【実施例】
【0027】
1. ポリペプチドの合成
文献Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce (1984)、Fmoc solid synthesis:a practical approach, Oxford University Press(2000)および第5版 実験化学講座16 有機化合物の合成IV等に記載の方法に従い、全自動固相合成機を用いて、保護ペプチド樹脂を Fmoc法で合成した。得られた保護ペプチド樹脂にトリフルオロ酢酸(TFA)とスカベンジャー(チオアニオール、エタンジチオール、フェノール、トリイソプロピルシラン、水などの混合物)を加えて、樹脂から切り出すとともに脱保護して、粗ペプチドを得た。この粗ペプチドを、逆相HPLCカラム(ODS) を用いて、0.1%TFA-H
2O/CH
3CNの系でグラジエント溶出し、精製を行った。目的物を含む分画を集め凍結乾燥して、目的のペプチドを得た。
【0028】
合成したポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸シーケンサーG1000A(Hewlett Packard)、PPSQ-23A(島津製作所)又はProciscLC(ABI社)を用いて確認した。
【0029】
合成したポリペプチドの配列を以下に示す。本明細書において陽性対象のポリペプチドであるオビスピリン-1はOvispirin-1と呼ぶ。SRP-7以外はC末端をアミド化した。
【0030】
SRP-7(配列番号1) IFLHRLKRMRKRLKRKLRLW
SRP-8(配列番号2) RLKRMRKRLKRKLRLWHRKRYK-amide
SRP-9(配列番号3) MLKLIFLHRLKRMRKRLKRKLR-amide
SRP-10(配列番号4) MLKLIFLHRLKRMRKRLKRK-amide
SRP-11(配列番号5) LKLIFLHRLKRMRKRLKRKL-amide
SRP-12(配列番号6) LIFLHRLKRMRKRLKRKLRL-amide
SRP-13(配列番号7) KLIFLHRLKRELRKRLKRKLR-amide
SRP-14(配列番号8) GRLKRMGKRLKRKIQKWARW-amide
SRP-15(配列番号9) GRLKRMGERLKRKIQKWIRW-amide
SRP-16(配列番号10) KLIFLRELRRLRKRLKRKLR-amide
SRP-17(配列番号11) RLKRMRKRLKRKLRLW-amide
Ovispirin-1(配列番号12) KNLRRIIRKIIHIIKKYG-amide
【0031】
2.ポリペプチドのMALDI-TOF/MSを用いた分析
合成したポリペプチドの配列をMALDI-TOF/MSを用いた分析結果により確認した。最終濃度100μg/mLのポリペプチド0.1%TFA/50% アセトニトリル溶液1μLにマトリクス溶液(α-Cyano 4-Hydroxy Cinnamic Acid)1μLを加え、MALDI用測定試料とした。MALDI用測定試料(0.4μL)をMALDIターゲットプレートに塗布し、乾燥させた。MALDI- TOF/MSを用いて測定した。
【0032】
MALDI-TOF/MS条件:
Laser intensity: 2100
Number of shots: 1000
【0033】
各ポリペプチドのMALDI-TOF/MSの理論値及び実測値を表1に示した。各ポリペプチドの検出されたm/zは、それぞれの理論値と一致し、合成したポリペプチドの配列を確認することができた。
【0034】
【表1】
【0035】
3. ポリペプチドの抗菌活性
ATPアッセイ法を用いてポリペプチドの抗菌活性を測定した。
【0036】
PROMEGA社BacTiter-Glo Microbial Cell Viability Assay kitを用いて、細菌の生存率からペプチドの抗菌活性を評価した。すなわち、マイクロタイタープレートあるいは試験管を用いて、ペプチド濃度10μg/mLにおける生菌中のATP量を測定した。
【0037】
菌株には、グラム陽性菌として黄色ブドウ球菌 (S. aureus ATCC29213) あるいはグラム陰性菌として緑膿菌(P. aeruginosa ATCC27853)を用いた。細菌を培地で3〜4時間培養した後、A
600における吸光度を測定した。McFarland #0.5にしたがって、ミューラー・ヒントン・ブロス(Mueller-Hinton broth:MHB)で菌液を希釈した。各菌株を大腸菌換算で0.5−1x10
5CFU/mL(最終濃度)程度になるように添加した。マイクロプレートあるいは試験管に各ペプチドを最終濃度10μg/mLになるよう調製、分注し、菌液を添加した。ペプチド無添加のものを陰性対照とし、トブラマイシン(TOB)(1μg/mL)を陽性対照とした。プレートを37℃で3時間培養し、培養液中のATP量を測定した。陰性対照と比較して相対値を求め、それを生存率とした。
【0038】
結果を表2に示す。表中NDはデータがないことを表す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2に示すように、本発明のポリペプチドは、緑膿菌あるいは黄色ブドウ球菌に対して、いずれも陽性対象であるTOBとほぼ同等の抗菌活性を示した。本発明のポリペプチドは、黄色ブドウ球菌に対してはオビスピリン-1ともほぼ同等の抗菌活性を示した。
【0041】
4. 抗菌および抗真菌活性の測定
さらに下記表3に示すペプチドを上記の方法と同様に合成し、上記のペプチドとともに抗菌活性(抗真菌活性を含む)および/またはATP活性を調べた。
【0042】
【表3】
(Acはアセチル化、Amideはアミド化を示す)
【0043】
カビ様真菌(Aspergillus niger NBRC 9455、Rhizopus oryzae NBRC 31005、Fusarium solani JCM11383、Alternaria alternata JCM5800、Trichophyton mentagrophytes NBRC6124、およびTrichophyton rubrum NBRC9185)は、ポテト・デキストロース寒天培地に接種し、35℃(もしくはそれぞれの菌株の分生子(胞子)形成に好適な温度)で分生子が形成されるまで(約7日間)培養し、分生子(胞子)を採取し、0.1%Tween 80含有生理食塩水に懸濁した。滅菌コットンフィルターでのろ過と遠心分離により、培地由来の成分と菌糸を除いた。
【0044】
分生子(胞子)懸濁液の530 nmでの吸光度を測定するとともに、この懸濁液中の分生子(胞子)の数を平板希釈法により測定し、この吸光度とこの吸光度と分生子(胞子)数との関係から分生子(胞子)の検量線を求め、抗真菌活性測定において接種する分生子(胞子)数を吸光度により決定した。
【0045】
酵母様真菌(Cryptococcus neoformans IFM 46660およびCandida krusei NBRC1395)はサブロー・デキストロース寒天培地に接種し、35℃で2日間培養し、形成したコロニーから新しい寒天培地に菌株を植継ぎ、35℃で2日間培養した。この工程をもう一度繰り返して菌株を単離し、試験用菌体として用いた。得られた菌体を採取し、滅菌生理食塩水に懸濁して菌体懸濁液とした。該懸濁液の530 nmでの吸光度を測定するとともに、この懸濁液中の菌数を平板希釈法により測定し、この吸光度と菌数との関係から菌数の検量線を求め、抗真菌活性測定において接種する菌数を吸光度により決定した。
【0046】
細菌(Micrococcus luteus NBRC13867、Bacillus subtilis NBRC3134、Salmonella Enteritidis IID 604、Salmonella Typhimurium JCM1652、Streptococcus pyogenes JCM5674、Acinetobacter baumanni JCM6841、Bacteroides fragilis JCM11019、Fusobacterium nucleatum JCM 11025およびActinobacillus actinomycetemcomitans JCM2434)は、SCDまたはGAM寒天培地に接種し、菌株の生育に好適な温度・期間で培養した(必要に応じて嫌気条件下で培養した)。こうして得られたコロニーから菌株を新しい寒天培地に接種し培養した。この工程をもう一度繰り返して菌株を単離し、試験用菌体として用いた。得られた菌体を、滅菌生理食塩水に懸濁した懸濁液の530 nmでの吸光度を測定するとともに、この懸濁液中の菌数を平板希釈法により測定し、この吸光度と菌数との関係から菌数の検量線を求め、抗菌活性測定において接種する菌数を吸光度により決定した。
【0047】
上記で調製したそれぞれの菌体または分生子の懸濁液を、上記の菌数または分生子の吸光度の検量線を用いて2×10
5〜2.5×10
6 CFU/mLになるよう生理食塩水で希釈し、さらに培地で50倍希釈して、0.4×10
4〜5×10
4 CFU/mLの接種液を調製した。
【0048】
試験するペプチド溶液を滅菌精製水で希釈し、1280μg/mLの溶液を調製した。この溶液を滅菌精製水で段階希釈し、さらに培地で5倍希釈して、256、 128、64、32、16、8.0、4.0、2.0、1.0、0.5、0.25、0.125μg/mLの濃度のペプチド含有培地を調製した。陽性コントロールとして、カビ様真菌および酵母様真菌の場合はアムホテリシンBを、細菌の場合はクロラムフェニコールを用いた。アムホテリシンBおよびクロラムフェニコールは12800μg/mLになるようにDMSOに溶解させ、それをDMSOにて段階希釈し、最後に培地で50倍希釈して、256、 128、64、32、16、8.0、4.0、2.0、1.0、0.5、0.25、0.125μg/mLの濃度のアムホテリシンBまたはクロラムフェニコール含有培地を調製した。
【0049】
96 wellマイクロタイタープレートに、接種液0.1 mLと各濃度のペプチドまたは陽性コントロール含有培地0.1 mLを加え、35℃またはそれぞれの菌株の生育に好適な温度で16〜50 時間(またはそれぞれの菌株の生育に好適な時間)培養した。ペプチド、アムホテリシンBおよびクロラムフェニコールの測定の際の濃度は128、64、32、16、8、4、2、1.0、0.5、0.25、0.12、0.0625μg/mLであった。検体を含まないウェルを陰性コントロールとした。それぞれの菌株に適切な時間培養後、生育を目視で観察し、生育の阻止された最小の濃度を最小生育阻止濃度(MIC)とした。
【0050】
なお、本試験に用いた培地は、カビ様真菌および酵母様真菌の試験では、RPMI-1640(グルタミン酸含有、炭酸塩非含有、フェノールレッド含有)であり、細菌の試験ではミューラーヒントンブロスまたはブルセラブロスであった。それぞれの菌について、独立した実験を2回行った。
【0051】
細菌(Escherichia coli ATCC 25922、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853、Staphylococcus aureus ATCC29213、Klebsiella pneumoniae JCM 1662、Enterobacter cloacae JCM 1232、Enterobacter aerogenes JCM 1235、Staphylococcus epidermidis JCM 2414)はミューラー・ヒントン・ブロス(Mueller-Hinton broth:MHB)またはLB培地に接種し、菌株の生育に好適な温度・期間で培養した。こうして得られたコロニーから菌株を新しい液体培地に接種し、16-20 時間培養後、各菌株に好適な容量(10〜50μL)を新しい液体培地へ接種し4〜6時間培養した後、A
600における吸光度を測定した。McFarland #0.5と比濁して、培地で希釈した。各菌株を10
5CFU/mL(最終濃度)程度になるように添加した。
【0052】
さらにまた、感染した患者から採取し単離した臨床株についても抗菌作用を調べた。試験は、メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)2つ(MRSA(i)および(ii))、メチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)臨床株2つ(MSSA(i)および(ii))、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)5つ(Pseudomonas aeruginosa1、Pseudomonas aeruginosa6、Pseudomonas aeruginosa8、Pseudomonas aeruginosa9およびPseudomonas aeruginosa12)の9種の臨床株について行った。MRSAおよびMSSA臨床株についてはStaphylococcus aureus ATCC29213と、緑膿菌臨床株についてはPseudomonas aeruginosa ATCC 27853とそれぞれ同じよ方法で試験した。
【0053】
試験するペプチド溶液をMHBで希釈し、128μg/mLの溶液を調製した。この溶液を培地で段階希釈して、128、64、32、16、8.0、4.0、2.0μg/mLの濃度のペプチド含有培地を調製した。比較対象として、トブラマイシン(TOB:アミノグルコシド系抗生物質)、オキサシリン(OX:β-ラクタム系抗生物質)およびメロペネム(MEPM:カルバペネム系抗生物質)、シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質)を用いた。滅菌精製水で1.0 mg/mLに調製し、TOBについては16、8、4、2、1.0、0.25、0.12、0.06μg/mL、OXについては0.5、0.12、0.06μg/mL、MEPMについては16、8、4、2、1.0、0.25、0.12、0.06、0.03、0.008μg/mLの濃度の陽性コントロール含有培地をそれぞれ調製した。
【0054】
96 wellマイクロタイタープレートに、接種液0.1 mLと各濃度のペプチドまたは陽性コントロール含有培地0.1 mLを加え、37℃で16〜24 時間(またはそれぞれの菌株の生育に好適な時間)培養した。検体を含まないウェルを陰性コントロールとした。培養後、生育を目視で観察し、生育の阻止された最小の濃度を最小生育阻止濃度(MIC)とした。
【0055】
なお、本試験に用いた培地は、細菌の試験ではミューラーヒントンブロスであった。それぞれの菌について、独立した実験を2回以上行った。
【0056】
結果を下記表4および表5に示す。
【0057】
【表4-1】
単位:濃度(μg/mL)(表4−2及び表4−3においても同じ)
※2回の試験でMICが一致したものは欄内の数字が1個、一致しなかったものは1回目/2回目それぞれの値を示した(表4−2及び表4−3においても同じ)。
※N.T.:試験せず(表4−2及び表4−3においても同じ)。
【0058】
【表4-2】
【0059】
【表4-3】
【0060】
【表5-1】
【0061】
【表5-2】
【0062】
表4および5に示すように、それぞれのペプチドは各菌に対して抗菌活性を示した。
【0063】
5. ATPアッセイ法
細菌(Escherichia coli ATCC 25922、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853およびStaphylococcus aureus ATCC29213、Staphylococcus epidermidis JCM 2414)は、ミューラー・ヒントン・ブロス(Mueller-Hinton broth:MHB)またはLB培地に接種し、菌株の生育に好適な温度・期間で培養した。こうして得られたコロニーから菌株を新しい液体培地に接種し、16〜20 時間培養後、各菌株に好適な容量(10〜50μL)を新しい液体培地へ接種し4〜6 時間培養した後、A
600における吸光度を測定した。McFarland #0.5と比濁して、培地で希釈した。各菌株を10
5 CFU/mL(最終濃度)程度になるように添加した。
【0064】
試験するペプチド溶液を培地で希釈し、10μg/mLの溶液を調製した。陽性コントロールとして、トブラマイシン(TOB)、オキサシリン(OX)およびメロペネム(MEPM)を用いた。滅菌精製水で1.0 mg/mLに調製し、TOBについては1.0、0.25、0.12、0.06μg/mL、OXについては0.5、0.12、0.06μg/mL、MEPMについては1.0、0.25、0.12、0.06、0.03、0.008μg/mLの濃度の陽性コントロール含有培地をそれぞれ調製した。96 wellマイクロタイタープレートに、接種液0.1 mLと各濃度のペプチドまたは陽性コントロール含有培地0.1 mLを加え、37℃で3 時間培養した。検体を含まないウェルを陰性コントロールとした。培養後、PROMEGA社BacTiter-Glo Microbial Cell Viability Assay kitを用いてATPを測定し、陰性対照と比較して相対値を求め、生存率とした。ATPを指標とした3時間後の生存率によって、抗菌性を評価した。
【0065】
なお、本試験に用いた培地は、細菌の試験ではミューラーヒントンブロスあった。それぞれの菌について、独立した実験を2回行った。
【0066】
結果を下記表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
表6より、これらのペプチドはATP活性においては調べた3種の菌のいずれに対しても抗菌活性を示し、これらのペプチドはいずれも広い抗菌スペクトルを有していることが示唆された。