特許第5750708号(P5750708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5750708加水燃料及び添加剤調整燃料油及び添加剤とそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750708
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】加水燃料及び添加剤調整燃料油及び添加剤とそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/188 20060101AFI20150702BHJP
   C10L 1/19 20060101ALI20150702BHJP
   C10L 1/182 20060101ALI20150702BHJP
   C10L 1/22 20060101ALI20150702BHJP
   C10L 1/32 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   C10L1/188
   C10L1/19
   C10L1/182
   C10L1/22
   C10L1/32 D
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-71293(P2010-71293)
(22)【出願日】2010年3月26日
(65)【公開番号】特開2011-202049(P2011-202049A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2013年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】500132214
【氏名又は名称】学校法人明星学苑
(73)【特許権者】
【識別番号】508313817
【氏名又は名称】望月 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】梅村 一之
(72)【発明者】
【氏名】望月 秀樹
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06017368(US,A)
【文献】 米国特許第05004479(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00− 1/32
B01F 17/00−17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油に添加して、油水が分離することなく均一な混合状態で透明な加水燃料、または、その加水前の調整燃料油を生成するために用いる添加剤の製造方法であって、
カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ -リノレン酸、ジホモ-γ -リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸ドデカン酸の群から選択される脂肪酸類に、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンの群から選択されるアルコール類もしくはその混合物を溶解させて、中間生成物1を生成するステップと、
最後に、中間生成物1にアンモニア水またはアンモニアガスを加えて、所望の添加剤を生成するステップを有し、
脂肪酸類、アルコール類アンモニアガスの混合比を、1:1.0〜2.5:0.001〜0.7(mol濃度)とする
ことを特徴とする添加剤の製造方法。
【請求項2】
燃料油が、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油 植物油、動物油、廃油、製紙排水黒液のいずれかである
請求項1に記載の添加剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法によって製造された添加剤であって、
原料として少なくとも、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ -リノレン酸、ジホモ-γ -リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸ドデカン酸の群から選択される脂肪酸類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンの群から選択されるアルコール類もしくはその混合物、アンモニア水またはアンモニアガスを有する
ことを特徴とする添加剤。
【請求項4】
加水により加水燃料になり得る加水前の調整燃料油の製造方法であって、
請求項3に記載の添加剤を燃料油に加えて、所望の添加剤調整燃料油を生成するステップを有する
ことを特徴とする添加剤調整燃料油の製造方法。
【請求項5】
添加剤、燃料油の混合比が、
0.03〜1:1(容積)である
請求項4に記載の添加剤調整燃料油の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の製造方法によって製造された添加剤調整燃料油であって、
添加剤の原料として少なくとも、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ -リノレン酸、ジホモ-γ -リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸ドデカン酸の群から選択される脂肪酸類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンの群から選択されるアルコール類もしくはその混合物、アンモニア水またはアンモニアガスを有する
ことを特徴とする添加剤調整燃料油。
【請求項7】
加水燃料の製造方法であって、
請求項6に記載の添加剤調整燃料油に水を加えて、所望の加水燃料を生成するステップを有する
ことを特徴とする加水燃料の製造方法。
【請求項8】
水、添加剤調整燃料油の混合比が、
0.1〜1:1(容積)である
請求項7に記載の加水燃料の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の製造方法によって製造された加水燃料であって、
添加剤の原料として少なくとも、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ -リノレン酸、ジホモ-γ -リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸ドデカン酸の群から選択される脂肪酸類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンの群から選択されるアルコール類もしくはその混合物、アンモニア水またはアンモニアガスを有する
ことを特徴とする加水燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水燃料と、加水により加水燃料になり得る加水前の調整燃料油と、それに加える添加剤、並びに、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油資源の枯渇や、石油使用に伴う環境問題などにより、燃料油に水を混合させた加水燃料が注目を浴びている。加水燃料は、燃料油のみを燃焼させた場合と同等の燃焼効率を得ることは既に公知であり、各種のものが提案されている。
従来の加水燃料に関する技術には、例えば特許文献1〜4がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−81740 「水と可燃性油を微粒子状態で混合してエマルジョン燃料を製造する方法及び同エマルジョン燃料の製造装置並びにエマルジョン燃料」
【特許文献2】特開2007−284527 「重油添加剤」
【特許文献3】特開2006−111666 「エマルジョン燃料製造方法、エマルジョン燃料製造装置及び該エマルジョン燃料製造装置を備えたエマルジョン燃料利用機器」
【特許文献4】特開2004−67913 「水エマルジョン燃料製造方法」
【0004】
しかし、従来の加水燃料は、燃焼の安定性に欠ける点や、油水が分離するなど長期の安定性にかける点、油水の均一性に欠ける点などの問題があり、十分実用化に耐えるものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、油水の均一な分散を実現して燃焼効率を向上させると共に、その油水の均一な分散を長期に安定させられる添加剤と、その添加によって得られる添加剤調整燃料油及び加水燃料、並びに、それらの製造方法を提供することを課題とする。
特に、界面活性剤を用いなくてもよい手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の添加剤の製造方法は、次の構成を備える。すなわち、燃料油に添加して、加水燃料、または、その加水前の調整燃料油を生成するために用いる添加剤の製造方法であって、脂肪酸類または比較的分子量の大きなアルコール類に、比較的分子量の小さなアルコール類を溶解させて、中間生成物1を生成するステップと、中間生成物1にアンモニア水またはアンモニアガスを加えて、所望の添加剤を生成するステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、燃料油としては、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油 植物油、動物油、廃油 製紙排水黒液が利用できる。
【0008】
脂肪酸類としては、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸マレイン酸、フマール酸、ドデカン酸のいずれか、または、そのエステルが好適である。
【0009】
比較的分子量の大きなアルコール類としては、ペンタノール、ヘキサノール、ペンタノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノールが好適である。
【0010】
比較的分子量の小さなアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンもしくはその混合物が好適である。
【0011】
脂肪酸類または比較的分子量の大きなアルコール類、比較的分子量の小さなアルコール類、アンモニア水またはアンモニアガスの混合比としては、1:1.0〜2.5:0.001〜0.7(mol濃度)、より好ましくは、1:1.1〜2.2:0.003〜0.2(mol濃度)が好適である。
【0012】
本発明の添加剤は、上述の製造方法によって製造された添加剤であって、原料として少なくとも、脂肪酸類または比較的分子量の大きなアルコール類、比較的分子量の小さなアルコール類もしくはその混合物、アンモニア水またはアンモニアガスを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の添加剤調整燃料油の製造方法は、加水により加水燃料になり得る加水前の調整燃料油の製造方法であって、前記の添加剤を燃料油に加えて、所望の添加剤調整燃料油を生成するステップを有することを特徴とする。
【0014】
添加剤、燃料油の混合比としては、0.03〜1:1(容積)、より好ましくは、0.10〜0.75:1(容積)が好適である。
【0015】
本発明の添加剤調整燃料油は、上述の製造方法によって製造された添加剤調整燃料油であって、添加剤の原料として少なくとも、脂肪酸類または比較的分子量の大きなアルコール類、比較的分子量の小さなアルコール類もしくはその混合物、アンモニア水またはアンモニアガスを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の加水燃料の製造方法は、前記の添加剤調整燃料油に水を加えて、所望の加水燃料を生成するステップを有することを特徴とする。
【0017】
水、添加剤調整燃料油の混合比としては、0.1〜1:1(容積)、より好ましくは、0.2〜0.6:1(容積)が好適である。
【0018】
本発明の加水燃料は、上述の製造方法によって製造された加水燃料であって、添加剤の原料として少なくとも、脂肪酸類または比較的分子量の大きなアルコール類、比較的分子量の小さなアルコール類もしくはその混合物、アンモニア水またはアンモニアガスを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって得られる加水燃料は、適切な添加剤の添加によって、油水の均一な分散が実現して燃焼効率が向上すると共に、その油水の均一な分散が長期に安定するので、加水前の調整燃料油としても運搬や保管もでき利便性が高い。
また、界面活性剤を用いなくてもよく、製造のステップも少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】加水燃料を生成する流れを示す説明図
図2】添加剤を製造する実施例を示す説明図
図3】添加剤調整燃料油を製造する実施例を示す説明図
図4】加水燃料を製造する実施例を示す説明図
図5】加水燃料の経時変化を示す実験結果写真
図6】加水燃料の原料混合比率による差異を示す実験結果写真
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記の例示に限らず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、前記特許文献など従来公知の技術を用いて適宜設計変更可能である。
【0022】
本発明者は、特定の添加剤を燃料油に加えることで、加水燃料における油水の均一な分散とその長期安定化が達成される知見を得て、特願2008−270038に「加水燃料及び添加剤調整燃料油及び添加剤とそれらの製造方法」を出願している。
なお、燃料油とは、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油、植物油、動物油、廃油、製紙工場廃油(黒液)等の可燃油一般を指す。そして、本発明の加水燃料は、その燃料油に所定量の水と本発明による添加剤を混合されたものである。
【0023】
その研究の延長として、本発明者は、界面活性剤を用いなくても、加水燃料用の添加剤を生成できる知見を得て、本発明に至った。特願2008−270038と比較すると、更にアミン化合物も加えなくてもよく、製造のステップが大幅に簡素化される方法である。
【0024】
図1は、加水燃料を生成する流れを示す説明図である。
添加剤の製造方法は次の通りである。
まず、脂肪酸類または比較的分子量の大きなアルコール類に、比較的分子量の小さなアルコール類を溶解させて、中間生成物1を生成する。
なお、脂肪酸類は、脂肪酸のみでなく脂肪酸エステルとの混合物としてもよい。
【0025】
ここで、比較的分子量の大きなアルコール類とは、大きなアルキル基を有する液体で、例えばペンタノール、ヘキサノール、ペンタノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール等を指す。イソ化合物など、側鎖を有するアルコールでもよい。
【0026】
また、比較的分子量の小さなアルコール類とは、小さなアルキル基を有する液体で、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンもしくはその混合物等を指す。
【0027】
また、脂肪酸類とは、例えば酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸マレイン酸、フマール酸、ドデカン酸など、1〜多価の脂肪酸でメタノールまたはエタノール、プロパノールなど比較的分子量の小さなアルコール類に溶融しうるものを指す。
【0028】
次に、上記の中間生成物1にアンモニア水またはアンモニアガスを加え、よく攪拌し一定の条件に整えて、本発明の添加剤を生成する。
アンモニアガスを過剰に加えると、添加剤がゲル化するので、量を調整することが好ましい。アンモニア水を加える場合には、水が既に存在するためにゲル化する。
生成時における反応温度は30〜40℃が好ましく、攪拌の条件は、空気の混入が少ない範囲での攪拌が好ましい。生成時には、発熱を起こすので反応が均一となるように十分に攪拌することが好ましい。
【0029】
原料の混合にはさまざまな組み合わせがあるため最適な比率は原料によって異なるが、大まかな比率としては下記の値が目安として利用できる。
脂肪酸類または比較的分子量の大きなアルコール類:比較的分子量の小さなアルコール類もしくはその混合物:アンモニア水またはアンモニアガス=1:1.0〜2.5:0.001〜0.7(mol濃度)、
より好ましくは、脂肪酸類または比較的分子量の大きなアルコール類:比較的分子量の小さなアルコール類もしくはその混合物:アンモニア水またはアンモニアガス=1:1.1〜2.2:0.003〜0.2(mol濃度)である。
【0030】
(実施例)
添加剤を製造した実施例は次の通りである。
図2のように、オレイン酸2.50molにメタノール3.94molとエチレングリコール0.55molの混合液を攪拌し、アンモニアガス0.01molを順次混合攪拌することで、添加剤が製造できた。
【0031】
添加剤による燃料油の調整方法は次の通りである。
本発明による前述の添加剤を、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油、植物油、動物油、廃油、製紙工場廃油(黒液)等の燃料油に混合させ攪拌することで、添加剤調整燃料油を生成する。
この添加剤調整燃料油の状態で保存しておき、使用時に加水して加水燃料を生成してもよい。
【0032】
添加剤の原料となる脂肪酸などの種類は、添加対象の燃料油の種類によって適宜対応させて調整することで、後述の加水量も最適化することが可能となる。
【0033】
添加剤の必要量は、燃料油の種類や、比較的小さな分子のアルコール類の種類およびアンモニアガス・アンモニア水の添加量にて異なるが、大まかな比率としては下記の値が目安として利用できる。
添加剤:燃料油=0.1〜1:1(容積)、
より好ましくは、添加剤:燃料油=0.2〜0.6:1(容積)である。
【0034】
(実施例)
添加剤調整燃料油を製造した実施例は次の通りである。
図3のように、軽油10リットル(容積77%)に添加剤5リットル(容積23%)を混合攪拌することで、添加剤調整燃料油が製造できた。
【0035】
添加剤調整燃料油による加水燃料の調整方法は次の通りである。
本発明による前述の添加剤調整燃料油に、水を混合させ攪拌することで、加水燃料を生成する。
攪拌時に空気が混入すると、爆発混合気を発する危惧があるので、空気の混入の皆無な攪拌が好ましい。
【0036】
水の比率によって、生成燃料が液化したりゲル化したりする。また、水の比率が高すぎると、燃焼温度や燃焼カロリーの低下を生じる。例えば、ガスタービン用の燃料とする場合には、加水はボイラー用給水とすることが好ましい。
なお、添加剤の原料の混合比が十分適切でなかった場合や、添加剤の反応が十分に促進しなかった場合、反応温度によっては、加水後に白い沈殿物が生じることがあるが、燃焼には支障ない。
【0037】
加水量は、燃焼効率や経済効率の点では、大まかな比率としては下記の値が目安として利用できる。
水:添加剤調整燃料油=0.1〜0.8:1(容積)、
より好ましくは、水:添加剤調整燃料油=0.2〜0.6:1(容積)である。
【0038】
(実施例)
加水燃料を製造した実施例は次の通りである。
図4のように、軽油と添加剤の混合液13リットル(容積72%)に水5リットル(容積28%)を混合攪拌することで、加水燃料が製造できた。
【0039】
図5は、加水燃料の均一度を示す実験結果の写真である。
製造した加水燃料における灯油と添加剤と水の比率は、灯油:添加剤:水=50%:25%:25%であり、左は製造から3ヶ月経過後、右は6ヶ月経過後の状態である。
いずれの時間経過後の加水燃料も、白濁や、2層分離や、粒状の分離もなく、透明度が高く、油水が均一な混合状態が保たれた。また、この均一状態は、長期間安定して維持された。
【0040】
図6も、加水燃料の均一度を示す実験結果の写真である。
左側ほど、添加剤の割合が高く、灯油と添加剤と水の比率は、それぞれ、
灯油:添加剤:水=50%:25%:25%、
60%:20%:20%、
70%:15%:15%、
80%:10%:10%、
90%:5%:5%であり、
3ヶ月経過後の状態である。
いずれの混合比率の加水燃料も、白濁や、2層分離や、粒状の分離もなく、透明度が高く、油水が均一な混合状態が保たれた。また、この均一状態は、長期間安定して維持された。
【0041】
一般に、油水の混合率や添加剤の添加率に応じて、加水燃料の様相が変化する。しかし、本発明による加水燃料では、加水の割合によって白濁が進行して透過度が減少するが、2層に分離したり、粒状の分離もなく、油水が均一な混合状態が保たれた。また、この均一状態は、長期間安定して維持され、例えば0℃の環境でも安定性が保たれた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
加水燃料の用途は、環境問題を叫ばれる昨今需要が増えている。本発明によると、添加剤調整燃料への加水を施すことにより、明らかなCO2 、NOx、SOx、燃焼粉塵の減少などが見られる。また、アンモニウム型界面活性剤やアミン化合物を利用しないため、NOxを大幅に減らせる。
さまざまな燃料、例えば、温風ボイラー、温水ボイラー、蒸気ボイラーなどの各種ボイラーや、発電機、農業機械、自動車、船舶などのディーゼルエンジンの燃料として実用的であり、環境対策、燃料不足対策、経済上からも産業上利用価値が高い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6