(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、感光剤(B)と、1分子構造中にフェノール
性水酸基とアミド基を有する化合物(C)と、を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。このような構成のポジ型感光性樹脂組成物を用いることにより、高感度で、かつ高解像度、さらに現像残さ(スカム)除去性に優れる効果を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂(A)としては、特に制限されるものではないが、例えば、クレゾール型ノボラック樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、メタクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、水酸基、カルボキシル基等を含む環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも耐熱性に優れ、機械特性が良いという点からポリアミド系樹脂が好ましく、具体的にはポリベンゾオキサゾール構造およびポリイミド構造の少なくとも一方を有し、かつ主鎖または側鎖に水酸基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を有する樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体構造を有する樹脂、ポリイミド樹脂前駆体構造を有する樹脂、ポリアミド酸エステル構造を有する樹脂等が挙げられる。このようなポリアミド系樹脂としては、例えば上記一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂を挙げることができる。
【0012】
上記一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂において、Xの置換基としての−O−R
3、Yの置換基としての−O−R
3、−COO−R
3は、水酸基、カルボキシル基のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する目的で、炭素数1〜15の有機基であるR
3で保護された基であり、必要により水酸基、カルボキシル基を保護しても良い。R
3の例としては、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂は、例えば、Xを含むジアミンまたはビス(アミノフェノール)、2,4−ジアミノフェノール等から選ばれる化合物と、Yを含むテトラカルボン酸二無水物、トリメリット酸無水物、ジカルボン酸またはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体、ヒドロキシジカルボン酸、およびヒドロキシジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物とを反応して得られるものである。
なお、ジカルボン酸の場合には反応収率等を高めるため、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステル型のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
【0013】
上記一般式(1)のXとしては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられる。より具体的には、下記式(3)で示されるものが好ましい。これらは、必要により1種類または2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
【化5】
(ここで、*はNH基に結合することを示す。式中Aは、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF
3)
2−、または単結合である。R
5はアルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、R
6はアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。a=0〜4の整数であ
る。R
7〜R
9は有機基である。)
上記一般式(1)で示すように、XにはR
1が0〜8個結合される(式(3)において、R
1は省略)。
【0015】
式(3)の中で好ましいものとしては、耐熱性、機械特性が特に優れる下記式(4)で表されるものが挙げられる。
【0016】
【化6】
(式中、*はNH基に結合することを示す。式(4)中のAは、−CH
2−、−CH(C
H
3)−、−C(CH
3)
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF
3)
2−、または単結合である。R
5はアルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R
8は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。a=0〜4、b=0〜3、c=0〜2の整数である。)
【0017】
さらに、式(4)の中でも、下記式(5)で示されるものが特に好ましい。一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂のXが下記式(5)である場合、前記化合物(C)との組み合わせにより、感度がより優れる。
【0018】
【化7】
(式中、*はNH基に結合することを示す。式(5)中のAは、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF
3)
2−、または単結合である。R
8はアルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。b=0〜3の整数である。)
【0019】
また、一般式(1)のYは有機基であり、前記Xと同様のものが挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、ピリジン類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等であり、より好ましくは、下記式(6)で示されるものを挙げることができる。これらは1種類または2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
【化8】
(ここで*はC=O基に結合することを示す。式中(6)のBは、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF
3)
2−、または単結合である。R
9はアルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同一でも異なっても良い。また、R
10は水素原子、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子から選ばれた1つを示す。d=0〜4の整数である。R
11〜R
13は有機基である。)
一般式(1)で示すように、Yには、R
2が0〜8個結合される(式(6)において、R
2は省略した)。
【0021】
式(6)の中で好ましいものとしては、耐熱性、機械特性が優れる下記式(7)で示されるものが挙げられる。
【0022】
【化9】
(式中、*はC=O基に結合することを示す。式(7)中のBとDは、−SO
2−、−CO−、−O−、である。R
9は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R
14は、水素原子または、炭素数1〜15の有機基から選ばれた1つを示し、一部が置換されていても良い。d=0〜4の整数である。)
【0023】
さらに、式(7)の中でも、下記式(8)で示されるものが特に好ましい。一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂のYが下記式(8)である場合、前記化合物(C)との組み合わせにより、感度がより優れる。
【0024】
【化10】
(式中、*はC=O基に結合することを示す。式(8)中のBは、−SO
2−、−CO−、−O−、である。R
9は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。d=0〜4の整数である。)
【0025】
また、上述の一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂は、該ポリアミド系樹脂の末端をアミノ基とし、該アミノ基をアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基、または環式化合物基を含む酸無水物を用いてアミドとしてキャップすることが好ましい。これにより、保存性を向上することができる。
このような、アミノ基と反応した後のアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも
1個有する脂肪族基または環式化合物基を含む酸無水物に起因する基としては、例えば式(9)、式(10)で示される基等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0026】
【化11】
(上式(9)中のR
15は、水素、またはメチル基を表す。)
【0027】
【化12】
(式(10)中のR
16は、水素、またはメチル基を表す。)
【0028】
これらの中で特に好ましいものとしては、下記式(11)の基である。これにより、特に保存性を向上することができる。
【0029】
【化13】
【0030】
またこの方法に限定されることはなく、該ポリアミド系樹脂中に含まれる末端の酸をアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基または環式化合物基を含むアミン誘導体を用いてアミドとしてキャップすることもできる。
【0031】
一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂は、側鎖および他方の末端の少なくとも一方に含窒素複素環化合物を有しても良い。
これにより金属配線(特に銅配線)等との密着性を向上することが出来る。
その理由としては、上記式(1)の構造を含むポリアミド系樹脂の一方の末端が不飽和基を有する有機基の場合、樹脂が反応する為に硬化膜の引っ張り伸び率等の機械特性が優れ、側鎖および他方の末端の少なくとも一方に含窒素複素環化合物を有する場合、その含窒素複素環化合物が銅および銅合金の金属配線と反応する為に密着性が優れるからである。
【0032】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば1−(5−1H−トリアゾイル)メチルアミン、3−(1H−ピラゾイル)アミン、4−(1H−ピラゾイル)アミン、5−(1H−ピラゾイル)アミン、1−(3−1H−ピラゾイル)メチルアミン、1−(4−1H−ピラゾイル)メチルアミン、1−(5−1H−ピラゾイル)メチルアミン、(1H−テトラゾル−5−イル)アミン、1−(1H−テトラゾル−5−イル)メチル−アミン、3−(1H−テトラゾル−5−イル)ベンズ−アミン等が挙げられる。これにより、特に銅および銅合金の金属配線との密着性をより向上することができる。
【0033】
本発明で用いる感光剤(B)は、光により酸を発生する化合物である。
光により酸を発生する化合物としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩等のオニウム塩類、2−ニトロベンジルエステル類、N−イミノスルホネート類、アリールスルホン酸エステル類、塩素等のハロゲンを有する複素環式化合物類、感光性ジアゾキノン化合物類が挙げられる。
これらの化合物の中でも露光の際に主に用いられる化学線の波長域で最も感度と解像度に優れる点から感光性ジアゾキノン化合物が好ましい。
感光性ジアゾキノン化合物は、例えば、フェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられる。
具体的には、式(12)〜式(16)に示すエステル化合物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0034】
【化14】
(上記式(12)中のEは、−C(CH
3)
2−、−CO−である。R
17は、水素、またはメチル基を表す。h=0〜3の整数である。)
【0035】
【化15】
(上記式(13)中のR
18はメチル基、シクロヘキサン環を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。j=0〜2、k=0〜2の整数である。)
【0036】
【化16】
(上記式(14)中のR
19は、水素、またはメチル基を表す。それぞれ同じでも異なってもよい。m=1〜3、n=1〜3、p=1〜2の整数である。)
【0037】
【化17】
(上記式(15)中のR
20は、水素、またはメチル基を表す。q=1〜3、r=0〜1
の整数である。)
【0038】
【化18】
(上記式(16)中のR
21は、水素、またはメチル基である。)
【0039】
式(12)〜式(16)中のQは、水素原子、または下記式(17)、式(18)のいずれかから選ばれるものである。ここで各化合物のQのうち、少なくとも1つは式(17)、または式(18)である。
【0040】
【化19】
【0041】
本発明に用いる感光剤(B)の配合量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して1〜50重量部が好ましい。より好ましくは10〜40重量部である。配合量が上記範囲内であると、特に感度が優れる。
【0042】
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物において、1分子構造中にフェノール性水酸基とアミド基を有する化合物(C)を用いる。
前記化合物(C)のアミド基として、カルボアミド基、チオアミド基等が挙げられる。フェノール性水酸基以外に、アミド基部分に強く活性化されたNH基が存在することで、高感度かつ高解像度の効果が発揮されるのではないかと考えられる。
アミド基の中でも、カルボアミド基が高感度かつ高解像度となる点で優れている。
前記化合物(C)を用いた場合、従来に比べて、現像液に対する露光部の溶解速度が速くなり感度が向上し、スカムの発生も抑えられる。
本発明の1分子構造中にフェノール性水酸基とアミド基を有する化合物(C)としてはオキシインドール誘導体、インドリン−2−チオン誘導体などが挙げられる。例えば、オキシインドール誘導体なら、下記式(19)に示す化合物などが挙げられる。
【0043】
【化20】
【0044】
【化21】
【0045】
インドリン−2−チオン誘導体なら、下記式(20)に示す化合物などが挙げられる。
【0046】
【化22】
【0047】
これらの中で特に好ましいものとしては、下記式(21)の化合物が好ましい。これにより、特に高感度、高解像度さらに、現像残さ(スカム)なくなる効果が向上する。
【0048】
【化23】
【0049】
本発明に係る1分子構造中にフェノール性水酸基とアミド基を有する化合物(C)の配合量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましい。より好ましくは1〜30重量部である。配合量が上記範囲内であると、特に感度、解像度が優れる。
【0050】
[その他の成分]
(密着助剤)
本発明の感光性樹脂組成物中には、密着助剤が含まれていてもよい。
密着助剤は、感光性樹脂組成物を硬化させた塗膜と、当該塗膜が形成された基板との結合強度を向上させる機能を有する成分である。
このような密着助剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アミノ基を有するケイ素化合物と酸二無水物または酸無水物とを反応することにより得られるケイ素化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
前記アミノ基を有するケイ素化合物としては、特に制限されるわけではないが、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)―3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記酸二無水物または酸無水物としては、特に制限されるわけではないが、例えば、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、シアノ無水マレイン酸、シトコン酸、無水フタル酸等が挙げられる。また、これらの密着助剤は単独、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明においては、これらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。
溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メ
チル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
【0053】
また、本発明の感光性樹脂組成物中には、必要に応じて酸化防止剤、フィラー、界面活性剤、光重合開始剤、架橋剤、末端封止剤および増感剤等の添加剤を添加してもよい。
【0054】
<硬化膜の形成方法>
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜(保護膜、絶縁膜)の形成方法について説明する。
まず、本発明の感光性樹脂組成物を支持体(基板)、例えば、シリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等に塗布する。塗布量は、シリコンウエハー(半導体素子)上に塗布する場合、硬化後の最終膜厚が0.1〜30μmになるよう塗布する。膜厚が下限値を下回ると、半導体素子の保護表面膜としての機能を十分に発揮することが困難となり、上限値を越えると、微細な加工パターンを得ることが困難となるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下する。
塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。
【0055】
次に、60〜130℃で塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する(露光工程)。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。
次に照射部を現像液で溶解除去することによりパターンを得る(現像工程)。
現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3級アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液、およびこれにメタノール、エタノール等アルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0056】
次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンス(洗浄)する(洗浄工程)。リンス液としては、蒸留水を使用する。
次に加熱処理を行うことにより、ベンゾオキサゾール前駆体構造、イミド前駆体構造を閉環反応させ、ベンゾオキサゾール環、イミド環を形成させ、耐熱性に優れる最終パターン(硬化膜、保護膜、絶縁膜)を得る(熱処理工程)。
加熱処理温度は180℃〜380℃が好ましく、より好ましくは200℃〜350℃である。
【0057】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜は、半導体素子等の半導体装置用途のみならず、TFT(Thin Film Transistor)型液晶や有機EL(Electro−Luminescence)等の表示体装置用途、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜としても有用である。
半導体装置用途の例としては、半導体素子上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるパッシベーション膜、パッシベーション膜上に上述の感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるバッファーコート膜等の保護膜、また、半導体素子上に形成された回路上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる層間絶縁膜等の絶縁膜、
また、α線遮断膜、平坦化膜、突起(樹脂ポスト)、隔壁等を挙げることができる。
表示体装置用途の例としては、表示体素子上に本発明の感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる保護膜、TFT素子やカラーフィルター用等の絶縁膜または平坦化膜、MVA(Multi−domein Vertical Alignment)型液晶表示装置用等の突起、有機EL素子陰極用等の隔壁等を挙げることができる。
【0058】
その使用方法は、半導体装置用途に準じ、表示体素子やカラーフィルターを形成した基板上にパターン化されたポジ型感光性樹脂組成物層を、上記の方法で形成することによるものである。
表示体装置用途、特に絶縁膜や平坦化膜用途では、高い透明性が要求されるが、本発明の感光性樹脂組成物を用いて作製した塗膜の硬化前に、後露光工程を導入することにより、透明性に優れた樹脂層が得られることもでき、実用上さらに好ましい。
以上、本発明の感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜および半導体装置について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の感光性樹脂組成物が適用される半導体装置は、上記のような構成のものに限定されない。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上述したような半導体素子の保護膜や絶縁膜の形成用として用いるだけでなく、例えば、半導体素子のスペーサ等の形成にも用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
[アルカリ可溶性樹脂(A−1)の合成]
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸211.7g(0.82モル)と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール221.6g(1.64モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体(活性エステル)403.8g(0.82モル)とヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン366.3g(1モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン3000gを加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。
次にN−メチル−2−ピロリドン370gに溶解させた5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸無水物59.1g(0.36モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/イソプロパノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、一般式(1)の構造を含む下記式(A−1)のアルカリ可溶性樹脂を得た。
【0060】
【化24】
【0061】
[感光剤の合成]
式(P−1)で示されるフェノール11.0g(0.026モル)と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド17.2g(0.064モル)とアセトン160gとを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパ
ラブルフラスコに入れて撹拌、溶解させた。次に反応溶液の温度が35℃以上にならないようウォーターバスでフラスコを冷やしながら、トリエチルアミン7.1g(0.07モル)とアセトン5.5gの混合溶液を、ゆっくり滴下した。そのまま室温で3時間反応させた後、酢酸1.0g(0.016モル)を添加し、更に30分反応させた。反応混合物をろ過した後、ろ液を水/酢酸(900ml/9ml)の混合溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(B−1)の感光剤(感光性ジアゾキノン化合物)を得た。
【0062】
【化25】
【0063】
[ポジ型感光性樹脂組成物の作製]
合成した式(A−1)のアルカリ可溶性樹脂100g、式(B−1)の感光性ジアゾキノン化合物15g、下記式(C−1)の化合物10gを、γ―ブチロラクトン130gに溶解した後、孔径0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過しポジ型感光性樹脂組成物を得た。得られたポジ型感光性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0064】
[感度、解像度(感光特性)]
上記ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分プリベークし、膜厚約8.0μmの塗膜を得た。この塗膜に凸版印刷(株)製・マスク(テストチャートNo.1:幅0.88〜50μmの残しパターンおよび抜きパターンが描かれている)を通して、i線ステッパー((株)ニコン製・4425i)を用いて、100mJ/cm
2から780mJ/cm
2まで10mJ/cm
2刻みで露光量を変化させて照射した。
次に、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、プリベーク後と現像後の未露光部の膜厚差が1μmになるように現像時間を調節してパドル現像を行った。その後、純水で10秒間リンスした。その結果、露光量350mJ/cm
2で照射
した部分よりパターンが形成されていることが確認できた(感度は350mJ/cm
2)
。この時の解像度は、4μmと高い値を示した。
【0065】
[機械的物性評価]
上記ポジ型感光性樹脂組成物を6インチのシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分プリベークし、硬化後の膜厚が10μmになるよう塗膜を得た。次にオーブンを用いて、塗膜付きシリコンウエハーを320℃/30分で加熱を行った。得られた硬化膜付きシリコンウエハーをダイシングソー(DFD6340、ディスコ(株)製)で10mm幅にカットした後、2%のフッ化水素水に漬浸し、短冊状の硬化膜をシリコンウエハーから剥離した。得られた硬化膜は純水で充分に洗浄し、オーブンで乾燥した。その後テンシロン(RTA−1210、オリエンテック(
株)製)を用いて引張強度と破断点伸度を測定した結果、それぞれ116MPa、48%の値を示した。
【0066】
[ガラス転移温度(Tg)評価]
上記感光性樹脂組成物を6インチのシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分プリベークし、硬化後の膜厚が10μmになるよう塗膜を得た。次にオーブンを用いて、塗膜付きシリコンウエハーを320℃/30分で加熱を行った。次に得られた硬化膜付きシリコンウエハーを2%のフッ化水素水に漬浸し、硬化膜をシリコンウエハーから剥離した。得られた硬化膜を純水で充分に洗浄し、オーブンで乾燥した。乾燥後の硬化膜を5mm幅に切ってサンプル片を作成し、セイコーインスツルメンツ(株)製熱機械分析装置(TMA)SS6000を用いてガラス転移温度を測定した結果、294℃と高い値を示した。
【0067】
[半導体装置の作製と評価]
上記ポジ型感光性樹脂組成物を用いてバンプを有する半導体装置を作製し評価した。
図1に本発明のバンプを有する半導体装置のパット部分の拡大断面図を示した。
図1に示すように、表面に半導体素子および配線の設けられたシリコン基板1の上部に、入出力用のAlパッド2を設け、さらにその上にパッシベーション膜3を形成し、そのパッシベーション膜3にビアホールを形成した。この上に、上記作製したポジ型感光性組成物を塗布、乾燥し、ポジ型感光性樹脂(バッファコート膜)4を形成し、金属(Cr、Ti等)膜5がAlパッド2と接続されるように形成し、その金属膜5はハンダバンプ9の周辺をエッチングして、各パッド間を絶縁した。絶縁されたパッドにはバリアメタル8とハンダバンプ9を形成し、半導体装置とした。
以上のようにして得られた半導体装置は、問題なく作動し、歩留まりが良好であり、高い信頼性を示した。
【0068】
<実施例2>
実施例1における式(C−1)の化合物の配合量を30gにした以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を作製し、感光特性(感度と解像度)評価、機械物性評価、ガラス転移温度評価を行った。
<実施例3>
実施例1における式(C−1)化合物の配合量を1gにした以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を作製し、感光特性(感度と解像度)評価、機械物性評価、ガラス転移温度評価を行った。
<実施例4>
実施例1における式(C−1)の化合物を下記式(C−2)に変えた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を作製し、感光特性(感度と解像度)評価、機械物性評価、ガラス転移温度評価を行った。
【0069】
【化26】
【0070】
<実施例5>
[アルカリ可溶性樹脂(A−2)の合成]
テレフタル酸149.5g(0.9モル)とイソフタル酸16.6g(0.1モル)と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール270.2g(2モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体(活性エステル)328.3g(0.82モル)とヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン366.3g(1モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン3000gを加えて溶解させた。
その後オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。
次にN−メチル−2−ピロリドン370gに溶解させた5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物59.1g(0.36モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。
反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(A−2)のアルカリ可溶性樹脂(ポリアミド樹脂)を得た。
【0071】
【化27】
【0072】
[感光剤の合成]
式(P−2)で示されるフェノール15.8g(0.025モル)と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド22.3g(0.083モル)とアセトン160gとを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れて撹拌、溶解させた。次に反応溶液の温度が35℃以上にならないようウォーターバスでフラスコを冷やしながら、トリエチルアミン8.4g(0.083モル)とアセトン5.5gの混合溶液を、ゆっくり滴下した。そのまま室温で3時間反応させた後、酢酸1g(0.016モル)を添加し、更に30分反応させた。反応混合物をろ過した後、ろ液を水/酢酸(900ml/9ml)の混合溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(B−2)の感光剤(感光性ジアゾキノン化合物)を得た。
【0073】
【化28】
[ポジ型感光性樹脂組成物の作製]
上記合成した式(A−1)のポリアミド樹脂100g、上記式(B−2)の感光剤15g、上記式(C−1)の化合物10gをγ−ブチロラクトン130gに溶解した後、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過しポジ型感光性樹脂組成物を得た。得られたポジ型感光性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の評価を行った。
【0074】
<比較例1>
実施例1における式(C−1)の化合物を除いた以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0075】
【表1】