(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の小型発電装置及び携帯型電子機器における好適な実施の形態について、
図1から
図13を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
図1は、小型発電装置1を搭載した携帯電話(携帯型電子機器)100の外観構成図である。この
図1に示されるように、スマートホンのように表示部や操作部が全面に配置された携帯型電子機器100の場合、小型発電装置1は、主として筐体101の裏面に配設される。
【0010】
小型発電装置1は、表面中央に配置された回転ダイヤル31が配置され、その表面に放射状に形成された複数の回転ダイヤル凸部33に手や指をかけて廻すことができる。
この回転ダイヤル31を廻すことで、その回転力が少なくとも1つの中間歯車を介して、小型発電装置1の内部に配設されたインナーロータ型の発電部6のロータを回転することで発電が行われ、携帯型電子機器100用の電源を充電し、又は予備用の電源(例えば、二次電池や大容量キャパシタ等)を充電する。
この小型発電装置1は、回転動力を伝達する歯車の比や、小型発電装置1のサイズにもよるが、回転ダイヤル31を1分程度回転することで、携帯電話であれば、待受状態(電話やメールの着信監視と、着信があった場合の着信処理)を10分維持できる程度の発電が可能である。即ち、回転ダイヤル31の回転により、ロータ部の永久磁石65が3000rpm〜7000rpmで回転し、この回転数で3V〜5Vの電圧と充電に十分な電流を供給することができる。
【0011】
本実施形態の小型発電装置1は、3cm〜5cm角、6mm〜10mm厚のサイズ内に形成され、小型化、薄型化が実現されている。
そして、小型化、薄型化のための構成として、小型発電装置1は、回転ダイヤル31の回転力を回転部3に伝達するために中間歯車を備えているが、この中間歯車の軸の少なくとも1つを、発電部6のステータコア66に円環状に複数配設されたコア巻線67の間に設けている。このように、本実施形態では、中間歯車の軸を、インナーロータ型発電機のステータコア内部に設けることで、平面サイズを小さくしている。
【0012】
また、回転ダイヤル31の外径(外周)よりも内側に発電に必要な全ての構成部品(回転軸を支持する受け部4、回転を伝動する伝動部5、発電部6)を配置しているので、平面サイズを小さくすることができる。
そして、回転ダイヤル31のダイヤル軸32と、発電部6のロータ軸61を同一軸線上でなく、平面的にずれて配置(離間配置)しているので、両軸を共通の受け板42で支えることができ、全体の厚みを薄くすることができる。
【0013】
(2)実施形態の詳細
図2は第1実施形態における小型発電装置1の各軸に沿った断面図である。
図3は、小型発電装置を構成する各部の場所を明確にするために、
図2の該当箇所を黒く塗りつぶしたものである。
図4は小型発電装置を正面からみた状態(a)と、回転部を取り除いた状態(b)を表したものである。
図2、3に示すように、小型発電装置1は、収容部2、回転部3、受け部4、伝動部5、発電部6で構成されている。
【0014】
小型発電装置1は
図4に示されるように、3cm〜5cmの方形形状に形成されており、4隅がネジ24で止められている。
なお、
図2に示す断面図では、各軸を通る折れ線に沿った断面を表す(右側の図)と共に、ネジ24によるネジ止め状態を左側の図で表している。
【0015】
収容部2は、
図3(a)に示すように、小型発電装置1の回転部3〜発電部6の各部を内側に収容する筐体である。
収容部2は、ベース21、中板22、カバー23、及びこれらを固定するネジ24で構成されている。ベース21、中板22、及びカバー23は同一の四角形状であり、それぞれの四隅には、中心軸が同一となる位置に、ネジ24で固定するためのネジ穴が形成されている。
【0016】
ベース21には、その中心(対角線の交点)からずれた位置にロータ軸61を軸支するための軸受孔が貫通している。
そしてベース21の中心上には回転ダイヤル31のダイヤル軸32が配置されるので、このダイヤル軸32と、ロータ軸61は互いにずれた位置に配置されることになる。このため、共通の受け板42を使用して両軸32、61を同一平面上で軸支することができ、厚みを薄くすることが可能になる。
【0017】
ベース21には、ロータ軸61用の軸受孔を中心とする半径r1の円形形状の第1凹部21aが形成されており、この第1凹部21aの底部には、さらに軸受孔を同心とする半径r2(<r1)の第2凹部21bが形成されている。
この第1凹部21a、第2凹部21bにより発電部6の収納部が形成される。
また、第1凹部21aの底面と、第2凹部21bの周面とにより、環状のベース段部21cが形成され、このベース段部21c上にステータコア66が載置される。
【0018】
また、第2凹部21bに形成された円形の底面には、その内周面から中心方向所定距離の位置に中間歯車の軸である伝動軸51を軸支するための軸受孔が貫通している。
これにより、ステータコア66のコア巻線67とコア巻線67との間(ステータコア66の内部)に伝動軸51が配設されるので、小型発電装置1の平面サイズを小さくすることができる(
図5(a)参照)。
【0019】
なお、
図5(b)に示されるように、環状部66aの内側の一部を切り欠いた切り欠き部66cを設け、この切り欠き部66cに伝動軸51の一部が収まるように伝動軸51を配設するようにしてもよい。
また、図示しないが、伝動軸51の直径が環状部66aの幅よりも小さい場合には、環状部66aに伝動軸51の貫通孔を設け、該貫通孔を貫通させた伝動軸51をベース21に配設するようにしてもよい。この場合、伝動軸51は、ベース21のベース段部21cに配設した含油軸受52に軸支されることになる。
さらに、伝動軸51を軸支する含油軸受52を環状部66aに設けることで、伝動軸51を環状部66a上に配設するようにしてもよい。
【0020】
ベース21の、第1凹部21a以外の部分には支柱41用の支柱孔が3カ所形成されている。
ベース21の第1凹部21aが形成された上部側には、中板22が配設される。
中板22は、方形形状で、その中心に回転ダイヤル31の最大外径よりも僅かに小さい径の円形孔が設けられている。
中板22には、ベース21と当接する側の面に、円径孔内部から外部に貫通する貫通凹部22aが設けられている。ベース21の上面と貫通凹部22aとにより、収容部2の側面に内部から外部に貫通する貫通孔が形成される。
この貫通凹部22aには発電部6による発電電力を取り出すための基板69が配置される。このため貫通凹部22aの深さは基板69の厚さ程度である。
【0021】
なお、中板22とベース21を一体形成し、発電電力を外部に取り出すための基板69や配線を通すための貫通孔を側面や、底面に設けるようにしてもよい。この場合には、第1凹部21aの上部に、さらに回転ダイヤル31用の円形凹部を形成する。この円形凹部の中心は回転ダイヤル31の中心と一致させる。
【0022】
ベース21の上部には、カバー23が配設される。
カバー23は、小型発電装置1単独で製品化される場合には、ベース21、中板22と同一の方形形状であるが、例えば、携帯電話やスマートホン、音データ再生装置などの携帯型電子機器に組み込まれる場合には、当該携帯型電子機器の筐体を形成するカバーを使用するようにしてもよい。
【0023】
カバー23は、断面逆L字形状の円環形状に形成され、押さえ部23cを構成する円環状部と、その外周に立てられた周壁部とから構成されている。
すなわち、カバー23は、回転ダイヤル31の最大外径よりも僅かに大きい径の円形の凹部23aが、その中心に形成されている。そして、この円形の凹部23a底面中央には、回転ダイヤル31の最大外径よりも僅かに小さい径の円形のダイヤル孔23bが形成されている。そして、凹部23aの残された底部により回転ダイヤル31を押さえる押さえ部23cが形成されている。
【0024】
回転部3は、
図3(b)に示されるように、小型発電装置1の中央上部に配置され、発電の際にユーザが回転操作を行うための部材である。
回転部3の上面には、ユーザが回転操作をする際に指が掛かるように、回転ダイヤル凸部33が形成されている。回転ダイヤル凸部33は、
図4(a)に示されるように、放射線状に複数本(本実施形態では10本)設けられている。
本実施形態では、回転ダイヤル凸部33を放射状に複数本形成することで、回転ダイヤル31の強度を上げることができ、その分回転ダイヤル31を薄く形成することができる。
【0025】
回転部3の内側中心には、滑り軸受用の軸穴が形成されており、ダイヤル軸32で軸支されている。
回転部3の内側面には、ダイヤル軸32の軸心と同心円状に、環状凹部34が形成されている。この環状凹部34の内周壁には駆動歯車35が形成されている。
駆動歯車35は、環状凹部34の内周壁に成形・焼結等により一体形成されているが、リング状に別途形成した駆動歯車35を環状凹部34の内周壁に固定するようにしてもよい。
この駆動歯車35を介して回転ダイヤル31の回転駆動力が伝達される。
【0026】
回転部3の外周端部は、全周にわたって肉薄の環状係止部36が形成されている。この環状係止部36は、所定隙間を以てカバー23の押さえ部23cでカバーされることで回転ダイヤル31が外れないようになっている。
この環状係止部36の内側面、即ち、回転ダイヤル31のベース21側の面の外周側には、全周にわたって環状の摺動凸部37が形成されており、この摺動凸部37が中板22と接触している。そして、回転ダイヤル31を回転させると、この摺動凸部37と中板22の接触部が摺動する。
このように回転ダイヤル31は、中心がダイヤル軸32で受け板42に支えられ、受け板42に面した底面の外周側が中板22に支えられているので、回転ダイヤル31の強度を上げることができ、その分回転ダイヤル31を薄く形成することができる。
【0027】
受け部4は、
図3(c)に示されるように、収容部2と回転部3の間に配設され、小型発電装置1の各軸(ダイヤル軸32、伝動軸51、ロータ軸61)を軸支するための部材である。
受け部4は、3本の支柱41と受け板42、及びネジ43で構成されている。
支柱41は、
図2に示されるように、ベース21に形成された3カ所の支柱孔に打ち込みにより固定されている。
図4(b)は、小型発電装置1を上からみた
図4(a)の状態から回転ダイヤル31を取り外した状態を表している。3本の支柱41は、中板22の内側で、受け部4及び伝動部5と重ならない位置にベース21に設置されている(
図4(b)における、支柱41に付けられているネジ43を参照)。3本の支柱41は、その3点の略中心部分に、ダイヤル軸32の軸心が位置するように配置されることで、回転ダイヤル31の回転の際に生じる力を安定的に受けるようになっている。
なお、支柱41は、外周面にネジを形成することでベース21にネジ止めするようにしてもよい。
【0028】
ベース21に固定された3本の支柱41の他の端部には、3辺が外側に湾曲した略三角形状の受け板42が配置され、ネジ43で支柱41に固定されている。
受け板42には、それぞれ対応する位置に、ダイヤル軸32用の固定穴42a、ロータ軸61用の軸穴、伝動軸51用の軸穴が形成されている。
そして、
図2に示されるように、ダイヤル軸32が受け板42から上方向にが配置され、ロータ軸61が受け板42から下方向に配設されることで、両軸を同一の受け板42で固定及び軸支することができ、その結果小型発電装置1を薄くすることができる。
ダイヤル軸32は、ダイヤル軸32の軸受部分の下側が固定穴部分に打ち込みにより固定されている。ただし、溶接固定、ネジ固定等の他の方法により固定するようにしてもよい。
【0029】
伝動部5は、
図3(d)に示されるように、回転ダイヤル31の回転を発電部6のロータ軸61に伝達するための部材である。
伝動部5は、伝動軸51、含油軸受52、含油軸受53、第2中間歯車54、第1中間歯車55により構成されている。
伝動軸51は、一端が含油軸受52によってベース21に軸支され、他端側が含油軸受53によって受け板42に軸支されている。
伝動軸51の含油軸受53側は、
図2及び
図4(b)に示されるように、受け板42を突き抜けており、その端部に第1中間歯車55がスプラインにより、又はキーと溝によって固定されている。
【0030】
この第1中間歯車55は、回転ダイヤル31の環状凹部34内に位置し、駆動歯車35と歯合している(
図2、
図4(a)参照)。
また、伝動軸51の両軸支部間には第2中間歯車54が一体形成されており、この第2中間歯車54は、ロータ軸61に形成された被動歯車62と歯合している(
図2、
図5(a)参照)。なお、第2中間歯車54は伝動軸51と別体で形成し、キーと溝や、スプラインにより伝動軸51に取り付けるようにしてもよい。
【0031】
発電部6は、
図3(e)に示されるように、収容部2内に収容されて、伝動部5を介して回転ダイヤル31による回転力を受けて永久磁石を回転することで発電する部材である。
発電部6は、ロータ部とステータ部、及び基板69から構成されている。発電部6は、ステータコア、インナーロータ型の発電機であり、永久磁石の磁極数とステータコアの凸極数は同数の10極となっている。
図2及び
図6(a)に示されるように、ロータ部は、ロータ軸61、被動歯車62、含油軸受63a、63b、磁気保持部材64、永久磁石65で構成される。また、ステータ部は、ステータコア66とコア巻線67とから構成される。
【0032】
ロータ軸61は、一端が含油軸受63aによってベース21に軸支され、他端が含油軸受63bによって受け板42に軸支されている。
ロータ軸61の受け板42側の外周面には、第2中間歯車54と歯合する被動歯車62が一体形成されている。この被動歯車62についても、別体で形成して、スプラインにより、又はキーと溝によってロータ軸61に固定するようにしてもよい。
【0033】
ロータ軸61のベース21側には円板状の磁気保持部材64が取り付けられている。磁気保持部材64は、軽量化のために複数の(
図6(a)では5個)の貫通孔が設けられている。
磁気保持部材64の外周端は段差が形成され、この段差部分にリング状の永久磁石65が固定されている。
永久磁石65は、リング状に一体で成形・焼結するか、磁極毎に個別の磁石をリング状に配置するようにしてもよい。本実施形態の永久磁石65は、粉末状の磁性材料を型に嵌めて熱処理して焼結しているが、樹脂(ボンド)と共に熱処理して樹脂形成や圧縮形成するようにしてもよい。
このリング状に形成された磁性材を、ロータ軸61に固定した磁気保持部材64に取り付け、この状態で外周面側から着磁することで、永久磁石65を形成する。着磁された永久磁石65は、径方向内方から外方に向けて磁場配向され磁極数に分割されたセグメント磁石となる。
【0034】
永久磁石65の磁性材料としては、希土類磁石が多用されており、希土類磁石の中でも等方性の磁性材料であるNd−Fe−B系や、Sm−Fe−N系ボンド磁石を使用してもよいが、本実施形態では、ロータ部が小型化しても充分な磁力が得られるようにするために、異方性の磁石を用いている。
即ち、磁性材料として、ラジアル方向の肉厚が薄くても多くの磁束量を発生でき、かつ保磁力が大きいSm−Co(サマリウム−コバルト)系磁性材料を使用する。この場合、Sm−Co系磁性材料で異方性を持つ場合には、これを磁場配向によって磁性材料全体の磁気の軸をそろえた後、着磁を行うことにより、肉厚が薄くても多くの磁束量を発生させることができる。
【0035】
永久磁石65は、
図6(a)に示すように磁極数が10極となるように形成される。なお、
図6(a)に表示したS、Nの表示は、コア巻線67と対向する側の極を表示したもので、それぞれの反対側(中心側)は逆の極になっている。
このような永久磁石65は、着磁ヨーク
68aを使用して次のようにして着磁される。
【0036】
図6(b)は、着磁ヨーク68aによりロータ部を着磁する状態を表した斜視図である。
この
図6(b)に示されるように、着磁ヨーク68aは、永久磁石65の極数(本実施形態では10極)と同数の張出部が、環状部から中心方向に向けて形成され、この張出部に大電流に耐えうる太さの着磁コイル68bが巻回されている。
着磁ヨーク68aは、磁性材
65a(永久磁石65)を強力に磁化(フル着磁)するために、磁性材
65aの4倍程度の厚さに形成されている。
この着磁ヨーク68aの内側に、磁気保持部材64と環状の磁性材(着磁後に永久磁石65になる部材)65aをロータ軸61に固定したロータ部を配置する。これにより、磁性材65aの外周面には、着磁コイル68bが対向配置される。
この状態で着磁コイル68bに大電流を流すことで、磁性材65aがフル着磁され、径方向内から外方向に磁場配向された10極の永久磁石65が形成される。
【0037】
一方、ステータ部を構成するステータコア66は、
図2、
図6(a)に示されるように、環状部66aと、張出部66bとから構成されている。
図6(a)に示されるように、円環状の環状部66aには、内周面から中心方向に向けて複数の張出部66bが配設されている。
張出部66bは、所定の極数に合わせて設けられるが、本実施形態では所定の極数として永久磁石65の極数と同数を採用しているので、極数10とするために張出部66bを10個設けている。
張出部66bは、環状部66aから中心方向に延設するとともに、更に、端部において周方向両側に延設した形状になっている。張出部66bの先端部は、永久磁石65の外周面と所定距離の空隙を介して対抗している。そして、張出部66bの中心方向に延設した部分にコア巻線67が巻回されるようになっている。
【0038】
10本の張出部66bの先端で形成されるステータコア66の内周の径(以下、内径という)は、小型発電装置1を小型化するための好ましいサイズとして10mm以上20mm以下の範囲で選択され、より好ましくは10mm以上15mm以下の範囲で選択される。
一方、ステータコア66の厚さは0.8mm以上1.4mm以下の範囲で選択される。
そして、ステータコア66の極数n(張出部66b、コア巻線67の数)は、ステータコア66の内径が10mm以上15mm以下の場合8極〜12極、好ましくは10極、内径が15mmより大きく20mm以下の場合10極〜14、好ましくは12極が選択される。
本実施形態では、内径13mm、外径22mm、厚さ1mmで、10極のステータコア66を使用している。
【0039】
ここで、ステータコア66における極数選択の理由について
図7、8を参照して説明する。
図7は、張出部66bの数(極数)を変えた場合のステータコア66の形状を表したものである。
この
図7では、各々のステータコア66にスロットを4〜16設けることで、4極、6極、8極、10極、12極、14極、及び16極のステータコア66の形状を表している。
いずれのステータコア66も、発電の条件を統一するために、内径を13mm、外径を22mm、厚さ(積厚)を1mmにしている。また、各ステータコア66のスロット幅(隣り合う張出部66bの先端部と先端部との幅)は、巻き線処理に必要な所定幅が必要となるため、全ステータコア66とも同じ幅にしてある。
【0040】
図8は、
図7に示した各ステータコア66を使用した場合の発電電力を求めたものである。
図8では、
図7に示した各形状のステータコア66に巻き線を施し、それぞれ内部に同一寸法のロータを配置して、5000rpmで回転させた場合の電力を表している。
一般に極数が増えるほど高電力を得ることができるが、小型化によりステータコア66の内径を13mmにした場合、
図8に示されるように、極数10の発電電力が最も高く、10極の次に極数が少ない8極が2番目、10極の次に極数が多い12極が3番目となっている。
【0041】
このように、単純に極数が増加することで発電電力が増加するわけではなく、その理由は次のように考えられる。
すなわち、ステータコア66のサイズを考慮しなければ、同一速度で永久磁石を回転した場合、磁石の磁極数が多い程、コア巻線67に鎖交する磁束の速度は速くなり、発電電力が高くなる。
しかし、ステータコア66の小型化に伴い、張出部66b(コア極数)が多くなるほどコア巻線67の断面積(コア断面積)が小さくなり、磁束が飽和してしまう。このため、コア巻線67の断面当たりの磁束は、極数が増加する程小さくなってしまう。
このため、内径が10mm〜20mmという小型のステータコア66を使用した場合には、その内径サイズの範囲に応じて採用可能な極数、および最適な極数nが存在することになる。
【0042】
このように、ステータコア66の内径が10mm以上、20mm以下のインナーロータ型発電機では、最適極数nの場合の発電電力が最も高く、nよりも極数が少なくなるに従い発電電力は低下し、また、nよりも極数が多い場合も多くなるに従い発電電力が低下することがわかる。
最適極数nは、ステータコア66の内径により決まり、内径が10mm以上、15mm以下ではn=10であり、極数8〜12の範囲で実用に耐え得る発電が得られる。
一方、内径が15mmより大きく20mm以下ではn=12であり、極数10〜14の範囲で実用に耐え得る発電が得られる。
【0043】
ステータコア66は、環状部66aと張出部66bとが一体となった形状の、絶縁コーティング等によって絶縁処理した薄い板材を使用し、これを複数枚積層固定することで製造される。具体的には、積層ケイ素鋼板でステータコア66が形成される。
なお、ステータコア66は、インナーロータ型の発電機における各種素材、形状を採用することができる。例えば、別体として製造した張出部66bを環状部66aに固定するようにしてもよい。
【0044】
各張出部66bにはコア巻線67が直列に巻き付けられている。
本実施形態ではインナーロータの外周にステータコア66を配置する構造なので、コア巻線67は、環状部66aの内側に放射上に複数配置することができ、これにより個々のコア巻線67のサイズを小さくしながら、コイル長さ(巻き線の長さ)を長く巻くことができるので、大きな発電量を発生させることができる。
【0045】
ステータ部を構成する基板69は、
図5(a)に示されるように、収容部2外部から貫通凹部22aを通り、2つのコア巻線67上に配置されている。
基板69には、2本の配線が印刷等により設けられており、直列に巻き付けたコア巻線67の両端がそれぞれ2本の配線に接続されることで、発電部6による発電電力を外部に取り出すようになっている。
基板69の図示しない側は、小型発電装置1が携帯電話等の携帯型電子機器に組み込まれている場合、当該携帯型電子機器の二次電池や、予備用電源(二次電池や大容量キャパシタ等)に接続される。
なお、予備用の外部電源として小型発電装置1を使用する場合には、基板69に変えて、各種機器に接続する端子を備えた配線を使用するようにしてもよい。
【0046】
以上の通り構成された小型発電装置1の組立手順について次に説明する。
(1)まずベース21に3本の支柱41を固定する。
(2)次に、ベース21のベース段部21cに、発電部6のステータコア66を配置する。この際、ステータコア66に取り付けた基板69が中板22の貫通凹部22aに一致するように位置決めする。
(3)また、永久磁石65、磁気保持部材64が固定されたロータ軸61の下端を、含油軸受63aでベース21に軸支する。
(4)次に、含油軸受52で伝動軸51をベース21に軸支し、第2中間歯車54をロータ軸61の被動歯車62に歯合させる。
(5)次に、ダイヤル軸32を固定した受け板42に、含油軸受63bでロータ軸61の上端を軸支し、また含油軸受53で伝動軸51の上部を軸支し、ネジ43で受け板42を支柱41に固定する。
(6)次に、受け板42の上側から、伝動軸51に第1中間歯車55を取り付ける。
(7)次に、中板22をベース21上に載置する。この状態で、基板69が貫通凹部22aから外部に出た状態となる。
(8)次に、回転ダイヤル31を中板22上に載せ、ダイヤル軸32に回転ダイヤル31を軸支する。
(9)最後に、カバー23を中板22に載せ、ベース21、中板22、カバー23の四隅をネジ24でネジ止めする。
【0047】
以上のように構成された小型発電装置1による発電の操作について次に説明する。
発電する場合、ユーザは回転ダイヤル凸部33に指を掛けて回転ダイヤル31を回転させる。
回転ダイヤル31が回転すると、その回転は駆動歯車35と歯合する第1中間歯車55を介して伝動軸51に伝動される。伝動軸51の回転は、更に第2中間歯車54と歯合する被動歯車62を介してロータ軸61に伝動され、永久磁石65を回転する。
このように、回転ダイヤル31の回転は、各歯車の歯数比により回転数が増速されてロータ部の永久磁石65を回転(3000rpm〜7000rpmの範囲)することで、3Vから5Vの電圧と充電に十分な電流を供給することが可能になる。
発電部6での発電電力は、基板69の配線を介して、電源に充電されることになる。
【0048】
次に、小型発電装置1における第2の実施形態について説明する。
この第2実施形態の小型発電装置1では、回転ダイヤル31の回転動力の伝達経路について第1実施形態とは異なっている。すなわち、上記した第1の実施形態では2段歯車機構を構成する駆動歯車35、第1中間歯車55、及び第2中間歯車54、被動歯車62の全てを平歯車により構成したが、第2の実施形態では、内歯歯車を回転ダイヤル31に設けたものである。
【0049】
以下、第2実施形態の詳細について、第1実施形態と異なる点を中心に、
図9、
図10を参照して説明する。
この小型発電装置1では、外周の全面にわたって周壁部38が形成されるように、回転ダイヤル31bの内側に、ダイヤル軸32を中心とする円形の凹部を設け、周壁部38の内周面に駆動内歯歯車35bが形成されている。この周壁部38は、中板22の円形孔内に配置される。
そして、周壁部38には、その外周全面にわたって環状係止部36bが形成され、この環状係止部36bの底面が中板22と摺動することで、回転ダイヤル31bの外周部が支持される。
【0050】
第2実施形態の伝動軸51には、回転ダイヤル31bの駆動内歯歯車35bからロータ軸61の被動歯車62に回転を直接伝動する中間歯車54bが形成されている。
即ち、伝動軸51に形成された中間歯車54bは、回転ダイヤル31bの周壁部38内側に形成された駆動内歯歯車35bと歯合すると共に、ロータ軸61に形成された被動歯車62と歯合することで、アイドルギア(遊び歯車)として機能する。
【0051】
図9、10に示すように、第2実施形態においても中間歯車54bの伝動軸51が、ステータコア66の内側(ロータ部の外側)、具体的にはステータコア66のコア巻線67とコア巻線67との間に配設されることで、小型発電装置1の平面サイズを小さくしている。
なお、第2実施形態においても、
図10に示されるように、基板69の一部を除き、回転ダイヤル31bの最大径の内側に、受け部4、伝動部5、発電部6の全てが構成されている。
【0052】
また第2実施形態の伝動軸51は、端部が受け板42に含油軸受53で軸支されている。
このように、第2実施形態では、伝動軸51の端部が受け板42から突き抜け、当該端部に第1中間歯車55を固定している第1実施形態と異なり、第1中間歯車55が不要である分だけ回転ダイヤル31bを薄くすることができる。その結果、小型発電装置1全体の厚みを小さくすることができる。
【0053】
また、第1実施形態では、回転ダイヤル31を回転する際の回転操作を補助する構造として、ダイヤル軸32を中心とする放射上の回転ダイヤル凸部33を複数設けたが、第2実施形態では、回転ダイヤル凹部33bを採用している。
回転ダイヤル凹部33bは、円形の窪みが1つ回転ダイヤル31bに設けられており、ユーザは、この窪み部分に指をかけて回転ダイヤル31bを回転するようになっている。
なお、第1実施形態における回転ダイヤル31において、回転ダイヤル凸部33に変えて
回転ダイヤル凹部33bを採用するようにしてもよい。また、逆に第2実施形態の回転ダイヤル31bにおいて、第1実施形態の回転ダイヤル凸部33を採用するようにしてもよい。
【0054】
次に説明した第1実施形態、第2実施形態の変形例について
図11〜
図13を参照して説明する。
この変形例は、小型発電装置1の受け部4を変形したものである。以下の説明では第1実施形態を例に説明するが、上述した第2実施形態に対しても同様に適用することができる。
【0055】
説明した両実施形態の小型発電装置1では、
図4(b)に示されるように、ダイヤル軸32、ロータ軸61、及び伝動軸51の3軸を受け板42で軸支しており、この受け板42をベース21に固定するための支柱41がすべてステータコア66の外部に配置されている。
本変形例のうち変形例1〜3については、複数本の支柱41のうち、少なくとも1本の支柱41を、ステータコア66の内側(ロータ部の外側)に配置してベース21に固定したものである。
なお、各変形例では、ダイヤル軸32、ロータ軸61、及び伝動軸51の配置は第1実施形態、第2実施形態と同じであるが、異なる位置に配置するようにしてもよい。ただし小型発電装置1の小型化のため、伝動軸51はステータコア66内に配置する。
【0056】
第1変形例では、
図11(a)に示すように、3本のうちの1本の支柱41aをコア巻線67とコア巻線67の間に配置している。
図11(a)に示した例では、支柱41cについては第1実施形態と同じ位置に配置しているが、支柱41bについてはステータコア66の外側ではあるが、第1実施形態よりもステータコア66の近傍に配置している。
このように、複数配設する支柱41a〜41cのうち支柱41aをステータコア66内に配置することで、受け板42を小さくすることができ、小さくなった分だけ軽量化することができる。また、小型発電装置1の平面サイズも小さくすることができる。
【0057】
第2変形例では、
図11(b)に示すように、全ての支柱41a〜41cをステータコア66の内部に配設したものである。
これにより、3本の支柱41a〜41cと伝動軸51の合計4本がステータコア66内に配置されることになる。
そして、第2変形例では、全10個のコア巻線67のうち、支柱41cと支柱41aの間及び支柱41cと支柱41bの間にはそれぞれ3つのコア巻線67が配置され、支柱41aと支柱41bの間には4つのコア巻線67が配置されることで、バランスよく受け板42を支えることができる。そして、支柱41aと支柱41bに対する伝動軸51のバランスも良くするために、支柱41aと支柱41bの間に、それぞれ2つのコア巻線67を置いて伝動軸51を配置している。
また第2変形例では、3本の支柱41a〜41cを全てステータコア66内に配置することで、受け板42をステータコア66の外周面内に収めることができる。
【0058】
次に第3変形例について、
図12を参照して説明する。
この第3変形例も、3本の支柱41a〜41cの全てをコア巻線67とコア巻線67との間に配置している。
この第3変形例では、ステータコア66の径を大きくすることで、支柱41をコア巻線67とコア巻線67の間に配置している。このように、ステータコア66を大きくすることで、より多くの巻き数に増やし、高電圧を得ることができる。
なお、コア巻線67の巻き方について直列となる波巻きの場合について説明したが、第3変形例の場合、張出部66bを長くすることができるので、重ね巻きの構成を採用するようにしてもよい。
【0059】
第1、第2実施形態及び第1、第2変形例では、基板69の一部を除いて、回転ダイヤル31の外周面内に回転部3、受け部4、伝動部5が配置される場合について説明したが、第3変形例に示すように、ステータコア66の一部が、回転ダイヤル31の外周面から出ている構造としてもよい。
このように、回転ダイヤル31よりも外側にステータコア66をはみ出す構造とする場合には、両者の
中心を結ぶ仮想線分を収容部2の対角線と一致させることで、第1実施形態における小型発電装置1と同サイズにすることができる。即ち収容部2の頂点方向にはみ出すように、ステータコア66を大きくすることで、全体の大型化を回避することができる。
なお、
図12に示した変形例では、全ての支柱41a〜41cがコア巻線67とコア巻線67の間に配置される場合について示したが、何れか1本が配置される構成でもよい。
【0060】
説明した変形例1〜3では、少なくとも1本の支柱41を、コア巻線67とコア巻線67の間に配置する場合について説明したが、環状部66a上に配設するようにしてもよい。
この場合、支柱41は、環状部66a自体に固定される場合でも、環状部66aとベース21を貫通して固定されるようにしてもよい。
【0061】
次に第4変形例について
図13を参照して説明する。
説明した第1実施形態及び上記変形例では、何れも支柱41をベース21に固定し、中板22の内側で、受け板42を支柱41に固定する構成であるのに対し、この第4変形例では、支柱41を無くし、収容部2で支持固定するものである。
この第4変形例においても、ダイヤル軸32、ロータ軸61、伝動軸51の支持位置は第1実施形態と同じである。
【0062】
第4変形例では、
図13に示すように、受け板45の外形を収容部2と同じ外形とし、中板22とカバー23との間に配置する。この受け板45は、収容部2と同様に四隅にネジ穴が形成され、ネジ24により、収容部2と共に固定される。
このように第4変形例では、支柱41がないので、製造部品点数を削減することができ、製造工程も簡略化することができる。
この第4変形例では、回転ダイヤル31の摺動凸部37は受け板45面上を摺動することになる。
【0063】
なお、説明した第1実施形態や変形例の受け板42に比べて、受け板45の外形の面積が大きくなるが、ダイヤル軸32、支柱41、ロータ軸61を支持する強度上の問題がない範囲で、受け板45に貫通孔を設ける(内部を削る)ようにしてもよい。
【0064】
また、ダイヤル軸32、支柱41、ロータ軸61を含む面積の中央支持板部と、中板22と平面視形状がほぼ同一の環状部と、中央支持板部と環状部を3カ所以上で連結する連結部からなる受け板45としてもよい。
例えば、受け板45の中央支持板部の形状を
図4(b)に示した受け板42と同一形状とし、この中央支持板部から回転ダイヤル31の軸心からネジ43を結ぶ線分の方向に延ばした3本の連結部により環状部と連結した構造としてもよい。
【0065】
なお、
図13で示した第4変形例では、受け板45の厚さ分だけ中板22を薄くすることで、説明した第1実施形態や変形例と同じ厚さの小型発電装置1としている。
これに対して、中板22と受け板45とを一体形成するようにしてもよい。
また、中板22を省略し、ベース21の厚さを中板22を含めた厚さに形成し、その厚さ分だけ第1凹部21aを深くするようにしてもよい。
【0066】
以上説明した実施形態及び変形例によれば次のような効果を得ることができる。
(1)円環状に複数配置したコア巻線67と、当該コア巻線67の内周に永久磁石65を配置し、この永久磁石65を回転させる為の歯車列から構成され、この歯車列の少なくとも1個の歯車の回転軸(伝動軸51)を、前記複数配置のコア巻線67の間に配置した。このように、コア巻線67の間に歯車の回転軸を配置する事により、平面サイズを小さくすることができる。
(2)また、コア巻線67を円環の放射状に複数配置することで、個々のコア巻線67のサイズを小さくしながら、全体のコイル長さを長く巻くことができるため、大きな発電量を発生させることができる。
(3)回転ダイヤル31の軸心と、発電部6におけるロータ部の軸心とが同一ではないので、回転ダイヤル31とロータ部の回転支持部に用いる保持部材(ダイヤル軸32、含油軸受63a)が、平面的にずれていることで、厚み方向の干渉を避けられるため、厚みを薄くすることができる。
(4)さらに、アウターロータ型の発電部の場合、永久磁石を保持する磁気保持部材(ロータ底)がステータの上部/下部に配設されるために装置が厚くなるのに対し、本実施形態では、インナーロータ型を採用することで永久磁石65と磁気保持部材64をステータコア66の内部に配設することができ、装置の厚さを薄くすることができる。
(5)また、第4変形例を除いて、説明した実施形態及び変形例では、3本の支柱41を結ぶ三角形内に、駆動歯車35のダイヤル軸32と、被動歯車62のロータ軸61が配置されていることで、受け板42によって両軸を安定的に支えることができる。
(6)アウターロータ型の発電機の場合、リング状に成形したラジアル異方性磁石の内側から着磁する必要があるが、小径の場合に着磁ヨークを内側に配設することが困難であるため、磁力の強い異方性磁石を使うことが難しい。
しかし、本実施形態のインナーロータ構造は磁場配向した分割磁石をロータに接着固定した後、その外周に着磁ヨーク68aを配置して着磁することが容易であるため、フル着磁が可能であり、磁力の強い異方性磁石を使うことで、大きな電力を得ることができる。
【0067】
以上、本発明の小型発電装置における実施形態及び変形例について説明したが、本発明は説明した内容に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、説明した実施形態では、基板69用の貫通凹部22aを中板22に設けたが、中板22を環状の平板とし、貫通凹部をベース21の上面に設けるようにしてもよい。これにより、基板69が配設されたステータコア66をベース21に取り付けるので、基板69の位置決めが容易になる。
【0068】
また、説明した実施形態では、支柱41を3本設ける構成としたが、4本以上設けるようにしてもよい。
また、第1実施形態では回転ダイヤル31に回転ダイヤル凸部33を設け、第2実施形態では回転ダイヤル凹部33bを設ける場合について説明したが、回転ダイヤル31表面に多角形穴を設け、レバーを差込んで廻す構成としてもよい。この場合、多角形穴は回転ダイヤル31のできるだけ外周側に設けることで弱い力で回転することができる。なお、径方向の異なる位置(回転中心からの距離が異なる位置)に複数の多角形穴を設けることで、外側の多角形穴にレバーを差し込んで大きな円周上を小さな力で廻すか、それとも中心側に差し込んで小さな円周上を大きな力で廻すかをユーザの好みに応じて選択できるようにしてもよい。
【0069】
また、回転ダイヤル31を回転支持部として、説明した実施形態では、回転ダイヤル31に軸穴を形成し、この軸穴にダイヤル軸32を勘合する場合について説明したが、回転ダイヤル31から軸を出し、この軸を受け板42、45に設けた軸穴に挿入するようにしてもよい。この場合の軸穴には含油軸受を介するようにしてもよい。