【実施例】
【0039】
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0040】
<耐熱滑性層付き基材の作製>
基材として、4.5μmの片面易接着処理付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に、下記組成の耐熱滑性層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.90g/m
2になるように塗布し、100℃1分乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材を得た。
【0041】
<耐熱滑性層塗布液>
アクリルポリオール樹脂 12.5部
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル 2.5部
タルク 6.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.0部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0042】
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃2分乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃1分乾燥することで、染料層を形成し、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0043】
<下引き層塗布液−1>
ポリビニルピロリドン 1.0部
ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体 4.0部
〔共重合比(モル比):3/7〕
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0044】
<染料層塗布液>
C.I.ソルベントブルー 636.0部
ポリビニルアセタール樹脂 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0045】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録転写媒体を得た。
【0046】
<下引き層塗布液−2>
ポリビニルアルコール 1.0部
ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体 4.0部
〔共重合比(モル比):1/1〕
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0047】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録転写媒体を得た。
【0048】
<下引き層塗布液−3>
ポリビニルアルコール 3.5部
ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体 1.5部
〔共重合比(モル比):1/1〕
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0049】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱記録転写媒体を得た。
【0050】
<下引き層塗布液−4>
ポリビニルアルコール 1.5部
ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体 3.5部
〔共重合比(モル比):1/1〕
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0051】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を乾燥後の塗布量が0.05g/m
2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱記録転写媒体を得た。
【0052】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を乾燥後の塗布量が0.35g/m
2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱記録転写媒体を得た。
【0053】
(比較例1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下引き層を形成することなく、易接着処理面の上に、実施例1と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃1分乾燥することで、染料層を形成し、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0054】
(比較例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感熱記録転写媒体を得た。
【0055】
<下引き層塗布液−5>
ポリビニルピロリドン 5.0部
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0056】
(比較例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感熱記録転写媒体を得た。
【0057】
<下引き層塗布液−6>
ポリビニルアルコール 2.5部
ポリビニルイミダゾール 2.5部
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0058】
(比較例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱記録転写媒体を得た。
【0059】
<下引き層塗布液−7>
ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体 5.0部
〔共重合比(モル比):1/1〕
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0060】
(比較例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱記録転写媒体を得た。
【0061】
<下引き層塗布液−8>
ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 0.7部
〔共重合比(モル比):7/3〕
アルミナゾル 28.0部
純水 23.4部
イソプロピルアルコール 47.9部
【0062】
<被転写体の作製>
基材として、188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/m
2になるように塗布、乾燥することで、感熱転写用の被転写体を作製した。
【0063】
<受像層塗布液>
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0064】
<常温における染料層の密着性評価>
実施例1〜6、比較例1〜5の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより評価した結果を、表1に示す。
なお、評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
【0065】
<高温・高湿保存後における染料層の密着性評価>
実施例1〜6、比較例1〜5の感熱転写記録媒体に関して、40℃90%RH環境下に72時間保存された後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより評価した結果を、表1に示す。なお、評価は、上記の常温における評価と同基準にて行った。
【0066】
<印画評価>
実施例1〜6、比較例1〜5の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体、および40℃90%RH環境下に72時間保存された後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体と被転写体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度、異常転写の有無、およびテカリを評価した結果を、表1に示す。なお最高反射濃度は、テカリの確認されない印画部を、X−Rite528にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi副走査300dpi
【0067】
<異常転写評価>
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0068】
<テカリ評価>
また、テカリの評価は、以下の基準にて行った。
○:テカリが、認められない
△:テカリが、部分的に認められる。
×:テカリが、はっきりと認められる。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示す結果から、水溶性高分子とビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体を主成分として含む塗布液を塗布、乾燥して形成された下引き層が設けられた実施例1〜6の感熱転写記録媒体は、下引き層が設けられていない比較例1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における転写感度が高いことがわかった。また、常温保存および高温・高湿保存における染料層の密着性および印画における異常転写、さらに高濃度部で発生するテカリも実用上問題ないことがわかった。その中で、実施例1および2の感熱転写記録媒体は、常温保存品および高温・高湿保存品の最高反射濃度から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコールがより好ましいことがわかった。また、実施例2の感熱記録媒体と実施例3および4の感熱転写記録媒体は、常温保存および高温・高湿保存におけるテカリの結果から、水溶性高分子とビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体との含有割合は、固形分質量比で、水溶性高分子/ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体=7/3〜3/7であることがより好ましいことがわかった。また、実施例5の感熱転写記録媒体は、実施例4の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層の塗布量が0.10g/m
2未満であるため、幾分高温・高湿保存後の密着性が低下し、さらにテカリも幾分効果が低下していることがわかった。また、実施例6の感熱転写記録媒体は、同じく実施例4の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層の塗布量が0.30g/m
2超であるため、転写感度の効果が低下していることがわかった。
【0071】
これに対して、比較例2の感熱転写記録媒体は、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、下引き層を水溶性高分子であるポリビニルピロリドンのみで設けた結果、高温・高湿保存における染料層の密着性に問題を抱えると同時に、テカリの問題を抱えることがわかった。また、比較例3の感熱転写記録媒体は、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、下引き層を水溶性高分子であるポリビニルアルコールおよびポリイミダゾールの混合物で設けた結果、常温保存における最高反射濃度の上昇は確認されたものの、比較例2の感熱転写記録媒体と同じ問題を抱えることがわかった。また、比較例4の感熱転写記録媒体は、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、下引き層をビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体のみで設けた結果、比較例2および3の感熱転写記録媒体で確認される高温・高湿保存における染料層の密着性、テカリに関して幾分改善は確認されるものの、十分とは言えず、最高反射濃度も幾分劣ることがわかった。また、比較例5の感熱転写記録媒体は、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、下引き層をビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体およびアルミナゾルの混合物で設けた結果、常温保存、高温・高湿保存とも染料層の密着性、および最高反射濃度も概ね実用上問題ない範囲にあるものの、高温・高湿保存品でのテカリに問題を抱えることがわかった。
【0072】
上記した本発明の実施形態により得られる感熱転写記録媒体は、昇華転写方式のプリンタに使用することができ、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用できる。