【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。特性評価は下記の方法に従って行った。
【0042】
[硫酸相対粘度(ηr)]
98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を行った。
【0043】
[引張特性]
ASTM D638に従い、引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)を用い、厚さ1/8インチのASTM1号ダンベル試験片について、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、引張強度、引張破断歪みを求めた。
【0044】
[曲げ特性]
ASTM D790に従い、曲げ試験機テンシロンRTA−1T(オリエンテック社製)を用い、厚さ1/4インチの棒状試験片について、クロスヘッド速度3mm/minで曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率を求めた。なお、吸水時の曲げ特性は、組成物中のポリアミド樹脂成分が以下に示す大気平衡吸水率となるよう吸水処理を行い、同様の測定を行った。
N410:2.0wt%
N610:1.5wt%
N66:2.5wt%
N46:4.0wt%
N49:2.5wt%
N412:1.4wt%
N612:0.9wt%。
【0045】
[高荷重DTUL]
東洋精機社製HDT−TESTERを使用し、厚さ1/4インチの棒状試験片を用いて、試験片に加わる応力18.5kgf/cm
2(1.82MPa)での荷重たわみ温度をASTM D648−82に準じて評価した。
【0046】
[難燃性]
UL94に定められている厚み1/32インチの難燃性評価用試験片を用いて、UL94に定められている評価基準に従い難燃性を評価した。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
【0047】
参考例1(テトラメチレンセバカミド塩の製造)
メタノール2375gにセバシン酸(東京化成)300.0g(1.483mol)を添加し、60℃のウォーターバスに浸漬して溶解させた。ここに、あらかじめ調製したテトラメチレンジアミン(広栄化学工業)130.75g(1.483mol)をメタノール554gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。3時間撹拌を続けた後、静置下で室温に放置し、析出した塩を沈降させた。その後、ろ過、エタノール洗浄を行い、50℃で24時間真空乾燥して、ナイロン410塩を得た。
【0048】
参考例2(テトラメチレンアジパミド塩の製造)
エタノール3Lにアジピン酸(東京化成)280.7g(1.92mol)を添加し、60℃で溶解させた。ここに、あらかじめ調製したテトラメチレンジアミン(広栄化学工業)169.3g(1.92mol)をエタノール1Lに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。3時間撹拌を続けた後、静置下で室温に放置し、析出した塩を沈殿させた。その後、ろ過、エタノール洗浄を行い、50℃で24時間真空乾燥して、ナイロン46塩を得た。
【0049】
参考例3(ポリテトラメチレンセバカミドの製造(溶融重合))
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン2.12g(ナイロン410塩に対して1.00mol%)、次亜リン酸ナトリウム0.3065g(生成ポリマー重量に対して0.05重量%)を3L圧力容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が5.0kg/cm
2(0.49MPa)に到達した後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を5.0kg/cm
2(0.49MPa)で1.5時間保持した。その後10分間かけて缶内圧力を常圧に戻し、更に窒素フロー下で1.5時間反応させ重合を完了した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、これを80℃で24時間真空乾燥して、ηr=2.84のナイロン410を得た。
【0050】
参考例4(ポリテトラメチレンセバカミドの製造(固相重合))
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン4.25g、次亜リン酸ナトリウム1水和物0.3065g、イオン交換水70gを、撹拌機付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。この圧力容器を密閉したまま、加熱を開始し、内温223℃、15.0kg/cm
2(1.47MPa)に到達後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を15.0kg/cm
2(1.47MPa)で30分間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出した。これを80℃で24時間真空乾燥して得られた低次縮合物を220℃、100Paで24時間固相重合し、ナイロン410(ηr=3.06)を得た。
【0051】
参考例5(ポリテトラメチレンアジパミドの製造(固相重合))
参考例2で作製したナイロン46塩700g、テトラメチレンジアミン5.27g、次亜リン酸ナトリウム1水和物0.2962g、イオン交換水70gを、撹拌翼付きの内容積3Lの圧力容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。この圧力容器を密閉したまま加熱を開始し、内温225℃、15.0kg/cm
2(1.47MPa)に到達後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を15.0kg/cm
2(1.47MPa)で30分間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出した。これを80℃で24時間真空乾燥して得られた低次縮合物を260℃、100Paで20時間固相重合し、ナイロン46(ηr=3.10)を得た。
【0052】
参考例6(テトラメチレンアゼラミド塩の製造)
メタノール1Lにアゼライン酸(コグニス製Emerox1144)200.0g(1.06mol)を添加し、60℃のウォーターバスに浸漬して溶解させた。ここに、あらかじめ調製したテトラメチレンジアミン(関東化学)93.7g(1.06mol)をメタノール200mlに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。3時間撹拌を続けた後、エバポレーターで濃縮し、塩を析出させた。その後、濾過、メタノール洗浄を行い、50℃で24時間真空乾燥して、ナイロン49塩を得た。
【0053】
参考例7(テトラメチレンドデカミド塩の製造)
メタノール2Lにドデカン二酸(宇部興産)200.0g(0.868mol)を添加し、60℃のウォーターバスに浸漬して溶解させた。ここに、あらかじめ調製したテトラメチレンジアミン(関東化学)76.6g(0.868mol)をメタノール200mlに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。3時間撹拌を続けた後、静置下で室温に放置し、析出した塩を沈降させた。その後、濾過、メタノール洗浄を行い、50℃で24時間真空乾燥して、ナイロン412塩を得た。
【0054】
参考例8(ポリテトラメチレンアゼラミドの製造(溶融重合))
参考例6で得たナイロン49塩700g、テトラメチレンジアミン7.836g(ナイロン49塩に対して3.51mol%)、次亜リン酸ナトリウム1水和物0.3065g(生成ポリマー重量に対して0.05重量%)を3L圧力容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。ヒーター温度を285℃に設定して加熱を開始して、缶内圧力が5.0kg/cm
2(0.49MPa)に到達した後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を5.0kg/cm
2(0.49MPa)で1.5時間保持した。その後10分間かけて缶内圧力を常圧に戻し、更に窒素フロー下で1.5時間反応させ重合を完了した。このとき、缶内温度は275℃に到達した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、これを80℃で24時間真空乾燥して、ηr=2.69のナイロン49を得た。
【0055】
参考例9(ポリテトラメチレンドデカミドの製造(溶融重合))
参考例7で得たナイロン412塩700g、テトラメチレンジアミン6.783g(ナイロン412塩に対して3.50mol%)を用いる以外は、参考例8と全く同様の方法で、ηr=2.81のナイロン412を得た。
【0056】
(実施例1〜
2,10、
参考例3〜6、比較例1,8)
シリンダー設定温度270℃、スクリュー回転数200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機を用い、参考例3で得たポリテトラメチレンセバカミド樹脂と難燃剤、難燃助剤を表1〜2に記載の各割合でドライブレンドした後、メインフィーダーより供給し、無機充填剤をスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て約0.35の位置に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度265℃、金型温度80℃)により試験片を作製した。各サンプルの機械特性、耐熱性、難燃性を評価した結果は表1〜2に示すとおりである。
【0057】
(実施例7)
シリンダー設定温度270℃、スクリュー回転数200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機を用い、参考例4で得たポリテトラメチレンセバカミド樹脂と難燃剤を表1に記載の各割合でドライブレンドした後、メインフィーダーより供給して溶融混練を行った。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度265℃、金型温度80℃)により試験片を作製した。各サンプルの機械特性、耐熱性、難燃性を評価した結果は表1に示すとおりである。
【0058】
(実施例8,9)
シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機を用い、参考例8で得たポリテトラメチレンアゼラミド樹脂および参考例9で得たポリテトラメチレンドデカミド樹脂と難燃剤を表1に記載の各割合でドライブレンドした後、メインフィーダーより供給して溶融混練を行った。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度255℃、金型温度80℃)により試験片を作製した。各サンプルの機械特性、耐熱性、難燃性を評価した結果は表1に示すとおりである。
【0059】
(比較例2、3)
シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機を用いて、硫酸相対粘度が2.70であるナイロン610樹脂(東レ製CM2001)と難燃剤を表2に記載の各割合でドライブレンドした後、押出機メインフィーダーより供給し、溶融混練を行った。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度250℃、金型温度80℃)により試験片を作製した。各サンプルの機械特性、耐熱性、難燃性を評価した結果は表2に示すとおりである。
【0060】
(比較例4)
シリンダー設定温度280℃、スクリュー回転数200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機を用い、硫酸相対粘度が2.78であるナイロン66樹脂(東レ製CM3001)と難燃剤を表2に記載の各割合でドライブレンドした後、押出機メインフィーダーより供給して溶融混練を行った。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度280℃、金型温度80℃)により試験片を作製した。各サンプルの機械特性、耐熱性、難燃性を評価した結果は表2に示すとおりである。
【0061】
(比較例5)
シリンダー設定温度310℃、スクリュー回転数200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機を用い、参考例5で得たポリテトラメチレンアジパミド樹脂と難燃剤を表2に記載の各割合でドライブレンドした後、メインフィーダーより供給して溶融混練を行った。しかし、310℃で溶融混練を行うと、メラミンシアヌレート自身が分解し分解ガスを生成するため、ダイから吐出されるガットは激しく発泡しペレタイズできず、成形不可能であった。
【0062】
(比較例6)
シリンダー設定温度310℃、スクリュー回転数200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機を用い、参考例5で得たポリテトラメチレンアジパミド樹脂と難燃剤、難燃助剤を表2に記載の各割合でドライブレンドした後、メインフィーダーより供給し、無機充填剤をスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て約0.35の位置に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度265℃、金型温度80℃)により試験片を作製した。各サンプルの機械特性、耐熱性、難燃性を評価した結果は表2に示すとおりである。
【0063】
(比較例7)
シリンダー設定温度240℃、スクリュー回転数200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機を用い、ナイロン612樹脂(デュポン社製ザイテル151L)と難燃剤を表2に記載の各割合でドライブレンドした後、押出機メインフィーダーより供給して溶融混練を行った。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度240℃、金型温度80℃)により試験片を作製した。各サンプルの機械特性、耐熱性、難燃性を評価した結果は表2に示すとおりである。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
本実施例および比較例に用いた(b)難燃剤は以下の通りである。
(b−1):メラミンシアヌレート(日産化学工業製MC−4000)
(b−2):赤燐(燐化学工業製ノーバエクセル140)
(b−3):臭素化ポリスチレン樹脂(GLC社製:商品名PDBS)
(b−4):水酸化マグネシウム(協和化学工業製キスマ5E)
(b−5):ポリリン酸メラミン、メレム、メラム化合物(日産化学工業製PMP−200)
同様に、(c)難燃助剤は以下の通りである。
(c−1):三酸化アンチモン(日本精鉱製ATOX)
同様に、(d)無機充填剤は以下の通りである。
(d−1):ガラス繊維(日本電気硝子製T289)。
【0067】
本実施例は比較例1よりも引張強度、靱性(引張破断歪み)、耐水性、耐熱性(高荷重DTUL)に優れるものであった。
【0068】
実施例2と実施例7を比較して、原料として溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を用いた方が、ポリアミド樹脂組成物の引張強度、靱性(引張破断歪み)、耐熱性(高荷重DTUL)に優れる。
【0069】
実施例1,2と比較例2,3の比較より、ポリアミド410はポリアミド610よりも大気平衡吸水率が高いにも関わらず、大気平衡吸水時の曲げ特性に優れ、耐水性に優れるものであり、難燃性にも優れる。また、結晶性が高く、引張強度および耐熱性(高荷重DTUL)にも優れる。
【0070】
実施例2と比較例4の比較より、ポリアミド410はポリアミド66よりもアミド基濃度が低いにも関わらず同レベルの曲げ強度、曲げ弾性率を有し、且つ耐熱性(高荷重DTUL)、耐水性にも優れるものであった。
【0071】
実施例4と比較例6の比較より、ポリアミド410はポリアミド46よりも吸水時曲げ特性は優位であり耐水性に優れるものであった。
【0072】
実施例9と比較例7の比較より、ポリアミド412はポリアミド612よりも難燃性に優れ、引張強度、靱性(引張破断歪み)、耐水性、耐熱性(高荷重DTUL)に優れるものであった。
【0073】
比較例1は本発明で規定した量以上の難燃剤を配合したため、引張強度、靱性(引張破断歪み)、耐熱性(高荷重DTUL)が劣るものであった。また、比較例8は本発明で規定した量未満の難燃剤を配合したため、耐熱性(高荷重DTUL)、難燃性に劣るものであった。