(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の穴は、前記電子部品の実装領域上方に、前記電子部品上に所定の厚さの前記樹脂層が残る深さで設けられ、前記電子部品の非実装領域上方に、前記基板上に所定の厚さの前記樹脂層が残る深さで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記シールド層を形成する工程後に、前記樹脂層に、前記第1の穴に連通する第2の穴を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は第1の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。尚、
図1(A)は第1の実施の形態に係る半導体装置の一例の断面模式図、
図1(B)は第1の実施の形態に係る半導体装置の一例の平面模式図である。
【0011】
図1(A)に示すように、半導体装置100は、基板110、電子部品120、樹脂層130及びシールド層140を含む。
基板110には、例えば、プリント基板が用いられる。基板110は、一方の面側(電子部品120の実装面側)に設けられた電極パッド111、及び他方の面側(電子部品120の実装面と反対の面側)に設けられた電極パッド112を有している。尚、基板110の内部には、所定のパターン形状の配線、及び異なる配線間を接続するビア等の導電部と、そのような導電部を被覆する絶縁部とが設けられている。基板110の両面の電極パッド111,112は、基板110内に設けられた導電部を介して電気的に接続されている。更に基板110には、その一方の面側の端部に、グランド(GND)電位とされるGNDパターン113が設けられている。
【0012】
このような基板110の電極パッド111の配設面側に、電子部品120として、半導体素子(半導体チップ)121のほか、コンデンサ、インダクタ、抵抗器等の受動部品(実装部品)122が実装されている。
【0013】
半導体チップ121には、基板110との対向面にバンプ121aが設けられている。基板110の一部の電極パッド111は、実装される半導体チップ121のバンプ121aと対応する位置に設けられている。半導体チップ121は、そのバンプ121a、或いはバンプ121aとはんだ等の接合部材を介して、基板110の対応する電極パッド111上にフリップチップ実装される。その場合、例えば、実装された半導体チップ121と基板110との間には、アンダーフィル材150が充填される。
【0014】
尚、アンダーフィル材150は、設けないようにすることも可能である。また、基板110には、上記のようなフリップチップ実装された半導体チップ121に替えて、或いはフリップチップ実装された半導体チップ121と共に、ワイヤーボンディングで実装された半導体チップが実装されていてもよい。
【0015】
実装部品122は、その電極部122aと対応する位置に設けられた電極パッド111上に、はんだ等の接合部材160を用いて実装されている。
樹脂層130は、基板110に実装された半導体チップ121及び実装部品122等の電子部品120を封止する。樹脂層130には、エポキシ樹脂を用いることができ、例えば、非導電性フィラーを含有するエポキシ樹脂が用いられる。樹脂層130は、所定形状の金型を用いたモールド成形によって形成することができる。
【0016】
シールド層140は、樹脂層130の表面(上面及び側面)に設けられ、基板110に設けたGNDパターン113に電気的に接続されている。シールド層140には、金属や導電性樹脂等の導電性材料を用いることができる。シールド層140は、用いる材料に応じて、めっき法、蒸着法、塗布法等を用いて、樹脂層130の上面及び側面に形成することができる。
【0017】
更にこのシールド層140には、
図1(A),(B)に示すように、樹脂層130の上面に設けられている部分に、樹脂層130に通じる筒状の穴141が、少なくとも1つ、ここでは一例として複数設けられている。尚、ここではシールド層140のうち、樹脂層130の側面に設けられている部分には上記のような穴141が設けられていない構造を例示している。シールド層140の穴141は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、樹脂層130の上面及び側面に一様に形成したシールド層140の、樹脂層130上面側の部分に対し、ドリルを用いた穴開け加工を施すことで、形成することができる。
【0018】
このように一方の面側に電子部品120、樹脂層130、シールド層140等が配設された基板110の、他方の面側に設けた電極パッド112には、はんだボール等のバンプ170が取り付けられている。半導体装置100は、このバンプ170を用いて、マザーボード等の他の基板にリフローを行って実装することができるようになっている。
【0019】
半導体装置100は、実装される電子部品120のサイズ(高さ)によって異なるが、0.5mm〜2mm程度の厚みとされる。また、シールド層140は、その形成方法、材質によって異なるが、数μm〜数十μmの厚みとされる。
【0020】
上記のように半導体装置100は、その樹脂層130の上面及び側面に、基板110のGNDパターン113に電気的に接続されたシールド層140が設けられている。このシールド層140により、半導体装置100の外部の電磁波が電子部品120に入射するのをシールドし、或いは、電子部品120で発生した電磁波が半導体装置100の外部に放射されるのをシールドする。
【0021】
更に上記のようにこの半導体装置100では、そのシールド層140に、穴141が設けられている。このような穴141を有するシールド層140を樹脂層130の表面に設けることにより、樹脂層130の表面全体を露出させている場合(即ちシールド層140を設けていない場合)に比べて、樹脂層130の吸湿を抑制することができる。また、このような穴141を有するシールド層140を樹脂層130の表面に設けた場合には、穴141を有しないシールド層を樹脂層130の表面に設けた場合に比べて、吸湿した樹脂層130の脱湿性を向上させることができる。これらの点について、次の
図2を参照して説明する。
【0022】
図2(A)にはシールド層を設けていない半導体装置の一例を、
図2(B)には穴141を有しないシールド層を用いた半導体装置の一例を、それぞれ示している。
図2(A)に示す半導体装置100Aは、上記のようなシールド層140を設けていない点で、
図1に示した半導体装置100と相違する。また、
図2(B)に示す半導体装置100Bは、上記のような穴141を有しないシールド層140Aが樹脂層130の表面に設けられている点で、
図1に示した半導体装置100と相違する。
【0023】
図2(A)に示すような半導体装置100Aでは、樹脂層130の表面全体が露出するため、例えば、半導体装置100Aをマザーボードに実装するまでの間、大気中に放置した場合等に、比較的樹脂層130の吸湿が起こり易い。半導体装置100Aの樹脂層130に吸湿された水分は、半導体装置100Aをマザーボードに実装する際のリフロー加熱で膨張する。樹脂層130に吸湿された水分量、水分の膨張の程度によっては、水分の膨張時の圧力により、半導体装置100A内の接合界面(基板110と樹脂層130の接合界面、基板110と電子部品120の接合界面等)で剥離が発生することがある。
【0024】
このような接合界面の剥離を抑制するためには、所定の温度環境(例えば120℃〜150℃程度)でのベイクと呼ばれる乾燥処理によって樹脂層130の脱湿を行うことが有効である。シールド層を設けていない半導体装置100Aでは、樹脂層130の表面全体が露出しているため、例えば、数時間程度で樹脂層130の脱湿を行うことができる。
【0025】
一方、
図2(B)に示すような、電磁波シールドのためにシールド層140Aを設けた半導体装置100Bでは、樹脂層130の表面全体がシールド層140Aで覆われる。そのため、半導体装置100Bでの樹脂層130への吸湿は、
図2(A)の半導体装置100Aに比べて緩やかである。従って、半導体装置100Bをマザーボードに実装するまでの時間を、半導体装置100Aのときよりも長くとることができ、その点では半導体装置100Bの取り扱いが容易になるという利点はある。
【0026】
しかし、樹脂層130の吸湿は、プリント基板等の基板110を介しても起こる。そのため、半導体装置100Bでも、高湿度環境での放置が長くなったり、大気中への放置時間があまりにも長くなったりすると、基板110を介して樹脂層130に一定量の水分が吸湿されてしまう場合がある。その場合、半導体装置100Bでは、ベイクを行っても、シールド層140Aがあるために却って樹脂層130からの脱湿効率が悪くなり、ベイク時間が十数時間〜数十時間と長くなってしまう。その結果、半導体装置100Bをマザーボードに実装するのに長時間を要してしまうことが起こり得る。
【0027】
更に、半導体装置100Bでは、脱湿が充分でない状態でマザーボードへの実装を行った場合、その実装時のリフロー加熱により、樹脂層130内に残る水分が膨張するときの圧力により、シールド層140Aが樹脂層130から剥離するといったことも起こり得る。このようなシールド層140Aの剥離に起因して、シールド層140AのGNDパターン113からの剥離、基板110と樹脂層130の接合界面や基板110と電子部品120の接合界面等での剥離が起こる恐れもある。
【0028】
このように半導体装置100Bでは、マザーボードへの実装工程に時間を要してしまったり、実装工程後の半導体装置100Bの信頼性が確保できなかったりする場合がある。
これに対し、
図1に示した半導体装置100では、樹脂層130を、穴141を設けたシールド層140で被覆する。そのため、樹脂層130の表面全体が露出する半導体装置100A(
図2(A))に比べ、樹脂層130の吸湿は緩やかになる。更に、半導体装置100では、大気中の放置等で樹脂層130が吸湿しても、
図3(A)に示すように、ベイクの際、樹脂層130の水分130aを、シールド層140の穴141を介して半導体装置100の外部に除去することができる。そのため、穴を有しないシールド層140Aを設けた半導体装置100B(
図2(B))に比べ、樹脂層130の脱湿性を向上させることができる。樹脂層130の水分130aを除去するためのベイクの後、
図3(B)に示すように、そのベイク後の半導体装置100が、バンプ170を介して、マザーボード410に実装される。
【0029】
このような半導体装置100によれば、シールド層140で樹脂層130の吸湿を抑制することで、ベイクが長時間化するのを抑制することができ、半導体装置100のベイクを含むマザーボード410への実装工程の効率化を図ることがでる。また、そのシールド層140に穴141を設けて樹脂層130からの脱湿性を高めることで、半導体装置100のベイクを含むマザーボード410への実装工程の効率化、マザーボード410への実装工程を経た半導体装置100の信頼性の向上を図ることができる。更に、そのように半導体装置100をマザーボード410に実装した装置(電子装置)400の信頼性の向上を図ることもできる。
【0030】
尚、上記のような樹脂層130からの脱湿経路となるシールド層140の穴141の径(直径)は、シールド層140でシールド(遮蔽)する電磁波の波長に基づいて設定することができる。シールド層140による充分なシールド効果を得るためには、穴141の径を、シールドすべき電磁波の波長よりも充分に小さくすることが望ましい。例えば、所謂ワンセグ帯域(500MHz〜800MHz程度)では波長が数十cmとなるため、径が数mm以下の穴141であれば、シールド層140による充分なシールド効果を得ることができる。シールド層140に設ける穴141は、後述のいずれの方法を用いた場合にも、0.1mm以上の径で形成することが可能である。
【0031】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図4は第2の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。尚、
図4は第2の実施の形態に係る半導体装置の一例の断面模式図である。
【0032】
図4に示す半導体装置100aは、樹脂層130に、シールド層140の穴141に連通する穴131が設けられている点で、上記
図1に示した半導体装置100と相違する。ここでは一例として、シールド層140に複数設けた穴141のそれぞれに連通し、基板110側に向かって一定の深さで延びる、複数の穴131が設けられた樹脂層130を示している。
【0033】
樹脂層130の穴131は、その底部に樹脂層130が存在するような深さ、即ち、電子部品120や基板110に達しないような深さで、設けられる。電子部品120の周囲には、樹脂層130が100μm以上の厚さで設けられていれば、樹脂層130を設けたことによる一定の信頼性を確保することが可能である。そのため、樹脂層130の穴131は、いずれの電子部品120の上にも、厚さ100μm以上の樹脂層130が残るような一定の深さで、設けられる。
【0034】
図4に示したような半導体装置100aでは、樹脂層130に穴131が設けられていることで、
図1に示したような半導体装置100に比べて、樹脂層130のシールド層140からの露出面積が増加するようになる。そのため、樹脂層130の吸湿量が同程度であれば、樹脂層130に穴131を設けて露出面積を増加させた
図4の半導体装置100aでは、
図1の半導体装置100に比べて、ベイク時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0035】
半導体装置100aでは、上記半導体装置100同様、シールド層140で樹脂層130の吸湿を抑制し、ベイクの長時間化を抑制して、半導体装置100aのベイクを含むマザーボードへの実装工程の効率化を図ることができる。また、半導体装置100aでは、そのシールド層140に穴141を設けると共に、樹脂層130にも穴131を設けることにより、樹脂層130からの脱湿性を更に高めている。それにより、マザーボードへの実装工程の効率化、マザーボードへの実装工程を経た半導体装置100a、更には半導体装置100aをマザーボードに実装した電子装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0036】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図5は第3の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。尚、
図5は第3の実施の形態に係る半導体装置の一例の断面模式図である。
【0037】
図5に示す半導体装置100bは、シールド層140の穴141に連通する樹脂層130の穴131が、その位置によって深さが異なっている点で、上記
図4に示した半導体装置100aと相違する。
【0038】
樹脂層130の各穴131は、その深さ方向に存在する電子部品120や基板110の高さに応じた深さで設けられる。上記のように、電子部品120の周囲には、樹脂層130が100μm以上の厚さで設けられていれば、一定の信頼性を確保することが可能である。電子部品120の実装領域の上方に位置する穴131は、その実装領域の電子部品120(アンダーフィル材150や接合部材160を含む)の上(穴131の下端と電子部品120の間)に、厚さ100μm以上の樹脂層130が残るような深さとされる。電子部品120の非実装領域の上方に位置する穴131は、基板110の上(穴131の下端と基板110の間)に、厚さ100μm以上の樹脂層130が残るような深さとされる。
【0039】
図5に示したような半導体装置100bによれば、
図4に示した半導体装置100aに比べ、樹脂層130のシールド層140からの露出面積が、より増加するようになるため、樹脂層130からの脱湿性をいっそう高めることができる。半導体装置100bでは、上記半導体装置100a同様、半導体装置100bのベイクを含むマザーボードへの実装工程の効率化、マザーボードへの実装工程を経た半導体装置100a、及び実装後に得られる電子装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0040】
次に、第4の実施の形態について説明する。
図6は第4の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。尚、
図6は第4の実施の形態に係る半導体装置の一例の要部断面模式図である。
【0041】
図6に示す半導体装置100cは、上記
図4に示した半導体装置100a同様、シールド層140及び樹脂層130に穴141,131が設けられた構造を有し、更に、これらの穴141,131にピン180が設けられた構造を有している。この半導体装置100cでは、ピン180として、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属製のピンが用いられる。
【0042】
ピン180は、穴141,131に挿入される軸部181と、その軸部181の上に設けられた頭部182とを有している。軸部181は、穴141,131に挿入され、軸部181の下端部が、穴131の底部で樹脂層130に固定される。軸部181は、接着剤、例えばエポキシ系の接着剤を用いて、穴131の底部に固定することができる。ピン180は、このように軸部181が樹脂層130に固定されたときに、軸部181の上の頭部182が、その下面でシールド層140と接触し、穴141をシールド層140の上から塞ぐようになっている。このようにピン180がセットされたときに、軸部181と穴141,131の内壁との間に一定の空間が存在することとなるよう、ピン180(軸部181、頭部182)や穴141,131のサイズが設定される。
【0043】
半導体装置100cでは、上記のような構成を採用することにより、高周波の電磁波を効果的にシールドすることができると共に、ベイクやリフローといった加熱時には穴141,131を利用して脱湿を行うことができるようになっている。この点について、
図7を参照して、より詳細に説明する。
【0044】
図7は第4の実施の形態に係る半導体装置の脱湿時の挙動を説明する図である。尚、
図7(A)は非加熱時(常温時)の状態の一例を示す図、
図7(B)は加熱時の状態の一例を示す図である。
【0045】
半導体装置100cは、ベイク等の加熱を行っていない非加熱時には、
図7(A)に示すように、軸部181の下端部が穴131の底部で樹脂層130に固定され、頭部182の下面がシールド層140に接触した状態になっている。シールド層140とピン180は、いずれも導電性を有しており、導通しているため、シールド層140やピン180に到達した電磁波は、シールド層140及びこれに接触するピン180を伝播する。例えば、半導体装置100cでは、
図7(A)に矢印で示したように、電磁波がシールド層140からピン180(頭部182)に伝播し、ピン180(頭部182)からシールド層140に伝播することが可能になっている。
【0046】
シールド層140に設けた穴141が、ピン180で塞がれずにそのまま残っていると、シールド性能が劣化する場合がある。例えば、シールドすべき電磁波が10GHzを超えるような比較的高周波となった場合には、シールド層140の穴141がたとえ数mm程度の比較的小さなものであっても、シールド性能が劣化する可能性がある。半導体装置100cでは、非加熱時には、シールド層140と同様に導電性を示すピン180で穴141が塞がれた状態となっており、電磁波の伝播経路に隙間がなくなるため、穴141を設けたことで生じ得るシールド性能の劣化を効果的に抑制することができる。
【0047】
一方、半導体装置100cでは、ベイク等の加熱時には、
図7(B)に示すように、その加熱により、ピン180が熱膨張して上方に伸長する。軸部181の下端部が穴131の底部で樹脂層130に固定されているピン180は、加熱による熱膨張によって、上方に伸長するようになる。ピン180の伸長によってその頭部182がシールド層140から離れると、頭部182の下面とシールド層140の上面との間に、穴131,141と連通する隙間200ができる。樹脂層130に含まれる水分は、加熱に伴い、これらの穴131,141及び隙間200を通って、半導体装置100cの外部へと除去されるようになる。
【0048】
このように半導体装置100cでは、加熱時にピン180が膨張(伸長)することによってできる隙間200を利用して、樹脂層130の脱湿が行われる。加熱後は、半導体装置100cの冷却に伴い、膨張したピン180が収縮し、再び
図7(A)に示したような非加熱時の状態に戻り、収縮したピン180によりシールド層140の穴141が塞がれるようになる。
【0049】
非加熱時と加熱時にこのような挙動を示すピン180には、樹脂層130よりも熱膨張係数が大きい材料が用いられる。例えば、樹脂層130の熱膨張係数α1(ガラス転移点までの熱膨張係数)が8ppm/K程度で、ガラス転移点が125℃程度であるとする。ピン180に用いる材料として先にAl,Cuを例示したが、Alは熱膨張係数が24ppm/Kであり、Cuは熱膨張係数が17ppm/Kである。従って、AlやCuのピン180は、樹脂層130よりも熱膨張係数が大きくなるため、125℃のベイクでは、樹脂層130よりも膨張、伸長し、上記のような隙間200ができることになる。
【0050】
尚、ここではピン180として、AlやCu等、金属製のものを用いる場合を例にして述べたが、金属以外の導電材料から成るもの、例えば導電性樹脂から成るもの等を用いることもできる。更に、ピン180には、少なくともその表面(電磁波の伝播経路となる表面)が導電性を示すようなものであれば、同様に用いることができる。
【0051】
図8は第4の実施の形態に係る半導体装置の別例を示す図である。尚、
図8は第4の実施の形態に係る半導体装置の別例の要部断面模式図である。
図8に示す半導体装置100dは、上記のような金属製のピン180に替えて、樹脂製の軸部191と頭部192を有し、その頭部192の表面に導電層193が設けられたピン190が用いられている点で、上記の半導体装置100cと相違する。ピン190の軸部191及び頭部192には、樹脂層130よりも熱膨張係数が大きくなるような樹脂材料を用いることができる。ピン190の導電層193には、Al,Cu等の金属や導電性樹脂等の導電性材料を用いることができる。
【0052】
このようなピン190を用いた場合にも、非加熱時には、上記
図7(A)に示したのと同様に、ピン190で穴141が塞がれ、シールド性能の劣化が効果的に抑制される。また、加熱時には、上記
図7(B)に示したのと同様に、ピン190が膨張(伸長)して穴131,141と連通する隙間ができ、樹脂層130の脱湿経路が確保される。膨張したピン190が、加熱後の冷却に伴って収縮すると、再びピン190で穴141が塞がれるようになる。
【0053】
尚、ここでは頭部192に導電層193を設けたピン190を例示したが、頭部192のほか軸部191にも導電層193を設けたピンを用いても、加熱時の上記同様の挙動、並びにシールド性、脱湿性を実現することが可能である。
【0054】
また、半導体装置100c,100dにおいても、上記の半導体装置100bと同様に、電子部品120の位置に応じて穴131の深さを変えてもよい。即ち、電子部品120の実装領域の上方に位置する穴131は、その実装領域の電子部品120(アンダーフィル材150や接合部材160を含む)の上(穴131の下端と電子部品120の間)に、厚さ100μm以上の樹脂層130が残るような深さとする。電子部品120の非実装領域の上方に位置する穴131は、基板110の上(穴131の下端と基板110の間)に、厚さ100μm以上の樹脂層130が残るような深さとする。このような穴131及びそれに連通する穴141にピン180,190を設けることで、加熱時の上記同様の挙動、並びにシールド性、脱湿性を実現することが可能である。
【0055】
以上、第1〜第4の実施の形態に係る半導体装置100,100a,100b,100c,100d等によれば、良好なシールド性と脱湿性とを兼ね備えた半導体装置、及びそのような半導体装置をマザーボード等の他の基板に実装した電子装置が実現可能になる。
【0056】
続いて、上記のような半導体装置の形成方法の一例について説明する。
図9は半導体装置の第1の形成方法を説明する図である。
まず、
図9(A)に示すように、プリント基板等の基板110に、半導体チップ121、実装部品122といった電子部品120を実装する。基板110には、電極パッド111,112及びGNDパターン113のほか、その内部に、電極パッド111,112及びGNDパターン113に電気的に接続された、配線やビア等の導電部が、絶縁部で被覆された状態で設けられている。半導体チップ121は、例えば、バンプ121aを介して基板110の電極パッド111にフリップチップ実装し、半導体チップ121と基板110の間には、アンダーフィル材150を充填する。実装部品122は、接合部材160を用いて電極部122aを基板110の電極パッド111に接合する。
【0057】
基板110への電子部品120の実装後は、
図9(B)に示すように、実装された電子部品120を封止する樹脂層130を形成する。樹脂層130は、所定の金型(上型及び下型)を用いたモールド成形によって形成する。即ち、電子部品120を実装した基板110を上型と下型の間に配置し、上型と下型の間の空間に、非導電性フィラーを含む樹脂材料を充填し、硬化させた後、上型と下型を取り外す。これにより、
図9(B)のような、基板110上の電子部品120が樹脂層130で封止された成形品を得る。
【0058】
樹脂層130の形成後は、
図9(C)に示すように、樹脂層130の表面(上面及び側面)を覆うシールド層140を形成する。シールド層140は、金属や導電性樹脂等の導電材料を、めっき法、蒸着法、塗布法等を適宜選択して形成する。
図9(C)の工程では、樹脂層130の上面及び側面の全体がシールド層140で被覆され、また、シールド層140は、基板110に設けたGNDパターン113に接続される。
【0059】
シールド層140の形成後は、
図9(D)に示すように、シールド層140の、樹脂層130の上面を被覆している部分に、ドリル300を用いた穴開け加工によって穴141を形成し、更にそれに続けて、樹脂層130に穴131を形成する。その際は、形成する穴141,131の径に応じた径のドリル300が選択される。ドリル300には、例えば、プリント板のビアホール加工に使用するような細いドリルを用いることができる。このようにして所定数の穴141,131を、所定の深さで形成する。
【0060】
尚、バンプ170は、穴141,131の形成後、又は形成前に、基板110の電極パッド112に取り付けることができる。
穴141,131を一定の深さで形成することにより、上記第2の実施の形態で述べたような半導体装置100aを得ることができる。更に、上記のようなピン180やピン190を、その導電性の頭部182や導電層193がシールド層140と接触するように、穴141,131に挿入、固定すれば、上記第4の実施の形態で述べたような半導体装置100c,100dを得ることができる。また、ドリル300による穴開け加工の際、穴141,131を、電子部品120の高さに応じた深さで形成すれば、上記第3の実施の形態で述べたような半導体装置100bを得ることができる。また、樹脂層130には穴131を設けず、シールド層140にだけドリル300による穴開け加工を行うようにすれば、上記第1の実施の形態で述べたような半導体装置100を得ることができる。
【0061】
この第1の形成方法では、ドリル300を用いた穴開け加工によって穴141,131、或いは穴141のみを形成する例を示したが、穴141,131の形成手法は、これに限定されるものではない。
【0062】
図10は半導体装置の第2の形成方法を説明する図である。
まず上記第1の形成方法と同様、基板110に電子部品120を実装し(
図9(A))、実装した電子部品120を封止する樹脂層130をモールド成形により形成する(
図9(B))。
【0063】
その後、この第2の形成方法では、
図10(A)に示すように、形成した樹脂層130の上面に、穴141,131の形成位置に対応する位置に開口部311を設けたブラストマスク310を配置する。そして、そのブラストマスク310をマスクにして、研磨材等のブラスト材料320を吹き付け、開口部311に露出する樹脂層130を部分的に除去する(ブラスト加工)。このようにして樹脂層130に穴131を形成する。
【0064】
ブラスト加工による穴131の形成後は、
図10(B)に示すように、ブラストマスク310を除去する。
ブラストマスク310を除去した後は、
図10(C)に示すように、シールド層140を形成する。シールド層140は、めっき法を用いて形成することができる。その際、先のブラスト加工の工程で、樹脂層130に形成する穴131の径、深さを調整しておくことで、めっき液が穴131に入らないようにすることができる。このような手法を用いることにより、
図10(C)のように、穴131を形成した樹脂層130の上面と側面に選択的に、めっき層を形成することができる。これにより、穴131を形成した樹脂層130の上面、及び樹脂層130の側面全体を被覆し、基板110のGNDパターン113に接続された、穴141を有するシールド層140が形成される。
【0065】
尚、例えばこのシールド層140の形成後に、基板110の電極パッド112にバンプ170が取り付けられる。
このような方法により、上記第2の実施の形態で述べたような半導体装置100aを得ることができる。更に、上記のピン180やピン190を、その頭部182や導電層193がシールド層140と接触するように、穴141,131に挿入、固定すれば、上記第4の実施の形態で述べたような半導体装置100c,100dを得ることができる。
【0066】
尚、ブラスト加工時に1種類のブラストマスク310を用い、条件(時間やブラスト材料320の種類等)を変えずに加工を行えば、樹脂層130に形成する全ての穴131を同等の深さで形成することができる。また、開口部311の配置を変えた複数種のブラストマスクを用い、各々のブラストマスクを用いたブラスト加工時の条件(時間やブラスト材料320の種類等)を適宜設定すれば、樹脂層130の異なる位置に、異なる深さの穴131を形成することもできる。このような方法を用いれば、上記第3の実施の形態で述べたような半導体装置100bを得ることができる。
【0067】
また、このようにモールド成形後の樹脂層130に対しブラストによる穴開け加工を行って穴131を形成する方法のほか、樹脂層130のモールド成形時に穴131を形成することもできる。
【0068】
図11は半導体装置の第3の形成方法を説明する図である。
まず上記第1の形成方法と同様、基板110に電子部品120を実装する(
図9(A))。その後、所定の金型(上型及び下型)を用いたモールド成形によって樹脂層130を形成する。
【0069】
この第3の形成方法では、樹脂層130のモールド成形に用いる金型330として、
図11(A)に示すような上型331と下型332を用いる。このうち、上型331には、穴141,131の形成位置に対応する位置に凸部331aが設けられている。凸部331aは、例えば、その位置によって高さが調整される。そして、
図11(A)に示すように、電子部品120を実装した基板110を、上型331と下型332の間に挟み、それらの間の空間に樹脂材料340を充填し、硬化させる(モールド成形)。
【0070】
その後、
図11(B)に示すように、上型331と下型332を取り外す。これにより、位置によって高さが異なる穴131を有する樹脂層130が形成される。穴131は、その下端と電子部品120の間、或いは下端と基板110の間に、厚さ100μm以上の樹脂層130が残るような深さで形成する。このような穴131が形成されるように、用いる上型331の凸部331aの位置及び高さが予め調整される。
【0071】
樹脂層130の形成後は、
図11(C)に示すように、めっき法を用いてシールド層140を形成する。樹脂層130の穴131の径、深さを予め調整しておくことで、樹脂層130の上面と側面に選択的に、めっき層を形成することができる。これにより、穴131を形成した樹脂層130の上面、及び樹脂層130の側面全体を被覆し、基板110のGNDパターン113に接続された、穴141を有するシールド層140が形成される。
【0072】
尚、例えばこのシールド層140の形成後に、基板110の電極パッド112にバンプ170が取り付けられる。
このような方法により、上記第3の実施の形態で述べたような半導体装置100bを得ることができる。
【0073】
尚、ここでは、位置によって高さが異なる凸部331aを設けた上型331を用いたが、勿論、一定高さの凸部331aを設けた上型331を用いてもよく、その場合には、上記第2の実施の形態で述べたような半導体装置100aを得ることができる。またその場合に、上記のピン180やピン190を、その頭部182や導電層193がシールド層140と接触するように、穴141,131に挿入、固定すれば、上記第4の実施の形態で述べたような半導体装置100c,100dを得ることができる。
【0074】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 基板と、
前記基板上に実装された電子部品と、
前記電子部品を封止する樹脂層と、
前記樹脂層の上面及び側面に設けられ、前記上面の側に前記樹脂層に通じる筒状の第1の穴が設けられたシールド層と、
を含み、
前記樹脂層に設けられ、前記第1の穴に連通する第2の穴と、
前記第1の穴及び前記第2の穴に設けられ、導電性を有するピンと、
を更に含み、
前記ピンは、
前記第1の穴及び前記第2の穴に挿入され、前記第2の穴の底部で前記樹脂層に固定される軸部と、
前記軸部上に設けられ、前記第1の穴を前記シールド層の上から閉塞する頭部と、
を有し、
所定温度での加熱時に、前記ピンが熱膨張することによって前記頭部が前記シールド層から離間し、前記第1の穴及び前記第2の穴に連通する隙間が生成されることを特徴とする半導体装置。
【0075】
(付記2) 前記第2の穴は、前記電子部品の実装領域上方に、前記電子部品上に所定の厚さの前記樹脂層が残る深さで設けられ、前記電子部品の非実装領域上方に、前記基板上に所定の厚さの前記樹脂層が残る深さで設けられていることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0076】
(付記3) 前記第1の穴の径は、前記シールド層によってシールドする電磁波の波長に基づいて設定されることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
(付記4) 基板上に電子部品を実装する工程と、
前記電子部品を封止する樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層の上面及び側面に、前記上面の側に前記樹脂層に通じる筒状の第1の穴が設けられたシールド層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0077】
(付記5) 前記シールド層を形成する工程は、
前記樹脂層の前記上面及び前記側面に前記シールド層の材料を形成する工程と、
前記材料の、前記上面の側に形成された部分に、前記樹脂層に通じる前記第1の穴を形成する工程と、
を含むことを特徴とする付記4に記載の半導体装置の製造方法。
【0078】
(付記6) 前記シールド層を形成する工程後に、前記樹脂層に、前記第1の穴に連通する第2の穴を形成する工程を更に含むことを特徴とする付記4又は5に記載の半導体装置の製造方法。
【0079】
(付記7) ドリルを用いた穴開け加工によって、前記第1の穴を形成し、続けて前記樹脂層に前記第2の穴を形成することを特徴とする付記6に記載の半導体装置の製造方法。
【0080】
(付記8) 前記樹脂層を形成する工程は、前記樹脂層に第2の穴を形成する工程を含み、
前記シールド層を形成する工程においては、前記第2の穴が設けられた前記樹脂層の前記上面及び前記側面に選択的に前記シールド層の材料を形成することによって、前記第2の穴に連通する前記第1の穴が設けられた前記シールド層を形成することを特徴とする付記4に記載の半導体装置の製造方法。
【0081】
(付記9) ブラストを用いた穴開け加工によって、前記樹脂層に前記第2の穴を形成することを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10) 前記第2の穴に対応した凸部を有する金型を用いた前記樹脂層のモールド成形によって、前記樹脂層に前記第2の穴を形成することを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0082】
(付記11) 前記第1の穴及び前記第2の穴に、導電性を有する、軸部と前記軸部上に設けられた頭部とを有するピンを設ける工程を更に含み、
前記ピンは、前記軸部が前記第1の穴及び前記第2の穴に挿入され前記第2の穴の底部で前記樹脂層に固定され、前記頭部が前記第1の穴を前記シールド層の上から閉塞するように設けられることを特徴とする付記6乃至10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0083】
(付記12) 前記第1の穴の径は、前記シールド層によってシールドする電磁波の波長に基づいて設定されることを特徴とする付記4乃至11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。