(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダヘッドと、カムチェーンを介してクランクシャフトにより駆動されるカムシャフトと、前記カムシャフトに連結されるカムスプロケットと、前記カムスプロケットに隣接して設けられて前記カムシャフトをシリンダヘッドに支持するカムハウジングと、を備えたエンジンの動弁機構において、
前記カムハウジングは、前記カムシャフトの上半部を支持するアッパハウジングと、前記カムシャフトの下半部を支持するロアハウジングと、で構成されて、
前記ロアハウジングの長手方向に沿って形成されて前記シリンダヘッドの吸排気側にエンジンオイルを分配する内部油路と、前記シリンダヘッドからエンジンオイルを導入し、
前記カムシャフトの軸線方向で前記内部油路に対して前記カムスプロケットが配置される側から前記内部油路に接続して前記内部油路にエンジンオイルを供給するオイル導入路と、を含み、
前記カムスプロケットは、前記ロアハウジングと対向する面に前記ロアハウジングと離間する方向に深さを有する凹部が形成され、
前記オイル導入路は、前記カムシャフトの軸線方向から見た場合における、前記凹部の領域内に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの動弁機構。
前記シリンダヘッドには、前記カムシャフトに押圧されて揺動するロッカアームと、前記ロッカアームの一端を支持する油圧式のラッシュアジャスタと、が配置され、前記内部油路は、前記ラッシュアジャスタに供給するラッシュアジャスタ用油路と接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの動弁機構。
前記ロアハウジングは、前記カムシャフトに連結された可変バルブタイミング装置にオイルを供給する通路が、前記カムシャフトの軸線方向で前記内部油路に対して前記カムスプロケットが配置される側とは逆の側に形成されたことを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載のエンジンの動弁機構。
前記ロアハウジングは、長手方向における端面には、前記内部油路の開口を閉塞するプラグが設けられ、前記端面は、前記カムシャフトの軸線方向から見た場合における、カムチェーンで囲まれた領域の内部に配置されることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載のエンジンの動弁機構。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジンでは、高出力化、燃費向上、排気ガスの浄化を目的として、エンジンの運転状態に応じて、アクチュエータ内のエンジンオイルの供給量を制御することにより、クランク角に対するカムシャフトの位相を変化させて、吸気バルブおよび排気バルブの開閉時期を進角又は遅角することを実現する油圧式の可変バルブタイミング装置(Variable Valve Timing device=VVT)を搭載するものが多くなっている。
また、エンジンのシリンダヘッドに、油圧によりバルブクリアランスを調整するラッシュアジャスタを備えたものがある。
このように可変バルブタイミング装置やラッシュアジャスタが搭載されたエンジンでは、シリンダヘッドに対してカムシャフトを支持するカムハウジングの内部に、可変バルブタイミング装置やラッシュアジャスタと連通してエンジンオイルを供給する油路が形成されたエンジンの動弁機構が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたエンジンの動弁機構では、シリンダヘッドの上部にカムハウジングのロアハウジングが配置され、ロアハウジングのさらに上にはカムハウジングのアッパハウジングが配置されて、ロアハウジングとアッパハウジングとの間でカムシャフトを回転自在に支持している。ロアハウジングは、シリンダヘッドとは別体として形成され、シリンダヘッドの一端部に形成された取付面の上に、車両前後方向に沿って延びるように配置されている。
【0004】
また、上記ロアハウジングの下方のシリンダヘッド内には、ラッシュアジャスタにオイルを供給するためのラッシュアジャスタ用油路が配置されている。ロアハウジングは、シリンダヘッド内部に形成されたオイル導入路からオイルが導入され、ラッシュアジャスタ用油路にエンジンオイルを導出する内部油路が、水平かつ車両前後方向に延びるように形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の構造の詳細を図面に基づいて説明する。なお、以下においては、本発明のエンジンの動弁機構を自動車に適用した例について説明するが、これに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、本発明のエンジンの動弁機構は、自動二輪車、スノーモービル、船舶等のエンジンについても適用が可能である。
以下では、エンジンが
図1で示されている向きで車両に搭載されているものとし、この方向を基準にして説明する。
【0012】
(エンジンの概略構成)
図1を参照して、本実施形態に係るエンジンの概略構成について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るエンジン1を、
図2に示されるカムチェーンカバー10を取り外した状態で右方から見た図である。
図1で示されているように、本実施形態に係るエンジン1は、DOHC4バルブ式の直列4気筒の自動車用ガソリンエンジンであり、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の下部に配置されたオイルパン3と、シリンダブロック2の上部に配置されたシリンダヘッド4と、シリンダヘッド4の上部を覆うように配置されたシリンダヘッドカバー5を備えている。
【0013】
(シリンダヘッドの周辺構成)
図2は、本発明の実施の形態に係るエンジンについて、シリンダヘッドカバー5を取り外した状態を、上方から見た図である。
図2で示されているように、シリンダヘッド4の上部には、吸気側カムシャフト6および排気側カムシャフト7が互いに平行に配置されている。シリンダヘッド4の右側壁8には、シリンダヘッド4との間でカムチェーン室9を形成するカムチェーンカバー10が設けられている。シリンダヘッド4の上部には、動弁室11が設けられ、吸気側カムシャフト6および排気側カムシャフト7は、動弁室11とカムチェーン室9とを左右方向横切るように配置されている。
【0014】
エンジンの運転状態に応じて、図示しないアクチュエータ内のエンジンオイルの供給量を制御することにより、クランク角に対するカムシャフト6,7の位相を変化させて、吸気バルブおよび排気バルブの開閉時期を進角又は遅角することを実現する吸気側可変バルブタイミング装置12および排気側可変バルブタイミング装置13が、吸気側カムシャフト6および排気側カムシャフト7のカムチェーン室9の側の端部に設けられている。吸気側可変バルブタイミング装置12および排気側可変バルブタイミング装置13には、それぞれ吸気側カムスプロケット14および排気側カムスプロケット15が設けられており、その歯部にはカムチェーン16が巻き掛けられ、カムチェーン16によりクランクシャフト17からの駆動力が吸気側カムスプロケット14および排気側カムスプロケット15に伝達されることにより、吸気側カムシャフト6および排気側カムシャフト7が回転駆動される。シリンダヘッド4の動弁室内には、カムシャフト6,7に押圧されて揺動するロッカアーム18と、ロッカアーム18の一端を支持して油圧によりバルブクリアランスを調整する油圧式のラッシュアジャスタ19A,19Bとが設けられている。ラッシュアジャスタ19A,19Bは、吸排気方向で吸気側に配置される吸気側ラッシュアジャスタ19Aと、排気側に配置される排気側ラッシュアジャスタ19Bとからなり、左右方向で複数配置されている。シリンダヘッド4の内部には、それぞれ吸気側ラッシュアジャスタ19Aにエンジンオイルを供給する吸気側ラッシュアジャスタ用油路40と、排気側ラッシュアジャスタ19Bにエンジンオイルを供給する排気側ラッシュアジャスタ用油路41が、左右方向(すなわち、気筒配列方向)に沿って、互いに平行に形成されている。
複数のカムロブ20が設けられたカムシャフト6,7の回転により、カムロブ20がロッカアーム18を介して図示しないバルブを押圧することで、バルブが最大リフト位置と閉弁位置との間で往復運動させられ、図示しない吸気ポートおよび排気ポートの開閉が行われる。
【0015】
吸気側カムシャフト6および排気側カムシャフト7は、左右方向(すなわち、気筒配列方向)に沿って可変バルブタイミング装置12,13に近い側から順に、第1カムハウジング21a〜第5カムハウジング21eにより回転自在に支持されている。第1カムハウジング21aは、シリンダヘッド4の上部に設けられてジャーナル部の下半部を支持する第1ロアハウジング22と、第1ロアハウジング22の上部に設けられてカムシャフトのジャーナル部の上半部を支持する第1アッパハウジング23と、により構成されている。
【0016】
第2カムハウジング21b〜第5カムハウジング21eは、吸排気側で、それぞれ別体で形成され、シリンダヘッド4と一体で形成されたロアハウジングと、ロアハウジングの上方に設けられたアッパハウジングと、で構成されている。第2カムハウジング21b〜第5カムハウジング21eは、カムシャフト6,7を前後方向で跨ぐように配置され、それぞれ2本の締結ボルト24によってカムシャフトの上方からシリンダヘッド4に締結されている。
【0017】
図3は、
図1におけるシリンダヘッド4の右端部を示した図である。
図3で示されているように、シリンダヘッド4の右側には、立壁である右側壁8が形成され、右側壁8の上部には、第1ロアハウジング22との接合面25が形成されている。第1カムハウジング21aは、カムシャフト6,7の軸中心Cで第1ロアハウジング22と第1アッパハウジング23とに上下で2分割されて構成され、カムシャフト6,7の右端を支持する軸受面が形成されている。第1ロアハウジング22は、上部に軸受面の下半部が形成されて、下部がシリンダヘッド4の右側壁8の上面と接合するように形成されている。第1アッパハウジング23は、下部に軸受面の上半部が形成されて、第1ロアハウジング22と接合するように形成されている。第1アッパハウジング23、第1ロアハウジング22ともに吸気側カムシャフト6を軸支する吸気側軸受部26と排気側カムシャフト7を軸支する排気側軸受部27とが、互いに連結されて形成されている。第1アッパハウジング23、第1ロアハウジング22ともにそれぞれシリンダヘッド4と別体で形成されている。
【0018】
第1アッパハウジング23と第1ロアハウジング22とは、吸気および排気側カムシャフト6,7の前後方向両側にそれぞれ配置される2本、合計で4本の締結ボルト24によって、シリンダヘッド4に対して共締めされて固定される。第1アッパハウジング23および第1ロアハウジング22には、これらの締結ボルト24が貫通するボルト挿通孔28が、それぞれ形成されている。
【0019】
(シリンダヘッド等に形成された油路の構成)
次に、
図3〜
図6を参照して、本実施形態に係るエンジンのシリンダヘッド4等に形成された油路の構成について説明する。
図3で示されているように、シリンダヘッド4の下面から導入するエンジンオイルを、吸気側および排気側ラッシュアジャスタ19A,19B、吸気側および排気側の可変バルブタイミング装置12,13に供給するメイン油路29が、シリンダヘッド4の内部を上下に連通して形成されている。
【0020】
シリンダヘッド4の右側壁8には、メイン油路29から分岐されて吸気側可変バルブタイミング装置12を制御する吸気側油圧制御弁30にエンジンオイルを供給する吸気VVT供給路32が、開口されている。さらに、シリンダヘッド4の右側壁8には、吸気側油圧制御弁30により制御された油圧により、クランクシャフト17に対する吸気側カムシャフト6の位相を進角方向に変化させる吸気側進角通路33と、クランクシャフト17に対する吸気側カムシャフト6の位相を遅角方向に変化させる吸気側遅角通路34が開口されている。
【0021】
また、シリンダヘッド4の右側壁には、メイン油路29から吸気側VVT供給路との分岐よりも下流で分岐され、排気側可変バルブタイミング装置13を制御する排気側油圧制御弁31にエンジンオイルを供給する排気側VVT供給路35が開口されている。また、シリンダヘッド4の右側壁8には、排気側油圧制御弁31により制御された油圧により、クランクシャフト17に対する排気側カムシャフト7の位相を進角方向に変化させる排気側進角通路36と、クランクシャフト17に対する排気側カムシャフト7の位相を遅角方向に変化させる排気側遅角通路37が開口されている。
【0022】
第1ロアハウジング22には、
図3で示されているように、メイン油路29の下流端と接続して、シリンダヘッド4からエンジンオイルを導入するオイル導入路38が形成されている。
また、第1ロアハウジング22は、オイル導入路38の下流端に接続するように吸気側カムシャフト6および排気側カムシャフト7の軸受面より下方に形成され、第1ロアハウジング22の長手方向に沿って形成されてシリンダヘッド4の吸排気側それぞれにエンジンオイルを分配する内部油路39が形成されている。さらに、第1ロアハウジング22には、内部油路39に連通して、吸気側および排気側のラッシュアジャスタ用油路40,41に連絡してエンジンオイルを供給する吸気側連絡油路42および排気側連絡油路43が形成されている。
【0023】
吸気側進角通路33、吸気側遅角通路34、排気側遅角通路37、吸気側連絡油路42、排気側連絡油路43は、シリンダヘッド4の右側壁8、第1ロアハウジング22、および第1アッパハウジング23の内部と連通して形成されている。排気側進角通路36は、上端が第1ロアハウジング22の軸受面に開口されている。
【0024】
図4は、
図3のA−A線、すなわち内部油路39の中心線Rで左右方向に平行に切断して上方から見た図である。
図4で示されているように、吸気側カムスプロケット14および排気側カムスプロケット15が、カムハウジングの幅方向、すなわちカムシャフト6,7の軸線方向Lにおいて、第1ロアハウジング22と近接して設けられている。
【0025】
シリンダヘッド4の動弁室11の底部には、シリンダブロック2を締結するヘッドボルトの着座面が形成された座部44が、動弁室11の吸排気側それぞれに複数設けられており、そのうち、動弁室11の最も右側に位置するものは、カムシャフト6,7の軸線方向Lでシリンダヘッド4の右側壁8に近接して形成されている。第1ロアハウジング22の一部の側壁は、カムシャフト6,7の軸線方向Lで右側壁8に近接して形成された座部44を上方から覆うように、右側壁8の上部の接合面25より幅寸法を大きくして形成されている。
【0026】
オイル導入路38は、
図4で示されているように、第1ロアハウジング22の長手方向で座部44の近傍に設けられ、カムシャフト6,7の軸線方向Lで内部油路39に対して吸気側カムスプロケット14が配置される側から内部油路39に向かって形成されている。第1ロアハウジング22に隣接して設けられる吸気側カムスプロケット14には、第1ロアハウジング22と対向する面に第1ロアハウジング22と離間する方向に深さを有する凹部45が形成され、オイル導入路38は、
図5で示されているように、カムシャフト6,7の軸線方向Lで左方から見た場合に、凹部45の領域内に設けられている。また、第1ロアハウジング22の側壁は、外方からオイル導入路38を囲む部分は、吸気側カムスプロケット14に接近する方向に膨出されて膨出部46が形成されている。
【0027】
図4および
図5で示されているように、第1ロアハウジング22に隣接して設けられる吸気側カムスプロケット14には、第1ロアハウジング22と対向する面に第1ロアハウジング22と離間する方向に深さを有する凹部45が形成されている。そして、カムシャフト6,7の軸線方向Lで内部油路39に対して吸気側カムスプロケット14の配置される側から内部油路39に向かって形成されたオイル導入路38が、カムシャフト6,7の軸線方向Lで左方から見た場合に、
図5で示されているように、凹部45の領域内に設けられている。よって、
図4で示されているように、第1ロアカムハウジングの側壁が、オイル導入路38を外方から囲む分だけ吸気側カムスプロケット14と接近する方向に膨出して形成されても、吸気側カムスプロケット14を第1ロアハウジング22に近接させることができる。また、第1ロアハウジング22と離間する方向で凹部45の深さをさらに大きくすることで、オイル導入路38外側の第1ロアカムハウジングの側壁にあたる膨出部46を凹部45に入り込ませることもできるので、更に吸気側カムスプロケット14を第1ロアハウジング22に近接させることができる。
【0028】
また、
図4で示されているように、シリンダヘッド4は、第1ロアハウジング22との接合面25が上部に形成された立壁である右側壁8と、シリンダブロック2を締結するヘッドボルトの着座面が形成された座部44と、を有しており、これらの座部44のうち、少なくとも一つは、カムシャフト6,7の軸線方向Lで右側壁8に近接して形成されている。また、オイル導入路38は、第1ロアハウジング22の長手方向において、カムシャフト6,7の軸線方向Lで右側壁8に近接して形成された座部44の近傍に設けられている。オイル導入路38は、座部44を避けて設ける必要があるため、この場合、カムシャフト6,7の軸線方向Lで内部油路39に対して動弁室11側に設けることができない。従って、オイル導入路38は、
図4に示すようにカムシャフト6,7の軸線方向Lで内部油路39に対して吸気側カムスプロケット14が配置される側に設けられることになるので、第1ロアハウジング22は内部油路39に対して幅方向で吸気側カムスプロケット14側に大きく膨出して形成されることになる。そこで、オイル導入路38を、カムシャフト6,7の軸線方向Lで左方から見た場合に、凹部45の領域内に設けることで、第1ロアハウジング22、特に膨出部46と吸気側カムスプロケット14との接触をさけつつ、吸気側カムスプロケット14を第1ロアハウジング22に近接させることができる。
【0029】
さらに、
図2および
図6に示されているように、内部油路39は、ラッシュアジャスタ19A,19Bに供給するラッシュアジャスタ用油路40,41と接続されるので、シリンダヘッド4にロッカアーム18の一端を支持する油圧式のラッシュアジャスタ19A,19Bが配置された場合であっても、吸気側カムスプロケット14を第1ロアハウジング22に近接させることができ、エンジンのコンパクト化を図ることができる。
【0030】
第1ロアハウジング22には、カムシャフト6,7に連結された可変バルブタイミング装置12,13にオイルを供給する通路として、吸気側から排気側に向かって順に、吸気側遅角通路34、吸気側進角通路33、排気側遅角通路37が、内部油路39に対して第1ロアハウジング22の左方、すなわち、カムシャフト6,7の軸線方向Lで内部油路39に対して吸気側カムスプロケット14が配置される側とは逆の側に設けられている。内部油路39の排気側端部よりさらに排気側には、排気側進角通路36が設けられる。また、吸気側連絡油路42、排気側連絡油路43が、上面視で内部油路39と重なるように設けられている。
【0031】
前述のように、第1ロアハウジング22の内部には、カムシャフト6,7に連結された可変バルブタイミング装置12,13にオイルを供給する通路が形成されているため、第1ロアハウジング22の幅寸法は大きくなる。しかし、これらの通路は、カムシャフト6,7の軸線方向Lで内部油路39に対してカムスプロケット14,15が配置される側とは逆の側に形成されているので、カムシャフト6,7の軸線方向Lで吸気側カムスプロケット14と第1ロアハウジング22の膨出部46とをできるだけ近接して配置することで、カムシャフト6,7の軸線方向Lにおけるエンジンの寸法をコンパクトにすることができる。
【0032】
内部油路39は、第1ロアハウジング22の長手方向に沿って、第1ロアハウジング22の排気側端面から排気側カムシャフト7の手前の位置まで設けられている。第1ロアハウジング22の排気側端面に形成された開口は、内部油路39よりも大きな外径のプラグ47で圧入ないしねじ止めで閉塞されている。
【0033】
第1ロアハウジング22には、第1アッパハウジング23とシリンダヘッド4とを締結するためのボルトが挿通される第1ボルト挿通孔28a〜第4ボルト挿通孔28dが、長手方向で吸気側から排気側に向かって順に形成されている。
【0034】
これら4箇所のボルト挿通孔のうち、カムハウジングの長手方向で内部油路39と重なる第1〜第3ボルト挿通孔28cの3箇所については、ボルト挿通孔の一部がカムシャフト6,7の軸線方向L(左右方向)で内部油路39と重なるように配置されているため、これらのボルト挿通孔が内部油路39と離間して配置した構成と比較して、エンジンの左右方向の寸法を小さくすることができ、エンジンのコンパクト化を図ることができる。
【0035】
第1ボルト挿通孔28aは、第1ロアハウジング22の長手方向で吸気側端面の開口およびプラグ47と近接して配置されるとともに、内部油路39に対して左側、すなわちカムシャフト6,7の軸線方向Lで、内部油路39に対して、カムスプロケット14,15が配置される側とは逆の側に配置されている。第3ボルト挿通孔28cは、内部油路39の長手方向で排気側端部に近接して配置される。第2および第3ボルト挿通孔28cは、内部油路39に対して右側、すなわち、内部油路39に対して、カムシャフト6,7の軸線方向Lで、カムスプロケット14,15が配置される側に配置されている。また、第4ボルト挿通孔28dは、第1ロアハウジング22の長手方向の排気側端部に近接して配置される。
【0036】
また、第1ロアハウジング22は、第1ロアハウジング22の側面から外方に膨出して形成されて、第1ボルト挿通孔28a〜第4ボルト挿通孔28dを外方から囲むようにして設けられる第1ボルト締結用ボス部48a〜第4ボルト締結用ボス部48dを有している。第1ボルト締結用ボス部48aは、内部油路39に対して、第1ロアハウジングの左側、すなわち、内部油路39に対して、カムシャフト6,7の軸線方向Lでカムスプロケット14,15が配置される側とは逆の側に設けられている。第2および第3ボルト締結用ボス部48b,48cは、内部油路39に対して第1ロアハウジング22の右側部、すなわち、内部油路39に対して、カムシャフト6,7の軸線方向Lでカムスプロケット14,15が配置される側に設けられている。第4ボルト締結用ボス部48dは、内部油路39に対して、第1ロアハウジング22の長手方向の吸気側端部に近接して配置される。
【0037】
カムチェーン16は、吸気側カムプロケット14の歯部に巻き掛けられており、カムチェーン16は、第1ロアハウジング22と対向する吸気側カムスプロケット14の面よりも、カムシャフト6,7の軸線方向で、第1ロアハウジング22と近接して配置されている。したがって、第1ロアハウジング22の長手方向における端面を、カムシャフト6,7の軸線方向から見た場合における、カムチェーン16で囲まれた領域の内部に配置することにより、カムシャフト6,7の軸線方向におけるカムチェーン16との距離を確保できる。そのため、オイル導入路38を、カムシャフト6,7の軸線方向Lで左方から見た場合に、凹部45の領域内に設けることで、吸気側カムスプロケット14を第1ロアハウジング22に近接させて、エンジンのコンパクト化を実現するという効果がさらに有効となる。
【0038】
図5は、
図4のB−B、すなわち内部油路39の中心線を含みカムシャフト6,7の中心軸と直交する平面にてシリンダヘッド4を切断して左側から見た図、すなわち、カムシャフト6,7の軸線方向Lでカムスプロケット14,15が配置される側とは逆の側(動弁室11側)から見た図である。
図5で示されているように、カムシャフト6,7の軸線方向Lで左方から見た場合に、内部油路39の吸気側の一部が吸気側カムスプロケット14と重なるように設けられ、内部油路39の排気側の一部が排気側カムスプロケット15と重なるように設けられている。内部油路39の吸気側端部の開口を閉塞するプラグ47は、カムチェーン16が巻き掛けられる吸気側カムスプロケット14の外縁部の近傍に設けられている。
【0039】
(エンジンオイルの流れ)
次に、
図3および
図6を参照して、エンジンオイルの流れを説明する。本実施形態に係るエンジン1においては、エンジン1の運転時、クランクシャフト17に駆動されるオイルポンプ49により、オイルパン3内のエンジンオイルが吸い上げられ、シリンダブロック2内のオイル通路に圧送される。シリンダブロック2内のオイル通路は、シリンダヘッド4のメイン油路29と連通しており、エンジンオイルは、可変バルブタイミング装置12,13、ラッシュアジャスタ19A,19Bに供給される。メイン油路29に導入されたエンジンオイルは、
図3および
図6で示されているように、VVT供給路に分岐し、油圧制御弁30,31にエンジンオイルを供給される。油圧制御弁30,31は、いわゆるソレノイドバルブ、すなわち、電磁式の油圧コントロール弁により、エンジンオイルの流路の供給先を進角通路33,36または遅角通路34,37のどちらかに切替えることで、進角通路33,36または遅角通路34,37と連通するよう可変バルブタイミング装置12,13の内部に形成された進角室(図示せず)または遅角室(図示せず)の油圧を保持し、カムシャフト6,7の回転位相が進角側または遅角側に変化させて、バルブタイミングの変更を可能とする。
【0040】
油圧制御弁30,31の下流側は、シリンダヘッド4の右側壁8、第1ロアハウジング22および第1アッパハウジング23の下部に形成された進角通路33,36および遅角通路34,37に接続され、それより下流でのエンジンオイルの流路は、カムシャフト6,7の外周面に設けられた環状溝50およびカムシャフト6,7の内部に形成されたカムシャフト内オイル通路51を介して、吸気側可変バルブタイミング装置12の内部に形成された吸気側の進角室(図示せず)または遅角室(図示せず)と連通する。
【0041】
さらに、メイン油路29は、第1ロアハウジング22に形成された内部油路39と、吸気側連絡油路42および排気側連絡油路43を介して吸気側および排気側のラッシュアジャスタ用油路40,41に接続して、ロッカアーム18の一端を支持するプランジャの内部に油圧を作用させて、ロッカアーム18の他端を常時カムロブ20に押圧させる。
【0042】
以上、本発明の実施形態の構造の説明をしたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく幅広く変形して適用することが可能である。例えば、本発明の実施の形態では、可変バルブタイミング装置12,13を、吸気側のカムシャフト6にも排気側のカムシャフト7にも設けているが、カムシャフト6,7にカムスプロケット14,15が設けられていれば、どちらか一つの可変バルブタイミング装置をカムシャフトに設けた構成や、可変バルブタイミング装置をカムシャフトに全く設けない構成とすることも可能である。また、本発明の実施の形態では、DOHC4バルブ式の直列4気筒の自動車用ガソリンエンジンに適用しているが、ガソリンエンジンであるかディーゼルエンジンであるかを問わず、自動二輪車や、スノーモービル、船舶等の内燃機関にも適用することが可能である。そして、気筒数は、4気筒に限られることはなく、単気筒や2気筒、3気筒、又は5気筒以上のエンジンにも適用が可能である。さらに、気筒配列についても、直列エンジンに限定されず、V型エンジンや水平対向エンジン等、種々の気筒配列のエンジンに適用することができる。その他、各装置や各部材の具体的な構成や配置、数量など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜、変更や追加、取捨選択することが可能である。
【課題】ロア側のカムハウジング内に、内部油路39およびシリンダヘッド4からオイルを導入して内部油路39にオイルを供給するオイル導入路38が形成されたカムハウジングが設けられた場合であっても、エンジンの小型化を実現することができるエンジンの動弁機構を提供する。
第1ロアハウジング22に隣接して設けられる吸気側カムスプロケット14には、第1ロアハウジング22と対向する面に第1ロアハウジング22と離間する方向に深さを有する凹部45が形成されている。そして、カムシャフト6,7の軸線方向Lで内部油路39に対して吸気側可変バルブタイミングの配置される側から内部油路39に向かって形成されたオイル導入路38が、カムシャフト6,7の軸線方向Lで左方から見た場合に、凹部45の領域内に設けられている。