(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カップ列送り部材は、互いに同一の形状およびサイズを有するとともに、互いに上下方向に間隔を隔てて平行に延びるように配置され、互いに同期して回転可能な複数のカップ列送り部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のカップ供給装置では、カップ搬出装置への予備カップ列の補充の際に、最後尾の予備カップ列以外は、カップ列を後ろ側のカップ列で押圧する。そのため、カップ列同士が、カップの開口周縁部のカール部で噛み合い、くっついてしまうことがある。また、予備カップ列は、多数のカップが積み重なったものであるので、予備カップ列の搬送中に姿勢が不安定になりやすく、特に、カップ搬出装置への補充直前に、予備カップ列が大きく撓んだり、傾斜したりすることがある。これらの場合には、カップ搬出装置に補充すべき予備カップ列がカップドロップリングの開口部に適切に落下できず、その結果、カップの供給不良が生じてしまう。
【0007】
また、上記のカップ供給装置には、カップ収容器内のカップ搬出装置寄りの位置に、上下方向に延びるとともに回動自在でかつ所定方向にばねで付勢されたセパレータが設けられており、このセパレータにより、予備カップ列をカップ搬出装置に補充する際に、先頭の予備カップ列とその直ぐ後ろ側の予備カップ列とが切り離されるようになっている。しかし、セパレータの設置位置やばねの付勢力、予備カップ列の収納位置などによっては、予備カップ列同士を適切に切り離せないこともあり、さらにはセパレータを通過した予備カップ列が大きく撓んだり、傾斜したりした場合にはやはり、カップの供給不良が生じてしまう。加えて、上記のようなセパレータを備える分、カップ供給装置の製造コストが上昇してしまうという問題もある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、カップ列の搬送を安定して行うことができるとともに、カップの供給を確保することができるカップ飲料提供装置のカップ供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、各々が積み重なった状態の複数のカップから成る複数のカップ列を収容するとともに、飲料の提供時にカップを供給するカップ飲料提供装置のカップ供給装置であって、供給用のカップ列がセットされるカップ列セット部と、このカップ列セット部に連なった状態で隣接し、1以上の予備用のカップ列が載置された状態で収納されるカップ列収納部とを、内部に有するカップ収容器と、飲料の提供時に、カップ列セット部にセットされている供給用のカップ列から最下位のカップを切り離すカップ切離し手段と、供給用のカップ列のカップが所定数以下になったときに、カップ列収納部に収納されている1以上の予備用のカップ列を、カップ列セット部側に搬送し、カップ列セット部に最も近い予備用のカップ列をカップ列セット部にセットするカップ列搬送手段と、を備え、カップ列搬送手段は、駆動源と、カップ収容器内においてカップ列セット部およびカップ列収納部の隣接する方向に螺旋状に延びるとともに中心軸線を中心として回転自在に設けられたスパイラル部を有し、スパイラル部が駆動源によって所定方向に回転駆動されることにより、スパイラル部のピッチ間に位置する予備用のカップ列を、カップ列セット部側に送るカップ列送り部材と、を有して
おり、カップ収容器は、互いに対向し、カップ列送り部材の一端部および他端部をそれぞれ支持する2つの側壁と、2つの側壁を連結する連結部と、を有し、カップ列搬送手段は、2つの側壁の一方に設けられ、スパイラル部を所定方向に回転させるために、駆動源の動力をカップ列送り部材に伝達する動力伝達機構を、さらに有していることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、カップ収容器内において、カップ列セット部に供給用のカップ列がセットされる一方、カップ列セット部に連なった状態で隣接するカップ列収納部に、1以上の予備用のカップ列が載置した状態で収納される。また、飲料の提供時に、カップ切離し手段により、カップ列セット部にセットされている供給用のカップ列から最下位のカップが切り離されて供給される。そして、カップの供給が進み、供給用のカップ列のカップが所定数以下になったときに、カップ列搬送手段により、カップ列収納部に収納されている1以上の予備用のカップ列がカップ列セット部側に搬送され、カップ列セット部に最も近い予備用のカップ列が、カップ列セット部にセットされる。
【0011】
上記のカップ列搬送手段のカップ列送り部材は、カップ列セット部およびカップ列収納部の隣接する方向に螺旋状に延びるとともに中心軸線を中心として回転自在のスパイラル部を有しており、このスパイラル部が駆動源によって所定方向に回転駆動されることにより、スパイラル部のピッチ間に位置する予備用のカップ列が、カップ列セット部側に送られる。この場合、予備用のカップ列は、その移動方向の前後において、スパイラル部のピッチ間の両側部分で拘束されるように支持される。これにより、カップ列同士の間に隙間が生じることで、カップ列同士がくっつくのを防止できるとともに、カップ列が撓んだり、傾斜したりするのを防止しながら、カップ列をカップ列収納部からカップ列セット部に安定して搬送し、セットすることができる。以上のように、本発明によれば、カップ収容器内におけるカップ列の搬送を安定して行うことができるとともに、予備用のカップ列を適切にカップ列セット部にセットできることで、カップの供給を確保することができる。
また、上記の構成によれば、スパイラル部を有するカップ列送り部材の一端部および他端部が、カップ収容器の互いに対向する2つの側壁にそれぞれ支持され、一方の側壁に、駆動源の動力をカップ列送り部材に伝達する動力伝達機構が設けられているので、比較的簡単な設計変更により、カップ収容器におけるカップ列の収容数が異なるカップ供給装置を得ることができる。具体的には、動力伝達機構の構成を維持したまま、カップ収容器の両側壁の連結部、およびカップ列送り部材を、長くしたり、短くしたりするという、簡単な設計変更により、カップ列セット部およびカップ列収納部の隣接する方向に、カップ収容器およびカップ列送り部材のサイズを大きくしたり、小さくしたりすることができる。それにより、カップ列の収容数が多いまたは少ないカップ供給装置を容易に得ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置において、カップ列送り部材は、互いに同一の形状およびサイズを有するとともに、互いに上下方向に間隔を隔てて平行に延びるように配置され、互いに同期して回転可能な複数のカップ列送り部材で構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、互いに同一の形状およびサイズを有するとともに、互いに上下方向に間隔を隔てて平行に延びるように配置された複数のカップ列送り部材が、互いに同期して回転しながら、予備用のカップ列をカップ列セット部側に送る。この場合、予備用のカップ列を上下方向の複数箇所で前後から支持しながら搬送するので、その予備用のカップ列が多数のカップを比較的高く積み重ねられたものであっても、搬送開始時の姿勢を保ちながら、安定して搬送することができる。
【0016】
請求項
3に係る発明は、請求項
1または2に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置において、カップ切離し手段は、カップ収容器のカップ列セット部に対応する底部に取り付けられ、カップ収容器のサイズとは無関係に、カップ収容器に収容されるカップのサイズに対応するように構成されたカップドロップリングを有していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、カップ切離し手段のカップドロップリングは、カップ収容器のカップ列セット部に対応する底部に取り付けられ、カップ収容器のサイズとは無関係に、カップ収容器に収容されるカップのサイズに対応するように構成されている。したがって、互いにサイズが異なる複数のカップ収容器、すなわち互いにカップ列の収容数が異なる複数のカップ収容器に対し、収容されるカップのサイズが同一であれば、1種類のカップドロップリングを適用することができる。つまり、設計変更によって、カップ列の収容数が互いに異なる種々のカップ収容器を製造する場合、それらのカップ収容器に取り付けるべきカップドロップリングを共通化することができる。
【0018】
請求項
4に係る発明は、請求項1ないし
3のいずれかに記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置において、カップ収容器、カップ切離し手段およびカップ列搬送手段のうち、少なくともカップ収容器およびカップ切離し手段を備えた複数のカップ供給ユニットが、共通の取付部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、上記の複数のカップ供給ユニットが、共通の取付部材を介して組み付けられるので、カップ飲料提供装置におけるカップ供給装置の設置スペースや供給すべきカップの種類に応じて、統合されたカップ供給装置を簡単に構成することができる。これにより、単一のカップ供給ユニットによるカップ供給装置に比べて、供給可能なカップ数を増大させたり、サイズの異なる複数種類のカップを供給したりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるカップ供給装置を示している。このカップ供給装置1は、カップ式自動販売機(図示せず)に内蔵され、自動販売機内で調理されたコーヒーやジュースなどの飲料が注がれるカップを、自動販売機内でカップを搬送する搬送装置や販売口(いずれも図示せず)などに供給するものである。
【0022】
図1および
図2に示すように、カップ供給装置1は、カップ列の収容数が互いに異なる3タイプのカップ供給装置1A、1Bおよび1C(カップ供給ユニット)が、共通の取付部材2を介して互いに組み付けられたものである。カップ供給装置1Aおよび1Bはそれぞれ、最大4つおよび3つのカップ列を収容可能に構成されており、カップ供給装置1Cは、1つのカップ列を収容可能に構成されている。
【0023】
取付部材2は、所定形状の複数の金属板を折曲げ加工するとともに、それらを互いにねじ止めなどによって組み立てることにより、正面形状が下方に開放するコ字状に形成されている。そして、この取付部材2に、カップ供給装置1Aとカップ供給装置1Bおよび1Cとが、互いに背中合わせに配置された状態でねじ止めされ、カップ供給装置1Bとカップ供給装置1Cとが、互いに左右方向に隣接した状態でねじ止めされている。
【0024】
なお、以下の説明では、上記のカップ供給装置1A、1Bおよび1Cを互いに組み付けて構成されたカップ供給装置1を適宜、「統合カップ供給装置1」というものとし、また、後述するカップ列搬送装置5を有するカップ供給装置1Aおよび1Bは、基本構成が互いに同一であるので、4つのカップ列を収容可能なカップ供給装置1Aを中心に説明するものとする。
【0025】
図3および
図4に示すように、カップ供給装置1Aは、多数のカップCを収容するカップ収容器3と、このカップ収容器3の底部に設けられ、販売時にカップCを1つずつ下方に搬出するカップ搬出装置4(カップ切離し手段)と、カップ収容器3内においてカップ列を搬送するカップ列搬送装置5(カップ列搬送手段)と、これらのカップ搬出装置4およびカップ列搬送装置5を制御する、マイクロコンピュータを有する制御装置(図示せず)などで構成されている。なお、カップ搬出装置4によって搬出されたカップCは、前述したように、自動販売機内でカップCを搬送する搬送装置のカップホルダに直接、供給されたり、カップ搬出装置4から販売口に延びるカップシュート(図示せず)を介して、販売口に供給されたりする。
【0026】
カップ収容器3は、前面および上面が開放する縦長ボックス状のケース11を有しており、その上部には、ケース11の上面から前面上部にわたって覆う上部カバー12が取り付けられ、この上部カバー12の下方には、ケース11の前面を開閉する前面ドア13が、右端部を支点としてケース11に回動自在に取り付けられている。ケース11内には、
図4(b)に示すように、販売用のカップ列(以下「販売カップ列H」という)、および3つの予備用のカップ列(以下「予備カップ列Y」という)の計4つのカップ列が左右方向に一列に並んだ状態で収容される。具体的には、ケース11内には、左端部に販売カップ列Hをセットするためのカップ列セット部14が設けられるとともに、これに連なった状態で右方に隣接し、3つの予備カップ列Yを載置した状態で収納するためのカップ列収納部15が設けられている。
【0027】
ケース11は、平面形状が横長矩形状のベース16と、このベース16の周縁部のうちの左右端部および後端部から上方に延びるケース本体17などで構成されている。ベース16の左端部には、上記カップ列セット部14に対応して、上下方向に貫通し、カップCの最大外径よりも一回り大きい直径を有する開口部16aが設けられている。そして、販売カップ列Hは、開口部16aに挿通した状態で、カップ列セット部14にセットされるとともに、最下位のカップ(以下「販売カップ」という)Cが、カップ搬出装置4にセットされる。
【0028】
このカップ搬出装置4は、販売カップCを切り離すためのカップドロップリング21と、このカップドロップリング21およびカップ列搬送装置5の後述する2つのカップ列送り部材41、41を駆動する駆動機構22と、カップドロップリング21の底面に連結され、下方に延びる円筒状のシュート23とを備えている。
図5(a)は、統合カップ供給装置1における3つのカップ供給装置1A、1Bおよび1Cのカップドロップリング21A、21Bおよび21Cを示している。同図に示すように、これらのカップドロップリング21A、21Bおよび21Cは、互いに近接するように配置され、カップ供給装置1A、1Bおよび1Cにおいて供給すべきカップCのサイズ(カップCの開口部の直径)に対応するように構成されている。また、これらのカップ供給装置1A、1Bおよび1Cは、基本構成が互いに同一であるので、カップ供給装置1Aのカップドロップリング21Aを代表して、簡単に説明する。
【0029】
図5(b)に示すように、カップドロップリング21は、平面形状がリング状に形成されており、その内側の開口部21aが、ベース16の開口部16aに合致するように配置されている。また、カップドロップリング21の内周縁部には、内方に臨むとともに周面に所定形状のカムを有する複数(本実施形態では6つ)のカップ切離しカム24が、鉛直軸線を中心として回転自在に設けられている。各カップ切離しカム24の下端部には、ギヤ部が設けられている。また、カップドロップリング21の内部には、平面形状がリング状に形成され、内周部に各カップ切離しカム24のギヤ部に噛み合うリングギヤ25が回動自在に設けられている。このリングギヤ25には、外部に突出し、駆動機構22に連結された駆動レバー25aが設けられている。
【0030】
図4(b)に示すように、駆動機構22は、正逆回転可能なモータ26(駆動源)と、これに連結されたギヤボックス27と、左右方向に水平に延びるとともに右端部がギヤボックス27の出力軸に連結され、モータ26の回転に伴って正逆回転する駆動シャフト28と、この駆動シャフト28と上記リングギヤ25の駆動レバー25aとの間を連結し、駆動シャフト28が所定の一方向に回転するのに連動して、リングギヤ25を往復回動させる往復回動機構(図示せず)などを備えている。したがって、販売時に、モータ26によって、駆動シャフト28が所定の一方向に回転駆動されると、往復回動機構を介して、リングギヤ25が所定の角度範囲において1回、往復回動する。これに伴い、カップドロップリング21のすべてのカップ切離しカム24は、互いに同期して、カップドロップリング21の回動角度よりも大きい所定の角度範囲で、往復回転する。これにより、販売カップCは、直ぐ上側のカップCから切り離され、シュート23を介して、下方に搬出される。
【0031】
また、ベース16には、その上面に、滑性を高めるための所定の樹脂(例えばフッ素樹脂)がコーティングされている。これにより、カップ列収納部15に収納され、ベース16上に載置されている予備カップ列Yを、カップ列搬送装置5によって搬送する際に、ベース16上を円滑に滑らせながら搬送することができる。
【0032】
さらに、
図3に示すように、ベース16上の前端部の開口部16a付近には、予備カップ列Yを搬送し、カップ列セット部14にセットする際に、その予備カップ列Yの下端部の前面をガイドするカップガイドプレート18およびカップガイドローラ19が設けられている。カップガイドプレート18は、平面形状が矩形状の金属板からなり、その一辺付近を折り返すように曲げ加工することによって構成されている。そして、このカップガイドプレート18は、折り返し部分の縁部18aが左方の開口部16aに向かって斜め後方に傾斜するように、ベース16上にねじ止めされている。一方、カップガイドローラ19は、前後方向に水平に延びる支軸20aを介して、ローラ支持プレート20に回動自在に支持されるとともに、後ろ側(予備カップ列Y側)の端面が凹状に形成されている。そして、このカップガイドローラ19は、ローラ支持プレート20がカップガイドプレート18に重なった状態でベース16上にねじ止めされることにより、カップガイドプレート18の左方に近接するように配置されている。
【0033】
ケース本体17は、所定形状の金属板を折曲げ加工することなどによって構成されている。具体的には、このケース本体17は、ベース16の後端部から上方に延びる背板部31(連結部)と、この背板部31の左右端から直角に屈曲して前方に延びる左右の側板部32および33(側壁)とで構成されている。背板部31には、前後方向に貫通する上下2つの開口部31a、31aが形成されている。各開口部31aは、所定の高さ寸法を有するとともに、背板部31の左右方向の全体にわたって延びるように形成されている。そして、各開口部31aから外方に若干突出した状態で、カップ列搬送装置5の後述するカップ列送り部材41が、左右の側板部32および33に回転自在に支持されている。
【0034】
カップ列搬送装置5は、カップ収容器3内のカップ列収納部15に収納された予備カップ列Yをカップ列セット部14側に送るための上下2つのカップ列送り部材41、41と、これらを回転駆動する前記モータ26と、このモータ26の動力を両カップ列送り部材41、41に伝達する動力伝達機構42とを備えている。両カップ列送り部材41、41は、互いに同一の形状およびサイズを有しており、各カップ列送り部材41は、
図6に示すように、所定の径(例えば8mm)を有する金属製の丸棒で構成され、水平に所定長さ延びる回転軸43と、所定の径(例えば4mm)を有する金属製の線材で構成され、回転軸43を中心として、その長さ方向の全体にわたって螺旋状に延びるスパイラル部44とを有している。このスパイラル部44は、回転軸43の右から左に向かって、時計方向に回転しながら延びるように形成されており、所定の外径D(例えば52mm)およびピッチP(例えば85mm)を有している。また、スパイラル部44は、その左右両端部および中央部においてそれぞれ、連結棒45を介して、溶接などで回転軸43に連結されている。したがって、各カップ列送り部材41は、回転軸43の回転に伴い、これと一体にスパイラル部44が回転する。
【0035】
回転軸43は、その左端部および右端部がそれぞれ、カップ収容器3の左側板部32および右側板部33を貫通した状態で、これらに回転自在に支持されている。また、回転軸43の左端部には、動力伝達機構42の後述する従動ローラ52が固定されている。一方、回転軸43の右端部には、
図6(a)に示すように、回転軸43の周方向に沿って延びかつ所定の深さを有する溝部43aが形成されており、その溝部43aから回転軸43の右側の先端にわたって、切り欠かれている。具体的には、回転軸43の中心軸線から所定距離、離れた位置で、その中心軸線と平行に切り欠かれることにより、回転軸43の右端部には、
図6(a)に拡大して示すように、横凸字状の平坦面43bが形成されている。これにより、回転軸43の右端部には、溝部43aの形成に伴って得られ、回転軸43自体の径よりも小さい径を有しかつ断面D字状の小径部46と、この小径部46に連なって隣接し、回転軸43自体の径と同じ径を有しかつ断面D字状の大径部47とが形成されている。なお、
図6(d)および後述する
図8(b)などでは、小径部46を見やすくするために、回転軸43を右側から見たときの小径部46にハッチングを付して表示するものとする。
【0036】
図7は、動力伝達機構42を拡大して示している。同図(a)に示すように、動力伝達機構42は、カップ収容器3の左側板部32に設けられている。具体的には、前記駆動シャフト28の先端部(左端部、
図4(b)参照)に固定された駆動ローラ51と、上下のカップ列送り部材41、41の回転軸43の左端部にそれぞれ固定された上下の従動ローラ52および53と、これらのローラ51、52および53に巻き掛けられた無端のベルト54と、このベルト54に張力を付与するための2つの張力付与ローラ55、55などで構成されている。2つの張力付与ローラ55、55は、下側の従動ローラ53に近接し、その上下にそれぞれ配置されている。また、両張力付与ローラ55、55は、カップ収容器3の左側板部32に沿って前後方向(
図7では左右方向)にスライド自在の張力調整プレート56に、回転自在に支持されている。
【0037】
この張力調整プレート56は、所定形状の金属板を折曲げ加工することなどによって、側面形状がコ字状に形成されており、後端部(
図7では左端部)に、前記2つの張力付与ローラ55、55が支持されている。また、張力調整プレート56の上部および下部にはそれぞれ、前後方向(
図7では左右方向)に所定長さ延びる長孔56a、56aが形成されており、各長孔56aを介してカップ収容器3の左側板部32に取り付けられた取付けねじ57によって、張力調整プレート56が、左側板部32に沿って前後方向にスライド自在に支持されている。さらに、張力調整プレート56は、その前端上部および前端下部、ならびに中央部が、外方に直角に屈曲されている。前端上部および前端下部の屈曲部56b、56bにはそれぞれ、張力調整プレート56を後方(
図7では左方)に付勢するばね58、58が取り付けられている。
【0038】
このように構成された張力調整プレート56は、
図7(a)に示す張力付与位置と、同図(b)に示す張力付与解除位置との間で、前後方向にスライド可能になっている。すなわち、張力調整プレート56が張力付与位置に位置するときには、張力調整プレート56が2つのばね58、58で後方に付勢され、2つの張力付与ローラ55、55がベルト54に押し付けられることによって、両張力付与ローラ55、55間のベルト54の部分を下側の従動ローラ53に強く押付け、それにより、ベルト54全体に所定の張力が付与される。したがって、この状態において、駆動ローラ51が回転駆動されることにより、ベルト54が循環するように回り、これに伴い、上下の従動ローラ52および53が同期して回転する。
【0039】
一方、張力調整プレート56を張力付与解除位置に位置させるときには、作業者が自身の指を張力調整プレート56の中央部の屈曲部56cに掛け、両ばね58、58の付勢力に抗して、両張力付与ローラ55、55がベルト54から離れるよう、張力調整プレート56を前方(
図7では右方)にスライドさせる。これにより、両張力付与ローラ55、55によるベルト54への張力付与が解除され、そのベルト54の従動ローラ52、53間、および下側の従動ローラ53と駆動ローラ51の間がたるむ。このように、ベルト54に対する張力付与を解除した状態では、上下の従動ローラ52および53は、独立して回転可能となり、したがって、これらの従動ローラ52、53が左端部に固定された上下のカップ列送り部材41、41を、独立して手動で回転操作することが可能となる。
【0040】
なお、張力調整プレート56を張力付与解除位置に保持する場合、
図7(b)に示すように、張力調整プレート56の上側の長孔56aにドライバーなどの工具Tを挿入することにより、ばね58、58による張力調整プレート56の張力付与位置への戻りを阻止し、それにより、張力調整プレート56を張力付与解除位置に簡単に保持することができる。
【0041】
図8(a)は、カップ収容器3の右側板部33に設けられた位相調整プレート61を示している。この位相調整プレート61は、縦長の金属板からなり、上下のカップ列送り部材41、41の右端部の抜止め機能を有するとともに、両カップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の位相がずれている場合に、それらの位相を一致させるために操作されるものである。
【0042】
位相調整プレート61の上部及び下部にはそれぞれ、上下方向に所定長さ延びる長孔62、62が形成されており、各長孔62を介してカップ収容器3の右側板部32に取り付けられた取付けピン63によって、位相調整プレート61が、右側板部32に沿って上下方向にスライド自在に支持されている。また、位相調整プレート61の上端部および下端部には、鍵穴状に形成され、上下のカップ列送り部材41、41の回転軸43の右端部にそれぞれ係合する上係合孔64および下係合孔65が形成されている。
【0043】
図8(b)および(c)に示すように、上係合孔64は、円形状に形成され、回転軸43の回転を許容する回転許容部64aと、この回転許容部64aに連なって下方に延び、回転軸43の回転を許容する拡幅部64bと、この拡幅部64bに連なって下方に延び、回転軸43の回転を阻止する回転阻止部64cと、この回転阻止部64cの下端に連なって円形状に形成され、回転軸43よりも大きい径を有する大径孔部64dとで構成されている。
【0044】
上係合孔64の回転許容部64aおよび拡幅部64bは、回転軸43の右端部における大径部47の最大径よりも小さくかつ小径部46の最大径よりも大きい径および幅をそれぞれ有している。したがって、回転軸43の小径部46が、これらの回転許容部64aまたは拡幅部64bに係合する場合、その回転軸43を有する上側のカップ列送り部材41の回転が許容される。また、回転阻止部64cは、回転軸43の小径部46の最大径よりも小さくかつ小径部46の平坦面43bに直交する最大幅よりも若干大きい幅を有している。したがって、回転軸43の小径部46が回転阻止部64cに係合する場合、上側のカップ列送り部材41の回転が阻止される。さらに、大径孔部64dは、回転軸43の大径部47の最大径よりも大きい径を有している。この大径孔部64dは、位相調整プレート61をカップ収容器3の右側板部33に取り付ける際に、カップ列送り部材41の回転軸43の大径部47を、上係合孔64に貫通させるために利用される。
【0045】
一方、下係合孔65は、上記の上係合孔64の回転許容部64a、回転阻止部64cおよび大径孔部64dにそれぞれ対応しかつ同様に形成された回転許容部65a、回転阻止部65cおよび大径孔部65dで構成されている。すなわち、この下係合孔65は、上係合孔64と異なり、拡幅部64bを有しておらず、回転許容部65aと大径孔部65dの間には、これらに連なり、上係合孔64の拡幅部64bおよび回転阻止部64cと同じ高さ寸法に形成された回転阻止部65cを有している。
【0046】
また、位相調整プレート61には、作業者が自身の指を掛けて、位相調整プレート61を上下方向にスライドさせるための円形の操作孔66が形成され、この操作孔66の上方に、位相調整プレート61を上方にスライドさせた所定位置に固定するための固定用孔67が形成されている。なお、この固定用孔67は、位相調整プレート61が上記の所定位置に位置するときに、カップ収容器3の右側板部33に形成された孔33aに合致するように形成されており、作業者が、ドライバーなどの工具を固定用孔67および孔33aに挿入することによって、位相調整プレート61を上下方向に不動に固定することができる。
【0047】
次に、
図9を参照して、以上のように構成されたカップ供給装置1Aにおける予備カップ列Yの搬送動作について説明する。なお、作業者がカップ収容器3内にカップCを補充した直後には、前記
図4(b)に示すように、販売カップ列Hは、最下位の販売カップCがカップドロップリング21Aに支持された状態で、カップ列セット部14にセットされる一方、3つの予備カップ列Yは、各々がベース16上に載置されるとともに、上下のカップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の上下に対応するピッチP間、より具体的には、各スパイラル部44の回動軸43よりも前方に突出する部分の間に位置するよう、左右方向に一列に並んだ状態(
図6(c)参照)で、カップ列収納部15に収納される。
【0048】
図4(b)に示す状態から、自動販売機において飲料の販売が進み、
図9(a)に示すように、カップ収容器3内の販売カップ列Hのカップ数が所定数(例えば5個)以下になったときに、カップ列搬送装置5が作動する。具体的には、駆動機構22のモータ26が、カップドロップリング21Aを駆動する場合と逆方向に回転し、それにより、動力伝達機構42の駆動ローラ51が所定方向に回転する。これに伴い、ベルト54が回り、それにより、上下の従動ローラ52および53が同期して回転する。これにより、上下のカップ列送り部材41、41も同期して所定方向に回転、すなわち3つの予備カップ列Yを両スパイラル部44、44で協働して左方のカップ列セット部14側に搬送するように回転する。
【0049】
そして、カップ列セット部14に最も近い予備カップ列Yが、カップ列セット部14に到達すると、
図9(b)に示すように、その予備カップ列Yは、ベース16の開口部16aを介して落下し、カップドロップリング21Aに支持されて残存しているカップ列Hに積み重なる。これにより、予備カップ列Yは、カップ列セット部14にセットされ、販売カップ列として利用される。
【0050】
次に、
図7、8および
図10〜14を参照して、上下のカップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の位相が互いにずれている場合において、それらの位相を適正な位相に一致させるための位相合わせの手順を説明する。なお、
図10〜
図14では、各図(a)においてカップ収容器3の内部を示し、各図(b)において、
図8(b)に対応する位相調整プレート61の上下端部を拡大して示すものとする。
【0051】
図10は、2点鎖線で示す適正な位相に対し、上側のカップ列送り部材41のスパイラル部44が遅角し、下側のカップ列送り部材41のスパイラル部44が進角している状態を示している。両スパイラル部44、44の位相合わせを行う場合、まず、両カップ列送り部材41、41を独立して回転可能な状態にするために、
図7(b)に示すように、張力調整プレート56を、ばね58、58の付勢力に抗して、手動で張力付与解除位置にスライドさせて保持する。なおこの場合、前述したように、上側の長孔56aに工具Tを挿入することで、張力調整プレート56を張力付与解除位置に簡単に保持することができる。
【0052】
次いで、下側のカップ列送り部材41を、そのスパイラル部44が適正な位相になるよう、手動で回転させる。具体的には、例えば
図10(b)の矢印で示す方向にカップ列送り部材41を回転させ、その回転軸43の平坦面43bを鉛直にする。そして、位相調整プレート61を手動で上方に一段スライドさせる。この場合、
図11に示すように、下側のカップ列送り部材41は、そのスパイラル部44が適正な位相に調整されるとともに、回転軸43の右端部の小径部46が下係合孔65の回転阻止部65cに係合する。これにより、下側のカップ列送り部材41は、回転不能に保持される。一方、上側のカップ列送り部材41は、その回転軸43の右端部の小径部46が上係合孔64の拡幅部64bに係合しているため、回転可能な状態に維持される。なお、上述した位相調整プレート61の上方へのスライドでは、
図11(b)に示すように、上係合孔64の回転阻止部64cの上端が、回転軸43の小径部46に下方から当接することで、位相調整プレート61のそれ以上のスライドが阻止される。
【0053】
次いで、上側のカップ列送り部材41を、そのスパイラル部44が適正な位相になるよう、手動で回転させる。具体的には、例えば
図11(b)の矢印で示す方向にカップ列送り部材41を回転させ、
図12に示すように、回転軸43の平坦面43bを鉛直にする。これにより、位相調整プレート61の上方へのスライドが許容されるので、
図13に示すように、位相調整プレート61を手動で上方にさらに一段スライドさせる。この場合、上側のカップ列送り部材41は、そのスパイラル部44が適正な位相に調整されるとともに、回転軸43の小径部46が上係合孔64の回転阻止部64cに係合する。これにより、上側のカップ列送り部材41は、下側のそれと同様、回転不能に保持される。またこの場合、
図8(a)に示す位相調整プレート61の固定用孔67がカップ収容器3の右側板部33の孔33aに合致するので、これらの孔67および33aに工具を挿入することによって、位相調整プレート61を上下方向に不動に保持する。
【0054】
次いで、位相調整プレート61を上記のように不動に保持した状態のまま、張力調整プレート56の長孔56aから工具Tを取り外す。これにより、
図7(a)に示すように、張力調整プレート56は、ばね58、58の復元力によって、張力付与位置に戻り、動力伝達機構42のベルト54に適切な張力が付与される。
【0055】
その後、位相調整プレート61の固定用孔67から工具を取り外し、位相調整プレート61を、下方の元の位置までスライドさせる。これにより、上下のカップ列送り部材41、41の回転軸43の小径部46は、上係合孔64および下係合孔65の回転許容部64a、65aにそれぞれ係合し、スパイラル部44、44が、適正な位相に一致した状態に調整される。以上により、上下のカップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の位相合わせが終了する。
【0056】
以上詳述したように、本実施形態によれば、スパイラル部44を有する上下2つのカップ列送り部材41、41を回転させながら、カップ列収納部15に収納された予備カップ列Yを、カップ列セット部14側に搬送する。この場合、各予備カップ列Yは、その移動方向の前後において、スパイラル部44のピッチP間の両側部分で拘束されるように支持されるので、予備カップ列Y同士の間に隙間が生じることで、予備カップ列Y同士がくっつくのを防止できるとともに、予備カップ列Yが撓んだり、傾斜したりするのを防止しながら、予備カップ列Yを安定して搬送し、カップ列セット部14にセットすることができる。このように、カップ供給装置1Aおよび1Bによれば、カップ収容器3内における予備カップ列Yの搬送を安定して行うことができるとともに、予備カップ列Yを適切にカップ列セット部14にセットできることで、カップCの供給を確保することができる。
【0057】
また、上下2つのカップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の位相が互いにずれているときには、張力調整プレート56および位相調整プレート61のスライド操作、ならびに両カップ列送り部材41、41の回転操作によって、両スパイラル部44、44の位相を、適正な位相に一致した状態に、簡単に調整することができる。
【0058】
また、カップ供給装置1Aおよび1Bにおけるカップ列搬送装置5は、モータ26の動力を、カップ収容器3の左側板部32に設けられた動力伝達機構42によって、各カップ列送り部材41に伝達するように構成されるものであるので、比較的簡単な設計変更により、カップ収容器3におけるカップ列の収容数が異なるカップ供給装置を得ることができる。具体的には、動力伝達機構42の構成を維持したまま、カップ収容器3の背板部31およびベース16、ならびにカップ列送り部材41を、長くしたり、短くしたりするという、簡単な設計変更により、カップ収容器3およびカップ列送り部材41の左右方向のサイズを大きくしたり、小さくしたりすることができる。それにより、カップ列の収容数が多いまたは少ないカップ供給装置を容易に得ることができる。また、上記のような設計変更によって、カップ列の収容数が互いに異なるカップ収容器3を製造する場合でも、収容されるカップCのサイズが同一であれば、それらのカップ収容器3に1種類のカップドロップリング21を取り付け、カップドロップリングの共通化を図ることができる。
【0059】
さらに、統合カップ供給装置1は、3タイプのカップ供給装置1A、1Bおよび1Cが、共通の取付部材2を介して、互いに組み付けられているので、自動販売機内における統合カップ供給装置1の設置スペースや供給すべきカップCの種類に応じて、統合カップ供給装置1を簡単に構成することができる。これにより、単一のカップ供給装置1A、1Bまたは1Cに比べて、供給可能なカップ数を増大させたり、サイズの異なる複数種類のカップCを供給したりすることができる。
【0060】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、上下2つのカップ列送り部材41、41によって、予備カップ列Yを搬送するようにしたが、カップ列送り部材41の数は特に限定されるものではなく、カップ収容器3の高さやこれに収納される予備カップ列Yの高さになど応じて、カップ列送り部材41を1つまたは3つ以上にすることも可能である。また、実施形態で示したカップ供給装置の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。