。
【0024】
2つの混合物(ラフィネートの混合物および抽出物の混合物)の境界層を、抽出器の下部部分に配置される制御機器を介して設定することができる。下部部分における制御機器の設置は、抽出物の望まれない流れ(エントレインメント)がラフィネートの流れの中に入り、これにより、ラフィネートの品質を低下させ得ることを防止するためである。
【0025】
ラフィネートの混合物は、ラフィネートをそのある種の溶媒成分(フルフラール、NMPおよびDMSOなど)および希釈剤から分離するための溶媒回収装置に導かれる。
【0026】
このプロセスから、最終製造物、すなわち、100℃の温度における動粘性率(ASTM D445−06)が16cStを超え、ASTM D2140−97の方法を使用して分析される芳香族成分が25重量%を超え、15.6℃における比重が0.9661〜0.9885の範囲にあり、アニリン点が43.0〜54.9℃の範囲にあり、20℃における屈折率が1.5379〜1.5546の範囲にあるTDAE−1またはTDAE−2が得られることになる。
【0027】
抽出物の混合物は、そのある種の溶媒成分(フルフラール、NMPおよびDMSOなど)からの抽出物分離プロセスのための回収装置に導かれる。このプロセスから、最終製造物、すなわち、HACEが得られる。
【0028】
溶媒回収装置からのある種の溶媒(フルフラール、NMPおよびDMSOなど)および希釈剤の流れが、希釈剤と、ある種の溶媒(フルフラール、NMPおよびDMSOなど)との間での分離プロセスが後で行われる1つの特定のデカンター(容器)に集められる。これらの流れの両方が、連続運転される抽出プロセスに戻される。
【0029】
製造されているTDAE−1およびTDAE−2は、発ガン性物質の含有物に起因するその不良な健康影響のためにその適用から完全に排除されることになるDAEに取って代わって、タイヤ製造および印刷インクにおけるプロセスオイルとして利用される。
【実施例】
【0030】
<実施例1:DAE供給原料の調製>
DAE−1、DAE−2およびDAE−3の抽出物が、表1に示され得るようなそれらの特性に従ってそれぞれ調製される。2つまたは3つのDAEを混合するプロセスが、100℃の温度において24cSt〜67cStである所望される動粘性率で行われる。処方の決定は、それらにより、所望物がもたらされ得るように、DAE−1、DAE−2およびDAE−3のそれぞれ各成分の動粘性率に基づく。DAE供給原料の混合プロセスがインラインまたはオフラインで行われ、それらを容器において撹拌することにより完了する。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
例えば、表3に開示される8種Grimmer PAH含有物の量は106,890mg/kgである。本発明のプロセスでは、TDAE製造物は、1mg/kg未満の量によるベンゾ(a)ピレンを含めて、10mg/kgに低下し得ることが見出される。
【0034】
<実施例2:供給原料の混合物の調製>
DAE供給原料が、C5〜C8の炭素鎖を有する非極性の脂肪族希釈剤と、0.3〜3.0の間における希釈剤対DAE供給原料の比率により混合される。供給原料混合プロセスは25℃〜70℃の温度で実行される。混合プロセス後の密度に関するデータは表4に示される。
【0035】
【表4】
<実施例3:液液抽出のプロセス>
プロセスオイルを製造するための液液抽出のプロセスが、22℃〜50℃の温度で抽出カラムにおける向流法を使用して行われる。
【0036】
上記の液液抽出プロセスの結果から、40重量%〜50重量%の間および50重量%〜70重量%の間におけるTDAE−1製造物およびTDAE−2製造物の収率が、操作条件については表5に、化学的特性については表6に、そして、物理的特性については表7に示されるようにそれぞれ得られる。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
例えば、表6は、8種Grimmer PAH含有物の量が0.001mg/kg〜0.273mg/kgであることを開示しており、この値は、欧州法によって許容される種Grimmer PAHの限界(10mg/kg)をはるかに下回っていると見なされ、これに対して、ベンゾ(a)ピレンの最大含有量が、欧州法の許容可能限界(1mg/kg)を依然として下回っている0.033mg/kgであることが見出される。本発明のいくつかの実験において、TDAE製造物が、3重量%未満のPCA限界を満たすのと同時に、欧州法の8種Grimmer PAH許容可能限界を満たし得ることが見出される。しかしながら、他の実験に関しては、PCA含有量は3重量%を超えており、それどころか、13.2重量%もの高さであるが、TDAEは、同じ8種Grimmer PAH限界を満たすことができる。この事実は、それらの1つが1mg/kg未満の量でのベンゾ(a)ピレンであるが、8種Grimmers PAH含有物の量を実質的には10mg/kg未満に制限する欧州法のためには非常に有用である。その上、本発明は、芳香族成分含有量が、ASTM D2140−97法を使用することによって25%を超え、それどころか、31%〜37%に達し得る他のTDAE製造物と比較して、より良好な品質を有するTDAE製造物を提供するために、ゴム産業のための新しい利益をもたらすことは、欧州法のために有用である。
【0039】
【表7】
<実施例4 DAE供給原料、TDAE−1およびTDAE−2に対するAMES試験>
変異原性試験を、化学物質の試験のためのOECD指針(No.471(1997))に基づくAMES試験を使用して行った。この試験では、サルモネラ・チフィムリウムTA1535が、変異原性化合物に対して非常に感受性があった微生物材料として使用された。成長したコロニーの数が、DAE供給原料、TDAE−1およびTDAE−2においてそれぞれ、PAH化合物の変異原性活性の指標であった。表8に示されるようなAMES試験に基づいて、下記の結論が引き出される:
1.DAE供給原料における細菌コロニーは、コントロール(コロニーの自然復帰)において成長した細菌コロニーよりも4倍成長した。このことは、DAE供給原料製造物が変異原性または発ガン性の化合物として分類され得ることを示している。
【0040】
2.TDAE−1およびTDAE−2における細菌コロニーの数はコントロール(コロニーの自然復帰)における数と類似していた。このことは、TDAE−1製造物およびTDAE−2製造物が非変異原性または非発ガン性の化合物として分類され得ることを示している。
【0041】
【表8】
<本出願の明細書において使用される用語および定義>
本出願の明細書において、「液液抽出」は、溶解性物質(溶質)を供給原料材から抽出するために溶媒と接触させられる供給原料への物質移動の操作の方法に基づく技術プロセスである。供給原料材は、キャリアおよび溶質からなるので、希釈剤よりも大きい溶解性を有する溶質のみが溶媒に移行し得るように、溶媒と混合することができない性質(非混和性)、または、溶媒と部分的に混合することができる性質(混和性)を有しなければならない。
【0042】
「希釈剤」は、供給原料材の密度を低下させるために使用されるアルカン化合物である。
【0043】
「抽出器」は、本発明の実験で使用されるタイプの撹拌カラム抽出器(これは以降、抽出器と呼ばれる)である。この抽出器の主要部は、流体力学的条件で操作することができ、かつ、液滴が散らばることを生じさせるためのスターラーとして役立つタービン攪拌機である。
【0044】
「PCAまたは多環芳香族」は、分岐鎖の有無にかかわりなく、3環以上の芳香族化合物からなる有機化合物であり、この場合、PCAには、PAH(多環芳香族炭化水素)化合物、および、ヘテロ原子(窒素(N)、イオウ(S)および酸素(O)など)を含有する有機化合物が含有される。PAHとしてグループ分けされるすべての化合物が、発ガン性を有するとは限らない。
【0045】
「PAHまたは多環芳香族炭化水素」は、芳香族環が結合することからなる化学化合物で、ヘテロ原子または他の置換基を含有せず、炭素分子および水素分子からなるものである。23タイプの個々のPAH化合物がDAE供給原料には存在しており、この場合、それらのうちの8タイプが発ガン性物質として明言されるか、または、8種Grimmer PAHと呼ばれる。
【0046】
「プロセスオイル」は、芳香族化合物が多く存在し、タイヤ作製において溶媒として使用されるか、または、印刷インク産業において溶媒としても使用され得るオイルである。
【0047】
「IP346」は、PCAを、アスファルテンを含有しない潤滑油または石油分画物において求めるための標準方法である。
本発明が、本明細書中下記において例示されるような実施形態、ならびに、添付された図面に関連して記載されるが、それらは、プロセスの詳細および操作の様式に関して本発明の最良の形態を表すために意図されないことを理解しなければならない。実際、改変および変化が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることが、当業者には明白である。具体的な用語が用いられているが、それらは、一般的かつ記述的な意味において意図されるだけであり、限定する目的のためには意図されない。
図1