特許第5750926号(P5750926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750926
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】天井搬送車
(51)【国際特許分類】
   B66C 17/04 20060101AFI20150702BHJP
   B66C 13/04 20060101ALI20150702BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B66C17/04
   B66C13/04
   B65G1/04 551B
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-29674(P2011-29674)
(22)【出願日】2011年2月15日
(65)【公開番号】特開2012-166911(P2012-166911A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2013年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−040563(JP,A)
【文献】 実開昭50−003199(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 17/04
B66C 13/00−15/06
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井又は天井近傍位置に敷設された軌道を走行する走行部と、
前記走行部に取り付けられ被搬送物を収容空間に収容して搬送する搬送部と、
前記搬送部回動可能に軸支されており、前記被搬送物の側面を押圧する押圧位置と、前記被搬送物を前記収容空間に収容可能なように前記押圧位置から退避した退避位置との間を往復動可能な揺れ抑制部材と
を備えた天井搬送車であって
前記揺れ抑制部材は、
前記被搬送物の側面を前記天井搬送車の走行方向に押圧する押圧部と、
一端部側が前記押圧部を支持し他端部側が前記搬送部に軸支されたレバー部と、
前記レバー部に設けられており、前記押圧部を前記被搬送物側に付勢する付勢部材と
を有しており、
前記押圧部は、
前記レバー部に回動可能に軸支され本体部
前記被搬送物に当接する押圧面を含み、前記天井搬送車の走行方向と交わるスライド方向スライド可能なよう前記本体部に支持されスライド部
記本体部スライド部との間に配置され、前記被搬送物を前記天井搬送車の走行方向に押圧している状態の前記スライド部を前記スライド方向に弾性的スライドさせるための弾性体と、
前記本体部に設けられており、前記スライド部を前記スライド方向にガイドするガイド手段と
を有する
ことを特徴とする天井搬送車。
【請求項2】
前記本体部はブロック状であり、前記押圧面の反対側に平板上に突出する突出板部を有しており、
前記スライド部は、前記押圧面の幅方向両側から前記本体部側へと夫々突出して前記本体部の両側に所定の間隙を空けて配置される第1及び第2の縦部材、前記第1及び第2の縦部材を前記本体部側で互いに連結すると共に前記突出板部を前記スライド方向スライド可能に且つ上下方向移動不能に支持する横部材、並びに押圧面及び横部材の間において前記第1及び第2の縦部材を互いに連結するように取り付けられており、前記本体部に形成された貫通孔内にスライド可能に挿通されたシャフト部材とを有しており、
前記弾性体は、前記本体部及び前記第1の縦部材間の前記所定の間隙、並びに前記本体部及び前記第2の縦部材間の前記所定の間隙に夫々配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の天井搬送車。
【請求項3】
前記レバー部は、基端側が前記天井搬送車に軸支される第1レバー部材、及び前記第1レバー部材の先端側に基端側が軸支され先端側で前記押圧部を軸支する第2レバー部材を有しており、
前記付勢部材は、前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材を互いに軸支する軸心において、前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材が互いに直線上に並ぶように前記第2レバー部材を付勢し、
前記第1レバー部材に前記収容空間側への回動力を伝達する動力伝達手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の天井搬送車。
【請求項4】
前記搬送部の前記揺れ抑制部材より下端側に水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、前記揺れ抑制部材の前記退避位置から前記押圧位置への移動に合わせて前記被搬送物の下側に突出して前記被搬送物の前記収容空間からの落下を防止する落下防止部材を更に備え、
前記動力伝達手段は、前記落下防止部材に設けられた突起部、及び前記第1レバー部材に設けられ前記突起部からの力を受ける受動ガイドを有している
ことを特徴とする請求項3に記載の天井搬送車。
【請求項5】
前記付勢部材は、一端部側が前記第1レバー部材に固定又は当接されると共に、他端部側が前記第2レバー部材に固定又は当接されたねじりバネであることを特徴とする請求項3又は4に記載の天井搬送車。
【請求項6】
前記ねじりバネは、前記一端部側及び前記他端部側の各々が、緩衝部材を介して前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材に夫々固定又は当接されていることを特徴とする請求項5に記載の天井搬送車。
【請求項7】
前記付勢部材は、一端部側が前記第1レバー部材に固定又は当接されると共に、他端部側が前記第2レバー部材に固定又は当接された板バネであることを特徴とする請求項3又は4に記載の天井搬送車。
【請求項8】
前記板バネは、前記一端部側及び前記他端部側の各々が、緩衝部材を介して前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材に夫々固定又は当接されていることを特徴とする請求項7に記載の天井搬送車。
【請求項9】
前記押圧部は、前記押圧面に少なくとも部分的に他の弾性体を含んでいることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の天井搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造用の各種基板等が収容された容器などの被搬送物を軌道上で搬送する天井搬送車の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送車として、天井に敷設された軌道を走行することで、FOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を搬送する懸垂型のもの(所謂OHT:Overhead Hoist Transport)が知られている。このような搬送車には、移載した被搬送物の下側に突出することで被搬送物の落下を防止する落下防止部材と、該落下防止部材に連動して回動可能とされており、被搬送物を押圧することで揺れを抑制する揺れ抑制部材とが備えられる場合がある。例えば特許文献1では、落下防止部材と連動する直動機構により、ゲル等の弾性体を押し付ける機構が開示されている。他方、特許文献2では、落下防止部材に押当部材を直接取り付けた機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−040563号公報
【特許文献2】特開2003−165687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に係る技術では、直動機構を設けるために比較的大きなスペースが必要となる。このため、装置が大型化したり、他の部材を配置するスペースが減少してしまうおそれがある。また、ローラの押し出し箇所と直動に摺動する部分とが互いに離れているため、揺れ抑制部材にこじれが生じてしまうおそれがある。
【0005】
加えて、特許文献1及び特許文献2に係る技術では、共に押当部材の弾性力で被搬送物を抑えているため、自身の伸縮量が小さい。このため、搬送車の進行方向及びそれに交わる幅方向での被搬送物の揺れに対する許容量が小さくなり、搬送車において発生する振動を被搬送物に伝達し易いという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、被搬送物の揺れ及び振動の伝達を効果的に抑制することが可能な搬送車及び搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送車は上記課題を解決するために、天井又は天井近傍位置に敷設された軌道を走行する走行部と、前記走行部に取り付けられ被搬送物を収容空間に収容して搬送する搬送部と、前記搬送部回動可能に軸支されており、前記被搬送物の側面を押圧する押圧位置と、前記被搬送物を前記収容空間に収容可能なように前記押圧位置から退避した退避位置との間を往復動可能な揺れ抑制部材とを備えた天井搬送車であって、前記揺れ抑制部材は、前記被搬送物の側面を前記天井搬送車の走行方向に押圧する押圧部と、一端部側が前記押圧部を支持し他端部側が前記搬送部に軸支されたレバー部と、前記レバー部に設けられており、前記押圧部を前記被搬送物側に付勢する付勢部材とを有しており、前記押圧部は、前記レバー部に回動可能に軸支され本体部、前記被搬送物に当接する押圧面を含み、前記天井搬送車の走行方向と交わるスライド方向スライド可能なよう前記本体部に支持されスライド部記本体部スライド部との間に配置され、前記被搬送物を前記天井搬送車の走行方向に押圧している状態の前記スライド部を前記スライド方向に弾性的スライドさせるための弾性体と、前記本体部に設けられており、前記スライド部を前記スライド方向にガイドするガイド手段とを有する
【0008】
本発明の搬送車は、天井又は天井近傍位置に敷設された軌道を走行する走行部と、該走行部に取り付けられた搬送部とを備えており、搬送部が被搬送物を収容空間に収容すると共に走行部が軌道を走行することで、被搬送物を搬送することが可能である。搬送部は、典型的には、走行部に吊り下げられた形で取り付けられている。搬送部は、例えば被搬送物を把持する把持部を備えており、被搬送物の積載時には、把持部に把持された被搬送物が搬送部の収容空間に収容される。収容空間は、例えば下方側に向けて開口したコの字状の搬送部における内部の空間として規定されている。
【0009】
本発明の搬送車には、搬送部の下端側に、水平に沿った方向に回動可能に軸支された揺れ抑制部材が設けられている。尚、ここでの「下端側」とは、収容空間に積載された被搬送物を側方から押圧できる程度に低い位置であることを意味している。また、「水平に沿った方向」とは、完全な水平方向を意味するだけではなく、水平方向に斜めに交わるような方向をも含む広い概念である。
【0010】
揺れ抑制部材は、収容空間への被搬送物の収容を可能とする退避位置と、収容空間に収容された被搬送物側に突出することで被搬送物の側面を押圧する押圧位置との間を、水平方向に沿って回動することで往復動可能とされている。より具体的には、揺れ抑制部材は、被搬送物を積載しようとする際には、収容空間の入口付近において被搬送物が通過可能なスペースを確保できるよう、少なくとも部分的に収納された状態となる。一方で、被搬送物が積載された後には、収容空間側(即ち、収容された被搬送物側)に突出することで被搬送物の側面を押圧し、被搬送物の揺れを防止する。尚、ここでの「揺れ」とは、搬送車に移載された被搬送物が、カーブ走行時の遠心力等によって生じる比較的大きな揺れを意味している。
【0011】
ここで本発明に係る揺れ抑制部材は特に、押圧位置で被搬送物の側面を平面的に押圧する押圧部と、押圧部を先端側で支持すると共に基端側が搬送部に軸支されたレバー部と、レバー部に設けられており、押圧部を被搬送物側に付勢する付勢部材とを有している。揺れ抑制部材が退避位置から押圧位置へと移動される際には、搬送部に軸支されたレバー部が回動することで、押圧部が被搬送物の側面に当接される。
【0012】
本発明に係る揺れ抑制部材は、上述したようにレバー部の回動によって突出する。ここで仮に、揺れ抑制部材が直動で突出するような構成であるとすると、直動機構を設けるために進行方向に大きなスペースが必要となるため、装置が大型化したり、他の部材を配置するスペースが減少してしまうおそれがある。しかるに本発明に係る揺れ抑制部材は、回動によって突出が可能であるため、突出しない場合の揺れ抑制部材を、極めて少ないスペースで好適に退避させることができる。従って、装置の省スペース化を実現することができる。
【0013】
また本発明に係る押圧部は、被搬送物の側面を平面的に押圧するため、押圧方向に交わる方向に被搬送物が揺れる場合であっても、確実に揺れを抑制することができる。また押圧部は、レバー部に与えられる回動力だけでなく、付勢部材の付勢力によって被搬送物を押圧する。このような構成によれば、押圧部によって被搬送物を追従するように押圧できるため、極めて好適に被搬送物の揺れを抑制することが可能となる。
【0014】
本発明では更に、上述した押圧部が、レバー部に水平に沿った方向で回動可能に軸支された本体部、被搬送物に当接する押圧面を先端側に有して本体部にスライド可能に支持されたスライド部、並びに本体部及びスライド部間に介在しておりスライド部の弾性的なスライドを可能にする弾性体を含んでいる。スライド部は、搬送車の走行方向と交わるスライド方向にスライド可能とされている。
【0015】
本体部が回動可能に軸支されることで、押圧面の角度を収容空間内の被搬送物の角度に応じて変化させることが可能となる。よって、確実に被搬送物の側面を押圧することが可能となる。また、スライド部がスライド可能に支持されることで、搬送車側から伝達される振動を吸収し、被搬送物に伝わり難くすることができる。尚、ここでの「振動」とは、搬送車の走行系等において生じる比較的細かな揺れを意味している。更にスライド部は、弾性体によって弾性的にスライド可能とされている。このため、被搬送物への振動の伝達をより一層抑制することができる。
【0016】
以上説明したように、本発明の天井搬送車によれば、被搬送物の揺れ及び振動の伝達を効果的に抑制することが可能である。
【0017】
本発明の搬送車の一態様では、前記本体部はブロック状であり、前記押圧面の反対側に平板上に突出する突出板部を有しており、前記スライド部は、前記押圧面の幅方向両側から前記本体部側へと夫々突出して前記本体部の両側に所定の間隙を空けて配置される第1及び第2の縦部材、前記第1及び第2の縦部材を前記本体部側で互いに連結すると共に前記突出板部を前記スライド方向スライド可能に且つ上下方向移動不能に支持する横部材、並びに押圧面及び横部材の間において前記第1及び第2の縦部材を互いに連結するように取り付けられており、前記本体部に形成された貫通孔内にスライド可能に挿通されたシャフト部材とを有しており、前記弾性体は、前記本体部及び前記第1の縦部材間の前記所定の間隙、並びに前記本体部及び前記第2の縦部材間の前記所定の間隙に夫々配置されている。
【0018】
この態様によれば、押圧部における本体部はブロック状とされ、押圧面の反対側に平板上に突出する突出板部を有するように構成される。突出板部は、スライド部における横部材によって、スライド方向でスライド可能に且つ上下方向で移動不能に支持されている。スライド部は、押圧面の幅方向両側(即ち、側方の両端部)から本体部側へと夫々突出して本体部の両側に所定の間隙を空けて配置される第1及び第2の縦部材を有しており、これら第1及び第2の縦部材を本体部側で互いに連結するように横部材が配置されている。このような構成によれば、押圧部材を容易に小型化できると共に、本体部の上下方向(即ち、スライド方向とは異なる方向)の移動が防止できるため、こじれに強い構造とすることができる。
【0019】
また、本体部及び第1の縦部材間の所定の間隙、並びに本体部及び第2の縦部材間の所定の間隙には、一対の弾性体が配置されている。言い換えれば、本態様に係る所定の間隙は、一対の弾性体を配置できるような大きさの間隙として設けられる。一対の弾性体によれば、本体部の第1の縦部材側へのスライド及び第2の縦部材側へのスライドの両方を、好適に弾性的なスライド動作とすることができる。従って、被搬送物への振動の伝達を効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の搬送車の他の態様では、前記レバー部は、基端側が前記天井搬送車に軸支される第1レバー部材、及び前記第1レバー部材の先端側に基端側が軸支され先端側で前記押圧部を軸支する第2レバー部材を有しており、前記付勢部材は、前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材を互いに軸支する軸心において、前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材が互いに直線上に並ぶように前記第2レバー部材を付勢し、前記第1レバー部材に前記収容空間側への回動力を伝達する動力伝達手段を更に備える。
【0021】
この態様によれば、搬送部には第1レバー部の基端側が軸支されており、その第1レバー部の先端側には第2レバー部の基端側が軸支されている。そして、第2レバー部の先端側には押圧部が取り付けられている。第1レバー部及び第2レバー部を互いに軸支する軸心には付勢部材が設けられている。付勢部材は、例えばねじりバネとして構成されており、第1レバー部材及び第2レバー部材が互いに直線上に並ぶように第2レバー部材を付勢する。
【0022】
揺れ抑制部材が退避位置にある場合、第1レバー部材及び第2レバー部材は互いに直線上に並ぶような状態となる。よって、コンパクトに収納することができ、好適に省スペースを実現することができる。一方、揺れ抑制部材の押圧位置への突出時には、先ず第1レバー部に対して動力伝達手段から回動力が伝達され、第1レバー部及び第1レバー部に軸支された第2レバー部が搬送部に対して回動する。これにより、押圧部が被搬送物に当接される。押圧部が被搬送物に当接されてからは、第1レバー部は同様に回動し続けるものの、第2レバー部は第1レバー部に対して「くの字」に折れ曲がり、付勢部材による付勢力が第1レバー部及び第2レバー部間に働くことになる。このような構成によれば、仮に被搬送物が押圧部の押圧方向に大きく揺れた場合であっても、押圧部が被搬送物を追従し、被搬送物の側面を押圧し続ける。よって、極めて効果的に被搬送物の揺れを防止することができる。
【0023】
上述した動力伝達手段を備える態様では、前記搬送部の前記揺れ抑制部材より下端側に水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、前記揺れ抑制部材の前記退避位置から前記押圧位置への移動に合わせて前記被搬送物の下側に突出して前記被搬送物の前記収容空間からの落下を防止する落下防止部材を更に備え、前記動力伝達手段は、前記落下防止部材に設けられた突起部、及び前記第1レバー部材に設けられ前記突起部からの力を受ける受動ガイドを有するように構成されてもよい。
【0024】
この場合、搬送部における落下防止部材より下端側に設けられた落下防止部材によって、収容空間に収容した被搬送物の落下を防止することができる。具体的には、落下防止部材は、揺れ抑制部材の退避位置から押圧位置への移動に合わせて、収容された被搬送物の下方に突出するように移動する。これにより、例えば搬送車の揺れ等によって収容空間から落下しようとする被搬送物を、収容空間の下方側から受け止めることが可能となる。
上述した落下防止部材には特に、動力伝達手段としての突起部が設けられている。一方で、揺れ抑制部材の第1レバー部材には、動力伝達手段としての受動ガイドが設けられている。受動ガイドは、突起部からの力を受けて第1レバー部の回動力に変換することができる。よって、極めて簡単な構成で、落下防止部材及び揺れ抑制部材を互いに連動するように移動させることが可能となる。
【0025】
上述したレバー部が第1レバー部材及び第2レバー部材を有する態様では、前記付勢部材は、一端部側が前記第1レバー部材に固定又は当接されると共に、他端部側が前記第2レバー部材に固定又は当接されたねじりバネであるように構成されてもよい。
【0026】
この場合、ねじりバネの一端部側が第1レバー部材に固定又は当接され、他端部側が第2レバー部材に固定又は当接されているため、第1レバー部材及び第2レバー部材が互いに直線上に並ぶような付勢力を確実に実現できる。また、ねじりバネは低コスト且つ構成が簡易であるため、製造コストの増大や装置構成の複雑化を抑制することができる。
【0027】
上述した付勢部材がねじりバネである態様では、前記ねじりバネは、前記一端部側及び前記他端部側の各々が、緩衝部材を介して前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材に夫々固定又は当接されているように構成されてもよい。
【0028】
この場合、付勢部材であるねじりバネと、第1レバー部材及び第2レバー部材との間には、緩衝部材が設けられる。このような緩衝部材によれば、揺れ抑制部材によって押圧している被搬送物のバネ付勢方向への揺れを、極めて速やかに減衰させることができる。
【0029】
上述したレバー部が第1レバー部材及び第2レバー部材を有する態様では、前記付勢部材は、一端部側が前記第1レバー部材に固定又は当接されると共に、他端部側が前記第2レバー部材に固定又は当接された板バネであるように構成されてもよい。
【0030】
この場合、板バネの一端部側が第1レバー部材に固定又は当接され、他端部側が第2レバー部材に固定又は当接されているため、第1レバー部材及び第2レバー部材が互いに直線上に並ぶような付勢力を確実に実現できる。また、板バネは低コスト且つ構成が簡易であるため、製造コストの増大や装置構成の複雑化を抑制することができる。
【0031】
上述した付勢部材が板バネである態様では、前記板バネは、前記一端部側及び前記他端部側の各々が、緩衝部材を介して前記第1レバー部材及び前記第2レバー部材に夫々固定又は当接されているように構成されてもよい。
【0032】
この場合、付勢部材である板バネと、第1レバー部材及び第2レバー部材との間には、緩衝部材が設けられる。このような緩衝部材によれば、揺れ抑制部材によって押圧している被搬送物のバネ付勢方向への揺れを、極めて速やかに減衰させることができる。
【0033】
本発明の搬送車の他の態様では、前記押圧部は、前記押圧面に少なくとも部分的に他の弾性体を含んでいる。
【0034】
この態様によれば、押圧部における被搬送物と当接する押圧面には、少なくとも部分的に他の弾性体(即ち、スライド部の弾性的なスライドを可能とする弾性体とは異なる弾性体)が設けられる。この弾性体によれば、被搬送物を弾性的に押圧することが可能となるため、被搬送物への傷付けや破損を防止できる。また、被搬送物の揺れの減衰、被搬送物への振動伝達の抑制を、より的確に行うことができる。
【0035】
尚、他の弾性体は、押圧面の全てを覆うように設けられることが好ましい。また、押圧面以外の部位についても他の弾性体が設けられていても構わない。
【0036】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】搬送システムの全体構成を示す上面図である。
図2】台車の構成を示す側面図である。
図3】台車の移載動作を示す斜視図である。
図4】台車の横移載動作を示す斜視図である。
図5】落下防止部材及び揺れ抑制部材の構成を示す斜視図である。
図6】落下防止部材及び揺れ抑制部材の突出時の動作を示す下面図(その1)である。
図7】落下防止部材及び揺れ抑制部材の突出時の動作を示す下面図(その2)である。
図8】落下防止部材及び揺れ抑制部材の突出時の動作を示す下面図(その3)である。
図9】落下防止部材及び揺れ抑制部材の突出時の動作を示す下面図(その4)である。
図10】付勢部材の具体的な構成を示す平面図である。
図11】揺れ抑制部材における押圧部の構成を示す斜視図である。
図12】揺れ抑制部材における押圧部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0039】
先ず、本発明の「天井搬送車」の一例である台車が備えられる搬送システムの全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、搬送システムの全体構成を示す上面図である。
【0040】
図1において、本実施形態に係る搬送システムは、軌道100と、台車200と、コントローラ300とを備えて構成されている。
【0041】
軌道100は、例えば天井に敷設されており、アルミニウムやステンレス等の金属から構成される。
【0042】
台車200は、軌道100上に複数配置されており、軌道100に沿って走行することで、被搬送物であるFOUPを搬送することが可能である。
【0043】
また台車200は、車上コントローラ205を夫々有している。車上コントローラ205は、コントローラ300から搬送指令を受け取り、台車200の走行を制御する。尚、車上コントローラ205は、台車200の走行を制御するだけでなく、台車200に備えられた各機器を総括的に制御するという機能も有している。
【0044】
コントローラ300は、例えば演算回路やメモリ等を含んで構成されており、車上コントローラ205を介して、台車200に搬送指令を与えることが可能に構成されている。
【0045】
尚、ここでの図示は省略しているが、軌道100に沿った位置には、FOUPを一時的に保管する棚(例えば、バッファやポート等)及び半導体製造装置が設けられている
【0046】
次に、台車200のより具体的な構成について、図2を参照して説明する。ここに図2は、台車の構成を示す側面図である。
【0047】
図2において、台車200は、走行部210、本体部220、移動部230、昇降部235、昇降ベルト240、把持部250、落下防止部材260及び揺れ抑制部材270を備えて構成されている。
【0048】
台車200は、走行部210が例えばリニアモータ等によって推進力を与えることで、走行ローラ215が転動されつつ、軌道100に沿って走行する。走行部210の下面には、本発明の「搬送部」の一例である本体部220が吊り下がる形で取り付けられている。
【0049】
本体部220には、移動部230が取り付けられている。移動部230は、軌道100の側方(即ち、図における左右方向)に移動することが可能である。移動部230の下面には、昇降部235が取り付けられている。
【0050】
昇降部235の下面には、FOUPを把持する把持部250が昇降ベルト240によって取り付けられている。把持部250は、昇降ベルト240を巻き出す或いは巻き取ることで、本体部220に対し昇降可能である。
【0051】
落下防止部材260は、本体部220の下端周辺に設けられており、積載されたFOUPを下側から支えるように突出することで、FOUPの落下を防止する。
【0052】
揺れ抑制部材270は、本体部220における上述した落下防止部材260の上側に設けられており、積載されたFOUPの側面を押圧することで揺れを抑制する。
【0053】
落下防止部材260及び揺れ抑制部材270のより具体的な構成や動作については、後に詳述する。
【0054】
次に、台車によるFOUPの移載方法について、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3及び図4は夫々、実施形態に係る台車のFOUPの移載方法を示す斜視図である。
【0055】
図3において、台車200が、軌道100の真下に位置するポート510上のFOUP400を移載する際には、先ず台車200が軌道100上を走行して、ポート510上に設置されたFOUP400の上方に停止する。
【0056】
続いて、図に示すように、昇降部235によって昇降ベルト240が巻き出されることで把持部250がFOUP400の位置まで降下する。そして、把持部250とFOUP400との位置の微調整が行われ、FOUP400が把持される。
【0057】
FOUP400が把持されると、昇降ベルト240が巻き取られ、把持部250及び把持されたFOUP400が本体部220の位置まで上昇する。そして、再び台車200が軌道100上を走行して、FOUP400が搬送される。
【0058】
図4において、FOUP400が、軌道100の側方にそれた位置にあるサイドバッファ520に設置されている場合には、移動部230が軌道100の側方に移動した後に、昇降部235によって昇降ベルト240が巻き出され、把持部250がFOUP400の位置まで降下する。このように動作することで、軌道部100からFOUP400の横移載を行うことが可能となる。
【0059】
次に、落下防止部260及び揺れ抑制部材270の具体的構成及び動作について、図5から図10を参照して詳細に説明する。ここに図5は、落下防止部材及び揺れ抑制部材の構成を示す斜視図である。また図6から図9は夫々、落下防止部材及び揺れ抑制部材の突出時の動作を示す下面図である。図10は、付勢部材の具体的な構成を示す平面図である。
【0060】
図5において、本実施形態に係る落下防止部260及び揺れ抑制部材270は、搬送部220の下端側に夫々設けられている。落下防止部260は、FOUP400の積載時に、積載されたFOUP400を下側から受け止められるような位置へと突出する。揺れ抑制部材270は、FOUP400の積載時に、積載されたFOUP400の側面を押圧するような位置へと突出する。尚、落下防止部260及び揺れ抑制部材270は、図示しないモータ等から供給される動力によって夫々回動される。
【0061】
図6において、落下防止部材260は、回転軸610を軸として水平方向に回動可能に搬送部220に取り付けられている。一方、揺れ抑制部材270は、回転軸620を軸として水平方向に回動可能に搬送部220に取り付けられている。揺れ抑制部材270は、第1レバー部271、第2レバー部272、押圧部273、付勢部材274を備えて構成される。
【0062】
より具体的には、搬送部220に第1レバー部271の基端側が回動可能に軸支されている。第1レバー部271の先端側には、第2レバー部272の基端側が回動可能に軸支されている。第2レバー部272の先端側には、押圧部273が回動可能に軸支されている。第1レバー部272及び第2レバー部272を接続する軸心には、例えばねじりバネや板バネ等として構成される付勢部材274が取り付けられている。尚、付勢部材274は、第1レバー部271及び第2レバー部272が互いに直線上に並ぶような付勢力を有している。
【0063】
落下防止部材260には、本発明の「突起部」の一例であるローラ265が取り付けられている。揺れ抑制部材270における第1レバー部271には、本発明の「受動ガイド」の一例であるローラガイド275が取り付けられている。ローラガイド275は、例えば金属板として構成されており、落下防止部材260の突出時において、ローラ265が当接するような位置に設けられている。落下防止部260及び揺れ抑制部材270は、FOUP400を移載する際には、夫々FOUP400の移載の邪魔にならないよう、FOUP400側に突出せず収納された状態とされている。
【0064】
図7において、FOUP400が移載されると、図中の矢印で示す方向に落下防止部材260が回動される。落下防止部材260が、FOUP400側へ回動していくと、ローラ265がローラガイド275に当接する。ローラ265がローラガイド275に当接した以降は、ローラ265がローラガイド275を押圧することで、揺れ抑制部材270における第1レバー部271が回動することになる。これにより、落下防止部260及び揺れ抑制部材270は、互いに連動するように突出する。
【0065】
図8において、揺れ抑制部材270は、第1レバー部271が回動していくことによって、押圧部273の押圧面がFOUP400の側面に当接する位置まで突出される。この段階では、第1レバー部271及び第2レバー部272は互いに直線上に並ぶような位置関係であり、付勢部材274による付勢力は発生していない。
【0066】
図9において、押圧部273の押圧面がFOUP400の側面に当接した以降も、更に第1レバー部271が回動していくと、図に示すように第2レバー部272が「くの字」に折れ曲がった状態となる。この状態では、付勢部材274において、第1レバー部271及び第2レバー部272を互いに直線上に並ばせるような付勢力が発生する。即ち、第2レバー部272をFOUP側に付勢する力が働く。このような構成によれば、押圧部273がFOUP400を追従するように押圧する。従って、第1レバー部271の回動力だけで押圧する場合と比べて、より効果的にFOUP400の揺れを抑制することが可能となる。
【0067】
尚、押圧部273の押圧面がFOUP400の側面に当接すると、押圧部273はFOUP400の側面からの図中の矢印P1で示すような力を受けることになる。すると、落下防止部材260は、回転軸610を軸として図中の矢印P2方向に回動しようとする。しかし、回動ローラ265は、ローラガイド275におけるストッパ275sに当接しているため、落下防止部材260は、図中の矢印P2方向には回動しない。つまり、落下防止部材260は、押圧部273がFOUP400から押されても動かない機構(即ち、外力では動かずモータの回動力のみで動く機構)とされており、ブレーキ等を用いることなく適切な位置を保持することができる。
【0068】
図10において、ねじりバネである付勢部材274の一端部は、第1レバー部271に対して緩衝材276aを介して取付けられている。他方、付勢部材274の他端部は、第2レバー部272に対し緩衝材276bを介して取付けられている。これら緩衝材276a及び276bによれば、FOUP400の付勢方向への揺れを、速やかに減衰させることができる。尚、付勢部材274を、板バネ等の他の部材として構成する場合についても同様である。
【0069】
次に、上述した揺れ抑制部材270における押圧部273の具体的な構成について図11及び図12を参照して説明する。ここに図11は、揺れ抑制部材における押圧部の構成を示す斜視図である。また図12は揺れ抑制部材における押圧部の構成を示す平面図である。
【0070】
図11において、押圧部273における押圧面部710には、FOUPと当接する押圧面側に弾性体が取付けられている。これにより、押圧面部710は、FOUP400を弾性的に押圧することが可能とされている。押圧面部710の押圧面と反対側には、第1の縦部材721及び第2の縦部材722が夫々取り付けられている。第1の縦部材721及び第2の縦部材722の押圧面部710と反対側には、第1の縦部材721及び第2の縦部材722を互いに連結するように、第1の横部材731及び第2の横部材732が取り付けられている。また、第1の縦部材721及び第2の縦部材722間には、シャフト740が取り付けられている。
【0071】
シャフト740は、第1の縦部材721及び第2の縦部材722間の間隙に配置されたブロック部材750を挿通するように設けられている。これによりブロック部材750は、シャフトの延びる方向にスライド可能とされる。またブロック部材750は、押圧面710とは反対側に突出した突出板部751が、第1の横部材731及び第2の横部材732間に形成された間隙に沿ってスライド可能に配置されている。このようなシャフト740、並びに第1の横部材731及び第2の横部材732によって構成されるスライド機構によれば、スライドすべき方向以外の方向への動作を制限できるため、ブロック部材750においてこじれが発生してしまうことを抑制できる。尚、ブロック部材750は、本発明の「本体部」の一例であり、接続部752を介して、第2レバー部272の先端側に取り付けられている(図6から図9参照)。ブロック部材750は、典型的には金属を含んで構成されるが、直接摩擦係数の低い樹脂等を用いることもできる。この場合、ブッシュ等を省略化することが可能となる。
【0072】
図12において、ブロック部材750と第1の縦部材721との間の間隙には第1の弾性体761が配置されている。第1の弾性体761は、第1の縦部材721に貼付けられており、ブロック部材750側には貼付けられていない。一方、ブロック部材750と第2の縦部材722との間の間隙には第2の弾性体762が配置されている。第2の弾性体762は、第2の縦部材722に貼付けられており、ブロック部材750側には貼付けられていない。第1の弾性体761及び第2の弾性体762は、例えばゴム、スポンジ、ゲル材料等を含んで構成される。但し、第1の弾性体761及び第2の弾性体762を構成する材料は特に限定されず、例えばコイルバネ等の金属性の弾性体を用いてもよい。これら一対の弾性体761及び762によれば、ブロック部材750の弾性的なスライドを実現することができる。
【0073】
上述した押圧部273によれば、第2レバー部272から伝達される振動(より具体的には、走行部210等において発生し、搬送部220側から伝達される振動)が、押圧面部710にまで伝達されてしまうことを抑制できる。従って、振動が押圧するFOUP400に伝達されてしまうことを抑制できる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る天井搬送車によれば、揺れ抑制部材270が備えられているため、FOUP400の揺れ及び振動の伝達を効果的に抑制することができる。
【0075】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
100…軌道、200…台車、210…走行部、215…走行ローラ、220…本体部、230…移動部、240…昇降ベルト、250…把持部、260…落下防止部材、265…ローラ、270…揺れ抑制部材、271…第1レバー部、272…第2レバー部、273…押圧部、274…付勢部材、275…ローラガイド、300…コントローラ、400…FOUP、510…ポート、520…サイドバッファ、710…押圧面部、721…第1の縦部材、722…第2の縦部材、731…第1の横部材、732…第2の横部材、740…シャフト、750…ブロック部材、751…突出板部、761,762…弾性体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12