特許第5750606号(P5750606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750606
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】トラクタに連結する長いも収穫装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 25/00 20060101AFI20150702BHJP
   A01D 17/10 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   A01D25/00
   A01D17/10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-103500(P2013-103500)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-212786(P2014-212786A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2013年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】596016937
【氏名又は名称】株式会社苫米地技研工業
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 力
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−172515(JP,U)
【文献】 特開平03−015305(JP,A)
【文献】 特開2006−025601(JP,A)
【文献】 特開2008−029230(JP,A)
【文献】 特開平08−205647(JP,A)
【文献】 実開昭59−141721(JP,U)
【文献】 実開昭55−38894(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00−33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成育した長いもの両側部を掘削して長いもの下端部まで深耕し、さらに後部が上方に傾斜した掘取り刃体によって長いもを順次栽培土と共に浮上させて後方へ移動させる長いもの掘取り装置において、前記長いもの両側部を掘削する掘削チェンの下端に掘取り刃体の刃部を近接させて配置し、前記掘削チェンを支承するブームに長さ調整手段を具備して、掘削チェン上下の長さを調整して掘削チェンの下端部と掘り取り刃体との近接高さを調整可能とするとともに掘り取り刃体の後端には掘り取り刃体と同一面上で微振動する落下補助板を設けたトラクタに連結する長いも収穫装置
【請求項2】
掘り取り刃体の刃部の幅は両サイド掘削チェンの内幅に形成し、掘り取り刃体部の傾斜した後半部は掘削チェンの溝幅に重なるように広幅に構成した請求項1記載のトラクタに連結する長いも収穫装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後部に連結して、掘り取り刃体を生育した長いもの下端部へ鋤きこみ、長いもの周囲の栽培土とともにブロック状に抱持して、後方に向けて浮上させながら、長いもに擦り傷をつけないで掘り取るトラクタに連結する長いも収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長いもの収穫装置は、従来から種々提案されている。生育した長芋は地下に向けて略1メートルの深さに成長して、収穫作業は重労働であり、同時に長いもは折れやすく且つ表面の肌は擦り傷が付きやすい特性がある。そして掘り取り刃体を長いもの生育した下端部へ鋤きこみ、長いもの周囲の栽培土とともにブロック状に抱持して、後方に向けて浮上させながら、長いもに傷をつけないで掘り取ろうとした装置としては同一出願による特許2865252号並びに特開2006−25601公報が提案されている。
前者は『トラクタのPTOから入力したミッションにより回転駆動し、成育長いもの両側部を掘削する一対の掘削手段と、該一対の掘削手段の後方に後部が上方に傾斜して配設された掘取り刃体と、前記PTO軸に連結された入力軸より駆動媒体を介して回転するモータと、該モータにより回転駆動され、前記掘取り刃体の後部を構成する無端ベルトコンベアとを備え、該ベルトコンベアのトラクタの作業前進速度に対応した速度の回転により、栽培土中の長いもを栽培土ブロックに保護・保持し、かつ鉛直姿勢を保った状態で上向き後方へ移動することを特徴とする長いもの掘取り装置』の構成が開示され、その効果として、長いも掘取り刃体の後部を構成するコンベアベルトがトラクタの作業前進速度に対応した速度で回転するので、栽培土には歪んだ後側土圧の発生がなく、栽培土中で育成したままの鉛直姿勢を保った状態で後方へ移動してくる長いもは折れ等の損傷がなく掘り取りできると記載されている。
後者は『トラクタの後部に連結され、長いもの両側部の栽培土をトラクタの前進に従って掘り起こす1対の鋤部材と、前記1対の鋤部材の下部に回動自在に連結され、前部が刃部を形成し後部が上方に傾斜して配設された掘取り刃体とを有する長いも堀取り装置において、前記掘取り刃体と鋤部材との連結が1対の連結バーによって支持されものであり、前記連結バーの一端が前記鋤部材の下端に固着され、かつ、前記連結バーの他端が前記掘取り刃体の裏面に設けられた支軸に回動自在に装着されるとともに、前記連結バーが前記掘り取り刃体の裏面に完全に隠れるように配設されることを特徴とする長いも堀取り装置』の構成が開示される。その効果は、トラクタが長いも掘取り装置を牽引する際に受ける土からの抵抗力が軽減されるので、比較的小さなパワーのトラクタでも牽引が可能となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2865252号公報
【特許文献2】特開2006−25601公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許2865252号公報の実施態様の構成に寄れば、側面視において、長いも両側部を掘削する掘削チェンから一定の距離を有して、生育した長いもの下端に鋤きこまれる掘り取り刃体の刃部が配置されている。したがって、従来の実施例に開示される参考図7に示されるように、生育いもの両サイドを掘削チェンが掘削した後に、一定距離Lをおいて、あらためて掘り取り刃体の刃部が長いもの下端に差し込まれるので、土壌が硬い場合やトラクタ速度をさらに速めようとすると、傾斜した掘り取り刃体の上面が栽培土ブロックの下層部に圧縮力Pを発生させて長芋に擦り傷を与えたり、下層部を崩壊させ長いもの下端が歪んで破損する等の問題あった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した問題を解決する為に、成育した長いもの両側部を掘削して長いもの下端部まで掘取り、後部が上方に傾斜した掘取り刃体によって長いもを順次栽培土と共に浮上させて後方へ移動させる長いもの掘取り装置において、前記長いもの両側部を掘削する掘削チェンの下端に掘取り刃体の刃部を近接させて配置し、前記掘削チェンを支承するブームに長さ調整手段を具備して、掘削チェンの上下の長さを調整して掘削チェンの下端部と掘り取り刃体との近接高さを調整可能とするとともに掘り取り刃体の後端には掘り取り刃体と同一面上で微振動する落下補助板を設けた構成である。
また、前記長いも収穫装置において、掘り取り刃体の刃部の幅は両サイド掘削チェンの内幅に形成し、掘り取り刃体部の傾斜した後半部は掘削チェンの溝幅に重なるように広幅に構成したものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のような構成にしたので両サイドの掘削チェンによって作られた深耕溝と、掘取り刃体の刃部が長いもの下端への刺さり込みと同時に断面U字状の栽培土ブロックを形成して、順次浮上させて後方へ移動させるので、従来のような掘り取り刃体の刃部が栽培土ブロックの下層部に圧縮力を発生させないので擦り傷や、栽培土ブロックの下層の崩壊による破損が著しく少なくなった。また、掘り取り刃体の後半部を広幅に形成し、後端部に微振動する落下補助板を設けたので栽培土ブロックが滑らかに移動して、長芋を把持した後に、浮上した栽培土をスムーズ落とし込むので長いもの抜き取りが容易になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】は本発明を実施した作業状態を示す側面図
図2】は一部を省略した平面図
図3】は落下補助板の微振動説明図
図4】は栽培土ブロックの浮上モデル図
図5】は栽培土ブロック形成図
図6】は一部を省略した斜視図
図7】は従来の実施例示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は成育した長いもの両側部を掘削して長いもの下端部まで掘取り、後部が上方に傾斜した掘取り刃体によって長いもを順次栽培土と共に浮上させて後方へ移動させる長いもの掘取り方法において、前記掘取り刃体の刃部の上方部に両側部を掘削する掘削チェンを近接させて配置したことを特徴としたトラクタに連結する長いも収穫装置であり、掘り取り刃体の刃部の幅は両サイド掘削チェンの内幅に形成し、掘り取り刃体部の傾斜した後半部は掘削チェンの溝幅に重なるように広幅に構成し、また、掘り取り刃体の後端には掘り取り刃体の同一面上に微振動する落下補助板を設けて構成し、長いもを抱持して移動する断面U字状の栽培土ブロック一体的につくり、長いもに不要な傷を与えることなく簡便に収穫するものである。
【実施例】
【0009】
図1において、1は乗用4輪トラクタを示し、トラクタの後部に3点リンク2によって長いも掘り取り装置23の機枠体3の前部を連結してなる。4はトップブラケットで、機枠体3の前方に横架して支軸6を支点として回動自在に支持される。4の中央にはトラクタ側のトップリンクが連結されている。8は支持バーを示して機枠体3の左右に一対下方に向けて取り付けられている。支持バー8の下端部には後方に向けて傾斜した掘り取り刃体9が設置されている。掘り取り刃体9の先端は刃部10を設けて後端を形成する落下補助板11は微振動される。12は埋め戻し板で、傾斜した掘り取り刃体9が後方に浮上させた栽培土を下方に埋め戻すものである。
18は掘削チェンを示し、生育いもの左右両側部を切断しながら深耕するものである。
16は駆動スプロケットで図示してないが変速ボックス7から伝動される。17はブームで前記駆動スプロケット16とに掛け渡した掘削チェン18を支承する。ブーム17には長さ調整手段33が具備されていて、土性や、作業速度の選択によって、掘削チェン18の上下長さを調整して掘削チェンの下端部と掘り取り刃体9との相対する近接高さを調整する。13はカウンタ軸を示し、変則ボックス7から伝動されて偏心部14を介して連結ロッド15により落下補助板11を微振動させる。19はクリーナーを示し掘り取り刃体9が後方にせり上げた栽培土の上面部を左右に排除して長いもの首を突出させるものである。
5はユニバーサルジョイントでトラクタのPTO軸から伝動されて変速ボックス7を駆動する。24は油圧シリンダでトップブラケット4に対して機枠体3に支持された掘り取り刃体9の姿勢を調整するものである。
図2は本発明の一部を省略した平面図であり、25はロアリンクで、機枠体3の前方両側に連結される。5はユニバーサルジョイントでトラクタ1から伝動されて変速ボックス7に入力される。変速ボックス7は左右の掘削チェン18を駆動し、一方で入力軸に設けた伝道車26を介してカウンタ軸13を回転する。カウンタ軸13の先端には偏心部14を設けて、さらに19のクリーナを左右に揺動する手段を具備してなる。
9は掘り取り刃体を示し、先端部は両側の掘削チェン18の内幅に形成し、掘り取り刃体部の傾斜した後半部は掘削チェンの掘削した溝幅に重なるように広幅に構成したものである。堀取り刃体9は、刃部10の後部に無端ベルトコンベヤを備えること及び無端ベルトコンベヤをモータで駆動しても本発明の主旨を変えるものではない。
【0010】
図3は11の落下補助板の微振動説明図であり、機枠体3に載置された変速ボックス7から伝動車26と伝導帯27を介してカウンタ軸13を回転する。さらにカウンタ軸13の他方端に設けた偏心部14を駆動させて連結ロッド15を上下運動(f1)させてクランクロッド28を往復運動(f2)させる。次いで、落下防止板11は支点軸29を支点として微振動(f3)するものである。
図4は栽培土ブロック30の浮上モデル図を示し、図5は栽培土ブロック30の断面U字形成図を示すものである。図4の掘削チェンは前面から下端に向けて正回転しながら長いもの両側部を切断深耕し、このとき、掘削チェンの下端に近接して配置されている掘り取り刃体の刃部が同時に生育いもの下端に鋤きこまれて断面U字状に一体的に形成される。掘り取り刃体の先端部の刃部10は両側掘削チェンの内幅H1に形成され、後半部は切断深耕溝32に重なる広幅H2に形成され、刃部10でU字状に栽培ブロックを形成した後には、この広幅部分で長いもが傾かないように効率よく栽培ブロックを浮上させるのである。
図6は一部を省略した斜視図で機枠体3に横架した横軸20に対して掘削チェン18と駆動ユニットはスライドシリンダー22に横移動される。トラクタの後部に掘り取り装置を連結したとき、機枠体3に対して支軸3を介してトップブラケット4は設けられ24の油圧シリンダーの伸縮によって掘り取り部の姿勢が制御される。
図7は従来の実施例図を示したもので、掘削チェン18から一定距離L離れて掘り取り刃体9の刃部10が位置しているので、土壌が硬い場合やトラクタ速度をさらに速めようとすると、生育いもの両サイドを掘削チェンが掘削した後に、一定距離Lを経過して、あらためて掘り取り刃体の刃部が長いもの下端に差し込まれる。このとき、傾斜した掘り取り刃体の上面が栽培土ブロックの下層部に圧縮力Pを発生させて長芋に擦り傷を与えることがあった。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明によるトラクタに連結する長いもの掘り取り装置は、大規模プロ農家の長いも圃場において、長いもを無傷で、能率的な収穫作業をするとき利用される。
【符号の説明】
【0012】
1 トラクタの後部
2 3点リンク
3 機枠体
4 トップブラケット
5 ユニバーサルジョイント
6 支軸
7 変速ボックス
8 支持バー
9 掘り取り刃体
10 刃部
11 落下補助板
12 埋め戻し板
13 カウンタ軸
14 偏心軸
15 連結ロッド
16 駆動スプロケット
17 ブーム
18 掘削チェン
19 クリーナー
20 横軸
21 パイプ軸
22 スライドシリンダー
23 長いも掘り取り装置
24 油圧シリンダ
25 ロアリンク
26 伝動車
27 伝動帯
28 クランクロッド
29 支点軸
30 栽培土ブロック
31 長いも
32 深耕溝
33 長さ調整手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7