【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送車は上記課題を解決するために、天井又は天井近傍位置に敷設された軌道を走行する走行部と、前記走行部に取り付けられ
、被搬送物を収容空間に収容して搬送する搬送部と、前記搬送部
に回動可能に軸支されており
、前記被搬送物の側面を押圧する押圧位置と
、前記被搬送物を前記収容空間に収容可能なように前記押圧位置から退避した退避位置との間を往復
移動可能な揺れ抑制部材とを備え
た天井搬送車であって、前記揺れ抑制部材は、前記被搬送物の側面を
前記天井搬送車の走行方向に押圧する押圧部と、
一端部側が前記押圧部を支持し他端部側が前記搬送部に軸支されたレバー部と、前記レバー部に設けられており、前記押圧部を前記被搬送物側に付勢する付勢部材とを有しており、前記押圧部は、前記レバー部
に回動可能に軸支され
る本体部
と、前記被搬送物に当接する押圧面を
含み、前記
天井搬送車の走行方向と交わるスライド方向
にスライド可能
なように
前記本体部に支持され
るスライド部
と、
前記本体部
とスライド部
との間に
配置され、前記被搬送物を前記天井搬送車の走行方向に押圧している状態の前記スライド部
を前記スライド方向に弾性的
にスライド
させるための弾性体
と、前記本体部に設けられており、前記スライド部を前記スライド方向にガイドするガイド手段とを有する。
【0008】
本発明の搬送車は、天井又は天井近傍位置に敷設された軌道を走行する走行部と、該走行部に取り付けられた搬送部とを備えており、搬送部が被搬送物を収容空間に収容すると共に走行部が軌道を走行することで、被搬送物を搬送することが可能である。搬送部は、典型的には、走行部に吊り下げられた形で取り付けられている。搬送部は、例えば被搬送物を把持する把持部を備えており、被搬送物の積載時には、把持部に把持された被搬送物が搬送部の収容空間に収容される。収容空間は、例えば下方側に向けて開口したコの字状の搬送部における内部の空間として規定されている。
【0009】
本発明の搬送車には、搬送部の下端側に、水平に沿った方向に回動可能に軸支された揺れ抑制部材が設けられている。尚、ここでの「下端側」とは、収容空間に積載された被搬送物を側方から押圧できる程度に低い位置であることを意味している。また、「水平に沿った方向」とは、完全な水平方向を意味するだけではなく、水平方向に斜めに交わるような方向をも含む広い概念である。
【0010】
揺れ抑制部材は、収容空間への被搬送物の収容を可能とする退避位置と、収容空間に収容された被搬送物側に突出することで被搬送物の側面を押圧する押圧位置との間を、水平方向に沿って回動することで往復動可能とされている。より具体的には、揺れ抑制部材は、被搬送物を積載しようとする際には、収容空間の入口付近において被搬送物が通過可能なスペースを確保できるよう、少なくとも部分的に収納された状態となる。一方で、被搬送物が積載された後には、収容空間側(即ち、収容された被搬送物側)に突出することで被搬送物の側面を押圧し、被搬送物の揺れを防止する。尚、ここでの「揺れ」とは、搬送車に移載された被搬送物が、カーブ走行時の遠心力等によって生じる比較的大きな揺れを意味している。
【0011】
ここで本発明に係る揺れ抑制部材は特に、押圧位置で被搬送物の側面を平面的に押圧する押圧部と、押圧部を先端側で支持すると共に基端側が搬送部に軸支されたレバー部と、レバー部に設けられており、押圧部を被搬送物側に付勢する付勢部材とを有している。揺れ抑制部材が退避位置から押圧位置へと移動される際には、搬送部に軸支されたレバー部が回動することで、押圧部が被搬送物の側面に当接される。
【0012】
本発明に係る揺れ抑制部材は、上述したようにレバー部の回動によって突出する。ここで仮に、揺れ抑制部材が直動で突出するような構成であるとすると、直動機構を設けるために進行方向に大きなスペースが必要となるため、装置が大型化したり、他の部材を配置するスペースが減少してしまうおそれがある。しかるに本発明に係る揺れ抑制部材は、回動によって突出が可能であるため、突出しない場合の揺れ抑制部材を、極めて少ないスペースで好適に退避させることができる。従って、装置の省スペース化を実現することができる。
【0013】
また本発明に係る押圧部は、被搬送物の側面を平面的に押圧するため、押圧方向に交わる方向に被搬送物が揺れる場合であっても、確実に揺れを抑制することができる。また押圧部は、レバー部に与えられる回動力だけでなく、付勢部材の付勢力によって被搬送物を押圧する。このような構成によれば、押圧部によって被搬送物を追従するように押圧できるため、極めて好適に被搬送物の揺れを抑制することが可能となる。
【0014】
本発明では更に、上述した押圧部が、レバー部に水平に沿った方向で回動可能に軸支された本体部、被搬送物に当接する押圧面を先端側に有して本体部にスライド可能に支持されたスライド部、並びに本体部及びスライド部間に介在しておりスライド部の弾性的なスライドを可能にする弾性体を含んでいる。スライド部は、搬送車の走行方向と交わるスライド方向にスライド可能とされている。
【0015】
本体部が回動可能に軸支されることで、押圧面の角度を収容空間内の被搬送物の角度に応じて変化させることが可能となる。よって、確実に被搬送物の側面を押圧することが可能となる。また、スライド部がスライド可能に支持されることで、搬送車側から伝達される振動を吸収し、被搬送物に伝わり難くすることができる。尚、ここでの「振動」とは、搬送車の走行系等において生じる比較的細かな揺れを意味している。更にスライド部は、弾性体によって弾性的にスライド可能とされている。このため、被搬送物への振動の伝達をより一層抑制することができる。
【0016】
以上説明したように、本発明の天井搬送車によれば、被搬送物の揺れ及び振動の伝達を効果的に抑制することが可能である。
【0017】
本発明の搬送車の一態様では、前記本体部はブロック状であり、前記押圧面の反対側に平板上に突出する突出板部を有しており、前記スライド部は、前記押圧面の幅方向両側から前記本体部側へと夫々突出して前記本体部の両側に所定の間隙を空けて配置される第1及び第2の縦部材、前記第1及び第2の縦部材を前記本体部側で互いに連結すると共に前記突出板部を前記スライド方向
にスライド可能に且つ上下方向
に移動不能に支持する横部材、並びに押圧面及び横部材の間において前記第1及び第2の縦部材を互いに連結するように取り付けられており、前記本体部に形成された貫通孔内にスライド可能に挿通されたシャフト部材とを有しており、前記弾性体は、前記本体部及び前記第1の縦部材間の前記所定の間隙、並びに前記本体部及び前記第2の縦部材間の前記所定の間隙に夫々配置されている。
【0018】
この態様によれば、押圧部における本体部はブロック状とされ、押圧面の反対側に平板上に突出する突出板部を有するように構成される。突出板部は、スライド部における横部材によって、スライド方向でスライド可能に且つ上下方向で移動不能に支持されている。スライド部は、押圧面の幅方向両側(即ち、側方の両端部)から本体部側へと夫々突出して本体部の両側に所定の間隙を空けて配置される第1及び第2の縦部材を有しており、これら第1及び第2の縦部材を本体部側で互いに連結するように横部材が配置されている。このような構成によれば、押圧部材を容易に小型化できると共に、本体部の上下方向(即ち、スライド方向とは異なる方向)の移動が防止できるため、こじれに強い構造とすることができる。
【0019】
また、本体部及び第1の縦部材間の所定の間隙、並びに本体部及び第2の縦部材間の所定の間隙には、一対の弾性体が配置されている。言い換えれば、本態様に係る所定の間隙は、一対の弾性体を配置できるような大きさの間隙として設けられる。一対の弾性体によれば、本体部の第1の縦部材側へのスライド及び第2の縦部材側へのスライドの両方を、好適に弾性的なスライド動作とすることができる。従って、被搬送物への振動の伝達を効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の搬送車の他の態様では、前記レバー部は、基端側が前記
天井搬送車に軸支される第1レバー部材、及び前記第1レバー部材の先端側に基端側が軸支され先端側で前記押圧部を軸支する第2レバー部材を有しており、前記付勢部材は、前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材を互いに軸支する軸心において、前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材が互いに直線上に並ぶように前記第2レバー部材を付勢し、前記第1レバー部材に前記収容空間側への回動力を伝達する動力伝達手段を更に備える。
【0021】
この態様によれば、搬送部には第1レバー部の基端側が軸支されており、その第1レバー部の先端側には第2レバー部の基端側が軸支されている。そして、第2レバー部の先端側には押圧部が取り付けられている。第1レバー部及び第2レバー部を互いに軸支する軸心には付勢部材が設けられている。付勢部材は、例えばねじりバネとして構成されており、第1レバー部材及び第2レバー部材が互いに直線上に並ぶように第2レバー部材を付勢する。
【0022】
揺れ抑制部材が退避位置にある場合、第1レバー部材及び第2レバー部材は互いに直線上に並ぶような状態となる。よって、コンパクトに収納することができ、好適に省スペースを実現することができる。一方、揺れ抑制部材の押圧位置への突出時には、先ず第1レバー部に対して動力伝達手段から回動力が伝達され、第1レバー部及び第1レバー部に軸支された第2レバー部が搬送部に対して回動する。これにより、押圧部が被搬送物に当接される。押圧部が被搬送物に当接されてからは、第1レバー部は同様に回動し続けるものの、第2レバー部は第1レバー部に対して「くの字」に折れ曲がり、付勢部材による付勢力が第1レバー部及び第2レバー部間に働くことになる。このような構成によれば、仮に被搬送物が押圧部の押圧方向に大きく揺れた場合であっても、押圧部が被搬送物を追従し、被搬送物の側面を押圧し続ける。よって、極めて効果的に被搬送物の揺れを防止することができる。
【0023】
上述した動力伝達手段を備える態様では、前記搬送部の前記揺れ抑制部材より下端側に水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、前記揺れ抑制部材の前記退避位置から前記押圧位置への移動に合わせて前記被搬送物の下側に突出して前記被搬送物の前記収容空間からの落下を防止する落下防止部材を更に備え、前記動力伝達手段は、前記落下防止部材に設けられた突起部、及び前記第1レバー部材に設けられ前記突起部からの力を受ける受動ガイドを有するように構成されてもよい。
【0024】
この場合、搬送部における落下防止部材より下端側に設けられた落下防止部材によって、収容空間に収容した被搬送物の落下を防止することができる。具体的には、落下防止部材は、揺れ抑制部材の退避位置から押圧位置への移動に合わせて、収容された被搬送物の下方に突出するように移動する。これにより、例えば搬送車の揺れ等によって収容空間から落下しようとする被搬送物を、収容空間の下方側から受け止めることが可能となる。
上述した落下防止部材には特に、動力伝達手段としての突起部が設けられている。一方で、揺れ抑制部材の第1レバー部材には、動力伝達手段としての受動ガイドが設けられている。受動ガイドは、突起部からの力を受けて第1レバー部の回動力に変換することができる。よって、極めて簡単な構成で、落下防止部材及び揺れ抑制部材を互いに連動するように移動させることが可能となる。
【0025】
上述したレバー部が第1レバー部材及び第2レバー部材を有する態様では、前記付勢部材は、一端部側が前記第1レバー部材に固定又は当接されると共に、他端部側が前記第2レバー部材に固定又は当接されたねじりバネであるように構成されてもよい。
【0026】
この場合、ねじりバネの一端部側が第1レバー部材に固定又は当接され、他端部側が第2レバー部材に固定又は当接されているため、第1レバー部材及び第2レバー部材が互いに直線上に並ぶような付勢力を確実に実現できる。また、ねじりバネは低コスト且つ構成が簡易であるため、製造コストの増大や装置構成の複雑化を抑制することができる。
【0027】
上述した付勢部材がねじりバネである態様では、前記ねじりバネは、前記一端部側及び前記他端部側の各々が、緩衝部材を介して前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材に夫々固定又は当接されているように構成されてもよい。
【0028】
この場合、付勢部材であるねじりバネと、第1レバー部材及び第2レバー部材との間には、緩衝部材が設けられる。このような緩衝部材によれば、揺れ抑制部材によって押圧している被搬送物のバネ付勢方向への揺れを、極めて速やかに減衰させることができる。
【0029】
上述したレバー部が第1レバー部材及び第2レバー部材を有する態様では、前記付勢部材は、一端部側が前記第1レバー部材に固定又は当接されると共に、他端部側が前記第2レバー部材に固定又は当接された板バネであるように構成されてもよい。
【0030】
この場合、板バネの一端部側が第1レバー部材に固定又は当接され、他端部側が第2レバー部材に固定又は当接されているため、第1レバー部材及び第2レバー部材が互いに直線上に並ぶような付勢力を確実に実現できる。また、板バネは低コスト且つ構成が簡易であるため、製造コストの増大や装置構成の複雑化を抑制することができる。
【0031】
上述した付勢部材が板バネである態様では、前記板バネは、前記一端部側及び前記他端部側の各々が、緩衝部材を介して前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材に夫々固定又は当接されているように構成されてもよい。
【0032】
この場合、付勢部材である板バネと、第1レバー部材及び第2レバー部材との間には、緩衝部材が設けられる。このような緩衝部材によれば、揺れ抑制部材によって押圧している被搬送物のバネ付勢方向への揺れを、極めて速やかに減衰させることができる。
【0033】
本発明の搬送車の他の態様では、前記押圧部は、前記押圧面に少なくとも部分的に他の弾性体を含んでいる。
【0034】
この態様によれば、押圧部における被搬送物と当接する押圧面には、少なくとも部分的に他の弾性体(即ち、スライド部の弾性的なスライドを可能とする弾性体とは異なる弾性体)が設けられる。この弾性体によれば、被搬送物を弾性的に押圧することが可能となるため、被搬送物への傷付けや破損を防止できる。また、被搬送物の揺れの減衰、被搬送物への振動伝達の抑制を、より的確に行うことができる。
【0035】
尚、他の弾性体は、押圧面の全てを覆うように設けられることが好ましい。また、押圧面以外の部位についても他の弾性体が設けられていても構わない。
【0036】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。