特許第5751248号(P5751248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特許5751248膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法
<>
  • 特許5751248-膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法 図000002
  • 特許5751248-膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法 図000003
  • 特許5751248-膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法 図000004
  • 特許5751248-膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法 図000005
  • 特許5751248-膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法 図000006
  • 特許5751248-膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法 図000007
  • 特許5751248-膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751248
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20060101AFI20150702BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20150702BHJP
   H01M 8/10 20060101ALN20150702BHJP
【FI】
   H01M8/02 E
   H01M4/88 K
   !H01M8/10
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-504345(P2012-504345)
(86)(22)【出願日】2011年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2011050768
(87)【国際公開番号】WO2011111419
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2013年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-217811(P2010-217811)
(32)【優先日】2010年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-50339(P2010-50339)
(32)【優先日】2010年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】木内 脩治
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−257438(JP,A)
【文献】 特開2001−196070(JP,A)
【文献】 特開2000−182632(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/063466(WO,A1)
【文献】 特開2009−054600(JP,A)
【文献】 特開2009−132899(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/051776(WO,A1)
【文献】 特開2005−217278(JP,A)
【文献】 特開2006−203221(JP,A)
【文献】 特開2005−302589(JP,A)
【文献】 特開2009−037916(JP,A)
【文献】 特開2006−134611(JP,A)
【文献】 特開2009−134953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/02
H01M 8/08 − 8/24
H01M 4/86 − 4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層と固体高分子電解質膜とからなる膜−電極接合体を製造する膜−電極接合体製造装置であって、
前記触媒層を転写基材の一面に担持させてなる触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを予備加熱する予備加熱手段と、
前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを加熱及び加圧して一体化した接合部材を形成する熱圧着手段と、
前記接合部材から前記転写基材を剥離する剥離手段と
を備え、
前記予備加熱手段は、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを接触させた状態で、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下まで予備加熱する第1の予備加熱手段を備え、
前記熱圧着手段は、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下の温度範囲内で前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを加熱及び加圧し、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とが一体化した接合部材前駆体を形成する第1の熱圧着手段を備えることを特徴とする膜−電極接合体製造装置。
【請求項2】
前記接合部材から前記転写基材を剥離する前に、前記接合部材を温度調整する温度調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の膜−電極接合体製造装置。
【請求項3】
前記剥離手段が、前記転写基材と前記膜電極接合体とを反対の方向に移動させて、前記接合部材から前記転写基材を剥離する手段であることを特徴とする請求項2に記載の膜−電極接合体製造装置。
【請求項4】
前記剥離手段が、前記温度調整手段を兼ねる手段であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の膜−電極接合体製造装置。
【請求項5】
前記予備加熱手段は、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度まで予備加熱する第2の予備加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の膜−電極接合体製造装置。
【請求項6】
前記剥離手段が、前記接合部材の両面から前記転写基材を剥離する手段であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の膜−電極接合体製造装置。
【請求項7】
前記熱圧着手段は、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度範囲内で加熱及び加圧して接合部材を形成する第2の熱圧着手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の膜−電極接合体製造装置。
【請求項8】
前記第1の熱圧着手段が、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下の温度範囲内で前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを両面側から加熱及び加圧し、前記接合部材前駆体を形成する手段であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の膜−電極接合体製造装置。
【請求項9】
前記第2の熱圧着手段が、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度範囲内で両面側から加熱及び加圧して接合部材を形成する手段であることを特徴とする請求項7に記載の膜−電極接合体製造装置。
【請求項10】
触媒層と固体高分子電解質膜とからなる膜−電極接合体を製造する膜−電極接合体製造方法であって、
前記触媒層を転写基材の一面に担持させてなる触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを予備加熱する予備加熱工程と、
前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを加熱及び加圧して一体化した接合部材を形成する熱圧着工程と、
前記接合部材から前記転写基材を剥離する剥離工程と
を備え、
前記予備加熱工程は、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを接触させた状態で、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下まで予備加熱する第1の予備加熱工程を備え、
前記熱圧着工程は、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下の温度範囲内で前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを加熱及び加圧し、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とが一体化した接合部材前駆体を形成する第1の熱圧着工程を備えることを特徴とする膜−電極接合体の製造方法。
【請求項11】
前記接合部材から前記転写基材を剥離する前に、前記接合部材を温度調整する温度調整工程をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【請求項12】
前記剥離工程が、前記転写基材と前記膜電極接合体とを反対の方向に移動させて、前記接合部材から前記転写基材を剥離する工程であることを特徴とする請求項11に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【請求項13】
前記剥離工程が、前記温度調整工程を兼ねる工程であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【請求項14】
前記予備加熱工程は、前記第1の熱圧着工程後、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度まで予備加熱する第2の予備加熱工程をさらに備えることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【請求項15】
前記剥離工程が、前記接合部材の両面から前記転写基材を剥離する工程であることを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【請求項16】
前記熱圧着工程は、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度範囲内で加熱及び加圧して接合部材を形成する第2の熱圧着工程をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【請求項17】
前記第1の熱圧着工程が、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下の温度範囲内で前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを両面側から加熱及び加圧し、前記接合部材前駆体を形成する工程であることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【請求項18】
前記第2の熱圧着工程が、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度範囲内で両面側から加熱及び加圧して接合部材を形成する工程であることを特徴とする請求項16に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜−電極接合体(MEA:membrane−electrode assembly)製造装置及び膜−電極接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膜−電極接合体の製造方法としては、触媒層担持基材と固体高分子電解質膜をホットプレスなどで熱圧着した後、転写基材を剥離する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ホットプレスを用いる手法、及びホットロール(熱圧着ロール)を用いる手法が開示されている。上記ホットロールを用いる手法は、長尺の固体高分子電解質膜とその両側に配された触媒層を担持した長尺の触媒層担持基材とを接触させ、一対の熱圧着ロールで熱圧着することによって、固体高分子電解質膜と触媒層とを一体的に接合し、その後触媒層を担持している転写基材を一対の剥離ロールを用いて触媒層から剥離している。
【0004】
一方、上記ホットプレスを用いる手法は、ホットプレスを用いて固体高分子電解質膜に触媒層担持基材上に担持された触媒層を転写する手法である。上記2つの手法を比べると、ホットロールを用いて転写する手法の方が、固体高分子電解質膜への触媒層の転写が連続的に行えるので、ホットプレスを用いて転写する手法よりも製造速度を向上させることができる。
【0005】
上記ホットロールを用いて転写する手法は、前記膜−電極接合体を熱圧着する時間が短いため、固体高分子電解質膜と触媒層の接着が弱いという問題があった。この問題について、特許文献2では、ホットロールによる熱圧着前に予備加熱ヒーターによって固体高分子電解質膜を予備加熱し、熱圧着することで、接着強度の強い膜−電極接合体を作製している。また、触媒層を担持している転写基材を事前に冷却し、更に熱圧着後の膜−電極接合体も同様に冷却することで、転写基材と触媒層の剥離強度を落とし、より良好な転写を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−64574号公報
【特許文献2】特開2001−196070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的な固体高分子電解質膜は、加熱により伸びが非常に大きくなる。熱圧着により伸張された固体高分子電解質膜と触媒層担持基材は、加熱がなくなることにより、外気による冷却で収縮が起こる。固体高分子電解質膜と触媒層担持基材は、熱による伸びが違うために、収縮の差により皺が発生する。冷却後に固体高分子電解質膜と触媒層担持基材を一体化した接合部材から触媒層担持基材を剥離すると、固体高分子電解質膜に皺が発生していることが確認されている。
特に、一般的な固体高分子電解質膜は、軟化温度(ガラス転移温度より30度以上50度以下程度低い温度とする。)以上に加熱した場合、伸びが非常に大きくなる。予備加熱機構を備える製造装置の場合、予備加熱時に固体高分子電解質膜と触媒層担持基材が伸張し、伸張率の差によって製造した膜―電極接合体に皺が発生することが確認されている。膜−電極接合体に皺が入ることは、その後の製造工程に悪影響を与え、膜−電極接合体の品質を低下させる。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、ホットロールの手法を用いながら、固体高分子電解質膜と触媒層との接着性が高く、皺が入ることがない、高品質の膜−電極接合体を製造することができる、膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、触媒層と固体高分子電解質膜とからなる膜−電極接合体を製造する膜−電極接合体製造装置であって、前記触媒層を転写基材の一面に担持させてなる触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを予備加熱する予備加熱手段と、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを加熱及び加圧して一体化した接合部材を形成する熱圧着手段と、前記接合部材から前記転写基材を剥離する剥離手段とを備え、前記予備加熱手段は、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを接触させた状態で、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下まで予備加熱する第1の予備加熱手段を備え、前記熱圧着手段は、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下の温度範囲内で前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを加熱及び加圧し、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とが一体化した接合部材前駆体を形成する第1の熱圧着手段を備えることを特徴とする膜−電極接合体製造装置である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記接合部材から前記転写基材を剥離する前に、前記接合部材を温度調整する温度調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の膜−電極接合体製造装置である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記剥離手段が、前記転写基材と前記膜電極接合体とを反対の方向に移動させて、前記接合部材から前記転写基材を剥離する手段であることを特徴とする請求項2に記載の膜−電極接合体製造装置である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記剥離手段が、前記温度調整手段を兼ねる手段であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の膜−電極接合体製造装置である。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記予備加熱手段は、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度まで予備加熱する第2の予備加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の膜−電極接合体製造装置である。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記剥離手段が、前記接合部材の両面から前記転写基材を剥離する手段であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の膜−電極接合体製造装置である。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、前記熱圧着手段は、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度範囲内で加熱及び加圧して接合部材を形成する第2の熱圧着手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の膜−電極接合体製造装置である。
【0017】
また、請求項8に記載の発明は、前記第1の熱圧着手段が、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下の温度範囲内で前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを両面側から加熱及び加圧し、前記接合部材前駆体を形成する手段であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の膜−電極接合体製造装置である。
また、請求項9に記載の発明は、前記第2の熱圧着手段が、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度範囲内で両面側から加熱及び加圧して接合部材を形成する手段であることを特徴とする請求項7に記載の膜−電極接合体製造装置である。
【0018】
また、請求項10に記載の発明は、触媒層と固体高分子電解質膜とからなる膜−電極接合体を製造する膜−電極接合体製造方法であって、前記触媒層を転写基材の一面に担持させてなる触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを予備加熱する予備加熱工程と、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを加熱及び加圧して一体化した接合部材を形成する熱圧着工程と、前記接合部材から前記転写基材を剥離する剥離工程とを備え、前記予備加熱工程は、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを接触させた状態で、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下まで予備加熱する第1の予備加熱工程を備え、前記熱圧着工程は、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下の温度範囲内で前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを加熱及び加圧し、前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とが一体化した接合部材前駆体を形成する第1の熱圧着工程を備えることを特徴とする膜−電極接合体の製造方法である。
【0019】
また、請求項11に記載の発明は、前記接合部材から前記転写基材を剥離する前に、前記接合部材を温度調整する温度調整工程をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の膜−電極接合体の製造方法である。
【0020】
また、請求項12に記載の発明は、前記剥離工程が、前記転写基材と前記膜電極接合体とを反対の方向に移動させて、前記接合部材から前記転写基材を剥離する工程であることを特徴とする請求項11に記載の膜−電極接合体の製造方法である。
【0021】
また、請求項13に記載の発明は、前記剥離工程が、前記温度調整工程を兼ねる工程であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の膜−電極接合体の製造方法である。
【0022】
また、請求項14に記載の発明は、前記予備加熱工程は、前記第1の熱圧着工程後、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度まで予備加熱する第2の予備加熱工程をさらに備えることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の膜−電極接合体の製造方法である。
【0023】
また、請求項15に記載の発明は、前記剥離工程が、前記接合部材の両面から前記転写基材を剥離する工程であることを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の膜−電極接合体の製造方法である。
【0025】
また、請求項16に記載の発明は、前記熱圧着工程は、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度範囲内で加熱及び加圧して接合部材を形成する第2の熱圧着工程をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の膜−電極接合体の製造方法である。
【0026】
また、請求項17に記載の発明は、前記第1の熱圧着工程が、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度より低い軟化温度以下の温度範囲内で前記触媒層担持基材と前記固体高分子電解質膜とを両面側から加熱及び加圧し、前記接合部材前駆体を形成する工程であることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の膜−電極接合体の製造方法である。
また、請求項18に記載の発明は、前記第2の熱圧着工程が、前記接合部材前駆体を、前記固体高分子電解質膜のガラス転移温度以上であって、熱分解温度以下の温度範囲内で両面側から加熱及び加圧して接合部材を形成する工程であることを特徴とする請求項16に記載の膜−電極接合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体製造方法によれば、触媒層担持基材と固体高分子電解質膜を予備加熱し、固体高分子電解質膜と触媒層を伸張させた後に熱圧着することにより、膜−電極接合体に皺が形成されることを防ぐことができる。そして、固体高分子電解質膜と触媒層の接着強度を高めて、転写基材を剥離する際に固体高分子電解質膜から触媒層が剥離するのを防止することができる。
さらに、接合部材から転写基材を剥離する前に、接合部材の温度調整をすることにより、熱圧着後に接合部材が外気によって冷却されても、膜−電極接合体に皺が形成されることを防ぐとともに、固体高分子電解質膜と触媒層の接着強度を高めて、転写基材を剥離する際に固体高分子電解質膜から触媒層が剥離するのを防止できる。
【0028】
また、本発明の膜−電極接合体製造装置及び膜−電極接合体の製造方法によれば、触媒層担持基材と固体高分子電解質膜を加熱する予備加熱工程を2つに分割し、仮圧着工程を挟むことにより、皺のない接合部材前駆体を作製できる。その後に予備加熱2を行い、熱圧着することにより、膜−電極接合体に皺が形成されることを防ぐとともに、固体高分子電解質膜と触媒層の接着強度が高い接合部材が作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第一の実施形態の膜−電極接合体製造装置の概略図である。
図2】本発明の第二の実施形態の膜−電極接合体製造装置の概略図である。
図3】(a)は膜−電極接合体の概略図である。(b)は接合部材の概略図である。
図4】本発明の第一の実施形態の膜−電極接合体の製造工程図である。
図5】本発明の第二の実施形態の膜−電極接合体の製造工程図である。
図6】本発明の第一の実施形態の膜−電極接合体製造装置の変形例の構成の概略図である。
図7】本発明の第二の実施形態の膜−電極接合体製造装置の変形例の構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(膜−電極接合体製造装置)
次に、本発明の一実施形態を説明する。なお、本発明の実施形態は、以下に記す実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の実施形態の範囲に含まれるものである。
図1は、本発明の第一の実施形態の膜−電極接合体製造装置20を説明するための概略図である。膜−電極接合体製造装置20は、固体高分子電解質膜10を巻き出す巻き出しローラー22と、巻き出された固体高分子電解質膜10の張力を除去する一対の張力除去ローラー24と、触媒層を一面に担持する触媒層担持基材12を巻き出す巻き出しローラー26と、固体高分子電解質膜10とこの固体高分子電解質膜10と接触する触媒層担持基材12とを接触させた状態で予備加熱する予備加熱ヒーター28と、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12とを加熱及び加圧して接合部材14とする一対の熱圧着ローラー30と、接合部材14を温度調整する温度調整ヒーター44と、接合部材14から転写基材16を剥離する剥離ローラー36と、転写基材16の剥離角度を設定する剥離角度設定ローラー38と、転写基材16を巻き取る巻き取りローラー42と、転写基材16が剥離されてなる膜−電極接合体18を巻き取る巻き取りローラー40とを備える。
【0031】
図2は、本発明の第二の実施形態の膜−電極接合体製造装置20を説明するための概略図である。膜−電極接合体製造装置20は、固体高分子電解質膜10を巻き出す巻き出しローラー22と、巻き出された固体高分子電解質膜10の張力を除去する一対の張力除去ローラー24と、触媒層を一面に担持する触媒層担持基材12を巻き出す巻き出しローラー26と、固体高分子電解質膜10とこの固体高分子電解質膜10と接触する触媒層担持基材12とを接触させた状態で、軟化温度以下まで予備加熱する予備加熱ヒーター27と、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12とを加熱及び加圧して接合部材前駆体13とする一対の仮圧着ローラー29と、接合部材前駆体13をガラス転移温度以上、熱分解温度以下まで昇温させる予備加熱ヒーター28と、接合部材前駆体13を加熱加圧して接合部材14とする一対の熱圧着ローラー30と、接合部材14を温度調整する温度調整ヒーター44と、接合部材14から転写基材16を剥離する剥離ローラー36と、転写基材16の剥離角度を設定する剥離角度設定ローラー38と、転写基材16を巻き取る巻き取りローラー42と、転写基材16が剥離されてなる膜電極接合体18を巻き取る巻き取りローラー40とを備える。
【0032】
図2(a)は、膜−電極接合体18の概略図である。また、図2(b)は、接合部材14の概略図である。図2(a)のように、膜−電極接合体18は、図2(a)のように、固体高分子電解質膜10と、その両面に設けられた触媒層50とからなる。膜−電極接合体18は、図2(b)のように、固体高分子電解質膜10の両面に、触媒層担持基材12を、触媒層が担持された面を固体高分子電解質膜10側にして貼り合わせて接合部材14を形成した後、転写基材16を剥離することによって形成される。
【0033】
固体高分子電解質膜10は、湿潤状態で良好なプロトン導電性を示す高分子材料である。触媒層担持基材12は、白金又は白金と他の金属との合金からなる触媒を担持した粉末カーボンと樹脂により形成された触媒層50を転写基材16の一面に形成したものである。
以下、固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12を構成する材料の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0034】
固体高分子電解質膜10を構成する高分子材料としては、具体的には、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質を用いることができる。フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製Nafion(登録商標)、旭硝子(株)製Flemion(登録商標)、旭化成(株)製Aciplex(登録商標)、ゴア社製Gore Select(登録商標)などを用いることができる。炭化水素系高分子電解質膜としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンなどの電解質膜を用いることができる。中でも、高分子電解質膜としてデュポン社製Nafion(登録商標)系材料を好適に用いることができる。炭化水素系高分子電解質膜としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンなどの電解質膜を用いることができる。
固体高分子電解質膜10の厚みは、10μm以上300μm以下程度に形成される。
【0035】
触媒層50を構成する樹脂としては、上記高分子材料と同様のものを用いることができる。
また、触媒層50を構成する触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素のほか、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属若しくは白金とこれらの合金、又はこれらの酸化物、複酸化物などを用いることができる。その中でも、白金や白金合金がより好ましい。また、触媒の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると触媒の安定性が低下するため、0.5nm以上20nm以下が好ましい。
また、触媒層50を構成する粉末カーボンとしては、微粒子状で導電性を有し、触媒に侵さないものであれば特に限定されない。具体的には、カーボンブラックやグラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどを用いることができる。粉末カーボンの粒径は、触媒より小さい10nm以上100nm以下程度が好適に用いられる。
【0036】
転写基材16は、その表面に触媒層50を形成でき、形成した触媒層50を固体高分子電解質膜10に転写できれば、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを用いることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。
【0037】
張力除去ローラー24は、熱圧着ローラー30の回転による固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12の搬送速度と同期するよう回転する。そして、熱圧着ローラー30で熱圧着される際に、固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12に張力が作用しないようにする。こうすることにより、固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12の熱圧着の際の変形を抑制することができる。また、張力除去ローラー24は、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12を接触させる機能も有する。
【0038】
予備加熱ヒーター27は、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12とを接触させた状態で、固体高分子電解質膜10の軟化温度以下の60度以上120度以下の範囲内で設定された温度に加熱できるようになっている。
【0039】
一対の仮圧着ローラー29には、両方の仮圧着ローラー29の内部に、表面を加熱するヒーター31Bが設けられている。また、一方の仮圧着ローラー29には、仮圧着ローラー間に圧力を作用させる加圧装置32Bが取り付けられている。ヒーター31Bは、仮圧着ローラー29の表面が加圧される固体高分子電解質膜10の軟化温度近傍の60度以上120度以下の範囲内になるように調節されている。また、加圧装置32Bは、熱圧着ローラー29間に作用される圧力が10MPa以上100MPa以下の範囲内になるように調節されている。仮圧着ローラー29は、図2のように上下ともに加熱できるようになっている。このように、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12を接触させた状態で予備加熱ヒーター27によって予備加熱し、仮圧着ローラー29によって仮圧着することで、触媒層50と固体高分子電解質膜10とを皺のない安定した形状を持つ接合部材前駆体13にすることができる。
【0040】
予備加熱ヒーター28は、接合部材前駆体13を固体高分子電解質膜10のガラス転移温度以上、熱分解温度以下、具体的には80度以上140度以下の範囲内で設定された温度に加熱できるようになっている。
【0041】
一対の熱圧着ローラー30には、両方の熱圧着ローラー30の内部に、表面を加熱するヒーター31が設けられている。また、一方の熱圧着ローラー30には、熱圧着ローラー間に圧力を作用させる加圧装置32が取り付けられている。ヒーター31は、加圧される固体高分子電解質膜10のガラス転移温度近傍の80度以上140度以下の範囲内になるように調節されている。また、加圧装置32は、熱圧着ローラー30間に作用される圧力が10MPa以上100MPa以下の範囲内になるよう調節されている。熱圧着ローラー30は、図1、2のように上下ともに加熱できるようになっている。このように、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12を接触させた状態で予備加熱ヒーター27又は28によって予備加熱し、熱圧着ローラー30によって熱圧着することで、触媒層50と固体高分子電解質膜10との接着度を向上させることができる。
【0042】
温度調整ヒーター44は、接合部材14を60度以上120度以下の範囲内で設定された温度に調節するようになっている。また、温度調整ヒーター44は、熱圧着による温度から20度程度低い温度にまで温度調整することができる。
【0043】
剥離ローラー36、剥離角度設定ローラー38は、剥離ローラー36により剥離される転写基材16と膜−電極接合体18とを略反対の方向に移動できるように、その位置、直径が調節されている。例えば、剥離ローラー36を直径30mm以下とし、剥離される転写基材16と膜−電極接合体18との角度が略180度となるように調節される。
【0044】
(膜−電極接合体の製造方法)
次に、本実施形態の膜−電極接合体製造装置20により膜−電極接合体18が製造される各工程について説明する。
図4は、膜−電極接合体18の製造の工程を例示する第一の実施形態の製造工程図である。また、図5は、膜−電極接合体18の製造の工程を例示する第二の実施形態の製造工程図である。膜−電極接合体18の製造は、まず、巻き出しローラー22から巻き出された固体高分子電解質膜10及び巻き出しローラー26から巻き出された触媒層担持基材12を張力除去ローラー24により接触させ、かつ張力を除去する。張力除去された固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12を接触させた状態で、予備加熱ヒーター27により予備加熱される(工程S10)。この予備加熱は、この予備加熱は、60度以上120度以下の範囲内で設定された温度によって行われる。また、工程S10の予備加熱を、以下、予備加熱工程又は予備加熱工程1とも記す。
【0045】
固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12の予備加熱は、張力除去ローラー24によって両者を接触させた状態で行われる。このとき、互いに接している固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12は、予備加熱ヒーター28の内部に搬送される。固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12を接触させた状態で予備加熱するのは、固体高分子電解質膜10と、触媒層担持基材12上に担持している触媒層50を密着させ、固体高分子電解質膜10と触媒層50との接着強度を高め、皺なく貼合せするためである。
【0046】
次に、予備加熱された固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12とは、互いに接触した状態のままヒーター31B及び加圧装置32Bを有する仮圧着ローラー29で加熱及び加圧(ホットプレス)される。加熱、加圧された固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12とは、接合部材前駆体13となる(工程S11)。なお、工程S11のホットプレスを、本実施形態では仮圧着とも記す。仮圧着は、予備加熱工程1の設定温度と同じ温度(60度以上120度以下)の範囲内で設定された温度によって行われる。加圧は、10MPa以上100MPa以下の範囲内で設定された圧力で行われる。この理由は、仮圧着を予備加熱工程1より低い温度で行うと、後工程にて固体高分子電解質膜10と触媒層50に皺が発生し、膜電極接合体を作製できないためである。また、予備加熱工程1の温度範囲より高い温度では、固体電解質膜が熱で変形し、皺が発生するためである。仮圧着の加圧についても、圧力が10MPa以上100MPa以下の範囲より低い場合、接着力が足りずに接合部材前駆体13が作製できず、10MPa以上100MPa以下の圧力範囲より高い場合、高圧力によって接合部材前駆体13が劣化してしまう。
【0047】
次に、接合部材前駆体13は、予備加熱ヒーター28によって固体高分子電解質膜10のガラス転移温度以上、熱分解温度以下まで昇温される(工程S12)。ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の具体的な温度は、80度以上140度以下の範囲内で設定された温度である。また、工程S12の予備加熱を、予備加熱工程2とも記す。工程S12を行うことにより、固体高分子電解質膜10と触媒層50の接着強度を向上させることができる。
【0048】
次に、予備加熱され、接触させた状態の固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12、又は接合部材前駆体13は、熱圧着ローラー30で加熱及び加圧(ホットプレス)されて接合部材14となる(工程S13)。なお、工程S13のホットプレスを、本実施形態では熱圧着とも記す。熱圧着は、80度以上140度以下の範囲内で設定された温度で、10MPa以上100MPa以下の範囲内で設定された圧力で行われる。上記範囲より低い温度では、固体高分子電解質膜10と触媒層50の結合が悪く、膜−電極接合体を作製できず、前記範囲より高い温度では、固体電解質膜が熱で変形し、劣化してしまう。また、圧力についても同様に、上記範囲より低い圧力の場合、膜−電極接合体が作製できず、上記範囲より高い圧力の場合、高圧力によって膜−電極接合体が劣化してしまう。
【0049】
接合部材14は、温度調整ヒーター44により、熱圧着による温度から20度程度低い温度にまで温度調整される(工程S14)。そして、剥離ローラー36により接合部材14から転写基材16が剥離される(工程S15)。以上の工程により、膜−電極接合体18が作製される。なお、完成した膜−電極接合体18は、巻き取りローラー42に巻き取られ、剥離した転写基材16は巻き取りローラー40に巻き取られる。
【0050】
以上説明した本実施形態の膜−電極接合体製造装置20及び膜−電極接合体の製造方法によれば、固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12をホットプレスする前に張力除去ローラー24で固体高分子電解質膜10及び触媒層担持基材12を予備的に接触させ、その後、予備加熱ヒーター27によって予備加熱をすることにより、固体高分子電解質膜10と触媒層50との接着強度を高めることができる。
特に、予備加熱ヒーター27によって固体高分子電解質膜10の軟化温度以下まで予備加熱し、仮圧着ローラー29によって仮圧着することにより、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12とを皺がない接合部材前駆体13に加工することができる。さらに、接合部材前駆体13を予備加熱ヒーター28によって固体高分子電解質膜10のガラス転移温度以上、熱分解温度以下まで昇温し、熱圧着ローラー30で圧着することで、固体高分子電解質膜10と触媒層50の接着が強い接合部材14を作製することができる。
【0051】
また、触媒層担持基材12を温度調整ヒーター44により温度調整したあとに、接合部材14からの転写基材16の剥離を行うことで、外気等による冷却によって生じる膜−電極接合体18の皺を防ぐことができる。
特に、触媒層担持基材12を温度調整ヒーター44により熱圧着ローラー30から20度低く温度調整した後に、接合部材14からの転写基材16の剥離を行うことで、外気等による冷却によって生じる膜電極接合体18の皺を防ぐことができる。
【0052】
また、剥離ローラー36を30mm以下の直径とすると共に、転写基材16と膜−電極接合体18とを略180度の角度を持つようにすることで、転写基材16の剥離性を向上させることができ、良好な形状の膜−電極接合体18を製造することができる。
【0053】
本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、触媒層担持基材12と固体高分子電解質膜10を張力除去ローラー24によって接触させ、予備加熱するが、この予備加熱は、触媒層担持基材12と固体高分子電解質膜10をそれぞれ別個に行われてもよい。ただし、本実施形態では、図1、2のように、触媒層担持基材12と固体高分子電解質膜10とが接触した状態で予備加熱されることが好ましい。なお、図1、2では、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12とを接触させた状態で、両面から予備加熱を行っているが、固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12とを接触させた状態で、一方の面のみから予備加熱を行ってもよい。
【0054】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、予備加熱ヒーター27の設定温度は、固体高分子電解質膜10や触媒層担持基材12の材料によって定まるものであるから、場合によっては、上述の60度以上120度以下の範囲内で設定された温度に限られず、固体高分子電解質膜10や触媒層担持基材12の材料に適応する温度を適宜設定すればよい。但し、予備加熱ヒーター27の設定温度は、固体高分子電解質膜10の軟化温度以下であることがより好ましい。
【0055】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、予備加熱ヒーター28の設定温度は、固体高分子電解質膜10や触媒層担持基材12の材料によって定まるものであるから、場合によっては、上述の80度以上140度以下の範囲内で設定された温度に限られず、固体高分子電解質膜10や触媒層担持基材12の材料に適応する温度を適宜設定すればよい。但し、予備加熱ヒーター28の設定温度は、固体高分子電解質膜10のガラス転移温度以上熱分解温度以下であることがより好ましい。
【0056】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、仮圧着ローラー29の表面温度又は圧力は、固体高分子電解質膜10や触媒層担持基材12の材料によって定まるものであるから、場合によっては、上述の60度以上120度以下の範囲内で設定された温度又は10MPa以上100MPa以下の範囲内で設定された圧力に限られず、固体高分子電解質膜10や触媒層担持基材12の材料に適応する温度又は圧力を適宜設定すればよい。但し、仮圧着ローラー29の表面温度は、固体高分子電解質膜10の軟化温度近傍であることがより好ましい。
【0057】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、熱圧着ローラー30の表面温度又は圧力は、固体高分子電解質膜10や触媒層担持基材12の材料によって定まるものであるから、場合によっては、上述の80度以上140度以下の範囲内で設定された温度又は10MPa以上100MPa以下の範囲内で設定された圧力に限られず、固体高分子電解質膜10や触媒層担持基材12の材料に適応する温度又は圧力を適宜設定すればよい。但し、熱圧着ローラー30の表面温度は、固体高分子電解質膜10のガラス転移温度近傍であることがより好ましい。
【0058】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、温度調整ヒーター44により接合部材14を温度調整するものとしたが、熱圧着ローラー30と剥離ローラー36との搬送時間を短くすることで、接合部材14の温度を高いまま保つものとしてもよい。また、図1、2では、接合部材14の両面から温度調整を行っているが、一方の面のみから温度調整を行ってもよい。
【0059】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、剥離ローラー36を直径30mm以下としたが、触媒層50と転写基材16との接着強度と触媒層と固体高分子電解質膜10との接着強度との大小によっては、直径30mmより大きなものを用いるものとしてもよい。
【0060】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、剥離ローラー36により剥離される転写基材16と膜−電極接合体18とが略180度の角度を持つように調節してもよいが、転写基材16の剥離性を考慮して、180度以外の角度となるように調節してもよい。
【0061】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、接合部材14の温度が、温度調整ヒーター44によって調整されていたが、剥離ローラー36の内部にヒーターを取り付け、温度調整を行うと同時に剥離を行うようにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態である膜−電極接合体製造装置20は、少なくとも、触媒層担持基材12と固体高分子電解質膜10とを予備加熱する予備加熱手段(例えば、予備加熱ヒーター27がこれに相当する。)と、接合部材14を形成する熱圧着手段(例えば、熱圧着ローラー30がこれに相当する。)と、接合部材14から転写基材16を剥離する剥離手段(例えば、剥離ローラー36がこれに相当する。)とを備えていればよい。
さらに、本発明の効果をより発現させるために、これらの構成に、接合部材14を温度調整する温度調整手段(例えば、温度調整ヒーター44がこれに相当する。)、接合部材前駆体13を形成する第1の熱圧着手段(例えば、仮圧着ローラー29がこれに相当する。)、接合部材前駆体13を予備加熱する第2の予備加熱手段(例えば、予備加熱ヒーター28がこれに相当する。)などを単独又は複数組み合わせて追加してもよい。
【0063】
(変形例)
本実施形態である膜−電極接合体製造装置20では、固体高分子電解質膜10の一方の面に触媒層50を接合してなる膜−電極接合体18を製造するものとしたが、固体高分子電解質膜10の両面に触媒層50を接合してなる膜−電極接合体18Bを製造するものとしてもよい。
図6、7は、それぞれ第一の実施形態、第二の実施形態の膜−電極接合体製造装置20の変形例である膜−電極接合体製造装置20Bを説明するための概略図である。膜−電極接合体製造装置20Bは、図示するように、巻き出しローラー22から巻き出された固体高分子電解質膜10と二つの巻き出しローラー26A、26Bから巻き出され2枚の触媒層担持基材12A、12Bは張力除去ローラー24により接触させ、かつ張力を除去する。
【0064】
次に、接触させた固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12A、12Bは、予備加熱ヒーター27により予備加熱され、ヒーター31及び加圧装置32を有する熱圧着ローラー30により熱圧着される。
【0065】
または、接触させた固体高分子電解質膜10と触媒層担持基材12A、12Bは、予備加熱ヒーター27によって軟化温度以下まで予備加熱され、ヒーター31D及び加圧装置32Dを有する仮圧着ローラー29によって仮圧着され、接合部材前駆体13Bとなる。その後、接合部材前駆体13Bは、予備加熱ヒーター28によって固体高分子電解質膜10のガラス転移温度以上熱分解温度以下にまで昇温される。昇温された接合部材前駆体13Bは、ヒータ31C及び加圧装置32Cを有する熱圧着ローラー30により熱圧着される。
【0066】
熱圧着により接合された接合部材14Bは、温度調整ヒーター44によって熱圧着ローラー30の温度から20度低く調整される。その後、転写基材16A,16Bが、二つの剥離ローラー36A,36Bと、二つの剥離角度設定ローラー38A,38Bにより、接合部材14Bから剥離されて、固体高分子電解質膜10の両面に触媒が接合された膜−電極接合体18Bが作製される。なお、膜−電極接合体18Bは、巻き取りローラー40に巻き取られ、2枚の転写基材16A、16Bは、それぞれ巻き取りローラー42A,42Bに巻き取られる。
【0067】
以上説明した変形例の膜−電極接合体製造装置20Bによれば、固体高分子電解質膜10の両面に触媒層50が良好な形状で接合された膜−電極接合体18Bを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、優れた品質の膜−電極接合体(MEA)を効率的に製造することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 固体高分子電解質膜
12,12A,12B 触媒層担持基材
13,13B 接合部材前駆体
14,14B 接合部材
16,16A,16B 転写基材
18,18B 膜−電極接合体
20,20,20B 膜−電極接合体製造装置
22 巻き出しローラー
24 張力除去ローラー
26,26A,26B 巻き出しローラー
27,28 予備加熱ヒーター
29 仮圧着ローラー
30 熱圧着ローラー
31,31B、31C,31D ヒーター
32,32B,32C,32D 加圧装置
36,36A,36B 剥離ローラー
38,38A,38B 剥離角度設定ローラー
40 巻き取りローラー
42,42A,42B 巻き取りローラー
44 温度調整ヒーター
50 触媒層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7