(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記演算部は、同一のワークを繰り返し計測したときの特性値の標準偏差をEV、同一条件にて計測された複数のワークの特性値の標準偏差をPVとしたとき、上記特性値取得部が取得した複数の特性値から、以下の式
PV’2=PV2+EV2
を満たすPV’を上記第1標準偏差として算出するとともに、上記第2標準偏差であるTVを算出し、TV/PV’またはPV’/TVを上記第1値として算出することを特徴とする請求項1または2に記載の管理装置。
上記演算部は、(1)同一のワークを繰り返し計測したときの特性値の標準偏差をEV、同一条件にて計測された複数のワークの特性値の標準偏差をPVとしたとき、上記特性値取得部が取得した複数の特性値から、以下の式
PV’2=PV2+EV2
を満たすPV’を算出するとともに、上記特性値取得部が取得した複数の特性値の標準偏差TVを算出し、(2)上記規格範囲に基づいて、標準偏差がTVのときの不良率と標準偏差がPV’のときの不良率との差である改善不良率を上記第2値として算出することを特徴とする請求項3に記載の管理装置。
上記演算部は、標準偏差がTVの正規分布において規格範囲外となる確率を標準偏差がTVのときの不良率として算出し、標準偏差がPV’の正規分布において規格範囲外となる確率を標準偏差がPV’のときの不良率として算出することを特徴とする請求項7に記載の管理装置。
上記演算部は、上記パラメータの他に、上記特性値取得部が取得した複数の特性値の平均値および標準偏差を算出するとともに、上記特性値取得部が取得した複数の特性値を各計測器により計測された特性値に分け、各計測器により計測された特性値の平均値および標準偏差を算出することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の管理装置。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の生産ラインでは、最終製品もしくは中間製品であるワークについて各種の特性を検査するため検査工程を備えている。このような検査工程では特性を測定するための計測器が使用される。そして、計測器により得られた計測値が所定範囲内である場合に良品として判断され、それ以外の場合に不良品として判断される。
【0003】
計測器による計測は、1つのワークに対する処理時間が一般に長い。そのため、複数の計測器による並列処理が実施される。このように複数の計測器による並列処理を行う場合、計測器間の計測誤差が問題となる。例えば、同じサンプル10個を3つの計測器で測定したときに各計測器による計測値が異なることがある。このような計測器間の計測誤差は、製品の特性ばらつきに与える影響が大きい。また、計測誤差は、計測器の内部や外部の環境のわずかな変化により増大するため、時間とともに増大する傾向にある。そのため、計測器間の計測誤差を監視し、計測器に対して校正などの処理を早期に行うことが望まれる。
【0004】
計測器間の計測誤差を監視する方法として、計測器ごとの計測値のヒストグラムを視覚的に確認する方法がある。例えば、
図13の(a)のように、ある計測器に対するヒストグラムだけ他の計測器から大きくずれている場合、この計測器に何等かの異常が発生していることが推定される。しかしながら、実際の生産ラインでは、
図13の(a)のように1つのヒストグラムだけが突出して異なる場合に限られず、
図13の(b)のように、各計測器のヒストグラムが少しずつ異なっている場合がある。このような場合、
図13の(b)のヒストグラムを見ただけでは、計測器間における計測誤差の有無を判断しにくい。
【0005】
また、
図13の(a)のように1つの計測器だけ突出してずれている場合には計測器間の計測誤差の有無を確認できるが、ヒストグラムが比較的大きくずれてから初めて確認される。そのため、計測器間の計測誤差による経済的なロスが大きく発生してしまっている。ここで、経済的なロスとは、計測器間の計測誤差の増大による良品/不良品の判断の誤りに起因するものである。
【0006】
さらに、計測器間における計測誤差を監視する方法として、計測器ごとの計測値の平均値を確認する方法がある。例えば、
図14の(a)のように、1つの計測器(図中、CH6と記載)に対するヒストグラムだけ他の計測器から大きくずれている場合、計測器CH6による計測値の平均値は、全ての計測器による計測値の平均値からaだけずれることとなる。そのため、この計測器に何等かの異常が発生していることが推定される。しかしながら、実際の生産ラインでは、
図14の(a)のように1つのヒストグラムだけが突出して異なる場合に限られず、
図14の(b)のように、各計測器のヒストグラムが少しずつ異なる場合がある。このような場合、各計測器による計測値の平均値と、全ての計測器による計測値の平均値との差だけでは、計測器間における計測誤差の有無を判断しにくい。
【0007】
そこで、ISO/TS16949では測定システム解析(MSA:Measurement Systems Analysis)を定めている。MSAは、計測の精度を管理する方法である。MSA手法の代表例として、以下のようなゲージR&R(GRR)が定められている。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、TV
2は計測データ全体のばらつきを示す分散、PV
2は同一条件で計測したときの複数の製品(ワーク)のばらつきを示す分散、EV
2は繰り返しばらつきを示す分散(同じ製品を同じ計測器で複数回計測したときの計測値の分散)、AV
2は計測器間のばらつきを示す分散(計測器ごとに同じ製品を複数回計測して求めた平均値の分散)である。
【0010】
そして、以下の基準に従ってGRRを管理する。
GRR:10%以下 ・・・ 合格
GRR:10〜30% ・・・ 条件付き合格
GRR:30%を超える ・・・ 不合格。
【0011】
また、特許文献1には、基板寸法の測定において、測定システムの全測定の不確かさ(合成不確かさ)を求め、測定システムを評価することが記載されている。特許文献1では、測定システムの測定結果と基準測定システムの測定結果との線形回帰を行い、その残差により基準測定システムの不確かさを除去することにより、測定システムをより正確に評価している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る計測器差管理システムの概略構成を示す模式図である。
【0022】
本実施形態の計測器差管理システム1は、生産ライン10と、計測データ収集装置20と、データベース30と、管理装置40と、作業記録装置50とを備えている。
【0023】
本実施形態では、生産ライン10は、製品を生産するための第1〜第3生産工程と、中間製品または最終製品であるワークの各種特性を検査する検査工程とを含む。
図2は、各工程が有する設備の台数を示す図である。ここでは、各工程における処理速度が略一定となるように、第1〜第3生産工程の各々は8,3,1台の生産設備を有しており、検査工程は3台の計測器11を有しているものとする。そして、各工程では、複数の設備または計測器が並列処理を実施する。すなわち、第2生産工程から搬送されてきた複数のワークは、3台の計測器11に振り分けられて投入され、各計測器11は、投入されたワークの特性を計測する。なお、検査工程が有する計測器11の台数はこれに限定されるものではなく、複数であればよい。
【0024】
計測データ収集装置20は、検査工程に備えられた複数の計測器11の各々により得られた計測データを収集し、データベース30に蓄積するものである。
図3は、データベース30に蓄積されるデータの一例を示す図である。
図3に示されるように、計測データ収集装置20は、各ワークに対して、当該ワークを識別するワークIDと、当該ワークを検査した計測器11を識別する計測器識別情報と、当該ワークの最終製品の機種番号と、当該ワークが属するロット番号と、n種類の特性T1〜Tnについての計測結果である特性値と、計測した日時とを対応付けた計測データを計測日時の順に並べてデータベース30に格納する。
【0025】
なお、計測データ収集装置20は、図示しない入力部に入力された情報に従って、機種番号およびロット番号をデータベース30に蓄積する。すなわち、作業者は、ロットの切り換え時に、入力部を用いて機種番号およびロット番号を入力する。そして、計測データ収集装置20は、機種番号およびロット番号が入力されると、それ以降に収集した計測データの各々についてユニークなワークIDを付与するとともに、入力された機種番号およびロット番号と対応付けた計測データを生成し、データベース30に格納する。
【0026】
作業記録装置50は、作業者が行った作業の内容を示す作業内容情報と、当該作業を行った日時(タイミング)を示す作業タイミング情報とを対応付けた作業情報を記憶する装置である。作業記録装置50は、例えば、作業者の入力に従って、作業情報を記憶する。
図4は、作業記録装置50が記憶する作業情報の一例を示す図である。
【0027】
管理装置40は、検査工程に備えられる複数の計測器11間の計測誤差を管理する装置である。
図1に示されるように、管理装置40は、入力部41と、表示部42と、取得設定部43と、計測データ取得部(特性値取得部)44と、規格値記憶部45と、演算部46と、データ格納部47と、記憶部48と、グラフ表示処理部49とを備えている。
【0028】
入力部41は、生産ラインの作業者から各種の入力を受け付けるものであり、入力用ボタン、キーボード、マウスなどのポインティングデバイス、その他の入力デバイスによって構成されている。
【0029】
表示部42は、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等の表示手段であり、受信した表示データに
基づいて文字や画像などの各種の情報を表示出力するものである。
【0030】
取得設定部43は、計測データ取得部44が計測データ群を取得する条件を設定するものである。取得設定部43は、入力部41に入力された情報に従い、集計時刻と、集計時間間隔とを設定する。また、取得設定部43は、計測データ取得部44から更新指示を受けると、集計時刻から集計時間間隔だけ経過した時刻を新たな集計時刻として設定する。
【0031】
計測データ取得部44は、データベース30から計測データ群を取得するものである。計測データ取得部44による具体的な処理について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、計測データ取得部44の処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
まず、計測データ取得部44は、取得設定部43により設定された集計時刻に現時刻が到達したか判断する(S1)。
【0033】
現時刻が集計時刻に到達すると(S1でYes)、計測データ取得部44は、集計時刻から集計時間間隔だけ遡った期間に含まれる計測日時に対応する計測データをデータベース30から特定する。そして、計測データ取得部44は、特定した計測データを計測日時の順に並べたときに次の計測データとの間でロット番号が異なる計測データがあるか否かを判断する。計測日時の順に並べたときに次の計測データとの間でロット番号が異なる計測データは、ロットの最終ワークに対応する。そのため、計測データ取得部44は、次の計測データとの間でロット番号が異なる計測データがあるか否かを判断することにより、集計時刻から集計時間間隔だけ遡った期間に完了したロットの有無を判断することができる。そして、計測データ取得部44は、次の計測データとの間でロット番号が異なるN個の計測データのロット番号を特定する(S2)。
【0034】
例えば、
図6に示されるように、集計時刻から集計時間間隔だけ遡った時点から集計時刻までにロット番号「M2」「M3」の2つのロットが完了している場合、N=2個のロット番号「M2」「M3」を特定する。なお、集計時刻から集計時間間隔だけ遡った時点から集計時刻までに完了したロットが存在しない場合には、計測データ取得部44は、N=0としてロット番号を特定しない。
【0035】
次に、計測データ取得部44は、S2で特定したN個の当該ロット番号の各々について、当該ロット番号を有する計測データの全てである計測データ群をデータベースの中から読み出し、読み出した計測データ群を演算部46に出力する(S3〜S6)。
【0036】
S2で特定した全てのロット番号について計測データ群を演算部46に出力すると(S4でNo)、計測データ取得部44は、取得設定部43に対して更新指示を出力する。これにより、集計時刻から集計時間間隔だけ経過した時刻が新たな集計時刻として設定される(S7)。
【0037】
以上のようにして、計測データ取得部44は、集計時刻から集計時間間隔だけ遡った期間において完了したロットの各々について、計測データ群を演算部46に出力する。
【0038】
規格値記憶部45は、計測器11が計測する各種特性の各々について、良品か不良品かを区別するための規格値を記憶するものである。規格値記憶部45は、規格値として上限値および下限値の少なくとも一方を記憶する。規格値記憶部45は、特性ごとに設定された規格値を記憶する。
図7は、規格値記憶部45が記憶する情報の一例を示す図である。なお、規格値記憶部は、入力部に入力された情報に従って規格値を記憶する。これにより、作業者は、入力部41に規格値を入力することにより、各種特性の規格値を設定することができる。
【0039】
演算部46は、計測データ取得部44から得たロットごとの計測データ群を用いて、各種の特性の各々について、計測器11間の計測誤差を把握しやすいパラメータを算出するものである。すなわち、同一の製品を繰り返し計測したときの計測値の標準偏差をEV、同一条件で計測したときの複数の製品の計測値の標準偏差(つまり製品のばらつきを示す標準偏差)をPVとしたとき、演算部46は、計測データ群から、以下の式を満たすPV’を算出し、算出したPV’を用いて計測器間のばらつきを示すパラメータを算出する。PV’
2=PV
2+EV
2
演算部46による具体的な処理について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、演算部46の処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
まず、演算部46は、計測データ群から特性ごとの統計量を算出する(S11)。具体的には、演算部46は、特性ごとに、全ての計測器11で計測された特性値の平均値および標準偏差を算出する。ここで、i番目の計測器によりj番目に計測されたワークの特性値をxijとする。また、検査工程に含まれる計測器11の数をa、i番目の計測器11により計測されたワークの数をniとする。この場合、全ての計測器11で計測された特性値の平均値ave(x)および標準偏差TVは、以下の式で表される。
【0044】
次に、演算部46は、i番目の計測器11で計測された各種特性について、特性値の平均値ave(xi)および標準偏差σ(xi)を以下の式に従って算出する(S12)。
【0047】
次に、演算部46は、ばらつき増大率を算出する。計測器間の特性値の標準偏差をAVとするとき、分散の加法性により、
TV
2=PV
2+EV
2+AV
2
が成り立つ。ここで、PV’
2=PV
2+EV
2であるため、
TV
2=PV’
2+AV
2
となる。
【0048】
演算部46は、以下の式により、PV’、AVを算出する。
【0051】
なお、PV’は、(TV
2−AV
2)
1/2により算出してもよい。また、平均・範囲法や分散分析などの他の演算方法を用いてAV,PV’,TVを算出してもよい。
【0052】
そして、演算部46は、
ばらつき増大率=TV/PV’
の式に従ってばらつき増大率を算出する(S13)。
【0053】
ばらつき増大率は、TVをPV’で割った値である。仮に計測器間の特性値のばらつきが0(つまり、AV=0)である場合、ばらつき増大率は1となる。一方、計測器間の特性値のばらつきが大きくなると、ばらつき増大率は1よりも大きな値をとる。すなわち、ばらつき増大率は、計測器間の計測誤差が存在することにより、計測器間の計測誤差が存在しない理想的な状態から標準偏差が何倍になったかを示すこととなる。
【0054】
続いて、演算部46は、規格値記憶部45が記憶する各特性の規格値を読み出す(S14)。そして、演算部46は、読み出した規格値に基づいて改善不良率を算出する(S15)。改善不良率とは、現在の不良率と、計測器間の計測誤差が0である理想的な状態の不良率との差分を示す値である。現在の不良率は、標準偏差TVの分布から算出することができる。一方、計測器間の計測誤差が0の場合、AV=0となるため標準偏差PV’の分布から算出することができる。
図9は、標準偏差TVの分布と、計測器間の計測誤差をなしとした標準偏差PV’の分布とを示す図である。
図9に示されるように標準偏差の小さいPV’の分布では規格値から外れる不良率が小さくなることがわかる。すなわち、改善不良率の値が大きい場合には、計測器の校正等の処理を行うことで、計測器間の計測誤差を小さくし、不良率を低減させることができる可能性が高いことを意味する。
【0055】
例えば、演算部46は、Microsoft(登録商標)ExcelのNORMDIST関数を用いて改善不良率を算出する。NORMDIST(x、μ、σ、true)で示される関数は、平均値μ、標準偏差σの正規分布において、確率変数がx以下になる確率を計算する関数である。
【0056】
上限規格値をd1、下限規格値をd2、全ての計測器11で計測された特性値の平均値をave(x)とすると、現在の不良率f(d1、d2、ave(x)、TV)は、以下の式より算出することができる。
【0057】
f(d1、d2、ave(x)、TV)=NORMDIST(d2、ave(x)、TV、true)+(1−NORMDIST(d1、ave(x)、TV、true))
また、計測器間の計測誤差が0である理想的な状態とはAV=0であるため、このときの不良率f(d1、d2、ave(x)、PV’)は、以下の式より算出することができる。
【0058】
f(d1、d2、ave(x)、PV’)=NORMDIST(d2、ave(x)、PV’、true)+(1−NORMDIST(d1、ave(x)、PV’、true))
そして、演算部46は、下記の式に従い改善不良率を算出する。
改善不良率=f(d1、d2、ave(x)、TV)−f(d1、d2、ave(x)、PV’)
なお、特性値の分布が正規分布以外の分布に従う場合には、演算部46は、当該分布に基づく累積分布関数に基づいて改善不良率を算出すればよい。
【0059】
以上のようにして、演算部46は、特性ごとに、全ての計測器11で計測された特性値の平均値および標準偏差と、計測器11ごとの特性値の平均値および標準偏差と、ばらつき増大率と、改善不良率とを算出する。
【0060】
データ格納部47は、各種の特性ごとに演算部46により算出された、全ての計測器11で計測された特性値の平均値および標準偏差と、計測器11ごとの特性値の平均値および標準偏差と、ばらつき増大率と、改善不良率とを記憶部に格納する。このとき、データ格納部47は、これらの算出値を、算出対象となった計測データ群を識別するデータ群ID、計測データ群の機種番号、ロット番号および計測日時と対応付けて記憶部48に格納する。なお、データ格納部47は、計測データ群の中のいずれかの計測データの計測日時を、計測データ群の計測日時として設定すればよい。例えば、データ格納部は、最初(1番目)に計測された計測データの計測日時、最後(n番目)に計測された計測データの計測日時、および、n/2番目(nが奇数の場合には(n+1)/2番目)に計測された計測データの計測日時のいずれかを計測データ群の計測日時として設定する。
【0061】
図10は、記憶部48が記憶する情報の一例を示す図である。
図10に示されるように、ロットごとに、全ての計測器11で計測された特性値の平均値および標準偏差(図中「(全)」と記す)と、計測器11ごとの特性値の平均値および標準偏差と、ばらつき増大率と、改善不良率と、計測日時とが対応付けられている。なお、図中において、「Ave」は平均値を、「Sd」は標準偏差を示している。
【0062】
グラフ表示処理部49は、各種のパラメータの時間変化を示すグラフを表示部42に表示する処理を行う。入力部41にグラフ表示指示が入力されると、グラフ表示処理部49は、記憶部48が記憶する情報の中から各種の特性ごとに、ばらつき増大率および改善不良率と計測日時とを読み出し、ばらつき増大率および改善不良率の時間変化を示すグラフを作成する。具体的には、計測日時を横軸、ばらつき増大率を縦軸とするグラフと、計測日時を横軸、改善不良率を縦軸とするグラフとを作成し、表示部42に表示させる。
【0063】
また、グラフ表示処理部49は、記憶部48が記憶する情報の中から、各種の特性ごとに、全ての計測器11で計測された特性値の平均値および標準偏差と、計測器11ごとの特性値の平均値および標準偏差と、計測日時とを読み出し、各値の時間変化を示すグラフも作成し、表示部42に表示させてもよい。
【0064】
図11は、グラフ表示処理部49による表示例の一例を示す図である。
図11において、(a)は特性ごとのばらつき増大率の時間変化を示し、(b)は特性ごとの改善不良率の時間変化を示している。また、(c)および(f)は、特性T1の計測器ごとの平均値および標準偏差の時間変化を示し、(d)および(g)は、特性T2の計測器ごとの平均値および標準偏差の時間変化を示し、(e)および(h)は、特性T3の計測器ごとの平均値および標準偏差の時間変化を示している。
【0065】
さらに、グラフ表示処理部49は、作業記録装置50から作業情報を読み取る。そして、グラフ表示処理部49は、
図11に示す各グラフ上において、作業タイミング情報で示される日時の箇所に当該作業タイミング情報に対応する作業内容情報を表示してもよい。
図12は、作業内容情報が提示されたグラフの一例を示す図である。
図12に示されるように、作業内容情報が時間軸に沿って表示されるため、ばらつき増大率や改善不良率が大きく変化している箇所に表示されている作業内容情報を確認することにより、ばらつき増大率や改善不良率の変化の原因を容易に把握できる。
【0066】
以上のように、本実施形態の管理装置40は、生産ラインにおいてワークの特性を計測する複数の計測器11を管理する。なお、生産ラインにおいて複数のワークは複数の計測器11に振り分けられて投入され、複数の計測器11の各々は、投入されたワークの特性を計測する。ここで、管理装置40の計測データ取得部44は、複数の計測器11が投入されたワークの特性を計測することにより得られた複数の特性値を含む計測データ群を取得する。そして、演算部46は、取得した計測データ群に基づいて、複数の計測器11間の計測誤差を示すパラメータを算出する。
【0067】
このように、演算部46は、生産ラインの動作中において、複数の計測器が投入されたワークの特性を計測することにより得られた複数の特性値を基に、複数の計測器11間の計測誤差を示すパラメータが算出する。この結果、生産ラインの通常の生産を停止することなく、計測器11間における計測誤差を容易に把握することができる。
【0068】
そして、演算部46は、上記パラメータとして、計測データ群において複数の計測器11間の計測誤差を0としたときの標準偏差である第1標準偏差(PV’)と、計測データ群の標準偏差である第2標準偏差(TV)との相互関係を示す第1値を算出する。
【0069】
一般に、製造現場では標準偏差σを用いて工程管理を行っている。例えば、工程能力指数であるCpkは、
Cpk=(上限規格値−下限規格値)/6σ
で表される。また、平均値±6σの範囲の外に出る確率は100万分の3.4であることから、100万回の作業を実施しても不良品の発生率を3,4回に抑えることへのスローガンとして6σ(シックスシグマ)が知られている。このように、作業者にとって標準偏差は馴染みのあるパラメータである。そして、作業者は、標準偏差の低下の程度についての意識が高い。
【0070】
一方、[数1]に示したGRRは、全体のばらつきを示す標準偏差に対する、AVとEVに関するばらつきを示す標準偏差の比率を示しているものの、標準偏差に馴染みのある作業者にとっては計測器間の計測誤差を感覚的に把握しにくいものとなっている。
【0071】
例えば、GRRが30%である場合、作業者は、計測器間の計測誤差に依存する標準偏差が30%であると把握する。このとき、作業者は、計測器間の計測誤差を0にすれば、現状の標準偏差を最大100−30=70%にまで低下させることが可能であると誤解する可能性がある。これは、作業者が、TV=PV+AV+EVであると勘違いしていることに起因する。すなわち、PV’/TV=1−AV/TVと勘違いして計算してしまう。実際には、標準偏差の加法性は成立せず、分散の加法性、つまり、TV
2=PV
2+AV
2+EV
2 のみが成立する。そのため、GRRが30%である場合、実際には、以下の数9に基づき、計測器間の計測誤差を0にすれば現状の標準偏差の0.954倍まで最大限低下させることになるが、作業者は容易に把握することができない。
【0073】
このように、作業者にとって、GRRは、現状の標準偏差と、計測器間における計測誤差の有無との関係を把握しにくいパラメータであった。つまり、作業者は、GRRがどれくらいになれば標準偏差をどれくらい低下させることができるのかが容易に把握できないという問題があった。
【0074】
しかしながら、本実施形態によれば、作業者は、計測データ群において複数の計測器11間の計測誤差を0としたときの標準偏差である第1標準偏差(PV’)と、計測データ群の標準偏差である第2標準偏差(TV)との相互関係を示す第1値を把握することができる。ここで、第2標準偏差(TV)は、複数の計測器11から得られた特性値の標準偏差であり、計測器11間の計測誤差を含む状態の標準偏差である。そのため、第1値を確認することにより、複数の計測器間の計測誤差を0としたときの状態からどれだけ標準偏差が変化しているかを容易に確認することができる。
【0075】
具体的には、演算部46は、同一のワークを繰り返し計測したときの特性値の標準偏差をEV、複数のワークの計測値の標準偏差をPVとしたとき、計測データ群から、以下の式
PV’
2=PV
2+EV
2
を満たすPV’を算出し、算出したPV’を用いて複数の計測器間のばらつきを示すパラメータを算出する。そして、グラフ表示処理部49は、パラメータを表示部42に表示させる。
【0076】
このように、演算部46は、生産ラインの動作中において、複数の計測器11が投入されたワークの特性を計測することにより得られた複数の特性値を含む計測データ群を基に、PV’
2=PV
2+EV
2を満たすPV’を用いてパラメータを算出している。すなわち、演算部46は、同一のサンプルを繰り返し計測器に計測させることで得られる標準偏差EV自体を算出する必要がない。そのため、生産ラインの動作中において得られる特性値を用いて、複数の計測器11間のばらつきを示すパラメータを表示させることができる。
【0077】
この結果、生産ラインの通常の生産を停止することなく、計測器間における計測誤差を容易に把握することができる。
【0078】
そして、演算部46は、パラメータとして、TV/PV’であるばらつき増大率を算出する。上述したように、このばらつき増大率は、計測器間の計測誤差が存在することにより、計測器間の計測誤差が存在しない理想的な状態から標準偏差が何倍になったかを示している。そのため、作業者は、ばらつき増大率を見ることにより、計測器間の計測誤差が存在することによって標準偏差がどれくらい増大しているかを容易に把握することができる。
【0079】
なお、上記の説明では、演算部46は、ばらつき増大率TV/PV’を算出するものとしたが、ばらつき増大率TV/PV’の代わりに、その逆数であるPV’/TVを算出してもよい。PV’/TVは、計測器間の計測誤差が存在しない理想的な状態にすることにより、現状の計測器間の計測誤差が存在する状態から標準偏差が何倍になったかを示している。この場合、作業者は、PV’/TVを確認することによって、計測器間の計測誤差を0にすることにより標準偏差をどの程度低下させることができるかを容易に把握することができる。
【0080】
さらに、演算部46は、ワークの良否を判定するための特性値の規格範囲に基づいて、計測データ群において複数の計測器11間の計測誤差を0としたとき不良率と、計測データ群に対する不良率との相互関係を示す第2値をパラメータとして算出する。
【0081】
具体的には、演算部46は、標準偏差がTVの正規分布において規格範囲外となる確率を標準偏差がTVのときの不良率として算出し、標準偏差がPV’の正規分布において規格範囲外となる確率を標準偏差がPV’のときの不良率として算出する。そして、標準偏差がTVのときの不良率と標準偏差がPV’のときの不良率との差分である改善不良率を第2値として算出する。すなわち、改善不良率とは、現在の不良率と、計測器間の計測誤差が0である理想的な状態の不良率との差分を示す。
【0082】
これにより、作業者は、第2値(改善不良率)を確認することによって、計測器間の計測誤差を0にすることにより、不良率をどれだけ下げられるかを容易に把握することができる。
【0083】
また、演算部46は、全ての計測器で計測された特性値の平均値および標準偏差と、計測器ごとの特性値の平均値および標準偏差とを算出する。そして、グラフ表示処理部49は、各値の時間変化を示すグラフを表示している(
図11参照)。
【0084】
このように、ばらつき増大率および改善不良率とともに、計測器ごとの平均値および標準偏差を表示することにより、様々な分析を行うことができる。
【0085】
例えば、
図11の(a)を確認することにより、特性T2のばらつき増大率が比較的高い値で推移していることがわかる。そして、特性T2の計測器ごとの平均値および標準偏差の推移を示す(d)(g)のグラフを確認することにより、計測器a〜cのいずれの標準偏差もほぼ同じであるが、計測器aの平均値だけ他よりも大きいことがわかる。このことから、計測器aにおける特性T2を計測する際の補正式のオフセットがずれている可能性が高いことが推測できる。
【0086】
また、
図11の(a)を確認することにより、特性T3のばらつき増大率が高い値で推移していることがわかる。そして、特性T3の計測器ごとの平均値および標準偏差の推移を示す(e)(h)のグラフを確認することにより、計測器cの平均値が最も大きいのに対し、計測器cの標準偏差が最も小さいことがわかる。一般的に平均値が大きい方が標準偏差も大きくなる。また、計測器cの標準偏差だけが他の2つの計測器の標準偏差の時間推移と異なることがわかる。このことから、計測器cに何らかの異常が発生していることが推測される。特に、ロードセルのようにワークに接触することで計測される特性である場合、ワークに適切に接触していないような異常の場合、標準偏差の時間変化が他と異なる傾向となる。そのため、このような異常が発生していることを推測することができる。
【0087】
さらに、
図11の(b)を確認することにより、特性T3の改善不良率が特定の期間(2011/3/28から2011/3/29、2011/4/4から2011/4/10)だけ高くなっていることがわかる。
そして、特性T3の計測器ごとの平均値の推移を示す(e)のグラフを確認することにより、3つの計測器における計測誤差の差異が大きく、かつ、この特定の期間で平均値が低くなっていることがわかる。このことから、特性T3の分布が下限値に近くなっており、特に平均値が低い計測器bにより計測された特性T3により不良率が高くなっており、計測器bの校正が必要であることが把握できる。
【0088】
さらに、グラフ表示処理部49は、
図12に示されるように、作業記録装置の中から、グラフに含まれる期間内を示す作業タイミング情報を特定し、グラフにおいて、特定した作業タイミング情報で示されるタイミングの箇所に当該作業タイミング情報に対応する作業内容情報を表示する。
【0089】
これにより、ばらつき増大率や改善不良率の変化の原因を作業内容情報から容易に推測することができる。
【0090】
なお、上記の説明では、計測データ取得部44は、集計時刻から集計時間間隔だけ遡った期間において完了したロットの各々について計測データ群を演算部46に出力するものとした。しかしながら、計測データ取得部44の計測データ群の取得方法はこれに限定されない。例えば、計測データ取得部44は、集計時刻から集計時間間隔だけ遡った期間に計測された計測データをロットごとにグループ分けし、グループごとに当該グループに属する計測データ群を演算部46に出力してもよい。もしくは、計測データ取得部44は、集計時刻から集計時間間隔だけ遡った期間に計測された全ての計測データを1つの計測データ群として演算部46に出力してもよい。
【0091】
また、上記の説明では、ばらつき増大率と改善不良率との両方を算出する形態について説明したが、いずれか一方のみを算出して表示する形態であってもよい。
【0092】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0093】
なお、上記した各実施形態における管理装置40の各部は、CPU(Central Processing Unit)などの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、デ
ィスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態の生産ライン管理装置の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
【0094】
この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読み取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読み取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0095】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0096】
また、上記プログラムメディアとしては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラム
を担持する記録媒体等がある。
【0097】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0098】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0099】
以上のように、本発明の管理装置は、生産ラインにおいてワークの特性を計測する複数の計測器を管理する管理装置であって、上記複数の計測器の各々は、投入されたワークの特性を計測しており、上記複数の計測器が投入された上記ワークの特性を計測することにより得られた複数の特性値を取得する特性値取得部と、上記特性値取得部が取得した複数の特性値に基づいて、上記複数の計測器間の計測誤差を示すパラメータを算出する演算部とを備えることを特徴とする。
【0100】
上記の構成によれば、生産ラインの動作中において、複数の計測器が投入されたワークの特性を計測することにより得られた複数の特性値を基に、複数の計測器間の計測誤差を示すパラメータが算出される。この結果、生産ラインの通常の生産を停止することなく、計測器間における計測誤差を容易に把握することができる。
【0101】
さらに、本発明の管理装置において、上記演算部は、上記パラメータとして、上記特性値取得部が取得した複数の特性値において上記複数の計測器間の計測誤差を0としたときの標準偏差である第1標準偏差と、上記特性値取得部が取得した複数の特性値の標準偏差である第2標準偏差との相互関係を示す第1値を算出してもよい。
【0102】
また、本発明の管理装置は、生産ラインにおいてワークの特性を計測する複数の計測器を管理する管理装置であって、上記複数の計測器により得られた複数の特性値を取得する特性値取得部と、上記特性値取得部が取得した複数の特性値に基づいて、上記複数の計測器間の計測誤差を示すパラメータを算出する演算部とを備え、上記演算部は、上記パラメータとして、上記特性値取得部が取得した複数の特性値において上記複数の計測器間の計測誤差を0としたときの標準偏差である第1標準偏差と、上記特性値取得部が取得した複数の特性値の標準偏差である第2標準偏差との相互関係を示す第1値を算出することを特徴とする。
【0103】
一般に、製造現場では標準偏差σを用いて工程管理を行っており、作業者にとって標準偏差は馴染みのあるパラメータである。そして、作業者は、標準偏差の低下の程度についての意識が高い。
【0104】
一方、上記のGRRは、全体のばらつきを示す標準偏差に対する、AVとEVに関するばらつきを示す標準偏差の比率を示しているものの、標準偏差に馴染みのある作業者にとっては計測器間の計測誤差を感覚的に把握しにくいものとなっている。つまり、作業者にとって、GRRは、現状の標準偏差と、計測器間における計測誤差の有無との関係を把握しにくいパラメータであり、作業者は、GRRがどれくらいになれば標準偏差をどれくらい低下させることができるのかが容易に把握できない。
【0105】
しかしながら、上記の構成によれば、作業者は、複数の計測器間の計測誤差を0としたときの標準偏差である第1標準偏差と、上記特性値取得部が取得した複数の特性値の標準偏差である第2標準偏差との相互関係を示す第1値を把握することができる。ここで、第2標準偏差は、複数の計測器から得られた特性値の標準偏差であり、計測器間の計測誤差を含む状態の標準偏差である。そのため、第1値を確認することにより、複数の計測器間の計測誤差を0としたときの状態からどれだけ標準偏差が変化しているかを容易に確認することができる。
【0106】
さらに、本発明の管理装置において、ワークの良否を判定するための特性値の規格範囲が定められ、特性値が上記規格範囲内にあるとき良品であると判定されるとき、上記演算部は、上記規格範囲に基づいて、上記特性値取得部が取得した複数の特性値において上記複数の計測器間の計測誤差を0としたとき不良率と、上記特性値取得部が取得した複数の特性値に対する不良率との相互関係を示す第2値を上記パラメータとして算出してもよい。
【0107】
上記の構成によれば、作業者は、第2値を確認することによって、計測器間の計測誤差を0にすることにより、不良率をどれだけ下げられるかを容易に把握することができる。
【0108】
さらに、本発明の管理装置において、上記演算部は、同一のワークを繰り返し計測したときの特性値の標準偏差をEV、同一条件にて計測された複数のワークの特性値の標準偏差をPVとしたとき、上記特性値取得部が取得した複数の特性値から、以下の式
PV’
2=PV
2+EV
2
を満たすPV’を上記第1標準偏差として算出するとともに、上記第2標準偏差であるTVを算出し、TV/PV’またはPV’/TVを上記第1値として算出してもよい。
【0109】
なお、上記演算部は、上記特性値取得部が取得した複数の特性値のうち、i番目の計測器によりj番目に計測されたワークの特性値をxijとし、上記複数の計測器の数をa、i番目の計測器が計測したワークの数をniとするとき、以下の式に従って、PV’およびTVを算出してもよい。
【0115】
もしくは、上記演算部は、上記特性値取得部が取得した複数の特性値のうち、i番目の計測器によりj番目に計測されたワークの特性値をxijとし、上記複数の計測器の数をa、i番目の計測器が計測したワークの数をniとするとき、以下の式に従って、PV’およびTVを算出してもよい。
【0122】
上記の構成によれば、生産ラインの動作中において、複数の計測器が投入されたワークの特性を計測することにより得られた複数の特性値を基に、PV’
2=PV
2+EV
2を満たすPV’を用いてパラメータが算出される。すなわち、同一のサンプルを繰り返し計測器に計測させることで得られる標準偏差EV自体を算出する必要がない。そのため、生産ラインの動作中において得られる特性値を用いて、複数の計測器間のばらつきを示すパラメータを表示させることができる。
【0123】
また、上述したように、作業者にとって、GRRは、現状の標準偏差と、計測器間における計測誤差の有無との関係を把握しにくいパラメータであり、作業者は、GRRがどれくらいになれば標準偏差をどれくらい低下させることができるのかが容易に把握できない。
【0124】
しかしながら、上記の構成によれば、TV/PV’またはPV’/TVを上記パラメータとして算出している。TV/PV’は、現状の計測器間の計測誤差が存在することにより、計測器間の計測誤差が存在しない理想的な状態から標準偏差が何倍になったかを示している。また、PV’/TVは、計測器間の計測誤差が存在しない理想的な状態にすることにより、現状の計測器間の計測誤差が存在する状態から標準偏差が何倍になったかを示している。そのため、作業者は、TV/PV’またはPV’/TVを見ることにより、計測器間の計測誤差の存在により標準偏差がどの程度増えているか、もしくは、計測器間の計測誤差を0にすることにより標準偏差をどの程度低下させることができるか、を容易に把握することができる。
【0125】
さらに、本発明の管理装置において、上記演算部は、(1)同一のワークを繰り返し計測したときの特性値の標準偏差をEV、同一条件にて計測された複数のワークの特性値の標準偏差をPVとしたとき、上記特性値取得部が取得した複数の特性値から、以下の式
PV’
2=PV
2+EV
2
を満たすPV’を算出するとともに、上記特性値取得部が取得した複数の特性値の標準偏差TVを算出し、(2)上記規格範囲に基づいて、標準偏差がTVのときの不良率と標準偏差がPV’のときの不良率との差である改善不良率を上記第2値として算出することが好ましい。
【0126】
なお、演算部は、標準偏差がTVの正規分布において規格範囲外となる確率を標準偏差がTVのときの不良率として算出し、標準偏差がPV’の正規分布において規格範囲外となる確率を標準偏差がPV’のときの不良率として算出してもよい。
【0127】
上記の構成によれば、作業者は、改善不良率を確認することによって、計測器間の計測誤差を0にすることにより、不良率をどれだけ下げられるかを容易に把握することができる。
【0128】
さらに、本発明の管理装置において、上記演算部は、上記特性値取得部が取得した複数の特性値の平均値および標準偏差を算出するとともに、上記特性値取得部が取得した複数の特性値を各計測器により計測された特性値に分け、各計測器により計測された特性値の平均値および標準偏差を算出してもよい。これにより、これらの平均値および標準偏差を確認することにより様々な分析を行うことができる。
【0129】
さらに、本発明の管理装置において、上記特性値取得部は、所定期間ごとに特性値を取得し、上記演算部は、所定期間ごとに上記パラメータを算出してもよい。これにより、パラメータの時間変化を容易に確認することができる。
【0130】
さらに、上記管理装置は、コンピュータによって実現されてもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置の各部として機能させるプログラム、および、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。