【実施例】
【0112】
一般的手順
全部の出発原料および溶媒は商業的供給源から得たか、若しくは文献の引用に従って製造したかのいずれかであった。水素化は、述べられた条件下でThales H−cubeフローリアクターで実施した。有機溶液は硫酸マグネシウムで慣例に乾燥した。SCXはSupelcoから購入しかつ使用前に1M水性HClで処理した。精製されるべき反応混合物を最初にMeOHで希釈し、そして数滴のAcOHで酸性にした。この溶液をSCXに直接負荷しかつMeOHで洗浄した。所望の物質をその後MeOH中1%NH
3で洗浄することにより溶出した。カラムクロマトグラフィーは、示される量を使用してSilicycle充填済みシリカ(230〜400メッシュ、40〜63μM)カートリッジで実施した。
【0113】
調製的逆相高速液体クロマトグラフィー:
Agilent ScalarカラムC18、5μm(21.2×50mm)、215および254nmでのUV検出を使用する、10minにわたる0.1%v/vギ酸を含有するH
2O−MeCN勾配で溶出する流速28mL/min。勾配情報:0.0〜0.5min:95%H
2O−5%MeCN;0.5〜7.0min;95%H
2O−5%MeCNから5%H
2O−95%MeCNまで傾斜;7.0〜7.9min:5%H
2O−95%MeCNで保持;7.9〜8.0min:95%H
2O−5%MeCNに戻す;8.0〜10.0min:95%H
2O−5%MeCNで保持。
【0114】
分析法
逆相高速液体クロマトグラフィー:
Agilent ScalarカラムC18、5μm(4.6×50mm)若しくはWaters XBridge C18、5μm(4.6×50mm)215および254nmでのUV検出を使用する、7minにわたる0.1%v/vギ酸を含有するH
2O−MeCN勾配で溶出する流速2.5mL/min。勾配情報:0.0〜0.1min:95%H
2O−5%MeCN;0.1〜5.0min:95%H
2O−5%MeCNから5%H
2O−95%MeCNまで傾斜;5.0〜5.5min:5%H
2O−95%MeCNで保持;5.5〜5.6min:5%H
2O−95%MeCNで保持、流速を3.5ml/minに増加;5.6〜6.6min:5%H
2O−95%MeCNで保持、流速3.5ml/min;6.6〜6.75min:95%H
2O−5%MeCNに戻す、流速3.5ml/min;6.75〜6.9min:95%H
2O−5%MeCNで保持、流速3.5ml/min;6.9〜7.0min:95%H
2O−5%MeCNで保持、流速を2.5ml/minに減少。
【0115】
1H NMR分光法:
参照として残留非重水素化溶媒を使用するBruker Avance III 400MHz
【0116】
スキーム1の実験手順
4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−アミン(3)
【0117】
【化21】
【0118】
−20℃のNMP(40mL)中の2−クロロ−4−フルオロピリジン(1.261g、9.58mmol)および4−アミノ−1−ナフトール塩酸塩(2)(750mg、3.83mmol)の攪拌溶液にカリウムtert−ブトキシド(1.290g、11.50mmol)を添加した。該反応混合物をRTに温まらせた。2.5hr後に該反応混合物を水(100mL)で希釈しかつEtOAc(100mL、その後2×80mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(150mL)で洗浄し、乾燥しかつ真空中で蒸発させた。粗生成物をMeOH中1%NH
3溶液で溶出するSCX捕捉および遊離にかけ、そして溶媒を真空中で除去して4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−アミン(3)(1.019g、92%)を褐色固形物:m/z 271(M+H)
+(ES
+)として生じた。
【0119】
4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−N,N−ジ−tert−ブチルカルバメート(4)
【0120】
【化22】
【0121】
0℃のTHF(30mL)中の4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−アミン(3)(1.019g、3.76mmol)の攪拌溶液にDMAP(0.034g、0.282mmol)およびその後二炭酸ジ−tert−ブチル(0.904g、4.14mmol)を添加した。該反応混合物を0℃で30min攪拌し、そしてその後RTに温まらせた。1.5hr後に該反応混合物を0℃に冷却し、そしてさらなる二炭酸ジ−tert−ブチル(0.904g、4.14mmol)を添加した。生じる混合物を0℃で15minおよびその後RTで攪拌した。16hr後に該反応混合物を水(40mL)で希釈しかつEtOAc(2×40mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(75mL)で洗浄し、乾燥しかつ真空中で蒸発させた。粗物質をイソヘキサン中0ないし40%EtOAcで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2;80g)により精製して4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−N,N−ジ−tert−ブチルカルバメート(4)(0.892g、48%)を紫色固形物:m/z 471(M+H)
+(ES
+)として生じた。
【0122】
tert−ブチル4−(4−(N,N−ジ−tert−ブチルカルバミル)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イルカルバメート(5)
【0123】
【化23】
【0124】
4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−N,N−ジ−tert−ブチルカルバメート(4)(0.892g、1.894mmol)、tert−ブチルカルバメート(0.666g、5.68mmol)、炭酸セシウム(0.926g、2.84mmol)、Pd
2(dba)
3(0.043g、0.047mmol)およびキサントホス(0.055g、0.095mmol)の混合物をTHF(10mL)に懸濁した。該反応混合物を窒素で徹底的にパージし、そしてその後還流で加熱した。15hr後に該混合物をRTに冷却し、水(35mL)で希釈しかつEtOAc(35mL、25mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(50mL)で洗浄し、乾燥しかつ真空中で蒸発させた。粗物質をイソヘキサン中0ないし30%EtOAcで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2;80g)により精製してtert−ブチル4−(4−(N,N−ジ−tert−ブチルカルバミル)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イルカルバメート(5)(289mg、28%)を白色固形物:m/z 552(M+H)
+(ES
+)として生じた。
【0125】
4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(6)
【0126】
【化24】
【0127】
0℃のDCM(8mL)中のtert−ブチル4−(4−(N,N−ジ−tert−ブチルカルバミル)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イルカルバメート(5)(289mg、0.524mmol)の攪拌溶液にTFA(4mL)を添加した。生じる混合物をRTにゆっくりと加温しつつ攪拌した。5hr後に揮発性物質を真空中で除去し、そして残渣をMeOH(5mL)に溶解しかつMeOH中1%NH
3溶液で溶出するSCX捕捉および遊離にかけた。溶媒を真空中で除去して、4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(6)(116mg、85%)を褐橙色油状物:m/z 252(M+H)
+(ES
+)として提供した。
【0128】
1−(4−(2−アミノピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−イル)−3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)尿素(8)
【0129】
【化25】
【0130】
NaHCO
3の飽和溶液(14mL)をDCM(20mL)中の5−アミノピラゾール(7)(0.206g、0.900mmol)の溶液に添加した。該混合物を活発に攪拌し、0℃に冷却しかつクロロギ酸トリクロロメチル(0.326mL、2.70mmol)を一部分で添加した。該反応混合物を0℃でさらなる80min活発に攪拌した。層を分離しかつ有機層を乾燥し、真空中で蒸発させ、そして生じる橙色油状物を高真空下で30minさらに乾燥した。単離されたイソシアネートをその後THF(6mL)に溶解しかつ窒素下0℃に保った。
【0131】
0℃のTHF(3mL)中の4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(6)(116mg、0.462mmol)およびDIPEA(241μl、1.385mmol)の攪拌溶液に、上で製造されたイソシアネート溶液のアリコート(2mL、0.300mmol)を添加した。生じる混合物をRTにゆっくりと加温しながら攪拌した。THF中のイソシアネート溶液の追加のアリコートを1.5hr後(1mL、0.150mmol)およびさらなる3.5hr後(0.5mL、0.075mmol)に該反応混合物に添加した。20hr後に水(30mL)を添加しそして該混合物をEtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(50mL)で洗浄し、乾燥しかつ真空中で蒸発させた。粗物質をイソヘキサン中25ないし100%(EtOAc中5%MeOH)で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2;12g)により精製して、1−(4−(2−アミノピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−イル)−3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)尿素(8)(127mg、49%)を褐色油状物:m/z 507(M+H)
+(ES
+)として提供した。
【0132】
N−(4−(4−(3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(1)
【0133】
【化26】
【0134】
塩化メトキシアセチル(64.2μl、0.703mmol)をTHF(5mL)中の1−(4−(2−アミノピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−イル)−3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)尿素(8)(89mg、0.176mmol)およびDIPEA(153μl、0.878mmol)の混合物にゆっくりと添加した。該反応混合物を0℃でさらなる20min攪拌し、そしてその後RTに加温した。2.5hr後に該反応をMeOH中1%NH
3の溶液(3mL)の添加によりクエンチし、そして生じる混合物をさらなる45min攪拌した。揮発性物質を真空中で除去し、そして残渣をMeOH(5mL)およびAcOH(2mL)の混合物に溶解しかつMeOH中1%NH
3溶液で溶出するSCX捕捉および遊離にかけた。粗物質をイソヘキサン中0ないし60%(EtOAc中5%MeOH)で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2;12g)により精製して、N−(4−(4−(3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(1)(62mg、61%)を白色固形物:m/z 579(M+H)
+(ES
+)として生じた。
1H NMR(400MHz、DMSO−d
6)δ:1.29(9H、s)、2.40(3H、s)、3.31(3H、s)、3.99(2H、s)、6.41(1H、s)、6.70(1H、dd)、7.32−7.40(3H、m)、7.44−7.48(2H、m)、7.55−7.61(1H、m)、7.63−7.67(2H、m)、7.84(1H、dd)、7.97(1H、d)、8.09(1H、d)、8.19(1H、d)、8.79(1H、s)、9.13(1H、s)、10.02(1H、s)。
【0135】
スキーム2の実験手順
4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(10)
【0136】
【化27】
【0137】
窒素下0℃のDMF(200mL)中の2−アミノピリジン−4−オール(23.0g、209mmol)の攪拌溶液に、NaH(鉱物油中60%分散系、9.21g、230mmol)を30分にわたり一部分ずつ添加した。該混合物をRTに加温しかつ1hr後に0℃に冷却し、そしてDMF(100mL)中の1−フルオロ−4−ニトロナフチレン(9)(40.0g、209mmol)の溶液を添加した。該反応混合物をRTに温まらせ、そして1.5hr後にそれを水(1L)で希釈しかつEtOAc(3×500mL)で抽出した。有機抽出液を合わせ、そして水(3×700mL)および塩水(500mL)で洗浄した。黄色沈殿物が分離し、これを濾過により収集しかつ水(500mL)で洗浄しそして真空中で一夜乾燥した。有機層を乾燥し(MgSO
4)、濾過しかつ真空中で蒸発させた。残渣をアセトニトリル(20mL)およびエーテル(200mL)の混合物とともに摩砕して赤色固形物を生じ、これをイソヘキサン(200mL)で洗浄した。摩砕からの上清液を真空中で蒸発させ、そして残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、120g、イソヘキサン中30〜100%EtOAc、勾配溶出)により精製した。この生成物を前に単離された2種の固形物と合わせ、MeOH(500mL)に溶解しかつ真空中で蒸発させて、4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(10)(40.1g、65%)を黄色固形物:m/z 282(M+H)
+(ES
+)として提供した。
【0138】
2−メトキシ−N−(4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)アセトアミド(11)
【0139】
【化28】
【0140】
窒素下0℃のDCM(600mL)中の4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(10)(40.0g、135mmol)およびDIPEA(48.1mL、270mmol)の攪拌溶液に塩化メトキシアセチル(18.53ml、203mmol)を一滴ずつ添加した。該混合物をRTに加温し、そして1hr後にアンモニアの溶液(100mL、MeOH中7M)を添加しかつ攪拌を30min継続し、その時間の間に沈殿物が生じた。該混合物を真空中で蒸発させ、そして水(1L)を残渣に添加して赤色懸濁液を提供した。黄色が持続するまで(約5mL)氷酢酸を一滴ずつ添加した。該固形物を濾過により収集しかつ水(300mL)で洗浄して、2−メトキシ−N−(4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)アセトアミド(11)(44.1g、90%)を黄色固形物:m/z 354(M+H)
+(ES
+)として提供した。
【0141】
N−(4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(12)
【0142】
【化29】
【0143】
酢酸(300mL)中の2−メトキシ−N−(4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)アセトアミド(11)(44.0g、125mmol)および鉄粉(41.7g、747mmol)の攪拌懸濁液を45℃で加熱した。3hr後に該混合物をRTに冷却し、そして固体Na
2CO
3(200g)上にゆっくりとかつ慎重に注いだ。該混合物は活発に発泡した。該混合物を水(500mL)とEtOAc(500mL)の間で分配した。水層を固体Na
2CO
3でpH11に塩基性化し、そしてセライトのパッドで濾過した。水層およびセライトパッドをEtOAc(3×500mL)で抽出し、そして合わせた抽出液を飽和水性NaHCO
3溶液(500mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO
4)かつ真空中で蒸発させて、N−(4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(12)(35.0g、78%)を紫色泡状物:m/z 324(M+H)
+(ES
+)として提供した。
【0144】
N−(4−(4−(3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(1)
【0145】
【化30】
【0146】
RTの窒素下のDCM(250mL)中のCDI(28.8g、178mmol)の攪拌懸濁液に3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−アミン(7)(40.7g、178mmol)を1hrにわたり一部分ずつ添加した。1hr後に、生じる暗赤色溶液を、DCM(1L)中のN−(4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(12)(35.5g、99mmol)の攪拌溶液に1hrにわたり一滴ずつ添加した。1hr後にMeOH(100mL)を添加し、そして該混合物をRTで16hr保った。該反応混合物を真空中で蒸発させ、そして残渣をDCM(500mL)に溶解しかつ水および飽和水性NaHCO
3溶液(500mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO
4)、真空中で蒸発させかつ残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、800g、DCM中2%MeOH、アイソクラチック溶出)により精製した。この生成物を酢酸エチル/ヘプタン(5:3 v/v混合物800mL)から再結晶して、N−(4−(4−(3−(3−tert−ブ
チル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(1)(25.5g、45%)を白色粉末として提供した。実測値:C、68.41;H、5.93;N、14.36;C
33H
34N
6O
4は、C、68.49;H、5.92;N、14.52%を必要とする。
【0147】
生物学的試験
in vitroアッセイを使用して確立された式(1)の化合物の特性の要約を下に提示する。式(1)の化合物はBIRB796に対するそのプロファイルの実質的差違を示した。双方の化合物はTHP−1細胞および分化U937細胞におけるLPS誘発性TNFα遊離の強力かつ効果的な阻害剤であった(表1)とは言え、BIRB796は、われわれが検討した6種の他の系、すなわち分化U937細胞におけるLPS誘発性IL−8遊離(BIRB796 最大阻害の31%;式(1)の化合物のIC
50:7.9nM);痰マクロファージからのLPS誘発性IL−8遊離(表2);ヒト気管支上皮細胞株BEAS2B細胞におけるポリI:C誘発性ICAM1発現(BIRB796 10μg/mlで効果なし;式(1)の化合物のIC
50:1.7nM)、BEAS2B細胞におけるライノウイルス誘発性ICAM1発現(表2);BEAS2B細胞におけるライノウイルス誘発性IL−8遊離(表2)およびMRC5細胞におけるライノウイルス複製において有意の効果なし(NSE)を示した。顕著に対照的に、式(1)の化合物は全6種の系で活性を示し、かつ、U937細胞におけるLPS誘発性TNFα遊離で示されたにおけるものに同等であったか若しくはそれを超えた効力のレベルを示した。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
これら2種の化合物のヒト胎児肺線維芽細胞MRC5細胞中でのライノウイルス複製を阻害する能力をさらに検討した。BIRB796は1.9μMまでの濃度範囲にわたりウイルス複製に対する効果を伴わなかったことが確立された。しかしながら、われわれは式(1)の化合物の濃度効果曲線を検討し、そして5.2nMという濃度がウイルス力価を1対数桁減少したことを見出した。
【0151】
これらのアッセイの説明は後に続くとおりである。すなわち、
【0152】
酵素阻害アッセイ
化合物の酵素阻害活性を、ドナーおよびアクセプター双方のフルオロフォア(Z−LYTE、Invitrogen Ltd.、英国ペーズリー)で標識した合成ペプチドを使用するFRETにより測定した。組換えリン酸化p38 MAPK γ(MAPK12:Millipore)をHEPES緩衝液で希釈し、所望の最終濃度の化合物と混合し、そして室温で2時間インキュベートした。FRETペプチド(2μM)およびATP(100μM)を次に酵素/化合物の混合物に添加しかつ1hrインキュベートした。発色試薬(プロテアーゼ)は蛍光マイクロプレートリーダー(Varioskan
(R)Flash、ThermoFisher Scientific)での検出前に1時間添加した。部位特異的プロテアーゼはリン酸化されていないペプチドのみを切断しそしてFRETシグナルを除外する。各反応のリン酸化レベルを、フルオレセイン発光(アクセプター)に対するクマリン発光(ドナー)の比を使用して計算し、高い比は高リン酸化および低い比は低リン酸化レベルを示す。各反応の阻害パーセントを阻害されない対照に関して計算し、そして50%阻害濃度(IC
50値)をその後濃度反応曲線から計算した。
【0153】
p38 MAPKα(MAPK14:Invitrogen)について、酵素活性を下流の分子MAPKAP−K2の活性化/リン酸化を測定することにより間接的に評価した。p38 MAPKαタンパク質を試験化合物とRTで2時間混合した。p38αの不活性標的MAPKAP−K2(Invitrogen)およびMAPKAP−K2のリン酸化標的であるFRETペプチド(2μM)ならびにATP(10μM)をその後該酵素/化合物の混合物に添加しかつ1時間インキュベートした。発色試薬をその後添加し、そして、蛍光による検出がアッセイプロトコルを終了する前1時間、該混合物をインキュベートした。
【0154】
U937細胞およびTHP−1細胞におけるLPS誘発性TNFα遊離:効力
ヒト単球細胞株U937細胞を、ホルボールミリステートアセテート(PMA;100ng/ml)との48ないし72hrのインキュベーションによりマクロファージ型細胞
に分化させた。適切な場合は、細胞を最終濃度の化合物と2hrプレインキュベートした。細胞をその後0.1μg/mlのLPS(大腸菌(
E.Coli):O111:B4、Sigmaから)で4hr刺激し、そしてサンドイッチELISA(Duo−set、R&D systems)によるTNFα濃度の測定のため上清を収集した。TNFα産生の阻害を、ベヒクル対照との比較により各濃度の試験化合物で10μg/mlのBIRB796により達成されたもののパーセントとして計算した。相対50%有効濃度(R−EC
50)を、結果として生じる濃度反応曲線から決定した。ヒト単球細胞株THP−1もまたこのアッセイに使用した。THP−1細胞を3μg/mlのLPS(大腸菌(
E.Coli):O111:B4、Sigmaから)で4hr刺激し、そしてTNFα濃度の測定のため上清を収集した。50%阻害濃度(IC
50)を、結果として生じる濃度反応曲線から決定した。
【0155】
U937細胞におけるLPS誘発性IL−8遊離:効力
ヒト単球細胞株U937細胞を、ホルボールミリステートアセテート(PMA;100ng/ml)との48ないし72時間のインキュベーションによりマクロファージ型細胞に分化させた。細胞を最終濃度の化合物と2hrプレインキュベートした。細胞をその後0.1μg/mlのLPS(大腸菌(
E.Coli):O111:B4、Sigmaから)で4hr刺激し、そしてサンドイッチELISA(Duo−set、R&D systems)によるIL−8濃度の測定のため上清を収集した。IL−8産生の阻害をベヒクル対照との比較により各濃度の試験化合物で計算した。50%阻害濃度(IC
50)を、結果として生じる濃度反応曲線から決定した。
【0156】
BEAS2B細胞におけるポリI:C誘発性ICAM−1誘導:効力
ポリI:C(1μg/ml)(Invivogen Ltd.、カリフォルニア州サンディエゴ)を、Oligofectamine(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を用いてBEAS2B細胞(ヒト気管支上皮細胞、ATCC)にトランスフェクトした。細胞は最終濃度の化合物と2hrプレインキュベートした。細胞表面上のICAM1発現のレベルを細胞に基づくELISAにより測定した。簡潔には、ポリI:Cトランスフェクション後18hrに細胞をPBS中4%ホルムアルデヒドで固定した。0.1%アジ化ナトリウムおよび1%過酸化水素を添加することにより内因性ペルオキシダーゼをクエンチした後に、細胞を洗浄緩衝液(PBS中0.1%Tweeen:PBS−Tween)で洗浄した。ウェルをPBS−Tween中5%乳で1hrブロッキングした後、細胞を1%BSA PBS中抗ヒトICAM−1抗体(Cell Signaling Technology、マサチューセッツ州ダンバーズ)と4℃で一夜インキュベートした。細胞をPBS−Tweenで洗浄しかつ二次抗体(HRP結合抗ウサギIgG、Dako Ltd.、デンマーク・グロストルップ)とインキュベートした。ICAM−1シグナルを、基質を添加すること、および分光光度計を使用して655nmの参照波長を用い450nmでの吸光度を読み取ることにより検出した。細胞をその後PBS−Tweenで洗浄し、そして各ウェル中の総細胞数を、クリスタルバイオレット染色および1%SDS溶液による溶出後に595nmでの吸光度を読み取ることにより測定した。測定されたOD450−655読み取り値を、各ウェル中のOD595読み取り値で除算することにより細胞数について補正した。ICAM−1発現の阻害はベヒクル対照との比較により各濃度の試験化合物で計算した。50%阻害濃度(IC
50)を、結果として生じる濃度反応曲線から決定した。
【0157】
痰マクロファージアッセイ
痰を健康志願者への3%(w/v)高張食塩水の噴霧溶液の吸入により誘導した。ジチオスレイトール(最終で0.02%)をその後添加し、そして痰がより少なく粘性になるまでボルテックスミキサーを使用して活発に混合した。遠心分離(1500rpmで10min)により生じられた細胞ペレットを10%FCS RPMI−1640に再懸濁し
、そして痰マクロファージを高結合プレート(CellBIND
(R)、Corning
Limited.英国)での2hrのプレート接着により分離した。接着された細胞をRPMI−1640で洗浄しかつLPS(1μg/ml)で刺激した。4hrのインキュベーション後に、Duoset ELISA発色キット(R&D systems、ミネソタ州ミネアポリス)を使用するIL−8産生の測定のため上清を収集した。化合物はLPS刺激の2hr前に添加した。
【0158】
ライノウイルスに誘発されるIL−8およびICAM−1
ヒトライノウイルスRV16(HRV)をAmerican Type Culture Collection(バージニア州マナサス)から得た。ウイルスストックを、細胞の80%が細胞壊死性になるまでHela細胞をHRVに感染させることにより生成した。
【0159】
BEAS2B細胞を5MOI(5の感染多重度)のHRVに感染させ、そして吸収のため穏やかな振とうを伴い33℃で2hrインキュベートした。細胞をその後PBSで洗浄し、新鮮培地を添加し、そして細胞をさらなる72hrインキュベートした。Duoset ELISA発色キット(R&D systems、ミネソタ州ミネアポリス)を使用してIL−8濃度のアッセイのため上清を収集した。
【0160】
ICAM−1を発現する細胞表面のレベルを細胞に基づくELISAにより測定した。適切なインキュベーション後に細胞をPBS中4%ホルムアルデヒドで固定した。0.1%アジ化ナトリウムおよび1%過酸化水素を添加することにより内因性ペルオキシダーゼをクエンチした後に、ウェルを洗浄緩衝液(PBS中0.05%Tween:PBS−Tween)で洗浄した。ウェルをPBS−Tween中5%乳で1hrブロッキングした後、細胞を5%BSA PBS−Tween中抗ヒトICAM−1抗体(1:500)とともに一夜インキュベートした。ウェルをPBS−Tweenで洗浄しかつ二次抗体(HRP結合抗ウサギIgG、Dako Ltd.)とともにインキュベートした。ICAM−1シグナルを、基質を添加すること、および分光光度計を使用して655nmの参照波長を用いて450nmで読み取ることにより検出した。ウェルをその後PBS−Tweenで洗浄し、そして各ウェル中の総細胞数を、クリスタルバイオレット染色および1%SDS溶液による溶出後に595nmでの吸光度を読み取ることにより測定した。測定されたOD
450−655読み取り値を、各ウェル中のOD
595読み取り値で除算することにより細胞数について補正した。化合物を、HRV感染2hr前、および非感染HRVを洗い落とした感染2hr後に添加した。
【0161】
ライノウイルス力価アッセイ
MRC5細胞(ヒト肺線維芽細胞、ATCC)を1MOI(1.0の感染多重度)のHRVに感染させ、そして吸収のため穏やかな振とうを伴い33℃で1hrインキュベートした。細胞をその後PBSで洗浄し、新鮮培地を添加し、そして細胞をさらなる96hrインキュベートした。上清を収集し、そしてウイルス含有上清の10倍連続希釈を調製した。全部の滴定(titration)は、コンフルエントなHela細胞単層を連続希釈上清(10
−1ないし10
−5)に感染させること、および感染4日後にMTTアッセイにより細胞変性効果を評価することにより実施した。Hela細胞の50%を感染させるのに必要とされるウイルスの量をTCID
50U/mLとして各処置で計算した。化合物は、HRV感染の24および2hr前、ならびに非感染HRVを洗い落とした感染1hr後に添加した。
【0162】
マウスにおけるLPS誘発性好中球蓄積
非絶食マウスに、LPS処置を開始する前の示された時点(2〜12hrの範囲内)にベヒクル若しくは試験物質いずれかを気管内経路により投与した。T=0でマウスを曝露
チャンバーに入れかつLPSに曝露した。LPS投与8時間後に動物を麻酔下にし、気管にカニューレ処置し、そして気管カテーテルを介して肺中に1mlのPBSを注入することおよび引き抜くことによりBALFを抽出した。BALFサンプル中の総白血球数および白血球百分率数はNeubaur血球計算器を使用して測定した。BALFサンプルのサイトスピンスメアを室温で200rpmで5分間の遠心分離により調製し、そしてDiffQuik染色系(Dade Behring)を使用して染色した。油浸顕微鏡検査を使用して細胞を計数した。化合物(1)でのマウスの処置は、LPS投与前2、8若しくは12hrに処置される場合にBALF中への好中球蓄積を阻害することが見出された(表3および4)。
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】
モルモットにおけるアレルゲン誘発性好酸球蓄積
Dunkin Hartleyモルモットを卵アルブミンで免疫した。6用量のベヒクル若しくは実施例8(1.5mg/ml)をエアゾルにより12時間ごとに投与し、最後の用量はアレルゲン投与(等級V、OVA;De Vibliss超音波ネブライザー2000を使用してエアゾル化した10μg/mL溶液、30minにわたる)の開始2hr前に投与した。2群の動物が6用量の実施例8を受領した一方、さらなる2群が6用量のベヒクルを受領した。OVA投与(上の群の詳細を参照されたい)の8若しくは24時間後に気管にカニューレ処置しかつBALFを抽出した。このための手順は気管カテーテルを介して肺中に5mlのPBSを吸引することを必要とした。BAL液サンプル中の総白血球数および白血球百分率数はNeubaur血球計算器を使用して測定した。BAL液サンプルのサイトピンスメアを200rpmで室温で5minの遠心分離により調製し、そしてDiffQuik染色系(Dade Behring)を使用して染色した。細胞は油浸顕微鏡検査を使用して盲検で(blind)計数した。
【0166】
化合物(1)でのモルモットの処置は、卵アルブミン投与後8および24時間で検討した場合にBALF中への好酸球蓄積を阻害することが見出された(表5)。
【0167】
【表5】
【0168】
たばこ煙モデル
A/Jマウス(雄性、5週齢)を、小動物向けのたばこ煙吸入実験装置(SIS−CS型;柴田科学株式会社、東京)を使用して、11日間1日あたり30min間たばこ煙(4%たばこ煙、圧縮空気で希釈)に曝露した。試験物質を、最後のたばこ煙曝露後3日間1日2回、鼻内に(50%DMSO/PBS中溶液35μl)かつ治療的に与えた。最終投与12時間後に動物を麻酔し、気管にカニューレ処置しかつ気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集した。肺胞マクロファージおよび好中球の数を、抗マウスMOMA2抗体(マクロファージ)若しくは抗マウス7/4抗体(好中球)を使用するFACS分析(EPICS
(R)ALTRA II、Beckman Coulter,Inc.、米国カリフォルニア州フラートン)により測定した。
【0169】
化合物(1)での処置の結果を
図1(好中球)および
図2(活性化肺胞マクロファージ)に示す。細胞数のデータは平均±SEMとして示す。この試験に使用したたばこ煙モデルはコルチコステロイド不応性の系として報告されており(Medicherla S.ら、(2008);
J.Pharmacol.Exp.Ther.324(3):921−9)、そして、フルチカゾンプロピオン酸エステルが、LPS誘発性好中球蓄積の80%超の阻害を生じた同じ用量である50μg/mL(35μl、1日2回、鼻内)で気道への好中球若しくはマクロファージいずれの蓄積も阻害しなかったことが確認された。しかしながら、化合物(1)での処置は、好中球および活性化マクロファージ双方の数の顕著な用量依存性の減少をもたらすことが見出された。
【0170】
卵アルブミン投与/パラインフルエンザ感染モデル
雄性Dunkin−Hartleyモルモット(300〜350g、n=6/群)を、第2および6日に1ml生理的食塩水中100μgの卵アルブミン(OVA)+100mgのAl
2(OH)
3で感作した(i.p.)。パラインフルエンザウイルス(PIV−3;10
6感染単位)若しくはウイルスを含まない培地を第11および12日に鼻に注入した。動物を、第10〜15日から、噴霧される(i)1日あたり1.5mgの用量のフルチカゾンプロピオン酸エステル(初期の試験は、この用量のフルチカゾンプロピオン酸エステルがPIV3培地で処置した感作動物での卵アルブミン媒介性肺機能変化を阻害したことを確立した)若しくは(ii)化合物(1)(1日あたり0.15mg)若しくは(iii)上で示された用量のフルチカゾンプロピオン酸エステルおよび化合物(1)の組合せ若しくは(iv)ベヒクル(DMSO:エタノール:生理的食塩水、30:30:40%)いずれかで処置した。全動物に第15日に噴霧OVA(10μg/ml)を1hr投与し、そして比気道コンダクタンス(sG
aw)の反復測定を、全身プレチスモグラフィーを使用して24hにわたり行った。OVA投与後のsG
awの測定値をベースラインからの変化%としてプロットする。
図3は単剤療法としての化合物1の効果を示す一方
、
図4はフルチカゾンプロピオン酸エステルと組合せで投与される場合のその効果を示す。化合物(1)単独での処置は、卵アルブミン投与に対する初期(第1hr)の気管支括約筋応答に対する影響を生じないことが見出されたが、しかしその後の応答(処置後2〜12hr)を顕著に阻害した。フルチカゾンプロピオン酸エステルと共投与される場合、卵アルブミン投与により惹起される初期およびその後の双方の気管支括約筋応答が阻害された。
【0171】
要約
in vitroの生物学的研究は、式(1)の化合物が、抗炎症活性のin vitroモデル(分化U937細胞およびTHP−1細胞からのLPS誘発性TNFα遊離)における良好な有効性を伴う、p38 MAPキナーゼサブタイプαおよびγの強力な阻害剤であることを示す。加えて、式(1)の化合物は、ライノウイルス誘発性炎症およびライノウイルス複製の双方を阻害することが可能であるという驚くべき特性を示す。
【0172】
本明細および後に続く請求の範囲を通じて、文脈が別の方法で必要としない限り、「含んでなる(comprise)」という語、ならびに「含んでなる(comprises)」および「含んでなること(comprising)」のような変形は、述べられた整数、段階、整数の群若しくは段階の群の包含を意味しているが、しかしいかなる他の整数、段階、整数の群若しくは段階の群の除外も意味していないことが理解されるであろう。
【0173】
本明細書で言及される全部の特許および特許出願はそっくりそのまま引用することにより組み込まれる。
【0174】
本記述および請求の範囲が一部を形成する本出願は、いかなるその後の出願に関しても優先権の基礎として使用しうる。こうしたその後の出願の請求の範囲は、本明細書に記述されるいずれの特徴若しくは特徴の組合せにも向けることができる。それらは製品、組成物、方法若しくは使用の請求項の形態をとることができ、そして例としてかつ制限を伴わずに請求の範囲を包含しうる。