(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニトロン(A)が、N−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、N−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、N−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、N−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、N−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、および、N−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群から選ばれる少なくとも1種のニトロンである、請求項1に記載のポリマー変性剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリマー変性剤組成物]
本発明のポリマー変性剤組成物は、炭素−炭素不飽和結合を有するポリマーを変性させるポリマー変性剤組成物であって、少なくとも1個のカルボキシ基を有するニトロン(A)と、炭素数6以上の脂肪酸(B)と、を含有するポリマー変性剤組成物である。
【0011】
変性ポリマーについて、カルボキシ基を有するニトロン(A)のみで変性させた場合と、本発明のポリマー変性剤組成物により変性させた場合とを対比すると、後者の方が、加硫物のtanδ(60℃)の値が小さくなり、低発熱性に優れる。
これは、前者の場合には、ニトロン(A)のカルボキシ基が、他のニトロン(A)のカルボキシ基と会合してしまい、加硫物においてシリカ等の添加剤と相互作用しにくくなるためと考えられる。
一方、後者においては、脂肪酸(B)のカルボキシ基が、率先してニトロン(A)のカルボキシ基と会合し、当該会合は容易に解除されるため、ニトロン(A)のカルボキシ基とシリカ等の添加剤とが相互作用しやすくなるためと考えられる。
もっとも、上記メカニズムは推定であり、当該メカニズム以外であっても、本発明の範囲とする。
【0012】
〔ニトロン(A)〕
本発明に用いられるニトロン(A)としては、少なくとも1個のカルボキシ基(−COOH)を有するニトロン(以下、便宜的に「カルボキシニトロン」ともいう)であれば特に限定されないが、例えば、下記式(a)で表されるカルボキシニトロンが好適に用いられる。なお、ニトロンとは、酸素原子がシッフ塩基の窒素原子に結合した化合物の総称である。
【0014】
式(a)中、mおよびnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を示し、mとnとの合計が1以上である。
mが示す整数としては、ニトロンを合成する際の溶媒への溶解度が良好になり合成が容易になるという理由から、0〜2の整数が好ましく、0〜1の整数がより好ましい。
nが示す整数としては、ニトロンを合成する際の溶媒への溶解度が良好になり合成が容易になるという理由から、0〜2の整数が好ましく、0〜1の整数がより好ましい。
また、mとnとの合計(m+n)は、ポリマーへの溶解度が良好になり反応性が優れるという理由から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0015】
このような式(a)で表されるカルボキシニトロンとしては、下記式(a1)で表されるN−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(a2)で表されるN−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(a3)で表されるN−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(a4)で表されるN−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、下記式(a5)で表されるN−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、および、下記式(a6)で表されるN−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群から選ばれる少なくとも1種のニトロンであるのが、反応性が高く、生産性に優れ、かつ、本発明のポリマー変性剤組成物により変性させた変性ポリマーを加硫物にしたときの低発熱性がより優れるという理由から、好ましい。
【0017】
なお、ニトロン(A)の合成方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ヒドロキシアミノ基(−NHOH)を有する化合物と、アルデヒド基(−CHO)を有する化合物とを、ヒドロキシアミノ基とアルデヒド基とのモル比(−NHOH/−CHO)が1.0〜1.5となる量で、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン等)下で、室温で1〜24時間撹拌することにより、両基が反応し、式「−N
+(−O
-)=CH−」で表されるニトロン基を有するニトロンを与える。このとき、両化合物のいずれか一方がカルボキシ基を有することにより、少なくとも1個のカルボキシ基を有するニトロン(A)が得られる。
【0018】
〔脂肪酸(B)〕
本発明に用いられる脂肪酸(B)としては、炭素数6以上の脂肪酸であれば特に限定されず、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよく、また、飽和でも不飽和でもよい。
脂肪酸(B)の炭素数は、本発明のポリマー変性剤組成物を用いて未変性ポリマーを変性させる際に揮発しにくいため作業者への影響が少なく、かつ、tanδ(60℃)を低下させる効果がより優れるという理由から、12〜26が好ましく、14〜24がより好ましく、16〜22がさらに好ましい。
【0019】
直鎖状の飽和脂肪酸としては、具体的には、例えば、ヘキサン酸(カプロン酸:炭素数6)、オクタン酸(カプリル酸:炭素数8)、デカン酸(カプリン酸:炭素数10)、ドデカン酸(ラウリン酸:炭素数12)、テトラデカン酸(ミリスチン酸:炭素数14)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸:炭素数16)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸:炭素数17)、オクタデカン酸(ステアリン酸:炭素数18)、エイコサン酸(アラキジン酸:炭素数20)、ドコサン酸(ベヘン酸:炭素数22)、テトラコサン酸(リグノセリン酸:炭素数24)、ヘキサコサン酸(セロチン酸:炭素数26)などが挙げられる。
分岐鎖状の飽和脂肪酸としては、具体的には、例えば、14−エチルヘキサデカン酸(炭素数18)、2−ブチルテトラデカン酸(炭素数18)、17−メチルオクタデカン酸(炭素数19)などが挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、具体的には、例えば、パルミトレイン酸(炭素数16)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、α−リノレン酸(炭素数18)、γ−リノレン酸(炭素数18)、アラキドン酸(炭素数20)、ステアロール酸(炭素数18)などが挙げられる。
これらのうち、不飽和脂肪酸はニトロン(A)との反応性を有するという理由から、直鎖状または分岐鎖状の飽和脂肪酸が好ましく、入手容易性の観点から、直鎖状の飽和脂肪酸がより好ましい。
【0020】
〔脂肪酸(B)とニトロン(A)とのモル比(B/A)〕
本発明のポリマー変性剤組成物は、ニトロン(A)と脂肪酸(B)とを混合することにより得られるが、このとき、ニトロン(A)に対する脂肪酸(B)のモル比(B/A)は、例えば、0.1〜40が挙げられ、tanδ(60℃)を低下させる効果がより優れるという理由から、0.2〜35が好ましく、0.5〜30がより好ましい。
【0021】
[変性ポリマー]
本発明の変性ポリマーは、本発明のポリマー変性剤組成物で変性された変性ポリマーであり、具体的には、未変性ポリマーを、本発明のポリマー変性剤組成物を用いて変性させることにより得られる。
【0022】
〔未変性ポリマー〕
本発明に用いられる未変性ポリマーは、後述するニトロンの変性機構から、炭素−炭素不飽和結合を有するポリマーである。「炭素−炭素不飽和結合」とは、炭素−炭素二重結合(C=C)および/または炭素−炭素三重結合(C≡C)を含む概念である。未変性ポリマーは、このような不飽和結合を主鎖に有していてもよいし、例えばビニル基として側鎖に有していてもよい。
なお、ここでいう「未変性」とはニトロンにより変性されていないことを意味するものであり、他の成分により変性されたポリマーを排除するものではない。
このような未変性ポリマーとしては、例えば、加硫可能なジエン系ゴム成分が挙げられ、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリルニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0023】
〔変性ポリマーの製造方法〕
本発明の変性ポリマーの製造方法としては、上記未変性ポリマーと、ニトロン(A)および脂肪酸(B)を含有する本発明のポリマー変性剤組成物とを、例えば150〜200℃で1〜30分間混合することにより、本発明の変性ポリマーを得る方法が挙げられる。
このとき、例えば、下記式(1)に示すように、上記未変性ポリマーが有する不飽和結合とニトロン(A)が有するニトロン基との間で、環化付加反応が起こり、五員環を与える。
【0025】
また、例えば、上記未変性ポリマーが側鎖に、不飽和結合としてビニル基を有する場合には、下記式(2)に示すように、当該ビニル基とニトロン基との間で、環化付加反応が起こり、五員環を与える。
【0027】
そして、式(1)や式(2)に示すような反応と合わせて、ニトロン(A)に由来するカルボキシ基と、脂肪酸(B)が有するカルボキシ基とが会合するものと考えられる。
【0028】
上記未変性ポリマーに反応させるニトロン(A)の量は、tanδ(60℃)を低下させる効果がより優れるという理由から、上記未変性ポリマー100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく0.3〜5質量部がより好ましい。
【0029】
また、本発明の変性ポリマーを得るに際して、不飽和結合変性率は0.01〜2.0モル%が好ましく、0.02〜1.5モル%がより好ましい。
ニトロン反応効率は20〜100モル%が好ましく、40〜100モル%がより好ましい。
【0030】
なお、不飽和結合変性率とは、未変性ポリマーが有する不飽和結合の全モル数に対する、ニトロン(A)により変性された不飽和結合のモル数の割合(単位:モル%)であり、未変性ポリマーおよび変性ポリマー(すなわち、変性前後のポリマー)のNMR測定を行うことで求めることができる。
また、ニトロン反応効率とは、未変性ポリマーに対して配合したニトロン(A)の全モル量に対する、未変性ポリマーの不飽和結合と反応したニトロン(A)のモル量の割合(単位:モル%)である。
【0031】
〔変性ポリマーの好適態様〕
上述したように、ニトロン(A)として式(a)で表されるカルボキシニトロンが好適に用いられることから、本発明の変性ポリマーは、式(a)で表されるニトロン(A)に由来する下記式(I)で表される五員環構造を有するのが好ましい。なお、式(I)中、mおよびnは、上述した式(a)中のmおよびnと同義である。
そして、このような本発明の変性ポリマーにおいても、式(a)で表されるニトロン(A)に由来するカルボキシ基の少なくとも一部に、脂肪酸(B)のカルボキシ基が会合しているものと考えられる。
【0033】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、本発明の変性ポリマーと、添加剤と、を含有するゴム組成物である。
上記添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、フィラー(例えば、シリカ、カーボンブラックなど)、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、各種オイル、可塑剤(例えば、多価アルコール、安息香酸エステル類、フタル酸エステル類など)、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、加硫剤、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。
上記添加剤の配合量は特に限定されず、適宜選択できる。例えば、シリカ等のフィラーであれば、その配合量は、本発明の変性ポリマー100質量部に対して、10〜100質量部が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、60〜145℃で1〜30分間、混練する方法などが挙げられる。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫条件で加硫し、加硫物とすることができる。
【0035】
本発明のゴム組成物の用途は特に限定されないが、本発明の変性ポリマーを用いた加硫物においては、低発熱性に優れることから、例えば、タイヤ用組成物、より具体的には、タイヤトレッド用組成物として好ましく適用できる。
【0036】
[タイヤ]
本発明のタイヤ(空気入りタイヤ)は、上述した本発明のゴム組成物を用いて製造した空気入りタイヤである。なかでも、本発明のゴム組成物をタイヤトレッドに用いて製造した空気入りタイヤが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0037】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0038】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造できる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを使用できる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
〈変性ポリマーの製造〉
未変性ポリマーであるBR(NIPOL BR 1220、日本ゼオン社製)100質量部、SBR(タフデンE580、旭化成ケミカルズ社製)137.5質量部(ゴム分100質量部に対する油展量:37.5質量部)、NR(RSS#3)100質量部、または、IR(NIPOL IR2200、日本ゼオン社製)100質量部に対して、ニトロン(A)であるN−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン(CPN)のみを、または、CPNと脂肪酸(B)であるステアリン酸(StA)とを、下記第1表または第2表に示す割合で配合し、160℃のバンバリーミキサーで5分間混合して、変性ポリマーを得た。なお、StAを用いなかった場合には、下記第1表および第2表中の対応する箇所に「−」を記載した。
【0041】
得られた変性ポリマーについて、上述した不飽和結合変性率およびニトロン反応効率を測定した。この測定結果についても、下記第1表および第2表に示す。
不飽和結合変性率については、具体的には、変性前後のポリマーについて、CDCl
3を溶媒とした
1H−NMR測定(CDCl
3、400MHz、TMS)により、8.08ppm付近(カルボキシ基に隣接する2つのプロトンに帰属する)のピーク面積を測定し、変性率を算出した。なお、変性後のポリマー(変性ポリマー)の
1H−NMR測定は、変性後の生成物をトルエンに溶解して、メタノールに沈殿させる精製を2回繰り返した後に、減圧下で乾燥したサンプルを用いて測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
上記第2表に示す結果から明らかなように、天然ゴム(NR)またはイソプレンゴム(IR)を変性させる際に、ステアリン酸(StA)を使用した場合には、ステアリン酸(StA)を使用しなかった場合と比べて、ニトロン反応効率が向上していた。
【0045】
〈比較例1〜5および実施例1〜7〉
下記第3表または第4表に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、硫黄および加硫促進剤を除く成分を加えて、80℃のバンバリーミキサーで5分間混合した後、ロールを用いて、硫黄および加硫促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。その後、得られたゴム組成物について、加硫を行ない、加硫物を得た。加硫は、プレス加硫(160℃×20分間)で行なった。
【0046】
〈変性ポリマーの評価〉
各例において、得られた変性ポリマーおよび加硫物について、以下の評価を行なった。結果を下記第3表および第4表に示す。
【0047】
《引張特性》
各例において、上述のように加硫を行ない、2mm厚のシートを作製した。このシートから3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準拠して行い、300%モジュラス(M
300)(単位:MPa)、引張強さ(T
B)(単位:MPa)および切断時伸び(E
B)(単位:%)を、室温にて測定した。
下記第3表では、比較例1の測定結果を「100」として、指数表示した。また、下記第4表では、比較例4ならびに実施例4および5については比較例4の測定結果を「100」として指数表示し、比較例5ならびに実施例6および7については比較例5の測定結果を「100」として指数表示した。指数表示の値が大きいほど、引張特性に優れるものとして評価できる。
【0048】
《tanδ(0℃)》
得られた各例の加硫物について、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度0℃の損失正接tanδ(0℃)を測定した。
下記第3表では、比較例1の測定結果を「100」として、指数表示した。また、下記第4表では、比較例4ならびに実施例4および5については比較例4の測定結果を「100」として指数表示し、比較例5ならびに実施例6および7については比較例5の測定結果を「100」として指数表示した。指数表示の値が大きいほど(つまり、tanδ(0℃)の値が大きいほど)、ウェットグリップ性能が優れるものとして評価できる。
【0049】
《tanδ(60℃)》
得られた各例の加硫物について、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の損失正接tanδ(60℃)を測定した。
下記第3表では、比較例1の測定結果を「100」として、指数表示した。また、下記第4表では、比較例4ならびに実施例4および5については比較例4の測定結果を「100」として指数表示し、比較例5ならびに実施例6および7については比較例5の測定結果を「100」として指数表示した。指数表示の値が小さいほど(つまり、tanδ(60℃)の値が小さいほど)、低発熱で転がり抵抗が優れるものとして評価できる。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
上記第3表および第4表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・BR:NIPOL BR 1220(日本ゼオン社製)
・BR(CPN変性):上述したもの(第1表参照)
・BR(CPN+StA変性):上述したもの(第1表参照)
・SBR:タフデンE580(ゴム分100質量部に対する油展量:37.5質量部、旭化成ケミカルズ社製)
・SBR(CPN変性):上述したもの(第1表参照)
・SBR(CPN+StA変性1):上述したもの(第1表参照)
・SBR(CPN+StA変性3):上述したもの(第1表参照)
【0053】
・NR:RSS#3
・NR(CPN+StA変性1):上述したもの(第2表参照)
・NR(CPN+StA変性3):上述したもの(第2表参照)
・IR:NIPOL IR2200(日本ゼオン社製)
・IR(CPN+StA変性1):上述したもの(第2表参照)
・IR(CPN+StA変性3):上述したもの(第2表参照)
【0054】
・シリカ:ZEOSIL 165GR(ロディアシリカコリア社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・酸化亜鉛:亜鉛華3号(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸YR(日油社製)
・老化防止剤:SANTOFLEX 6PPD(Soltia Europe社製)
・シランカップリング剤:Si69(エボニックデグサ社製)
・プロセスオイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
・加硫促進剤(CZ):ノクセラーCZ(大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤(DPG):ソクシノールD−G(住友化学社製)
【0055】
上記第3表において、まず、比較例1と比較例2と実施例1とを対比する。未変性ポリマーであるBRおよびSBRを使用した比較例1を基準とした場合に、ニトロン(A)と脂肪酸(B)とで変性したBR(CPN+StA変性)を用いた実施例1は、比較例1のみならず、ニトロン(A)でのみ変性したBR(CPN変性)を用いた比較例2よりも、tanδ(60℃)の値が小さくなっており、低発熱性に優れることが分かった。
【0056】
また、比較例1と比較例3と実施例2とを対比した場合、ニトロン(A)と脂肪酸(B)とで変性したSBR(CPN+StA変性1)を用いた実施例2は、比較例1のみならず、ニトロン(A)でのみ変性したSBR(CPN変性)を用いた比較例3よりも、tanδ(60℃)の値が小さくなっており、低発熱性に優れることが分かった。
【0057】
また、実施例2と実施例3とを対比すると、脂肪酸(B)とニトロン(A)とのモル比(B/A)を異ならせたSBR(CPN+StA変性3)を用いた実施例3においても、実施例2と同等以上の低発熱性が得られたことが分かった。
【0058】
上記第4表において、比較例4と実施例4および5とを対比すると、ニトロン(A)と脂肪酸(B)とで変性したNR(CPN+StA変性1)を用いた実施例4、および、NR(CPN+StA変性3)を用いた実施例5は、未変性ポリマーであるNRを使用した比較例4よりも、tanδ(60℃)の値が小さくなっており、低発熱性に優れることが分かった。
また、比較例5と実施例6および7とを対比すると、ニトロン(A)と脂肪酸(B)とで変性したIR(CPN+StA変性1)を用いた実施例6、および、IR(CPN+StA変性3)を用いた実施例7は、未変性ポリマーであるIRを使用した比較例5よりも、tanδ(60℃)の値が小さくなっており、低発熱性に優れることが分かった。
【0059】
なお、比較例1〜3においても、ゴム組成物を調製する段階で脂肪酸(B)であるステアリン酸を配合しているが、実施例1〜3のような優れた低発熱性は得られなかった。
これは、比較例4と実施例4および5との関係、ならびに、比較例5と実施例6および7との関係においても同様である。
このため、本発明の効果は、未変性ポリマー(BRやSBR)をニトロン(A)で変性させるときに脂肪酸(B)を併せて用いることで得られるものであり、脂肪酸(B)をその後に添加した場合には得られない驚くべき効果であるといえる。
【解決手段】炭素−炭素不飽和結合を有するポリマーを変性させるポリマー変性剤組成物であって、少なくとも1個のカルボキシ基を有するニトロン(A)と、炭素数6以上の脂肪酸(B)と、を含有するポリマー変性剤組成物。