(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750563
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】サージ用端子台
(51)【国際特許分類】
H01R 33/05 20060101AFI20150702BHJP
H01R 13/53 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
H01R33/05 A
H01R13/53
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-63426(P2012-63426)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-196935(P2013-196935A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000123354
【氏名又は名称】音羽電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】三島 健七郎
(72)【発明者】
【氏名】大槻 和司
(72)【発明者】
【氏名】赤穂 智章
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−199044(JP,A)
【文献】
実開平4−81461(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 33/05
H01R 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPD関連装置が着脱自在に装着され、前記SPD関連装置から導出された刃形接触子に接触する刃受接触子をハウジングに収納したサージ用端子台であって、
前記刃受接触子は、導電性弾性体からなるC字状接触片で構成され、前記C字状接触片は、平板部と、前記平板部における前記刃形接触子の導出方向両端を同一方向に彎曲させてその先端同士を近接させた折り返し部とを備え、前記ハウジングに収納された端子板部と前記刃形接触子とが前記C字状接触片をその平板部および折り返し部の両側から挟み込むように前記刃受接触子を配置したことを特徴とするサージ用端子台。
【請求項2】
前記刃受接触子は、前記平板部を前記刃形接触子に接触させると共に、前記折り返し部を前記ハウジングの端子板部に接触させるようにした請求項1に記載のサージ用端子台。
【請求項3】
前記刃受接触子は、C字状接触片を前記刃形接触子の幅方向で複数に分割し、その分割された複数の接触片部を前記平板部の一部で連結した請求項1又は2に記載のサージ用端子台。
【請求項4】
前記刃受接触子は、C字状接触片から前記刃形接触子へ向けて突出する弾性部材を退入自在に配置し、前記弾性部材を前記刃形接触子の凹部に嵌入可能とした抜け止め機構を備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載のサージ用端子台。
【請求項5】
前記刃受接触子は、前記刃形接触子が挿入されるハウジング開口部の周縁でC字状接触片が位置規制されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のサージ用端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷撃によるサージ電圧を吸収して電気機器を保護するSPD(Surge Protective Device:サージ防護装置)を含むSPD関連装置が着脱自在に装着され、そのSPD関連装置から導出された刃形接触子に接触する刃受接触子をハウジングに収納したサージ用端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
雷害を防止する目的から、単相または三相交流電路から工場や一般家庭に引き込まれる電源線路において、雷撃による過渡的な過電圧であるサージ電圧を吸収してサージ電流を分流することにより電気機器を保護するデバイスとして、SPDが電源線路と大地間に設置されている。このSPDに格納される耐雷素子としては、酸化亜鉛形バリスタまたは放電ギャップが一般的に使用されている。通常、SPDは、寿命または過大サージ劣化による交換を容易にする目的から、SPDの電源側および接地側の刃形接触子が着脱自在に装着される刃受接触子をハウジングに収納した構造の端子台を用いることにより、電源線路と大地間に設置されるのが望ましい。なお、前述したSPD以外のSPD関連装置としては、SPDと連動するサージ専用ヒューズ等がある。
【0003】
本出願人は、直撃雷などの過大なサージ電流が電源線路と大地間に流れても、SPDの刃形接触子と端子台の刃受接触子との溶着を確実に抑止し得るSPD用端子台を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。そのSPD用端子台(以下、単に端子台と称す)を
図9〜
図11に示す。
【0004】
図9および
図10に示す端子台120は、樹脂製ハウジング121の両端(図示左右両側)に電源側および接地側の端子ネジ部122が設けられており、これら端子ネジ部122の内側に隣接して形成された空間に、以下の形状を有する刃受接触子130がそれぞれ収納された構造を具備する。一方、SPD110は、酸化亜鉛形バリスタを樹脂製ケース111内に収容し、その酸化亜鉛形バリスタの電源側および接地側電極と電気的に接続された刃形接触子112をケース111から同一方向に導出した構造を具備する。端子台120の端子ネジ部122と電気的に接続された刃受接触子130は、板ばね等の導電性弾性体を所定形状に折り曲げ成形したものであり、SPD110の刃形接触子112を挿し込むことによりその板厚方向両側から挟み込む構造を具備する。
【0005】
刃受接触子130は、
図11に示すように、SPD110の刃形接触子112の板厚方向外側(図示左側)に位置する一方の接触片131と、SPD110の刃形接触子112の板厚方向内側(図示右側)に位置する他方の接触片131とを備えている。これら両方の接触片131は、SPD110の刃形接触子112の根元部位(上方部位)に位置する先端部から中間部へ向けてその刃形接触子112と接触し、刃形接触子112の先端部位(下方部位)に位置する中間部で彎曲したJ字状をなし、その中間部から屈曲させて延在する基端部を端子ネジ部122と電気的かつ機械的に接続している。以下、接触片131がJ字状をなすことから、J形接触片131と称する。
【0006】
以上のような刃受接触子130の構造を具備した端子台120では、刃受接触子130のJ形接触片131が近接する方向に弾性力が付勢されており、その一対のJ形接触片131間にSPD110の刃形接触子112を挿し込むことにより、弾性力に抗して一対のJ形接触片131間を拡開させてSPD110の刃形接触子112に接触させるようにしている。このようにSPD110の刃形接触子112が着脱自在な刃受接触子130の構造を具備したことにより、過大なサージ等によりSPD110の劣化故障が発生した場合、その劣化故障したSPD110を端子台120から取り外し、正常なSPD110を新たに端子台120に装着してSPD110の交換を可能にしている。
【0007】
ここで、特許文献1で開示されているように、SPD110の刃形接触子112と刃受接触子130のJ形接触片131との接触面は両者の点接触の集まりであり、刃形接触子112と刃受接触子130のJ形接触片131との接触部位では電流の集中および拡散により、刃受接触子130のJ形接触片131の対向部位で逆方向に流れる電流が存在することになって電磁反発力が発生する。
【0008】
その結果、直撃雷などの過大なサージ電流が流れたとしても、刃受接触子130のJ形接触片131の対向部位間で発生した電磁反発力でもって刃形接触子112に対する刃受接触子130の密着力が高まり、刃形接触子112と刃受接触子130の接触部位でのアーク発生を抑制し、刃形接触子112と刃受接触子130との接触部分が溶着することを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−199044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述の特許文献1に開示された端子台120では、SPD110の刃形接触子112と接触する刃受接触子130をJ形接触片131を備えた構造としていることから、以下のような課題が生じている。直撃雷などの過大なサージ電流が流れた場合、
図11に示すように、刃受接触子130のJ形接触片131の対向部位で逆方向の電流が流れることになる。この時、SPD110の刃形接触子112に流れる電流i
0は、刃受接触子130の一方のJ形接触片131に流れる電流i
1と他方のJ形接触片131に流れる電流i
2とに分流する(i
0=i
1+i
2)。つまり、刃受接触子130の一方のJ形接触片131に流れる電流i
1と他方のJ形接触片131に流れる電流i
2とがほぼ等しいことから、刃受接触子130のJ形接触片131に流れる電流i
1,i
2は、SPD110の刃形接触子112に流れる電流i
0のほぼ1/2となる。
【0011】
以上のように直撃雷などの過大なサージ電流が流れた場合、刃受接触子130のJ形接触片131には、SPD110の刃形接触子112に流れる電流i
0のほぼ1/2となる電流i
1,i
2が流れることになる。その結果、刃受接触子130のJ形接触片131は、SPD110の刃形接触子112に流れる電流i
0のほぼ1/2となる電流i
1,i
2が流れることを許容できる断面積を持つ必要がある。このことから、J形接触片131の板厚が制約を受けることになってその板厚を薄くすることが困難であった。さらに、刃受接触子130のJ形接触片131がSPD110の刃形接触子112の根元部位まで延びる形状を有することから、刃受接触子130の小型化および低コスト化が困難であった。
【0012】
そこで、本発明は前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、刃受接触子の小型化および低コスト化を容易に実現することができ、より高性能を発揮し得るサージ用端子台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、SPD関連装置が着脱自在に装着され、そのSPD関連装置から導出された帯板状の刃形接触子に接触する刃受接触子をハウジングに収納したサージ用端子台であって、刃受接触子は、導電性弾性体からなるC字状接触片で構成され、そのC字状接触片は、平板部と、その平板部における刃形接触子の導出方向両端を同一方向に彎曲させてその先端同士を近接させた折り返し部とを備え、ハウジングに収納された端子板部と刃形接触子とがC字状接触片をその平板部および折り返し部の両側から挟み込むように配置したことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るサージ用端子台では、刃受接触子をC字状接触片で構成し、そのC字状接触片を端子板部と刃形接触子とで挟み込むように接触させたことにより、刃形接触子に流れる電流は、刃受接触子のC字状接触片では、平板部の両端から延在する一方の折り返し部に流れる電流と他方の折り返し部に流れる電流とに分流する。
【0015】
このように、刃受接触子のC字状接触片では、平板部の両端から延在する一方の折り返し部に流れる電流と他方の折り返し部に流れる電流とに分流することから、刃形接触子に流れる電流の密度が同じであれば、従来のような刃受接触子のJ形接触片に流れる電流の半分となるので、刃受接触子のC字状接触片の断面積を従来の刃受接触子のJ形接触片の半分にすることができる。
【0016】
その結果、刃受接触子のC字状接触片の板厚を薄くすることができ、C字状接触片の平板部の両端から延在させた折り返し部の彎曲半径を小さくすることができるので、刃受接触子の小型化が容易となる。また、刃受接触子は、平板部の両端を彎曲させて折り返し部を形成したC字状接触片としたことから、従来のようなJ形接触片を有する刃受接触子よりも小型化が図れる。
【0017】
本発明における刃受接触子は、平板部を刃形接触子に接触させると共に、折り返し部をハウジングの端子板部に接触させるようにした構造が望ましい。例えば、折り返し部を刃形接触子に接触させると共に、平板部を端子板部に接触させるようにすると、刃受接触子に対して刃形接触子を抜き差しするに際して、刃形接触子が刃受接触子に引っ掛かるおそれがある。これに対して、平板部を刃形接触子に接触させると共に、折り返し部を端子板部に接触させるようにした構造とすれば、刃受接触子に対して刃形接触子を抜き差しするに際して、刃形接触子が刃受接触子に対して引っ掛かることなく、スムーズな抜き差しが実現できる。
【0018】
本発明における刃受接触子は、C字状接触片を刃形接触子の幅方向で複数に分割し、その分割された複数の接触片部を平板部の一部で連結した構造が望ましい。このようにすれば、C字状接触片を複数に分割した接触片部が接触する刃形接触子や端子板部になじみ易くなって接触面積の増大が図れて良好な接触状態を確保することができる。
【0019】
本発明における刃受接触子は、C字状接触片から刃形接触子へ向けて突出する弾性部材を退入自在に配置し、弾性部材を刃形接触子の凹部に嵌入可能とした抜け止め機構を備えている構造が望ましい。このような抜け止め機構を具備すれば、刃形接触子を刃受接触子に挿し込むに際して、弾性部材を刃形接触子の凹部に嵌入させてその状態を弾性部材の弾性力で保持することにより、振動などにより刃形接触子が刃受接触子から脱落することを未然に防止できる。なお、刃形接触子を刃受接触子から引き抜く場合は、弾性部材の弾性力に抗してその弾性部材を退入させることによって可能である。
【0020】
本発明における刃受接触子は、刃形接触子が挿入されるハウジング開口部の周縁で一対のC字状接触片が位置規制されている構造が望ましい。このようにすれば、刃形接触子を刃受接触子から引き抜くに際して、その刃受接触子のC字状接触片がハウジング開口部の周縁で係止された状態となって、刃受接触子が抜け出ることなく、その刃受接触子の固定が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、刃受接触子をC字状接触片で構成し、そのC字状接触片を端子板部と刃形接触子とで挟み込むように接触させたことにより、刃受接触子のC字状接触片では、平板部の両端から延在する一方の折り返し部に流れる電流と他方の折り返し部に流れる電流とに分流することから、刃受接触子のC字状接触片の断面積を従来の刃受接触子のJ形接触片の半分にすることができる。
【0022】
その結果、刃受接触子のC字状接触片の板厚を薄くすることができ、C字状接触片の平板部の両端から延在させた折り返し部の彎曲半径を小さくすることができるので、刃受接触子の小型化が容易となる。また、刃受接触子は、平板部の両端を彎曲させて折り返し部を形成したC字状接触片としたことから、従来のようなJ形接触片を有する刃受接触子よりも小型化が図れる。
【0023】
以上のことから、刃受接触子の小型化および低コスト化を容易に実現することができ、より高性能を発揮し得るコンパクトで安価なサージ用端子台を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態で、端子台にSPDを装着する前の状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態で、端子台にSPDを装着した後の状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態で、(A)は刃受接触子のC字状接触片を示す拡大正面図、(B)は(A)の左側面図、(C)は(A)の右側面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態で、SPDの刃形接触子の抜け止め機構を示す断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態で、一対のC字状接触片を位置規制する突状部を示す平断面図である。
【
図9】従来例で、端子台にSPDを装着する前の状態を示す断面図である。
【
図10】従来例で、端子台にSPDを装着した後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るサージ用端子台(以下、単に端子台と称す)の実施形態について、
図1〜
図8を参照しながら以下に詳述する。なお、この端子台に着脱自在に装着されるSPD関連装置としては、SPDやそれ以外にそのSPDと連動するサージ専用ヒューズ等を含むが、以下の実施形態では、SPDについて詳述する。
【0026】
図1および
図2に示すように、端子台20はSPD10が着脱自在に装着される。この端子台20は、樹脂製ハウジング21の両端(図示左右両側)に電源側および接地側の端子ネジ部22が設けられており、これら端子ネジ部22の内側に隣接して形成された空間に、以下の形状を有する一対の刃受接触子30がそれぞれ収容された構造を具備する。前述のハウジング21は、ベース23とそのベース23の上部に取り付けられたカバー24とで構成され、空間は、開口孔25を除いてカバー24で閉塞されている。
【0027】
一方、SPD10は、酸化亜鉛形バリスタまたは放電ギャップ等のサージ吸収素子を樹脂製ケース11内に収容し、その酸化亜鉛形バリスタまたは放電ギャップ等のサージ吸収素子の電源側および接地側電極と電気的に接続された電源側および接地側の帯板状刃形接触子12(以下、単に刃形接触子と称す)をケース11から同一方向に導出した構造を具備する。この刃形接触子12は、端子台20のカバー24に設けられた開口孔25を介して刃受接触子30に挿し込まれる。
【0028】
端子台20の端子ネジ部22には、断面凹形状を有する真鍮製の端子金具40がその一端から延びる部位で電気的かつ機械的に接続されている。この端子金具40は、刃受接触子30と接触する一対の端子板部41が平行に対向配置されている。この端子台20の端子ネジ部22に端子金具40を介して接続された刃受接触子30は、リン青銅等の導電性弾性体を折り曲げ成形したものであり、SPD10の刃形接触子12を挿し込むことによりその板厚方向両側から挟み込む構造を具備する。この刃受接触子30は、電源側と接地側で左右対称に配置されている。
【0029】
このように、SPD10の刃形接触子12が着脱自在な刃受接触子30の構造を具備したことにより、過大なサージ等によりSPD10の劣化故障が発生した場合、その劣化故障したSPD10を端子台20から取り外し、正常なSPD10を新たに端子台20に装着してSPD10の交換を可能にしている。
【0030】
刃受接触子30は、
図3に示すように、SPD10の刃形接触子12の板厚方向外側(図示左側)に位置する一方のC字状接触片31(以下、C形接触片と称す)と、SPD10の刃形接触子12の板厚方向内側(図示右側)に位置する他方のC字状接触片31(以下、C形接触片と称す)とを備えている。これら両方のC形接触片31は同一構造を有し、平板部32と、その平板部32における刃形接触子12の導出方向両端を同一方向に彎曲させてその先端同士を近接させた折り返し部33とで構成されている。
【0031】
なお、以下の実施形態では、一対のC形接触片31を備えた刃受接触子30について説明するが、一対のC形接触片31のうち、いずれか一方のC形接触片31のみを備えた刃受接触子30の場合についても適用可能である。その場合、SPD10の刃形接触子12の一方の側にC形接触片31が接触し、他方の側に端子板部41が接触することになる。つまり、刃形接触子12と端子板部41とが一つのC形接触片31を挟み込む構造となる。
【0032】
このC形接触片31は、
図4(A)に示すように、自然状態で平板部32の両端に形成された一対の折り返し部33が外側へ若干拡開した形状をなすものであり、一対のC形接触片31を二つの折り返し部33が一直線状となるように端子台20の端子金具40に収納される。その状態で、それらC形接触片31が相互に近接する方向に弾性力が付勢されており、その一対のC形接触片31間にSPD10の刃形接触子12を挿し込む(
図3参照)。これにより、弾性力に抗して一対のC形接触片31間を拡開させてSPD10の刃形接触子12に接触させるようにしている。このように、刃受接触子30は、一対のC形接触片31を端子台20の端子金具40に収納させるだけであることから、その端子台20の組み立て性が向上する。
【0033】
刃受接触子30は、一対のC形接触片31の平板部32が対向するように配置され、その平板部32をSPD10の刃形接触子12に接触させると共に、折り返し部33を端子金具40の端子板部41に接触させるようにしている。これとは逆に、一対のC形接触片31の折り返し部33が対向するように配置し、その折り返し部33をSPD10の刃形接触子12に接触させると共に、平板部32を端子金具40の端子板部41に接触させるように配置した場合、刃受接触子30に対してSPD10の刃形接触子12を抜き差しするに際して、刃形接触子12が刃受接触子30の折り返し部33に引っ掛かるおそれがある。
【0034】
これに対して、前述したように、一対のC形接触片31の平板部32が対向するように配置し、その平板部32をSPD10の刃形接触子12に接触させると共に、折り返し部33を端子金具40の端子板部41に接触させるように配置したことにより、刃受接触子30に対してSPD10の刃形接触子12を抜き差しするに際して、刃形接触子12が刃受接触子30に対して引っ掛かることなく、スムーズな抜き差しが可能となる。このようにして、端子台20に対するSPD10の着脱が容易となる。
【0035】
刃受接触子30は、
図4(B)(C)に示すように、C形接触片31をSPD10の刃形接触子12の幅方向で複数(図では4つ)に分割し、その分割された複数の接触片部34を平板部32の中央部位35で連結した構造を具備する。このようにC形接触片31を複数の接触片部34に分割した構造とすることにより、C形接触片31を複数に分割した接触片部34が接触するSPD10の刃形接触子12および端子金具40の端子板部41になじみ易くなって接触面積の増大が図れて良好な接触状態を確保することができる。
【0036】
なお、刃受接触子30に対してSPD10の刃形接触子12を挿し込むに際して、その刃形接触子12が刃受接触子30に対して傾いた状態や刃形接触子12が曲がった状態であったとしても、C形接触片31を複数の接触片部34に分割した構造であるため、挿し込まれる刃形接触子12になじみ易く、刃形接触子12および刃受接触子30の部品精度を必要としない。
【0037】
刃受接触子30は、SPD10の刃形接触子12が挿入されるハウジング21のカバー24に設けられた開口部25の周縁で一対のC形接触片31が位置規制されている。このようにカバー24の開口部25の周縁でC形接触片31の浮き上がりを規制することにより、SPD10の刃形接触子12を刃受接触子30から引き抜くに際して、その刃受接触子30のC形接触片31がカバー24の開口部25の周縁で係止された状態となって、C形接触片31が抜け出ることなく、そのC形接触片31の固定が可能となる。
【0038】
刃受接触子30は、
図4(B)(C)に示すように、C形接触片31の中央部位で隣接する二つの接触片部34との間に、SPD10の抜け止め用の弾性部材を収容するための幅広の隙間36を設けている。また、
図5に示すように、刃形接触子30の略中央部位には、抜け止め用の弾性部材が嵌入する凹部である貫通孔13が形成されている。この抜け止め機構は、
図5および
図6に示すように、一対のC形接触片31からSPD10の刃形接触子12へ向けて突出する弾性部材であるバネ50を、C形接触片31の二つの接触片部34間に位置する幅広の隙間36に退入自在に配置し、そのバネ50を刃形接触子12の貫通孔13に嵌入可能としている。この抜け止め機構は、凸彎曲形状を有するバネ50を両方のC形接触片31に装着した構造を具備する。
【0039】
このような抜け止め機構を具備することにより、SPD10の刃形接触子12を刃受接触子30に挿し込むに際して、バネ50を刃形接触子12の貫通孔13に嵌入させてその状態をバネ50の弾性力で保持することにより、振動などにより刃形接触子12が刃受接触子30から脱落することを未然に防止できる。なお、刃形接触子12を刃受接触子30から引き抜く場合は、バネ50の弾性力に抗してそのバネ50を退入させることによって可能である。
【0040】
刃受接触子30は、
図7および
図8に示すように、SPD10の刃形接触子12の板厚に応じた間隔で一対のC形接触片31を離隔配置するように位置規制する突状部26をハウジング21に設けている。ハウジング21の空間が位置する対向壁面27、つまり、C形接触片31の刃形接触子12の幅方向両端が当接する対向壁面27に、SPD10の刃形接触子12が延びる方向に沿って突状部26を形成している。この突状部26の幅寸法は、刃形接触子12の板厚よりも若干小さく設定されている。なお、この突状部26は刃形接触子12の板厚が薄い場合は不要である。
【0041】
このように一対のC形接触片31の間隔を突状部26により規制することにより、刃受接触子30に対してSPD10の刃形接触子12を抜き差しするに際して、ハウジング21の突状部26により一対のC形接触片31の間隔がSPD10の刃形接触子12の板厚に応じて保持されていることから、刃形接触子12をスムーズに抜き差しすることができる。
【0042】
以上の構成を具備した端子台20では、刃受接触子30を一対のC形接触片31で構成し、一方のC形接触片31と他方のC形接触片31との間でSPD10の刃形接触子12をその板厚方向両側から挟み込むように接触させたことにより、
図3に示すように、SPD10の刃形接触子12に流れる電流I
0は、刃受接触子30の一方のC形接触片31では、平板部32の両端から延在する一方の折り返し部33に流れる電流I
1と他方の折り返し部33に流れる電流I
2とに分流する。また、刃受接触子30の他方のC形接触片31でも、平板部32の両端から延在する一方の折り返し部33に流れる電流I
3と他方の折り返し部33に流れる電流I
4とに分流する(I
0=I
1+I
2+I
3+I
4)。
【0043】
つまり、刃受接触子30の一方のC形接触片31の二つの折り返し部33に流れる電流I
1,I
2と他方のC形接触片31の二つの折り返し部33に流れる電流I
3,I
4の全てがほぼ等しいことから、刃受接触子30のC形接触片31の各折り返し部33に流れる電流I
1,I
2,I
3,I
4は、SPD10の刃形接触子12に流れる電流I
0のほぼ1/4となる。
【0044】
このような電流分散により、刃受接触子30のC形接触片31に流れる電流I
1,I
2,I
3,I
4が、SPD10の刃形接触子12に流れる電流I
0のほぼ1/4となることから、SPD10の刃形接触子12に流れる電流の密度が同じであれば(I
0=i
0)、従来の刃受接触子130(
図11参照)のJ形接触片131に流れる電流i
1,i
2が、SPD110の刃形接触子112に流れる電流i
0のほぼ1/2になる場合と比較すると、刃受接触子30のC形接触片31の断面積を従来の刃受接触子130のJ形接触片131の半分にすることができる。
【0045】
その結果、刃受接触子30のC形接触片31の板厚を薄くすることができ、C形接触片31の平板部32の両端から延在させた折り返し部33の彎曲半径を小さくすることができるので、刃受接触子30の小型化が容易となる。また、刃受接触子30は、平板部32の両端を彎曲させて折り返し部33を形成したC形接触片31としたことから、従来のようなJ形接触片131を有する刃受接触子130よりも小型化が図れる。
【0046】
以上のようにして、刃受接触子30のC形接触片31とSPD10の刃形接触子12および端子金具40の端子板部41との接触面は両者の点接触の集まりであり、刃受接触子30のC形接触片31と刃形接触子12および端子板部41との接触部位では必ず電流の集中および拡散により逆方向に流れる大電流による浮き上がり力が存在する。これに対して、C形接触片31では、平板部32に流れる電流I
1〜I
4と折り返し部33に流れる電流I
1〜I
4とが逆方向に流れることになって(
図3の矢印参照)、そのC形接触片31の平板部32と折り返し部33との間で電磁反発力が発生する。
【0047】
この電磁反発力は、C形接触片31の平板部32をSPD10の刃形接触子12に押し付ける力として作用し、そのC形接触片31の折り返し部33を端子金具40の端子板部41に押し付ける力として作用する。この電磁反発力による押し付け力でもって前述の浮き上がり力に打ち勝ち、C形接触片31と刃形接触子12および端子板部41との接触点を増加させることができ、その接触面積の増大が図れてC形接触片31と刃形接触子12および端子板部41との良好な接触状態を確保することができるのでより大きくすることが望ましい。なお、ここで、前述の電磁反発力は電流の二乗に比例し平板部32と折り返し部33の距離に反比例する。
【0048】
前述したように、刃受接触子30のC形接触片31の板厚を薄くすることができることから、平板部32の両端から延在させた折り返し部33の彎曲半径を小さく、つまり平板部32と折り返し部33の距離が小さくできることから前述の電磁反発力はより大きくでき板厚の薄さと相俟って、C形接触片31の平板部32が刃形接触子12に、よりなじみ易くなると共に、C形接触片31の折り返し部33が端子金具40の端子板部41になじみ易くなり、C形接触片31と刃形接触子12および端子板部41との接触点の増加に寄与する。
【0049】
また、刃受接触子30に対してSPD10の刃形接触子12を挿し込むに際して、その刃形接触子12が刃受接触子30に対して傾いた状態や刃形接触子12が曲がった状態であったとしても、刃受接触子30のC形接触片31の板厚を薄くすることができるため、挿し込まれる刃形接触子12になじみ易く、刃形接触子12および刃受接触子30の部品精度を必要としない。
【0050】
さらに、C形接触片31の平板部32の両端から延在させた折り返し部33の彎曲半径を小さくすることができることから、平板部32と折り返し部33との離間距離を小さくすることができるので、その平板部32と折り返し部33との間に発生する電磁反発力の増加に寄与する。以上のように、C形接触片31の平板部32と折り返し部33との間に発生する電磁反発力により、刃形接触子30および端子金具40に対する刃受接触子30のC形接触片31の密着力が高まり、刃形接触子12と刃受接触子30のC形接触片31の接触部位でのアーク発生を抑制し、刃形接触子12と刃受接触子30のC形接触片31との接触部分の浮き上がりにより溶着することを未然に防止できる。
【0051】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0052】
10 SPD関連装置(SPD)
12 刃形接触子
13 凹部(貫通孔)
20 端子台
21 ハウジング
25 開口部
30 刃受接触子
31 C字状接触片(C形接触片)
32 平板部
33 折り返し部
34 接触片部
41 端子板部
50 弾性部材(バネ)