特許第5751052号(P5751052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンケン電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5751052-放熱基板、半導体モジュール 図000002
  • 特許5751052-放熱基板、半導体モジュール 図000003
  • 特許5751052-放熱基板、半導体モジュール 図000004
  • 特許5751052-放熱基板、半導体モジュール 図000005
  • 特許5751052-放熱基板、半導体モジュール 図000006
  • 特許5751052-放熱基板、半導体モジュール 図000007
  • 特許5751052-放熱基板、半導体モジュール 図000008
  • 特許5751052-放熱基板、半導体モジュール 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751052
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】放熱基板、半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20150702BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   H01L23/12 J
   H01L23/36 C
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-149989(P2011-149989)
(22)【出願日】2011年7月6日
(65)【公開番号】特開2013-16731(P2013-16731A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 達也
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−184392(JP,A)
【文献】 特開平10−242354(JP,A)
【文献】 特開2005−228954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12 − 23/14
H01L 23/34 − 23/46
H05K 7/20
C01B 31/00 − 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造における六角形環が広がる方向が面内方向とされた黒鉛シートが、略矩形体形状をなす基体の表面を構成する一つの面から当該一つの面に対向する面にかけて、折り曲げられて貼り付けられた構成を具備する複数の放熱基板ブロックが、
前記一つの面が一方の主面を、前記一つの面と対向する面が他方の主面をそれぞれ構成するように、前記複数の放熱基板ブロックにおける前記一つの面と交差する面同士が接合されたことを特徴とする放熱基板。
【請求項2】
前記基体は樹脂材料で構成されたことを特徴とする請求項に記載の放熱基板。
【請求項3】
前記放熱基板ブロックにおける前記一つの面と交差する面には突起部及び孔部が形成され、隣接する2つの前記放熱基板ブロックにおいて、前記突起部と前記孔部とが嵌合する構成を具備することを特徴とする請求項又はに記載の放熱基板。
【請求項4】
表面にめっき層が形成されたことを特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の放熱基板。
【請求項5】
前記一方の主面側に、絶縁シートを介して金属薄膜層が形成されたことを特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の放熱基板。
【請求項6】
前記金属薄膜層が部分的に除去された構成を具備することを特徴とする請求項に記載の放熱基板。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の放熱基板が用いられたことを特徴とする半導体モジュール。
【請求項8】
請求項に記載の放熱基板が用いられ、前記金属薄膜層の上に半導体チップが搭載されたことを特徴とする半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュール等に用いられる放熱基板、この放熱基板が用いられた半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
大電流の動作を行うパワー半導体素子として、シリコンで構成されたダイオードやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が用いられている。これらの素子が形成された半導体チップが用いられた半導体モジュールにおいては、半導体チップからの放熱が効率的に行われるような構成とされる。
【0003】
このため、こうした場合においては、半導体チップは、高い熱伝導率をもった放熱基板に搭載される。放熱基板の材料としては、一般的には、銅やアルミニウム等、熱伝導率の高い金属が用いられる。しかしながら、更に高い熱伝導率をもった材料として、グラファイトがある。しかしながら、グラファイトの熱伝導にはその結晶構造に起因する異方性があり、一方向(一般的には薄膜における面内方向)におけるグラファイトの熱伝導率は1000〜2000W/m/K程度と極めて高いのに対して、これと垂直な方向(一般的には薄膜の厚さ方向)においては、1〜5W/m/K程度である。前者の値は銅、アルミニウム等の熱伝導率(高々300〜400W/m/K程度)と比べて高いものの、後者の値はこれらよりも大幅に低い。放熱基板が半導体モジュールに用いられる場合には、放熱基板の一部の領域に半導体チップが搭載され、この半導体チップが発した熱を高効率で放熱させることが必要になる。このため、半導体モジュールにおいては、放熱基板におけるどの方向においても高い熱伝導率をもつことが好ましい。
【0004】
グラファイトを用いた放熱基板としては、例えば、特許文献1にその構造が記載されている。この構成においては、グラファイト層と金属層とが交互に積層された構成が用いられている。この際、高い熱伝導率はグラファイト層の面内方向で得られ、その膜厚方向の熱伝導率は低い。しかしながら、この膜厚方向には金属層が積層されているため、膜厚方向における熱伝導率は金属層によって確保される。また、この積層構造を積層方向(各層の面内方向と垂直な方向:厚さ方向)に切断したシート状にすれば、このシートにおいては、前記と逆に、その厚さ方向における熱伝導はグラファイトによって確保され、かつ面内方向における熱伝導は金属層によって確保される。この積層構造の表面は、更にめっき層で保護され、この上に半導体チップが実装される。
【0005】
また、特許文献2には、グラファイトシートと粘着層とを交互に積層し、この積層構造を積層方向に切断したシートが記載されている。これにより、前記と同様に膜厚方向における高い熱伝導率をもったシートが得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−043851号公報
【特許文献1】特開2009−295921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の通り、放熱基板には半導体チップからの放熱を効率的に行うという機能が求められる。一方で、配線パターンを放熱基板上に形成し、この放熱基板を配線基板として使用する場合もある。特許文献1に記載の放熱基板は導電性であるため、こうした使用を行うことは困難である。
【0008】
特許文献2に記載の放熱基板においては、粘着層の熱伝導率はグラファイトと比べて著しく低い。また、この放熱基板の面内方向はグラファイト層の膜厚方向となるため、この放熱基板の面内方向におけるグラファイト層自身の熱伝導率も低い。このため、この放熱基板の膜厚方向における熱伝導率は高くなるものの、その面内方向における熱伝導率は著しく低い。このため、特にパワー半導体モジュールのように、搭載する半導体チップからの放熱を高効率で行うという目的には適さない。
【0009】
すなわち、搭載するチップからの放熱を高効率で行うことができる放熱基板を得ることは困難であった。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の放熱基板は、結晶構造における六角形環が広がる方向が面内方向とされた黒鉛シートが、略矩形体形状をなす基体の表面を構成する一つの面から当該一つの面に対向する面にかけて、折り曲げられて貼り付けられた構成を具備する複数の放熱基板ブロックが、前記一つの面が一方の主面を、前記一つの面と対向する面が他方の主面をそれぞれ構成するように、前記複数の放熱基板ブロックにおける前記一つの面と交差する面同士が接合されたことを特徴とする。
本発明の放熱基板において、前記基体は樹脂材料で構成されたことを特徴とする。
本発明の放熱基板において、前記放熱基板ブロックにおける前記一つの面と交差する面には突起部及び孔部が形成され、隣接する2つの前記放熱基板ブロックにおいて、前記突起部と前記孔部とが嵌合する構成を具備することを特徴とする。
本発明の放熱基板は、表面にめっき層が形成されたことを特徴とする。
本発明の放熱基板は、前記一方の主面側に、絶縁シートを介して金属薄膜層が形成されたことを特徴とする。
本発明の放熱基板は、前記金属薄膜層が部分的に除去された構成を具備することを特徴とする。
本発明の半導体モジュールは、前記放熱基板が用いられたことを特徴とする。
本発明の半導体モジュールは、前記放熱基板が用いられ、前記金属薄膜層の上に半導体チップが搭載されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、搭載するチップからの放熱を高効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る放熱基板の構造を示す斜視図(a)、A−A方向の断面図(b)、B−B方向の断面図(c)である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る放熱基板において用いられる黒鉛シートの形態を示す斜視図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る放熱基板の構造を示す斜視図(a)、C−C方向の断面図(b)である。
図4】本発明の第3の実施の形態に係る放熱基板において用いられる放熱基板ブロックにおける黒鉛シートの斜視図(a)、この放熱基板の斜視図(b)(c)である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る放熱基板において用いられる放熱基板ブロックの左側面図(a)、上面図(b)、右側面図(c)、D−D方向の断面図(d)である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る放熱基板の断面図である。
図7】本発明の第4の実施の形態に係る放熱基板の断面図である。
図8】本発明の第5の実施の形態に係る放熱基板、及びこれを用いた半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態となる放熱基板の構造について説明する。この放熱基板は、基体の表面に黒鉛シートが貼り付けられて構成される。この際、発熱源となる半導体チップ等が搭載される表面側からその裏面側に向かって、黒鉛シートは一体化されている。この黒鉛シートは、平板状のものが折り曲げられてこの形態とされる。この放熱基板においては放熱は主に黒鉛シートによってなされる。
【0015】
図1(a)は、この放熱基板10の構造を示す斜視図である。図1(b)、(c)は、それぞれそのA−A方向、B−B方向の断面図である。
【0016】
この放熱基板10は、基体11上に黒鉛シート12が貼り付けられて構成される。黒鉛シート12は、薄い接着剤(図示せず)を用いて基体11の表面に固定される。また、黒鉛シート12は、平板状のものが折り曲げられた上で図1の状態で基体11上に固定される。黒鉛シート12の、折り曲げられる前の状態(a)、折り曲げる途中の状態(b)、折り曲げた後の状態(c)の斜視図を図2に示す。黒鉛シート12は基体11と比べて薄いため、放熱基板10の形状は基体11の形状と概略等しい。
【0017】
基体11は、この放熱基板10のベースとなり、この放熱基板10と概略同一の形態の矩形体形状あるいは平板形状をなす。その材質は、この上に黒鉛シート12を貼り付けられるものでありかつ耐熱性のある材料であれば任意であり、樹脂材料や金属で構成することができる。基体11にも放熱を行わせるためには、基体11を熱伝導率の高い金属(銅等)で構成することができる。ただし、放熱基板10を軽量化するためには、樹脂材料で基体11を形成することが好ましい。この場合、全体が金属材料で構成された放熱基板よりもこの放熱基板10を軽量化することができる。
【0018】
ここで用いられる黒鉛シート12は黒鉛(グラファイト)で構成され、その形状は図2に示される。黒鉛シート12が折り曲げられる前の状態においては、図2(a)に模式的に示されるように、黒鉛(グラファイト)の結晶構造における六角形環(六方晶系における六角形の結晶が亀の甲状に2次元的に広がった構成)が広がる方向は、黒鉛シート12の面内方向となっている。グラファイトにおいては、この六角形が広がる方向における熱伝導率が特に高くなっており、この方向と垂直な方向(黒鉛シート12の厚さ方向)における熱伝導率は低くなっている。図2(a)の構成の黒鉛シート12は、平板状の大きな黒鉛シートを切断加工することによって得ることが可能である。また、一般に得られるシート状の黒鉛においては、六角形が広がる方向は面内方向となる。このため、図2(a)に示される黒鉛シート12を容易に得ることができる。
【0019】
また、黒鉛シート12の厚さは、例えば0.015〜0.1mm程度である。この厚さの黒鉛シート12に対しては、図2に示された曲げ加工を容易に施すことができる。また、黒鉛は高い曲げ強度を有しているため、図2(b)(c)の形態に折り曲げることも容易である。このため、図2に示された形態で黒鉛シート12を折り曲げて矩形体形状や平板形状の基体11の表面に接合することが可能である。
【0020】
黒鉛シート12を基体11に接合する接着剤の厚さは例えば10〜20μmとする。接着剤の種類としては、例えばエポキシ系の材料を用いることができる。接着剤は、黒鉛シート12を基体11に固定できる限りにおいて、薄く形成することが好ましい。
【0021】
上記の放熱基板10においては、基体11や接着剤を構成する材料の熱伝導率は黒鉛と比べて低い。しかしながら、黒鉛シート12の面内方向の熱伝導率は極めて高く、1000〜2000W/m/K程度である。このため、放熱基板10において黒鉛シート12が貼り付けられた面に平行な方向の熱伝導率は高くなる。ここで、黒鉛シート12は図2に示された構成で一体となっており、図1における放熱基板10の上面(一つの面)側から下面(前記の一つの面に対向する面)側に向かって連続的に形成され、折り曲げられている。このため、側面を介して上面側から下面側に高効率で熱を伝達させることができる。このため、この放熱基板10においては、放熱基板10の面内方向と厚さ方向で共に高い熱伝導率をもつ。この放熱板10の上に半導体チップを搭載して半導体モジュールを構成すれば、この半導体モジュールは高い放熱効率をもつ。
【0022】
(第2の実施の形態)
上記の放熱基板10を半導体モジュールに用いることができるが、この放熱基板10を複数連結した構成とすることもできる。図3は、この放熱基板110の構成を示す斜視図(a)、及びそのC−C方向の断面図(b)である。この放熱基板110は、前記の放熱基板10と同様の構造が一つのブロック(放熱基板ブロック120)とされ、これらが面内で複数接合して構成される。この場合、各放熱基板ブロック120においては、黒鉛シート12は、上面(一つの面)側から下面(前記一つの面に対向する面)にかけて連続的に形成され、折り曲げられて図1と同様の構成とされる。ここで、各放熱基板ブロック120は、放熱基板ブロック120の上面(一つの面)が放熱基板110の一方の主面を、放熱基板ブロック120の下面(前記一つの面と対向する面)が放熱基板110における他方の主面をそれぞれ構成するように配列される。放熱基板ブロック120における側面(前記一つの面と交差する面)同士が接合されることによって放熱基板110が形成される。放熱基板ブロック120同士の接合は、基体11と黒鉛シート12の接合と同様に、接着剤等を用いて行うことができる。接着剤の厚さは前記と同様に例えば10〜20μmとすることができる。図3においては、接着剤の記載は省略されている。
【0023】
この場合、接合に用いられる接着剤の熱伝導率は高くない。しかしながら、この放熱基板110においては、上面(一方の主面)側から下面(他方の主面)側に向かう熱伝導は個々の放熱基板ブロック120によって行われるため、高い放熱効率を得ることができる。放熱基板10を単体で用いる場合には、厚さ方向の熱伝導は主に黒鉛シート12が接合された放熱基板10の端部でのみなされるのに対して、上記の放熱基板110においては、隣接する放熱基板ブロック120間で厚さ方向の熱伝導がなされる。このため、上記の放熱基板110においては、厚さ方向の熱伝導が多くの箇所でなされ、厚さ方向の熱伝導の効率が高くなる。一方、この放熱基板110の上面側の大部分の領域では黒鉛シート12が接合されているため、面内方向において高い熱伝導率が得られる。このため、この放熱基板110においては、面内方向、厚さ方向の両方において高い熱伝導率が得られる。
【0024】
また、個々の放熱基板ブロック120を予め複数製造しておくことにより、所望の形態の放熱基板110を得ることができる。
【0025】
(第3の実施の形態)
図3のような形態で連結することが特に容易なように放熱基板ブロックを形成することもできる。図4は、この場合に用いられる個々の放熱基板ブロック210に用いられる黒鉛シート220の折り曲げられる前の一方向からの斜視図(a)、放熱基板ブロック210の一方向からの斜視図(b)、放熱基板ブロック210の他方向からの斜視図(c)を示す。この放熱基板ブロック210においては、基体211の一側面に2つの突起部212が形成されている。また、この突起部212と反対側の側面に、2つの孔部213が設けられている。図4(a)(b)に示されるように、黒鉛シート220は、突起部212が設けられた面には接合されない。また、孔部213が設けられた面においては、黒鉛シート220にも孔部213に対応した開口部が設けられている。図5は、この放熱基板ブロック210の左側面図(a)、上面図(b)、右側面図(c)、D−D方向の断面図(d)である。
【0026】
図5の形態の放熱基板ブロック210を連結させた放熱基板230の突起部213の突出した方向に沿った断面図を図6に示す。突起部212と孔部213とを嵌合させることにより、放熱基板ブロック210同士の接合をより確実に行うことができる。この際、突起部212が設けられた面には黒鉛シート220は存在しないが、孔部213が設けられた面には黒鉛シート220が設けられているため、連結された状態(図6)においては、連結部で厚さ方向に黒鉛シート220が存在している。このため、連結部において厚さ方向で高い熱伝導率が得られる。連結部以外では、面内方向で高い熱伝導率が得られる。
【0027】
なお、突起部と孔部の構成は、側面(接合される面)に形成され、これらが嵌合できる形態である限りにおいて、任意である。例えば、同一の側面に突起部と孔部を設けることもでき、2つずつの側面に突起部、孔部を設け、放熱基板ブロックを2次元配列することも可能である。こうした場合においても、放熱基板ブロックにおいて黒鉛シートを上面側から下面側に折り曲げて基体に接合することができる限りにおいて、高い放熱効率を得ることができる。
【0028】
(第4の実施の形態)
前記の放熱基板110と同様の構造の表面に、めっき層を形成した放熱基板310の断面図を図7に示す。この放熱基板310においては、前記の放熱基板110と同様に放熱基板ブロック120が配列された構造の表面全面にめっき層311が形成されている。めっき層311は、例えば銅(Cu)やニッケル(Ni)等、電解めっきや無電解めっきで放熱基板ブロック120の表面に形成できる金属で形成される。めっき層311の厚さは、例えば5〜20μm程度とすることができる。
【0029】
放熱基板110においては、隣接する放熱基板10同士の接合は接着剤のみによってなされていたのに対し、この放熱基板310においては、めっき層311によってこの接合が補強される。この放熱基板310においては、最表面が黒鉛シート12よりも熱伝導率が低いめっき層311となるが、めっき層311の厚さを5〜20μm程度とすることにより、半導体チップからの熱を素速く黒鉛シート12に伝達させ、放熱させることができる。
【0030】
なお、図7の例では放熱基板110と同様の構造の上にめっき層を形成した例について記載したが、前記の放熱基板230と同様の構造の上にめっき層を形成することもでき、同様の効果を奏することも明らかである。
【0031】
(第5の実施の形態)
上記の放熱基板10、110、230、310における上面側の最表面は、黒鉛やめっき層(金属)であり、これらはいずれも導電体であるため、最表面全体が導電層となっている。これに対して、以下に示す放熱基板410においては、上面側の最表面を部分的に導電性とすることができ、この部分的な導電層を配線パターンとして用いることができる。図8は、この放熱基板410を製造し、かつこれを用いて半導体モジュールを製造する場合の工程断面図である。
【0032】
ここでは、図8(a)に示されるように、図3の放熱基板110と同様の構成が用いられる。すなわち、基体11の表面に黒鉛シート12が形成された構造の複数の放熱基板ブロック120が面状に接合される。
【0033】
次に、図8(b)に示されるように、この構造の上面に、絶縁シート411と金属薄膜層412を順次積層し、圧着する。ここで、絶縁シート411は、例えばエポキシ樹脂で構成される絶縁層である。また、熱硬化性樹脂とアルミナ等からなる無機物フィラーを含むことができる。更にガラス繊維等も含ませることができる金属薄膜層412は、例えば銅や銅合金で構成される。絶縁シート411は、図8(a)の構成上に金属薄膜層412が電気的に絶縁されて固定されるように、その材質、厚さは適宜設定される。ただし、一般に絶縁シート411の熱伝導率は高くないために、金属薄膜層412と放熱基板ブロック120(黒鉛シート12)との間の絶縁性が確保できる限りにおいて、絶縁シート411は薄いことが好ましい。
【0034】
次に、図8(c)に示されるように、金属薄膜層412を局所的にエッチングしてパターニングする。これにより、金属薄膜層412は半導体モジュールの配線となる。このパターニングは、例えばフォトレジストをマスクとしたウェットエッチング等によって容易に行われる。このエッチングは、例えば金属薄膜層412が銅で構成される場合には、塩化第二鉄水溶液を用いて絶縁シート411や放熱基板ブロック120等に悪影響を与えずに行うことができる。これにより、放熱基板410が形成される。この放熱基板410においては、最上層の金属薄膜層412が配線として使用される。その下には、薄い絶縁シート411を挟んで、面内方向、厚さ方向共に放熱効率の高い放熱基板ブロック120が存在する。このため、この放熱基板410における放熱効率は高くなる。
【0035】
次に、図8(d)に示されるように、この放熱基板410における金属薄膜層412上に、半導体チップ80を搭載する。ここでは、金属薄膜層412は、左右と中央部の3つに分割され、左右にそれぞれ半導体チップ80が搭載される。半導体チップ80と金属薄膜層412との間の接合ははんだによって行うことができる。この際、半導体チップ80の裏面側に電極が構成されている場合には、この電極と金属薄膜層412との間はこのはんだによって接合される。
【0036】
また、半導体チップ80の表面にはボンディングワイヤ90の一端が接続され、ボンディングワイヤ90の他端は中央部の金属薄膜層412に接続される。図8は断面図を示しているが、実際には金属薄膜層412は、この放熱基板410の面上において配線となるように二次元的にパターニングされている。すなわち、半導体チップ80、ボンディングワイヤ90、金属薄膜層412によってこの半導体モジュールにおける配線が形成され、電気回路が構成される。
【0037】
最後に、図8(e)に示されるように、金属板100を放熱基板410の裏面側に接合する。この接合も、接着剤を用いて行うことができる。この構成により、半導体チップ80が発した熱は、放熱基板410を介して金属板100に伝わり、高効率で放熱される。
【0038】
この半導体モジュールにおいては、放熱基板410における金属薄膜層412を配線として用いることができ、かつ放熱基板410によって高い放熱効率も得ることができる。なお、図8(d)の状態とされた後に、半導体チップ80やボンディングワイヤ90を封止する絶縁性の樹脂層(モールド層)を形成することもできる。
【0039】
なお、上記の構成において、放熱基板ブロックを構成する基体は矩形体形状あるいは平板形状であるとしたが、厳密な矩形体形状、平板形状である必要はない。大きな空隙がない状態で放熱基板ブロックを接合して放熱基板を形成できる限りにおいて、基体の形状は任意である。
【0040】
また、黒鉛シートの形状も、放熱基板あるいは放熱基板ブロックの上面側から下面側に向かって連続的に形成され、折り曲げて基体に接合できる限りにおいて、任意である。
【符号の説明】
【0041】
10、110、230、310、410 放熱基板
11、211 基体
12、220 黒鉛シート
80 半導体チップ
90 ボンディングワイヤ
100 金属板
120、210 放熱基板ブロック
212 突起部
213 孔部
311 めっき層
411 絶縁シート
412 金属薄膜層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8