特許第5750765号(P5750765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファンペップの特許一覧

特許5750765ポリペプチド及びその抗菌または消毒用途
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750765
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】ポリペプチド及びその抗菌または消毒用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20150702BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20150702BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20150702BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20150702BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150702BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150702BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150702BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20150702BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20150702BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20150702BHJP
【FI】
   C07K7/08ZNA
   A61P31/04
   A61P31/10
   A61P17/02
   A61P9/10
   A61P29/00
   A61P17/00
   A61K37/02
   A01P3/00
   !C07K14/00
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-502814(P2011-502814)
(86)(22)【出願日】2010年3月5日
(86)【国際出願番号】JP2010053618
(87)【国際公開番号】WO2010101237
(87)【国際公開日】20100910
【審査請求日】2013年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2009-53408(P2009-53408)
(32)【優先日】2009年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514055277
【氏名又は名称】株式会社ファンペップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玄番 岳践
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 英樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 奈緒
(72)【発明者】
【氏名】天満 昭子
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/096814(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/049819(WO,A1)
【文献】 特開2006−160640(JP,A)
【文献】 特表2007−512842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列が配列番号1又は6で表されるポリペプチド。
【請求項2】
カルボキシル末端がアミド化されている、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
アミノ末端がアセチル化されている、請求項1または2記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有する抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤。
【請求項5】
抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤用の請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
基材に、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリペプチドを塗布または含浸した消毒、殺菌または殺真菌用品。
【請求項7】
基材が、ガーゼ、包帯、綿、織布、不織布、編物、ニット布、圧着シート、圧定布または紙である、請求項6記載の消毒、殺菌または殺真菌用品。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む薬剤スプレー、手指の消毒綿またはスプレー、医療器具殺菌または殺真菌液。
【請求項9】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有する、熱傷、褥瘡、創傷、皮膚潰瘍、下肢潰瘍、糖尿病性潰瘍、閉塞性動脈疾患及び閉塞性動脈硬化症、蜂巣炎、急性リンパ管炎、リンパ節炎、丹毒、皮膚膿瘍、壊死性皮下感染、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)、毛包炎、フルンケル(面疔)、化膿性汗腺炎、カルブンケル(癰)、感染性爪囲炎、紅色陰癬及び重症感染症(敗血症)から成る群から選択される疾患の予防、改善又は治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリペプチド及びその抗菌、抗真菌または消毒用途に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌剤の一種として、ポリペプチドから成るポリペプチド系抗菌剤が知られている。ポリペプチド系抗菌剤は、広い抗菌スペクトルを示し、他の種類の抗生物質に対する耐性菌に対しても抗菌活性を示すものが知られている。例えば、αへリックス抗菌ペプチドであるマゲイニン(非特許文献1)、カテリシジン(LL-37)(非特許文献2)、オビスピリン-1(非特許文献3)等が挙げられる。他にもディフェンシン(非特許文献2)などの抗菌活性を有するペプチドが知られている。さらに近年においても新たなαへリックス抗菌ペプチドが創製されている(特許文献1)。しかし既存の抗生物質に比較するとその抗菌活性は十分とはいえない。そこで、新規な構造を有し、優れた抗菌活性を有する新規なポリペプチド系抗菌剤が常に求められている。
【0003】
特許文献2には、血管内皮増殖活性を有するポリペプチドが抗菌活性をも有することが示唆されている。また、特許文献3には特許文献2に記載されているポリペプチド類縁体で、特に抗菌活性を有するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-45214
【特許文献2】WO 2005/090564 A1
【特許文献3】WO 2008/096814 A1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Proc Natl Acad Sci U S A., 1987 Aug;84(15):5449-53
【非特許文献2】J Invest Dermatol., 2005 Jul;125(1):108-115.
【非特許文献3】Protein Eng., 2002 Mar;15(3):225-232.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた抗菌活性を有する新規なポリペプチド及びそれを有効成分として含有する抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、特許文献2および3に記載されたポリペプチドを改変することにより、該ポリペプチドよりも高い抗菌活性を有するポリペプチドが得られることを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1) アミノ酸配列が配列番号1又は6で表されるポリペプチド。
(2) カルボキシル末端がアミド化されている、(1)に記載のポリペプチド。
(3) アミノ末端がアセチル化されている(1)または(2)に記載のポリペプチド。
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載のポリペプチドを有効成分として含有する抗菌剤、抗真菌剤または(and/or)消毒剤。
(5) 抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤用の(1)ないし(3)のいずれかに記載のポリペプチド。
(6) 基材に、(1)ないし(3)のいずれかに記載のポリペプチドを塗布または含浸した消毒、殺菌または殺真菌用品。
(7) 基材が、ガーゼ、包帯、綿、織布、不織布、編物、ニット布、圧着シート、圧定布または紙である、(6)記載の消毒、殺菌または殺真菌用品。
(8) (1)ないし(3)のいずれかに記載のポリペプチドを含む薬剤スプレー、手指の消毒綿またはスプレー、医療器具殺菌または殺真菌液。
(9) (1)ないし(3)のいずれかに記載のポリペプチドを有効成分として含有する、熱傷、褥瘡、創傷、皮膚潰瘍、下肢潰瘍、糖尿病性潰瘍、閉塞性動脈疾患及び閉塞性動脈硬化症、蜂巣炎、急性リンパ管炎、リンパ節炎、丹毒、皮膚膿瘍、壊死性皮下感染、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)、毛包炎、フルンケル(面疔)、化膿性汗腺炎、カルブンケル(癰)、感染性爪囲炎、紅色陰癬及び重症感染症(敗血症)から成る群から選択される疾患の予防、改善又は治療剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、優れた抗菌活性及び/又は抗真菌活性を有する新規なポリペプチド及びそれを有効成分として含有する抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤が提供された。
【0010】
さらに本発明により、当該ポリペプチドを有効成分として含有する、熱傷、褥瘡、創傷、皮膚潰瘍、下肢潰瘍、糖尿病性潰瘍、閉塞性動脈疾患及び閉塞性動脈硬化症、蜂巣炎、急性リンパ管炎、リンパ節炎、丹毒、皮膚膿瘍、壊死性皮下感染、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)、毛包炎、フルンケル(面疔)、化膿性汗腺炎、カルブンケル(癰)、感染性爪囲炎、紅色陰癬及び重症感染症(敗血症)からなる群から選択される疾患の処置のための予防、改善又は治療剤が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「ポリペプチド」と「ペプチド」の語は同義に用いられる。
【0012】
非特許文献3に記載されているオビスピリン-1(Ovispirin-1:AP00196とも称する。http://aps.unmc.edu/AP/main.php参照のこと)のアミノ酸配列を配列番号12に示す。オビスピリン-1は、下記実施例において具体的に記載するように抗菌活性を有する。オビスピリン-1を陽性対象として、本願発明のポリペプチドの抗菌活性を調べた。その結果、上記した本発明のポリペプチドが、優れた抗菌活性を有することが明らかになった。
【0013】
本発明のポリペプチドは、アミノ末端(N末端)及び/又はカルボキシル末端(C末端)が修飾されていてもよい。C末端がアミド化されていることが好ましく、N末端がアセチル化されていることが好ましい場合もある。本発明のポリペプチドは、キャッピング構造を付加してもよい。ここで、キャッピング構造は、ポリペプチドのN末端及び/又はC末端に、ポリペプチドの構造を安定化させることが知られている、オリゴペプチドである(文献:1)D'Andrea LD, Iaccarino G, Fattorusso R, Sorriento D, Carannante C, Capasso D, Trimarco B, Pedone C., "Targeting angiogenesis: structural characterization and biological properties of a de novo engineered VEGF mimicking peptide.", Proc Natl Acad Sci U S A., 2005 Oct 4;102(40):14215-20. Epub 2005 Sep 26;2)(文献:2)Aurora R, Rose GD.,"Helix capping"., Protein Sci. 1998 Jan;7(1):21-38)。
【0014】
一般に、ポリペプチドから成る医薬において、生体内でのポリペプチドの安定性を高めるために、ポリペプチドに糖鎖やポリエチレングリコール(PEG)鎖を付加したり、ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部としてD体アミノ酸を用いたりする技術が広く知られており、用いられている。糖鎖やPEG鎖を付加したり、ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部としてD体アミノ酸を用いたりすることにより、生体内でのペプチダーゼによる分解を受けにくくなり、生体内におけるポリペプチドの半減期が長くなる。本発明のポリペプチドは、抗菌活性を有する限り、生体内安定化のためのこれらの公知の修飾を施したものであってもよく、本明細書及び特許請求の範囲における「ポリペプチド」という語は、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、生体内安定化のための修飾を施したものも包含する意味で用いている。
【0015】
ポリペプチドに対する糖鎖付加は周知であり、例えば、Sato M, Furuike T, Sadamoto R, Fujitani N, Nakahara T, Niikura K, Monde K, Kondo H, Nishimura S., "Glycoinsulins: dendritic sialyloligosaccharide-displaying insulins showing a prolonged blood-sugar-lowering activity.",J Am Chem Soc. 2004 Nov 3;126(43):14013-22やSato M, Sadamoto R, Niikura K, Monde K, Kondo H, Nishimura S,"Site-specific introduction of sialic acid into insulin.", Angew Chem Int Ed Engl. 2004 Mar 12;43(12):1516-20等に記載されている。糖鎖は、N末端、C末端又はそれらの間のアミノ酸に結合可能であるが、ポリペプチドの活性を阻害しないためにN末端又はC末端に結合することが好ましい。また、付加する糖鎖の個数は、1個又は2個が好ましく、1個がより好ましい。糖鎖は、単糖から4糖が好ましく、さらには2糖又は3糖がより好ましい。糖鎖は、ポリペプチドの遊離のアミノ基又はカルボキシル基に直接又は例えば炭素数1〜10程度のメチレン鎖等のスペーサー構造を介して結合することができる。
【0016】
ポリペプチドに対するPEG鎖の付加も周知であり、例えば、Ulbricht K, Bucha E, Poschel KA, Stein G, Wolf G, Nowak G., "The use of PEG-Hirudin in chronic hemodialysis monitored by the Ecarin Clotting Time: influence on clotting of the extracorporeal system and hemostatic parameters.", Clin Nephrol. 2006 Mar;65(3):180-90.やDharap SS, Wang Y, Chandna P, Khandare JJ, Qiu B, Gunaseelan S, Sinko PJ, Stein S, Farmanfarmaian A, Minko T., "Tumor-specific targeting of an anticancer drug delivery system by LHRH peptide.", Proc Natl Acad Sci USA. 2005 Sep 6;102(36):12962-7.等に記載されている。PEG鎖は、N末端、C末端又はそれらの間のアミノ酸に結合可能であり、通常、1個又は2個のPEG鎖が、ポリペプチド上の遊離のアミノ基やカルボキシル基に結合される。PEG鎖の分子量は、特に限定されないが、通常3000〜7000程度、好ましくは5000程度のものが用いられる。
【0017】
ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部をD体とする方法も周知であり、例えば、Brenneman DE, Spong CY, Hauser JM, Abebe D, Pinhasov A, Golian T, Gozes I., "Protective peptides that are orally active and mechanistically nonchiral.", J Pharmacol Exp Ther. 2004 Jun;309(3):1190-7やWilkemeyer MF, Chen SY, Menkari CE, Sulik KK, Charness ME., "Ethanol antagonist peptides: structural specificity without stereospecificity.", J Pharmacol Exp Ther. 2004 Jun;309(3):1183-9.等に記載されている。ポリペプチドを構成するアミノ酸の一部をD体としてもよいが、ポリペプチドの活性をできるだけ阻害しないため、ポリペプチドを構成するアミノ酸の全てをD体アミノ酸とすることが好ましい。
【0018】
本発明のポリペプチドは、市販のペプチド合成機を用いた化学合成等の常法により容易に製造することができる。また、上記安定化修飾も、上記各文献に記載されているような周知の方法により容易に行うことができる。
【0019】
本発明のポリペプチドは、高い抗菌活性及び/又は抗真菌活性を有するので、抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤として用いることができる。抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤としての使用方法は公知のポリペプチド系の抗菌剤又は抗真菌剤と同様であり、好ましくは軟膏、水溶液、粉剤、ゲル、または経皮パッチとして、特に好ましくは軟膏として投与することができる。これらの剤形への製剤方法は、周知であり、周知のいずれの方法をも採用することができる。軟膏中のポリペプチドの濃度は、特に限定されないが、通常、0.1mg/g〜100mg/g程度、特には1mg/g〜10mg/g程度である。また、溶液中のポリペプチドの濃度は、特に限定されないが、通常、0.1mg/mL〜100mg/mL程度、特には1mg/mL〜10mg/mL程度である。投与経路は、抗菌または消毒作用が必要な部位への塗布や注射等の局所投与、静脈注射等の全身的非経口投与及び経口投与が可能であり、局所投与及び全身的な非経口投与が好ましく、特に局所投与が好ましい。また、生体への投与に限られず、物品の殺菌または消毒に利用することも可能である。生体に投与する場合の投与量は、症状や患部の大きさ等に応じて適宜選択されるが、通常、ポリペプチド量として0.1mg〜100mg程度、特には1mg〜10mg程度であるが、もちろん、これらの範囲に限定されるものではない。
【0020】
本発明のポリペプチドを抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤にする場合、その製剤形態には特に制限がなく、例えば溶液状、懸濁液状、ゲル状、ペースト状または固形状にすることができる。
【0021】
本発明のポリペプチドを塗布または含浸する場合の好適な基材としては、ガーゼ、包帯、綿、織布、不織布、編物、ニット布、圧着シート、圧定布または紙が挙げられる。これらの材料を単独で用いることもできるし、組み合わせて使用することもできる。
【0022】
本発明のポリペプチドは溶液状にし、溶薬剤スプレー(粉体、霧)、手指の消毒綿・スプレー、医療器具殺菌液等として用いることもできる。さらに、溶液状にした本発明のポリペプチドを点眼剤に含有させることも可能である。
【0023】
生体に投与する場合の具体的な疾患及び障害の例として、熱傷、褥瘡、創傷、皮膚潰瘍、下肢潰瘍、糖尿病性潰瘍、閉塞性動脈疾患及び閉塞性動脈硬化症、蜂巣炎、急性リンパ管炎、リンパ節炎、丹毒、皮膚膿瘍、壊死性皮下感染、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)、毛包炎、フルンケル(面疔)、化膿性汗腺炎、カルブンケル(癰)、感染性爪囲炎、紅色陰癬及び重症感染症(敗血症)等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。本発明の抗菌剤または消毒剤は、これらの疾患又は障害に対する予防、改善又は治療剤として用いることができる。
【0024】
本発明の抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤は、単独で使用することもできるし、他の抗菌剤、抗真菌剤又は抗生物質と併用することもできる。これらの抗菌剤、抗真菌剤又は抗生物質の例として、セフェム系、カルバペネム系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系、β-ラクタム系、ペニシリン系及びグリコペプチド系抗生物質等を挙げることができ、より具体的には、セフタジジム、メロペネム、トブラマイシン、シプロフロキサシン、メチシリン、アンピシリン及びバンコマイシン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
本発明のポリペプチドは、抗菌剤、抗真菌剤または消毒剤として使用することができる。抗菌作用、抗真菌作用と消毒作用の少なくとも二者が望まれる場合は、当該少なくとも二者を兼用する剤として用いられることもできる。例えば、抗菌作用と消毒作用の両方が望まれる場合は、抗菌剤および消毒剤として用いられることもできる。すなわち、「または」という語は、「少なくとも1つ」と「どれか1つだけ」の両方の意味がある(岩波書店、広辞苑第4版)が、本明細書及び特許請求の範囲においては、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き前者の意味で用いており、この場合、対応する英語は「and/or」である。
【0026】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
1. ポリペプチドの合成
文献Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce (1984)、Fmoc solid synthesis:a practical approach, Oxford University Press(2000)および第5版 実験化学講座16 有機化合物の合成IV等に記載の方法に従い、全自動固相合成機を用いて、保護ペプチド樹脂を Fmoc法で合成した。得られた保護ペプチド樹脂にトリフルオロ酢酸(TFA)とスカベンジャー(チオアニオール、エタンジチオール、フェノール、トリイソプロピルシラン、水などの混合物)を加えて、樹脂から切り出すとともに脱保護して、粗ペプチドを得た。この粗ペプチドを、逆相HPLCカラム(ODS) を用いて、0.1%TFA-H2O/CH3CNの系でグラジエント溶出し、精製を行った。目的物を含む分画を集め凍結乾燥して、目的のペプチドを得た。
【0028】
合成したポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸シーケンサーG1000A(Hewlett Packard)、PPSQ-23A(島津製作所)又はProciscLC(ABI社)を用いて確認した。
【0029】
合成したポリペプチドの配列を以下に示す。本明細書において陽性対象のポリペプチドであるオビスピリン-1はOvispirin-1と呼ぶ。SRP-7以外はC末端をアミド化した。
【0030】
SRP-7(配列番号1) IFLHRLKRMRKRLKRKLRLW
SRP-8(配列番号2) RLKRMRKRLKRKLRLWHRKRYK-amide
SRP-9(配列番号3) MLKLIFLHRLKRMRKRLKRKLR-amide
SRP-10(配列番号4) MLKLIFLHRLKRMRKRLKRK-amide
SRP-11(配列番号5) LKLIFLHRLKRMRKRLKRKL-amide
SRP-12(配列番号6) LIFLHRLKRMRKRLKRKLRL-amide
SRP-13(配列番号7) KLIFLHRLKRELRKRLKRKLR-amide
SRP-14(配列番号8) GRLKRMGKRLKRKIQKWARW-amide
SRP-15(配列番号9) GRLKRMGERLKRKIQKWIRW-amide
SRP-16(配列番号10) KLIFLRELRRLRKRLKRKLR-amide
SRP-17(配列番号11) RLKRMRKRLKRKLRLW-amide
Ovispirin-1(配列番号12) KNLRRIIRKIIHIIKKYG-amide
【0031】
2.ポリペプチドのMALDI-TOF/MSを用いた分析
合成したポリペプチドの配列をMALDI-TOF/MSを用いた分析結果により確認した。最終濃度100μg/mLのポリペプチド0.1%TFA/50% アセトニトリル溶液1μLにマトリクス溶液(α-Cyano 4-Hydroxy Cinnamic Acid)1μLを加え、MALDI用測定試料とした。MALDI用測定試料(0.4μL)をMALDIターゲットプレートに塗布し、乾燥させた。MALDI- TOF/MSを用いて測定した。
【0032】
MALDI-TOF/MS条件:
Laser intensity: 2100
Number of shots: 1000
【0033】
各ポリペプチドのMALDI-TOF/MSの理論値及び実測値を表1に示した。各ポリペプチドの検出されたm/zは、それぞれの理論値と一致し、合成したポリペプチドの配列を確認することができた。
【0034】
【表1】
【0035】
3. ポリペプチドの抗菌活性
ATPアッセイ法を用いてポリペプチドの抗菌活性を測定した。
【0036】
PROMEGA社BacTiter-Glo Microbial Cell Viability Assay kitを用いて、細菌の生存率からペプチドの抗菌活性を評価した。すなわち、マイクロタイタープレートあるいは試験管を用いて、ペプチド濃度10μg/mLにおける生菌中のATP量を測定した。
【0037】
菌株には、グラム陽性菌として黄色ブドウ球菌 (S. aureus ATCC29213) あるいはグラム陰性菌として緑膿菌(P. aeruginosa ATCC27853)を用いた。細菌を培地で3〜4時間培養した後、A600における吸光度を測定した。McFarland #0.5にしたがって、ミューラー・ヒントン・ブロス(Mueller-Hinton broth:MHB)で菌液を希釈した。各菌株を大腸菌換算で0.5−1x105CFU/mL(最終濃度)程度になるように添加した。マイクロプレートあるいは試験管に各ペプチドを最終濃度10μg/mLになるよう調製、分注し、菌液を添加した。ペプチド無添加のものを陰性対照とし、トブラマイシン(TOB)(1μg/mL)を陽性対照とした。プレートを37℃で3時間培養し、培養液中のATP量を測定した。陰性対照と比較して相対値を求め、それを生存率とした。
【0038】
結果を表2に示す。表中NDはデータがないことを表す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2に示すように、本発明のポリペプチドは、緑膿菌あるいは黄色ブドウ球菌に対して、いずれも陽性対象であるTOBとほぼ同等の抗菌活性を示した。本発明のポリペプチドは、黄色ブドウ球菌に対してはオビスピリン-1ともほぼ同等の抗菌活性を示した。
【0041】
4. 抗菌および抗真菌活性の測定
さらに下記表3に示すペプチドを上記の方法と同様に合成し、上記のペプチドとともに抗菌活性(抗真菌活性を含む)および/またはATP活性を調べた。
【0042】
【表3】
(Acはアセチル化、Amideはアミド化を示す)
【0043】
カビ様真菌(Aspergillus niger NBRC 9455、Rhizopus oryzae NBRC 31005、Fusarium solani JCM11383、Alternaria alternata JCM5800、Trichophyton mentagrophytes NBRC6124、およびTrichophyton rubrum NBRC9185)は、ポテト・デキストロース寒天培地に接種し、35℃(もしくはそれぞれの菌株の分生子(胞子)形成に好適な温度)で分生子が形成されるまで(約7日間)培養し、分生子(胞子)を採取し、0.1%Tween 80含有生理食塩水に懸濁した。滅菌コットンフィルターでのろ過と遠心分離により、培地由来の成分と菌糸を除いた。
【0044】
分生子(胞子)懸濁液の530 nmでの吸光度を測定するとともに、この懸濁液中の分生子(胞子)の数を平板希釈法により測定し、この吸光度とこの吸光度と分生子(胞子)数との関係から分生子(胞子)の検量線を求め、抗真菌活性測定において接種する分生子(胞子)数を吸光度により決定した。
【0045】
酵母様真菌(Cryptococcus neoformans IFM 46660およびCandida krusei NBRC1395)はサブロー・デキストロース寒天培地に接種し、35℃で2日間培養し、形成したコロニーから新しい寒天培地に菌株を植継ぎ、35℃で2日間培養した。この工程をもう一度繰り返して菌株を単離し、試験用菌体として用いた。得られた菌体を採取し、滅菌生理食塩水に懸濁して菌体懸濁液とした。該懸濁液の530 nmでの吸光度を測定するとともに、この懸濁液中の菌数を平板希釈法により測定し、この吸光度と菌数との関係から菌数の検量線を求め、抗真菌活性測定において接種する菌数を吸光度により決定した。
【0046】
細菌(Micrococcus luteus NBRC13867、Bacillus subtilis NBRC3134、Salmonella Enteritidis IID 604、Salmonella Typhimurium JCM1652、Streptococcus pyogenes JCM5674、Acinetobacter baumanni JCM6841、Bacteroides fragilis JCM11019、Fusobacterium nucleatum JCM 11025およびActinobacillus actinomycetemcomitans JCM2434)は、SCDまたはGAM寒天培地に接種し、菌株の生育に好適な温度・期間で培養した(必要に応じて嫌気条件下で培養した)。こうして得られたコロニーから菌株を新しい寒天培地に接種し培養した。この工程をもう一度繰り返して菌株を単離し、試験用菌体として用いた。得られた菌体を、滅菌生理食塩水に懸濁した懸濁液の530 nmでの吸光度を測定するとともに、この懸濁液中の菌数を平板希釈法により測定し、この吸光度と菌数との関係から菌数の検量線を求め、抗菌活性測定において接種する菌数を吸光度により決定した。
【0047】
上記で調製したそれぞれの菌体または分生子の懸濁液を、上記の菌数または分生子の吸光度の検量線を用いて2×105〜2.5×106 CFU/mLになるよう生理食塩水で希釈し、さらに培地で50倍希釈して、0.4×104〜5×104 CFU/mLの接種液を調製した。
【0048】
試験するペプチド溶液を滅菌精製水で希釈し、1280μg/mLの溶液を調製した。この溶液を滅菌精製水で段階希釈し、さらに培地で5倍希釈して、256、 128、64、32、16、8.0、4.0、2.0、1.0、0.5、0.25、0.125μg/mLの濃度のペプチド含有培地を調製した。陽性コントロールとして、カビ様真菌および酵母様真菌の場合はアムホテリシンBを、細菌の場合はクロラムフェニコールを用いた。アムホテリシンBおよびクロラムフェニコールは12800μg/mLになるようにDMSOに溶解させ、それをDMSOにて段階希釈し、最後に培地で50倍希釈して、256、 128、64、32、16、8.0、4.0、2.0、1.0、0.5、0.25、0.125μg/mLの濃度のアムホテリシンBまたはクロラムフェニコール含有培地を調製した。
【0049】
96 wellマイクロタイタープレートに、接種液0.1 mLと各濃度のペプチドまたは陽性コントロール含有培地0.1 mLを加え、35℃またはそれぞれの菌株の生育に好適な温度で16〜50 時間(またはそれぞれの菌株の生育に好適な時間)培養した。ペプチド、アムホテリシンBおよびクロラムフェニコールの測定の際の濃度は128、64、32、16、8、4、2、1.0、0.5、0.25、0.12、0.0625μg/mLであった。検体を含まないウェルを陰性コントロールとした。それぞれの菌株に適切な時間培養後、生育を目視で観察し、生育の阻止された最小の濃度を最小生育阻止濃度(MIC)とした。
【0050】
なお、本試験に用いた培地は、カビ様真菌および酵母様真菌の試験では、RPMI-1640(グルタミン酸含有、炭酸塩非含有、フェノールレッド含有)であり、細菌の試験ではミューラーヒントンブロスまたはブルセラブロスであった。それぞれの菌について、独立した実験を2回行った。
【0051】
細菌(Escherichia coli ATCC 25922、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853、Staphylococcus aureus ATCC29213、Klebsiella pneumoniae JCM 1662、Enterobacter cloacae JCM 1232、Enterobacter aerogenes JCM 1235、Staphylococcus epidermidis JCM 2414)はミューラー・ヒントン・ブロス(Mueller-Hinton broth:MHB)またはLB培地に接種し、菌株の生育に好適な温度・期間で培養した。こうして得られたコロニーから菌株を新しい液体培地に接種し、16-20 時間培養後、各菌株に好適な容量(10〜50μL)を新しい液体培地へ接種し4〜6時間培養した後、A600における吸光度を測定した。McFarland #0.5と比濁して、培地で希釈した。各菌株を105CFU/mL(最終濃度)程度になるように添加した。
【0052】
さらにまた、感染した患者から採取し単離した臨床株についても抗菌作用を調べた。試験は、メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)2つ(MRSA(i)および(ii))、メチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)臨床株2つ(MSSA(i)および(ii))、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)5つ(Pseudomonas aeruginosa1、Pseudomonas aeruginosa6、Pseudomonas aeruginosa8、Pseudomonas aeruginosa9およびPseudomonas aeruginosa12)の9種の臨床株について行った。MRSAおよびMSSA臨床株についてはStaphylococcus aureus ATCC29213と、緑膿菌臨床株についてはPseudomonas aeruginosa ATCC 27853とそれぞれ同じよ方法で試験した。
【0053】
試験するペプチド溶液をMHBで希釈し、128μg/mLの溶液を調製した。この溶液を培地で段階希釈して、128、64、32、16、8.0、4.0、2.0μg/mLの濃度のペプチド含有培地を調製した。比較対象として、トブラマイシン(TOB:アミノグルコシド系抗生物質)、オキサシリン(OX:β-ラクタム系抗生物質)およびメロペネム(MEPM:カルバペネム系抗生物質)、シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質)を用いた。滅菌精製水で1.0 mg/mLに調製し、TOBについては16、8、4、2、1.0、0.25、0.12、0.06μg/mL、OXについては0.5、0.12、0.06μg/mL、MEPMについては16、8、4、2、1.0、0.25、0.12、0.06、0.03、0.008μg/mLの濃度の陽性コントロール含有培地をそれぞれ調製した。
【0054】
96 wellマイクロタイタープレートに、接種液0.1 mLと各濃度のペプチドまたは陽性コントロール含有培地0.1 mLを加え、37℃で16〜24 時間(またはそれぞれの菌株の生育に好適な時間)培養した。検体を含まないウェルを陰性コントロールとした。培養後、生育を目視で観察し、生育の阻止された最小の濃度を最小生育阻止濃度(MIC)とした。
【0055】
なお、本試験に用いた培地は、細菌の試験ではミューラーヒントンブロスであった。それぞれの菌について、独立した実験を2回以上行った。
【0056】
結果を下記表4および表5に示す。
【0057】
【表4-1】
単位:濃度(μg/mL)(表4−2及び表4−3においても同じ)
※2回の試験でMICが一致したものは欄内の数字が1個、一致しなかったものは1回目/2回目それぞれの値を示した(表4−2及び表4−3においても同じ)。
※N.T.:試験せず(表4−2及び表4−3においても同じ)。
【0058】
【表4-2】
【0059】
【表4-3】
【0060】
【表5-1】
【0061】
【表5-2】
【0062】
表4および5に示すように、それぞれのペプチドは各菌に対して抗菌活性を示した。
【0063】
5. ATPアッセイ法
細菌(Escherichia coli ATCC 25922、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853およびStaphylococcus aureus ATCC29213、Staphylococcus epidermidis JCM 2414)は、ミューラー・ヒントン・ブロス(Mueller-Hinton broth:MHB)またはLB培地に接種し、菌株の生育に好適な温度・期間で培養した。こうして得られたコロニーから菌株を新しい液体培地に接種し、16〜20 時間培養後、各菌株に好適な容量(10〜50μL)を新しい液体培地へ接種し4〜6 時間培養した後、A600における吸光度を測定した。McFarland #0.5と比濁して、培地で希釈した。各菌株を105 CFU/mL(最終濃度)程度になるように添加した。
【0064】
試験するペプチド溶液を培地で希釈し、10μg/mLの溶液を調製した。陽性コントロールとして、トブラマイシン(TOB)、オキサシリン(OX)およびメロペネム(MEPM)を用いた。滅菌精製水で1.0 mg/mLに調製し、TOBについては1.0、0.25、0.12、0.06μg/mL、OXについては0.5、0.12、0.06μg/mL、MEPMについては1.0、0.25、0.12、0.06、0.03、0.008μg/mLの濃度の陽性コントロール含有培地をそれぞれ調製した。96 wellマイクロタイタープレートに、接種液0.1 mLと各濃度のペプチドまたは陽性コントロール含有培地0.1 mLを加え、37℃で3 時間培養した。検体を含まないウェルを陰性コントロールとした。培養後、PROMEGA社BacTiter-Glo Microbial Cell Viability Assay kitを用いてATPを測定し、陰性対照と比較して相対値を求め、生存率とした。ATPを指標とした3時間後の生存率によって、抗菌性を評価した。
【0065】
なお、本試験に用いた培地は、細菌の試験ではミューラーヒントンブロスあった。それぞれの菌について、独立した実験を2回行った。
【0066】
結果を下記表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
表6より、これらのペプチドはATP活性においては調べた3種の菌のいずれに対しても抗菌活性を示し、これらのペプチドはいずれも広い抗菌スペクトルを有していることが示唆された。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]