(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751593
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】型締装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/68 20060101AFI20150702BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
B29C45/68
B29C45/76
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-280756(P2012-280756)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-124777(P2014-124777A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2014年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155159
【氏名又は名称】株式会社名機製作所
(72)【発明者】
【氏名】加古 峰稔
(72)【発明者】
【氏名】樫内 弘幸
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−110700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/68
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤及び可動盤の間に設けた金型を、ハーフナット及び係止節からなる係止手段並びに圧締手段により圧締する型締装置において、
前記ハーフナットの係止溝の位置と前記係止節の位置をそれぞれ検出しその相対位置を検出する位置検出手段と、
前記係止溝に前記係止節が進入可能なときの前記位置検出手段で検出された係合検出値及び、前記係止溝と前記係止節の当接面同士が当接したときの新たに検出された前記ハーフナットの係止溝の位置と前記係止節の位置を用いて前記位置検出手段で検出された当接検出値に基づいて前記係止溝と前記係止節との係合間隙を算出する係合間隙算出手段と、
を備えることを特徴とする型締装置。
【請求項2】
前記当接検出値は、前記圧締手段の圧締力が解除されたときのものであることを特徴とする請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
前記係合間隙は、所定の許容幅内に収まっているか否かが判断されることを特徴とする請求項1又は2に記載の型締装置。
【請求項4】
前記係合間隙が所定の許容幅内に収まっていないときに、係合間隙の目標値を補正することを特徴とする請求項3に記載の型締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフナット及び係止節からなり型締のための係合を良好に実行し得る係止手段を備えた型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハーフナットと係止節を備えた型締装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術は、型開閉手段により可動金型を固定金型に対して近接・離間移動させ、型締シリンダのピストンに連設されるタイバーの係合部と、型締シリンダが設けられていない側の盤に設けられたハーフナットとを係合し、前記型締シリンダにより型締を行う型締装置において、ハーフナット係合工程においてハーフナットを前進完了位置に向けて前進させる作動手段と、ハーフナットと係合部との係合を検知する係合検知手段と、型締シリンダまたはタイバーに配設されており、係合検知手段による係合信号が出力されないときにタイバーを型開方向に移動させるタイバー位置調整手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−209949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術には、タイバーの位置検出手段を有しないので、タイバーの係止節とハーフナットを係合させる際、これら係止手段の場所まで出向き係止節とハーフナットの当接面同士の隙間量を物差しなどを用いて目視で測定する必要があった。係止手段は、グリスなどで汚染されているため、隙間量を正確に測定し難いという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、ハーフナットと係止節との係合位置及び当接位置を実測してハーフナットと係止節との係合間隙を算出する型締装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、固定盤及び可動盤の間に設けた金型を、ハーフナット及び係止節からなる係止手段並びに圧締手段により圧締する型締装置は、前記ハーフナットの係止溝
の位置と前記係止節
の位置をそれぞれ検出しその相対位置を検出する位置検出手段と、前記係止溝に前記係止節が進入可能なときの前記位置検出手段で検出された係合検出値及び、前記係止溝と前記係止節の当接面同士が当接したときの
新たに検出された前記ハーフナットの係止溝の位置と前記係止節の位置を用いて前記位置検出手段で検出された当接検出値に基づいて前記係止溝と前記係止節との係合間隙を算出する係合間隙算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、型締装置は、ハーフナットの係止溝
の位置と係止節
の位置をそれぞれ検出しその相対位置を検出する位置検出手段と、係止溝に係止節が進入可能なときの位置検出手段で検出された係合検出値及び、係止溝と係止節の当接面同士が当接したときの
新たに検出されたハーフナットの係止溝の位置と係止節の位置を用いて位置検出手段で検出された当接検出値に基づいて係止溝と係止節との係合間隙を算出する係合間隙算出手段とを備える。よって、作業者は係止手段の場所まで出向くことなく制御装置において係止手段の係合間隙を確認することができるので、安全かつ正確に係合間隙を監視・制御することができるという優れた効果を奏する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記当接検出値が、前記圧締手段の圧締力が解除されたときのものであることを特徴とする。この発明によれば、当接検出値の検出は圧締力による型位置の変位に影響されることがないので、正確な当接検出値を得ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記係合間隙が、所定の許容幅内に収まっているか否かが判断されることを特徴とする。この発明によれば、係止手段の位置決め不良を監視するので、型締装置を安全かつ効率的に運転することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記係合間隙が所定の許容幅内に収まっていないときに、係合間隙の目標値を補正することを特徴とする。この発明によれば、係止手段の位置決め不良に基づく係合不良が未然に防止できるので、型締装置の連続自動運転を良好に継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る型締装置のハーフナットと係止節が係合可能な状態の概要を制御装置とともに示す断面図である。
【
図2】本発明に係る型締装置のハーフナットと係止節が係合し当接した状態の概要を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る型締装置の自動運転作動を係合間隙測定手段とともに示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、型締装置1は、図示しない基台に固着される固定盤2と、固定盤2に対向して近接・離隔可能に設けられる可動盤3と、固定盤2及び可動盤3を挿通し固定盤2側の端部はピストン9に接続され可動盤3側に所定の範囲にわたり係止節6が設けられた複数のタイバー5とを備える。
【0015】
固定盤2と可動盤3との対向面には、型合わせして金型となす固定金型15及び可動金型16がそれぞれ取り付けられる。なお、固定盤と可動盤との間に、金型を取り付け回転する中間盤を設けるような構成としてもよい。
【0016】
固定盤2及び可動盤3の側面には、型開閉手段が設けられている。型開閉手段は、固定盤2の側面に設けられたサーボモータ11と、可動盤3の側面に固着されたボールナットに螺合しサーボモータ11で駆動されるボールネジ12とからなる。サーボモータ11は、エンコーダを内蔵するので、固定盤2に対する可動盤3の位置すなわち型位置は、位置検出手段の一方を構成するエンコーダのパルス信号により検出される。なお、型開閉手段として油圧シリンダなどを用いることもできる。この場合には、型位置は油圧シリンダとは別に固定盤2と可動盤3の間にわたって設けられた位置検出手段の位置検出器で検出される。
【0017】
可動盤3の反固定盤2側の面には、係止手段が設けられている。係止手段は、図示しない駆動手段により図面での上下方向に相互に離隔又は近接して移動可能に設けられたハーフナット4と、タイバー5の可動盤3側の所定の範囲に設けられた串団子状の係止節6とからなる。ハーフナット4は、その複数に分割された各片が相互に近接して一体となったとき、係止節6の外形状と相似の内形状を有する係止溝7が形成されるように構成されている。ハーフナット4が相互に離隔したときには、
図1に示すように、タイバー5と同径の係止節6は、ハーフナット4の係止溝7の両端縁部を遊貫する。係止節6が所定位置に位置決めされたときには、係止節6の幅W1が係止溝7の幅W2より小さくなるように設定されているので、係止節6はハーフナット4の係止溝7内に進入可能となる。
【0018】
係止節6は、任意の間隔で複数設けられ、金型の厚さに応じて適応した位置のものとの係合が選択される。また、複数の係止節6が、複数の係止溝7に同時に係合するように構成してもよい。係止節6の断面形状は、図示のものは矩形であり当接面は型開閉方向に直交方向に設けられるが、例えば鋸歯状であってもよい。その場合、係止溝7の断面形状も係止節の断面形状に対応したものとなる。
【0019】
固定盤2の反可動盤3側の面には、係止節移動手段としての油圧シリンダ14が設けられている。油圧シリンダ14のロッドは固定盤2を貫通して延長したタイバー5に接続されている。油圧シリンダ14は、タイバー5の延長部分を対称点として複数設けられる。また、タイバー5の延長部分には、固定盤2に対する係止節6の位置を検出し位置検出手段の他方を構成する位置検出器13が設けられている。なお、係止節移動手段としてサーボモータなどを用いることもできる。この場合には、係止節6の位置はサーボモータに内蔵されたエンコーダで検出される。
【0020】
固定盤2には、圧締手段が設けられている。圧締手段は、固定盤2内のタイバー5挿通部分に設けられた型締シリンダ10と、型締シリンダ10内に進退自在で嵌挿されたピストン9とからなる。なお、型締シリンダ10は、固定盤2に内蔵されるように示したが、固定盤2の反可動盤3側に突出するように設けたものであってもよい。
【0021】
次に、上述の型締装置1による自動運転の連続成形サイクル作動を
図3の流れ図に基づいて説明する。
【0022】
係合間隙を算出する係合間隙算出手段である制御装置17は、サーボモータ11に駆動電流を給電してボールネジ12を回転させ、可動盤3を固定盤2方向へ移動させる。その結果、可動金型16は型閉じして固定金型15と型合わせする(S1)。
【0023】
制御装置17は、油圧シリンダ14へ圧油を供給して、位置検出器13で検出した係止節6の位置が、制御装置17に予め格納された目標値Loとなるようにタイバー5を位置決め制御する(S2)。この位置においては、係止節6に対してハーフナット4の係止溝7が進入可能である。
【0024】
制御装置17は、サーボモータ11のエンコーダで検出した型位置のデータMA及び、位置検出器13で検出したタイバー5(係止節6)位置のデータTAを係合検出値としてサンプリングし格納する(S3)。ここで、サーボモータ11のエンコーダ及び位置検出器13は、位置検出手段を構成する。そしてエンコーダが固定盤2に対するハーフナット4の位置を検出可能であり、位置検出器13が固定盤2に対するタイバー5(係止節6)の位置を検出可能なことから、前記位置検出手段は、前記ハーフナット4の係止溝7と前記係止節6との相対位置を検出することが可能である。
【0025】
一対のハーフナット4を相互に近接させ、係止溝7に係止節6を進入させて係止溝7と係止節6とを係合させる(S4)。なお上記ではハーフナット4の係止溝7とタイバー5(係止節6)の係合前の相対位置の係合検出値を位置検出手段で測定する。しかしハーフナット4の係止溝7とタイバー5(係止節6)の係合後の相対位置の係合検出値を測定するものも、係止溝7に係止節6が進入可能なときの相対位置の測定に含まれる。
【0026】
制御装置17は、ピストン9と型締シリンダ10とで形成される型締手段の増圧室8へ圧油を供給する。そうすると、タイバー5は図面上で右に移動して係止溝7と係止節6の当接面同士が当接する。そしてさらに増圧室8へ圧油を供給することによりタイバー5には張力が発生し、固定金型15と可動金型16とが圧締され型締する。図示しない射出装置は、型締された金型のキャビティへ溶融樹脂を射出する。射出装置は次の成形に備えて樹脂原料を可塑化して溶融樹脂になす。その間、金型キャビティに充填された溶融樹脂は冷却されて成形品となる(S5)。
【0027】
増圧室8の圧油をドレンに導いて、型締手段の圧締力を解除する(S6)。このとき、係止溝7と係止節6の当接面同士の当接は維持されている。
【0028】
制御装置17は、サーボモータ11のエンコーダで検出した型位置のデータMB及び、位置検出器13で検出したタイバー5(係止節6)位置のデータTBを当接検出値としてサンプリングし格納する(S7)。ここで、サーボモータ11のエンコーダ及び位置検出器13は、位置検出手段を構成する。
【0029】
制御装置17は、(TA−TB)−(MA−MB)の演算を実行して実成形時の係合間隙Lを求める(S8)。制御装置17は、係合間隙Lを画面表示することができる。このステップS8は、制御装置17が係合間隙算出手段として機能するものである。
【0030】
制御装置17は、係合間隙Lが所定の許容幅内に収まっているか否かを判断する(S9)。許容幅は、目標値Loから所定の範囲に設けられ、正負方向に同値でもよくまた同値でなくてもよい。また許容幅は、係止手段の形態や体格に応じて適宜に設定され予め制御装置17に格納されるデータである。許容幅の最小値は零であり、最大値は係止溝7の幅W2と係止節6の幅W1との差未満の値となる。
【0031】
係合間隙Lが所定の許容幅内に収まっているときは、次のステップへ移行する。係合間隙Lが所定の許容幅内に収まっていないときは、係合間隙Lと目標値Loとの差が解消するように目標値Loを補正する(S10)。また、この補正は、係合間隙Lが所定の許容幅から超えた量に基づいて実施するものであってもよい。さらに、これらの補正をステップS9での判断によらず、成形サイクル毎に実行するようにしてもよい。またさらに、ステップS9でNOと判断されたときや補正時に、警報や警告を発したり、型締装置を停止させたりするようにしてもよい。
【0032】
その後、型締装置1は、係止手段であるハーフナット4を相互に離隔させて係止溝7と係止節6との係合を解除する(S11)。そして、制御装置17は、サーボモータ11に駆動電流を給電してボールネジ12を回転させ、可動盤3を固定盤2から離隔するように移動させる。その結果、可動金型16は型開きして一成形サイクルが終了する(S12)。
【0033】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態の型締装置1は、ハーフナット4の係止溝7
の位置と係止節6
の位置をそれぞれ検出しその相対位置を検出する位置検出手段と、係止溝7に係止節6が進入可能なときの位置検出手段で検出された係合検出値及び、係止溝7と係止節6の当接面同士が当接したときの
新たに検出されたハーフナットの係止溝の位置と係止節の位置を用いて位置検出手段で検出された当接検出値に基づいて係止溝7と係止節6との係合間隙Lを算出する係合間隙算出手段S8とを備える。よって、作業者は係止手段の場所まで出向くことなく制御装置17において係止手段の係合間隙Lを確認することができる。そのため、作業者の個人差や悪化した測定環境による係合間隙の測定誤差が発生しないので、安全かつ正確に係合間隙を監視・制御することができるという優れた効果を奏する。
【0034】
なお、本発明は、当業者の知識に基づいて様々な変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものを含む。また、前記変更等を加えた実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りいずれも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0035】
例えば、型締装置1は、係止手段が可動盤3側にあり、圧締手段が固定盤2側にある例として説明したが、係止手段を固定盤側に、圧締手段を可動盤側に設けて本発明の型締装置を構成することができる。また、可動盤の反固定盤側に圧締手段を有する型締盤を設け、型締盤に係止手段を設けるような構成であってもよい。更に型締装置は、タイバー5に係合節6が設けられたものに限定されず、可動盤3の背面中央に固着されたメカニカルラムに係合節6が設けられたものでもよい。その場合型締シリンダ10は受圧盤に設けられ型締シリンダ10のラムにハーフナット4が前記係合節6に係合される。
【0036】
また、係合間隙算出手段(S8)は、型締装置1による自動運転の連続成形サイクル作動中のものとして説明したが、型締装置1を手動で運転して前記手動運転において、間隙算出手段を機能させることも可能である。または係止溝7と係止節6との係合隙間の測定のみを行うために、型締シリンダ10により設定圧まで増圧を行わないで、係合溝7の当接面と係合節6の当接面が当接されたことを油圧の変化から求めて当接検出値を検出するか、または僅かに昇圧後に圧を解除してから当接検出値を検出するものでもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 型締装置
2 固定盤
3 可動盤
4 ハーフナット
5 タイバー
6 係止節
7 係止溝
8 増圧室
9 ピストン
10 型締シリンダ
11 サーボモータ
12 ボールネジ
13 位置検出器
14 油圧シリンダ
15 固定金型
16 可動金型
17 制御装置
L 係合間隙
W1 係止節の幅
W2 係止溝の幅