(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750512
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04F 5/20 20060101AFI20150702BHJP
F04F 5/44 20060101ALI20150702BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
F04F5/20 D
F04F5/44 D
F04D25/08 A
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-534379(P2013-534379)
(86)(22)【出願日】2011年9月26日
(65)【公表番号】特表2013-545008(P2013-545008A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】GB2011051816
(87)【国際公開番号】WO2012052737
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2013年6月19日
(31)【優先権主張番号】1017707.9
(32)【優先日】2010年10月20日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1017706.1
(32)【優先日】2010年10月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508032310
【氏名又は名称】ダイソン テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】スティックニー ティモシー ニコラス
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−203441(JP,A)
【文献】
特開昭46−007230(JP,A)
【文献】
特開2010−077969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04F 5/20
F04F 5/44 − 5/46
F04D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル及び該ノズルを通る一次空気流を生成する手段を備える送風機において、前記ノズルは、前記一次空気流を噴出する少なくとも1つの出口を備えるとともに、前記少なくとも1つの出口から噴出される前記一次空気流によって、前記送風機の外側からの二次空気流がそこを通って引き込まれ、前記二次空気流が前記一次空気流と合体して合体空気流を生成するボアを規定し、
前記ノズルの前記ボア内に少なくとも部分的に配置可能であり、前記合体空気流の少なくとも1つのパラメータを調節するインサートを備え、
前記インサートは、前記ノズルのボア内に同時に配置できる複数の相互連結セクションを備える、ことを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記インサートは、前記ノズルの前記ボア内で回転可能である、請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記インサートは、環状形状である、請求項1又は2に記載の送風機。
【請求項4】
前記インサートは、前記ノズルの前端部の上に配置可能なリムを備える、請求項1から3のいずれかに記載の送風機。
【請求項5】
前記インサートは、後端部に向かってテーパ付けされる、請求項1から4のいずれかに記載の送風機。
【請求項6】
前記インサートは、前記インサートが前記ノズル内に配置される場合、前記少なくとも1つの出口から噴出される前記一次空気流によって、前記送風機の外側からの前記二次空気流がそこを通って引き込まれるボアを規定する表面を備える、請求項1から5のいずれかに記載の送風機。
【請求項7】
前記インサートが前記ノズル内に配置される場合、前記インサートのボアは、前記ノズルのボアと実質的に同軸である、請求項6に記載の送風機。
【請求項8】
前記インサートが前記ノズル内に配置される場合、前記ノズルの少なくとも1つの出口は、前記インサートのボアを通る前記一次空気流を案内するようになっている、請求項6又は7に記載の送風機。
【請求項9】
前記表面は、軸線の周りに延びる、請求項6から8のいずれかに記載の送風機。
【請求項10】
前記表面の少なくとも一部は、前記軸線に対して傾斜している、請求項9に記載の送風機。
【請求項11】
前記表面の前記少なくとも一部が前記軸線に対して傾斜する角度は、前記軸線の周りで変化する、請求項10に記載の送風機。
【請求項12】
前記表面の前記少なくとも一部が前記軸線に対して傾斜する角度は、前記軸線の周りで連続的に変化する、請求項10又は11に記載の送風機。
【請求項13】
前記セクションは、実質的に同じ形状である、請求項1から12のいずれかに記載の送風機。
【請求項14】
前記セクションは、実質的にくさび形である、請求項1から13のいずれかに記載の送風機。
【請求項15】
前記セクションは、前記軸の周りに配置される、請求項1から14のいずれかに記載の送風機。
【請求項16】
前記セクションは、前記軸線の周りに一定の間隔で離間されている、請求項15に記載の送風機。
【請求項17】
前記セクションの各々は、前記軸線に対して傾斜した表面を備える、請求項1から16のいずれかに記載の送風機。
【請求項18】
前記ノズルの少なくとも1つの出口は、前記一次空気流を、前記インサートの前記セクションの表面上へ向けるように構成される、請求項17に記載の送風機。
【請求項19】
前記合体空気流の少なくとも1つのパラメータは、前記合体空気流のプロフィール、方位、方向、流量、及び速度のなかの少なくとも1つを備える、請求項1から18のいずれかに記載の送風機。
【請求項20】
前記ノズルの少なくとも1つの出口は、前記軸線の周りに延びる、請求項1から19のいずれかに記載の送風機。
【請求項21】
前記ノズルの少なくとも1つの出口は、スロットの形態である、請求項1から20のいずれかに記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機に関する。特に、限定されるものではないが、本発明は、机上型、タワー型、又は台座型送風機のような床上又は卓上送風機組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の家庭用送風機は、通常、軸線の周りで回転するように取り付けられたブレードセット又はベーンセットと、ブレードセットを回転させて空気流を発生させる駆動装置とを備える。空気流の移動及び循環が「風冷」又は微風を引き起こし、結果的に、ユーザは、対流及び蒸発により熱が放散する際に冷却効果を体感する。一般的に、ブレードは、ケージ内に配置されており、ユーザが送風機の使用中に回転ブレードに接触するのを防止しながら、空気流がハウジングを通過することが可能になっている。
【0003】
国際公開第2009/030879号には、送風機組立体から空気を放出するためにケージブレードを使用しない送風機組立体が開示されている。送風機組立体は、代わりに、一次空気流を基部に引き込むモータ駆動式インペラを収容する円筒形基部と、該基部に連結され一次空気流が通って送風機から噴出される環状マウス部を含む環状ノズルとを備える。ノズルは、送風機組立体の局部的環境の空気がマウス部から噴出される一次空気流によって引き込まれる開口部を規定し、一次空気流を増幅する。ノズルは、コアンダ面を含み、マウス部はコアンダ面上に一次空気流を向けるように構成されている。コアンダ面は、開口部の中心軸の周りを対称に延び、送風機組立体が発生する空気流は、円筒形又は切頭円錐形プロフィールを有する環状噴流の形態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/030879号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、ノズル及び該ノズルを通る一次空気流を生成する手段を備える送風機を提供する。ノズルは一次空気流を噴出する少なくとも1つの出口を備え、ノズルは、少なくとも1つの出口から噴出される一次空気流によって、送風機の外側から二次空気流がそこを通って引き込まれ、二次空気流が一次空気流と合体して合体空気流を生成するボアを規定する。ユーザが合体空気流の少なくとも1つのパラメータを調節可能とするために、送風機はノズルのボア内に少なくとも部分的に配置可能なインサートを備える。
【0006】
合体空気流の少なくとも1つのパラメータは、例えば、合体空気流のプロフィール、方位、方向、流量(例えば、1秒当たりのリットルで測定する)、及び速度のなかの少なくとも1つを含むことができる。従って、ノズルのボア内にインサートを配置することで、ユーザは、合体空気流が送風機から前方に放出される方向、例えば、送風機の近くの人に向かう又はこれから離れる空気流の角度を調節できる。代替的に又は追加的に、インサートは、合体空気流のプロフィールを拡大又は制限して、空気流路内のユーザ数を増加又は低減することができる。別の代替案として、インサートは、空気流の向きを変更することができ、多くのユーザを涼しくする比較的広い空気流を提供するようになっている。
【0007】
インサートは、ノズルのボア内で移動可能とすることができ、例えば、ユーザは、合体空気流が送風機から前方へ放出される方向を速やかに変更することができる。例えば、インサートは、ノズルのボア上を及び/又はこれに沿って摺動することができ、又はインサートは、ノズルのボア内で回転することができる。ノズルは、ボアに対するインサートの移動を案内する手段を含むことができる。
【0008】
インサートは、空気流を所望の方法で変更するのに適した任意の形状を有することができる。例えば、インサートは、ノズルのボア内に配置できる1つ又はそれ以上のセクションを備えることができ、このセクションは、合体空気流を特定の方向に、例えば、送風機の片側の人に向けて又はこの人から離れるように偏向するようになっている。1つの実施形態において、インサートは、ノズルのボア内に同時に配置可能な複数の相互連結可能なセクションを備える。これらのセクションは実質的に同じ形状とすること、又は異なる形状とすることができる。このセクションは、ノズルの後端部に向かってテーパ付けされたくさび形とすることができる。このセクションは軸線の周りに配置できる。インサートがノズル内に配置される場合、インサートは、好ましくは、ノズルの軸線と実質的に同軸である。セクションは、軸線の周りで一定の間隔で又は不規則に離間することができる。
【0009】
インサートは、ノズルのボア内に部分的に配置することができ、例えば、インサートの一部がノズルの前端部から前方へ突出して、合体空気流の一部又は全てを特定の方向へ案内する。もしくは、インサートは、実質的に完全にノズルのボア内へ配置することができる。ノズルのボアは、好ましくは、ボアの前端部に向かって外側へテーパ付けされるので、インサートは、好ましくは、ノズルの前端部からボアへ挿入される。インサートは、環状形状とすることができる。インサートは、ノズルの前端部の上に配置可能なリムを備えることができ、インサートをノズルのボア内で保持するようになっている。
【0010】
ノズルの少なくとも1つの出口は、ノズルの後部に面して配置することができ、ノズルのボアを通る一次空気流を噴出するように構成される。前述したように、ノズルは、好ましくは、ノズルのボアを規定する表面を備え、少なくとも1つの出口は、好ましくは、一次空気流をノズルの表面上へ向けるように構成されている。好ましくは、その上に一次空気流を向けるように少なくとも1つの出口が配置される表面は、コアンダ面を備える。コアンダ面は、隣接する出口オリフィスから流出する空気流がその上でコアンダ効果を発揮する公知の形式の表面である。流体はコアンダ面上に接近して、ほぼコアンダ面に「くっついて」又は「沿って」流れる傾向がある。コアンダ効果は、文献で十分に証明された同伴方法であり、一次空気流はコアンダ面の上に向けられる。コアンダ面の機能及びコアンダ面上の流体の作用に関する記載は、Reba著「Scientific American」、214巻、1966年6月、84から92ページの文献に見出すことができる。コアンダ面を使用することで、ノズルから噴出される空気によって、送風機の外側から増量した空気がボアを通って引き込まれる。
【0011】
好ましい実施形態において、空気流は、送風機のノズルを介して生成される。以下の記載では、この空気流は一次空気流と呼ぶ。一次空気流は、ノズルの少なくとも1つの出口から噴出され、好ましくは、コアンダ面の上を通る。一次空気流は、ノズルを取り囲む空気を同伴し、これは一次空気流及び同伴空気をユーザに供給する空気増幅部として作用する。同伴空気は本明細書では二次空気流と呼ぶ。二次空気流は、マウスを取り囲む室内空間、領域、又は外部環境から、及び置換により送風機の周りの他の領域から引き込まれ、主としてノズルが規定するボアを通って流れる。コアンダ面の上に向けられ、同伴された二次空気流と合体される一次空気流は、ノズルのボアの前端部から前方へ放出又は噴出される合体又は総体空気流と同じである。
【0012】
コアンダ面は、少なくとも1つの出口の下流に配置されたディフューザ部を備えることができる。ディフューザ部は、好ましくは、軸線の周りに延び、好ましくは、軸線に向かって又はこれから離れるようにテーパ付けされている。
【0013】
インサートは、好ましくは、ノズルのコアンダ面の少なくとも一部を覆い、ノズルのボア内へ挿入可能なマスクの形態で設けることができる。インサートは、好ましくは、コアンダ面のディフューザ部の少なくとも一部を覆う。インサートが複数の相互連結セクションを備える場合、各セクションはコアンダ面のディフューザ部のそれぞれの一部を覆うことができる。
【0014】
多数の相互連結セクションを有するインサートを設ける代替案として、インサートは、該インサートがノズル内に配置される場合、マウス部から噴出される空気流によって、送風機の外側の空気がそこを通って引き込まれるボアを規定する表面を備えることができる。このインサートは、コアンダ面の環状部分、好ましくは、少なくともコアンダ面のディフューザ部、より好ましくは、コアンダ面のディフューザ部の実質的に全てを覆うことができる。インサートがノズル内に配置される場合、インサートのボアは、好ましくは、ノズルのボアと実質的に同軸である。ノズルの少なくとも1つの出口は、好ましくは、インサートのボアを通る一次空気流を案内するように構成されている。
【0015】
インサートの表面は、好ましくは、軸線の周りに延び、その表面の少なくとも一部は、好ましくは、軸線に対して傾斜している。インサートの表面の軸線に対する傾斜は、好ましくは、コアンダ面のディフューザ部の傾斜とは異なる。この場合、ノズルのボア内にインサートを配置すると、合体空気流の流量及び速度を変更できる。例えば、インサートの表面の軸線に対する傾斜角が、コアンダ面のディフューザ部の軸線に対する傾斜角よりも浅い場合、インサートがノズル内に配置すると合体空気流の流量は低減するが、合体空気流の速度は高くなる。
【0016】
インサートの実質的に全ての表面は、軸線に対して同じ大きさで傾斜できるので、表面は、円筒形又は切頭円錐形とすることができる。傾斜角は、−15度から35度の範囲とすることができる。代替的に、傾斜角は軸線の周りで変化することができる。軸線の周りの傾斜角の変化によって、インサートがノズルのボア内に配置される場合、送風機が発生する空気の流れは、非円筒形又は非切頭円錐形のプロフィールを有することができる。角度は、表面に沿って、つまり軸線の周りにおいて、少なくとも1つの最大値と少なくとも1つの最小値との間で変化することができる。好ましくは、角度は、表面に沿って、複数の最大値と複数の最小値との間で変化することができる。好ましい実施形態において、角度は、表面に沿って、6つの最大値と6つの最小値との間で変化することができる。最大値及び最小値は、好ましくは、軸線の周りに一定の間隔で離間される。最小値は−15度から15度の範囲とすることができるが、一方で最大値は20度から35度の範囲とすることができる。好ましい実施形態において、最大値は最小値の少なくとも2倍である。傾斜角は、軸線の周りで連続的に又は非連続的に変化することができる。
【0017】
送風機は、ノズルのボア内に交換可能に配置できるインサートのセットを備えることができ、従って、第2の態様において、本発明は、ノズル及び該ノズルを通る一次空気流を生成する手段を備える送風機を提供し、ノズルは、一次空気流を噴出する少なくとも1つの出口を備え、ノズルは、少なくとも1つの出口から放出される一次空気流によって、送風機の外側の二次空気流がそこを通って引き込まれ、二次空気流が一次空気流と合体して合体空気流を生成するボアを規定し、送風機は、ノズルのボア内に交換可能に配置でき、合体空気流のパラメータの少なくとも1つを調節する複数のインサートを備え、各インサートはそれぞれ異なるプロフィールを有する。例えば、前述したように、インサートの1つは、複数の相互連結セクションを備えることができ、インサートの別の1つは、ノズルのマウス部から噴出される一次空気流によって二次空気流がそこを通って引き込まれボアを備えることができる。
【0018】
少なくとも1つの出口は、好ましくは、ノズルのボアの周りに延びる。ノズルは、ボアの周りで連続する単一の出口を備えることができ、実質的に円形形状とすることができる。好ましくは、出口におけるノズルの対向する各表面の間の間隔は、好ましくは、0.5mmから5mmの範囲である。出口又は各出口は、好ましくは、スロットの形態とすることができる。
【0019】
ノズルは、好ましくは、空気流を生成する手段を収容する基部の上に取り付けられる。好ましい実施形態において、ノズルを通る空気流を生成する手段はモータ式インペラを備える。
【0020】
インサートは、送風機とは別に設けることができるので、第3の態様において、本発明は、一次空気流を噴出する少なくとも1つの出口と、少なくとも1つの出口から噴出される一次空気流によって送風機の外側の二次空気流がそこを通って引き込まれ、二次空気流が次空気流と合体して合体空気流を生成するボアとを有するノズルを備える送風機用付属品を提供し、付属品は、ノズルの上、好ましくはノズルのボア内に配置可能である。
【0021】
前述のように、付属品は、合体空気流の少なくとも1つのパラメータを変更できる。しかしながら、付属品は、ユーザに代替的な又は追加的な恩恵をもたらすことができる。例えば、付属品は、送風機のノズルとは異なる色を有すること及び/又は送風機のノズルとは異なる材料から形成することできる。付属品は、発光性の材料から形成することができ、又は1つ又はそれ以上の発光ダイオード(LED)又は他の発光手段を備えることができる。付属品は、絵、写真、又は他のアイテムを支持するように構成できる。例えば、付属品は、文房具、お金、鍵、リモコン装置等の1つ又はそれ以上のアイテムを保持するハウジングを備えることができる。付属品は、ノズルの前端部にクリップ留めすることができる。付属品は、体温計、気圧計、カメラ、ディスプレイ、時計、ラジオ、又は他の電子デバイス又は機械デバイスを備えることができる。
【0022】
第4の態様において、本発明は、ノズル及び該ノズルを通る空気流を生成する手段を備える送風機を提供し、ノズルは、内部通路と、該内部通路から空気流を受け入れる少なくとも1つの出口と、該少なくとも1つの出口に隣接して配置されかつその上に空気流を向けるように少なくとも1つの出口が配置されるコアンダ面とを備え、送風機は、コアンダ面の少なくとも一部を覆う取り外し可能なマスクを備える。
【0023】
本発明の第1の態様に関連して前述した特徴は、本発明の第2から第4の態様にも同様に適用可能であり、逆も同じである。
以下に、例示的に本発明の好ましい特徴を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】送風機用のインサートを上方から見た正面斜視図である。
【
図4】インサートがノズルボアに配置された送風機を上方から見た正面斜視図である。
【
図8】
図7のラインA−Aに沿った側面断面図である。
【
図9】第2の送風機用インサートを上方から見た正面斜視図である。
【
図10】第2のインサートがノズルボアに配置された送風機を上方から見た正面斜視図である。
【
図11】第3の送風機用インサートを上方から見た正面斜視図である。
【
図12】第3のインサートがノズルボアに配置された送風機を上方から見た正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、送風機10の外観図である。送風機10は、一次空気流が送風機10に流入する空気入口14を有する本体12と、該本体12に取り付けられる環状ケーシングの形態のノズル16とを含み、ノズルは、送風機10から一次空気流を噴出するマウス部18を備える。
【0026】
本体12は、実質的に円筒形の下側本体セクション22上に取り付けられ、実質的に円筒形の主本体セクション20を備える。主本体セクション20及び下側本体セクション22は、好ましくは、実質的に同じ外径を有し、上側の主本体セクション20の外面は下側本体セクション22の外面と実質的に面一になっている。本実施形態では、本体12は、100mmから300mmの範囲の高さ、及び100mmから200mmの範囲の直径を有する。
【0027】
主本体セクション20は、一次空気流がそこを通って送風機10に流入する空気入口14を備える。本実施形態では、空気入口14は、主本体セクション20に形成された開口アレイを備える。代替的に、空気入口14は、主本体セクション20に形成された窓内に取り付けられる1つ又はそれ以上のグリル又はメッシュを備えることができる。主本体セクション20は上端で開放されており(図示のように)、一次空気流が本体12から排出される空気出口23を提供するようになっている。
【0028】
主本体セクション20は、下側本体セクション22に対して傾くことができ、一次空気流が送風機10から噴出する方向を調節するようになっている。例えば、下側本体セクション22の上面及び主本体セクション20の下面は、主本体セクション20の下側本体セクション22から持ち上がるのを防止しながら、主本体セクション20が下側本体セクション22に対して移動することを可能にする、相互連結機構を備えることができる。例えば、下側本体セクション22及び主本体セクション20は、連動L字形部材を備えることができる。
【0029】
下側本体セクション22は、送風機10のユーザインタフェースを備える。ユーザインタフェースは、ユーザが送風機10の種々の機能を制御することを可能にする複数のユーザ操作可能ボタン24、26、ダイアル28、並びにボタン24、26及びダイアル28に接続されたユーザインタフェース制御回路30を備える。下側本体セクション22は、送風機10が配置される表面と係合する基部32上に取り付けられる。
【0030】
図2は、送風機の本体の断面図である。下側本体セクション22は、ユーザインタフェース制御回路30に接続される、全体を符号34で示す主制御回路を収容する。ユーザインタフェース制御回路30は、ボタン24、26、及びダイアル28の操作に応答して適切な信号を主制御回路34に伝達し、送風機10の様々な動作を制御するように構成されている。
【0031】
また、下側本体セクション22は、下側本体セクション22を基部32に対して周期的に往復させる、全体を符号36で示す機構を収容する。往復機構36の動作は、ボタン26のユーザ操作に応答して主制御回路34により制御される。基部32に対する下側本体セクション22の各往復サイクルの範囲は、好ましくは、60度から120度であり、本実施形態では約80度である。本実施形態では、往復機構36は、毎分約3回から5回の往復サイクルを実行するように構成されている。送風機10に電力を供給する主電源ケーブル38は、基部32に形成された開口を通って延びる。ケーブル38は、主電力供給源への接続プラグ(図示せず)に接続されている。
【0032】
主本体セクション20は、一次空気流を空気入口14から本体12に引き込むインペラ40を収容する。好ましくは、インペラ40は、混成流インペラの形態である。インペラ40は、モータ44から外向きに延びる回転軸42に連結されている。本実施形態では、モータ44は、ダイアル28のユーザ操作に応答して主制御回路34により速度が可変とされたDCブラシレスモータである。モータ44の最大速度は、好ましくは、5,000rpmから10,000rpmの範囲にある。モータ44は、下側部分48に連結された上側部分46を備えるモータバケットに収容されている。モータバケットの上側部分46は、らせん状ブレードを有する固定ディスクの形態のディフューザ50を備える。
【0033】
モータバケットは、略切頭円錐状のインペラハウジング52内に配置され、これに取り付けられている。次に、インペラハウジング52は、基部12の主本体セクション20内に配置されてこれに連結された複数の角度的に離間した支持体54、本実施例では3つの支持体に取り付けられる。インペラ40及びインペラハウジング52は、インペラ40がインペラハウジング52の内面に接近するが接触しないように形作られている。実質的に環状の入口部材56は、インペラハウジング52の底部に連結され、一次空気流をインペラハウジング52に案内するようになっている。電気ケーブル58は、主制御回路34から、本体12の主本体セクション20及び下側本体セクション22、並びにインペラハウジング52及びモータバケットに形成された開口を通って、モータ44へ延びている。
【0034】
好ましくは、本体12は、該本体12からのノイズ放出を低減する消音発泡体を備える。本実施形態では、本体12の主本体セクション20は、空気入口14の下に配置される第1の発泡部材60と、モータバケット内に配置される第2の環状発泡部材62とを備える。
【0035】
可撓性シール部材64は、インペラハウジング52に取り付けられている。可撓性シール部材は、空気がインペラハウジング52の外面の周りを通って入口部材56へ移動することを防止する。シール部材64は、好ましくはゴム製の環状リップシールを備えることが好ましい。更に、シール部材64は、電気ケーブル58をモータ44へ案内するグロメットの形態のガイド部を備える。
【0036】
図1に戻って、ノズル16は、環状形状を有し、中心軸Xの周りに延びてボア70を形成するようになっている。マウス部18は、ノズル16の後方に向けて配置され、一次空気流がボア70を通って送風機10の前方に噴出するように構成されている。マウス部18はボア70を取り囲んでいる。本実施例では、ノズル16は、中心軸Xの周りに延びる略円形のボア70を規定する。ノズル16の最も内側の外面は、マウス部18に隣接して配置されるコアンダ面72を備え、マウス部18は、送風機10から噴出された空気がコアンダ面を向くように配置される。コアンダ面72は、中心軸Xから離れるようにテーパ付けされるディフューザ部74を備える。本実施例において、ディフューザ部74は、軸線Xの回りに延びる略切頭円錐面の形態であり、軸線Xに対して5度から35度の範囲、本実施例では約28度だけ傾斜している。
【0037】
ノズル16は、環状の後部ケーシングセクション78に連結され、この周りに延びる環状の前部ケーシングセクション76を備える。ノズル16の環状セクション76、78は、中心軸Xの周りに延びる。これらのセクションの各々は、複数の連結部品から形成することができるが、本実施形態では、前部ケーシングセクション76及び後部ケーシングセクション78の各々は、単一の成形部品から形成されている。後部ケーシングセクション78は、本体12の主本体セクション20の開放した上端に連結される基部80を備え、基部は、本体12から一次空気流を受け入れる開放した下端を有する。
【0038】
また、
図2を参照すると、組立時、後部ケーシングセクション78の前端部82は、前部ケーシングセクション76に設けられたスロット84へ挿入される。前端部82及びスロット84の各々は、略円筒形状である。ケーシングセクション76、78は、スロット84に導入された接着剤を使用して結合することができる。
【0039】
前部ケーシングセクション76は、ノズル16のコアンダ面72を規定する。前部ケーシングセクション76及び後部ケーシングセクション78は協働して、一次空気流をマウス18へ送る内部通路88を形成する。内部通路88は、軸線Xの周りに延び、前部ケーシングセクション76の内面90及び後部ケーシングセクション78の内面92により境界付けされる。前部ケーシングセクション76の基部80は、一次空気流をノズル16の内部通路88へ送るように形作られている。
【0040】
マウス部18は、後部ケーシングセクション78の内面92と前部ケーシングセクション76の外面94のそれぞれの部分を重ねるか又は向かい合わせることにより形成される。マウス部18は、好ましくは、環状スロットの形態の空気出口を備える。スロットは、好ましくは、形状が略円形であり、好ましくは、0.5mmから5mmの範囲の比較的一定の幅を有する。本実施例において、空気出口の幅は約1mmである。スペーサはマウス部18の周りに間隔を置いて配置することができ、前部ケーシングセクション76及び後部ケーシングセクション78のオーバーラップ部が離間するようにして、マウス部18の空気出口の幅を制限するようになっている。これらのスペーサは、前部ケーシングセクション76又は後部ケーシングセクション78の何れかと一体化することができる。マウス部18は、一次空気流を前部ケーシングセクション76の外面94上に向けるように形作られている。
【0041】
送風機10の作動に際し、ユーザはユーザインタフェースのボタン24を押圧する。ユーザインタフェース制御回路30は、この操作を主制御回路34へ伝え、これに応答して、主制御回路34は、モータ44を駆動してインペラ40を回転させる。インペラ40の回転は、空気入口14を通って本体12内へ引き込まれる一次空気流を引き起こす。ユーザは、ユーザインタフェースのダイアル28を操作することにより、モータ44の速度、従って空気入口14を通って本体12内へ引き込まれる空気の割合を制御することができる。インペラ40が発生する一次空気流は、モータ44の速度に応じて、毎秒10リットルと30リットルの間とすることができる。一次空気流は、順にインペラハウジング52及び主本体セクション20の開放上端の空気出口23を通過して、ノズル16の内部通路88に入る。本体12の空気出口23の一次空気流の圧力は、少なくとも150Paとすることができ、好ましくは、350Paから1.5kPaの範囲とすることができる。
【0042】
ノズル16の内部通路88内で、一次空気流は、ノズル16のボア70の周りを反対方向に流れる2つの空気ストリームに分流される。空気ストリームが内部通路88を通る際に、空気は、マウス部18から噴出される。マウス部18から噴出される一次空気流は、ノズル16のコアンダ面72の上に向けられ、外部環境からの、特にマウス部18の周りの領域からの及びノズル16の後部の周りからの空気の同伴することにより、二次空気流が発生する。二次空気流は、ノズル16のボア70を通って流れ、そこで、二次空気流は一次空気流と合体して、ノズル16から前方へ噴出される合体空気流又は総体空気流、或いは空気の流れを生成する。
【0043】
図3から
図8を参照すると、送風機10は、ノズルのコアンダ面72上に取り外し可能に配置でき合体空気流の少なくとも1つのパラメータを変更する、第1の実施例のマスク100を含む。マスク100は、ノズル16のボア70に挿入可能でノズル16のコアンダ面72の少なくとも一部を覆うインサートの形態である。コアンダ面72のディフューザ部74つまりボア70は、ボア70の開放前端部96に向かって外向きにテーパ付けされるので、マスク100は、ボア70の開放前端部96からノズル16のボア70に挿入される。マスク100は、ボア70の前端部96に配置可能な外側環状リム102を含み、外側環状リム102は、マスク100がノズル16上に配置される場合、ノズル16の前部ケーシングセクション76の外面を取り囲む。本実施例において、マスク100は、ノズル16とマスク100との間の締まりばめによってノズル16上に保持されているが、ノズル16は、マスク100をノズル16に対して取り外し可能に固定する手段を備えることができる。例えば、可動キャッチは、ノズル16の前部ケーシングセクション76の外面に配置して、マスク100をノズル16上に保持することができる。別の実施例として、マスク100は、ノズル16に対して磁気吸着することができる。更なる実施例として、マスク100は、ノズル16に対して摩擦結合することができる。
【0044】
マスク100を取り外すためには、ユーザは、マスク100をノズル16から引っ張るだけでよい。
【0045】
マスク100は、略環状形状である。マスクは、略円形の前端部104及び略円形の後端部106、並びにマスク100の前端部104と後端部106との間にそれぞれ延びる環状外面108及び環状内面110を備える。
図2を参照すると、マスク100の外面108及び内面110の各々は、マスク100がノズル16のボア70に挿入される場合、軸線Xと実質的に同軸の軸線Yの周りに延びる。マスク100の外面108は、コアンダ面のディフューザ部74とほぼ同じ寸法及び形状を有する。特に、外面108の軸線Yに対する傾斜角は、コアンダ面72のディフューザ部74の軸線Xに対する傾斜角と実質的に同じである。結果的に、
図8に示すように、マスク100がノズル16のボア70に挿入される場合、コアンダ面72のディフューザ部74は、マスク100により完全に覆われるが、ノズル16のマウス部18は完全に露出したままである。
【0046】
従って、
図8に示すように、マスク100がボア70に挿入される場合、ノズル16から噴出される一次空気流は、コアンダ面72の後部セクション73の上、及びマスクの内面110の上に向けられる。前述したように、マスク100の内面110は円形形状なので、マスク100の前端部104と後端部106との間でマスク100を貫通するボア112を規定し、マウス18から噴出される一次空気流によって、送風機10の外側の二次空気流はボア112を通って引き込まれる。
【0047】
従って、マスク100の内面110は、送風機10が発生する合体空気流を所望の方向に案内するディフューザ面を提供する。軸線Xに対する内面110の傾斜角は、軸線Yに対するコアンダ面72のディフューザ部74の傾斜角とは異なるので、マスク100をノズル16のボア70に挿入すると、結果的に合体空気流の多くのパラメータが変更される。本実施例において、軸線Yに対する内面110の傾斜角は、軸線Xに対するコアンダ面72のディフューザ部74の傾斜角度よりも浅いので、マスク100の半径方向厚さは、マスク100の後端部106に向かって減少する。本実施例において、軸線Yに対する内面110の傾斜角は約10度であり、ノズル16のボア70にマスク100を挿入すると、送風機10が生成する合体空気流のプロフィールを収縮させることにつながる。これにより、送風機10の前方に位置するユーザに集中する合体空気流がもたらされる。また、マスク100が提供する浅いディフューザ部は、合体空気流の速度を大きくして合体空気流の流量を低減することにつながる。
【0048】
図9及び
図10は、ノズルのコアンダ面72の上に取り外し可能に配置でき、合体空気流の少なくとも1つのパラメータを変更する第2の実施例のマスク100を示す。マスク100と同様に、マスク120は、ノズル16のボア70に挿入可能なインサートの形態であり、ノズル16のコアンダ面72の少なくとも一部を覆うようになっている。また、マスク120は、ボア70の前端部96に配置でき、マスク100がノズル16の上に配置される場合、ノズル16の前部ケーシングセクション76の外面を取り囲む外側環状リム122を含む。しかしながら、このマスク120は、前端部124、後端部126、外面128、及び内面130が連続的でない点でマスク100とは異なっている。その代わり、マスク120は、環状リム122によって連結され、マスク120の軸線Yの周りに配置されてほぼ一定の間隔で離間される複数のセクション132を備える。本実施例において、マスク120は、該マスク120の周りに一定の間隔で離間される6つのセクション132を備える。各セクション132は、略くさび形である。各外面128は、コアンダ面72のディフューザ部74と軸線Xとの間の傾斜角と同じ角度で、軸線Yに向かってテーパ付けされているの、マスク120がノズル16上に配置される場合、マスク120のセクション132はコアンダ面72のディフューザ部74を部分的に覆う。マスク100の内面110と同様に、軸線Yに対する内面130の傾斜角は、軸線Xに対するコアンダ面72のディフューザ部74の傾斜角よりも浅いので、セクション132の半径方向厚さは、セクション130の後端部126に向かって減少する。本実施例では、軸線Yに対する内面130の傾斜角は同様に約10度である。
【0049】
従って、
図9に示すように、マスク120が、ボア70の開放前端部96を通ってノズル16に挿入される場合、ノズル16のボア134は、コアンダ面72のディフューザ部74の覆われていないセクション及びマスク120の内面130の両方により規定される。従って、ノズル126のボア134は、段付きプロフィールを有し、軸線Xに対するボア134の傾斜角は、本実施例では各々が約28度である複数の最大値と、本実施例では各々が約10度である複数の最小値との間で変化する。このノズル16のボア134のプロフィールの変動により、合体空気流は、マスク120の非連続性によって、ユーザに部分的にのみ集束する非円形又は非切頭円錐形のプロフィールを有することになる。
【0050】
第2の実施例において、マスク120をノズル16に挿入すると、段付きプロフィールを採用するノズル16のボア134がもたらされる。
図11及び
図12は、第3の実施例のマスク140を示す。マスク140はマスク100と類似している。また、マスク140はインサートの形態であり、ノズル16のボア70に挿入可能でノズル16のコアンダ面72の少なくとも一部を覆うようになっている。また、マスク140は、ボア70の前端部96に配置できる外側環状リム142を含み、マスク140がノズル16上に配置される場合、ノズル16の前部ケーシングセクション76の外面を取り囲む。また、マスク140は、連続的な前端部144及び円形の後端部146、環状外面148、及びボア152を規定する環状内面110を備える。マスク140の外面148は、マスク100の外面108と同一である。しかしながら、マスク140の内面150は、軸線Yに対するマスク154の内面150の傾斜角が軸線Yの周りで変化する点でマスク100の内面110とは異なる。この傾斜角は、軸線Yの周りで一定の間隔で離間される複数の最大値と複数の最小値との間で変化する。内面150は、傾斜角が軸線Yの周りで複数の最大値と複数の最小値との間で徐々に変化するように形作られている。
【0051】
従って、マスク140がノズル16のボア70に挿入されると、マスク140の内面150は、同様に送風機10が発生する合体空気流を所望の方向へ案内するディフューザ表面を提供し、非円形又は非切頭円錐形のプロフィールをもたらす。また、マスク120と同様に、マスク140はノズル16に対して回転可能であり、送風機10が発生する合体空気流の向きを変更するようになっている。