(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底部から所定長さ延設された所定面積を有する一対の第1、第2のプラスチックフィルムが重ね合わされ、前記底部及び該底部に連接した両側辺縁が封止され、残りの前記底部と対向する一辺に被包装物を詰込んだ後に封止される袋口シール部を有する袋口を備えた被包装物を密閉包装する袋体からなる電子レンジ用包装袋において、
前記袋体は、前記袋口の近傍にあって該袋口から前記底部に向かって、順に、該袋体の内圧が所定値以上に上昇したときに前記袋口を封止した状態で該上昇した内圧を外へ放出する気体放出部と、被包装物からの液体を前記気体放出部へ漏出するのをブロックする液漏れブロック部とが設けられており、
前記液漏れブロック部は、前記第1、第2のプラスチックフィルムを前記両側辺縁間に亘って所定の幅で弱いシール強度で熱溶着された弱熱溶着シール帯からなり、前記弱熱溶着シール帯のシール強度は、前記両側辺縁及び袋口の熱溶着シール強度より弱くされており、
前記気体放出部は、前記第1、第2のプラスチックフィルムの少なくともいずれか一方のフィルムに形成され連続又は不連続のスリットからなり、前記スリットは、前記フィルムの内壁面から外側表面に向けて凹み頂部が外方へ肉薄に突出していることを特徴とする電子レンジ用包装袋。
前記袋口シール部と前記液漏れブロック部との間に所定の隙間が設けられ、前記隙間に前記気体放出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用包装袋。
前記弱熱溶着シール帯は、前記幅を横断する又は該幅を狭める非溶着又は該非溶着に近い弱溶着箇所が少なくとも一箇所設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ用包装袋。
前記弱熱溶着シール帯は、シール強度が前記袋体の底部側が低く、前記気体放出部側が高くなっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ用包装袋。
前記袋体は、前記液漏れブロック部と前記底部との間に、被包装物を分けて収納する仕切り部が設けられ、前記仕切り部は、前記第1、第2のプラスチックフィルムを前記両側辺縁間に亘って所定の幅で熱溶着され弱熱溶着シール帯からなり、前記弱熱溶着シール帯のシール強度は、前記両側辺縁及び袋口の熱溶着シール強度より弱くしてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子レンジ用包装袋。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで加熱調理する食品を密閉包装する電子レンジ用包装袋に関し、さらに詳しくは、液汁を多く含んだ食品などを密封包装して流通させ、この流通及び保管時などに衝撃などを受けても内部の液汁が外部へ漏出せず、しかも電子レンジ加熱時に袋が破けたり破裂しないようにして、安心、安全に使用ができ、しかも袋ごと電子レンジにかけて簡単に蒸し野菜などができるようにした電子レンジ用包装袋に関するものである。
【0002】
近年、電子レンジは、調理済み加工食品などの様々な食材、食品(以下、これらを纏めて「食品」という。)を簡単に、しかも短時間に素早く加熱調理できる簡便性があること
から、広く普及してきている。この普及に伴い、電子レンジで加熱調理される食品も多種、多様なものになっている。これらの食品は、概ねプラスチック製の包装袋で密封包装した状態で流通し、店頭陳列されて、一般消費者に買い求められている。買い求められた食品は、電子レンジで加熱調理されるが、密封されたまま加熱すると内部の食品から発生する水蒸気により袋内の内圧が上昇して袋体が膨らむ。その際、内圧が所定レベルを超えると、包装袋が破けたり破裂し、内部の食品が電子レンジ庫内に飛散して庫内を汚染するとともに、調理食品の原型を崩してしまうために食欲を喪失させるものとなる。
【0003】
これまでは、このような包装袋の破けや破裂を防止するために、電子レンジで加熱する前に予め包装袋の一部を鋏などで切り取って通気口を形成する方法、或いは、包装袋の一部に針孔などを穿孔する方法などが採用されていた。しかしながら、これらの方法は、いずれも面倒であり、しかも時々忘れてしまうことがある。そのため、最近は、包装袋内の蒸気圧が一定レベルを超えると、自動的に袋口などが開封して、破けや破裂を防止できるように工夫した包装袋が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、ガス抜き機能フィルム材を用いて作製した袋が記載されている。以下、
図11を参照して、この特許文献1に記載された袋を説明する。なお、
図11は下記特許文献1に記載された袋を示し、
図11Aは要部の切欠正面図、
図11Bは
図11Aの要部の拡大平面図である。この袋30は、横一連に断続的に熱溶着した液止め部32を、上下方向に所定の間隔をおき、上下の液止め部の配置をずらして二段設けた通ガス帯31と、この通ガス帯の上に一部を非溶着にして排気孔部34に連通させる溶着部33と、この溶着部の上に両面のフィルムを相互に密着させて内圧を開放する閉塞部37とを有するものとなっている。
【0005】
この袋は、電子レンジで内部の収容物が加熱されると、収容物からガスが発生し、袋内が昇圧する。この昇圧により、発生したガスが通ガス帯31に入り込み、内側に長く臨んで設けた不織布35の内端縁部36から排気孔部34を通って閉塞部37内へ抜けて、フィルム38を押し開いて排気開口部39から外気に放出される。また、収容物が液分を多く含んだものであると、この液分が通ガス帯31に入り込むが、入り込んだ液分は、下段の液止め部32の下面に当たって下方へ落下し、また、強い内圧でさらに液体が上がっても、上段の液止め部に当たって下方へ落下してしまうので、外への漏出が阻止される。特に、液止め部32の両側端が下方へ向けて傾斜しているために、液止め部32に当たった液分は、下方へ偏向され、また下段の液止め部間の通過部で遮断するように上段の液止め部が配置してあるので、そのまま上に向かうことがない。したがって、下記特許文献1に記載されている袋によれば、電子レンジでの加熱時に、ガスだけが外部へ放出され、液分が外部へ漏出することがないので、安心して使用できるというものである。
【0006】
また、下記特許文献2にも同様の包装袋が記載されている。この下記特許文献2に記載されている包装袋は、背シール部を合掌シール形式でヒートシールして筒状体を形成し、この筒状体の両端の開口部をヒートシールしてピローパウチ形式に形成し、しかも、この袋の背シール部又は上下左右いずれかの端縁部に、内部に収納された食品を袋ごと加熱したときに、上昇する袋内の内圧を一定範囲に調節するための折れ曲がり構造の排気路を設けたものである。
【0007】
さらに、以下の特許文献3及び4にも同様の包装袋が記載されている。下記特許文献3に記載されている包装袋は、ヒートシール部を有し、内容物が充填された易剥離性包装体において、ヒートシール部の外縁に凹部を設け、このシール部の内縁を直線状にして、しかも易剥離性包装体を層間剥離性フィルムで形成したものである。また、下記特許文献4に記載されている包装袋は、トップシール部において、V字形状部位の最深部をヒートシール部の内縁部よりも内容物側に位置する形状にしたものである。
【0008】
これらの特許文献1〜4に記載されている包装袋は、いずれも調味液(料)と具材などとが一緒に、すなわち調味液(料)で味付けした具材が袋内に詰込まれて使用されている。しかしながら、このように調味液(料)で味付けした具材を包装すると、具材に調味液(料)が過剰に浸み込み過ぎて、具材自身の味が消されてしまうことがある。そこで、袋内を2室に仕切って、一方の室に調味液(料)、他方の室に具材などを詰込んで、加熱調理中に混合させる包装袋が下記特許文献5に記載されている。下記特許文献5に記載されている包装袋40は、
図12に示したように、周縁をシールした略矩形状の内部が周縁のいずれかの側縁と略平行に、易剥離性フィルムでした仕切りシール部41を設け、内部を2つの室に区画し、包装袋の一部に周辺に通気口42を形成したものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1〜4に記載されている電子レンジ用包装袋は、加熱調理時に袋内の蒸気圧が一定レベルを超えると自動的に袋体の一部が開封されるので、袋体の破れや破裂を防止できるが、こられの包装袋にはそれらの構成からしていずれもいくつかの課題が潜在している。すなわち、上記特許文献1に記載されている包装袋は、内部から外方へ向けて、2段の液止め部を有する通ガス帯、排気孔部を有する溶着部及び排気開口部を有する閉塞部がそれぞれ設けられているが、排気開口部の開口が開放されているので、何らかの原因で内部のガス及び液汁が通ガス帯及び溶着部を通過してしまうと、液汁がこの排気開口部の開口から外へ漏出してしまう恐れがある上、この排気開口部の開口から雑菌などが内部に侵入する恐れもある。また、上記特許文献1に記載されている包装袋では、液汁の噴出をなくするために、通ガス帯に2段の液止め部が設けられているが、この液止め部の配置によっても液漏れが発生する恐れがあり、しかも、通ガス帯、溶着部及び閉塞部に、2段の液止め部、不織布、排気孔部及び排気開口部を設けなければならないので、構造が極めて複雑で作製が面倒であり、コスト高になる。
【0011】
また、上記特許文献2に記載されている包装袋は、排気路を折れ曲がり構造にしたものであるが、この包装袋も上記特許文献1と同様の課題を抱えている。さらに、上記特許文献3、4に記載されている包装袋は、開封箇所が凹部やV字形状部となるので構造が簡単になるが、特殊な層間剥離性フィルムを使用しなければならないので、コスト高を招く恐れがある。また、下記特許文献5に記載されている包装袋は、その仕切りシール部が易剥離性フィルムで構成され、その素材が袋体と異なるので、二種類の素材が必要となり、製作も面倒になり、また、この仕切りシール部の易剥離性フィルムは、袋体と素材が異なるので、袋体との間が弱シール部となってしまい、袋内の内圧が高くなるとこの部分から気体漏れと同時に液汁などが噴出してしまうことがある。
【0012】
さらに、下記特許文献5に記載されている包装袋は、仕切りシール部の中央部の一部が未シール部となっているので、上方室に調味料などの液体を入れるとこの液体が下方室に落下して下方室の具材などに混入されてしまうことがある。さらにまた、下記特許文献5に記載されている包装袋では、加熱調理中に袋内の内圧が高くなると、未シール部が開いて開口が拡大されるが、その開口が狭いため、上方室の調味料がこの狭い開口を通って下方室へ入り込む形式になるので、調味料が下方室内の具材に広く分散され難いために良好に混ざらず、味が偏ったものとなる。例えば、上方室に塩、下方室に枝豆などを入れて包装した場合、開口が狭いので塩が万遍なく分散され難く、枝豆の表面に均等に付着され難い。さらに調理後は、食材を包装袋から皿などに移し替える必要があるが、食材が高温となっているために移し替え作業に危険性があり、また手間も掛かり、さらに、食後には皿洗いなどが必須となる。
【0013】
本発明は、これらの従来技術が抱える課題を解決するためになされたものであり、安全性、衛生性及び生産性に優れ、さらに安心して使用ができる電子レンジ用包装袋を提供することを目的とする。具体的には、本発明の目的は、運搬や加熱調理時に袋体の破れや破裂がなくて安全性に優れ、流通、保管時などにも外部から袋内に細菌類の侵入がなくて衛生的に優れ、しかも簡単に且つ安価に製作ができて生産性にも優れ、さらに液汁などの漏出、噴出がなく安心して使用ができる電子レンジ用包装袋提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、上記の目的を有し、さらに、加熱調理時に袋体を自立させた状態で破れや破裂を起こさずに自動的に内圧を低下させることができ、しかも、食材などと調味液(料)とを分けて包装ができて、加熱調理時に調味液(料)が食材などに広く分散して混合されるようにすると共に、袋ごと電子レンジにかけて簡単に蒸し野菜などを調理でき、加熱調理後は袋体をそのまま簡易皿として利用できる電子レンジ用包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の電子レンジ用包装袋は、底部から所定長さ延設された所定面積を有する一対の第1、第2のプラスチックフィルムが重ね合わされ、前記底部及び該底部に連接した両側辺縁が封止され、残りの前記底部と対向する一辺に被包装物を詰込んだ後に封止される袋口シール部を有する袋口を備えた被包装物を密閉包装する袋体からなる電子レンジ用包装袋において、
前記袋体は、前記袋口の近傍にあって該袋口から前記底部に向かって、順に、該袋体の内圧が所定値以上に上昇したときに前記袋口を封止した状態で該上昇した内圧を外へ放出する気体放出部と、被包装物からの液体を前記気体放出部へ漏出するのをブロックする液漏れブロック部とが設けられており、
前記液漏れブロック部は、前記第1、第2のプラスチックフィルムを前記両側辺縁間に亘って所定の幅で弱いシール強度で熱溶着された弱熱溶着シール帯からなり、前記弱熱溶着シール帯のシール強度は、前記両側辺縁及び袋口の熱溶着シール強度より弱くされて
おり、
前記気体放出部は、前記第1、第2のプラスチックフィルムの少なくともいずれか一方のフィルムに形成され連続又は不連続のスリットからなり、前記スリットは、前記フィルムの内壁面から外側表面に向けて凹み頂部が外方へ肉薄に突出していることを特徴とする。
【0016】
また、第2の態様の電子レンジ用包装袋は、第1の態様の電子レンジ用包装袋において、前記気体放出部は、前記袋口を封止する箇所と前記液漏れブロック部との間に跨って設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、第3の態様の電子レンジ用包装袋は、第1の態様の電子レンジ用包装袋において、前記袋口シール部と前記液漏れブロック部との間に所定の隙間が設けられ、前記隙間に前記気体放出部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、第4の態様の電子レンジ用包装袋は、第1〜3のいずれかの態様の電子レンジ用包装袋において、前記弱熱溶着シール帯は、前記幅を横断する又は該幅を狭める非溶着又は該非溶着に近い弱溶着箇所が少なくとも一箇所設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、第5の態様の電子レンジ用包装袋は、第1〜4のいずれかの態様の電子レンジ用包装袋において、前記弱熱溶着シール帯は、シール強度が前記袋体の底部側が低く、前記気体放出部側が高くなっていることを特徴とする。
【0020】
また、
第6の態様の電子レンジ用包装袋は、
第1〜5のいずれかの態様の電子レンジ用包装袋において、前記袋体は、前記液漏れブロック部と前記底部との間に、被包装物を分けて収納する仕切り部が設けられ、前記仕切り部は、前記第1、第2のプラスチックフィルムを前記両側辺縁間に亘って所定の幅で熱溶着され弱熱溶着シール帯からなり、前記弱熱溶着シール帯のシール強度は、前記両側辺縁及び袋口の熱溶着シール強度より弱くしてあることを特徴とする。
【0021】
また、
第7の態様の電子レンジ用包装袋は、
第6の態様の電子レンジ用包装袋において、前記弱熱溶着シール帯は、前記幅を横断する又は該幅を狭める非溶着又は該非溶着に近い弱溶着箇所が少なくとも一箇所設けられていることを特徴とする。
【0022】
また、
第8の態様の電子レンジ用包装袋は、
第6又は7の態様の電子レンジ用包装袋において、前記弱熱溶着シール帯は、前記袋体の底部側のシール強度が低く、前記気体放出部側が高くなっていることを特徴とする。
【0023】
また、
第9の態様の電子レンジ用包装袋は、
第8の態様の電子レンジ用包装袋において、前記袋体は、前記中間仕切り部の前記底部側に、前記両側辺の少なくとも一辺にノッチが形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、
第10の態様の電子レンジ用包装袋は、
第1〜9のいずれかの態様の電子レンジ用包装袋において、前記底部は、被包装物の非収容時に折り畳まれており、被包装物の収容されたときに自立できる大きさに面積が拡大される構造とされていることを特徴とする。
【0025】
また、
第11の態様の電子レンジ用包装袋は、
第1〜10のいずれかの態様の電子レンジ用包装袋において、前記袋口シール部は、前記気体放出部を跨ぐように波状に封止されていることを特徴とする。
【0026】
また、
第12の態様の電子レンジ用包装袋は、
第1〜11のいずれかの態様の電子レンジ用包装袋において、前記袋口シール部は、前記両側辺縁の熱溶着シールされる部分より幅広に設けられていることを特徴とする。
【0027】
また、
第13の態様の電子レンジ用包装袋は、
第12の態様の電子レンジ用包装袋において、前記袋口シール部には、開孔が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の
第1〜5の態様の電子レンジ用包装袋によれば、運搬や加熱時に袋体の破れや破裂がなくて安全性に優れ、流通、保管時などにも外部から袋内に細菌類の侵入がなくて衛生的に優れ、しかも簡単に且つ安価に製作ができて生産性にも優れ、さらに液汁などの漏出がなく安心して使用ができるものとなる。特に、袋口の近傍に、気体放出部と液漏れブロック部とが分けて設けてあるので、各部でそれぞれの機能を発揮させることができる。すなわち、液漏れブロック部では袋体の液体が外部へ漏れるのをブロックでき、しかも気体放出部では袋体内の圧力が所定値以上に上昇したときにこの上昇した内圧を外へ放出できる。また、これらの気体放出部及び液漏れブロック部は、前者が袋口に近い箇所、後者が気体放出部の後にあって袋体内側に液漏れブロック部に設けてあるので、気体放出部及び液漏れブロック部をそれぞれの機能を持つものとして容易に形成できる。特に、気体放出部の形成が容易になる。
【0029】
また、本発明の
第6〜10の態様の電子レンジ用包装袋によれば、加熱調理時に袋体を自立させた状態で破れや破裂を起こさずに自動的に内圧を低下させることができ、しかも、食材などと調味液(料)とを分けて包装できて、加熱調理時に調味液(料)が食材などに広く分散して混合されるようにすると共に、加熱調理後は袋体をそのまま簡易皿として利用できる。
【0030】
また、本発明の
第11の態様の電子レンジ用包装袋によれば、袋口の熱溶着されるシール部分と気体放出部とが交差する割合が多くなり、より効率的に袋体内に発生した内圧を放出することができる。
【0031】
また、本発明の
第12の態様の電子レンジ用包装袋によれば、袋口部分に電子レンジで加熱された包装袋を使用者が素手でつかむことが可能な部分を設けることができるので、使用者が安全に電子レンジから取り出し、また安全に持ち運ぶことができるようになる。
【0032】
また、本発明の
第13の態様の電子レンジ用包装袋によれば、開孔に使用者が指等を通して把持したり、また、菜箸等を挿通させたりすることができるので、より安全に加熱された包装袋の取り出しや持ち運びを行うことができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電子レンジ用包装袋を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0035】
[実施形態1]
図1を参照して、本発明の実施形態1に係る電子レンジ用包装袋の全体構成を説明する。なお、
図1は本発明の実施形態1に係る電子レンジ用包装袋を示し、
図1Aは正面図、
図1Bは
図1AのIB−IB線の断面図、
図1Cは
図1AのIC−IC線の断面図である。
【0036】
本発明の実施形態1に係る電子レンジ用包装袋(以下、包装袋という。)10は、
図1に示すように、略細長矩形状の一枚のプラスチックフィルムを長手方向の中央部で折り返し重ね合せて幅方向の両端辺を揃えて、それらの両側辺部をそれぞれ接合(熱溶着シール)して、残りの辺を開口させて袋口とした有底の袋体からなり、この袋体は開口部近傍に、袋口から底部に向かって、順に、袋口シール部11c、気体放出部12L及び液漏れブロック部14をそれぞれ設けたものとなっている。すなわち、この包装袋10は、所定幅長及び長さを有し比較的大きい面積に拡大できる底部10aと、この底部の長手方向の両底側縁から上方へ所定長さ延設した一対の対向するフィルムと、それぞれを表裏とした表裏フィルム10b、10cと、これらの表裏フィルム10b、10cの両側辺縁部を所定の幅長W1で熱溶着シールした側辺ヒートシール部11a、11bと、上端を開口させ袋口とし被包装物を収納した後に幅長W2で熱溶着シールする袋口シール部11cと、この袋口シール部11cに隣接して内圧が所定レベル以上に上昇したときに上昇した内圧を外へ逃がす気体放出部12Lと、さらに気体放出部に隣接して被包装物に含まれた液分の漏出を阻止する液漏れブロック部14とを有し、内部に被包装物が収納される大きさの空間Sが形成される袋体からなり、プラスチックフィルムで作製されている。
【0037】
この包装袋10は、幅長W及び長さLの矩形状の袋体となっている。そして、気体放出部12Lは、複数本のスリット12からなり、これらのスリット12が袋口シール部11cと液漏れブロック部14とに跨って形成されている。液漏れブロック部14は、袋口シール部11cに隣接した位置に設けてある。この位置に液漏れブロック部14があると、袋体を自立させた状態で液漏れブロック部14が高い位置にあるので、袋体の内部容積を減少させることなく、しかも液汁に浸され難くなり、袋体内の内圧上昇により、迅速に剥離される。勿論、袋体を横に倒しても液漏れすることがない。なお、袋体は、一枚のプラスチックフィルムで製袋しているが、異なる複数枚のフィルムを用いて作製してもよい。また、側辺ヒートシール部11a、11bの少なくとも一方の側辺に切欠き(ノッチ)13を設けるのが好ましい。
【0038】
このプラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、表側をポリエチレンテレフタレート(PET)裏側をポリエチレン(PE)とした積層フィルム、表側をポリアミド(PA)裏側をポリエチレン(PE)とした積層フィルム、及びポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)との積層フィルムなどを使用する。このポリプロピレンは、延伸したもの(OPP)、無延伸のもの(CPP)のいずれでもよい。厚さは、総厚で15〜100μmである。
【0039】
底部10aは、内側へ折り畳んで内部空間S内に被包装物が収納されているときに、この折畳み部分が拡大される形状、例えばガゼット袋(折り畳み底部10a')にして、この袋底部で自立できる、いわゆるスタンデングパウチとなっている。
【0040】
表裏フィルム10b、10cは、またプラスチックフィルムの表裏面10b1、10c1と10b2、10c2となっている。なお、フィルム10b、10cを表裏フィルムとしたが、包装袋の使用の際には、いずれを表裏としてもよい。また、表裏フィルム10b、10cは、特許請求の範囲ではいずれかが第1又は第2のプラスチックフィルムと表現されている。
【0041】
包装袋10は、
図1に示すように、外周側縁及び袋口を所定の幅長W1で熱溶着により接合して側辺ヒートシール部11a、11b及び袋口シール部11cとするが、これらの側辺ヒートシール部11a、11b及び袋口シール部11cの接合強度、いわゆるシール強度は液漏れブロック部14よりも高いシール強度で熱溶着シールする。この熱溶着シール条件は、その溶着温度を比較的高い、例えば120℃、その時間を例えば数秒間及び所定の押圧力を掛けて行う。これらの条件で側辺ヒートシール部11a、11b及び袋口シール部11cを熱溶着シールすると、接合が堅固となり、被包装物が重いものであっても、或いは運搬などの衝撃を受けても、これらのシール部から剥離することがない。その結果、側辺ヒートシール部11a、11b及び袋口シール部11cが剥離して内容物が飛び出すことがない。
【0042】
図1〜
図3を参照して、液漏れブロック部14を説明する。なお、
図2は
図1の包装袋における液漏れブロック部分を示し、
図2Aは液漏れブロック部の正面図、
図2Bは液漏れブロック部の接合度のグラフ、
図2C〜
図2Gは
図2Aの液漏れブロック部の変形例の正面図、
図3は
図1の包装袋の液漏れブロック部の作用を説明する断面図である。
である。
【0043】
液漏れブロック部14は、
図1A、
図2Aに示すように、所定の幅長、例えば数ミリから数十ミリ程度の帯状にして両側辺ヒートシール部11a、11b間を繋いだ熱溶着シール帯で形成する。この熱溶着シール帯のシール強度は、前記したように側辺ヒートシール部11a、11b及び袋口シール部11cより弱い熱溶着シールにする。この弱熱溶着シール帯は、その溶着温度を側辺ヒートシール部11a、11b及び袋口シール部11cの溶着温度120℃より低く、例えば100〜110℃、時間を例えば0.3〜0.5秒で所定の圧力を掛けて行う。この熱溶着条件は、側辺ヒートシール部11a、11b及び袋口シール部11cの溶着温度より低く且つ時間も短くなっている。このシール方法によれば、フィルム素材に特別なもの、例えば易剥離層を設けた積層フィルムなどを使用することなく、溶着温度或いは後述するように押し圧力を調節することによって、簡単に所定の機能を有するシールが可能になる。
【0044】
この液漏れブロック部14のシール強度を側辺ヒートシール部11a、11b及び袋口シール部11cに比べて弱くシールすると、被包装物の袋詰め状態では液漏れが阻止される一方で、内圧が所定レベルを超えると、簡単に剥離し、所定レベルを超えた気体が気体放出部から放出されるので、破れや破裂などを防止できる。
【0045】
この液漏れブロック部14を構成する弱熱溶着シール帯は、全体のシール強度を略均一したが、部分的にシール強度を変えてもよい。例えば、気体放出部12Lに近い側を強く、この気体放出部から離れるにしたがって弱くするのが好ましい。すなわち、
図2Bに示すように、シール強度を気体放出部12Lに近い側bが強く、この気体放出部から離れるにしたがって弱く、気体放出部から最も離れた側aが最も弱くなるようにする。このようにシール強度を変えると、袋体内の圧力が上昇したときに、この上昇に伴って袋体の内部側aから先ず剥離し始めて、その剥離現象が気体放出部12L側bへスムーズに波及移行して剥離される。その結果、運搬、保管時などでは液漏れを阻止し、しかも加熱調理時には被包装物から発生する水蒸気圧が所定レベルを超えると、より簡単に剥離して、この内圧が気体放出部から放出されるので、破れや破裂などを防止できる。
【0046】
このシール強度の調節は、上記の熱溶着シール条件において掛ける圧力の調節、例えば、気体放出部12L側に強い押し圧力、この気体放出部から離れるにしたがってこの押し圧力を弱くなる形状の熱溶着シールバーを用いて行う。この熱溶着シールバーは、その押圧面が所定の角度に傾斜させたもの、或いは階段状にしたものなどを用いる。なお、この接合は、熱溶着シールでなく、他の接合手段、例えば糊着などにしてもよい。
【0047】
図3を参照して、この液漏れブロック部の作用を説明する。この包装袋10は、非加熱調理前には、不図示の被包装物からの水蒸気の発生が殆どなく、あっても僅少であるので、液漏れブロック部14は接合状態を保持している(
図3A参照)。加熱調理が始まり被包装物から水蒸気が発生すると、袋内の圧力が上昇し、袋体が膨らむ(
図3B参照)。この状態では、袋内の圧力が低く、液漏れブロック部14を剥離させるに至らない。加熱されて袋内圧力が所定レベルを超えると液漏れブロック部14の熱溶着箇所が剥離し始める。このとき、液漏れブロック部14のシール強度を
図2Bのように、気体放出部12Lに近い側bを強く、この気体放出部12Lから離れるにしたがって弱く、気体放出部から最も離れた側aを最も弱くしてあると、
図3Cに示すように、袋体内側、すなわち、気体放出部12Lから最も離れた側aが袋内圧力の上昇に追随して素早く剥離し始めて、さらに袋内圧力の上昇に伴って、この剥離スピードが加速されて剥離される(
図3D参照)。さらにまた、袋内圧力が上昇すると、液漏れブロック部14の熱溶着箇所が完全に剥離する。その結果、内部の上昇した水蒸気(気体)は、気体放出部から外へ放出される(
図3E参照)。この気体放出時には、袋口シール部が堅固にシールされているので、このシール部が開口することがなく、圧力上昇した水蒸気のみが気体放出部から噴出される。
【0048】
液漏れブロック部14を構成する弱熱溶着シール帯は、その熱溶着パターンを
図2Aに示したように、所定の幅長全面を熱溶着シールした熱溶着パターンで形成したが、これに限定されるものでなく、その熱溶着パターンを種々変更してもよい。
図2C〜
図2Gは、液漏れブロック部の変形例を示している。
図2C、
図2D及び
図2Fの液漏れブロック部14A、14B及び14Dは、
図2Aの熱溶着パターンの所定箇所に、所定形状の非溶着箇所、すなわちスリット状、三角形状及び略S字状の非溶着箇所を設けたものである。これらの液漏れブロック部14A、14B及び14Dによると、スリット状、三角形状及び略S字状の非溶着箇所が通路となって気体が通過し易くなる。すなわち、これらの弱熱溶着パターンを持った液漏れブロック部は、加熱調理時に袋内の内圧が上昇すると、上昇した気体は、まず、最初に上記形状の通路を通って気体放出部へ到達し、さらに内圧が上昇すると、続いて通路近傍の熱溶着部分が剥離されて、昇圧された気体が気体放出部へ到達する。
【0049】
なお、スリット状、三角形状及び略S字状の着箇所を非溶着に代えて、非溶着に近い弱いシールにしてもよい。なお、以下の説明で液漏れブロック部14、14A〜14Eを弱熱溶着パターン部14、14A〜14Eということがある。また、
図2E、
図2Fの弱熱溶着パターン部14C、14Eは、半円形切欠き状の非熱溶着箇所及び熱溶着部を波状にしたものである。これらの液漏れブロック部14A〜14Eの熱溶着パターンに
図2Bに示したように、シール強度が強弱になるようにしてもよい。これらの弱熱溶着パターンを持った液漏れブロック部によれば、
図3の作用をよりきめ細かく調節できる。
【0051】
気体放出部12Lは、
図1Aに示すように、フィルム面に、一方向からのガス透過度が高く逆方向からのガス透過度が低い複数本のスリット12からなるスリット群で形成されている。なお、以下の説明で気体放出部12Lをスリット群12Lともいう。このスリット群12Lは、表裏フィルム10b、10cの少なくともいずれか一方のフィルムに形成すればよいので、この実施形態では表フィルム10b部分に設けたもので説明する。フィルムは、上記のものを使用するが、その厚さは、スリット形成を考慮して、所定の厚さ、例えば15〜100μmの範囲が好ましい。その厚さが15μmより薄いとスリットの形成が難しく、しかも十分な強度が得られないことがある。また、100μm以上を超えると加工が困難となる。したがって、フィルム素材の厚さは、これらの範囲内でフィルム樹脂の種類、用途などにより適宜選択する。
【0052】
スリット群12Lは、フィルム部分10bに所定長さのスリット12を複数本略等間隔又は非等間隔に配設したものからなり、これらのスリットは同じ構成となっている。このスリット12は、
図4Bに示すように、フィルム10bの幅方向に、一面から他面に向けて所定深さ凹ませ膨らませて底部が他表面から外方へ膨出した凹み部で構成されている。すなわち、この凹み部は、上方の開口部から底部に向かって肉厚が徐々に薄肉にして底部が最も肉薄に形成したものとなっている。
【0053】
スリット12は、細溝からなる未貫通孔溝となっており、
図4Bに示すように、上方の開口溝12aから底部に向かって肉厚が徐々に薄肉に山なり状に膨らませて、底部を他表面から外方へ膨出させ、しかも、この底部12cが最も肉薄なるようにし、断面形状が略U字状に形成されている。具体的には、
図4A、
図4Bに示すように、幅長s1、長さs2及び所定の深さを有している。幅長、長さ及び深さは、特に限定しないが、幅長は100〜500μm、長さは1.2〜2.6mmが好ましい。また、深さは、フィルム表面から計測してフィルム厚さの1.2〜2.2倍の深さにするのが好ましい。さらに、底部12cの最も薄い肉厚は、3μm〜70μmにするのが好ましい。また、スリット群12Lの隣接するスリット間の間隔も特に限定されないが、1.5〜3.0mm程度が好ましい。したがって、このスリットは、フィルム樹脂の種類、用途などにより適宜選択する。
【0054】
スリット12は、断面形状を略U字状にしたが、これに限定するものでなく、他の形状、例えば断面形状V字状或はその他の形状にしてもよい。また、スリット群12Lは、所定長さのスリット複数本を非連続に配列したが、連続させてもよい。さらに、幅方向だけでなく、任意の個所に設けてもよい。スリット及びスリット群は、それらの形状及び底部の肉厚を変更することによって、ガス透過量を調整することができる。なお、スリットに代えて、凹み穴にしてもよい。
【0055】
次に、
図5を参照して、スリットの形成方法を説明する。なお、
図5はスリット形成加工装置を示し、
図5Aは
図1、
図4の気体透過部(スリット)を形成するスリット形成装置の概略図、
図5Bは
図5AのVB部分の拡大図、
図5Cは
図5BのVC部分の拡大図である。
【0056】
加工装置15は、
図5Aに示すように、長尺フィルムを前処理する前処理装置16と、このフィルムにスリット群12Lを形成するスリット形成装置17とを備えている。スリット群12Lは、長尺フィルムの表フィルム10bに形成するが、以下、このスリット群12Lを形成するフィルムを10fで表す。前処理装置16は、フィルムを該フィルム材のガラス転移点を超え且つ融点未満の温度になるように処理する温度調節装置となっている。この前処理装置16での温度調節は、フィルム10fにスリットを形成するのに重要になっている。フィルム10fは、前述したプラスチックフィルム、すなわち、高分子材料からなり、この高分子材料は、低温下において結晶部分と非結晶部分とが共存した状態にあり、分子運動が小さいガラス状態となっている。この状態から加熱されて温度が上がると分子運動が大きくなってゴム状態となり、更に加熱されると溶けた溶融状態となる。そして、ガラス状態からゴム状態へ移行する境目がガラス転移点となり、ゴム状態から溶融状態になる境目が融点となっている。したがって、フィルム材をガラス転移点の超える温度に加熱して柔らかくすることによって、スリットを山なりにしかも底部を最も薄く圧延できる。
【0057】
また、この温度では、ガスバリア性を保ったままで圧延することができるので、フィルムの特性を損なわずに薄肉にしたスリットを形成できる。また、ピンホールなどがないスリットを形成できる。ガラス転移点及び融点は、フィルムの素材によって異なる。フィルム素材にPPを使用する場合、このPPのガラス転移点がマイナス18℃で融点は163℃となっているので、常温より高い温度の40〜120℃の間に調節する。以下、同様にして、PETは、ガラス転移点が81℃で融点は264℃となっているので、温度を約85〜200℃の間、LDPEは、ガラス転移点が−125℃で融点が115℃となっているので、常温より高い温度20〜100℃に調節する。また、PETとLDPEをラミネートした多層構造フィルムでは、温度85〜100℃の範囲に調節する。
【0058】
PP、PEは、常温では既にガラス転移点を超えているが、融点は120℃であるので、その範囲で加工の度合いを調整することとなる。同じフィルム材でも、ガラス転移点を超え、融点未満の範囲で温度によってフィルムの柔らかさが異なるため、次のスリット形成装置において、軽い押圧でも温度を上げることによって容易にスリットが形成できる。
【0059】
スリット形成装置17は、外周囲に所定間隔をあけて複数本のスリット形成歯18が配設された円板状の押圧ロール17Aと、この押圧ロールとの間でフィルム10fを挟み込む受けロール17Bとを有している。押圧ロール17Aは所定の直径、肉厚及び硬度を有する金属性の円板状の歯車で形成されており、軸17aを中心に回転し、スリット12を形成しながら長尺のフィルム10fをX方向へ送り出す。複数本のスリット形成歯18は、
図5Bに示すように、所定ピッチp及び高さhを有する略鋸歯状の歯となっている。このスリット形成歯18は、底部18aに所定のR1及び頂部先端18bにR2のRが付けられている。ピッチpは、特に限定されないが、2.0124mm、高さhは2.0mmとなっている。R2は、0.05〜1.0mmの範囲であり、この範囲でも0.1〜0.2mmが好ましい。0.1mm以下にすると、機械的摩耗が激しいとフィルム材に傷がつきピンホールがあきやすくなる。1.0mm以上にすると押圧する面積を広くできる。また、R1は、0.5mmとする。なお、ピッチを零にして連続した歯にしてもよい。この場合は、十分な押圧力を確保するために幅長を狭くする。すなわち、連続させると歯数が多くなり、その結果、単位面積が大きくなるため全体の押圧力が小さくなってしまうので、幅長を狭め、面積を小さくすることで所望の押圧力を確保する。
【0060】
押圧ロール17Aは円板状の歯車にしたが、ロール状、すなわち円筒体、円柱体にしてもよい。ロール状にすることにより、長いスリット及び連続したスリットを形成できる。スリット形成歯を設けた歯車は、特に限定されないが、例えば平歯を設けた歯車を使用するのが好ましい。この平歯は、平面視で長方形をなし、長さが1.5〜2.6mm、幅長は30〜500μm、及び立面視でフィルムの厚さに対して1.2〜2.4倍のものを使用する。この平歯を使用すると、フィルム材の総厚50μmとすると、このフィルム材の底から計測して、山の頂点までは60〜120μmとなる。この度合いは透過させたいガス量によって決める。
【0061】
受けロール17Bは、押圧ロール17Aと同様に、軸17bに中心に回転しながら、押圧ロール17Aによってフィルム10fにスリット12が形成される際の押圧を受け、フィルム10fをX方向へ送り出す。押圧ロール17Aは、その硬度を60〜63とし、受けロール17Bより低い硬度の金属材料で形成する。受けロール17Bは、所定の直径及び硬度を有する金属性の円筒体、円柱体で形成されており、硬度は63〜67にする。押圧ロール17Aは、その硬度を受けロール17Bの硬度より低くすることによって、受けロール17Bが押圧ロール17Aによって押圧を受ける際に例えば100万m加工しても削られることがない。
【0062】
この加工装置15は、長尺のフィルム10fを前処理装置16でガラス転移点を超える温度に処理して、スリット形成装置17に送り、このスリット形成装置17で所定温度となったフィルムを押圧ロール17Aと受けロール17Bとの間に挟み込んで、押圧ロール17Aに所定の押圧力をかけてフィルム材を圧延してスリットを形成する(
図5C参照)。このスリットは、フィルム材の種類、その厚さに応じて、その素材の前処理温度及び押圧ロールの押圧力を調節して形成する。このスリットは、底部を薄くすると、薄くなった分だけ気体透過度が高くなるが、一方で、強度が低下する。その度合いは、前処理温度或は押圧力の少なくともいずれか一方で調節して決める。例えば、フィルム材のガラス転移点が50℃で融点が125℃であるとすると、前処理温度を60℃或は120℃にすると、前者より後者が柔らかくなり、一方で押圧力は前者より後者が軽い押圧力で形成ができることになる。この押圧度は、例えば0〜0.5MPaの間で調整する。0.2MPa前後が好ましい。なお、0.5Mpaは約5kg/平方センチメートルである。
【0063】
図6を参照して、スリットの気体(ガス)透過作用を説明する。なお、
図6は
図1のスリットの気体透過作用を説明する図であって、
図6Aはスリットの断面図、
図6Bは気体透過時のスリット形状の断面図、
図6Cは逆方向からの気体透過時のスリット形状の断面図である。
【0064】
スリット12に矢印A方向から内圧が掛かると、
図6Bに示すように、その圧力によりスリットの底部が延伸、膨張して風船状に膨らんでその肉厚がさらに肉薄になって、この肉薄部分12c1から気体が透過する。このスリット12は、その気体透過が従来技術に比べて、透過量の調節が容易になると共に、他の作用効果を奏するものとなる。具体的には、従来技術の凹み穴は、底部の肉厚が略均一になっているので、極限まで薄肉にできず、現在の加工技術では8μm程度が限度であるが、このスリット12は、略極限(3.0μm程度)まで薄肉にできるので、透過量の調節が容易になる。
【0065】
また、
図6Cに示すように、逆方向(矢印A'方向)から圧力が掛かると、スリットの底部12c1が逆方向へ押圧されるが、気体透過量が
図8Bの方向に比べて格段に少なくなる。この現象は、実験により確認されおり、開口側から透過量を10とすると逆方向からの透過量は1〜2程度となった。その結果、フィルム10fは、一方向からの気体の透過性がよく逆方向からの気体透過性がし難くなるので、不要物、例えば細菌などの侵入を阻止できる。
【0066】
以上説明した包装袋10は、袋口の近傍に、気体放出部と液漏れブロック部とを分けて設けたので、各部でそれぞれの機能を発揮させることができる。すなわち、液漏れブロック部では袋体の液体が外部へ液漏れるのをブロックでき、しかも気体放出部では袋体内の圧力が低いときに液体に浸されることなく、また所定値以上に上昇したときにこの上昇した内圧を外へ放出できる。また、これらの気体放出部及び液漏れブロック部は、前者が袋口に近い箇所、後者が気体放出部の後にあって袋体内側に液漏れブロック部に設けてあるので、気体放出部及び液漏れブロック部をそれぞれの機能を持つものとして容易に形成できる。特に、気体放出部の形成が容易になる。その結果、この包装袋は、運搬や加熱時に袋体の破れや破裂がなくて安全性に優れ、流通、保管時などにも外部から袋内に細菌類の侵入がなくて衛生的に優れ、しかも簡単に且つ安価に製作ができて生産性にも優れ、さらに液汁などの漏出がなく安心して使用ができるものとなる。
【0067】
上記の包装袋10は、気体放出部と液漏れブロック部とを隣接させ、すなわち、気体放出部12Lを構成する複数本のスリットが袋口シール部11cと液漏れブロック部14とに跨って形成したが、包装袋10Aのように、袋口を封止する箇所と液漏れブロック部との間に所定の隙間L0を設けて、この隙間に前記気体放出部が設けてもよい(
図7参照)。この包装袋10Aによれば、隙間L0間で気体を放出させることができる。特に、液漏れブロック部に
図2に示した弱溶着パターン14A、14B、14Dを用いると、隙間L0間で膨らませて気体が放出され、その放出が容易になる。
【0068】
[実施形態2]
図8を参照して、本発明の実施形態2に係る電子レンジ用包装袋を説明する。なお、
図8は本発明の実施形態2に係る電子レンジ用包装袋を示し、
図8Aは正面図、
図8Bは
図8AのVIIIB−VIIIB線の断面図である。本発明の実施形態2に係る電子レンジ用包装袋10Bは、実施形態1の包装袋10、10Aの袋体の内部を上下にそれぞれ所定大きさの室が形成されるように仕切りシール部で仕切ったものである。そこで、両者に共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略し、異なる構成を詳述する。
【0069】
この包装袋10Bは、包装袋10、10Aの袋体の内部、すなわち、袋体の底部10aと液漏れブロック部14との間を仕切りシール部19で仕切って、この仕切りシール部を境にして上方に上方室S1、下方に下方室S2を形成したものである。上下室S1、S2の大きさ(容積)は、それぞれの室に収納する被包装物の種類、大きさなどによって決める。例えば、下方室S2に食材を入れ上方室S1にこの食材を味付けする調味料を入れる場合は、食材の種類及び量と、この食材に必要な調味料の量を勘案して決める。また、仕切りシール部19は、包装袋10、10Aで用いた液漏れブロック部14の熱溶着パターンで接合する。これらの熱溶着パターン選択は、上方室S1に液体のものを入れる場合は、通路の無い熱溶着パターン14、14C、14E(
図2A、
図2E、
図2E参照)を選択し、また、固体物を入れる場合は、通路を有する熱溶着パターン14A、14B、14D(
図2C、
図2D、
図2F参照)を選択する。
【0070】
また、これらの熱溶着パターンでも、シール強度を変えたもので仕切りシールすると、下方室の内圧が高まり、所定のレベル、例えば、下方室の食材が調理されたタイミングでシールが一気に剥離されるので、上方室の調味料などが下方室の食材に偏ることなく略表面全体に分散落下して混入される。下方室S2に、例えばアスパラガス、ジャガイモ、枝豆などを収納するときは、上方室S1にこれらの食材を味付けする調味料、例えば塩など入れて、電子レンジで加熱すると、手軽に、短時間にしかも塩が全体に振り掛かって美味しい調理ができる。すなわち、包装袋ごと電子レンジにかけて簡単に蒸し野菜などができる。特に、仕切りシール部19の溶着力を液漏れブロック部14の溶着力より低くすることで、電子レンジにかけた後、内圧が高まることで、最初に仕切りシール部19を剥離ささせ、食材と調味料を混入するようにし、その混入した状態でさらに加熱することで、さらに内圧が高まることで、次に液漏れブロック部14が剥離することで、気体放出部12Lから内圧を放出できるので、より効率よく調理を行うことができるようになる。なお、このときの仕切りシール部14の溶着力は、電子レンジでの加熱による内圧で剥離するが、輸送等で加わる負荷では剥離しないように調整することが好ましい。さらに、袋体底部10aの面積が広くしてあり、立設できるので、ノッチ13'から引裂くことによって、袋体を簡易皿として使用することができる。前記弱熱溶着シール帯は、前記袋体の底部側のシール強度が低く、前記気体放出部側が高くなっていることを特徴とする。
【0071】
[変形例1]
図9を参照して、本発明の変形例1に係る電子レンジ用包装袋を説明する。なお、
図9は本発明の変形例1に係る電子レンジ用包装袋の正面図である。本発明の変形例1に係る電子レンジ用包装袋10Cは、実施形態1及び2の包装袋10、10A及び10Bの袋体の袋口の熱溶着シールされる部分が、気体放出部を跨ぐように波状に封止されるように形成されているものである。そこで、共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略し、異なる構成を詳述する。
【0072】
図9に示すように、包装袋10Cの袋口シール部10c'の熱溶着シールされる部分は、波状になるように形成され封止されている。このような構成とすることで、袋口シール部10c'の熱溶着されるシール部分と気体放出部12Lとが交差する割合が多くなり、より効率的に袋体内に発生した内圧を放出することができるようになる。
【0073】
[変形例2]
図10を参照して、本発明の変形例2に係る電子レンジ用包装袋を説明する。なお、
図10は本発明の変形例2に係る電子レンジ用包装袋の正面図である。本発明の変形例2に係る電子レンジ用包装袋10Dは、実施形態1、2及び変形例1の包装袋10、10A〜10Cの袋体の袋口の熱溶着シールされる部分が、両側辺縁の熱溶着シールされる部分より幅広に設けられているものである。そこで、共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略し、異なる構成を詳述する。
【0074】
図10に示すように、包装袋10Dの袋口シール部10c''の熱溶着シールされる部分の幅長W2'は、両側辺ヒートシール部11a、11bの熱溶着シールされる部分の幅長W1より幅広に設けられている。このような構成とすることで、袋口シール部10c''に電子レンジで加熱された包装袋10Dを使用者が素手でつかむことが可能な部分を設けることができるので、使用者が安全に電子レンジから取り出し、また持ち運ぶことができるようになる。また、この幅広に形成された袋口シール部10c''に開孔20を形成することで、この開孔20に使用者が指等を通して把持したり、また、菜箸等を挿通させたりすることができるので、より安全に加熱された包装袋の取り出しや持ち運びを行うことができるようになる。なお、
図10では、実施形態1に係る包装袋10を用いて説明したが、これに限らず、実施形態1に係る包装袋10A、実施形態2に係る包装袋10B及び変形例1に係る包装袋10Cについても同様にすることができる。