(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、建設機械において、キャブ内からの上方視界を重視するため、キャブ前方上側にクロスメンバーがなく、前窓と天窓とがガラスの突合せで構成されたものがある。つまり、前窓と天窓との間にキャブ骨格を構成するクロスメンバーがない。このようなキャブに前端を軸として回動する開閉式天井ガードを設ける場合、キャブ上部の左右の梁に跨るように長尺状のサポート(取付部材)を架設し、このサポートにヒンジ部材を取り付けることにより天井ガードを回動自在に取り付けている。
【0005】
しかし、上記構成では視界性が重視されるため、強度を増すためにサポートを大型化するのは不利である。かかる構成において天井ガードに落下物等による負荷が加わった場合、サポートの強度が十分でなく、また、クロスメンバーがないことから強度上頼るものがないため、天井ガードが変位(変形)して運転員を保護できない可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、落下物等によって天井ガードへ負荷が加わった場合に天井ガードの変位を抑制することができる建設機械のキャブガード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、建設機械のキャブ上部を保護する天井ガードと、キャブ前部を保護するフロントガードと、少なくとも前記天井ガードをキャブに取り付けるためのサポートとを備え、前記サポートは、左右方向に延びてその両端で前記キャブ上部の前端部に取り付けられるように構成され
、前記サポートは、前記天井ガードと前記フロントガードとの隙間に突出する突出部を有
し、前記突出部は、前記天井ガードに負荷が加わっていない状態において、前記フロントガードの上端に接しないように前記上端との間に間隔を隔てて突出することを特徴とする建設機械のキャブガード装置を提供している。
【0008】
ここで、前記突出部は、左右方向の中央に設けられているのが好ましい。
【0009】
また、前記天井ガードは、キャブ上部を覆う閉じ状態とキャブ上部を開放する開き状態との間で前端部を支点として回動可能にキャブに取り付けられるように構成され、前記突出部は、前記天井ガードが開方向に回動する際に天井ガードと接触して更なる回動を禁止するストッパとして機能するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の建設機械のキャブガード装置によれば、天井ガードに負荷が加わった場合に天井ガードはサポートの突出部と接触し、更に突出部はフロントガードとも接触可能である。よって、天井ガードに加わった負荷がフロントガード及び/又はキャブに伝達されるため、負荷によるエネルギーが吸収され、天井ガードの変位を抑制することができる。
【0011】
請求項2記載の建設機械のキャブガード装置によれば、突出部は左右方向の中央に設けられている。このため、強度的に最も弱い天井ガードの中央付近に落下物があった場合に、サポートは負荷を効率的に受けることができ、天井ガードの変位を更に抑制することができる。
【0012】
請求項3記載の建設機械のキャブガード装置によれば、突出部は、天井ガードが開方向に回動する際に天井ガードと接触して更なる回動を禁止するストッパとして機能する。このため、天井ガードのストッパとしての専用部品を別に設ける必要がなく、コスト低減及び制作性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態による建設機械のキャブガード装置について
図1乃至
図12に基づき説明する。本実施形態では、建設機械の一例として、油圧ショベルを例にとって説明する。
【0015】
油圧ショベル1は、
図1に示すようにクローラ式の下部走行体2Aと、この下部走行体2A上に鉛直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2Bと、この上部旋回体2Bの前部に装着された作業アタッチメント3とによって構成される。上部旋回体2Bにはキャブ(運転室)4が設けられ、このキャブ4内で旋回、走行、アタッチメント作動の各操作が行われる。
【0016】
キャブ4を保護するために油圧ショベル1に装着されるキャブガード装置10について説明する。キャブガード装置10は、主に、フロントガード11、天井ガード12,13、サポート20から構成される。
【0017】
フロントガード11は、キャブ4の前窓5(
図2)を保護するためにキャブ4の前面に設けられている。一方、キャブ4のルーフ4Aには上方視界を確保するための天窓6がルーフ前部に設けられている。この天窓6を含めたルーフ4Aを落下物から保護するために、後側天井ガード12及び前側天井ガード13がルーフ4A上に設けられている。
【0018】
後側天井ガード12は、略平板状であり、ルーフ4Aの後部上面にボルトで固定されている。後側天井ガード12は、清掃時等においても基本的には取り外されることのない固定式のガードである。
【0019】
前側天井ガード13は、全体として格子状に構成され、ルーフ4A前部の曲面に沿うように前部が先下がりに傾斜した側面視への字形に形成されている。
図4に示すように、前側天井ガード13は、前フレーム13F、後フレーム13B、右フレーム13R及び左フレーム13Lによって外枠が構成され、その内側に格子を構成する縦横の桟が配置されている。なお、この縦横の桟は、運転員からの視界をなるべく妨げないように角度が付けられている。
【0020】
本実施形態による油圧ショベル1では、キャブ4内からの上方視界を重視するために、キャブ4の前方上側にクロスメンバーが設けられておらず、前窓5と天窓6とがガラスの突合せで構成されている(
図10、
図11参照)。つまり、前窓5と天窓6との間にキャブ骨格を構成するクロスメンバーがない。
【0021】
図3に示すように、前側天井ガード13の前端部は、サポート20を介してキャブ4に連結されている。具体的には、左右方向に延びる長尺状のサポート20が、キャブ4上部の左右の梁4L,4Rの前方コーナー部4C(キャブ上部の前端部)にボルトで固定されている。そして、前側天井ガード13の前フレーム13Fが、左右のヒンジ部材15(
図6、
図7も参照)によってサポート20に枢着されている。かかる構成により、前側天井ガード13は、ヒンジ部材15を支点に回動して、
図1及び
図3に示すように天窓6を覆う使用時(作業時)の閉じ姿勢(閉じ状態)と、
図2及び
図11に示すように後上がりに傾斜して天窓6の上方を開放する清掃時の開き姿勢(開き状態)との間で開閉可能である。
【0022】
図4に示すように、前側天井ガード13の後端部(後フレーム13B)には、左右のロック機構16が設けられている。このロック機構16が、後側天井ガード12の前端部に設けられたストライカ(図示せず)と係合することによって、前側天井ガード13の閉じ姿勢が保持される。
【0023】
次に、フロントガード11について説明する。
図5に示すように、フロントガード11も、全体として格子状に構成され、キャブ前面の形状に沿うように側面視への字形に形成されている。フロントガード11は、上フレーム11U、下フレーム11D、右フレーム11R及び左フレーム11Lによって外枠が構成され、その内側に格子を構成する縦横の桟が配置されている。フロントガード11においても、縦横の桟には、運転員からの視界をなるべく妨げないように角度が付けられている。なお、
図5では、前側天井ガード13の図示が省略されている。
【0024】
フロントガード11は、右端部(右フレーム11R側)を回動軸として横開きとなるようにキャブ4に取り付けられている。より具体的には、フロントガード11の右フレーム11Rの上端部が、ヒンジ部材17Aによってサポート20のフロントガード取付部23(
図6)に枢着されている。また、右フレーム11Rの下端部が、キャブ4に取り付けられた取付部材17Cにヒンジ部材17Bを固定することによって枢着されている。かかる構成により、フロントガード11は、ヒンジ部材17A,17Bを支点に回動して、前窓5を覆う使用時(作業時)の閉じ姿勢(
図5)と、清掃時の開き姿勢との間で開閉可能である。
【0025】
フロントガード11の左端部(左フレーム11L)には、上下のロック機構18A,18Bが設けられている。上側のロック機構18Aがサポート20のストライカ取付部24(
図6)に固定されたストライカ(図示せず)と係合するとともに、下側のロック機構18Bが取付部材を介してキャブ4に取り付けられたストライカ(図示せず)と係合することによって、フロントガード11の閉じ姿勢が保持される。
【0026】
また、フロントガード11の下側には、フロント下部ガード19が設けられている。フロント下部ガード19は、キャブ4にボルト留めされた固定式のガードである。
【0027】
次に、サポート20について説明する。サポート20は、前側天井ガード13及びフロントガード11をキャブ4に取り付けるために設けられている。
図3及び
図5〜7に示すように、サポート20は、左右方向に延びる長尺状の部材であり、その両端にキャブ4に取り付けるためのボルト孔が形成されたキャブ取付部21を備える。
【0028】
サポート20は、その左右方向中央において、前方に突出する後述の突出部22を有する。各キャブ取付部21と突出部22との左右方向中間付近には、上述した前側天井ガード13のヒンジ部材15が固着されている。換言すると、突出部22は、左右のヒンジ部材15の間に設けられている。
【0029】
サポート20の右端部(
図6,7では左側)であってキャブ取付部21の下側の位置には、フロントガード11の上側のヒンジ部材17Aを取り付けるためのフロントガード取付部23が下方に突設されている。一方、サポート20の左端部(
図6,7では右側)であってキャブ取付部21のやや中央寄りの位置には、フロントガード11の上側のロック機構18Aと係合するストライカを取り付けるためのストライカ取付部24が設けられている。
【0030】
また、突出部22や取付部を除いたサポート20の一般断面は、
図8に示すように、下方に開いたコの字状の断面とされている。
【0031】
突出部22について詳述する。
図3に示すように、突出部22は、前側天井ガード13とフロントガード11との隙間に突出するように設けられている。
図9の断面図にも示すように、突出部22は、平板部22Aと、平板部22Aから下方へ緩い角度で屈曲されて延長された傾斜部22Bと、補強のために平板部22A及び傾斜部22Bの左右両側に設けられた側板部22Cとから構成されている。なお、平板部22A及び傾斜部22Bは、一般断面(
図8)と同じ1枚の鋼板を曲げ加工することによって形成され、これに左右の側板部22Cが溶接等によって接合される。
【0032】
かかる構成において、油圧ショベル1の運転中に落下物等によって前側天井ガード13に負荷が加わった場合、特に前側天井ガード13の左右方向中央部付近は強度的に弱く、負荷による変位が大きくなる。このため、
図10に示すように、前側天井ガード13の前フレーム13Fが、サポート20の突出部22(傾斜部22B及び平板部22A)と接触して負荷を伝達する。この負荷は、キャブ取付部21を経由してキャブ4へ伝達される。そして、更に負荷が大きい場合には、突出部22が下方へ変位して、側板部22Cがフロントガード11の上フレーム11Uに接触する。これにより、負荷は、フロントガード11へ伝達され、更にフロントガード11の取付部材17A〜17C,18A,18B等を経由してキャブ4に伝達される。
【0033】
なお、
図3、
図4及び
図11に示すように、前側天井ガード13の右フレーム13R及び左フレーム13Lの後部には、前側天井ガード13が上方から落下物等の負荷を受けた際にこの負荷をキャブ4に伝達する負荷伝達部材14が設けられている。従って、特に前側天井ガード13の後部(後フレーム13Bに近い位置)に落下物があった場合には、ロック機構16とともに負荷伝達部材14でも負荷を受けてキャブ4に伝達する。
【0034】
突出部22は、上述のように負荷を伝達する部材として機能するだけでなく、前側天井ガード13の開方向ストッパとしても機能する。即ち、
図11のように前側天井ガード13が開方向に回動した状態で、
図12に示すように前側天井ガード13の前フレーム13Fが突出部22の傾斜部22Bと接触して、前側天井ガード13の更なる回動を禁止する。突出部22がストッパとして機能するとき、前フレーム13Fと傾斜部22Bとは、(点や線で接触するのではなく)面接触をするように構成されている。このため、前フレーム13F及び傾斜部22Bの一部の箇所に過大な負荷がかかることが防止される。傾斜部22Bが平板部22Aに対して緩い角度で屈曲されているのは、このように突出部22がストッパとして機能する際に、前側天井ガード13の前フレーム13Fと面接触をさせるためである。
【0035】
本実施形態による建設機械のキャブガード装置10によれば、前側天井ガード13に落下物等による負荷が加わった場合に前側天井ガード13はサポート20の突出部22と接触し、更に突出部22はフロントガード11とも接触可能である。よって、前側天井ガード13に加わった負荷がサポート20を経由してキャブ4及び/又はフロントガード11に伝達されるため、負荷によるエネルギーが吸収され、前側天井ガード13の変位を抑制することができる。
【0036】
また、サポート20の突出部22は、左右方向の中央に設けられている。このため、強度的に最も弱い前側天井ガード13の中央付近に落下物があった場合に、サポート20は負荷を効率的に受けることができ、前側天井ガード13の変位を更に抑制することができる。
【0037】
更に、サポート20の突出部22は、前側天井ガード13が開方向に回動する際に前側天井ガード13と接触して更なる回動を禁止するストッパとして機能する。このため、前側天井ガード13のストッパとしての専用部品を別に設ける必要がなく、コスト低減及び制作性の向上を図ることができる。
【0038】
また、サポート20の一般断面(
図8)をコの字状断面としているため、例えばL字状断面とした場合よりも剛性が高くなり、サポート20の突出部22が受けた負荷をキャブ4へ伝達しやすい。
【0039】
本発明による建設機械のキャブガード装置は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0040】
例えば、上述した実施形態ではサポート20の突出部22は左右方向中央に設けられていたが、必ずしも中央でなくてもよい。また、突出部が複数箇所に設けられていてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、サポート20に前側天井ガード13及びフロントガード11を取り付けているが、フロントガードはサポートを介さずにキャブに取り付けられてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、前側天井ガード13はその前端部を支点に回動して開閉可能である(後開き)。しかし、天井ガードを前開き又は横開きの機構としつつ、負荷が加わった際に天井ガードの前端部をサポートの突出部に接触させて負荷を伝達する構成も可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 油圧ショベル、 2A 下部走行体、 2B 上部旋回体、
3 作業アタッチメント、 4 キャブ、 4A ルーフ、 4C 前方コーナー部、
4L,4R 梁、 5 前窓、 6 天窓、 10 キャブガード装置、
11 フロントガード、 12 後側天井ガード、 13 前側天井ガード、
14 負荷伝達部材、 15 ヒンジ部材、 16 ロック機構、
17A,17B ヒンジ部材、 17C 取付部材、 18A,18B ロック機構、
19 フロント下部ガード、 20 サポート、 21 キャブ取付部、 22 突出部、
22A 平板部、 22B 傾斜部、 22C 側板部、 23 フロントガード取付部、
24 ストライカ取付部。