特許第5751326号(P5751326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751326
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】共鳴型非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20150702BHJP
   H02J 17/00 20060101ALI20150702BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20150702BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20150702BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   H02J7/00 301D
   H02J17/00 B
   H02J7/00 P
   B60L11/18 C
   B60M7/00 X
   B60K1/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-520475(P2013-520475)
(86)(22)【出願日】2012年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2012062179
(87)【国際公開番号】WO2012172899
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2013年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2011-135390(P2011-135390)
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-174155(P2011-174155)
(32)【優先日】2011年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−041558(JP,A)
【文献】 特開2005−184526(JP,A)
【文献】 特開2010−114964(JP,A)
【文献】 特開2010−233442(JP,A)
【文献】 大手昌也、居村岳広、岡部浩之、加藤昌樹、内田利之、堀洋一,「電磁界共振結合を用いた非接触電力伝送システムにおける電力反射による電力伝送効率への影響の考察」,電気学会研究会資料. IIC / 電気学会産業計測制御研究会 [編],電気学会,2010年 3月 8日,2010(15),p.35-39,URL,http://www.hori.k.u-tokyo.ac.jp/hori_lab/paper_2010/papers/ote/iic2009ote.pdf
【文献】 居村岳広、岡部浩之、内田利之、堀洋一,等価回路から見た非接触電力伝送の磁界結合と電界結合に関する研究,IEEJ Transactions on Industry Applications,日本,the Institute of Electrical Engineers of Japan,2010年 1月,電学論D、130巻1号,p.84-88,URL,http://hori.k.u-tokyo.ac.jp/paper_2010/papers/imura/equivalent.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K1/04,
B60L11/18,
B60M7/00,
H02J7/00−7/12,
H02J7/34−7/36,
H02J17/00,
H04B5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、前記電源部から電力の供給を受ける一次側共鳴コイルとを備えた給電設備と、
前記一次側共鳴コイルからの電力を磁場共鳴して受電する二次側共鳴コイルと、前記二次側共鳴コイルが受電した電力が供給される負荷とを備えた受電設備とを備え、
少なくとも前記一次側共鳴コイル、前記二次側共鳴コイル及び前記負荷により共鳴系を構成する共鳴型非接触給電システムであって、
前記電源部は出力周波数を変更可能に構成されており、
前記共鳴系に入力される電力の周波数がf,f,f,f・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)である場合の前記共鳴系の入力インピーダンスをZ,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nとすると、
前記共鳴系は、Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nの条件を満たす前記周波数f,f,f,f・・・,f2n−1,f2nが存在し、且つ、前記共鳴系の入力インピーダンスが同一となる両周波数の間に前記共鳴系における電力伝送効率が最大となる周波数が存在する特性を有し、
前記負荷は、整流器とバッテリとを有し、
,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nの実部成分をR,R,R,・・・,R2n−1,R2nとし、Z,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nの虚部成分をX,X,X,・・・,X2n−1,X2nとすると、
=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nとは、R=R且つX=X≠0,R=R且つX=X≠0,・・・,R2n−1=R2n且つX2n−1=X2n≠0であり、
前記共鳴型非接触給電システムは、
前記共鳴系の入力インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、
前記電源部の出力周波数fが周波数f≦f≦周波数f,周波数f≦f≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦f≦f2nの範囲のいずれかに存在するように前記電源部の出力周波数を変更した後、前記受電設備へ正式送電を行うように制御する制御手段とを有する共鳴型非接触給電システム。
【請求項2】
前記給電設備及び前記受電設備の少なくとも一方には、前記電源部から供給を受けた電力を電磁誘導により前記一次側共鳴コイルに供給する誘導コイルあるいは前記二次側共鳴コイルにより受電された電力を電磁誘導により取り出す誘導コイルが設けられ、少なくとも前記誘導コイル、前記一次側共鳴コイル、前記二次側共鳴コイル及び前記負荷により共鳴系が構成されている請求項1に記載の共鳴型非接触給電システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記給電設備の正式送電に先立って、前記周波数f,f,f,・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)を求め、その結果に基づいて前記電源部の出力周波数fを周波数f≦f≦周波数f,周波数f≦f≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦f≦周波数f2nの範囲のどの範囲に存在させるか選択して前記電源部の出力周波数を変更した後、正式送電を開始し、その後、所定周期で前記インピーダンス測定手段の測定結果に基づいて前記出力周波数fが前記選択された範囲を逸脱したか否かを判断し、逸脱した場合は周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’(f1’<f2’<f3’<・・・<f2n−1’<f2n’)を求め、その結果に基づいて前記電源部の出力周波数fを周波数f1’≦f≦周波数f2’,周波数f3’≦f≦周波数f4’,・・・,周波数f2n−1’≦f≦f2n’の範囲のどの範囲に存在させるか選択して前記電源部の出力周波数を変更した後、正式送電を行うように制御し、
前記周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’は、前記共鳴系に前記周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’の電力が入力された場合における前記共鳴系の入力インピーダンスをZ1’,Z2’,Z3’,・・・,Z2n−1’,Z2n’としたとき、Z1’=Z2’,Z3’=Z4’,・・・,Z2n−1’=Z2n’となる周波数であり、
1’,Z2’,Z3’,・・・,Z2n−1’,Z2n’の実部成分をR1’,R2’,R3’,・・・,R2n−1’,R2n’とし、Z1’,Z2’,Z3’,・・・,Z2n−1’,Z2n’の虚部成分をX1’,X2’,X3’,・・・,X2n−1’,X2n’とすると、
1’=Z2’,Z3’=Z4’,・・・,Z2n−1’=Z2n’とは、R1’=R2’且つX1’=X2’≠0,R3’=R4’且つX3’=X4’≠0,・・・,R2n−1’=R2n’且つX2n−1’=X2n’≠0である請求項1又は請求項2に記載の共鳴型非接触給電システム。
【請求項4】
前記受電設備は車両に装備されている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の共鳴型非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴型非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁場共鳴を利用して電力を伝送することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ところが、特許文献1には磁場共鳴を行う共鳴系の共鳴周波数の具体的な特定方法が示されていない。そのため、効率良く電力を伝送する共鳴型非接触給電システムを設計、製造することが難しかった。そこで、設計、製造が容易な非接触電力伝送装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の非接触電力伝送装置は、共鳴系の入力インピーダンスと周波数との関係をグラフにした場合の、前記入力インピーダンスが極大となる周波数と、前記入力インピーダンスが極大となる周波数よりも高くかつ入力インピーダンスが極小となる周波数との間に交流電源の周波数が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/008646号
【特許文献2】特開2010−114964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の装置は受電側の負荷変動に関しては考慮されていない。しかし、磁場共鳴により電力伝送を行う場合は、負荷の変化により共鳴系の共鳴周波数が変化するため、負荷の変化による共鳴系の共鳴周波数の変化に対応する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、設計、製造が容易で、負荷が変動しても効率よく電源部から電力を負荷に供給することができる共鳴型非接触給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明の一態様は、電源部と、前記電源部から電力の供給を受ける一次側共鳴コイルとを備えた給電設備と、前記一次側共鳴コイルからの電力を磁場共鳴して受電する二次側共鳴コイルと、前記二次側共鳴コイルが受電した電力が供給される負荷とを備えた受電設備とを備え、少なくとも前記一次側共鳴コイル、前記二次側共鳴コイル及び前記負荷により共鳴系を構成する共鳴型非接触給電システムである。そして、前記電源部は出力周波数を変更可能に構成されており、前記共鳴系に入力される電力の周波数がf,f,f,f・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)である場合の前記共鳴系の入力インピーダンスをZ,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nとすると、前記共鳴系は、Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nの条件を満たす前記周波数f,f,f,f・・・,f2n−1,f2nが存在し、且つ、前記共鳴系の入力インピーダンスが同一となる両周波数の間に前記共鳴系における電力伝送効率が最大となる周波数が存在する特性を有し、前記負荷は、整流器とバッテリとを有し、Z,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nの実部成分をR,R,R,・・・,R2n−1,R2nとし、Z,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nの虚部成分をX,X,X,・・・,X2n−1,X2nとすると、Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nとは、R=R且つX=X≠0,R=R且つX=X≠0,・・・,R2n−1=R2n且つX2n−1=X2n≠0であり、共鳴型非接触給電システムは、前記共鳴系の入力インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段(インピーダンス測定部)と、前記電源部の出力周波数fが周波数f≦f≦周波数f,周波数f≦f≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦f≦f2nの範囲のいずれかに存在するように前記電源部の出力周波数を変更した後、前記受電設備へ正式送電を行うように制御する制御手段(制御部)とを有する。ここで、「正式送電」とは、電源部の出力周波数fを前記条件を満足する状態で、受電設備へ電力を伝送することを意味し、前記条件を満足する出力周波数fの範囲を設定するまでの準備段階における受電設備への電力の伝送は含まない。
【0007】
この態様の共鳴型非接触給電システムは、共鳴系に異なる周波数f,f,f,・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)の電力が入力された場合における共鳴系の入力インピーダンスをZ,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nとすると、「Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nとなる周波数が存在し、共鳴系の共鳴周波数fo1,fo2,fo3,・・・,fo2n−1,fo2nは、周波数f≦fo1≦周波数f,周波数f≦fo2≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦fon≦周波数f2nの範囲に存在する。」という、本願発明者が見出した知見(特性)に基づいてなされた。ここで、「共鳴周波数」とは、共鳴系における電力伝送効率が最大になる周波数を意味する。
【0008】
この態様では、電源部の出力周波数が共鳴周波数又は共鳴周波数から予め設定された値だけずれた範囲内で電力伝送を行うため、電源部の出力周波数をf,f,f,・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)と変更した場合における共鳴系の入力インピーダンスZ,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nがインピーダンス測定手段により測定される。制御手段は、Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nとなる周波数を求め、その結果に基づいて電源部の出力周波数fが、周波数f≦f≦周波数f,周波数f≦f≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦f≦周波数f2nの範囲のいずれかに存在するように電源部の出力周波数を変更した後、その出力周波数で給電設備が受電設備に対して正式送電を行うように制御する。電源部の出力周波数fが前記範囲のいずれかに存在すれば、前記の本願発明者が見出した特性を有する共鳴系であれば、その出力周波数fは共鳴系の共鳴周波数に等しいか又は共鳴周波数からのずれが小さな周波数になる。したがって、受電設備における整流器及びバッテリを有する負荷が変動しても効率よく電源部から電力を負荷に供給することができる。また、共鳴型非接触給電システムの設計、製造も容易となる。
【0009】
本発明の一態様において、前記給電設備及び前記受電設備の少なくとも一方には、前記電源部から供給を受けた電力を電磁誘導により前記一次側共鳴コイルに供給する誘導コイルあるいは前記二次側共鳴コイルにより受電された電力を電磁誘導により取り出す誘導コイルが設けられ、少なくとも前記誘導コイル、前記一次側共鳴コイル、前記二次側共鳴コイル及び前記負荷により共鳴系が構成されている。
【0010】
共鳴型非接触給電システムが、給電設備と受電設備との間で非接触給電を行うためには、少なくとも一次側共鳴コイル及び二次側共鳴コイルの二つの共鳴コイルが存在すればよい。しかし、電源部から供給を受けた電力を電磁誘導により一次側共鳴コイルに供給する誘導コイル及び二次側共鳴コイルにより受電された電力を電磁誘導により取り出す誘導コイルのうちの少なくとも一方の誘導コイルが設けられている方が、整合状態に調整することが容易になる。また、一次側共鳴コイル、二次側共鳴コイル及び二つの誘導コイルの全てを備えた構成の方が、整合状態に調整することがより容易になる。
【0011】
本発明の一態様において、前記制御手段は、前記給電設備の正式送電に先立って、前記周波数をf,f,f,・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)を求め、その結果に基づいて前記電源部の出力周波数fを周波数f≦f≦周波数f,周波数f≦f≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦f≦周波数f2nの範囲のどの範囲に存在させるか選択して前記電源部の出力周波数を変更した後、正式送電を開始する。その後、所定周期で前記インピーダンス測定手段の測定結果に基づいて前記出力周波数fが前記選択された範囲を逸脱したか否かを判断し、逸脱した場合は周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’(f1’<f2’<f3’<・・・<f2n−1’<f2n’)を求め、その結果に基づいて前記電源部の出力周波数fを周波数f1’≦f≦周波数f2’,周波数f3’≦f≦周波数f4’,・・・,周波数f2n−1’≦f≦f2n’の範囲のどの範囲に存在させるか選択して前記電源部の出力周波数を変更した後、正式送電を行うように制御する。前記周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’は、前記共鳴系に前記周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’の電力が入力された場合における前記共鳴系の入力インピーダンスをZ1’,Z2’,Z3’,・・・,Z2n−1’,Z2n’としたとき、Z1’=Z2’,Z3’=Z4’,・・・,Z2n−1’=Z2n’となる周波数であり、Z1’,Z2’,Z3’,・・・,Z2n−1’,Z2n’の実部成分をR1’,R2’,R3’,・・・,R2n−1’,R2n’とし、Z1’,Z2’,Z3’,・・・,Z2n−1’,Z2n’の虚部成分をX1’,X2’,X3’,・・・,X2n−1’,X2n’とすると、Z1’=Z2’,Z3’=Z4’,・・・,Z2n−1’=Z2n’とは、R1’=R2’且つX1’=X2’≠0,R3’=R4’且つX3’=X4’≠0,・・・,R2n−1’=R2n’且つX2n−1’=X2n’≠0である
【0012】
共鳴系の共鳴周波数が一定であれば、一度電源部の出力周波数を共鳴系の共鳴周波数に設定することにより効率良く電力伝送が行われる。しかし、受電設備が受電中に負荷変動を伴う場合、負荷の変動に対応して共鳴周波数が変化するため、電源部の出力周波数が一定では、出力周波数が共鳴周波数からずれてしまい、電力伝送効率が低下する。しかし、この発明では、充電時における負荷の変動により共鳴系の共鳴周波数が変動しても、上記特性を有する共鳴系においては、電源部の出力周波数fが、電力伝送が効率良く行われる範囲内に共鳴周波数の変動に合わせて変更される。したがって、負荷変動が大きな場合でも、電力伝送が効率良く行われる。
【0013】
本発明の一態様において、前記受電設備は車両に装備されている。受電設備が車両に搭載されている場合は、車が充電のために停止した際の停止状態によって共鳴系の共鳴周波数が変化する。しかし、この発明では、共鳴系の共鳴周波数が変化しても、電源部の出力周波数fが制御手段により変更されるため、電力伝送が効率良く行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設計、製造が容易で、負荷が変動しても効率よく電源部から電力を負荷に供給することができる共鳴型非接触給電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態の共鳴型非接触充電システムの構成図。
図2図1のシステムを一部省略して示す回路図。
図3】異なる周波数で電力を供給した場合の入力インピーダンスの実部と虚部との関係を示すグラフ。
図4】高周波電源の出力周波数と電力伝送効率の関係を示すグラフ。
図5】第2の実施形態の共鳴型非接触充電システムを一部省略して示す回路図。
図6】異なる周波数で電力を供給した場合の入力インピーダンスの実部と虚部との関係を示すグラフ。
図7】高周波電源の出力周波数と電力伝送効率の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を車載バッテリを充電するための共鳴型非接触充電システムに具体化した第1の実施形態を図1図4にしたがって説明する。
【0017】
図1に示すように、共鳴型非接触給電システムとしての共鳴型非接触充電システムは、地上側に設けられる給電設備10と、移動体としての車両に搭載された受電設備30とで構成されている。
【0018】
給電設備10は、電源部としての高周波電源11と、高周波電源11の出力部に接続された整合器12と、一次側コイル13と、インピーダンス測定手段(インピーダンス測定部)14と、電源側コントローラ15とを備えている。インピーダンス測定手段14として電力測定器と位相測定器が使用されている。
【0019】
受電設備は、二次側コイル31と、整流器32と、充電器33と、充電器33に接続されたバッテリ(二次電池)34と、車両側コントローラ35とを備えている。整流器32、充電器33及びバッテリ34は負荷を構成する。
【0020】
整合器12、一次側コイル13、二次側コイル31及び負荷(整流器32、充電器33、及びバッテリ34)により共鳴系が構成される。共鳴系の共鳴周波数はバッテリ34に供給される電力の電力値によって変化する。車両側コントローラ35は、バッテリ34に供給される電力の電力値を検出する図示しない検出手段(検出部、即ち電力検出手段又は電力検出部)からの検出信号が入力されて、バッテリ34に供給される電力の電力値を確認可能になっている。また、電源側コントローラ15と、車両側コントローラ35とは図示しない無線通信装置を介して通信可能になっており、電源側コントローラ15は充電状態の情報を車両側コントローラ35から入手する。
【0021】
図2に示すように、一次側コイル13は、誘導コイルとしての一次コイル13aと、一次側共鳴コイル13bとで構成されている。一次コイル13aは、整合器12を介して高周波電源11に接続されている。一次コイル13aと一次側共鳴コイル13bとは同軸上に位置するように配設され、一次側共鳴コイル13bにはコンデンサCが接続されている。一次コイル13aは、一次側共鳴コイル13bに電磁誘導で結合され、高周波電源11から一次コイル13aに供給された交流電力が電磁誘導で一次側共鳴コイル13bに供給される。インピーダンス測定手段14は一次側コイル13の一次コイル13aに接続され、その検出信号が電源側コントローラ15に出力される。
【0022】
二次側コイル31は、誘導コイルとしての二次コイル31aと二次側共鳴コイル31bとで構成されている。二次コイル31aと二次側共鳴コイル31bとは同軸上に位置するように配設され、二次側共鳴コイル31bにはコンデンサCが接続されている。二次コイル31aは、二次側共鳴コイル31bに電磁誘導で結合され、共鳴により一次側共鳴コイル13bから二次側共鳴コイル31bに供給された交流電力が電磁誘導で二次コイル31aに供給される。二次コイル31aは、整流器32に接続されている。この実施形態では、一次側共鳴コイル13b及び二次側共鳴コイル31bは同じに形成され、各コンデンサCとして同じ容量値のコンデンサが使用されている。
【0023】
図2に示すように、整合器12は、2つの可変コンデンサ16,17とインダクタ18とから構成されている。一方の可変コンデンサ16は高周波電源11に接続され、他方の可変コンデンサ17は一次コイル13aに並列に接続されている。インダクタ18は両可変コンデンサ16,17間に接続されている。整合器12は、可変コンデンサ16,17の容量が変更されることでそのインピーダンスが変更される。整合器12は電源側コントローラ15により制御される。
【0024】
高周波電源11は出力周波数を変更可能に構成され、電源側コントローラ15からの指令信号により指示された出力周波数の交流電力を出力するようになっている。インピーダンス測定手段14は一次側コイル13の一次コイル13aに接続され、共鳴系の入力インピーダンスを測定する。インピーダンス測定手段14の検出信号は電源側コントローラ15に出力されるようになっている。
【0025】
メモリ20には、高周波電源11の出力周波数を共鳴系の共鳴周波数又は共鳴周波数から予め設定された値だけずれた範囲内に設定するための制御プログラムが記憶されている。CPU19は、インピーダンス測定手段14の検出信号に基づいて共鳴系の共鳴周波数の存在範囲を演算し、高周波電源11の出力周波数を設定する。詳述すると、高周波電源11の出力周波数をf,f,f,・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)と変更した場合における共鳴系の入力インピーダンスZ,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nを、インピーダンス測定手段14の検出信号を入力して読み込み、Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nとなる周波数を求める。CPU19は、その結果に基づいて高周波電源11の出力周波数fを、共鳴周波数fo1,fo2,fo3,・・・,fonが満足する条件であるf≦fo1≦f,f≦fo2≦f,・・・,f2n−1≦fon≦f2nの範囲のいずれかに存在するように設定する。即ち、CPU19は、高周波電源11の出力周波数fが周波数f≦f≦周波数f,周波数f≦f≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦f≦f2nの範囲のいずれかに存在するように高周波電源11の出力周波数を変更した後、給電設備10が受電設備30に対して正式送電を行うように制御する。
【0026】
上記の出力周波数fの設定方法は、本願発明者が見出した次の知見に基づいている。共鳴型非接触給電システムは、高周波電源11から共鳴系に異なる周波数f,f,f,・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)の電力を供給した時における共鳴系の入力インピーダンスをZ,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nとすると、「Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nとなる周波数が存在する。また、共鳴系の共鳴周波数fo1,fo2,fo3,・・・,fonは、周波数f≦f1≦周波数f,周波数f≦fo2≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦fon≦周波数f2nの範囲に存在する。」なお、インピーダンスをZ=R+jXiとすると、Z=Zとは、R=RかつX=Xである。
【0027】
次に上記の知見の裏付けについて説明する。
【0028】
出力インピーダンスが50Ωで固定されている一般の高周波電源を使用して、出力周波数を9.50MHz〜11.00MHzの範囲で変更して共鳴系の入力インピーダンスを測定した場合の入力インピーダンスの実部と虚部との関係を図3に示す。出力周波数は、9.50MHzから0.025MHzずつ増加するように変更して行った。なお、図3において、Psで示す点が出力周波数9.50MHzに対応する点で、Peで示す点が出力周波数11.00MHzに対応する点である。
【0029】
図3に示すように、共鳴系の入力インピーダンスは高周波電源の出力周波数の増加に対応して単純に変化するのではなく、周波数が9.50MHz〜10.10MHzでは周波数の増加に伴って入力インピーダンスの実部及び虚部とも増加し、その後、周波数10.18MHzまでは周波数の増加に伴って入力インピーダンスの実部は増加し、虚部は減少した。また、周波数のさらなる増加に伴って入力インピーダンスの実部及び虚部とも減少する状態、実部は減少して虚部は増加する状態、実部及び虚部とも増加する状態、実部は増加して虚部は減少する状態、実部及び虚部とも減少する状態、実部は減少して虚部は増加する状態となるように変化した。
【0030】
図3において、fで示す点の入力インピーダンスZと、fで示す点の入力インピーダンスZがほぼ等しい。
【0031】
=10.325MHz、Z=46.7+j4.69
=10.925MHz、Z=51.6+j4.85
実験ではデータを細かく採っていないため、厳密にはZ=Zとなっていないが、高周波電源の出力周波数の増加量を0.025MHzより小さな間隔でデータを採れば、図3に示す曲線の交点に対応する周波数のうち小さい方の周波数がfになり、大きい方の周波数がfになり、fとfでZ=Zになると考えられる。
【0032】
高周波電源の出力周波数を9.5MHz〜11.0MHzの範囲で変化させて各周波数における電力伝送効率を測定した結果を図4に示す。図4から共鳴系における電力伝送効率が最大(95.05%)になる周波数10.575MHzが共鳴系の共鳴周波数fo1になる。この共鳴周波数fo1(10.575MHz)は、f(10.325MHz)とf(10.925MHz)との間の値になり、f≦fo1≦fの関係を満たす。
【0033】
電力伝送効率が最大になる周波数がfとfとの間以外に存在しないことを確認するため、高周波電源の出力周波数を9.5MHz〜11.0MHzの範囲で変化させて各周波数における電力伝送効率を測定したが、電力伝送効率が最大になる周波数はfとfとの間に存在することが確認された。
【0034】
次に前記のように構成された共鳴型非接触充電システムの作用を説明する。
【0035】
車両に搭載されたバッテリ34に充電を行う場合には、車両が給電設備10の近くの所定位置に停止した状態でバッテリ34への充電が行われる。車両側コントローラ35は、電源側コントローラ15に充電要求信号を送信する。また、車両側コントローラ35は、バッテリ34の充電状態(SOC)を確認し、その情報を電源側コントローラ15に送信する。
【0036】
電源側コントローラ15(CPU19)は、充電要求信号を確認すると、整合器12で整合を行う。次にCPU19は、給電設備10の正式送電に先立って、高周波電源11の出力周波数の設定を次のようにして行う。なお、「正式送電」とは、高周波電源11の出力周波数fが前記のように設定されたf≦fo1≦fの関係を満たす周波数f,f2に対して、f≦f≦fの関係を満たす状態で受電設備30に電力を伝送することを意味する。
【0037】
CPU19は、先ず、高周波電源11の出力周波数をf,f,f,・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)と変更した場合における共鳴系の入力インピーダンスZ,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nを、インピーダンス測定手段14の検出信号を入力して読み込み、Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nとなる周波数を求める。CPU19は、その結果に基づいて高周波電源11の出力周波数foを、共鳴周波数fo1,fo2,fo3,・・・,fonが満足する条件であるf≦fo1≦f,f≦fo2≦f,・・・,f2n−1≦fon≦f2nの範囲のいずれかに存在するように設定する。CPU19は、高周波電源11の出力周波数fを前記設定された範囲内の周波数、例えば、f≦f≦fとなるように変更した後、正式送電を開始する。
【0038】
そして、高周波電源11から一次コイル13aに設定された周波数で高周波電力が出力され、電磁誘導により電力が供給された一次コイル13aに磁場が発生する。この磁場が一次側共鳴コイル13bと二次側共鳴コイル31bとによる磁場共鳴により増強される。増強された二次側共鳴コイル31b付近の磁場から二次コイル31aにより電磁誘導を利用して交流電力が取り出され、整流器32で整流された後、充電器33によりバッテリ34に充電される。
【0039】
CPU19は、所定周期でインピーダンス測定手段14の検出信号を入力し、測定結果に基づいて出力周波数fが先に選択された範囲を逸脱したか否か、即ち出力周波数fがf≦f≦fを満たすか否かを判断する。CPU19は、出力周波数foが先に選択された範囲を逸脱した場合は、周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’(f1’<f2’<f3’<・・・<f2n−1’<f2n’)を求める。そして、その結果に基づいて高周波電源11の出力周波数fを周波数f1’≦f≦周波数f2’,周波数f3’≦f≦周波数f4’,・・・,周波数f2n−1’≦f≦f2n’の範囲のどの範囲に存在させるか選択して高周波電源11の出力周波数を変更した後、正式送電を行うように制御する。周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’は、共鳴系に周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’の電力を供給した時における共鳴系の入力インピーダンスをZ1’,Z2’,Z3’,・・・,Z2n−1’,Z2n’としたとき、Z1’=Z2’,Z3’=Z4’,・・・,Z2n−1’=Z2n’となる周波数である。
【0040】
車両側コントローラ35は、バッテリ34が満充電になると、充電器33による充電を停止するとともに、電源側コントローラ15に充電終了信号を送信する。また、満充電に達する前であっても、例えば、運転者により充電停止指令が入力されると、充電器33による充電を停止するとともに、電源側コントローラ15に充電終了信号を送信する。電源側コントローラ15は、充電終了信号を受信すると電力伝送(給電)を終了する。
【0041】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0042】
(1)共鳴型非接触充電システムは、電源部(高周波電源11)は出力周波数を変更可能に構成されており、共鳴系の入力インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段14が設けられている。制御手段(制御部、即ちCPU19)は、高周波電源11の出力周波数fが周波数f≦f≦周波数f,周波数f≦f≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦f≦f2nの範囲のいずれかに存在するように高周波電源11の出力周波数fを変更した後、受電設備30へ正式送電を行うように制御する。周波数f,f,f,f・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)は、共鳴系に前記周波数の電力を供給した時における共鳴系の入力インピーダンスをZ,Z,Z,・・・,Z2n−1,Z2nとしたとき、Z=Z,Z=Z,・・・,Z2n−1=Z2nとなる周波数である。したがって、受電設備30の負荷が変動しても効率よく高周波電源11から電力を負荷に供給することができる。また、共鳴型非接触給電システムの設計、製造も容易となる。
【0043】
(2)制御手段(CPU19)は、給電設備10の正式送電に先立って、周波数f,f,f,・・・,f2n−1,f2n(f<f<f<・・・<f2n−1<f2n)を求める。そして、その結果に基づいて高周波電源11の出力周波数fを周波数f≦f≦周波数f,周波数f≦f≦周波数f,・・・,周波数f2n−1≦f≦周波数f2nの範囲のどの範囲に存在させるか選択して高周波電源11の出力周波数を変更した後、正式送電を開始する。その後、制御手段は、所定周期でインピーダンス測定手段14の測定結果に基づいて出力周波数fが前記選択された範囲を逸脱したか否かを判断し、逸脱した場合は周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’(f1’<f2’<f3’<・・・<f2n−1’<f2n’)を求める。そして、その結果に基づいて高周波電源11の出力周波数fを周波数f1’≦f≦周波数f2’,周波数f3’≦f≦周波数f4’,・・・,周波数fn−1’≦f≦f2n’の範囲のどの範囲に存在させるか選択して高周波電源11の出力周波数を変更した後、正式送電を行うように制御する。周波数f1’,f2’,f3’,・・・,f2n−1’,f2n’は、共鳴系に周波数f1’,f2’f3’,・・・,f2n−1’,f2n’の電力を供給した時における共鳴系の入力インピーダンスをZ1’,Z2’,Z3’,・・・,Z2n−1’,Z2n’としたとき、Z1’=Z2’,Z3’=Z4’,・・・,Z2n−1’=Z2n’となる周波数である。
【0044】
受電設備30が受電中に負荷変動を伴う場合、負荷の変動に対応して共鳴周波数が変化するため、高周波電源11の出力周波数が一定では、出力周波数が共鳴周波数からずれてしまい、電力伝送効率が低下する。しかし、この実施形態では、充電時における負荷の変動により共鳴系の共鳴周波数が変動しても、高周波電源11の出力周波数fが、電力伝送が効率良く行われる範囲内に共鳴周波数の変動に合わせて変更される。したがって、負荷変動が大きな場合でも、電力伝送が効率良く行われる。
【0045】
(3)受電設備30は車両に装備され、車両は負荷として整流器32、充電器33及びバッテリ34を備えている。受電設備30が車両に搭載され、負荷としてバッテリ34を備えている場合は、電力伝送中における負荷の変動が大きくなる場合や、車両が受電(充電)のために停止した際の停止状態によって共鳴系の共鳴周波数が変化する。しかし、この実施形態では、共鳴系の共鳴周波数が変化しても、高周波電源11の出力周波数fが制御手段(CPU19)により変更されるため、電力伝送が効率良く行われる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図5図7にしたがって説明する。この実施形態では、共鳴系を構成するコイルの数が給電設備10及び受電設備30とも一つである点が前記第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0047】
図5に示すように、一次側共鳴コイル13bは、整合器12を介して高周波電源11に接続されている。二次側共鳴コイル31bは、整流器32に接続されている。即ち、一次側コイル13は、誘導コイルとしての一次コイル13aを備えずに一次側共鳴コイル13bのみで構成され、二次側コイル31は、誘導コイルとしての二次コイル31aを備えずに二次側共鳴コイル31bのみで構成されている。
【0048】
この実施形態においては、車両に搭載されたバッテリ34に対する充電時には、電源側コントローラ15及び車両側コントローラ35は第1の実施形態と同様の各手順で順次制御を行う。そして、高周波電源11から一次側共鳴コイル13bに共鳴系の共鳴周波数で高周波電力が出力され、その電力が一次側共鳴コイル13bと二次側共鳴コイル31bとによる磁場共鳴により増強され、二次側共鳴コイル31bから出力される交流電力が整流器32で整流された後、充電器33によりバッテリ34に充電される。
【0049】
共鳴型非接触充電システムの共鳴系を構成するコイルの数が一次側及び二次側とも、一次側共鳴コイル13b及び二次側共鳴コイル31bの一つに変更された構成であっても、第1の実施形態と同様に、CPU19が、インピーダンス測定手段14の検出信号に基づいて共鳴系の共鳴周波数の存在範囲を演算可能な裏付けを行った。
【0050】
具体的には、第1の実施形態の場合と同様な実験を行った。但し、高周波電源の出力周波数の範囲が第1の実施形態の場合より低い周波数範囲で行った。出力周波数を50kHz〜200kHzの範囲で変更して共鳴系の入力インピーダンスを測定した場合の入力インピーダンスの実部と虚部との関係を図6に示す。出力周波数は、50kHzから1kHzずつ増加するように変更して行った。なお、図6において、Psで示す点が出力周波数50kHzに対応する点で、Peで示す点が出力周波数200kHzに対応する点である。
【0051】
図6に示すように、共鳴系の入力インピーダンスは高周波電源の出力周波数の増加に対応して単純に変化するのではなく、周波数が50kHz〜114kHzでは周波数の増加に伴って入力インピーダンスの実部及び虚部とも増加し、その後、周波数121kHzまでは周波数の増加に伴って入力インピーダンスの実部は増加し、虚部は減少した。また、周波数のさらなる増加に伴って入力インピーダンスの実部及び虚部とも減少する状態、実部は減少して虚部は増加する状態、実部及び虚部とも増加する状態、実部は増加して虚部は減少する状態、実部及び虚部とも減少する状態、実部は減少して虚部は増加する状態となるように変化した。
【0052】
図6において、fで示す点の入力インピーダンスZと、fで示す点の入力インピーダンスZ2がほぼ等しい。
【0053】
=123kHz、Z=168.57+j2.49
=171kHz、Z=162.0+j4.12
実験ではデータを細かく採っていないため、厳密にはZ=Zとなっていないが、高周波電源の出力周波数の増加量を1kHzより小さな間隔でデータを採れば、図6に示す曲線の交点に対応する周波数のうち小さい方の周波数がfになり、大きい方の周波数がfになり、fとfでZ=Zになると考えられる。
【0054】
高周波電源の出力周波数を50kHz〜200kHzの範囲で変化させて各周波数における電力伝送効率を測定した結果を図7に示す。図7から共鳴系における電力伝送効率が最大(98.80%)になる周波数140kHzが共鳴系の共鳴周波数fになる。この共鳴周波数f(140kHz)は、f(123kHz)とf(171kHz)との間の値になり、f≦f≦fの関係を満たす。
【0055】
電力伝送効率が最大になる周波数がfとfとの間以外に存在しないことを確認するため、高周波電源の出力周波数を50kHz〜200kHzの範囲で変化させて各周波数における電力伝送効率を測定したが、電力伝送効率が最大になる周波数はfとfとの間に存在することが確認された。
【0056】
この第2の実施形態においては、第1の実施形態の効果(1)〜()と基本的に同様の効果を得ることができる他に次の効果を得ることができる。
【0057】
)給電設備10及び受電設備30とも共鳴系を構成するコイルの数が一つのため、共鳴系の小型化を図ることができ、受電設備30を車両に搭載する際の搭載スペースの確保が容易になるとともに搭載位置の自由度が大きくなる。
【0058】
実施形態は前記両実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0059】
○ 共鳴型非接触給電システムが、給電設備10と受電設備30との間で非接触給電を行うためには、一次コイル13a、一次側共鳴コイル13b、二次コイル31a及び二次側共鳴コイル31bの全てが必須ではなく、第2の実施形態のように誘導コイルとしての一次コイル13a及び二次コイル31aの両方を省略してもよい。また、誘導コイルとしての一次コイル13a及び二次コイル31aのいずれか一方を省略してもよい。しかし、一次コイル13a、一次側共鳴コイル13b、二次コイル31a及び二次側共鳴コイル31bの全てを備えた構成の方が、整合状態に調整するのが容易である。
【0060】
○ 受電設備30にも整合器を設けてもよい。例えば、二次コイル31aと整流器32との間に整合器を設け、車両側コントローラ35がその整合器の調整を行うようにしてもよい。第2の実施形態のように、共鳴系に設けられたコイルが一次側共鳴コイル13b及び二次側共鳴コイル31bの2つの場合は、給電設備10及び受電設備30の両方に整合器を設けることが好ましい。
【0061】
○ 整合器12を二次側(受電設備30側)にだけ設けてもよい。また、整合器12を一次側(給電設備10側)及び二次側(受電設備30側)のいずれにも設けない構成としてもよい。
【0062】
○ 整合器12を一次側(給電設備10側)及び二次側(受電設備30側)にそれぞれ複数設けてもよい。
【0063】
○ 整合器12は、2つの可変コンデンサ16,17とインダクタ18を備えた構成に限らず、例えば、インダクタ18として可変インダクタを備えた構成や、可変インダクタと2つの非可変コンデンサとからなる構成としてもよい。
【0064】
○ 整合器はインピーダンス調整可能な構成に限らず、インピーダンスが固定の構成であってもよい。
【0065】
○ 整合器を給電設備10及び受電設備30のいずれにも設けず、共鳴系の入力インピーダンスの変動により共鳴系の共鳴周波数が正式伝送開始時に出力周波数fを設定したときの値から所定量以上ずれた場合に、出力周波数fを変動後の共鳴周波数に対応する値に設定することのみで対応するようにしてもよい。
【0066】
○ 整合器に代えて力率改善回路(PFC回路)を設けてもよい。この場合は、インピーダンス測定手段14に代えて位相差測定手段(位相差測定部)を設ける。
【0067】
○ インピーダンスを測定する位置は図2に示す位置、即ち一次側コイル13の入力インピーダンスを測定する位置に限らない。例えば、整合器12の入力端のインピーダンスを測定してもよい。
【0068】
○ 整流器32は充電器33に内蔵されていてもよい。
【0069】
○ 充電器33を設けずに、二次側コイル31から出力される交流電流を整流器32で整流した後、バッテリ34に直接充電するようにしてもよい。
【0070】
○ 電源部は高周波電源11に限らず、交流を出力する構成であればよく、例えば、商用電源から供給される交流電力の周波数を変換して出力するものであってもよい。
【0071】
○ 移動体としての車両は運転者を必要とする車両に限らず無人搬送車でもよい。
【0072】
○ 共鳴型非接触充電システムは、車両に搭載されたバッテリ34に対して非接触充電を行うシステムに限らない。例えば、船舶や自走式のロボット等の移動体に装備されたバッテリ、あるいは携帯電話機や携帯用パソコン等の携帯用の電子機器に装備されたバッテリに対して非接触充電を行うシステムであってもよい。
【0073】
○ 共鳴型非接触給電システムは共鳴型非接触充電システムに限らず、ロボット等の移動体に装備された電気機器に対して電力を供給する装置に適用してもよい。
【0074】
○ 共鳴型非接触給電システムは、動力源としては非接触電力伝送を受けずに通常の電力で駆動されるコンベア等の移送手段(移送部)により定められた作業位置に移動され、かつ定電力で駆動されるモータを負荷として備えた装置に受電設備30を装備した構成としてもよい。
【0075】
○ 一次コイル13a及び二次コイル31aの径は、一次側共鳴コイル13b及び二次側共鳴コイル31bの径と同じに形成されている構成に限らず、小さくても大きくてもよい。
【0076】
○ 第2の実施形態において、一次側共鳴コイル13b及び二次側共鳴コイル31bは巻き数が複数のコイルに限らず、巻き数数が1巻きのコイルを使用してもよい。
【0077】
○ 一次側共鳴コイル13b及び二次側共鳴コイル31bに接続されたコンデンサCを省略してもよい。しかし、コンデンサCを接続した構成の方が、コンデンサCを省略した場合に比べて、共鳴周波数を下げることができる。また、共鳴周波数が同じであれば、コンデンサCを省略した場合に比べて、一次側共鳴コイル13b及び二次側共鳴コイル31bの小型化が可能になる。
【0078】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0079】
(1)請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記給電設備は前記電に整合器が接続されている。
【0080】
(2)請求項1〜請求項4及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、前記電源部の出力周波数は電波法で使用が許容されている条件を満たす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7