特許第5750561号(P5750561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5750561伝動ベルト及びそれを備えたベルト伝動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5750561
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】伝動ベルト及びそれを備えたベルト伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/08 20060101AFI20150702BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20150702BHJP
   F16G 5/20 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   F16G1/08 A
   F16G5/06 A
   F16G5/20 A
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-512951(P2015-512951)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2014005664
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-127322(P2014-127322)
(32)【優先日】2014年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正吾
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−79337(JP,A)
【文献】 特開2009−74210(JP,A)
【文献】 特開2003−130137(JP,A)
【文献】 特開平5−44131(JP,A)
【文献】 特開平2−42230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/08
F16G 5/06
F16G 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製のベルト本体に心線が埋設された伝動ベルトであって、
前記心線は、各々、繊度1000〜1250dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1200〜1350として一方向に下撚りした4本の下撚り糸を有し、前記4本の下撚り糸を、撚り係数を900〜1100として下撚りとは逆方向に上撚りした総繊度4000〜5000dtexの諸撚り糸で構成されている伝動ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線を構成する諸撚り糸における下撚りの撚り係数に対する上撚りの撚り係数の比(上撚りの撚り係数/下撚りの撚り係数)が0.5〜1である伝動ベルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線を構成する諸撚り糸の4本の下撚り糸の下撚りの撚り数が35〜46回/10cmである伝動ベルト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線を構成する諸撚り糸の上撚りの撚り数が13〜19回/10cmである伝動ベルト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線の外径が0.73〜0.83mmである伝動ベルト。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線を構成する諸撚り糸の糸強度が680N以上である伝動ベルト。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線は、上撚りがZ撚りである1本の諸撚り糸で構成されている伝動ベルト。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線を構成する諸撚り糸の4本の下撚り糸の繊度が同一である伝動ベルト。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線を構成する諸撚り糸の4本の下撚り糸の下撚りの撚り係数が同一である伝動ベルト。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線を構成する諸撚り糸の4本の下撚り糸の繊度が1100dtexである伝動ベルト。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記心線を構成する諸撚り糸の総繊度が4400dtexである伝動ベルト。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記ベルト本体がVリブドベルト本体である伝動ベルト。
【請求項13】
請求項12に記載された伝動ベルトにおいて、
1Vリブ幅当たりのベルト強度が2.4kN以上である伝動ベルト。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかの伝動ベルトが複数のプーリに巻き掛けられたベルト伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルト及びそれを備えたベルト伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルトの心線にパラ系アラミド繊維を用い得ることは公知である。
【0003】
特許文献1には、ダブルコグドVベルトの心線として、各々、繊度1650dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を4.3として一方向に下撚りした3本の下撚り糸を有し、それらの3本の下撚り糸を、撚り係数を3.6として下撚りとは逆方向に上撚りした総繊度9900dtexの諸撚り糸を用いることが開示されている。なお、特許文献1では、撚り係数を次式により算出している。
【0004】
撚り係数=0.496×撚り数(回/10cm)×(繊度(dtex))1/2
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−265106号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ゴム製のベルト本体に心線が埋設された伝動ベルトであって、前記心線は、各々、繊度1000〜1250dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1200〜1350として一方向に下撚りした4本の下撚り糸を有し、前記4本の下撚り糸を、撚り係数を900〜1100として下撚りとは逆方向に上撚りした総繊度4000〜5000dtexの諸撚り糸で構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るVリブドベルトの斜視図である。
図2】心線を構成する諸撚り糸の斜視図である。
図3】(a)は下撚り糸が5本である心線の断面図であり、(b)は下撚り糸が4本である心線の断面図である。
図4】実施形態に係るVリブドベルトを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置のプーリレイアウトを示す図である。
図5】実施形態に係るVリブドベルトの製造方法1を示す第1の説明図である。
図6】実施形態に係るVリブドベルトの製造方法1を示す第2の説明図である。
図7】実施形態に係るVリブドベルトの製造方法1を示す第3の説明図である。
図8】実施形態に係るVリブドベルトの製造方法1を示す第4の説明図である。
図9】実施形態に係るVリブドベルトの製造方法1を示す第5の説明図である。
図10】(a)はその他の実施形態に係るローエッジ型Vベルトの斜視図であり、(b)はその他の実施形態に係るラップドVベルトの斜視図であり、(c)はその他の実施形態に係る平ベルトの斜視図であり、(d)はその他の実施形態に係る歯付ベルトの斜視図である。
図11】ベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
(VリブドベルトB)
図1は、実施形態に係るVリブドベルトB(伝動ベルト)を示す。実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動用のベルト伝動装置等に用いられるエンドレスのものである。実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。
【0010】
実施形態に係るVリブドベルトBは、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層11とベルト外周側の接着ゴム層12との二重層に構成されたゴム製のVリブドベルト本体10を備えている。Vリブドベルト本体10における接着ゴム層12のベルト外周側には背面補強布13が貼設されている。また、接着ゴム層12の厚さ方向の中央には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。なお、背面補強布13の代わりに背面ゴム層が設けられた構成であってもよい。
【0011】
圧縮ゴム層11は、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ15は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmである。Vリブ数は例えば3〜6個である(図1では6個)。
【0012】
接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に構成されており、厚さが例えば1.0〜2.5mmである。
【0013】
圧縮ゴム層11及び接着ゴム層12は、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたゴム組成物で形成されている。このゴム組成物は、硫黄を架橋剤として架橋したものであっても、また、有機過酸化物を架橋剤として架橋したものであってもよい。圧縮ゴム層11及び接着ゴム層12は、別配合のゴム組成物で形成されていてもよく、また、同じ配合のゴム組成物で形成されていてもよい。
【0014】
圧縮ゴム層11及び接着ゴム層12を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDM、EPRなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。配合剤としては、補強剤、充填剤、老化防止剤、軟化剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。
【0015】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物には、ナイロン短繊維等の短繊維が配合されていてもよい。その場合、短繊維が圧縮ゴム層11にベルト幅方向に配向するように含まれていることが好ましく、また、短繊維が圧縮ゴム層11の表面から突出するように設けられていることが好ましい。なお、圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物に短繊維を配合した構成ではなく、圧縮ゴム層11の表面に短繊維を植毛等により付着させた構成であってもよい。
【0016】
背面補強布13は、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された織布、編物、不織布等の布材で構成されている。背面補強布13には、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。
【0017】
心線14は、図2に示すように、各々、パラ系アラミド繊維束を一方向に下撚りした4本の下撚り糸14aを有し、それらの4本の下撚り糸14aを下撚りとは逆方向に上撚りした諸撚り糸で構成されている。なお、諸撚り糸には、下撚りがS撚り及び上撚りがZ撚りであるZ撚り糸、並びに下撚りがZ撚り及び上撚りがS撚りであるS撚り糸が含まれる。心線14には、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。
【0018】
心線14を構成するパラ系アラミド繊維のフィラメントの繊度は例えば1.0〜3.0dtexであり、フィラメント径は例えば10〜15μmである。市販のパラ系アラミド繊維としては、例えば、デュポン社製のケブラー、帝人社製のトワロン及びテクノーラが挙げられる。
【0019】
心線14を構成する諸撚り糸の4本の下撚り糸14aの繊度は1000〜1250dtexであり、好ましくは1100dtexである。4本の下撚り糸14aの繊度は同一であることが好ましい。
【0020】
下撚り糸14aの下撚りの撚り係数は1200〜1350である。4本の下撚り糸14aの下撚りの撚り係数は同一であることが好ましい。心線14を構成する諸撚り糸の上撚りの撚り係数は900〜1100である。
【0021】
下撚りの撚り係数は上撚りの撚り係数よりも大きい。下撚りの撚り係数に対する上撚りの撚り係数の比(上撚りの撚り係数/下撚りの撚り係数)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.67以上であり、また、好ましくは1以下、より好ましくは0.96以下、更に好ましくは0.72以下である。
【0022】
ここで、撚り係数は下記式により算出される。
【0023】
【数1】
【0024】
なお、下撚りの撚り数としては、好ましくは35回/10cm以上、より好ましくは38回/10cm以上であり、また、好ましくは46回/10cm以下、より好ましくは43回/10cm以下である。上撚りの撚り数としては、好ましくは13回/10cm以上、より好ましくは14回/10cm以上であり、また、好ましくは19回/10cm以下、より好ましくは18回/10cm以下である。
【0025】
心線14を構成する諸撚り糸の総繊度は4000〜5000dtexであり、好ましくは4400dtexである。心線14の外径は、好ましくは0.73〜0.83mmである。心線14の外径は、横断面における心線14の最大外径である。
【0026】
心線14を構成する諸撚り糸の糸強度は、好ましくは680N以上、より好ましくは720N以上である。
【0027】
心線14は、上撚りがZ撚りであるZ撚り糸又は上撚りがS撚りであるS撚り糸の1本の諸撚り糸で構成されていて一重螺旋を形成するように配されていてもよい。この場合、心線14は、上撚りがZ撚りであるZ撚り糸で構成されていることが好ましい。心線14は、上撚りがZ撚りであるZ撚り糸及び上撚りがS撚りであるS撚り糸の2本の諸撚り糸で構成されて二重螺旋を形成するように配されていてもよい。断面における相互に隣接する心線14中心間の寸法は例えば0.05〜0.20mmである。
【0028】
実施形態に係るVリブドベルトBの1Vリブ幅当たりのベルト強度は、好ましくは2.1kN以上、より好ましくは2.4kN以上である。
【0029】
ところで、近年、自動車の燃費向上策として、ダウンサイジングエンジンの採用が検討されている。ところが、かかるダウンサイジングエンジンではシリンダ数が少ないことから、エンジンに取り付けられた補機駆動用のVリブドベルトには、従来よりも大きな張力変動が与えられるため、大きな衝撃が繰り返し与えられても優れた耐屈曲疲労性を有することが求められる。
【0030】
このような要求に対し、以上の構成の実施形態に係るVリブドベルトBによれば、ゴム製のVリブドベルト本体10に埋設された心線14が、各々、繊度1000〜1250dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1200〜1350として一方向に下撚りした4本の下撚り糸14aを有し、それらの4本の下撚り糸14aを、撚り係数を900〜1100として下撚りとは逆方向に上撚りした総繊度4000〜5000dtexの諸撚り糸で構成されていることにより、後述の実施例で示す通り、大きな衝撃が繰り返し与えられても優れた耐屈曲疲労性を得ることができる。
【0031】
実施形態に係るVリブドベルトBでは、繊度1000〜1250dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1200〜1350として一方向に下撚りした下撚り糸14aを複数本集め、それらの下撚り糸14aを、撚り係数を900〜1100として下撚りとは逆方向に上撚りした総繊度4000〜5000dtexの諸撚り糸で心線14を構成するが、その下撚り糸14aの本数を4本とすることにより優れた耐屈曲疲労性を得ることができる。これは、下撚り糸の本数が4本よりも少ない場合には、下撚り糸を太くすることとなることから、下撚り時に、フィラメントが下撚り糸の内層及び外層間で入れ替わろうとするマイグレーションが大きくなるため、伸張時において、フィラメント間で負荷される応力が不均一となり、張力変動が生じた際には著しく強度が低下するのであると推測される。一方、下撚り糸の本数が4本よりも多い場合には、図3(a)に示すように、心線14の断面において、内層に配置される下撚り糸14aと外層に配置される下撚り糸14aとが生じ、前者よりも後者の方が張りが大きいため、伸張持において、外層の下撚り糸14aに応力が集中し、張力変動が生じた際には著しく強度が低下するのであると推測される。これに対し、実施形態に係るVリブドベルトBのように心線14を構成する下撚り糸14aが4本の場合には、図3(b)に示すように、心線14の断面において、4本の下撚り糸14aが比較的バランスよい安定な正方配置をとり易いため、伸張時において、いずれの下撚り糸14aにも均等に応力が負荷され、張力変動が生じた際でも強度の低下を小さく抑えることができるのであると推測される。
【0032】
図4は、実施形態に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置20のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置20は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
【0033】
この補機駆動ベルト伝動装置20では、最上位置にリブプーリのパワーステアリングプーリ21が設けられ、そのパワーステアリングプーリ21の下方にリブプーリのACジェネレータプーリ22が設けられている。また、パワーステアリングプーリ21の左下方には平プーリのテンショナプーリ23が設けられており、そのテンショナプーリ23の下方には平プーリのウォーターポンププーリ24が設けられている。さらに、テンショナプーリ23の左下方にはリブプーリのクランクシャフトプーリ25が設けられており、そのクランクシャフトプーリ25の右下方にリブプーリのエアコンプーリ26が設けられている。これらのプーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂成形品で構成されており、また、プーリ径がφ50〜150mmである。
【0034】
そして、この補機駆動ベルト伝動装置20では、VリブドベルトBは、Vリブ15側が接触するようにパワーステアリングプーリ21に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ23に巻き掛けられた後、Vリブ15側が接触するようにクランクシャフトプーリ25及びエアコンプーリ26に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ24に巻き掛けられ、そして、Vリブ15側が接触するようにACジェネレータプーリ22に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ21に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBの長さであるベルトスパン長は例えば50〜300mmである。プーリ間で生じ得るミスアライメントは0〜2°である。
【0035】
(VリブドベルトBの製造方法)
次に、実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法について説明する。
【0036】
実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法は、材料準備工程、材料セット工程、加硫成型工程、研削工程、及び幅切り工程を有し、VリブドベルトBのVリブ15を研削工程における研削により形成する。
【0037】
<材料準備工程>
まず、ゴム成分に各配合物を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して圧縮ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を作製する。圧縮ゴム層11に短繊維を含める場合には、この未架橋ゴムシート11’に短繊維を配合すればよい。同様に、接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’も作製する。
【0038】
また、背面補強布13を構成する布材13’に対して接着処理を施す。具体的には、布材13’に対して、プライマー溶液に浸漬して加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理、ゴム糊に浸漬して乾燥させる接着処理、及びVリブドベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理のうち1種又は2種以上の接着処理を施す。
【0039】
さらに、心線14を構成する諸撚り糸14’に対して接着処理を施す。具体的には、諸撚り糸14’に対して、プライマー溶液に浸漬して加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理、及びゴム糊に浸漬して乾燥させる接着処理を施す。
【0040】
<材料セット工程>
次いで、図5に示すように、円筒型31の外周上に、背面補強布13を構成する接着処理を施した布材13’、及び接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上に心線14を構成する接着処理を施した諸撚り糸14’を円筒型31に対して螺旋状に一定の張力を付与して巻き付け、さらにその上に接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’及び圧縮ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付けて積層することによりベルト形成用成形体B’を成形する。
【0041】
<加硫成型工程>
次いで、図6に示すように、ベルト形成用成形体B’にゴムスリーブ32を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉すると共に、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填して所定の成型時間だけ保持する。このとき、未架橋ゴムシート11’,12’の架橋が進行して一体化すると共に布材13’及び諸撚り糸14’と複合化し、図7に示すように、最終的に、円筒状のベルトスラブSが成型される。
【0042】
<研削工程>
続いて、加硫缶内から蒸気を排出して密閉を解き、円筒型31上に成型されたベルトスラブSを型抜きし、図8に示すように、ベルトスラブSを一対のスラブ掛け渡し軸33間に掛け渡すと共に、ベルトスラブSの外周面に対し、周方向に延びるVリブ形状溝が外周面の軸方向に連設された研削砥石34を回転させながら当接させ、また、ベルトスラブSも一対のスラブ掛け渡し軸33間で回転させることにより、その外周面を全周に渡って研削する。このとき、図9に示すように、ベルトスラブSの外周面にはVリブ15が形成される。なお、ベルトスラブSは、必要に応じて長さ方向に分割して研削を行ってもよい。
【0043】
<幅切り工程>
そして、研削によりVリブ15を形成したベルトスラブSを所定幅に幅切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。
【0044】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、VリブドベルトBを事例としたが、特にこれに限定されるものではなく、図10(a)に示すようなローエッジ型Vベルトであってもよく、図10(b)に示すようなラップドVベルトであってもよく、図10(c)に示すような平ベルトであってもよく、図10(d)に示すような歯付ベルトであってもよい。
【実施例】
【0045】
(Vリブドベルト)
上記実施形態の製造方法と同一の方法によりパラ系アラミド繊維製の諸撚り糸で心線を構成した実施例1〜4及び比較例1〜6のVリブドベルトを作製した。Vリブドベルトは、ベルト長さが1000mm及びベルト厚さが4.0mmであり、Vリブ数が3個のベルト幅が10.68mmのものであった。それぞれの心線を構成する諸撚り糸の構成については表1にも示す。
【0046】
【表1】
【0047】
<実施例1>
実施例1のVリブドベルトのパラ系アラミド繊維製の心線は、各々、繊度1100dtexのパラ系アラミド繊維束(帝人社製 商品名:トワロン1008、フィラメントの繊度1.1dtex、フィラメント径10.4μm)を、撚り係数を1350(下撚りの撚り数:42.9回/10cm)として一方向にS撚りに下撚りした4本の下撚り糸を作製し、その4本の下撚り糸を、撚り係数を900(上撚りの撚り数:14.3回/10cm)として下撚りとは逆方向にZ撚りに上撚りした総繊度4400dtexの諸撚り糸で構成した。心線の下撚りの撚り係数に対する上撚りの撚り係数の比(上撚りの撚り係数/下撚りの撚り係数)は0.67である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は748Nであった。なお、心線は、この上撚りがZ撚りであるZ撚り糸の1本の諸撚り糸で構成した。
【0048】
心線を構成する諸撚り糸には、プライマー溶液に浸漬して加熱するのに続いて、RFL水溶液に浸漬して加熱し、さらにゴム糊に浸漬して乾燥させる接着処理を施した。
【0049】
プライマー溶液として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートのトルエン溶液を用いた。プライマー溶液による接着処理は1回行った。
【0050】
RFL水溶液として、レゾルシン(R)と37質量%ホルムアルデヒド水溶液(F:ホルマリン)とを混合・攪拌したものに、水酸化ナトリウム水溶液を加えてさらに攪拌した後、そこに水を加えて熟成したRF水溶液に、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)のラテックス(L)を混合したものを用いた。RFL水溶液による接着処理は連続して2回行った。
【0051】
ゴム糊として、後述の接着ゴム層を構成する未架橋ゴム組成物をトルエンに溶解させたものを用いた。ゴム糊による接着処理は1回行った。
【0052】
諸撚り糸を円筒型に対して螺旋状に巻き付ける際の螺旋のピッチは0.95mmとした。
【0053】
実施例1のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.54kNであった。
【0054】
なお、圧縮ゴム層及び接着ゴム層は、ゴム成分をEPDMとする未架橋ゴム組成物で形成した。また、背面補強布は、綿/ポリエステル繊維の混紡糸の織布で構成した。
【0055】
<実施例2>
上撚りの撚り係数を1100(上撚りの撚り数:17.5回/10cm)とした諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを実施例2とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.81である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は728Nであった。
【0056】
実施例2のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.46kNであった。
【0057】
<実施例3>
下撚りの撚り係数を1200(下撚りの撚り数:38.1回/10cm)とした諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを実施例3とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.75である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は752Nであった。
【0058】
実施例3のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.55kNであった。
【0059】
<実施例4>
下撚りの撚り係数を1200(下撚りの撚り数:38.1回/10cm)及び上撚りの撚り係数を1100(上撚りの撚り数:17.5回/10cm)とした諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを実施例4とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.92である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は739Nであった。
【0060】
実施例4のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.52kNであった。
【0061】
<比較例1>
各々、繊度1100dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1275(下撚りの撚り数:40.5回/10cm)として一方向にS撚りに下撚りした3本の下撚り糸を作製し、その3本の下撚り糸を、撚り係数を1000(上撚りの撚り数:18.3回/10cm)として下撚りとは逆方向にZ撚りに上撚りした総繊度3300dtexの諸撚り糸で心線を構成し、その諸撚り糸を円筒型に対して螺旋状に巻き付ける際の螺旋のピッチを0.85mmとしたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例1とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.78である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は573Nであった。
【0062】
比較例1のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は1.93kNであった。
【0063】
<比較例2>
各々、繊度1100dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1275(下撚りの撚り数:40.5回/10cm)として一方向にS撚りに下撚りした5本の下撚り糸を作製し、その5本の下撚り糸を、撚り係数を1000(上撚りの撚り数:14.2回/10cm)として下撚りとは逆方向にZ撚りに上撚りした総繊度5500dtexの諸撚り糸で心線を構成し、その諸撚り糸を円筒型に対して螺旋状に巻き付ける際の螺旋のピッチを1.05mmとしたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例2とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.78である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は899Nであった。
【0064】
比較例2のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は3.09Nであった。
【0065】
<比較例3>
各々、繊度1680dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1275(下撚りの撚り数:32.8回/10cm)として一方向にS撚りに下撚りした3本の下撚り糸を作製し、その3本の下撚り糸を、撚り係数を1000(上撚りの撚り数:14.8回/10cm)として下撚りとは逆方向にZ撚りに上撚りした総繊度5040dtexの諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例3とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.78である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は811Nであった。
【0066】
比較例3のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.72Nであった。
【0067】
<比較例4>
各々、繊度840dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1275(下撚りの撚り数:46.4回/10cm)として一方向にS撚りに下撚りした5本の下撚り糸を作製し、その5本の下撚り糸を、撚り係数を1000(上撚りの撚り数:16.3回/10cm)として下撚りとは逆方向にZ撚りに上撚りした総繊度4200dtexの諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例4とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.78である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は692Nであった。
【0068】
比較例3のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.28Nであった。
【0069】
<比較例5>
下撚りの撚り係数を1275(下撚りの撚り数:40.5回/10cm)及び上撚りの撚り係数を800(上撚りの撚り数:12.7回/10cm)とした諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例5とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.63である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は761Nであった。
【0070】
比較例5のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.62kNであった。
【0071】
<比較例6>
下撚りの撚り係数を1275(下撚りの撚り数:40.5回/10cm)及び上撚りの撚り係数を1200(上撚りの撚り数:19.1回/10cm)とした諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例6とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.94である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は721Nであった。
【0072】
比較例6のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.46Nであった。
【0073】
<比較例7>
下撚りの撚り係数を1450(下撚りの撚り数:46.05回/10cm)及び上撚りの撚り係数を1000(上撚りの撚り数:15.9回/10cm)とした諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例7とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.69である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は712Nであった。
【0074】
比較例7のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.47kNであった。
【0075】
<比較例8>
下撚りの撚り係数を1100(下撚りの撚り数:34.95回/10cm)及び上撚りの撚り係数を1000(上撚りの撚り数:15.9回/10cm)とした諸撚り糸で心線を構成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例8とした。この心線の上撚りの撚り係数の下撚りの撚り係数に対する比は0.91である。心線を構成する諸撚り糸の糸強度は776Nであった。
【0076】
比較例8のVリブドベルトの1Vリブ幅当たりのベルト強度は2.67kNであった。
【0077】
(ベルト走行試験)
図11はベルト走行試験機40のプーリレイアウトを示す。
【0078】
ベルト走行試験機40は、プーリ径50mmの駆動プーリ41と、その右斜め上方に設けられたプーリ径80mmの第1アイドラプーリ42と、駆動プーリ41の右側方に設けられたプーリ径75mmの第2アイドラプーリ43と、その右斜め上方に左右可動に設けられたプーリ径76mmのオートテンショナプーリ44と、第2アイドラプーリ43の右側方に設けられたプーリ径140mmの従動プーリ45とを備える。駆動プーリ41、第1アイドラプーリ42、及び従動プーリ45はリブプーリであり、第2アイドラプーリ43及びオートテンショナプーリ44は平プーリである。
【0079】
実施例1〜4及び比較例1〜8のそれぞれのVリブドベルトBについて、ベルト走行試験機40における駆動プーリ41、第1アイドラプーリ42、及び従動プーリ45にVリブ側が接触し且つ第2アイドラプーリ43及びオートテンショナプーリ44に背面側が接触するように巻き掛けると共に、オートテンショナプーリ44により660Nのベルト張力を負荷し、室温下(25℃)、駆動プーリ41の回転数を4秒毎に0〜1000rpmに回転変動させてベルト走行試験を行った。このとき、駆動プーリ41の回転数が上がる際には、VリブドベルトBに1Vリブ幅当たり最大560Nのベルト張力が負荷される一方、駆動プーリ41の回転数が下がる際には、従動プーリ45が惰性で回転することによりVリブドベルトBが緩むことから、VリブドベルトBに対して大きな衝撃を繰り返し与えた。そして、実施例1〜4及び比較例2、3、5、6では、回転変動10万サイクル分のベルト走行後にベルト強度を測定し、それを心線1本当たりに換算したものを、予め測定しておいた同一製造ロットの未走行のもののベルト強度を心線1本当たりに換算したもので除すことによりベルト残存強度の百分率を算出した。なお、比較例1及び4については、回転変動10万サイクル分のベルト走行が完了する前に切断した。
【0080】
(試験結果)
表1に試験結果を示す。
【0081】
表1によれば、心線が、各々、繊度1100dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1200〜1350として一方向に下撚りした4本の下撚り糸を有し、それらの4本の下撚り糸を、撚り係数を900〜1100として下撚りとは逆方向に上撚りした総繊度4400dtexの諸撚り糸で構成された実施例1〜4では、それ以外の比較例1〜8に比べて、ベルト走行試験後のベルト残存強度が非常に高い、つまり、大きな衝撃が繰り返し与えられても優れた耐屈曲疲労性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、伝動ベルト及びそれを備えたベルト伝動装置について有用である。
【符号の説明】
【0083】
B Vリブドベルト,ローエッジ型Vベルト、ラップドVベルト,平ベルト,歯付ベルト(伝動ベルト)
10 Vリブドベルト本体
14 心線
14a 下撚り糸
14’ 諸撚り糸
20 補機駆動ベルト伝動装置
【要約】
伝動ベルト(B)は、ゴム製のベルト本体(10)に心線(14)が埋設されている。心線(14)は、各々、繊度1000〜1250dtexのパラ系アラミド繊維束を、撚り係数を1200〜1350として一方向に下撚りした4本の下撚り糸を有し、それらの4本の下撚り糸を、撚り係数を900〜1100として下撚りとは逆方向に上撚りした総繊度4000〜5000dtexの諸撚り糸で構成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11