特許第5750799号(P5750799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750799
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20150702BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-58685(P2011-58685)
(22)【出願日】2011年3月17日
(65)【公開番号】特開2012-196065(P2012-196065A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100154106
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】田口 敦司
(72)【発明者】
【氏名】廣野 大輔
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−061363(JP,A)
【文献】 特開2003−244966(JP,A)
【文献】 特開2001−275366(JP,A)
【文献】 特開平10−056782(JP,A)
【文献】 特開平09−219976(JP,A)
【文献】 特開2000−023484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補的にオンオフ駆動される上アームの第1のスイッチング素子と下アームの第2のスイッチング素子とを直列に接続して有するインバータ回路と、
前記第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動回路と、
前記第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動回路と、
前記第2のスイッチング素子がオン動作中に外部の直流電源から充電される電力を電源電圧として前記第1の駆動回路に供給するブートストラップコンデンサと、
前記ブートストラップコンデンサと前記直流電源との間に設けられ、前記ブートストラップコンデンサへの充電電流を制限する電流制限抵抗と、
前記第1及び第2の駆動回路に前記第1及び第2のスイッチング素子を駆動する制御信号を出力する制御手段と、
を備え、前記第2の駆動回路から出力されるオンオフ信号により、前記第2のスイッチング素子を駆動して前記ブートストラップコンデンサの初期充電を行うインバータ装置であって、
前記オンオフ信号のオン時間は、前記第2のスイッチング素子がオン動作してから、これを流れる電流の電流情報が前記制御手段まで伝搬される伝搬時間、前記制御手段が過電流であること判定する処理時間及び前記第2の駆動回路における遅延時間の総和に、各時間のばらつきを考慮した余裕時間を加算した時間に等しいことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記オンオフ信号のオン時間は、前記ブートストラップコンデンサの充電中に発生する前記直流電源の電圧変動が許容値内に制限し得る時間内に設定されたことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記電流制限抵抗に対して並列に、前記ブートストラップコンデンサの初期充電が完了すると前記電流制限抵抗の両端を短絡させる第3のスイッチング素子をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路の直列接続された第1及び第2のスイッチング素子のうち、下アームの第2のスイッチング素子をオンオフ駆動してブートストラップコンデンサを初期充電するインバータ装置に関し、特にブートストラップコンデンサの初期充電中の過電流保護動作を確実に実行しようとするインバータ装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のインバータ装置は、相補的にオンオフ駆動される上アームの第1のスイッチング素子と下アームの第2のスイッチング素子とを直列に接続して有するインバータ回路と、第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動回路と、第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動回路と、第2のスイッチング素子がオン動作中に、外部の直流電源によって充電される電力を電源電圧として第1の駆動回路に供給するブートストラップコンデンサと、このブートストラップコンデンサと上記直流電源との間に設けられ、ブートストラップコンデンサへの充電電流を制限する電流制限抵抗と、を備え、第2の駆動回路から出力されるオンオフ信号により、第2のスイッチング素子を駆動してブートストラップコンデンサの初期充電を行うようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−23484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のインバータ装置においては、ブートストラップコンデンサの初期充電時に第2のスイッチング素子を駆動する信号のオンオフデューティは50%に設定されているものの、オン時間については何ら設定されていなかった。したがって、このオン時間が、第2のスイッチング素子がオン動作中に第2のスイッチング素子とグランド(接地)との間に設けられたシャント抵抗を流れる電流を検出し、これを制御手段で処理して過電流であることを判定してから第2のスイッチング素子をオフ駆動させるまでに要する時間よりも短いときには、過電流保護動作を実施することができない。したがって、インバータ回路に過電流が流れ続け、発煙発火等の異常をきたすおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、ブートストラップコンデンサの初期充電中の過電流保護動作を確実に実行しようとするインバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によるインバータ装置は、相補的にオンオフ駆動される上アームの第1のスイッチング素子と下アームの第2のスイッチング素子とを直列に接続して有するインバータ回路と、前記第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動回路と、前記第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動回路と、前記第2のスイッチング素子がオン動作中に外部の直流電源から充電される電力を電源電圧として前記第1の駆動回路に供給するブートストラップコンデンサと、前記ブートストラップコンデンサと前記直流電源との間に設けられ、前記ブートストラップコンデンサへの充電電流を制限する電流制限抵抗と、前記第1及び第2の駆動回路に前記第1及び第2のスイッチング素子を駆動する制御信号を出力する制御手段と、を備え、前記第2の駆動回路から出力されるオンオフ信号により、前記第2のスイッチング素子を駆動して前記ブートストラップコンデンサの初期充電を行うインバータ装置であって、前記オンオフ信号のオン時間は、前記第2のスイッチング素子がオン動作してから、これを流れる電流の電流情報が前記制御手段まで伝搬される伝搬時間、前記制御手段が過電流であること判定する処理時間及び前記第2の駆動回路における遅延時間の総和に、各時間のばらつきを考慮した余裕時間を加算した時間に等しいものである。
【0007】
このような構成により、ブートストラップコンデンサへの初期充電時には、第2の駆動回路から出力するオンオフ信号によりインバータ回路の下アームの第2のスイッチング素子を駆動し、外部の直流電源から電流制限抵抗を介してブートストラップコンデンサに充電電流を供給する。その際、上記オンオフ信号のオン時間を、第2のスイッチング素子がオン動作してから、これを流れる電流の電流情報が制御手段まで伝搬される伝搬時間、制御手段が過電流であること判定する処理時間及び第2の駆動回路における遅延時間の総和に、各時間のばらつきを考慮した余裕時間を加算した時間に等しく設定しておく。
【0008】
さらに、前記オンオフ信号のオン時間は、前記ブートストラップコンデンサの充電中に発生する前記直流電源の電圧変動が許容値内に制限し得る時間内に設定するとよい。
【0009】
また、前記電流制限抵抗に対して並列に、前記ブートストラップコンデンサの初期充電が完了すると前記電流制限抵抗の両端を短絡させる第3のスイッチング素子をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、例えばインバータ回路の上アームの第1のスイッチング素子が短絡故障している場合に、下アームの第2のスイッチング素子のオン時間として、過電流保護機能を発揮させるのに最低必要な時間を確保することができる。したがって、ブートストラップコンデンサの初期充電中の過電流保護動作を確実に実行することができ、インバータ回路の発煙発火等の異常発生を回避することができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明によれば、ブートストラップコンデンサの充電中に、外部の直流電源が電圧変動するのを抑制することができる。したがって、この直流電源の電圧変動により、周辺回路が異常動作をするのを防止することができる。
【0012】
そして、請求項3に係る発明によれば、電流制限抵抗をより大きくしてブートストラップコンデンサの初期充電時に発生する突入電流をより低減することができる。さらに、初期充電が完了して通常運転に移行した後は、外部の直流電源から電流制限抵抗を介さず、直接充電することができ、第1の駆動回路の電源電圧変動が抑制され、装置の安定動作を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるインバータ装置の第1の実施形態の概略構成を示す回路図である。
図2】上記第1の実施形態の動作を示す説明図である。
図3】本発明によるインバータ装置の第2の実施形態の要部を示す回路図である。
図4】上記第2の実施形態の動作を示す説明図である。
図5】上記第2の実施形態の別の動作を示す説明図である。
図6】本発明によるインバータ装置の第3の実施形態の要部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明によるインバータ装置の第1の実施形態の概略構成を示す回路図である。このインバータ装置1は、インバータ回路の直列接続された第1及び第2のスイッチング素子のうち、下アームの第2のスイッチング素子をオンオフ駆動してブートストラップコンデンサを初期充電するもので、インバータ回路2と、第1の駆動回路3と、第2の駆動回路4と、ブートストラップコンデンサ5と、電流制限抵抗6と、制御手段7と、を備えて構成されている。
【0015】
上記インバータ回路2は、直流電圧から交流電圧を生成して電動機、例えばコンプレッサを駆動するものであり、相補的にオンオフ駆動される上アームの第1のスイッチング素子(IGBT)8と下アームの第2のスイッチング素子(IGBT)9とを直列に接続して有している。なお、図1は、n相のインバータ回路2の1例としてハーフブリッジの場合を示している。
【0016】
上記インバータ回路2の第1のスイッチング素子8に接続して、第1の駆動回路3が設けられている。この第1の駆動回路3は、第1のスイッチング素子8をパルス幅変調(以下「PWM」という)信号によりオンオフ駆動するもので、外部の直流電源である第1の直流電源10により後述のブートストラップコンデンサ5に充電された電力を電源電圧として使用するようになっている。
【0017】
上記インバータ回路2の第2のスイッチング素子9に接続して、第2の駆動回路4が設けられている。この第2の駆動回路4は、第2のスイッチング素子9をPWM信号によりオンオフ駆動するもので、第1の直流電源10を電源として使用するようになっている。そして、ブートストラップコンデンサ5の初期充電時には、図2に示すようにオン時間t、周期Tのオンオフ信号を一定時間だけ出力して第2のスイッチング素子9をオフオフ駆動させるように動作する。
【0018】
この場合、ブートストラップコンデンサ5の初期充電時に第2の駆動回路4から出力されるオンオフ信号のオン時間tは、少なくとも、第2のスイッチング素子9がオン動作してから、第2のスイッチング素子9とグランド(接地)との間に設けられたシャント抵抗11を流れる電流の電流情報に基づいて後述の制御手段7内で処理して過電流であることを判定し、第2のスイッチング素子9をオフ駆動させるまでに要する時間に略等しくなるように設定される。
【0019】
より詳細には、上記オン時間tは、シャント抵抗11による検出電流の制御手段7までの伝播時間、制御手段7内での処理時間、及び第2の駆動回路4における遅延時間の総和に、各時間のばらつきを考慮し所望の余裕時間を加算して設定される。
【0020】
好ましくは、上記オン時間tは、上記総遅延時間以上であって、ブートストラップコンデンサ5の充電中に発生する上記第1の直流電源10の電圧変動が許容値内に制限し得る時間内に設定するとよい。
【0021】
なお、本実施形態においては、本発明のインバータ装置1の最悪駆動条件として、設計値の許容ばらつき範囲内で上記第1の直流電源10に並列に接続される平滑コンデンサ12の静電容量を最小にし、後述の電流制限抵抗6を最小にし、ブートストラップコンデンサ5の静電容量を最大にして実験を行い、オン時間をt=5μsec、周期をT=100μsecに設定した。また、同条件の下でブートストラップコンデンサ5を十分に充電し得る時間、即ちブートストラップコンデンサ5の充電電圧が第1の直流電源10の電圧と略等しくなるまでの初期充電時間を14msecに設定した。
【0022】
上記第1のスイッチング素子8と第2のスイッチング素子9との接続部aに一端部を接続し、他端部を上記第1の駆動回路3の電源端子部bに接続して、ブートストラップコンデンサ5が設けられている。このブートストラップコンデンサ5は、第2のスイッチング素子9がオン動作中に、第1の直流電源10から充電される電力を電源電圧として第1の駆動回路3に供給するもので、耐震性の大きい小型のセラッミクコンデンサである。
【0023】
上記ブートストラップコンデンサ5と第1の直流電源10との間には、電流制限抵抗6が設けられている。この電流制限抵抗6は、ブートストラップコンデンサ5への充電電流を制限するもので、一端部をブートストラップコンデンサ5の上記他端部(第1の駆動回路3の電源端子部b)に接続し、他端部を第1の直流電源10の出力側に設けられたダイオード13のカソードに接続している。
【0024】
上記第1の駆動回路3及び第2の駆動回路4に接続して、制御手段7が設けられている。この制御手段7は、第1及び第2の駆動回路3,4に制御信号を出力して、第1及び第2のスイッチング素子8,9を相補的にオンオフ駆動させるものであり、マイクロコンピュータである。そして、インバータ回路2の下アームの複数のスイッチング素子に接続されたシャント抵抗を流れる電流の電流情報をフィードバックしてこれを処理し、インバータ回路2を構成する複数のスイッチング素子の各駆動回路から出力するPWM信号のデューティー比を制御して電動機の適切な駆動状態を維持できるようになっている。
【0025】
なお、図1において符号14は、外部に設けた第2の直流電源であり、インバータ回路2の電源となるものである。
【0026】
次に、このように構成されたインバータ装置1の動作について説明する。
先ず、図示省略の運転スイッチが投入されると、制御手段7から制御信号が第2の駆動回路4に出力され、第2の駆動回路4から第2のスイッチング素子9に対して図2に示すようなオン時間がt=5μsec、周期がT=100μsecのPWM信号が出力されて第2のスイッチング素子9がオンオフ駆動される。このとき、ブートストラップコンデンサ5は未充電状態にあるため、ブートストラップコンデンサ5の充電電力を電源電圧とする第1の駆動回路3は駆動しておらず、第1のスイッチング素子8もオフしたままである。
【0027】
第2のスイッチング素子9がオン駆動している5μsecの間、図1に破線の矢印で示す経路を経て充電電流が流れ、ブートストラップコンデンサ5が電流制限抵抗6を通して漸次充電される。以後、第2のスイッチング素子9がオン時間t=5μsec、周期T=100μsecで繰り返しオンオフ駆動され、ブートストラップコンデンサ5の充電が予め設定された初期充電時間としての14msecの間、断続的に続く。これにより、ブートストラップコンデンサ5の充電電圧は漸増し、最終的に第1の直流電源10の電圧に略等しくなって初期充電が終了する。
【0028】
この場合、ブートストラップコンデンサ5への充電電流が電流制限抵抗6により制限されると共に、充電時間が第2のスイッチング素子9のオン時間tにより制限されるため、ブートストラップコンデンサ5の初期充電時に大きな突入電流が流れて第1の直流電源10の許容出力電力を超えてしまい、第1の直流電源10の出力電圧が低下して制御手段7の動作が停止するという異常動作の発生を回避することができる。
【0029】
ここで、本発明のインバータ装置1においては、初期充電時における第2のスイッチング素子9のオン時間tを、第2のスイッチング素子9がオン動作してから、シャント抵抗11を流れる電流の電流情報に基づいて過電流であることが判定され、第2のスイッチング素子9がオフ駆動されるまでに要する時間に略等しい5μsecに設定しているため、例えば第1のスイッチング素子8が短絡故障して過電流が流れた場合に、それを検出して過電流保護動作を確実に実行することができる。したがって、過電流が流れ続けることによる装置の発煙発火の問題の発生を回避することができる。また、過電流が長時間流れ続けることによる第1の直流電源10の電圧変動も抑制することができる。
【0030】
図3は本発明によるインバータ装置1の第2の実施形態の要部を示す回路図である。ここでは、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
この第2の実施形態は、ダイオード13のアノードに接続して設けた電流制限抵抗6に対して並列にMOSFETから成る第3のスイッチング素子15を設け、該第3のスイッチング素子15をオンオフ駆動する第3の駆動回路16を備えたものである。なお、同図において、ダイオード13とブートストラップコンデンサ5との間に設けた抵抗17は、電流制限抵抗6と協働してブートストラップコンデンサ5の充電電流を制限するものであるが、省略してもよい。
【0031】
このような構成により、第2の実施形態においては、ブートストラップコンデンサ5への初期充電時には、図4に示すように第3の駆動回路16から第3のスイッチング素子15のオフ信号を出力し、第3のスイッチング素子15をオフ駆動させると共に、第2の駆動回路4により第2のスイッチング素子9をオンオフ駆動する。これにより、ブートストラップコンデンサ5には、第1の直流電源10から電流制限抵抗6を介して充電電流が供給され、ブートストラップコンデンサ5が充電される。
【0032】
また、充電開始から一定の初期充電時間が経過し、ブートストラップコンデンサ5が十分に充電されと、第3の駆動回路16からオン信号が第3のスイッチング素子15に出力され、第3のスイッチング素子15がオン駆動されて電流制限抵抗6の両端が短絡される。また、第2の駆動回路4のオフ信号により第2のスイッチング素子9がオフ駆動される。以降、第3の駆動回路16により第3のスイッチング素子15がオン駆動された状態で第1及び第2のスイッチング素子8,9がそれぞれ所定のPWM信号により駆動されて、装置が通常運転を行う。したがって、装置の通常運転時には、ブートストラップコンデンサ5は、充電電流が電流制限抵抗6を経ずに第1の直流電源10から第3のスイッチング素子15を介して充電されることになる。
【0033】
この場合、第3のスイッチング素子15の内部抵抗は、電流制限抵抗6に比べて極めて小さく略短絡状態と等価であるため、電動機の運転によりブートストラップコンデンサ5の充電電力が放電して充電量が低下しても、第1の直流電源10から直ちに充電が行われる。したがって、通常運転時における第1の駆動回路3の電源電圧変動が抑制され、装置の安定動作が維持される。
【0034】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、第2のスイッチング素子9をPWM駆動して初期充電する場合について説明したが、図5に示すように、ブートストラップコンデンサ5の充電が完了するまで、第2のスイッチング素子9を常時オン駆動させてもよい。この場合、電流制限抵抗6としては、充電時に大きな突入電流が発生しないように、より大きな抵抗値のものを使用するとよい。
【0035】
図6は本発明によるインバータ装置1の第3の実施形態の概略構成を示す回路図である。ここでは、第2の実施形態と異なる部分について説明する。
この第3の実施形態は、上記第2の実施形態の電流制限抵抗6を取除いたものであり、ダイオード13のアノードに直列にMOSFETから成る第3のスイッチング素子15を接続した構成を成している。
【0036】
このような構成により、第3の実施形態は、初期充電時に第2のスイッチング素子9をオン駆動すると共に、第3の駆動回路16により上記第3のスイッチング素子15を一定のパルス幅及び周期でPWM駆動してブートストラップコンデンサ5への充電を行う。そして、ブートストラップコンデンサ5への充電が完了すると、常時オン駆動させる。
【0037】
これにより、初期充電時に大きな突入電流が流れるのを防止すると共に、第2のスイッチング素子9を過電流が流れた際に、装置を確実に停止させて過電流保護機能を発揮させることができる。また、第3のスイッチング素子15としては、大電力のIGBTよりも省電力で応答速度の速いMOSFETを使用することができ、省電力及びレスポンス等の制御性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…インバータ装置
2…インバータ回路
3…第1の駆動回路
4…第2の駆動回路
5…ブートストラップコンデンサ
6…電流制限抵抗(抵抗)
7…制御手段
8…第1のスイッチング素子
9…第2のスイッチング素子
10…第1の直流電源(外部の直流電源)
15…第3のスイッチング素子
16…第3の駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6