特許第5751427号(P5751427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5751427インターカムシステム及びインターカムシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751427
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】インターカムシステム及びインターカムシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/06 20090101AFI20150702BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20150702BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20150702BHJP
   H04M 3/56 20060101ALI20150702BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   H04W4/06 130
   H04W84/10
   H04W88/02 120
   H04M3/56 F
   H04M9/00 J
   H04M9/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-27091(P2012-27091)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-165378(P2013-165378A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】小川 潤
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕史
【審査官】 三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−355202(JP,A)
【文献】 特開2005−197955(JP,A)
【文献】 特開平04−326647(JP,A)
【文献】 国際公開第96/04744(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/06
H04W 84/10
H04W 88/02
H04M 3/56
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主制御装置と、前記主制御装置と接続された1または複数の親機と、前記親機と接続された1または複数の子機とを備え、
前記主制御装置は、
前記子機それぞれによって送話した送話音声を合成して第1の合成音声を生成し、前記第1の合成音声からそれぞれの送信先の子機からの送話音声を差し引いた第2の合成音声を生成する音声合成部と、
前記第2の合成音声を、前記親機を介して前記子機それぞれに送信する送信部と、
を有し、
前記子機は、
前記第2の合成音声を受信する受信部と、
前記子機が送信した送話音声をループ処理して前記第2の合成音声に加算する側音処理を行う側音処理部と、
前記親機と双方向に通信する通常動作モードと、前記親機と双方向に通信する特定の子機に送信される音声を受信するために前記親機と片方向に通信する受令モードとを切り替える切替部と、
を有し、
前記子機が前記切替部によって受令モードに設定して前記親機に対して受令子機として接続しているとき、
前記音声合成部は、前記特定の子機に対しては、前記特定の子機からの送話音声を差し引かず前記第1の合成音声を生成し、
前記送信部は、前記特定の子機に対して前記第1の合成音声を送信し、
前記受信部は前記第1の合成音声を受信し、
前記側音処理部は前記側音処理を無効にする
ことを特徴とするインターカムシステム。
【請求項2】
前記子機が前記切替部によって受令モードに設定して前記親機に接続しようとし、前記親機に対して接続される最初の受令子機であるとき、前記最初の受令子機を前記特定の子機である受令マスタ子機として設定することを特徴とする請求項1記載のインターカムシステム。
【請求項3】
前記子機が前記切替部によって受令モードに設定して前記親機に接続しようとし、前記親機に前記受令マスタ子機が接続されているとき、前記子機を、前記受令マスタ子機に送信される音声を受信するための受令スレーブ子機として設定することを特徴とする請求項2記載のインターカムシステム。
【請求項4】
主制御装置と、前記主制御装置と接続された1または複数の親機と、前記親機と接続された1または複数の子機とを備えるインターカムシステムの制御方法であり、
前記子機が前記親機と双方向に通信する通常動作モードに設定されているとき、
前記主制御装置は、
前記子機それぞれによって送話した送話音声を合成して第1の合成音声を生成し、前記第1の合成音声からそれぞれの送信先の子機からの送話音声を差し引いた第2の合成音声を生成し、
前記第2の合成音声を、前記親機を介して前記子機それぞれに送信し、
前記通常動作モードに設定されている前記子機は、
前記第2の合成音声を受信し、
前記子機が送信した送話音声をループ処理して前記第2の合成音声に加算して側音処理を行い、
前記子機が、前記親機と双方向に通信する特定の子機に送信される音声を受信するために前記親機と片方向に通信する受令モードに設定されているとき、
前記主制御装置は、
前記特定の子機に対しては、前記特定の子機からの送話音声を差し引かず前記第1の合成音声を生成し、
前記特定の子機に対して前記第1の合成音声を送信し、
前記受令モードに設定されている前記子機は、
前記第1の合成音声を受信し、
前記側音処理を無効にする
ことを特徴とするインターカムシステムの制御方法。
【請求項5】
前記子機が受令モードに設定して前記親機に接続しようとし、前記親機に対して接続される最初の受令子機であるとき、前記最初の受令子機を前記特定の子機である受令マスタ子機として設定することを特徴とする請求項4記載のインターカムシステムの制御方法。
【請求項6】
前記子機が受令モードに設定して前記親機に接続しようとし、前記親機に前記受令マスタ子機が接続されているとき、前記子機を、前記受令マスタ子機に送信される音声を受信するための受令スレーブ子機として設定することを特徴とする請求項5記載のインターカムシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主制御装置と親機と子機とを備えるインターカムシステム及びインターカムシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型店舗,娯楽施設,工場等の広い構内で、例えば管理者と従業員との間である複数のメンバー間の連絡手段としてインターカムシステムが利用されている(特許文献1参照)。インターカムシステムは、一般的に、1または複数の親機と、親機に接続される1または複数の子機と、親機を制御する主制御装置とを備える。インターカムシステムにおいては、複数のメンバーによる送話を互いに聞くことができるよう、概略的には、主制御装置は複数のメンバーによる送話音声を合成してそれぞれのメンバーが所持する子機に送信するようになっている。
【0003】
近年のインターカムシステムは、即時通話のために親機と子機とが常時接続されており、親機と子機とで双方向に通信することができるデジタルインターカムシステムが主流となっている。デジタルインターカムシステムでは、親機と子機とが常時接続されているので、1つの親機に接続することができる子機の数が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−355202号公報
【特許文献2】特開2005−197955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、デジタルインターカムシステムにおいては1つの親機に接続することができる子機の数が制限されるものの、さらに子機を増やしたいという要望がある。このような要望に対応するための一手法として、主制御装置から送信される音声情報を基本的には受信するのみとする受信用の子機を追加するという手法がある。この手法は例えば特許文献2に記載されている。
【0006】
ところが、デジタルインターカムシステムにおいて、主制御装置は、親機を介してそれぞれの子機に複数のメンバーによる送話音声の合成音声を送信するに際し、合成音声から送信先である子機が送信した音声を差し引いて送信するようになっている。従って、親機に対して双方向に接続されている特定の子機が存在し、親機に片方向に通信する受信用の子機を接続して特定の子機が受信する音声を受信用の子機で受信したとしても、受信用の子機は特定の子機が送信した音声を聞くことができない。このように、従来のデジタルインターカムシステムに単に受信用の子機を追加したとしても、親機と双方向に通信する子機が送信した音声を聞くことができないという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑み、親機と双方向に通信する子機が送信した送話音声を含む合成音声を、親機と片方向に通信する受信用の子機で聞くことができるインターカムシステム及びインターカムシステムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、主制御装置(1)と、前記主制御装置と接続された1または複数の親機(2)と、前記親機と接続された1または複数の子機(3)とを備え、前記主制御装置は、前記子機それぞれによって送話した送話音声を合成して第1の合成音声を生成し、前記第1の合成音声からそれぞれの送信先の子機からの送話音声を差し引いた第2の合成音声を生成する音声合成部(15)と、前記第2の合成音声を、前記親機を介して前記子機それぞれに送信する送信部(11)とを有し、前記子機は、前記第2の合成音声を受信する受信部(39)と、前記子機が送信した送話音声をループ処理して前記第2の合成音声に加算する側音処理を行う側音処理部(33)と、前記親機と双方向に通信する通常動作モードと、前記親機と双方向に通信する特定の子機に送信される音声を受信するために前記親機と接続する受令モードとを切り替える切替部(32)とを有し、前記子機が前記切替部によって受令モードに設定して前記親機に対して受令子機として接続しているとき、前記音声合成部は、前記特定の子機に対しては、前記特定の子機からの送話音声を差し引かず前記第1の合成音声を生成し、前記送信部は、前記特定の子機に対して前記第1の合成音声を送信し、前記受信部は前記第1の合成音声を受信し、前記側音処理部は前記側音処理を無効にすることを特徴とするインターカムシステムを提供する。
【0009】
上記のインターカムシステムにおいて、前記子機が前記切替部によって受令モードに設定して前記親機に接続しようとし、前記親機に対して接続される最初の受令子機であるとき、前記最初の受令子機を前記特定の子機である受令マスタ子機として設定することができる。
【0010】
上記のインターカムシステムにおいて、前記子機が前記切替部によって受令モードに設定して前記親機に接続しようとし、前記親機に前記受令マスタ子機が接続されているとき、前記子機を、前記受令マスタ子機に送信される音声を受信するための受令スレーブ子機として設定することができる。
【0011】
また、本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、主制御装置(1)と、前記主制御装置と接続された1または複数の親機(2)と、前記親機と接続された1または複数の子機(3)とを備えるインターカムシステムの制御方法であり、前記子機が前記親機と双方向に通信する通常動作モードに設定されているとき、前記主制御装置は、前記子機それぞれによって送話した送話音声を合成して第1の合成音声を生成し、前記第1の合成音声からそれぞれの送信先の子機からの送話音声を差し引いた第2の合成音声を生成し、前記第2の合成音声を、前記親機を介して前記子機それぞれに送信し、前記通常動作モードに設定されている前記子機は、前記第2の合成音声を受信し、前記子機が送信した送話音声をループ処理して前記第2の合成音声に加算して側音処理を行い、前記子機が、前記親機と双方向に通信する特定の子機に送信される音声を受信するために前記親機と接続する受令モードに設定されているとき、前記主制御装置は、前記特定の子機に対しては、前記特定の子機からの送話音声を差し引かず前記第1の合成音声を生成し、前記特定の子機に対して前記第1の合成音声を送信し、前記受令モードに設定されている前記子機は、前記第1の合成音声を受信し、前記側音処理を無効にすることを特徴とするインターカムシステムの制御方法を提供する。
【0012】
上記のインターカムシステムの制御方法において、前記子機が受令モードに設定して前記親機に接続しようとし、前記親機に対して接続される最初の受令子機であるとき、前記最初の受令子機を前記特定の子機である受令マスタ子機として設定することができる。
【0013】
上記のインターカムシステムの制御方法において、前記子機が受令モードに設定して前記親機に接続しようとし、前記親機に前記受令マスタ子機が接続されているとき、前記子機を、前記受令マスタ子機に送信される音声を受信するための受令スレーブ子機として設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインターカムシステム及びインターカムシステムの制御方法によれば、親機と双方向に通信する子機が送信した送話音声を含む合成音声を親機と片方向に通信する受信用の子機で聞くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のインターカムシステムの一実施形態の全体構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態のインターカムシステムが通常動作モードの場合の動作を説明するためのブロック図である。
図3図1及び図2中の主制御装置1の具体的構成例を示すブロック図である。
図4図1及び図2中の親機2の具体的構成例を示すブロック図である。
図5図1及び図2中の子機3の具体的構成例を示すブロック図である。
図6】一実施形態のインターカムシステムの全体で実行される接続処理を示すフローチャートである。
図7】一実施形態のインターカムシステムにおける受令マスタ子機による送話処理を示すフローチャートである。
図8】一実施形態のインターカムシステムにおける受令スレーブ子機による送話処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のインターカムシステム及びインターカムシステムの制御方法の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図2を用いて一実施形態のインターカムシステムの全体構成と、インターカムシステムの通常動作について説明する。図2に示すインターカムシステムは、主制御装置1と、親機2a,2b,2cと、子機3a1,3a2,3a3,3b,3cとを備える。主制御装置1には、親機2a〜2cが有線にて接続されている。親機2aには子機3a1,3a2,3a3が無線にて接続され、親機2bには子機3bが無線にて接続され、親機2cには子機3cが無線にて接続されている。
【0017】
親機2a〜2cのうちのいずれであるかを特定しない場合を親機2と称することとする。子機3a1,3a2,3a3,3b,3cのうちのいずれであるかを特定しない場合や図示していない任意の子機を子機3と称することとする。ここでは主制御装置1に接続する親機2を3つとしているがさらに多くの親機を接続してもよいし、親機2を1つのみとしてもよい。親機2の数は任意である。
【0018】
本実施形態のインターカムシステムはデジタルインターカムシステムであり、親機2と子機3とは常時接続されている。親機2は接続している子機3に対して時分割で送受信を行うためのスロットを割り当てるので、1つの親機2に接続することができる子機3の数が制限される。1つの親機2に接続することができる子機3の最大数を例えば3台とする。
【0019】
主制御装置1は構内または構外の所定の箇所に設置され、親機2は構内の例えば壁や天井等に取り付けられている。子機3は、インターカムシステムを利用するそれぞれのメンバーが所持している。
【0020】
子機3a1,3a2,3a3,3b,3cによる送話音声をそれぞれVa1,Va2,Va3,Vb,Vcとする。子機3を所持するメンバーは常時送話するとは限らないため、送話音声Va1,Va2,Va3,Vb,Vcの少なくとも1つが無音声の場合もある。送話音声Va1,Va2,Va3,Vb,Vcはそれぞれの親機2を介して主制御装置1へと送信される。主制御装置1は親機2を介して入力された全ての送話音声Va1,Va2,Va3,Vb,Vcを合成する。
【0021】
主制御装置1は、合成音声を親機2を介してそれぞれの子機3に送信するに際し、合成音声から送信先である子機3からの送話音声を差し引いた音声をそれぞれの子機3に送信する。具体的には、主制御装置1は、子機3a1に対しては、合成音声から送話音声Va1を差し引いた(Va1+Va2+Va3+Vb+Vc)−Va1を送信し、子機3a2に対しては、合成音声から送話音声Va2を差し引いた(Va1+Va2+Va3+Vb+Vc)−Va2を送信し、子機3a3に対しては、合成音声から送話音声Va3を差し引いた(Va1+Va2+Va3+Vb+Vc)−Va3を送信する。
【0022】
また、主制御装置1は、子機3bに対しては、合成音声から送話音声Vbを差し引いた(Va1+Va2+Va3+Vb+Vc)−Vbを送信し、子機3cに対しては、合成音声から送話音声Vcを差し引いた(Va1+Va2+Va3+Vb+Vc)−Vcを送信する。
【0023】
子機3a1,3a2,3a3,3b,3cには、自分自身が送信した送話音声が主制御装置1より送信されないため、自分自身が送信した送話音声Va1,Va2,Va3,Vb,Vcをそれぞれ内部でループ処理し、合成音声から自分自身が送信した送話音声を差し引いた音声に対して加算する。これによって、子機3を有するそれぞれのメンバーは互いに送話を聞くことができ、自分自身の送話も聞くことができる。
【0024】
主制御装置1が送信先である子機3からの送話音声を差し引いた音声をそれぞれの子機3に送信し、それぞれの子機3で自分自身の送話音声をループ処理して加算することにより、自分自身の送話音声が遅れて聞こえるタイムラグを少なくすることができる。また、親機2と子機3との間の送受信に用いる電波が悪化した場合でも少なくとも自分自身の送話音声を聞くことができる。自分自身の送話音声をループ処理して加算することを側音処理と称する。
【0025】
ここで、主制御装置1と親機2と子機3それぞれの内部構成の例について説明する。主制御装置1は図3に示すように構成される。図3において、有線送受信部11は、親機2から送信された送話音声やコマンドを受信し、親機2に音声やコマンドを送信する。音声送受信部12は、有線送受信部11が受信した送話音声を受信して音声合成部15に入力し、音声合成部15より出力された合成音声を有線送受信部11へと送信する。コマンド送受信部13は、有線送受信部11が受信したコマンドを受信して制御部14に入力し、制御部14からのコマンドを有線送受信部11へと送信する。
【0026】
コマンドとは、後に詳述するように、子機3を通常動作させるか受令機(受令子機)として動作させるかの切替コマンドや、子機3の認証情報等のインターカムシステムが送受信を行うために必要な各種の識別情報や制御情報を含む。子機3を通常動作させる場合を通常動作モード、子機3を受令機として動作させる場合を受令モードとする。
【0027】
制御部14は、切替コマンドに応じて音声合成部15における動作を異ならせるように音声合成部15を制御する。制御部14は、それぞれの子機3が通常動作モードに設定されているか、受令モードに設定されているかを管理している。通常動作モードにおいては、音声合成部15は、上述のように、全ての子機3からの送話音声を合成した合成音声から送信先である子機3からの送話音声を差し引いた音声を生成する。便宜上、合成音声から送信先である子機3からの送話音声を差し引いた音声も合成音声と称することとする。受令モードにおける音声合成部15の動作については後述する。
【0028】
親機2は図4に示すように構成される。図4において、有線送受信部21は、主制御装置1から送信された送話音声やコマンドを受信し、主制御装置1に音声やコマンドを送信する。音声送受信部22は、有線送受信部21が受信した合成音声を受信して音声処理部25に入力し、音声処理部25より出力された送話音声を有線送受信部21へと送信する。コマンド送受信部23は、有線送受信部21が受信したコマンドを受信して制御部24に入力し、制御部24からのコマンドを有線送受信部21へと送信する。
【0029】
制御部24は、コマンドをコマンド処理部26に入力し、コマンド処理部26で処理されたコマンドをコマンド送受信部23へと入力する。音声処理部25は、コマンド処理部26で処理されたコマンドに基づいて合成音声または送話音声を処理する。音声処理部25は、親機1から送信された合成音声をRF信号として子機3に送信するための処理を施したり、子機3からRF信号で送信された送話音声を親機1に送信するための処理を施したりする。RF通信制御部27は、RF送信部28におけるRF信号の送信やRF受信部29におけるRF信号の受信を制御する。
【0030】
子機3は図5に示すように構成される。図5において、制御部301は、切替スイッチ302による選択によって、子機3を通常動作モードで動作させるか受令モードで動作させるかを切替制御する。音声処理部303は、マイクロフォンである音声入力部305から入力された送話音声を処理してRF通信制御部307に入力し、RF通信制御部307より入力された合成音声をスピーカである音声出力部306より発音させるよう処理する。コマンド処理部304は、制御部301による制御に基づいて、子機3を通常動作させるか受令機として動作させるかのコマンドやその他の各種のコマンドを生成してRF通信制御部307に入力し、RF通信制御部307より入力されたコマンドを処理して制御部301に入力する。
【0031】
音声処理部303は、コマンド処理部304からのコマンドに基づいて、音声入力部305から入力された送話音声を側音処理するか側音処理しないかを切り替える。音声処理部303は側音処理部として動作している。RF通信制御部307は、RF送信部308におけるRF信号の送信やRF受信部309におけるRF信号の受信を制御する。制御部301には、送話ボタン310とタイマ311も接続されている。制御部301は、送話ボタン310が押下されているとき、音声入力部305による音声入力を有効にするよう音声入力部305を制御する。
【0032】
主制御装置1と親機2と子機3が以上のように構成されたインターカムシステムにおいて、子機3における切替スイッチ302によって、受令モードで動作させるよう設定した場合の動作について説明する。図1において、親機2b,2cに接続されている子機3b,3cは通常動作モードで動作しており、主制御装置1と親機2b,2cと子機3b,3cにおける動作は図2と同じである。図1は、親機2aに接続されている子機3が受令モードで動作している例を示している。
【0033】
本実施形態においては、受令モードに設定されている状態で、1つの親機2と最初に接続した子機3を親機2と双方向に通信する受令子機として設定し、2番目以降に接続した子機3を基本的には受信するのみとする受信用の受令子機として設定する。親機2と最初に接続して親機2と双方向に通信する受令子機を受令マスタ子機と称することとする。2番目以降に接続した受信用の受令子機を受令スレーブ子機と称することとする。受令マスタ子機は、親機2と双方向に通信する特定の子機である。
【0034】
図1においては、親機2aに受令マスタ子機3amが接続されている。受令マスタ子機3amは、図2で説明した通常動作モードにおける子機3a1,3a2,3a3と同じ動作が可能である。図1に示す例では、親機2aに受令スレーブ子機3as1,3as2が接続されている。受令スレーブ子機の数は1つの親機2に接続することができる子機3の最大数を超えて接続することが可能である。
【0035】
ここでは受信用の受令スレーブ子機と表現したが、基本的には受信を主とする子機であり、送話機能を有していてもよい。受令スレーブ子機とは、基本的には受信を主とする子機であり、親機と双方向に通信する受令マスタ子機に対して追加される片方向で通信する子機とする。頻度は低いものの受令スレーブ子機が有する送話機能を用いて送話してもよい。受令スレーブ子機によって送話する場合の動作については後述する。ここでは、受令スレーブ子機3as1,3as2は送話しない。
【0036】
受令マスタ子機3am及び子機3b,3cによる送話音声をそれぞれVam,Vb,Vcとする。送話音声Vam,Vb,Vcはそれぞれの親機2を介して主制御装置1へと送信される。主制御装置1の音声合成部15は、親機2を介して入力された全ての送話音声Vam,Vb,Vcを合成する。主制御装置1は、通常動作モードで動作している子機3b,3cに対しては、合成音声を親機2を介してそれぞれの子機3に送信するに際し、合成音声から送信先である子機3からの送話音声を差し引いた音声をそれぞれの子機3に送信する。
【0037】
具体的には、主制御装置1は、子機3bに対しては、音声合成部15によって合成音声から送話音声Vbを差し引いた(Vam+Vb+Vc)−Vbを生成して送信し、子機3cに対しては、音声合成部15によって合成音声から送話音声Vcを差し引いた(Vam+Vb+Vc)−Vcを生成して送信する。子機3b,3cは、自分自身が送信した送話音声が主制御装置1より送信されないため、自分自身が送信した送話音声Vb,Vcを音声処理部303によって側音処理して合成音声から自分自身が送信した送話音声が差し引かれた音声に対して加算する。
【0038】
一方、受令モードで動作している受令マスタ子機3amに対して、主制御装置1が通常動作モードで動作している子機3b,3cに対する動作と同じ動作を行ったとすると、受令マスタ子機3am及び受令スレーブ子機3as1,3as2は受令マスタ子機3amの送話音声を聞くことができないことになる。そこで、本実施形態においては、主制御装置1は、受令マスタ子機3amに対して次のような処理を実行する。
【0039】
主制御装置1は、受令マスタ子機3amに対しては、音声合成部15によって送話音声Vam,Vb,Vcを合成した合成音声である(Vam+Vb+Vc)をそのまま送信する。即ち、主制御装置1の音声合成部15は、受令マスタ子機3amに対しては、合成音声から受令マスタ子機3amの送話音声Vamを差し引かない。従って、受令スレーブ子機3as1,3as2には、合成音声(Vam+Vb+Vc)が送信される。この際、受令マスタ子機3amは、音声処理部303による側音処理を停止する。受令スレーブ子機3as1,3as2はそもそも送話しておらず、音声処理部303による側音処理を停止している。
【0040】
主制御装置1による受令マスタ子機3amに対する動作によって、受令マスタ子機3am及び受令スレーブ子機3as1,3as2は、受令マスタ子機3amの送話音声を含めて他のメンバーが所持する子機3からの送話を聞くことが可能となる。この場合、受令マスタ子機3amを所持するメンバーは、自分自身の送話音声を側音処理して加算した場合と比較して若干のタイムラグを感じる可能性があるが、実質的には問題とならない。本実施形態によれば、受令マスタ子機3amが自分自身の送話音声を聞くことができず、受令スレーブ子機3as1,3as2が受令マスタ子機3amの送話音声を聞くことができないという不具合を解消することができる。
【0041】
図6図8のフローチャートを用いて、本実施形態のインターカムシステムの動作についてさらに説明する。図6は、親機2に接続しようとする子機3が切替スイッチ302によって受令モードに設定している場合の主制御装置1,親機2,子機3の全体による接続処理を示している。図6において、親機2は、ステップS1にて、子機3が接続要求をした場合に、受令子機(受令マスタ子機または受令スレーブ子機)が既に接続されているか否かを判定する。受令子機が接続されていると判定されなければ(NO)、接続要求をした子機3は、親機2に対して受令モードで最初に接続しようとした子機であり、親機2及び子機3は、ステップS2にて、受令マスタ子機に設定するための受令マスタ接続処理を実行する。
【0042】
具体的には、親機2は、子機3からの接続要求に応答して、子機3に対して送受信する無線の周波数とスロットを割り当てる。親機2は子機3に送受信を行うための鍵を与えて、子機3との間で接続セッションを実行する。この受令マスタ接続処理は、親機2に接続しようとする子機3が通常動作モードに設定している場合の接続処理と同じである。
【0043】
次に、主制御装置1は、ステップS3にて、受令マスタ子機に対して送信する音声を、上記のように合成音声から受令マスタ子機からの送話音声を差し引かず、受令マスタ子機からの送話音声を含む合成音声とするよう設定する。受令マスタ子機は、ステップS4にて、側音処理を無効に設定して、接続処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS1にて、受令子機が接続されていると判定されれば(YES)、親機2及び子機3は、ステップS5にて、受令スレーブ子機に設定するための受令スレーブ接続処理を実行して接続処理を終了する。具体的には、親機2は、子機3からの接続要求に応答して、子機3に対して送信する無線の周波数とスロットを割り当て、子機3が音声を受信するための鍵を与える。なお、受令スレーブ子機に設定する子機3との間で接続セッションは実行しない。
【0045】
図7は、受令マスタ子機における送話処理を示している。図7において、受令マスタ子機は、ステップS11にて、送話ボタン310が押下されたか否かを判定する。送話ボタン310が押下されたと判定されれば(YES)、受令マスタ子機は、ステップS12にて、親機2との接続状態を維持したまま送話処理を実行して終了する。送話ボタン310が押下されたと判定されなければ(NO)、ステップS11の処理を繰り返す。
【0046】
受令スレーブ子機は基本的には受信用であるが、緊急の場合等で送話を行う必要が発生する可能性もある。そこで、本実施形態では、図8に示すようにして、受令スレーブ子機による送話処理を実現している。図8において、受令スレーブ子機は、ステップS21にて、送話ボタン310が押下されたか否かを判定する。送話ボタン310が押下されたと判定されれば(YES)、受令マスタ子機は、ステップS22にて、受令スレーブ切断処理を実行する。これにて、親機2からの音声の受信が停止する。
【0047】
受令スレーブ子機は、ステップS23にて、通常子機としての接続処理を実行する。子機3は、最も近い親機2に対して接続要求を送信する。従って、受令スレーブ子機が図1における例えば受令スレーブ子機3as1であったとしても、親機2aに対して接続処理を実行するとは限らない。親機2b,2cに対して接続処理を実行する場合もある。接続要求を受けた親機2は、周波数とスロットが空いていればそれらを受令スレーブ子機に割り当て、鍵を与えて接続セッションを実行する。受令スレーブ子機は、ステップS24にて、親機2との間で通常子機としての接続が成功したか否かを判定する。
【0048】
接続が成功したと判定されれば(YES)、通常子機として親機2に接続した受令スレーブ子機は、ステップS25にて送話処理を実行し、ステップS26にて送話ボタン310が押下されているか否かを判定する。送話ボタン310が押下されていると判定されれば(YES)、受令スレーブ子機は、処理をステップS25に戻し、ステップS26の判定を繰り返す。ステップS26にて送話ボタン310が押下されていると判定されなければ(NO)、受令スレーブ子機は、ステップS27にて、タイマ311を動作させて所定時間のカウントを開始する。
【0049】
受令スレーブ子機は、ステップS28にて、タイマ311のカウントが満了したか否かを判定する。タイマ311によるカウントは例えば数秒程度とする。タイマ311のカウントが満了したと判定されなければ(NO)、受令スレーブ子機は、ステップS32にて送話ボタン310が押下されているか否かを判定する。送話ボタン310が押下されていると判定されれば(YES)、受令スレーブ子機は、処理をステップS25に戻し、送話ボタン310が押下されていると判定されなければ(NO)、受令スレーブ子機は、処理をステップS28に戻す。
【0050】
ステップS28にてタイマ311のカウントが満了したと判定されれば(YES)、受令スレーブ子機は、ステップS29にて、親機2に対して通常子機として接続している状態の切断処理を実行し、受令子機としての再接続処理を実行して、図6のステップS1へと移行させる。図6で説明したように、受令子機が既に接続されていなければ新たに受令マスタ子機として親機2に接続され、受令子機が既に接続されていれば再び受令スレーブ子機として親機2に接続されることになる。
【0051】
一方、ステップS24にて接続が成功したと判定されなければ(NO)、受令スレーブ子機は、ステップS30にて送話ボタン310が押下されているか否かを判定する。送話ボタン310が押下されていると判定されれば(YES)、受令スレーブ子機は、処理をステップS23に戻し、送話ボタン310が押下されていると判定されなければ(NO)、受令スレーブ子機は、ステップS31にて、親機2に対して受令スレーブ子機として再接続処理を実行して終了する。
【0052】
このように、本実施形態においては、受令スレーブ子機において送話ボタン310が押下されたら、親機2に対する受令スレーブ子機としての接続である片方向の通信の接続を一旦解除し、親機2に対して双方向に通信する通常子機として接続する。従って、受令スレーブ子機は音声入力部35による送話を許可する状態に移行するので、送話することが可能である。
【0053】
また、本実施形態においては、送話ボタン310の押下解除によって送話が終了したら、タイマ311によってカウントされる所定の時間の経過後に、親機2に対する双方向の通信の接続を解除し、親機2に対して再び受令スレーブ子機としての接続である片方向の通信の接続に復帰させることができる。従って、親機2に対して通常子機として接続している時間を限定的にすることが可能である。よって、子機3を受令モードとして動作させている意味合いを損ねることなく、基本的には受信用の子機でありながら、必要な場合には送話することも可能となる。
【0054】
なお、本実施形態においては、親機と最初に接続した子機を受令マスタ子機、2番目以降に接続した子機を受令スレーブ子機とする例を説明したが、あらかじめ特定の子機に対して常に受令マスタ子機とする設定を行ってもよい。この場合、受令マスタ子機を電波状態のよいところに固定配置すれば、良好に通信を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態においては、送話ボタン310の押下によって送信の開始を指示することとしたが、送話ボタン310を使用せず、音声入力部305で音声入力を検知したときに送信の開始を指示するVOX(Voice Operated X)制御を行ってもよい。この場合、音声入力が所定の時間検知されなかったとき、送話の終了の指示となる。即ち、任意の送話指示部があればよい。
【0056】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。前述のように、受信用の子機とは送話機能が一切ない子機に限定されるのではなく、親機に対して接続することができる子機の最大数にかかわらず接続可能であり、基本として受信を主とする子機である。
【符号の説明】
【0057】
1 主制御装置
2,2a,2b,2c 親機
3,3a1,3a2,3a3,3b,3c 子機
3am 受令マスタ子機
3as1,3as2 受令スレーブ子機
11 有線送受信部(送信部)
15 音声合成部
303 音声処理部(側音処理部)
309 RF受信部(受信部)
310 送話ボタン(送話指示部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8