(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャリア信号調整回路は、反転入力端子が第1の抵抗を介して前記キャリア信号生成回路に接続され、非反転入力端子が接地され、出力側が第2の抵抗を介して前記反転入力端子にフィードバックされる反転増幅器で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量検出回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、物理量変化に対する連続的且つ微小な容量変化に対しても精度良くアナログ信号として検出出力を得ることが可能である。このとき、検出用キャパシタ(容量Cs)と参照用キャパシタ(容量Cr)とにセンサ駆動回路からセンサ駆動信号を供給するが、参照用キャパシタ(容量Cr)に対してはセンサ駆動信号を反転させて供給している。そして、検出用キャパシタ(容量Cs)を通じたセンサ駆動信号と参照用キャパシタ(容量Cr)を通じたセンサ駆動信号とを加算して両者の差分をチャージアンプに供給するようにしている。
【0006】
このため、参照用キャパシタの容量Crを検出用キャパシタの容量Csに合わせる必要があり、参照用キャパシタの容量Crを小さくしてノイズゲインを小さくすることができないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、ノイズを低減して微小な静電容量を正確に検出することができる静電容量検出回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る静電容量検出回路の第1の態様は、物理量変化に応じた静電容量変化を生じる一対の電極部を備えた物理量センサの前記一対の電極部間の静電容量変化を検出する静電容量検出回路である。この静電容量検出回路は、前記一対の電極部の一方に接続されてキャリア信号を供給するキャリア信号生成回路と、前記一対の電極部の他方
に反転入力端子
が接続された演算増幅器とを備えている。また
、静電容量検出回路は、前記一対の電極部と並列に接続されたダミー容量と、前記ダミー容量に対するキャリア信号生成回路からのキャリア信号に対して、位相を反転するとともに、ゲインを調整してダミー容量を抑制するキャリア信号調整回路
と、を備えている。
【0008】
また、本発明に係る静電容量検出回路は、前記キャリア信号調整回路が、反転入力端子が第1の抵抗を介して前記キャリア信号生成回路に接続され、非反転入力端子が接地され、出力側が第2の抵抗を介して前記反転入力端子にフィードバックされる反転増幅器で構成されている。
また、本発明に係る静電容量検出回路は、前記演算増幅器の出力側に接続された前記キャリア信号生成回路のキャリア信号が入力された復調回路と、該復調回路の復調出力を平滑化するローパスフィルタと、該ローパスフィルタのフィルタ出力をデジタル信号に変換するA/D変換回路とを
さらに備えている。そして、前記キャリア信号調整回路
により、前記A/D変換回路の零点オフセットを調整
可能に構成されている。
【0009】
また、本発明に係る静電容量検出回路は、前記ダミー容量が、前記演算増幅器を実装したプリント配線基板上に形成されている。
また、本発明に係る静電容量検出回路は、前記演算増幅器が、反転入力端子に前記一対の電極部の一方の端子と前記ダミー容量及びキャリア信号調整回路の直列回路とが並列に接続され、
前記演算増幅器の非反転入力側が接地されることによって反転入力端子がイマジナルショートされている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダミー容量に対するキャリア信号生成回路からのキャリア信号に対して、位相を反転するとともに、ゲインを調整してダミー容量を抑制するキャリア信号調整回路を備えているので、キャリア信号の増幅率を大きくしてダミー容量の容量を小さくすることが可能となり、ノイズゲインを小さくしてノイズを抑制することができる。
さらに、演算増幅器の出力を復調回路で復調し、復調出力をローパスフィルタによってノイズ除去してからA/D変換する場合に、前記キャリア信号調整回路で、A/D変換回路の零点オフセットを調整することができ、A/D変換回路のSN比を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る静電容量検出回路を適用し得る加速度センサの一例を示す模式図であって、
図1(a)は上部基板を取り外した状態の平面図、
図1(b)は
図1(a)のA−A線上の断面図である。
図中、1は加速度センサであって、この加速度センサ1は、SOI(Silicon On Insulator)基板2で形成されている。このSOI基板2は、下層のシリコン支持層2aと、このシリコン支持層2a上に形成された酸化シリコン層2bと、この酸化シリコン層2b上に形成された活性シリコン層2cとで構成されている。
【0013】
ここで、シリコン支持層2a及び酸化シリコン層2bは、外周部が方形枠状に形成され、その中央部が方形溝状にドライエッチングされて後述する重錘7が形成されている。
活性シリコン層2cには、中央部に4隅をバネ材3で酸化シリコン層2b上に支持された方形の可動電極4と、この可動電極4のX方向の2辺と対向して酸化シリコン層2bに固定された一対のX軸用固定電極5Xa,5Xbと、可動電極4のY方向の2辺と対向して酸化シリコン層2bに固定された一対のY軸用固定電極6Ya,6Ybとが形成されている。可動電極4には下面に重錘7が形成されている。
【0014】
また、SOI基板2の上下方向がガラス基板8a及び8bによって覆われている。ガラス基板8aの可動電極4に対向する位置にZ軸用固定電極9が形成されている。これらガラス基板8a及び8bには、X軸用固定電極5Xa,5Xb、Y軸用固定電極6Ya,6Yb、可動電極4及びZ軸用固定電極9の信号を外部に取り出すスルーホール10が形成されている。
【0015】
したがって、加速度センサ1ではX方向では可動電極4と左右一対の固定電極5Xa,5Xbとの間の静電容量Cxa及びCxbが、一方が増加すると他方が減少する関係となる左右対称形の差動構造とされている。同様に、Y方向では、可動電極4と前後一対の固定電極6Ya,6Ybとの間の静電容量Cya及びCybが、一方が増加すると他方が減少する関係となる前後対称形の差動構造とされている。
【0016】
ところが、加速度センサ1のZ方向では、可動電極4の下面には重錘7が形成されている関係で、可動電極4とこれに上方から対向するZ軸用固定電極9との間の静電容量Czのみの非対称構造となっている。
そして、加速度センサ1に加速度が加えられると、その加速度の方向に応じて重錘7を支持する可動電極4がXYZ方向へ移動し、これに応じてX方向の静電容量Cxa及びCxb、Y軸方向の静電容量Cya,Cyb、Z軸方向の静電容量Czが変化し、これらの静電容量変化により、加速度を測定することができる。
【0017】
そして、X軸方向及びY軸方向のように、対称形の差分構造である場合には、
図2に示すような静電容量検出回路20によって、静電容量を検出することができる。
すなわち、静電容量Cxa又はCyaを静電可変容量Cs1として表し、静電容量Cxb又はCybを静電可変容量Cs2として表す。
これら静電可変容量Cs1及びCs2の一方の電極をキャリア信号生成回路21に接続してキャリア信号を供給する。ここで、キャリア信号は、測定する加速度より高周波数で、正弦波や矩形波といった交流波形とされている。このキャリア信号は、0Hz或いは0Hz近傍といった低い周波数から静電容量を検出するために必要となる。
【0018】
また、各静電可変容量Cs1及びCs2の他方の電極と接地間には、互いに等しい容量のコンデンサC2及びC3が接続され、コンデンサC2には抵抗R2が並列に接続されている。ここで、コンデンサC2は静電可変容量Cs1に電荷を速やかにチャージさせるために設けられ、コンデンサC3は回路の対称を保つために接続される。一般に、コンデンサC2の容量とコンデンサC3の容量とは等しい容量に設定する。
【0019】
そして、静電可変容量Cs1及びコンデンサC2の接続点が差動増幅器Q21の非反転入力端子に接続され、静電可変容量Cs2及びコンデンサC3の接続点が差動増幅器Q21の反転入力端子に接続されている。また、差動増幅器Q21の出力端子は抵抗R1及びコンデンサC4の並列回路を介し
て反転入力端子にフィードバックされている。ここで、コンデンサC4は、差動増幅器Q21のゲインA1を決定し、このゲインA1は、
A1=(Cs1−Cs2)/C4 ……(1)
で表される。抵抗R1及びR2は、差動増幅器Q21の直流電位を安定させるために使用される。
【0020】
この差動増幅器Q21では、静電可変容量Cs1及びCs2の差分が出力される。このため、加速度センサ1に加えられる加速度が“0”であるときには、重錘7の変位が0となるので、Cs1=Cs2となり、差動増幅器Q21の出力は零となる。
加速度が“0”でないときには、重錘7が変位することにより、静電可変容量Cs1≠Cs2となり、その差分が差動増幅器Q21から出力される。加速度センサ1に加えられる加速度が大きいほどその差が大きくなり、差動増幅器Q21の出力も大きくなる。
【0021】
そして、差動増幅器Q21の出力がキャリア信号生成回路21のキャリア信号が入力された復調回路22に供給され、この復調回路22で差動増幅器Q21から得られるキャリア信号によって振幅変調された出力信号を復調する。
この復調回路22から出力される復調信号がローパスフィルタ23でノイズ除去され、A/D変換回路24でデジタル信号に変換されて加速度信号として出力される。
【0022】
この
図2の静電容量検出回路20では、X,Y軸方向のように、差動構造の静電可変容量Cs1及びCs2が得られる場合に適用できるものであるが、Z軸方向の加速度の場合には、非対称構造であるので、上述した
図2の静電容量検出回路20に代えて
図3に示す静電容量検出回路30を適用する。
【0023】
この
図3の静電容量検出回路30では、
図2の差動増幅器Q21に対応する演算増幅器Q31の非反転入力端子が接地され、反転入力端子に加速度センサ1の可動電極4及びZ軸用固定電極9間の静電可変容量Csが接続されている。また、この静電可変容量Csと並列にキャリア信号調整回路31とダミー容量Cdの直列回路がダミー容量Cdを演算増幅器Q31の反転入力端子側として接続している。ここで、ダミー容量Cdは、加速度センサ1内には形成する必要はなく、静電容量検出回路30を実装するプリント配線基板に配置することができる。
【0024】
さらに、加速度センサ1の可動電極4及びZ軸用固定電極9間の静電可変容量Csの他端及びキャリア信号調整回路31の入力側に前述した
図2の静電容量検出回路20と同様のキャリア信号生成回路21が接続されている。
ここで、キャリア信号調整回路31は、演算増幅器Q32を有し、この演算増幅器Q32の反転入力端子が抵抗R4を介してキャリア信号生成回路21に接続され、非反転入力端子が接地され、さらに出力側が抵抗R3を介して反転入力端子に接続されて負帰還回路が形成されている。
【0025】
このキャリア信号調整回路31では、演算増幅器Q32の非反転入力端子が接地されているとともに、負帰還がかけられているので、演算増幅器Q32の反転入力端子及び非反転入力端子間の差動入力電圧VsがVs≒0となるイマジナリ・ショートが生じる。
すなわち、抵抗R4に加えられる電圧をVinとし、演算増幅器Q32の出力電圧をVoutとし、抵抗R4を通じて入力される入力電流をIr1とすると、この入力電流Ir1は
Ir1≒Vin/R4 ……(2)
となる。
【0026】
演算増幅器Q32の入力端子には電流が流れ込まないので、帰還抵抗R3を流れる電流Ir2は
Ir2=Ir1≒Vin/R4 ……(3)
となる。
このため、帰還抵抗R3の端子間電圧Vr3は、
Vr3=Ir2・R3≒(Vin/R4)R3 ……(4)
となる。
【0027】
このため、演算増幅器Q32の出力電圧Voutは、
Vout≒−Vr3≒−(R3/R4)Vin ……(5)
となる。
したがって、演算増幅器Q32のゲインA2は
A2=Vout/Vin=−R3/R4 ……(6)
となり、演算増幅器Q32はゲインA2の反転増幅器となる。
【0028】
この結果、キャリア信号調整回路31でキャリア信号が位相反転されて増幅され、このキャリア信号の反転増幅出力がダミー容量Cdに供給される。
このため、ダミー容量Cdから出力されるキャリア信号と静電可変容量Csから出力されるキャリア信号とを加算することにより、差分容量(=Cs−Cd)が得られ、これが演算増幅器Q31の反転入力端子に入力される。
【0029】
このとき、加速度センサ1の重錘7にZ方向の加速度が零であるときに、静電可変容量Csから出力されるキャリア信号とダミー容量Cdから出力されるキャリア信号とが相殺されて零となるようにキャリア信号調整回路31の演算増幅器Q32のゲインA2が調整されている。
したがって、加速度センサ1の重錘7に加えられるZ方向の加速度が零であるときには、演算増幅器Q31の反転入力側に入力される入力信号レベルは零となり、A/D変換回路34から出力される加速度信号も零となる。
【0030】
そして、加速度センサ1の重錘7に上方に向かう加速度が加えられると、静電可変容量CsはZ方向加速度が零の状態から増加する。このため、演算増幅器Q31の反転入力端子に入力される入力信号レベルが正方向に増加し、この演算増幅器Q31の出力も負方向に減少する。この演算増幅器Q31の出力が復調回路32で復調され、ローパスフィルタ33でノイズ除去されてからA/D変換回路34でデジタル値に変換されてZ方向加速度信号として出力される。
【0031】
逆に、加速度センサ1の重錘7に下方に向かう加速度が加えられると、静電可変容量CsはZ方向加速度が零の状態から減少する。このため、演算増幅器Q31の反転入力端子に入力される入力信号レベルが負方向に減少し、この演算増幅器Q31の出力が正方向に増加する。この演算増幅器Q31の出力が復調回路32で復調され、ローパスフィルタ33でノイズ除去されてからA/D変換回路34でデジタル値に変換されてZ方向加速度信号として出力される。
【0032】
この
図3の本実施形態の特性を説明するために、比較例として前述した
図2の静電容量検出回路20の静電可変容量Cs2を同じ容量を有するダミー容量C41で置換した
図4に示す静電容量検出回路40を考える。
この場合、加速度センサ1は、センサ梁構造の設計の難しさにより、一般に梁のZ方向のバネ定数はX,Y方向に比べて大きくなる。これは梁の上面から見た幅は細くできるが、断面から見た厚さは、重錘全体の強度を保つために前記幅ほどは薄くできないからである。一般に振動方向に対し垂直方向の梁の幅はバネ定数に対して1乗で関連するが、振動方向に対し同一方向の梁の厚みは3乗で関連する。したがって、断面から見た厚さ方向の振動(すなわちZ軸)に対するバネ定数はX,Y軸と比べて大きくなる。
【0033】
このため、Z軸の静電容量の変化の割合は、X,Y軸に比べて小さい。今ここで、Z軸の加速度による静電容量変化をΔCsとし、X,Y軸の静電容量変化をΔCs1とすると、同一の加速度に対しては、
ΔCs/Cs<ΔCs1/Cs1 …………(7)
となる。
【0034】
次に、差動増幅器Q21による演算増幅回路のノイズゲインを考える。一般に、差動増幅器Q21の入力等価ノイズに対するノイズゲインは概算すると、
図2の回路では、Gn2=(Cs1+C2)/C4、
図4の回路ではGn3=(Cs+C2)/C4となる。ここで、一般にコンデンサC2の容量はそれぞれCs,Cs1にほぼ比例し、コンデンサC4の容量はそれぞれΔCs,ΔCs1に比例するので、
(Cs1+C2)/C4 ∝ Cs1/ΔCs1 ……(8)
(Cs+C2)/C4 ∝ Cs/ΔCs ……(9)
となる。したがって、(7)式より、(8)<(9)となり、X,Y軸に比べてZ軸のノイズゲインが大きくなり、ひいては加速度のZ軸出力ノイズが大きくなってしまうという課題がある。
【0035】
しかしながら、
図3に示す本実施形態では、演算増幅器Q32のゲインA2の絶対値を
図4のCs/C2より大きくすると、ダミー容量Cdを
図4の容量C2より小さくすることができる。
すなわち、ダミー容量Cdは、
Cd=Cs/A2 ……(10)
と設定することができ、A2>Cs/C2と設計すれば、
Cd=Cs/A2<Cs/(Cs/C2)=C2 ……(11)
となる。これにより、本実施形態によるZ軸ノイズゲインGn1は、
Gn1=(Cs+Cd)/C4 ……(12)
となる。この結果、本実施形態によるZ軸ノイズゲインGn1は、
図4による前述した(9)式で表されるノイズゲインGn3より小さくなる。また、演算増幅器Q32のゲインA2をさらに大きくすれば、本実施形態による上記(12)式で表されるZ軸ノイズゲインを前述した(8)式で表されるX,Y軸のノイズゲインGn2と等しく設定することができる。
【0036】
また、本実施形態によると、演算増幅器Q31の線形入力範囲が狭い場合にも適用することができる。前述した
図4の静電容量検出回路40の場合、差動増幅器Q21の線形入力範囲をVi、キャリア信号生成回路21の出力振幅をVoとすると、
Vo×Cs/(Cs+C2)<Vi ……(13)
を満たす必要があり、このためには容量C2を大きくする必要がある。
【0037】
差動増幅器Q21の線形入力範囲Viが小さくなるほど、容量C2を大きくする必要がある。すると、前記(9)式で表されるノイズゲインGn3が大きくなり、ひいては加速度のZ軸出力ノイズが大きくなってしまうという課題がある。
しかしながら、本実施形態によると、演算増幅器Q31でも非反転入力端子が接地されているので、反転入力端子も接地にイマジナリ・ショートされる。このため、演算増幅器Q31の入力信号レベルは、線形動作範囲Vi内に保持される。演算増幅器Q31の線形動作範囲が小さくても、確実に範囲内に保持される。したがって、前記(13)式のような縛りによりダミー容量Cd(
図4のC2は
図3のダミー容量Cdに相当する)を大きくする必要はなく、ノイズゲインが大きくなることはない。
【0038】
このように、本実施形態では、ダミー容量Cdは静電容量検出回路30を実装するプリント配線基板に搭載することができ、加速度センサ1内に形成する必要がないので、加速度センサ1の構成を小型化することができる。
また、キャリア信号調整回路31で、演算増幅器Q32を、非反転入力端子を接地するとともに、負帰還回路を形成することにより、イマジナリ・ショート構成としたので、演算増幅器Q32をゲインA2=R3/R4の反転増幅器とすることができ、このゲインA2を調整することにより、ダミー容量Cdを小さい値に設定することができる。このため、Z軸方向のノイズゲインGn1を小さくして、高精度の静電容量検出を行うことができる。
【0039】
さらに、演算増幅器Q31も非反転入力端子を接地するとともに、負帰還回路を形成することにより、イマジナリ・ショート構成とされているので、この演算増幅器Q31の反転入力端子が接地されることになり、線形入力範囲Viが狭い場合でも演算増幅器Q1の入力信号レベルを線形動作範囲内に保持することができる。このため、線形入力範囲Viに入力信号レベルを保持するためにダミー容量Cdを大きくする必要はなく、ノイズゲインが大きくなって加速度のZ出力ノイズが大きくなることを確実に抑制することができる。
【0040】
なお、上記実施形態においては、キャリア信号調整回路31における演算増幅器Q32のゲインA2が抵抗R3及びR4で決定される場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、
図5に示すように、演算増幅器Q32の出力側と接地との間に可変抵抗VRを介挿し、この可変抵抗VRの摺動端子に抵抗R3を接続する。これにより、可変抵抗VRの抵抗値をR5とすると、演算増幅器Q32のゲインA2はA2=(R3+R5)/R4となる。このため、可変抵抗VRの抵抗値R5を調整することにより、ゲインA2を任意に調整することができる。したがって、前述した(10)式の関係からダミー容量Cdと静電容量Csとの容量差を微調整することができる。
【0041】
さらに、加速度が“0”であるときの演算増幅器Q31の出力を零に調整することが容易にできる。このため、ローパスフィルタ23の出力側に接続されたA/D変換回路34の入力範囲を有効利用することができ、A/D変換回路34のSN比を改善することができる。
すなわち、A/D変換回路34の入力電圧範囲をVrangeとし、A/D変換回路34のノイズをNadcとし、A/D変換回路34の零点オフセットをZofとしたときに、A/D変換回路34のSN比は(Vrange−Zof)/Nadcで表される。
【0042】
このため、キャリア信号調整回路31のゲインを調整
することにより演算増幅器Q31の出力を調整
し、A/D変換回路34の零点オフセットZofを小さくすることにより、A/D変換回路34のSN比を大きくすることができる。
また、
図5では、キャリア信号調整回路31のゲインA2を調整してダミー容量Cdと静電容量Csとの容量差を微調整する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、
図6に示すように、ダミー容量Cdと並列に可変容量Cvrを接続してダミー容量Cdと可変容量Cvrとの合成容量を調整するようにしても上記
図5と同様の作用効果を得ることができる。