(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0015】
[1.装置構成]
本実施形態の運転支援装置は、
図2に示す車両10に搭載される。本運転支援装置は、車両10が高速道路を走行している場合に運転を支援する支援制御を実施する。なお、ここでいう高速道路とは、高速自動車国道及び自動車専用道路を意味する。本支援制御は、ECU(電子制御装置)20によって制御される。ここでは、ECU20の入力側及び出力側にそれぞれ接続される装置を順に説明する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、車両10の前端部には、レーダ11及びカメラ12が設けられる。レーダ11は、例えば、車両10の前端部中央に設置されたミリ波レーダやレーザレーダ等であって、車両10の前方にレーザ波等を送出し、その反射波を受信することで車両10の前方の情報を検出する。ここで検出される情報は、例えば、先行車両や路側帯に停止している故障車等の物体の有無情報や、物体までの距離,角度(すなわち、相対位置)や速度(相対速度)等の情報である。レーダ11で検出された各情報は、随時ECU20に送信される。なお、レーダ11は、車両10の前方の情報を取得できれば、その設置場所は前端部中央に限られない。
【0017】
カメラ12は、車両10の前方の画像を撮像するものであり、例えば、CCDカメラやCMOSカメラであって、車両10の前端部中央に設置される。カメラ12で撮像された画像(静止画像)は、随時ECU20に画像データとして送信され、ECU20において各画像データに対して画像処理されることにより、車両10の前方の様々な情報を取得する。ここで取得される情報は、例えば、車両10が走行する道路の白線の位置(白線情報)や車線数,路側帯の位置や中央分離帯及び路肩の位置等の道路情報や、車両10の前方の物体の有無情報や、物体の種類(二輪車か自動車か等)等である。なお、カメラ12は、車両10の前方の情報を取得できれば、その設置場所は前端部中央に限られない。
【0018】
本実施形態では、レーダ11及びカメラ12が、高速道路上に存在する物体を検出する物体検出手段である。ここでは、まずレーダ11を左右方向に走査して道路上に物体が存在するか否かを検出する。そして、レーダ11で物体が検出されたら、カメラ12で撮像した画像を処理することにより、レーダ11で検出された物体の位置や物体の種類(人か自転車か自動車か等)を検出する。これにより、簡単に精度よく物体を検出する。なお、レーダ11による検出とカメラ12による検出を並行して行ってもよい。
【0019】
また、レーダ11は、車両10と物体との相対速度を検出する相対速度検出手段としても機能する。さらに、レーダ11は、車両10と物体との相対速度を検出し、この相対速度と後述する車速センサ14で検出される車速とから物体の速度(路面に対する速度)を検出する物体速度検出手段としても機能する。
【0020】
車室内には、ナビゲーション装置13及び車速センサ14が設けられる。ナビゲーション装置13は、GPS衛星からアンテナ13aを介して車両10の現在位置(自車位置)の検出や、GPS,車速センサ14及びジャイロスコープ等を用いて車両10の走行速度の検出や、目的地への経路案内等を行うものである。ナビゲーション装置13には、詳細な道路情報を含んだ地図データが内蔵されている。この地図データには、例えば道路の位置や種類(高速道路か一般道か等),車線数,車線幅の情報等の道路情報が含まれている。ナビゲーション装置13はECU20の入力側に接続されており、ナビゲーション装置13で検出された現在位置の情報や道路の種類等を含んだ道路情報は、随時ECU20に送信される。
【0021】
本実施形態では、カメラ12及びナビゲーション装置13が、高速道路の道路情報を取得する道路情報取得手段である。また、ナビゲーション装置13は、車両10の現在位置を特定する自車位置検出手段としても機能する。
また、ナビゲーション装置13は、インターネット通信のメール機能を有しており、報知すべき対象物が存在すると判定された場合は、その対象物の存在や対象物の位置情報や対象物の種類(人か自転車か車両か等)等の情報を警察へ通報する通報手段としての機能も有する。なお、ここでいう対象物とは、車両10の走行に影響を及ぼし、車両10を運転するドライバに対して報知をする必要性のあるものであり、高速道路に進入することができない軽車両及び歩行者等や、逆走している車両である。
【0022】
車速センサ14は、車両10の車速を検出する。車速センサ14で検出された車速情報は、随時ECU20に送信される。
モニター16及びスピーカー17は、ECU20の出力装置として機能する表示手段及び警告手段であり、後述するECU20に設けられた報知制御部20dによって制御される報知手段である。モニター16は、例えば車両10の運転席の近傍に設けられており、車両10の走行に影響を及ぼすもの、すなわち報知すべき対象物が存在すると判定された場合は、その対象物の存在や対象物の位置情報等の対象物の情報を画面表示によりドライバに報知する。また、スピーカー17は、音声(すなわち、人の声)によりドライバに対象物の情報を報知したり、ブザー音のような単純な音で注意を促すように報知したりする。
【0023】
ECU20は、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUでの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポートー等を備えており、車両10の走行制御を実施するものである。
図1及び
図2に示すように、ECU20の入力側には、レーダ11,カメラ12,ナビゲーション装置13及び車速センサ14が接続される。一方、ECU20の出力側には、ナビゲーション装置13,モニター16及びスピーカー17が接続される。
【0024】
[2.制御構成]
本実施形態のECU20では、高速道路において、車両10の前方に存在する物体が報知対象物である場合は、この対象物の情報をドライバに対して報知し、注意を促すことで運転を支援する制御が実施される。このとき、物体が報知対象物であるか否かが適切に判断されることで、過剰な支援とならないように構成されている。
ECU20は、上記の制御を実現するために、自車位置判定部20aとしての機能要素と、物体位置判定部20bとしての機能要素と、対象物判定部20cとしての機能要素と、報知制御部20dとしての機能要素とを有している。
【0025】
自車位置判定部20aは、車両10が走行している場所(現在位置)が高速道路であるか否かを判定するものである。この自車位置判定部20aは、ナビゲーション装置13で取得された車両10の位置情報を用いて、その位置情報に対応する地図データ上の道路の位置を特定し、特定された道路が高速道路であるか否かを判定するものである。本運転支援装置は、車両10が高速道路を走行しているときに運転を支援するものであるため、この自車位置判定部20aにより車両10の位置が高速道路ではないと判定されると、支援制御は実施されない。
【0026】
物体位置判定部20bは、自車位置判定部20aにより車両10の現在位置が高速道路であると判定されたら、レーダ11及びカメラ12によって車両10の前方に物体が検出されたか否かを判定するものである。ここでは、まずレーダ11の走査によって物体を検出し、次いでカメラ12によってその物体の位置や種類の情報を取得しているので、物体位置判定部20bは、レーダ11で物体が検出されたら高速道路上に物体が検出されたと判定する。なお、レーダ11による検出とカメラ12による検出とを並行して行う場合は、物体位置判定部20bは、レーダ11及びカメラ12の検出結果から高速道路上に物体が検出されたと判定する。
【0027】
さらに物体位置判定部20bは、レーダ11やカメラ12で物体が検出されたら、カメラ12やナビゲーション装置13により取得された道路情報から、物体の位置が走行車線内であるか否かを判定するものである。この物体位置判定部20bは、カメラ12で取得された白線の位置(白線情報)や車線数,路側帯の位置や中央分離帯及び路肩の位置等の道路情報に、レーダ11で検出された物体の位置情報を対応させることによって、物体の位置が走行車線内であるか否かを判定する。なお、物体の位置が走行車線内でないと判定された場合は、物体の位置は路側帯であると判定する。すなわち、物体位置判定部20bは、物体の位置が走行車線であるか路側帯であるかを判定するものである。言い換えると、物体位置判定部20bは、物体が走行車線及び路側帯のどちらに位置しているかを判定するものである。
【0028】
ここで、走行車線と路側帯との判定手法の一例を説明すると、例えば、
図3に示すように、カメラ12で取得された白線情報のうち、高速道路の最も右側に位置する白線を右境界白線5Rとし、最も左側に位置する白線を左境界白線5Lとする。そして、右境界白線5R及び左境界白線5Lの間の車線1,1を走行車線であると特定する。また、左境界白線5Lよりも左側を路側帯2であると特定する。これにより、走行車線と路側帯とを区別する。なお、右境界白線5Rよりも右側は中央分離帯3であると特定する。
【0029】
また、走行車線と路側帯との判定手法の他の例を説明すると、例えば、高速道路の右端にある中央分離帯3に最も近い白線を右境界白線5Rとし、高速道路の左端にある路肩4に最も近い白線を左境界白線5Lとする。そして、右境界白線5Rと左境界白線5Lとに挟まれた内側の車線1,1を走行車線であると特定する。また、左境界白線5Lと路肩4との間の車線を路側帯2であると特定する。これにより、走行車線と路側帯とを区別する。
【0030】
なお、例えば路側帯2と路肩4との間にさらに白線が存在する場合(すなわち、走行車線1と路側帯2との境界の白線に加え、路側帯2と路肩4との間にも白線がある場合)は、物体位置判定部20bが、最も左側に位置する白線と路肩4との間の車線幅の情報を取得し、この車線幅と車両10の幅とを比較して、最も左側に位置する白線と路肩4との間の車線幅が車両10が走行できない大きさのときはその白線を無視し、次に左側に位置する白線(高速道路の左端から二番目の白線)を左境界白線5Lと特定する。
【0031】
対象物判定部20cは、物体位置判定部20bにより判定された物体の位置に応じて異なる判定閾値を用いて、レーダ11及びカメラ12で検出された物体が、ドライバに対して報知する必要のある対象物か(すなわち、車両10の走行に影響を及ぼすものであるか)否かを判定するものである。この対象物判定部20cは、まず、物体の位置に応じて判定閾値を設定する。そして、この判定閾値を検出値や算出値と比較して報知の必要性を判定する。以下、
図3を用いて、物体の位置が路側帯2である場合と走行車線1である場合とにおける判定内容を説明する。
【0032】
まず、物体の位置が路側帯2であると判定された場合について説明する。この場合、対象物判定部20cは、物体の速度によってその物体が報知すべき対象物であるか否かを判定する。すなわち、物体の位置が路側帯2の場合の判定閾値(路側帯用の判定閾値)は、物体の速度V
Oと比較するための閾値V
OTHである。対象物判定部20cは、この判定閾値V
OTHと、レーダ11で検出された相対速度V
R及び車速センサ14で検出された車両10の車速Vから算出した物体の速度V
Oとを比較し、物体速度V
Oが判定閾値V
OTHよりも大きい場合は報知が必要な対象物であると判定する。
【0033】
これは、路側帯2に物体が存在する場合、この物体が略停止していれば、対象物判定部20cはこの物体を走行に支障のない(走行に影響を及ぼさない)物体であると判定し、ドライバに対する報知は必要ないと判定する。これに対して、物体速度V
Oが判定閾値V
OTHよりも大きい場合は、路側帯2にある物体がある速度V
Oで移動しており、走行車線1へ進入してくる可能性があるため、対象物判定部20cはこの物体を走行に支障のある(走行に影響を及ぼす)可能性があるものと判定し、ドライバに対する報知が必要であると判定する。なお、路側帯用の判定閾値V
OTHは、車両10の車速Vにかかわらず一定値であり、例えば、歩行者の走行速度程度の値として予め設定されている。
【0034】
図3に示すように、レーダ11によって車両10の前方の路側帯2に物体31,32及び33が検出されたとする。なお、ここでは、物体31は故障車、物体32は人、物体33は停止表示器材である。このとき、レーダ11で車両10とこれら物体31〜33との相対速度V
R1,V
R2,V
R3がそれぞれ検出される。そして、対象物判定部20cは、各相対速度V
R1,V
R2,V
R3と車両10の車速Vとから、以下の式(1)〜(3)により物体31〜33の各物体速度V
O1,V
O2,V
O3を算出する。なお、車速V及び相対速度V
Rの基準方向(符号がプラスになる方向)は、車両10の進行方向である。
V
O1=V+V
R1 ・・・(1)
V
O2=V+V
R2 ・・・(2)
V
O3=V+V
R3 ・・・(3)
【0035】
故障車31は、路側帯2に停止しているため物体速度V
O1はゼロとなり、路側帯用の判定閾値V
OTHよりも小さくなる。このため、対象物判定部20cは、路側帯2に存在する故障車31を走行に支障のない物体であると判定し、この物体を報知の対象物ではないと判定する。また、本運転支援装置は、車両だけでなく、停止表示器材33のような小さな物体も検出可能である。停止表示器材33も路側帯2に停止しているため物体速度V
O3はゼロとなり、路側帯用の判定閾値V
OTHよりも小さくなる。このため、対象物判定部20cは、路側帯2に存在する停止表示器材33も走行に支障のない物体であると判定し、この物体を報知の対象物ではないと判定する。
【0036】
また、人32が路側帯2に停止している故障車31の乗員であり、故障車31の周囲を歩いているときは、人32の物体速度V
O2は歩行速度であり、路側帯用の判定閾値V
OTH以下となる。このため、対象物判定部20cは、路側帯2に存在する人32も走行に支障のない物体であると判定し、この物体も報知の対象物ではないと判定する。
【0037】
また、例えば、故障車31が燃えており、人32が故障車31から離れようとして走行車線1の方向へ走って逃げてきたようなときは、この人32の物体速度V
O2′は路側帯用の判定閾値V
OTHよりも大きくなる。この場合、対象物判定部20cは人32を報知する必要がある対象物であると判定する。また、例えば人32が誤って高速道路に進入した人であって、物体速度V
O2′が路側帯用の判定閾値V
OTHよりも大きい場合にも、対象物判定部20cは、人32を報知する必要がある対象物であると判定する。
【0038】
次に、物体の位置が走行車線1であると判定された場合について説明する。この場合、対象物判定部20cは、車両10と物体との相対速度V
Rによってその物体が報知すべき対象物であるか否かを判定する。すなわち、物体の位置が走行車線1の場合の判定閾値(走行車線用の判定閾値)は、車両10と物体との相対速度V
Rと比較するための閾値V
RTHである。対象物判定部20cは、この判定閾値V
RTHとレーダ11で検出された相対速度V
Rとを比較し、相対速度V
Rが判定閾値V
RTHよりも小さい場合は報知が必要な対象物であると判定する。
【0039】
これは、走行車線1に物体が存在するときは、この物体が車両10と同程度の速度(すなわち、高速道路における最低速度以上且つ最高速度以下の速度)で同じ方向に走行していれば、対象物判定部20cはこの物体を通常の走行をしている車両であると判定し、ドライバに対する報知は必要ないと判定する。これに対して、相対速度V
Rが判定閾値V
RTHよりも小さい場合は、物体が車両10に対して相当な速度で接近していることになるため、対象物判定部20cはこの物体を走行の障害となる可能性がある(走行に影響を及ぼす)物体であると判定し、ドライバに対する報知が必要であると判定する。
【0040】
なお、走行車線用の判定閾値V
RTHは、ここでは車両10の車速Vに応じて設定される。これは、車両10と物体との相対速度V
Rが車両10の車速Vに依存するためである。例えば、車両10の車速Vと走行車線用の判定閾値V
RTHとの関係を示したマップを予め記憶しておき、車速センサ14で検出された車速Vに対応する走行車線用の判定閾値V
RTHを読み出して設定される。この場合、車速Vが大きいほど判定閾値V
RTHが小さくなり、且つ、その絶対値が大きくなるような設定とすることが考えられる。
【0041】
図3に示すように、レーダ11によって車両10の前方の走行車線1に物体34及び35が検出されたとする。なお、ここでは、物体34は高速道路を走行可能な自動二輪車、物体35は高速道路を走行不可能な自転車である。このとき、レーダ11により車両10と物体34,35との相対速度V
R4,V
R5がそれぞれ検出される。なお、各相対速度V
R4,V
R5と車両10の車速Vと物体34,35の速度V
O4,V
O5との関係は、以下の式(4),(5)となる。
V
R4=V
O4−V ・・・(4)
V
R5=V
O5−V ・・・(5)
【0042】
物体34は高速道路を走行可能な自動二輪車であるため、この自動二輪車34が通常の走行をしているときは(すなわち、逆走しておらず、速度V
O4が最低速度以上且つ最高速度以下のときは)、車両10と自動二輪車34との相対速度V
R4はある値よりも大きくなる。
【0043】
例えば、自動二輪車34の車速V
O4が車両10の車速Vよりも速い場合(V
O4=80km/h,V=75km/hの場合)は、検出される相対速度V
R4は正の値(V
R4=5km/h)となる。反対に自動二輪車34の車速V
O4が車両10の車速Vよりも遅い場合(V
O4=70km/h,V=75km/hの場合)は、検出される相対速度V
R4は負の値(V
R4=−5km/h)となる。相対速度V
R4が負の値の場合、車両10からは自動二輪車34が近付いてくるように見えるが、自動二輪車34が最低速度以上の車速で通常走行していれば、相対速度V
R4は車両10の車速Vに応じてある値より小さい値にはならない。対象物判定部20cは、この値を判定閾値V
RTHと設定することで、走行車線1に存在する物体が高速道路を走行可能な車両なのか否か(すなわち、報知する必要のない車両なのか否か)を判定する。
【0044】
これに対して、物体35は高速道路を走行することができない自転車であるため、レーダ11で検出される車両10と自転車35との相対速度V
R5は、上記した自動二輪車34の場合に比べ小さい値となる(言い換えると、車両10からは自転車35が相当の速さで近付いてくるように見える)。例えば、自転車35の速度V
O5が15km/hであって、車両10の車速Vが75km/hの場合、相対速度V
R5は−60km/hとなるため、上記した自動二輪車34のときに比べて相対速度V
R5は相当小さい値となり、走行車線用の判定閾値V
RTHよりも小さくなる。
【0045】
すなわち、高速道路を走行することができないような物体(ここでは自転車)35が検出された場合は、車両10と自転車35との相対速度V
R5が走行車線用の判定閾値V
RTHよりも小さい値となる。この場合、対象物判定部20cは、物体を報知対象物であると判定する。なお、物体がたとえ自動車や自動二輪車等の車両であっても、高速道路を逆走している場合は、検出される相対速度V
Rは走行車線用の判定閾値V
RTHよりも小さくなるため、対象物判定部20cは、逆走している物体が検出された場合も報知対象物であると判定する。
【0046】
報知制御部20dは、物体位置判定部20b及び対象物判定部20cの判定結果に基づいて、モニター16及びスピーカー17によるドライバに対する報知を制御する。この報知制御部20dは、物体位置判定部20bにより物体が路側帯にあると判定され、対象物判定部20cにより物体が報知の対象物であると判定された場合、モニター16に、例えば「この先の路側帯に進入物体の可能性があります。」等の内容を画面表示して、路側帯にある物体に対する注意を促す。また、同時にスピーカー17によって同様の内容を音声により報知する。
【0047】
また、報知制御部20dは、物体位置判定部20bにより物体が走行車線にあると判定され、対象物判定部20cにより物体が報知の対象物であると判定された場合、モニター16に、例えば「この先に障害物があります。」等の内容を画面表示して、走行車線にある物体に対する注意を促す。また、同時にスピーカー17によって同様の内容を音声により報知する。
なお、モニター16による画面表示は、車両10が路側帯又は走行車線にある物体を通過したら停止する。また、スピーカー17による報知は、一度のみ実施する。これらモニター16及びスピーカー17による報知によって、路側帯又は走行車線に報知対象物がある場合にドライバがこの対象物に対して注意を傾けられるように運転を支援する。
【0048】
さらに、報知制御部20dは、ナビゲーション装置13に設けられたメール機能により、走行車線及び路側帯のいずれかにある物体が報知対象物であると判定されたら、その物体の位置や種類等の情報を警察や道路管理者等へ通報する。通報の条件として、例えば、報知対象物が走行車線にある場合は走行の障害となる危険性が高いため、上記のドライバに対する報知に加え警察等への通報を実施する。この場合の報知を報知Aとする。一方、報知対象物が路側帯にある場合は必ずしも通報を必要としないため、ここではドライバに対する報知のみを実施する。この報知を報知Bとする。なお、通報条件はこれに限られず、例えば走行車線及び路側帯のいずれに物体があっても通報してもよい。
【0049】
[3.フローチャート]
次に、
図4を用いてECU20で実行される支援制御の手順の例を説明する。このフローチャートは、所定の周期(例えば、数ms周期)で動作する。また、下記の各ステップは、コンピュータのハードウェアに割り当てられた各機能(手段)が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することによって実施される。本運転支援装置は、ドライバによる車両10のイグニッションスイッチ(図示略)のオン操作が行われたら、以下の制御フローをスタートする。
【0050】
図4に示すように、ステップS10では、ナビゲーション装置13により車両10の現在位置(自車位置)の情報を取得する。次に、ステップS20において、ステップS10で取得された位置情報から車両10が高速道路を走行中であるか否かが判定される。この判定は、自車位置判定部20aによって行われる。高速道路を走行中であると判定されたらYESルートからステップS30へ進み、高速道路を走行中でないと判定されたらNOルートからステップS150へ進む。
【0051】
ステップS30では、カメラ12及びナビゲーション装置13から、高速道路の白線情報や車線数等の情報を含む道路情報が取得される。次いでステップS40では、レーダ11及びカメラ12により高速道路上に存在する物体を検出する。ここでは、まずレーダ11を左右方向(車幅方向)に走査して物体の有無を検出し、物体が検出されたときにカメラ12で車両10の前方を撮像することで物体の位置や種類を検出する。
【0052】
ステップS50では、ステップS40において物体が検出されたか否かが判定される。この判定は、物体位置判定部20bによって行われる。物体が検出されたらYESルートからステップS60へ進み、物体が検出されなければNOルートからステップS150へ進む。ステップS60では、ステップS30において取得された道路情報及びステップS40において取得された物体の位置情報から、物体の位置が走行車線内か否かが判定される。この判定も物体位置判定部20bによって行われる。物体の位置が走行車線内であると判定された場合は、YESルートからステップS70へ進み、物体の位置が走行車線内でないと判定された場合は、物体は路側帯にあるとして、NOルートからステップS110へ進む。
【0053】
ステップS70では、レーダ11により走行車線にある物体と車両10との相対速度V
Rを検出する。また、ステップS80において、車両10の車速Vに基づいて走行車線用の判定閾値V
RTHを設定する。そして、ステップS90において、相対速度V
Rが走行車線用の判定閾値V
RTHよりも小さいか否かが判定される。相対速度V
Rが走行車線用の判定閾値V
RTHよりも小さい場合はYESルートからステップS100へ進み、ステップS100においてモニター16やスピーカー17による報知がなされる。この場合の報知は、上記した走行車線に報知対象物があると判定された場合の報知であり、
図4では報知Aと表示する。報知Aが終了したらステップS150へ進む。一方、相対速度V
Rが走行車線用の判定閾値V
RTH以上の場合は、NOルートからステップS150へ進む。
【0054】
また、ステップS110では、レーダ11で検出された路側帯にある物体と車両10との相対速度V
Rと、車両10の車速Vとから物体の速度V
Oを求める。また、ステップS120において、予め設定された路側帯用の判定閾値V
OTHを読み出す。そして、ステップS130において、物体速度V
Oが路側帯用の判定閾値V
OTHよりも大きいか否かが判定される。物体速度V
Oが路側帯用の判定閾値V
OTHよりも大きい場合はYESルートからステップS140へ進み、ステップS140においてモニター16やスピーカー17による報知がなされる。この場合の報知は、上記した路側帯に報知対象物があると判定された場合の報知であり、
図4では報知Bと表示する。報知Bが終了したらステップS150へ進む。一方、物体速度V
Oが路側帯用の判定閾値V
OTH以下の場合は、NOルートからステップS150へ進む。
ステップS150では、イグニッションスイッチ(IG_SW)がオフにされたか否かが判定され、オフの場合は制御フローを終了し、オンの場合はリターンしてステップS10からの制御フローが再び実施される。
【0055】
[4.効果]
したがって、本実施形態に係る運転支援装置によれば、高速道路を走行中に物体が検出された場合、まず、その物体の位置が走行車線か路側帯かを判定する。そして、その物体の位置に応じて異なる判定閾値を用いて、その物体が車両10の走行に影響を及ぼす対象物であるか否かを正確に判定することができ、対象物の情報をドライバに対して適切に報知することができる。
【0056】
例えば、走行車線を走行している先行車両や自動二輪車のように車両10の走行に影響を及ぼさない物体や、故障のため路側帯に停止している故障車等のように走行に影響を及ぼさない物体(言い換えれば、車両10への影響力が比較的小さい物体)は、報知の対象物として判定されないため、ドライバに対する報知は実施されない。したがって、ドライバに対して本当に報知の必要がある対象物だけを適切に報知することができ(言い換えると、過剰な報知となることがなく)、円滑な運転をすることができるように運転支援をすることができる。
【0057】
一方、検出された物体が路側帯にあると判定されたときは、この物体の速度を路側帯用の判定閾値と比較して、物体速度が判定閾値よりも大きい場合は、路側帯から走行車線に進入してくる可能性があると考えられるため、この物体は車両10の走行に影響を及ぼす対象物であると判定し、報知手段によりドライバにこの物体の情報を報知する。つまり、物体の検出位置が路側帯であったとしても、停止している物体よりは移動している物体の方が車両10への影響力が比較的大きいものと判断され、その旨の報知がなされる。これにより、路側帯にある物体の存在をドライバに認識させることができるため、もしもこの物体が走行車線に進入してくればそれを回避するよう運転を支援することができる。
【0058】
また、検出された物体が走行車線にあると判定された場合は、車両10と物体との相対速度を走行車線用の判定閾値と比較して、相対速度が判定閾値よりも小さい場合は、走行車線上にあってはならないもの(例えば、歩行者や自転車、落下物や逆走車等)があるということになるので、ドライバにこの物体の存在を報知して物体を回避するように運転を支援することができる。
【0059】
また、ドライバに対する報知手段が、モニター16とスピーカー17とから構成されているため、ドライバが視覚及び聴覚によって確実に報知内容を知ることができる。
また、通報手段により高速道路に迷い込んだ歩行者や自転車等の物体を警察へ通報することで、これら歩行者や自転車等を保護することができ、安全性を確保することができる。
【0060】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記実施形態では、レーダ11で検出された物体の位置が走行車線の場合に、相対速度を用いて物体が報知対象物であるか否かを判定しているが、相対速度の代わりに物体の速度を判定に用いてもよい。この場合の走行車線用の判定閾値は、車両の速度にかかわらず一定値として予め記憶しておいてもよく、物体速度が閾値よりも小さい場合に報知の対象物であると判定すればよい。
【0061】
また、レーダ11で検出された物体の位置が路側帯の場合、上記実施形態では、物体の速度を路側帯用の判定閾値と比較しているが、物体の速度の絶対値を閾値と比較するように構成してもよい。この場合、路側帯を車両10と逆向きに動いている物体についても報知対象物か否か判定することができる。また、物体の位置が路側帯の場合に、物体と車両との相対速度を用いて報知対象物か否かの判定を行ってもよい。
【0062】
また、走行車線用の判定閾値及び路側帯用の判定閾値の設定手法は、上記実施形態のものに限定されない。例えば、上記実施形態において、走行車線用の判定閾値を一定値としてもよく、また、路側帯用の判定閾値を歩行者の走行速度と同じ程度の値ではなく、略ゼロとしてもよい。
また、上記実施形態では、走行車線に自転車がいる場合を例に説明したが、走行車線に人がいる場合や自転車以外の軽車両(例えば、ミニカーや原動機付自転車等)がいる場合も、上記と同様に車両の走行に影響を及ぼすものであり報知対象物であると判定される。
【0063】
また、上記実施形態では、カメラ12が車両10の前方の静止画像を撮像するものであるが、車両10の前方の画像を動画として撮影する単眼ビデオカメラとしてもよい。ここで撮影された動画は連続した複数の画像(静止画像)からなり、それぞれの画像データが随時ECU20に伝達されることで、車両10の現在位置が高速道路か否かを判定することができる。すなわち、カメラを自車位置判定手段として構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、物体検出手段として、レーダ11及びカメラ12を用いたが、レーダ11によって詳細な情報が得られればレーダ11のみを用いてもよい。例えば、物体までの距離と、車両10に対する物体の左右方向の角度の情報から、物体の表面上に位置する測定点の座標が演算する。この測定点とは、レーダ11から発せられたレーザ波等を反射した位置を意味する。測定点の空間的な分布は物体の形状に対応した形状となり、分布の広がりは物体の大きさ(高さ,横幅といった実寸法)に相当する。したがって、典型的な歩行者の形状や自動二輪車や自動車等の形状のテンプレートを予め設定しておけば、それらのテンプレートと測定点の分布とを比較することで物体の種類の特定が可能となる。これにより、レーダ11のみで物体と車両との相対速度や物体の種類,位置等の情報を検出することができる。
【0065】
また、
図3に示した例では、日本の高速道路の場合(すなわち、左側通行)を説明したが、右側通行の国での走行の場合は、中央分離帯と路側帯との位置が
図3とは左右反対となる。
また、上記実施形態では、報知手段としてモニター16及びスピーカー17の両方を設けているが、何れか一方であってもよい。また、モニター16はナビゲーション装置13の画面と併用してもよく、スピーカー17の代わりにナビゲーション装置13に内蔵される音響装置を利用してもよい。
【0066】
また、報知対象物の位置や種類に応じて報知の内容や報知の強さ(音の大きさや報知時間等)を変更してもよい。例えば、走行車線に報知対象物がある場合は、路側帯に報知対象物がある場合に比べて大きな音で報知するように構成してもよい。また、車両から物体までの距離が短いほど報知の強さを強めてもよい。
また、警察への通報は、走行車線に報知対象物がいる場合のみ行うように構成してもよく、報知対象物の種類によって通報するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、物体が報知対象物であると判定されたら報知手段により報知するようにしたが、物体が報知対象物でないと判定されても報知してもよい。この場合、物体は車両の走行に影響を及ぼさない対象物であるため過剰な報知とならないように運転者が認識できる程度の軽度な報知(例えば、ブザー音よりも静かな短いメロディーを流す、モニターに数秒間のみ報知内容を表示する等)とすることが好ましい。
なお、上記実施形態で説明した車両10は、自動車やトラックやバス等、特に限定されない。