(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750644
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】エアーテンション装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
H01L21/60 301J
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-547286(P2011-547286)
(86)(22)【出願日】2010年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2010007330
(87)【国際公開番号】WO2011077681
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2009-293838(P2009-293838)
(32)【優先日】2009年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101385
【氏名又は名称】アダマンド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(72)【発明者】
【氏名】溝口 英孝
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 利男
(72)【発明者】
【氏名】照井 広己
【審査官】
▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−368037(JP,A)
【文献】
特開平02−122639(JP,A)
【文献】
特開昭59−068937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーボンディング用金属線を挿通可能な挿通孔を有する挿通管と、該挿通管を挿着支持する支持体と、挿通孔に向かって形成された気体導入路と、気体導入路を介して挿通孔に圧縮気体を供給する開口部を有する圧縮気体供給装置とを備えたエアーテンション装置であり、
前記挿通孔は、第1の挿通孔と、該第1の挿通孔に連通し第1の挿通孔よりも小径の細孔部を有する第2の挿通孔とからなり、
細孔部の孔径は、0.100〜0.070mmであり、かつ細孔部の孔径に対する第1の挿通孔の孔径の比が3.00以上、6.00未満となるように形成し、ワイヤーボンディング用金属線の側部に直接圧縮気体を噴出することを防止し、第2挿通孔の細孔部より広径の第1の挿通孔に流入する圧縮気体により金属線にテンションを付与し、
気体導入路の通路が挿通管の挿通孔に対して十字形状に形成されていることを特徴とするエアーテンション装置。
【請求項2】
第1の挿通孔と、第2の挿通孔が整合し、連通するように設けられている請求項1記載のエアーテンション装置。
【請求項3】
挿通管及び支持体により画定された気体室を更に含み、気体室に連通する圧縮気体供給装置の開口部は、気体導入路の開口部から偏倚した位置に設けられ、これにより金属線に対する圧縮流入気体の圧力の均等化を図り、金属線の損傷を防ぎ且つ所定のテンションの付与を行う請求項1に記載のエアーテンション装置。
【請求項4】
気体導入路は複数の通路を含み、上記挿通管は第1の挿通管及び第2の挿通管から成り、第1の挿通管は第1の挿通孔を有し、第2の挿通管は第2の挿通孔を有し、第1の挿通管の外面、第2の挿通管の外面及び支持体の内周面により画定し形成され気体導入路の通路に連通する気体室を含む請求項1に記載のエアーテンション装置。
【請求項5】
圧縮気体供給装置の開口部は気体導入路の上方部分の気体室に開口している請求項4に記載のエアーテンション装置。
【請求項6】
圧縮気体供給装置の開口部は気体導入路の下方部分の気体室に開口している請求項4に記載のエアーテンション装置。
【請求項7】
圧縮気体供給装置の開口部は、気体導入路間の第1の挿通管の外側壁部に対応する気体室に開口しており、この開口部及び気体導入路の位置がずれて直接対向していない請求項4に記載のエアーテンション装置。
【請求項8】
圧縮気体供給装置からの圧縮気体は第1の挿通管の外側壁部に当たり、気体室内を側壁部に沿って回り、気体導入路に流入し、気体導入路の複数の通路の間の側壁部は圧縮気体導入装置から気体室を介して噴出する圧縮気体を金属線の側部に直接噴射することを防止する請求項7に記載のエアーテンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを結線させるワイヤーボンディング装置に用いられるエアーテンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回路基板上に半導体チップを載せ、該半導体チップの端子と回路基板上のリードとの間を金属線で結線するための装置として、ワイヤーボンディング装置が知られている。
図3A乃至
図3Cに示すように、ワイヤーボンディング装置101は、エアーテンション装置102、クランパ103、キャピラリー104から構成されている。金属線106は、図示しないスプールに巻き取られており、このスプールから引き出された金属線106の先端が上記したエアーテンション装置102、クランパ103及びキャピラリー104に形成されている図示しない挿通孔に挿通され、キャピラリー104の先端部分に位置するように構成されている。
【0003】
クランパ103とキャピラリー104は、上下方向に連動して移動するように構成されている。ワイヤーボンディング装置101(以下、単に装置101という。)によりボンディング作業を行う場合には、まずクランパ103及びキャピラリー104を下降させる。このとき、クランパ103の図示しない挟持部は金属線106を挟持しており、金属線106はクランパ103の下降とともにスプールから所定長さだけ引き出される。そして、
図3Aに示すように、装置101は、リードフレーム110上に設けられた半導体チップ111の端子へ金属線106をボンディングする。
次に、装置101は、クランパ103の挟持部による金属線106の挟持を解除した後、
図3Bに示すようにクランパ103及びキャピラリー104を所定位置まで上昇させる。
次いで、リードフレーム110を載置した図示しないテーブルを水平方向へ移動させて、
図3Cに示すようにリードフレーム110上のリード112をキャピラリー104の下方に位置させる。その後、クランパ103の挟持部に金属線106を挟持した状態でクランパ103及びキャピラリー104を下降させ、金属線106をリード112にボンディングする。
リード112へのボンディング終了後に、キャピラリー104の先端でリード112を擦って金属線106を切断し、その後クランパ103及びキャピラリー104を上昇させて所定位置に戻し、ボンディング作業が終了する。
【0004】
ワイヤーボンディング作業は、一つの半導体チップ111に対して複数本の金属線106をボンディングすることが多く、この場合には、装置101は上述した工程を繰り返しながら一本ずつ金属線をボンディングする。そのため、クランパ103及びキャピラリー104は上下動を繰り返し行い、金属線106も順次スプールから送り出される。その結果、ボンディング作業を行っていく間に金属線106が弛み、半導体チップ111とリード112との間にボンディングされた互いに隣接する金属線同士が接触し、ショートするおそれがある。
【0005】
金属線106の弛みを防止するため、金属線106は、エアーテンション装置102によって常にエアーテンション装置102側へ引っ張られている。この作用により、金属線106は、弛みがない状態で半導体チップ111とリード112にボンディングされるが、ボンディング作業後の半導体チップ111とリード112との間の金属線の弛みをなくし、連続するボンディング作業による金属線の弛みによる金属線同士が接触するような問題を解消する必要がある。
【0006】
エアーテンション装置は、一般にテンション発生管と呼ばれる筒状部材の挿通孔に金属線を挿通させておき、この挿通孔内の気体を流動させることによって、金属線に所定のテンションを付加するように構成された装置である。このようなエアーテンション装置の例としては、例えば、挿通孔内の気体を真空装置で真空排気する作用により挿通孔内の気体を流動させて、金属線に所定のテンションを付加するもの(以下、真空式装置という。)(特許文献1)及び、金属線を挿通させた挿通孔内に所定圧の圧縮気体を供給し、金属線に所定のテンションを付加するもの(以下、加圧式装置という。)がある。
加圧式装置としては、例えば挿通管の全長(L)と挿通孔の直径(d)との関係を、30≦(L/d)≦200となるようにしたものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平2−7468号公報
【特許文献2】特許第3503700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の真空式装置は、挿通孔内の気体を真空排気することで挿通孔下部内の気体を金属線繰出し方向と逆方向に流動させるので、挿通孔内の金属線にテンションが掛るが、加圧式装置と比べて金属線に付加するテンションが小さく、吸引力の変動によっては金属線に弛み発生する虞がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の加圧式装置は、挿通孔内に所定圧の圧縮気体を供給することにより挿通孔内の気体を金属線繰出し方向とは逆方向に流動させるので、真空式装置よりも大きなテンションを金属線に付加することができる。しかし、特許文献2に記載の加圧式装置は、挿通管の全長を長くするか、あるいは挿通孔の直径を小さくしなければ、金属線に付加するテンションを増加させることができない。
ところが、挿通管の挿通孔は、直径が数100μm程度のものが用いられており、これ以上挿通孔の直径を小径にしても、テンションを大幅に増加させることが難しいという問題がある。そのため、特許文献2に記載の加圧式装置において金属線に付加するテンションを増加するには、挿通管の全長を長くせざるを得ず、この場合にはエアーテンション装置が大型化してしまうという別の問題が生じる。また、特許文献のテンション発生管の先端は横方向からのエアー供給孔に対峙する先細りのテーパ形状に形成されており、エアー供給孔からの噴出エアーはこの先細りのテーパ面からボンディングワイヤの繰出し方向(下方向)に流れ、その後テンション発生管5側の空気流通孔に流れ込み、即ちボンディングワイヤの繰出し方向とは逆方向の上昇気流となる。このため上記先細りの先端部ではテーパ面に沿った下方向への噴出エアーの流れとその先端部で逆方向即ち上方向へ向かうエアーの反転作用により上記先細部分に於けるボンディングワイヤに負荷が掛かり損傷を招く虞がある。
【0010】
更に近年は、半導体チップの小型化に伴い、従来よりも更に径の細い金属線を使用することが望まれている。一般に、挿通孔の孔径が同一の場合には、金属線の直径が細くなると金属線に付加されるテンションが小さくなるという問題がある。そのため、特許文献2に記載の加圧式装置の場合には、挿通管の全長をさらに長くして金属線にテンションを付加しなければならず、更に装置自体が大型化してしまうという問題がある。
【0011】
また、挿通孔内に流す圧縮気体の流量を調節することによって金属線に付加するテンションを増加することも可能ではあるが、この方法では、挿通管内を流れる圧縮気体の流量の変化によって金属線に付加されるテンションが大きく変化するため、圧縮気体の流量を調節して金属線に適切なテンションを付加することが困難で、場合によっては金属線を切断するおそれがあるという問題もある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、より少ない気体流量においても細径の金属線に損傷を与えずに適切なテンションを付加することができ、かつそのテンションの調節も非常に簡単且つ容易に行うことが可能なエアーテンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
(1)ワイヤーボンディング用金属線を挿通可能な挿通孔を有する挿通管と、該挿通管を挿着支持する支持体と、挿通孔に向かって形成された気体導入路と、気体導入路を介して挿通孔に圧縮気体を供給する開口部を有する圧縮気体供給装置とを備えたエアーテンション装置であり、前記挿通孔は、第1の挿通孔と、該第1の挿通孔に連通し第1の挿通孔よりも小径の細孔部を有する第2の挿通孔とからなり、細孔部の孔径は、0.100〜0.070mmであり、かつ細孔部の孔径に対する第1の挿通孔の孔径の比が3.00以上、6.00未満となるように形成し、ワイヤーボンディング用金属線の側部に直接圧縮気体を噴出することを防止し、第2挿通孔の細孔部より広径の第1の挿通孔に流入する圧縮気体により金属線にテンションを付与
し、気体導入路の通路が挿通管の挿通孔に対して十字形状に形成されていることを特徴とするエアーテンション装置、
(2)第1の挿通孔と、第2の挿通孔が整合し、連通するように設けられている上記(1)記載のエアーテンション装置。
(
3)挿通管及び支持体により画定された気体室を更に含み、気体室に連通する圧縮気体供給装置の開口部は、気体導入路の開口部から偏倚した位置に設けられ、これにより金属線に対する圧縮流入気体の圧力の均等化を図り、金属線の損傷を防ぎ且つ所定のテンションの付与を行う上記(1)に記載のエアーテンション装置、
(4)気体導入路は複数の通路を含み、上記挿通管は第1の挿通管及び第2の挿通管から成り、第1の挿通管は第1の挿通孔を有し、第2の挿通管は第2の挿通孔を有し、第1の挿通管の外面、第2の挿通管の外面及び支持体の内周面により画定し形成され気体導入路の通路に連通する気体室を含む上記(1)に記載のエアーテンション装置、
(5)圧縮気体供給装置の開口部は気体導入路の上方部分の気体室に開口している上記(4)に記載のエアーテンション装置、
(6)圧縮気体供給装置の開口部は気体導入路の下方部分の気体室に開口している上記(4)に記載のエアーテンション装置、
(7)圧縮気体供給装置の開口部は、気体導入路間の第1の挿通管の外側壁部に対応する気体室に開口しており、この開口部及び気体導入路の位置がずれて直接対向していない上記(4)に記載のエアーテンション装置、
(8)圧縮気体供給装置からの圧縮気体は第1の挿通管の外側壁部に当たり、気体室内を側壁部に沿って回り、気体導入路に流入し、気体導入路の複数の通路の間の側壁部は圧縮気体導入装置から気体室を介して噴出する圧縮気体を金属線の側部に直接噴射することを防止する上記(7)に記載のエアーテンション装置を要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエアーテンション装置に於いて、上部挿通管本体の第1の挿通孔と軸方向に整合された下部挿通管の第2の挿通孔の細孔部の孔径は、0.100〜0.070mmであり、かつ細孔部の孔径に対する上部挿通管本体の第1の挿通孔の孔径の比が3.00以上、6.00未満となるように金属線を挿通する挿通孔を形成し、第2の挿通孔に圧縮気体が流入し難く、第1の挿通孔に圧縮気体が流入し易くしたので、圧縮気体供給装置から供給される圧縮気体の大部分を第1の挿通孔内に流すことができる。このとき、圧縮気体は、第1の挿通孔内を金属線が供給される供給元方向へ向かって流れるため、従来と同径の金属線はもとより、より一層細径の金属線に対してもより大きなテンションを付加させることが出来る。
このように、本発明は、より細径の金属線に対しても適切なテンションを付加してボンディングできるので、金属線が弛んだり撓んだりせず、隣合う金属線同士の接触を防止することが出来、回路基板の品質低下を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のエアーテンション装置の一実施例を示す縦断面図である。
【
図3A】ワイヤーボンディング工程の一例を示す側面略図である。
【
図3B】ワイヤーボンディング工程の一例を示す側面略図である。
【
図3C】ワイヤーボンディング工程の一例を示す側面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本発明のエアーテンション装置1は、金属線2を挿通する挿通孔3を有する挿通管4と、挿通管4を挿通する貫通孔5を有する支持体6とを備え、挿通管4は支持体6の貫通孔5に挿通支持されている。また、支持体6は、挿通孔3に圧縮された気体を供給する圧縮気体供給装置としての圧縮気体供給部7を有している。以下、各部の構成について詳細に説明する。
なお、金属線2は、一般的には20μm〜40μm径の金線を用いられることが多いが、本発明の金属線はこれに限定されるものではなく、20μm〜40μm以外の径の金属線を用いてもよい。また、金属線の材質も金線に限定されるものではなく、アルミニウムや銅等の材質、あるいは該材質を主成分とする合金等のワイヤを用いてもよい。
また、本明細書において、エアーテンション装置の上下左右方向とは、エアーテンション装置を
図1に示すように見た場合における上下左右方向を示すものとする。
【0017】
図1に示すように、挿通管4は、上部挿通管8と下部挿通管9とから構成されており、挿通孔3は、上部挿通管8に設けられた第1の挿通孔10と、下部挿通管9に設けられた第2の挿通孔11とから構成されている。上部挿通管8は、第1の挿通孔10を有する上部挿通管本体12が上部スリーブ13の内部に圧入され、この上部スリーブ13の上部に上部キャップ14が圧入接着固定されて構成されている。また、下部挿通管9は、第2の挿通孔11を有する下部挿通管本体15が下部スリーブ16の内部に圧入固定されて構成されている。
【0018】
第1の挿通孔10及び第2の挿通孔11は、金属線2の挿通が可能な大きさに形成された貫通孔である。これら第1の挿通孔10及び第2の挿通孔11は、上部挿通管8及び下部挿通管9が貫通孔5に取り付けられたときに、孔の中心が同位置になるように形成されている。また、第2の挿通孔11の上部には細孔部17が形成されている。細孔部17は、孔の内径が第1の挿通孔10の内径、及び第2の挿通孔11(細孔部17を除く。)の内径よりも細径となるように形成されている。この細孔部の孔径は、0.100〜0.070mmであることが好ましく、金属線2にテンションを付加する観点からは、0.090〜0.080mmであることがより好ましい。
【0019】
図1に示すように、細孔部17は、第1の挿通孔10との関係においては、第1の挿通孔10の孔径(内径)をφA、細孔部17の孔径(内径)をφBとすると、細孔部17の孔径(φB)に対する第1の挿通孔10の孔径(φA)の比(φA/φB)が3.00以上6.00未満となるように形成されている。この比の値が3.00未満の場合には、細孔部17の内径が大きくなるので、圧縮気体が第1の挿通孔10だけではなく第2の挿通孔11にも流れやすくなり、少ない気体流量で金属線2に所定のテンションを付加することが難しくなる。一方、上記比の値が6.00以上になると、圧縮気体が第2の挿通孔11に流れにくくなり、第1の挿通孔10に殆ど流れるため、過大なテンションが金属線2に加わり好ましくない。
なお、上記比の値は、ワイヤーボンディング時における金属線2へのテンションの付加や金属線2をセットする際の作業の容易さの観点から、3.00以上5.00以下の範囲であることがより好ましい。
また、金属線2にテンションを付加する観点から、第1の挿通孔10と細孔部17とは軸心方向に整合され、連続するように設けられていることが好ましい。
【0020】
また、上部挿通管本体12の下端面には、圧縮気体を挿通孔3内に導入するため、挿通孔3に向かって形成された複数の通路18bを有する気体導入路18が形成されている。この気体導入路18は、
図2に示すように平面から見た場合には十字形状になるように形成されている。
なお、気体導入路18は、上記した趣旨を達成することができればよく、気体導入路18の形状を十字形状に限定するものではなく、例えば導入路を120°間隔で設けてもよい。また、圧縮気体供給装置からの圧縮空気を金属線に横方向から直接噴射させないために、気体導入路18は、金属線2の側部に圧縮気体供給装置7からの圧縮気体を横方向から直接噴射することを防止しつつ圧縮気体を複数の通路18bを介して挿通孔3内に導入できればよく、上部挿通管本体12の下端面以外の場所に設けてもよい。例えば、上部挿通管12の外周面から挿通孔3へ貫通する孔を設けて導入路としてもよい。
【0021】
貫通孔5は、内径が上部挿通管本体12及び下部挿通管本体15の外径よりも大径になるように形成されている。この貫通孔5には、上端部に上部挿通管8がネジ止め固定され、下端部に下部挿通管9がネジ止め固定されるようになっている。上部挿通管8及び下部挿通管9が支持体6に装着された際、貫通孔5と上部挿通管本体12及び下部挿通管本体15との間には、少なくとも貫通孔5の内周面と上部挿通管本体12及び下部挿通管本体15の外周面とで画定、形成された空間部即ち気体室21が設けられる。
【0022】
圧縮気体供給部7の開口部7aは気体室21に連通しており、一例として気体導入路18の開口部18aよりも上方にずれた位置に形成されており、圧縮気体が複数の気体導入路18へ流れ込む構成とし、金属線の横方向に圧縮気体供給部からの圧縮気体を直接噴射しないよう金属線2に過度な応力が発生しない位置に形成されている。
なお、圧縮気体供給装置7は、金属線2に過度な応力が発生しない位置に形成されていればよく、気体導入路18の開口部18aよりも下方にずれた位置に形成されていてもよい。また、圧縮気体供給装置7の開口部7aと気体導入路18の開口部18aとが同じ高さに設けられていても、開口部7aが金属線2と直接対峙しない位置に配置し、両開口部7a,18aが水平にずれた位置に設けられていれば、直接金属線2に圧縮気体の圧力が直接加わらないようにすることができる。
【0023】
また、第1の挿通孔10は、内径が0.300mm〜0.600mmであることが好ましく、0.300mm〜0.400mmであるとより好ましい。内径が0.300mm以下の場合には、金属線2の外径との関係において、圧縮気体の流量の変化が金属線2に付加されるテンションの変動に大きく影響し、過剰なテンションが金属線2に急激に付加されて、金属線2が切断するおそれが高くなる。一方、内径が0.600mm以上の場合には、金属線2に付加されるテンションが急激に変動することは減少するものの、金属線2に付加されるテンションが小さくなりすぎて圧縮気体の流量を増やさなければならず、金属線2に加わるテンションを調整することが困難になる虞がある。
【0024】
上部挿通管本体12及び下部挿通管本体15は、挿通管の強度や硬度、又は配線ショートの原因となりうる導通ゴミ、塵等の発生を防止する面を考慮し、セラミック等の材料を用いることが好ましい。また、上部スリーブ13及び下部スリーブ16は、上部挿通管本体12、下部挿通管本体15が圧入固定され、かつ支持体6に取付け固定することが可能な材料を適宜用いることができるが、加工性や強度の面からステンレス等の金属材料等を用いることが好ましい。
【0025】
なお、上記した実施例では、上部スリーブ13の内部に上部挿通管本体12を圧入し、下部スリーブ16の内部に下部挿通管本体15を圧入するように構成しているが、スリーブと内挿管本体との固定は圧入以外の適宜方法を用いてもよい。また、スリーブと内挿管本体を一体にしたものを用いてもよい。
【0026】
次に、本発明のエアーテンション装置の作用について説明する。本発明のエアーテンション装置1は、第2の挿通孔11の細孔部17の孔径(φB)に対する第1の挿通孔10の孔径(φA)の比(φA/φB)が3.00以上、6.00未満となるように形成されているため、第2の挿通孔11へは圧縮気体が流入し難く、かつ第1の挿通孔10へは圧縮気体が流入し易くすることができ、第1の挿通孔10に流入する圧縮気体の流量と第2の挿通孔11に流入する圧縮気体の流量との間に差異をつけることができる。
【0027】
すなわち、図示しない給気装置から圧縮気体供給装置7を介して気体導入路18から貫通孔5内に供給される圧縮気体の大部分は、上記の比率で細孔部17の孔径よりも大径に形成されている第1の挿通孔10内に流入する。このとき、圧縮気体は第1の挿通孔10の下端から、金属線が供給される供給元方向である上端側に向かって上方向へ流れるので、この圧縮気体によって金属線2にテンションを付加することが可能になる。
したがって、本発明のエアーテンション装置1は、従来と同径の金属線はもとより、従来よりも細径の金属線に対しても、より大きなテンションを常に付加することができるようになるので、弛んだ金属線同士が接触することにより発生する回路基板の品質低下を防止することが可能になる。
【0028】
また、
図1に示すエアーテンション装置1は、少なくとも貫通孔5の内周面、上部挿通管8と下部挿通管9の外周面とで画定し、形成された空間部、即ち気体室21が貫通孔5内に形成されるので、圧縮気体供給装置7から供給される圧縮気体は、一旦この気体室21に流れこんだ後に第1の挿通孔10及び第2の挿通孔11へ流れ込むように流動する。したがって、図示しない給気装置から供給される圧縮気体に圧力変動があった場合、バッファータンクとして機能する気体室21に圧縮気体を一旦流れこませることによって圧力変動の影響を大幅に低減させることが可能になり、常に均圧の圧縮気体を供給することが可能になる。そのため、圧力変動による急激なテンションの変動の影響を受けて金属線2が切断されたり、損傷を受けたりする等の問題を防止することが出来る。
【0029】
また、上記エアーテンション装置1は、圧縮気体供給装置7から供給する圧縮気体が、上部挿通管12に挿入されている金属線2に直接横方向から噴射しないよう、上下スリーブ間に第1の挿通孔10と直交する水平方向の十字形状の気体導入路18及び開口部7aを上下方向にずらして連通させているので、気体室21の圧縮気体は、気体室21内における上部挿通管本体12の周囲を回りこんで4つの開口部18a、即ち4方向から気体導入路18内に流れ込み、気体導入路18同士が交わる位置で圧縮気体が交流し、この流れが分散し、第1の挿通孔10の中心軸上方に向けて長手方向に均圧な圧縮気体を流入させることができる。したがって、圧縮気体を効率よく第1の挿通孔10へ送り込むことが可能になる。更に、他の例として圧縮気体供給装置の開口部は、挿通管本体12の気体導入路間の外側壁部に対応する気体室に開口させることも出来、これによりこの開口部及び気体導入路は直接対向せず、圧縮気体供給装置から噴出する圧縮気体は外側壁部に当たると共に気体室内を回り気体導入路の開口部から均等な気体圧力で流入するので、圧縮気体導入装置からの圧縮気体は気体室を介して金属線2の側部に直接噴射することを防止することが出来る。金属線2に対する圧縮流入気体の圧力の均等化を図り、金属線2の損傷を防ぎ且つ所定の適切なテンションの付与を行うことが出来る。
【0030】
また、本実施例のエアーテンション装置1は、
図1に示すように、圧縮気体供給装置7の開口部7aの位置と気体導入路18の開口部18aの位置とをずらして設けているので、圧縮気体が圧縮気体供給装置7から直接的に金属線2に噴射供給されることがなく、このため金属線2に過度な応力が加わることがなく、金属線2の切断などの事態を確実に防止する。
【実施例1】
【0031】
以下に、具体的実施例を用いて本発明について詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
図1に示す装置において、第1の挿通孔の内径(φA)が0.300mm、及び0.400mmの2種類の上部挿通管本体と、細孔部の内径(φB)が0.080mm、0.090mm、0.100mm、0.110mm、0.120mm及び0.130mmの6種類の下部挿通管本体を用いた。このときの第1の挿通孔の内径と細孔部の内径の比(φA/φB)は、第1の挿通孔の内径(φA)が0.300mmの場合は、それぞれ3.75、3.33、3.00、2.73、2.50及び2.31であり、第1の挿通孔の内径(φA)が0.400mmの場合は、それぞれ5.00、4.44、4.00、3.64、3.33及び3.08であった。また、上部挿通管本体の全長(L1)が30.0mmの上部挿通管と、下部挿通管本体の細孔部の全長(L2)が1.50mmの下部挿通管を用いた。
また、第1の挿通孔及び細孔部内を挿通する金属線には、種々の金属線の中から20μm径の金線を用いた。この金線は、上部挿通管の上端面から供給され、下部挿通管の下端面から延出させた。また、下部挿通管の下端面から延出させた金線は、クランパ及びキャピラリー内を挿通させ、キャピラリーの先端から延出させた。
圧縮気体としては、一次圧が0.5MPaの圧縮気体を流量調整弁で調整し、二次側の気体流量を1l/minに調整したものをエアーテンション装置に供給した。なお、この二次側の気体流量は、流量調整弁の下流側に設けたマスフローメータで測定した。
【0032】
(試験方法)
本実施例では、まず第1の挿通孔の内径(φA)が0.300mmの上部挿通管本体と細孔部の内径(φB)が0.080mmの下部挿通管本体とを用いて、一辺が3mmの正方形状の半導体チップ10個に対して、ワイヤーボンディングを50本ずつ行い、ボンディングされた金線に不具合の要因となるような弛みが生じていないかを倍率20倍の光学顕微鏡を用い目視により確認を行った。この試験により、不具合の要因となるような弛みが生じている金線が10個の半導体チップの中で3本以下であったものを合格とし、4本以上であったものを不合格とした。
その後、細孔部の内径(φB)が0.090mm、0.100mm、0.110mm、0.120mm及び0.130mmの各下部挿通管本体との組み合わせについても同様の方法で試験を行った。次に、第1の挿通孔の内径(φA)が0.400mmの上部挿通管本体を用い、上記と同様の方法で試験を行い、合否を判定した。
【0033】
上記の試験を行った結果、上部挿通管本体の第1の挿通孔の内径(φA)が0.300mm及び0.400mmとどちらの装置を用いても、下部挿通管本体の細孔部の内径(φB)が0.080mm、0.090mm、0.100mmであり、かつ上記第1の挿通孔の内径と細孔部の内径の比(φA/φB)の値が、第1の挿通孔の内径(φA)が0.300mmのときは3.75、3.33、3.00、第1の挿通孔の内径(φA)が0.400mmのときは5.00、4.44、4.00であった場合には、10個の半導体チップの中で不具合の要因となるような弛みの生じている金線は、0〜2本と合格判定であった。
このことから、下部挿通管本体の細孔部の孔径を0.100mm〜0.070mm、かつ上記比の値を3.00以上6.00未満にすることによって、金線の弛みをなくすことができることが分かった。
【符号の説明】
【0034】
1 エアーテンション装置
2 金属線
3 挿通孔
4 挿通管
5 貫通孔
6 支持体
7 圧縮気体供給装置
7a 開口部
8 上部挿通管
9 下部挿通管
10 第1の挿通孔
11 第2の挿通孔
12 上部挿通管本体
15 下部挿通管本体
17 細孔部
18 気体導入路
18a 開口部
18b 通路
21 気体室