【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、上記問題を解決するために鋭意研究を行った結果、ミクロンからサブミクロンサイズに集束したプロトンビームによる集束プロトンビーム微細加工法、又は分子イオンビーム微細加工法を用いて、微小二次元平面上に電界不均一性を誘発する三次元構造体を導入することにより、細菌の濃縮効果を高めることが可能であることを見出し本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本願の第1の発明にかかる三次元誘電泳動デバイスは、所定のギャップ幅を有する電極が形成された基板と、基板上に形成され、導入された微小誘電体の流路を形成する流路形成部材と、基板上の流路中途に立設された複数の突出部材と、を備え、突出部材は電極間で発生した電界を不均一化させることにより、流路を介して流入した微小誘電体に誘電泳動力を発生させることを特徴とする。
【0012】
第1の発明では、上記三次元誘電泳動デバイスは、基板上の流路中途に立設された複数の突出部材を備える。したがって、微小誘電体に対する突出部材の高さ方向への実効的な濃縮面積を増加させることができると共に、突出部材により不均一化された電界に起因する実効的な濃縮体積を増加させることができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、突出部材は集束プロトンビーム微細加工法により形成されることを特徴とする。
【0014】
第2の発明では、上記突出部材は、集束プロトンビーム微細加工法により形成される。集束プロトンビームは、同じ侵入深さの電子線に比べて横方向散乱が少ない、任意の描画パターンを直接描画可能、イオンの侵入深さを加速エネルギーにより制御可能という特徴を有し、X線やEUV線等で不可欠なマスクを必要とせず、低コスト、且つ、連続的に自由度の高い微細加工を行うことができる。したがって、集束プロトンビーム微細加工法により突出部材を形成することで、微小誘電体の濃縮効果を効果的に高めることが可能となる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明において、突出部材は分子イオンビーム微細加工法により形成されることを特徴とする。
【0016】
第3の発明では、上記突出部材は、分子イオンビーム微細加工法により形成される。例えば、水素分子イオン(H
2+)、プロトン化水素分子(H
3+)等の分子イオンを分子イオンビームとして用いると、照射表面において、照射された分子がそれぞれ2個、若しくは3個のプロトン(H
+)に解離し、その加速エネルギーはそれぞれ1/2、若しくは1/3に分割される。すなわち、分子イオンビームによれば、一度の照射動作に伴い、集束プロトンビームの加速エネルギーを1/2、若しくは1/3に変更して照射した場合と同様な効果を得ることができ、イオン加速器の加速電圧を変更することなく、異なる加工深さの構造物を迅速に形成することができる。また、分子イオンビームは、集束プロトンビームと同様に、任意の描画パターンを直接描画可能、イオンの侵入深さを加速エネルギーにより制御可能という特徴を有し、X線やEUV線等で不可欠なマスクを必要とせず、低コスト、且つ、連続的に自由度の高い微細加工を行うことができる。したがって、分子イオンビーム微細加工法により突出部材を形成することで、微小誘電体の濃縮効果を効果的に高めることが可能となる。
【0017】
第4の発明は、第1乃至第3の何れかの発明において、突出部材はピラー形状であることを特徴とする。
【0018】
第4の発明では、上記突出部材はピラー形状であり、所定のアスペクト比を持って形成され、これらの突出部材は所定の間隔毎に基板上に立設されている。このような構成とすることで、基板面に対して平行方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。
【0019】
第5の発明は、第4の発明において、突出部材は周面に突条部を備えることを特徴とする。また、第6の発明は、第4の発明において、突出部材は周面に突起部を備えることを特徴とする。
【0020】
第5の発明では、上記突出部材は周面に突条部を備える。また、第6の発明では、上記突出部材は周面に突起部を備える。このような構成とすることにより、第4の発明における効果に加え、突出部材の表面に形成された突条部は、突出部材の実効的な密度(表面積)を上げることができる。又、突起部によって基板面に対して垂直方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。
【0021】
第7の発明は、第1乃至第3の何れかの発明において、突出部材は四角柱形状であることを特徴とする。
【0022】
第7の発明では、上記突出部材は四角柱形状であり、これらの突出部材は所定の間隔毎に基板上に立設されている。このような構成とすることにより、基板面に対して平行方向、又は垂直方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。
【0023】
第8の発明は、第1乃至第7の何れかの発明において、微小誘電体は細菌であることを特徴とする。
【0024】
第8の発明では、上記微小誘電体は細菌であるため、例えば、病原性大腸菌やサルモネラ菌といった食中毒の原因となる細菌等を特異的に濃縮することができる。
【0025】
第9の発明にかかる三次元誘電泳動デバイスは、所定のギャップ幅を有する電極が形成された基板と、基板上の流路中途に所定のアスペクト比を持って形成され、所定の間隔毎に立設された複数のピラー形状部材と、を備え、ピラー形状部材は電極間で発生した電界を不均一化させることにより、流路を介して流入した微小誘電体に誘電泳動力を発生させることを特徴とする。
【0026】
第9の発明では、上記三次元誘電泳動デバイスは、基板上の流路中途に所定のアスペクト比を持って形成され、所定の間隔毎に立設された複数のピラー形状部材を備える。このような構成とすることで、基板面に対して平行方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。その結果、微小誘電体に対するピラー形状部材の高さ方向への実効的な濃縮面積を増加させることができると共に、ピラー形状部材により不均一化された電界に起因する実効的な濃縮体積を増加させることができる。
【0027】
第10の発明は、第9の発明において、ピラー形状部材は集束プロトンビーム微細加工法により形成されることを特徴とする。
【0028】
第10の発明では、上記ピラー形状部材は、集束プロトンビーム微細加工法により形成されるため、微小誘電体の濃縮効果を効果的に高めることが可能となる。
【0029】
第11の発明は、第9の発明において、ピラー形状部材は分子イオンビーム微細加工法により形成されることを特徴とする。
【0030】
第11の発明では、上記ピラー形状部材は、分子イオンビーム微細加工法により形成されるため、微小誘電体の濃縮効果を効果的に高めることが可能となる。
【0031】
第12の発明は、第9乃至第11の何れかの発明において、ピラー形状部材は周面に突条部を備えることを特徴とする。また、第13の発明は、第9乃至第11の何れかの発明において、ピラー形状部材は周面に突起部を備えることを特徴とする。
【0032】
第12の発明では、上記ピラー形状部材は周面に突条部を備える。また、第13の発明では、上記ピラー形状部材は周面に突起部を備える。このような構成とすることにより、第9乃至第11の何れかの発明における効果に加え、ピラー形状部材の表面に形成された突条部は、ピラー形状部材の実効的な密度(表面積)を上げることができる。又、突起部によって基板面に対して垂直方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。
【0033】
第14の発明は、第9乃至第13の何れかの発明において、微小誘電体は細菌であることを特徴とする。
【0034】
第14の発明では、上記微小誘電体は細菌であるため、例えば、病原性大腸菌やサルモネラ菌といった食中毒の原因となる細菌等を特異的に濃縮することができる。
【0035】
第15の発明にかかる三次元誘電泳動デバイスは、所定のギャップ幅を有する電極が形成された基板と、基板上に形成され、導入された微小誘電体の流路を形成する流路形成部材と、流路形成部材の上面部と一体成型され、微小誘電体の流路からの漏洩を防止する蓋部材と、基板上の流路中途に立設された複数の突出部材と、を備え、突出部材は電極間で発生した電界を不均一化させることにより、流路を介して流入した微小誘電体に誘電泳動力を発生させることを特徴とする。
【0036】
第15の発明では、上記三次元誘電泳動デバイスは、基板上の流路中途に立設された複数の突出部材を備える。したがって、微小誘電体に対する突出部材の高さ方向への実効的な濃縮面積を増加させることができると共に、突出部材により不均一化された電界に起因する実効的な濃縮体積を増加させることができる。また、上記三次元誘電泳動デバイスは流路形成部材の上面部と一体成型された蓋部材を備えるため、微小誘電体の流路からの漏洩を防止すると共に、菌体数計測装置の計測部に脱着可能な計測ユニットとして適用することができる。
【0037】
第16の発明は、第15の発明において、突出部材は集束プロトンビーム微細加工法により形成されることを特徴とする。
【0038】
第16の発明では、上記突出部材は、集束プロトンビーム微細加工法により形成されるため、微小誘電体の濃縮効果を効果的に高めることが可能となる。
【0039】
第17の発明は、第15の発明において、突出部材は分子イオンビーム微細加工法により形成されることを特徴とする。
【0040】
第17の発明では、上記突出部材は、分子イオンビーム微細加工法により形成されるため、微小誘電体の濃縮効果を効果的に高めることが可能となる。
【0041】
第18の発明は、第15乃至第17の何れかの発明において、突出部材はピラー形状であることを特徴とする。
【0042】
第18の発明では、上記突出部材はピラー形状であり、所定のアスペクト比を持って形成され、これらの突出部材は所定の間隔毎に基板上に立設されている。このような構成とすることで、基板面に対して平行方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。
【0043】
第19の発明は、第18の発明において、突出部材は周面に突条部を備えることを特徴とする。また、第20の発明は、第18の発明において、突出部材は周面に突起部を備えることを特徴とする。
【0044】
第19の発明では、上記突出部材は周面に突条部を備える。また、第20の発明では、上記突出部材は周面に突起部を備える。このような構成とすることにより、第18の発明における効果に加え、突出部材の表面に形成された突条部は、突出部材の実効的な密度(表面積)を上げることができる。又、突起部によって基板面に対して垂直方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。
【0045】
第21の発明は、第15乃至第17の何れかの発明において、突出部材は四角柱形状であることを特徴とする。
【0046】
第21の発明では、上記突出部材は四角柱形状であり、これらの突出部材は所定の間隔毎に基板上に立設されている。このような構成とすることにより、基板面に対して平行方向、又は垂直方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。
【0047】
第22の発明は、第15乃至第21の何れかの発明において、微小誘電体は細菌であることを特徴とする。
【0048】
第22の発明では、上記微小誘電体は細菌であるため、例えば、病原性大腸菌やサルモネラ菌といった食中毒の原因となる細菌等を特異的に濃縮することができる。
【0049】
第23の発明にかかる三次元誘電泳動デバイスは、所定のギャップ幅を有する電極が形成された基板と、基板上に形成され、導入された微小誘電体の流路を形成する流路形成部材と、流路形成部材の上面部と一体成型され、微小誘電体の流路からの漏洩を防止する蓋部材と、基板上の流路中途に立設された複数のピラー形状部材と、を備え、ピラー形状部材は電極間で発生した電界を不均一化させることにより、流路を介して流入した微小誘電体に誘電泳動力を発生させることを特徴とする。
【0050】
第23の発明では、上記三次元誘電泳動デバイスは、基板上の流路中途に所定のアスペクト比を持って形成され、所定の間隔毎に立設された複数のピラー形状部材を備える。このような構成とすることで、基板面に対して平行方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。その結果、微小誘電体に対するピラー形状部材の高さ方向への実効的な濃縮面積を増加させることができると共に、ピラー形状部材により不均一化された電界に起因する実効的な濃縮体積を増加させることができる。また、上記三次元誘電泳動デバイスは流路形成部材の上面部と一体成型された蓋部材を備えるため、微小誘電体の流路からの漏洩を防止すると共に、菌体数計測装置の計測部に脱着可能な計測ユニットとして適用することができる。
【0051】
第24の発明は、第23の発明において、ピラー形状部材は集束プロトンビーム微細加工法により形成されることを特徴とする。
【0052】
第24の発明では、上記ピラー形状部材は、集束プロトンビーム微細加工法により形成されるため、微小誘電体の濃縮効果を効果的に高めることが可能となる。
【0053】
第25の発明は、第23の発明において、ピラー形状部材は分子イオンビーム微細加工法により形成されることを特徴とする。
【0054】
第25の発明では、上記ピラー形状部材は、分子イオンビーム微細加工法により形成されるため、微小誘電体の濃縮効果を効果的に高めることが可能となる。
【0055】
第26の発明は、第23乃至第25の何れかの発明において、ピラー形状部材は周面に突条部を備えることを特徴とする。また、第27の発明は、第23乃至第25の何れかの発明において、ピラー形状部材は周面に突起部を備えることを特徴とする。
【0056】
第26の発明では、上記ピラー形状部材は周面に突条部を備える。また、第27の発明では、上記ピラー形状部材は周面に突起部を備える。このような構成とすることにより、第23乃至第25の何れかの発明における効果に加え、ピラー形状部材の表面に形成された突条部は、ピラー形状部材の実効的な密度(表面積)を上げることができる。又、突起部によって基板面に対して垂直方向の誘電泳動力を効果的に誘起させることができる。
【0057】
第28の発明は、第23乃至第27の何れかの発明において、微小誘電体は細菌であることを特徴とする。
【0058】
第28の発明では、上記微小誘電体は細菌であるため、例えば、病原性大腸菌やサルモネラ菌といった食中毒の原因となる細菌等を特異的に濃縮することができる。