特許第5750682号(P5750682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北田 保雄の特許一覧

<>
  • 特許5750682-電気回転機 図000002
  • 特許5750682-電気回転機 図000003
  • 特許5750682-電気回転機 図000004
  • 特許5750682-電気回転機 図000005
  • 特許5750682-電気回転機 図000006
  • 特許5750682-電気回転機 図000007
  • 特許5750682-電気回転機 図000008
  • 特許5750682-電気回転機 図000009
  • 特許5750682-電気回転機 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5750682
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】電気回転機
(51)【国際特許分類】
   H02K 47/20 20060101AFI20150702BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20150702BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20150702BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20150702BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   H02K47/20
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 501K
   H02K21/14 G
   H02K21/14 M
   H02K1/22 A
   H02K9/19 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-30391(P2014-30391)
(22)【出願日】2014年2月20日
【審査請求日】2014年8月5日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391011021
【氏名又は名称】北田 保雄
(72)【発明者】
【氏名】北田保雄
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2002/091548(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1445916(CN,A)
【文献】 特開2012−005218(JP,A)
【文献】 特開2007−166797(JP,A)
【文献】 特開2011−067006(JP,A)
【文献】 米国特許第03931535(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 47/22−47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石(3)を円周方向に配列して表裏各面にそれぞれ第1磁界部(4a)と第2磁界部(4b)とを形成した回転自在なロータ(5)と、このロータ(5)の第1磁界部(4a)と対面する巻線(6a)を巻いた第1ステータ(7a)と、ロータ(5)の第2磁界部(4b)と対面する巻線(6b)を巻いた第2ステータ(7b)と、前記第1ステータ(7a)と第2ステータ(7b)とを固定しかつロータ(5)を包囲したケース(8)とを有しており、
前記第1ステータ(7a)又は第2ステータ(7b)の一方の巻線(6)に給電してロータ(5)を回転駆動する給電装置(9)と、前記駆動されるロータ(5)の回転によって他方の巻線(6)に発生する電気を取り出す集電装置(10)とを備えており、
前記第1磁界部(4a)及び第1ステータ(7a)と第2磁界部(4b)及び第2ステータ(7b)とは、給電する側と発電する側の交流電流の周波数が異なっており、
前記ロータ(5)は、第1磁界部(4a)及び第2磁界部(4b)を設けた円筒部(5a)の両端が自由端の円筒体であり、前記給電装置(9)は、一方の巻線(6)に給電する交流電流を周方向等間隔にかつ複数同時に同極に励磁可能であることを特徴とする電気回転機。
【請求項2】
前記永久磁石(3)はロータ(5)内に埋め込まれていて、永久磁石(3)の両端でロータ表裏の第1磁界部(4a)と第2磁界部(4b)とを形成していることを特徴とする請求項1に記載の電気回転機。
【請求項3】
前記第1ステータ(7a)又は第2ステータ(7b)の少なくとも一方は、超電導巻線(6)を巻くとともに臨界温度以下に冷却する超電導冷却装置(11)と接続していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気回転機。
【請求項4】
前記第1ステータ(7a)及び第2ステータ(7b)の両方に超電導巻線(6)を巻いており、
前記ロータ(5)は円周方向に間隔をおいて超電導バルクを設け、この超電導バルクを臨界温度にしながら又は臨界温度にしてから、第1ステータ(7a)及び第2ステータ(7b)の両方の超電導巻線(6)を異なる磁極に励磁して、超電導バルクに着磁して前記永久磁石(3)を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気回転機。
【請求項5】
前記第1ステータ(7a)と第2ステータ(7b)とはスロット数が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気回転機。
【請求項6】
前記ロータ(5)の第1磁界部(4a)と第2磁界部(4b)とは磁極数が異なることを特徴とする請求項1又は3に記載の電気回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータとステータとを有する電気回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気回転機として同期電動発電機(モータジェネレータ)があり、1台でモータ(電動機)又はジェネレータ(発電機)として作動される。
特許文献1に開示された回転型周波数変換装置は、電動機と発電機とを軸連結して、周波数の異なる系統間で電力の授受を行うように構成されている。
特許文献2のポット型推進器においては、アキシャルギャップ式又はラジアルギャップ式超電導電動機であり、1個のロータを挟んで2個のステータを配置し、ステータの巻線で発生する磁界でロータを電磁誘導にて回転する回転電機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−273268号公報
【特許文献2】特開2007−245947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、1台のモータジェネレータは、電動態様(モータ態様)と発電態様(ジェネレータ態様)とに切り替え可能であるが、瞬間においてはどちらか一方の態様のみで、2つの態様を同時に採り得ることができない。
したがって、前記従来の回転型周波数変換装置は、電流の周波数を変換するのに、ひとつの周波数で電動機を回転し、その回転力で軸連結した発電機を駆動して他の周波数の電流を得なければならなく、2台の回転機を必要とするので、動力ロスが発生して変換効率が悪く、かつコスト高になっている。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした電気回転機を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、1個のロータの表裏を周波数の異なる電動態様と発電態様とに同時に使用できるようにした電気回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、永久磁石3を円周方向に配列して表裏各面にそれぞれ第1磁界部4aと第2磁界部4bとを形成した回転自在なロータ5と、このロータ5の第1磁界部4aと対面する巻線6aを巻いた第1ステータ7aと、ロータ5の第2磁界部4bと対面する巻線6bを巻いた第2ステータ7bと、前記第1ステータ7aと第2ステータ7bとを固定しかつロータ5を包囲したケース8とを有しており、
前記第1ステータ7a又は第2ステータ7bの一方の巻線6に給電してロータ5を回転駆動する給電装置9と、前記駆動されるロータ5の回転によって他方の巻線6に発生する電気を取り出す集電装置10とを備えており、
前記第1磁界部4a及び第1ステータ7aと第2磁界部4b及び第2ステータ7bとは、給電する側と発電する側の交流電流の周波数が異なっていることを特徴とする。
【0007】
第2に、前記永久磁石3はロータ5の表裏各面側に配列して、それぞれ個別の永久磁石3a、3bで第1磁界部4aと第2磁界部4bとを形成していることを特徴とする。
第3に、前記永久磁石3はロータ5内に埋め込まれていて、永久磁石3の両端でロータ表裏の第1磁界部4aと第2磁界部4bとを形成していることを特徴とする。
【0008】
第4に、前記ロータ5は軸心回り回転自在な円筒部5aを有し、円筒部5aの外周面に第1磁界部4aを形成しかつ内周面に第2磁界部4bを形成しており、
第1ステータ7aはロータ5の第1磁界部4aと対面する円形の内周面に第1ステータ磁界αを形成し、第2ステータ7bはロータ5の第2磁界部4bと対面する円形の外周面に第2ステータ磁界βを形成していることを特徴とする。
【0009】
第5に、前記ロータ5は、第1磁界部4a及び第2磁界部4bを設けた円筒部5aの両端が自由端の円筒体であり、前記給電装置9は、一方の巻線6に給電する交流電流を周方向等間隔にかつ複数同時に同極に励磁可能であることを特徴とする。
第6に、前記第1ステータ7a又は第2ステータ7bの少なくとも一方は、超電導巻線6を巻くとともに臨界温度以下に冷却する超電導冷却装置11と接続していることを特徴とする。
【0010】
第7に、前記第1ステータ7a及び第2ステータ7bの両方に超電導巻線6を巻いており、前記ロータ5は円周方向に間隔をおいて超電導バルクを設け、この超電導バルクを臨界温度にしながら又は臨界温度にしてから、第1ステータ7a及び第2ステータ7bの両方の超電導巻線6を異なる磁極に励磁して、超電導バルクに着磁して前記永久磁石3を形成していることを特徴とする。
第8に、前記第1ステータ7aと第2ステータ7bとはスロット数が異なることを特徴とする。
第9に、前記ロータ5の第1磁界部4aと第2磁界部4bとは磁極数が異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1個のロータの表裏を周波数の異なる電動態様と発電態様とに同時に使用できる。
即ち、本発明は、表裏に第1磁界部4aと第2磁界部4bとを形成した1個のロータ5に対して、その表裏に対面する第1、第2ステータ7a、7bに給電と集電とをそれぞれ行わせて、1台の電気回転機で1個のロータ5を共用して周波数の異なる電動態様と発電態様とを同時に採ることができる。
【0012】
また、本発明は、一方の巻線6に給電される交流電流の周波数と、他方の巻線6に発生する交流電流の周波数とを異ならせていることにより、ロータ5と一方のステータ7の巻線6とで1つの周波数で回転する電動機となり、ロータ5と他方のステータ7の巻線とで周波数の異なる発電機となり、周波数の変換ができる。
また、本発明は、第1ステータ7a又は第2ステータ7bの少なくとも一方に超電導冷却装置11を接続して、超電導巻線6を臨界温度以下に冷却することにより、超電導電動態様及び超電導発電態様にすることができ、ロータ5の回転効率を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態を示す断面正面図である。
図2図1のZ−Z線断面図である。
図3】本発明の第2実施形態を示す断面正面図である。
図4図3のW−W線断面図である。
図5】ロータの表裏磁界部形成構造の第1変形例を示す断面図である。
図6】ロータの表裏磁界部形成構造の第2変形例を示す断面図である。
図7】ロータの表裏磁界部形成構造の第3変形例を示す断面図である。
図8】ロータの表裏磁界部形成構造の第4変形例を示す断面図である。
図9】本発明の第3実施形態を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1、2は本発明の第1実施形態を示しており、図3において、電気回転機1Aは三相交流用の電動発電機(モータジェネレータ)であって、回転型周波数変換機、サイクロコンバータ、風力発電機の可変速機(DFM)等として利用できるものである。この電気回転機1Aは、給電装置9、集電装置10、インバータ(コンバータを含む)16及びバッテリ17等を備えた制御部18と接続されている。
【0015】
前記電気回転機1Aは大別して、1個のロータ5と、2個のステータ7a、7bと、これらを収納しかつ支持するケース8と、このケース8に固定されていてステータ7bを支持する支持体13と有し、ステータ7a、7bは三相交流電流を給電及び集電可能になっている。
前記ロータ5は、円筒形の円筒部5aと、この円筒部5aの両端の延長上の回転軸部5bとを有し、円筒部5aと回転軸部5bとは一体に形成されており、回転軸部5b及び出力軸部5cはそれぞれ軸受40、41を介してケース8に対して回転自在に支持されている。
【0016】
円筒部5aは表裏に円形外周面(第1)と円形内周面(第2)とを有し、円形外周面には永久磁石3aを円周方向に複数個配列して第1磁界部4aが形成され、円形内周面には永久磁石3bを円周方向に複数個配列して第2磁界部4bが形成されている。
第1ステータ7aは珪素鋼板を多数枚重ねて巻線(コイル)6aを分巻き又は集中巻きして形成し、ケース8の外周壁8aの内周面に圧入固定したものであり、円形内周面に第1回転磁界(第1ステータ磁界、表回転磁界)αを形成し、この第1回転磁界αをロータ5の第1磁界部4aと僅少間隙(ラジアルギャップ)を介して対面させている。
【0017】
第2ステータ7bは珪素鋼板を多数枚重ねて巻線(コイル)6bを分巻き又は集中巻きして形成し、ケース8の中心に固定した水平状の支持体13の外周面に嵌着固定したものであり、円形外周面に第2回転磁界(第2ステータ磁界、裏回転磁界)βを形成し、この第2回転磁界βをロータ5の第2磁界部4bと僅少間隙(ラジアルギャップ)を介して対面させている。なお、ロータ5の円形外周面側を第2、裏と称し、円形内周面側を第1、表と称してもよい。
【0018】
前記ロータ5の第1磁界部4aと第1ステータ7aの第1回転磁界αとはインナロータモータ構造(第1回転部M1)になっており、また、ロータ5の第2磁界部4bと第2ステータ7bの第2回転磁界βとはアウタロータモータ構造(第2回転部M2)になっており、第1回転部M1(インナロータ)と第2回転部M2(アウタロータ)とのスロット数は異なっており、図2では、第2ステータ7bのスロットは第1ステータ7aより少なく、例えば、5:6の比率となっていて、回転磁界の極数、供給電流の周波数と発電電流の周波数とが異なるように設定されている。
【0019】
前記水平状の支持体13は、一端側がケース8の側壁8bに嵌入固定され、他端側が蓋部材8c嵌入支持され、中途部で第2ステータ7bを装着している。この支持体13で軸受を介して回転軸部5bを支持してもよい。
前記ケース8の外周壁8aには水等の冷却用冷媒を流通する流通路11aが形成され、支持体13にも冷却用冷媒を流通する流通路11bが形成され、これら流通路11a、11bは外部の冷却装置11に接続されており、ケース8内部へ冷却用冷媒を循環できるようになっている。
【0020】
前記ロータ5の円筒部5aの第1磁界部4aは、それぞれ永久磁石3aをN極とS極とが外周方向交互になるように配置しており、珪素鋼板に磁石孔を形成して埋め込んだ埋め込み構造であり、各永久磁石3aにより外周面側の珪素鋼板部分も第1磁界部4aを形成している。第2磁界部4bも同様に、永久磁石3bをN極とS極とが内周方向交互になるように埋め込み配置している。なお、永久磁石3(3a、3b)は円筒部5aの内外周面に貼り付けてもよい。
【0021】
ロータ5の円筒部5aの第1磁界部4aと第2磁界部4bとは別個の永久磁石3aを周方向同位相に配置しており、互いに対向する永久磁石3aは第1磁界と第2磁界とを異なる極で形成して、対向する永久磁石3a同士が一連の磁力線の磁路を形成している。しかし、第1磁界と第2磁界とを同一の極で形成することも可能である。
【0022】
ケース8の側壁8b及び蓋部材8cの内側側面に回転軸部5bと同心のリング状の軸受支持部材36、37を設け、この軸受支持部材36、37に回転軸部5bの端部を挿入する環状溝を形成し、この環状溝内と回転軸部5bの内周面、外周面及び端面との間に、回転軸部5bをスラスト方向及びラジアル方向に位置規制する永久磁石又は電磁石を設けて磁気の軸受40、41を構成している。
【0023】
前記電気回転機1Aは、1つのロータ5と第1ステータ7a及び第2ステータ7bとの間で、電動態様と発電態様とを常に同時に発生することができ、第2ステータ7bに50サイクルの電流を供給してロータ5を回転させると、ロータ5と第1ステータ7aとは60サイクルの発電機となり、また、逆に第1ステータ7aに60サイクルの電流を供給してロータ5を回転させると、ロータ5と第2ステータ7bとは50サイクルの発電機となり、供給電流から周波数変換した電流を発電できる。
【0024】
前記制御部18の給電装置9は、第1ステータ7a及び第2ステータ7bの一方又は両方の巻線6(6a、6b)に給電してロータ5を回転駆動可能になっており、集電装置10は、第1ステータ7a及び第2ステータ7bの一方又は両方の巻線6から発電した電力を集電可能になっている。また、第1ステータ7aと第2ステータ7bの一方に給電するときに、他方は給電を停止して発電することができる。
【0025】
従って、発電開始時には、第1ステータ7a及び第2ステータ7bに同時に電流を供給して電動態様にし、ロータ5が高速回転してから、一方のステータ7を発電態様にすることも可能である。
なお、前記第1回転磁界αのスロット数及び永久磁石3aの個数に対して第2回転磁界βのスロット数及び永久磁石3bの個数を異ならせたり、第1回転磁界αと第2回転磁界βの巻線長さを異ならせたりして、第1回転部M1と第2回転部M2とに出力、発電量等の能力差をつけてもよい。
【0026】
前記電気回転機1Aは、第1ステータ7a及び第2ステータ7bに常温巻線を巻いていて、冷却装置11の冷媒は、水、油等である。第1ステータ7aと第2ステータ7bの少なくとも一方の巻線を超電導巻線で形成する場合は、冷却装置11の冷媒に液体窒素、液体ヘリウムを用い、超電導巻線製巻線のステータSを臨界温度以下の超電導発生温度まで冷却させる。
【0027】
図3、4示す本発明の第2実施形態において、電気回転機1Bのロータ5は、円筒形の円筒部5aのみで構成され、円形外周面に永久磁石3aを円周方向に複数個配列して第1磁界部4aが形成され、円形内周面に永久磁石3bを円周方向に複数個配列して第2磁界部4bが形成され、永久磁石3a、3bの個数、即ち、5:6の比率で磁極数が異なっている。
第1ステータ7aと第2ステータ7bの巻線6a、6bは常温用又は超電導用であり、一方を電動態様としかつ他方を発電態様として使用されるが、電動態様のステータ7には、180°偏位した2箇所で同一磁極が形成されるように電流が供給され、ロータ5に180°対極位置で同一の吸引力又は反発力を発生させ、ロータ5と第1ステータ7a及び第2ステータ7bとの間に適切な僅少間隙を確保するようにしている。
【0028】
即ち、120°間隔で3つのスロットをU相・V相・W相に設定し、この相組を180°偏位して2相組つくり、また、90°間隔で4相組つくることにより、ロータ5をステータ7による回転磁界で支持できる。回転磁界をつくるステータ7の巻線を巻き方を、NS極の組を180°偏位して2組つくり、その2組と90°偏位して2組つくり、それら4組と45°偏位して4組つくると、回転磁界でロータ5を磁気で支持できる。
電動態様のステータ7の周方向同一磁極は、180°偏位の2箇所、90°偏位の4箇所、45°偏位の8箇所等、複数同時に励磁させればよく、ロータ5を電動態様のステータ7から磁力で浮き上がらせればよい。これは、前記第1実施形態にも適用できる。なお、ロータ5と第2ステータ7bとの間に金属接触を回避するために、ラジアルギャップより薄い肉厚のスペーサは配置することが好ましい。
前記第1、第2実施形態の電気回転機1A、1Bは、ロータ5は磁気軸受で支持されていて、機械的摩擦がないので回転効率が高く、1個のロータ5を回転するだけであるので、電動機と発電機とを別個に製作して軸連結する回転型周波数変換機に比べて、回転ロスが少なく、周波数変換効率を大幅に向上できる。
【0029】
図5は、ロータ5の表裏磁界部形成構造の第1変形例を示しており、ロータ5の円筒部5aに埋設された永久磁石3は円筒部5aをNS極を径方向にして貫通していて、その径方向両端で円筒部5aの表裏に円形外周面の第1磁界部4aと円形内周面の第2磁界部4bとを形成している。
前記第1ステータ7aと第2ステータ7bとに超電導用巻線を巻いて、電気回転機1を超電導回転機とする場合、永久磁石3にバルク磁石を採用し、第1ステータ7a及び第2ステータ7bを臨界温度以下の超電導発生温度まで冷却しながら又は臨界温度にしてから、周方向同位相で互いに反対でかつ波形に制御したパルス磁場を与えて、バルク磁石に着磁させる。
【0030】
このバルク磁石の着磁は波形制御パルス着磁方法として知られているが、この着磁方法を、電気回転機1を構成するロータ5と第1ステータ7a及び第2ステータ7bとの間で行うことができ、バルク磁石の消磁は高温にすればできるので、バルク磁石の着磁・消磁・リセットが、専用の着磁装置を用いることなく、電気回転機製作後にいつでもどこでも容易に行うことができ、永久磁石3の磁力を常に良好に維持できる。
【0031】
図6は、ロータ5の表裏磁界部形成構造の第2変形例を示しており、第1磁界部4aは2個1組の永久磁石3aをロータ5の周方向複数組配置しており、各組の2個の永久磁石3aは径外側が同一極でハの字状に配置されており、第2磁界部4bも2個1組の永久磁石3bをロータ5の周方向複数組配置しており、各組の2個の永久磁石3bも径内側が同一極でハの字状に配置されており、第1磁界部4aと第2磁界部4bの周方向に対応する永久磁石3a、3bは第1磁界と第2磁界とが異なる極になっており、磁力線の発生をより強力にかつ確実にしている。
【0032】
図7は、ロータの表裏磁界部形成構造の第3変形例を示しており、第1磁界部4aと第2磁界部4bとは1個の永久磁石3で形成されていて、表裏が異なる極になっており、これを珪素鋼板の磁石孔に挿入して埋設しており、磁石埋設を簡便にしている。この永久磁石3は前記第1変形例のバルク磁石に適用してもよい。
【0033】
図8は、ロータ5の表裏磁界部形成構造の第4変形例を示しており、第1実施形態の第1磁界部4aと第2磁界部4bの永久磁石3a、3bの埋設位相を異ならせており、周方向において、第1磁界部4aの永久磁石3a間に第2磁界部4bの永久磁石3bが位置している。
この第3変形例では、第1磁界部4aも第2磁界部4bもともに永久磁石3は20個であるので、第1磁界部4aの永久磁石3aに対して第2磁界部4bの永久磁石3bの位相を9度ずらしている。このように第1磁界部4aと第2磁界部4bの永久磁石3a、3bの埋設位相をずらすことによりコギングトルクを減少させることができる。
【0034】
図9に示す本発明の第3実施形態において、電気回転機1Cはアキシャルギャップ型の超電導周波数変換機であり、1本の軸で形成された回転軸部5bに円盤で形成された3枚の円盤部5d1、5d2,5d3を固定してロータ5を構成し、このロータ5を回転自在に支持するケース8に、3枚の円盤部5d1、5d2,5d3の各表裏に対応して3組の第1ステータ7aと3組の第2ステータ7bとを配置しおり、回転軸部5bは第1ステータ7a及び第2ステータ7bを貫通している。
【0035】
前記ロータ5の各円盤部5dは、円盤厚み方向に貫通して両端にNS極を形成する永久磁石を円周方向多数埋設して第1磁界部4aと第2磁界部4bとを形成しており、第1ステータ7a及び第2ステータ7bは円盤部5dに面する円形面に円周方向間隔をおいて巻線を巻き付けて又は印刷配線により巻線を形成している。
ロータ5の右円盤部5d1及び左円盤部5d3は、右面に第1磁界部4aを形成しかつ左面に第2磁界部4bを形成しており、中央円盤部5d2は右面に第2磁界部4bを形成しかつ左面に第1磁界部4aを形成している。
【0036】
ステータ7は、各円盤部5d1、5d2、5d3のそれぞれの第1磁界部4aに対向して第1ステータ磁界αを形成する第1ステータ7a1、7a2、7a3が配置され、各円盤部5dのそれぞれの第2磁界部4bに対向して第2ステータ磁界βを形成する第2ステータ7b1、7b2、7b3が配置され、第1ステータ7a2と第1ステータ7a3、第2ステータ7b1と第2ステータ7b2はそれぞれ一体となっている。
前記第1ステータ7a1、7a2、7a3と第2ステータ7b1、7b2、7b3とは周方向の巻線6の数が例えば、5:6等に異なっており、それぞれに流れる電流の周波数が異なっている。
【0037】
冷却装置11はケース8の外周壁8aのみ冷却用冷媒を流通する流通路11aが形成されているが、側壁8b及び蓋部材8cにも流通路11aを形成することが好ましく、冷媒に液体窒素、液体ヘリウムを用いて、ケース8の超電導巻線製巻線のステータ7及びロータ5を臨界温度以下の超電導発生温度まで冷却させる。
【0038】
このアキシャルギャップ型電気回転機1Cにおいて、給電装置9、集電装置10、インバータ16及びバッテリ17等を備えた制御部18からの制御によって、例えば、第1ステータ7a1、7a2、7a3に回線L1を介して給電すると、円盤部5d1、5d2、5d3の第1磁界部4aとの間で電動態様となり、ロータ5の回転軸部5bが駆動され、円盤部5d1、5d2、5d3の回転によって第2磁界部4bと第2ステータ7b1、7b2、7b3との間が発電態様となり、例えば、50サイクルで電動すると、60サイクルの発電を行い、回線L2を介して集電できる。
【0039】
なお、第2ステータ7bを給電側とし、第1ステータ7aを集電側としてもよく、円盤部5d、第1ステータ7a及び第2ステータ7bの組み合わせを、1組、2組、4組以上にしてもよい。
なお、本発明は前記実施形態における構造及び各部材の形状、位置関係は、図1〜9に示すように構成することが最良であるが、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、電動態様のステータ7の巻線6を超電導巻線とした超電導電気回転機としても、3K宇宙背景放射空間で使用する場合は冷却装置を省略してもよく、また、それを超電導発電機としてもよい。
冷却装置11は、液体窒素を発生する装置を備えていてもよく、または、液体窒素を封入したボンベを着脱自在に装着するものでもよい。
電気回転機1のロータ5は、内外周面の永久磁石3間にスリット又は凹みを形成して、マグネットトルクだけでなくリラクタンストルクも発生するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 電気回転機
3 永久磁石
4a 第1磁界部
4b 第2磁界部
5 ロータ
5a 円筒部
5b 回転軸部
6(6a、6b) 巻線
7 ステータ
7a 第1ステータ
7b 第2ステータ
8 ケース
9 給電装置
10 集電装置
11 冷却装置
13 支持体
18 制御部
α 第1回転磁界(第1ステータ磁界)
β 第2回転磁界(第2ステータ磁界)
【要約】      (修正有)
【課題】1個のロータの表裏を周波数の異なる電動態様と発電態様とに同時に使用できるようにする。
【解決手段】永久磁石3を円周方向に配列して表裏各面にそれぞれ第1磁界部4aと第2磁界部4bとを形成した回転自在なロータ5と、このロータの第1磁界部と対面する巻線6aを巻いた第1ステータ7aと、ロータの第2磁界部と対面する巻線6bを巻いた第2ステータ7bと、ケース8とを有する。第1ステータ又は第2ステータの一方の巻線に給電してロータを回転駆動する給電装置9と、駆動されるロータの回転によって他方の巻線に発生する電気を取り出す集電装置10とを備える。第1磁界部及び第1ステータと第2磁界部及び第2ステータとは、給電する側と発電する側の交流電流の周波数が異なっている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9