(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3-10041号公報
【特許文献2】特開平3-158446号公報
【特許文献3】特開平7-252559号公報
【特許文献4】特開平9-279318号公報
【特許文献5】特開2001-254157号公報
【特許文献6】特開2001-303218号公報
【特許文献7】特開2004-42017号公報
【特許文献8】特開2007-92103号公報
【特許文献9】特開2007-247037号公報
【特許文献10】特開2007-332413号公報
【特許文献11】特開2008-1939号公報
【特許文献12】特開2008-24985号公報
【特許文献13】米国特許第5429725号明細書
【特許文献14】特願2008-183080、ナノサイズ金属ガラス構造体、中山幸仁、他
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K. S. Nakayama, Y. Yokoyama, G. Xie, Q. S. Zhang, M. W. Chen, T. Sakurai, and A. Inoue, "Metallic glass nanowire," Nano. Lett. 8, 516-519 (2008)
【非特許文献2】M. Zhang, S. Fang, A. A. Zakhidov, S. B. Lee, A. E. Aliev, C. D. Williams, K. R. Atkinson, and R. H. Baughman, "Strong, Transparent, multifunctional, carbon nanotube sheets," Science 309, 1215-1219 (2005)
【非特許文献3】K. Hata, D. N. Futaba, K. Mizuno, T. Namai, M. Yumura, and S. Iijima, "Water-assisted highly efficient synthesis of impurity free single walled carbon nanotubes," Science 19, 1362-1364 (2004)
【非特許文献4】M.-F. Yu, O. Lourie, M. J. Dyer, K. Moloni, T. F. Kelly, and R. S. Ruoff, "Strength and breaking mechanism of maltiwalled carbon nanotubes under tensile load," Science 287, 637-640 (2000)
【非特許文献5】B. G. Demczyk, Y. M. Wang, J. Cumings, M. Hetman, W. Han, A. Zettl, R. O. Ritchie, "Direct mechanical measurement of the tensile strength and elastic modulus of multiwalled carbon nanotubes," Materials Science and Engineering 334, 173-178 (2002)
【非特許文献6】Y. Yokoyama, E. Mund, A. Inoue, and L. Schultz, "Production of Zr55Cu30Ni5Al10 glassy alloy rod of 30 mm in diameter by a cap-cast technique," Mater. Trans. 48, 3190-3192 (2007)
【非特許文献7】石田央、竹田英樹、西山信行、網谷健児、喜多和彦、清水幸春、渡邉大智、福島絵里、早乙女康典、井上明久、「金属ガラス製超精密ギヤを用いた世界最小・高トルクギヤードモータ」まてりあ 44, 431-433 (2005)
【非特許文献8】K. S. Nakayama, Y. Yokoyama, T. Sakurai, and A. Inoue, "Surface properties of Zr50Cu40Al10 bulk metallic glass," Appl. Phys. Lett. 90, 183105 (2007).F. Spaepen, "On the fracture morphology of metallic glasses," Acta. Mater. 23, 615-621 (1975)
【非特許文献9】J. J. Lewandowski and A. L.Greer, "Temperature rise at shear bands in metallic glasses," Nature Mater. 5, 15-18 (2006)
【非特許文献10】Y. Kawamura, T. Nakamura, and A. Inoue, Scripta Mater. 39, 301-306 (1998)
【非特許文献11】A. Inoue, Stabilization of metallic supercooled liquid and bulk amorphous alloys, Acta Mater., 48, 279-306 (2000)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、金属ガラス材料からなる成形物、例えば、金属ガラス製リボンまたは細線に対して、歪みを加えながら過冷却液体状態まで急速加熱を実施して、その状態で加工を行い、加工終了時に伴う急速冷却によってナノワイヤにアモルファス状態の構造を保持せしめることを特徴としている。
当該生成されたナノワイヤは、透過電子顕微鏡を使用しての原子構造観測により、それがアモルファス状態のものであることの確認も実施されている。さらに当該ナノワイヤについて、その機械的測定も実施され、それがバルク金属ガラスと同等のヤング率を有することも確認されている。
【0015】
本明細書中、金属ガラス(metallic glass)〔ガラス合金(glassy alloy)ともいう〕とは、アモルファス合金〔amorphous alloy, アモルファス金属(amorphous metal)〕の一種であるが、ガラス転移点が明瞭に現れるものを指しており、このガラス転移点を境界として高温側にある過冷却液体領域を示す点で、従来のアモルファス合金とは区別されるものである。すなわち、金属ガラスの熱的挙動を、示差走査熱量計を用いて調べると、温度上昇にともないガラス転移温度(T
g)を過ぎると吸熱温度領域が現れ、結晶化温度(T
x)近傍で発熱ピークを示し、さらに加熱すると融点(T
m)で吸熱ピークが現れる。金属ガラスの組成成分によって各温度点は異なる。過冷却液体温度領域(ΔT
x)は、ΔT
x=T
x - T
gで定義され
、ΔT
xが50〜130℃と非常に大きいことが、冷却液体状態の安定性が高く結晶化を回避し
アモルファス状態を維持できる。従来のアモルファス合金ではこのような熱的挙動は見られずT
gが存在しない。
【0016】
バルク状の金属ガラスを作製するためには、過冷却液体状態の安定が要素であり、これを実現するための組成として、
(1)3成分以上の多元系であること、
(2)主要3成分の原子寸法比が互いに12%以上異なっていること、
(3)主要3成分の混合熱が互いに負の値を有していること、
が経験則として報告されている(A. Inoue, Stabilization of metallic supercooled liquid and bulk amorphous alloys, Acta Mater., 48, 279-306 (2000): 非特許文献11)。
金属ガラス材料の組成としては、様々な例が知られており、例えば、特開平3-10041号
公報〔特許文献1〕、特開平3-158446号公報〔特許文献2〕、特開平7-252559号公報〔特許文献3〕、特開平9-279318号公報〔特許文献4〕、特開2001-254157号公報〔特許文献
5〕、特開2001-303218号公報〔特許文献6〕、特開2004-42017号公報〔特許文献7〕、
特開2007-92103号公報〔特許文献8〕、特開2007-247037号公報〔特許文献9〕、特開2007-332413号公報〔特許文献10〕、特開2008-1939号公報〔特許文献11〕、特開2008-24985
号公報〔特許文献12〕、米国特許第5429725号明細書〔特許文献13〕などに開示のものを
参照できる。
【0017】
金属ガラスとしては、Ln-Al-TM、Mg-Ln-TM、Zr-Al-TM(ここで、Lnは希土類元素、TMは遷移金属を示す)系等が見出されているのをはじめとして、最近までに数多くの組成が報告されている。ガラス合金としては、Mg基、希土類金属基、Zr基、Ti基、Fe基、Ni基、Co基、Pd基、Pd-Cu基、Cu基、Al基などのバルクガラス合金が包含されてよい。
過冷却液体領域の温度幅が広く、加工性に優れるアモルファス合金として、X
aM
bAl
c (X: Zr, Hf、M: Ni, Cu, Fe, Co, Mn、25≦a≦85、5≦b≦70、0≦c≦35)が知られており、例えば、特開平3-158446号公報などを参照することができる。
【0018】
Zr基金属ガラスは、合金の中でZrを他の元素よりも多く含有し、Zr以外に、第4族元素(例えば、Zr以外のTi, Hfなど)、第5族元素(例えば、V, Nb, Taなど)、第6族元素(例えば
、Cr, Mo, Wなど)、第7族元素(例えば、Mnなど)、第8族元素(例えば、Feなど)、第9族元
素(例えば、Coなど)、第10族元素(例えば、Ni, Pd, Ptなど)、第11族元素(例えば、Cu, Agなど)、第13族元素(例えば、Alなど)、第14族元素(例えば、Siなど)、第3族元素(例えば、Y、ランタノイド元素など)などからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有するものが挙げられる(元素の周期表は、IUPAC Nomenclature of Inorganic Chemistry, 1989に基づく、以下同様)。典型的な場合では、Zrの含有量は、Zr以外に含有せしめ
る元素によっても異なるが、合金全体に対して40質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。具体的には、Zr
50Cu
40Al
10(以下、下付数字は原子%を
示す)、Zr
55Cu
30Al
10Ni
5、Zr
60Cu
20Al
10Ni
10、Zr
65Cu
15Al
10Ni
10、Zr
66Cu
12Al
8Ni
14、Zr
65Cu
17.5Al
7.5Ni
10、Zr
48Cu
36Al
8Ag
8、Zr
42Cu
42Al
8Ag
8、Zr
41Ti
14Cu
13Ni
10Be
22、Zr
55Al
20Ni
25、Zr
60Cu
15Al
10Ni
10Pd
5、Zr
48Cu
32Al
8Ag
8Pd
4、Zr
52.5Ti
5Cu
20Al
12.5Ni
10、Zr
60Cu
18Al
10Co
3Ni
9等が挙げられる。これらの中でも、Zr
50Cu
40Al
10、Zr
65Cu
15Al
10Ni
10、Zr
48Cu
32Al
8Ag
8Pd
4、Zr
55Cu
30Al
10Ni
5等のZr基ガラス合金が特に好ましいものとして挙げられる
。
【0019】
金属ガラスとして、PdとPtとを必須元素とする金属ガラスが報告されており、例えば、特開平9-279318号公報などを参照することができる。また、金属ガラス材料としては、Ni
72-Co
(8-x)-Mo
x-Z
20 (x=0, 2, 4又は6原子%、Z=メタロイド元素)が知られており、例え
ば、米国特許第5429725号明細書などを参照することができる。Pdの他、Nb, V, Ti, Ta, Zrなどの金属が水素透過性能を有することが知られており、このような金属を中心とする金属ガラスは、水素選択透過性を発揮し得る。
【0020】
さらに、金属ガラスとして、Nb-Ni-Zr系、Nb-Ni-Zr-Al系、Nb-Ni-Ti-Zr系、Nb-Ni-Ti-Zr-Co系、Nb-Ni-Ti-Zr-Co-Cu系、Nb-Co-Zr系や、Ni-V-(Zr,Ti)系、Ni-Cr-P-B系、Co-V-Zr
系、Cu-Zr-Ti系などが挙げられ、例えば、特開2004-42017号公報などを参照することができる。具体的には、Ni
60Nb
15Ti
15Zr
10、Ni
65Cr
15P
16B
4等のNb-Ni-Ti-Zr系ガラス合金、Ni-Cr-P-B系ガラス合金などが特に好ましいものとして挙げられる。
さらに、金属ガラスとしては、メタル−メタロイド(半金属)系金属ガラス合金、メタル−メタル系金属ガラス合金、ハード磁性系金属ガラス合金などが挙げられる。
金属元素としてFeを含有するメタル−メタロイド(半金属)系金属ガラス合金としては、例えばFe以外の他の金属元素と半金属元素(メタロイド元素)とを含有してなり、金属元素としてAl, Ga, In, Snのうちの1種または2種以上を含有し、半金属元素として、P,
C, B, Ge, Siのうちの1種または2種以上を含有するものなどが挙げられる。メタル−
メタル系金属ガラス合金の例としては、Fe, Co, Niのうちの1種又は2種以上の元素を主成分とし、Zr, Nb, Ta, Hf, Mo, Ti, Vのうちの1種又は2種以上の元素とBを含むものが挙げられる。
【0021】
本発明においては、好適な金属ガラスとして、金属ガラスが複数の元素から構成され、その主成分として少なくともFe, Co, Ni, Ti, Zr, Mg, Cu, Pdのいずれかひとつの原子を30〜80原子%の範囲で含有するものが挙げられる。さらに、第6族元素(Cr, Mo, W)を10〜40原子%、第14族元素(C, Si, Ge, Sn)を1〜10原子%の範囲で、各グループから少なくとも1種類以上の金属原子を組み合わせてもよい。また、鉄族元素に、目的に応じて、Ca, B,
Al, Nb, N, Hf, Ta, Pなどの元素が10原子%以内の範囲で添加されてあってもよい。これらの条件により、高いガラス形成能を有するものであってよい。
【0022】
金属ガラスの成分元素として、少なくともFeを含有するものは、耐食性が飛躍的に向上しており、好適なものがある。金属ガラス中のFe含有量としては、30〜80原子%が好適で
ある。Feが30原子%より少ない場合では耐食性が十分に得られず、また、80原子%より多い場合では金属ガラスの形成は困難である。より好ましいFe原子の割合は、35〜60原子%
である。上記の金属ガラス組成は安定なアモルファス相の金属ガラス層を形成すると同時に加工の低温化にも貢献し、均一なガラス組織と結晶質金属組織の層状構造を、形成することができる。好ましい組成としては、例えば、Fe
43Cr
16Mo
16C
15B
10、Fe
75Mo
4P
12C
4B
4Si
1、Fe
52Co
20B
20Si
4Nb
4、Fe
72Al
5Ga
2P
11C
6B
4等が挙げられる。
また、本発明において用いる金属ガラスの好適なものとして、Fe
100-a-b-cCr
a TM
b (C
1-XB
XP
y )
c〔ただし、式中、TM=V, Nb, Mo, Ta, W, Co, Ni, Cuの少なくとも一種以上、a,
b, c, x, yは、それぞれ5原子%≦a≦30原子%, 5原子%≦b≦20原子%, 10原子%≦c≦35原
子%, 25原子%≦a+b≦50原子%, 35原子%≦a+b+c≦60原子%, 0.11≦x≦0.85, 0≦y≦0.57〕で示される組成を有するものが挙げられる。当該金属ガラスは、例えば、特開2001-303218号公報などを参照できる。
【0023】
当該金属ガラスとしては、軟磁性Fe基金属ガラス合金であってよく、例えば、特開2008-24985号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる。軟磁性金属ガラス合金としては、例えば、Fe-(Al, Ga)-メタロイド系、(Fe, Co, Ni)-(Zr, Hf, Nb, Ta)-B系、(Fe, Co)-Si-B-Nb系、(Fe, Co)-Ln-B系、Fe-Si-B-P-(C)系などが包含
されてよい。また、硬磁性金属ガラス合金も知られており、そうした硬磁性金属ガラス合金としては、例えば、Fe-Nd-B系、Fe-Pr-B系、Fe-Pt-B系などが包含されてよい。
Co基金属ガラスとしては、例えば、特開2007-332413号公報並びにそこで引用されてい
る全ての特許文献及び参考文献を参照できる。Ni基金属ガラスとしては、例えば、特開2007-247037号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる
。Mg基金属ガラスとしては、例えば、特開平3-10041号公報、特開2001-254157号公報、特開2007-92103号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる。Ti基金属ガラスとしては、例えば、特開平7-252559号公報、特開2008-1939号公報並
びにそこで引用されている全ての特許文献を参照できる。
好ましい組成としては、例えば、Ti
50Cu
25Ni
15Zr
5Sn
5、Mg
50Ni
30Y
20等が挙げられる。
【0024】
本発明で、「ナノスケール」とは、三次元空間を表すディメンジョンx, y, zのうちの
少なくとも二つがナノサイズであることを意味する場合を指すものと理解してよく、ここで「ナノサイズ」とは1000ナノメートル(nm)以下の大きさのことを指しており、より好適には、500 nm以下の大きさ、ある場合には200 nm以下の大きさ、典型的には150 nm以下の大きさ、より典型的には120 nm以下の大きさ、さらなる典型では、100 nm以下の大きさ、さらには、80 nm以下の大きさ、ある場合の典型では70 nm以下の大きさ、別の場合には、60 nm以下の大きさ、さらには、55 nm以下の大きさ、あるいは、50 nm以下の大きさを指
すものであってよい。本発明で「ナノサイズ」とは、金属ガラスの種類に応じて1000nm以下の大きさの中から、様々なサイズとすることも可能であり、さらには、40 nm以下の大
きさとか、30 nm以下の大きさとか、20 nm以下の大きさとか、さらに小さい、10 nm以下
の大きさとか、5 nm以下の大きさのものも包含される。典型的には、本発明の金属ガラスナノワイヤでは、ワイヤの直径が上記「ナノサイズ」であることを指すと理解してよい。
以上から明らかなごとく、本発明の金属ガラスナノワイヤは、ディメンジョンの一つ、例えば、長さが上記ナノサイズ以上であってよく、例えば、1マイクロメートル(μm)以上の大きさであるものも包含される。
【0025】
本発明の金属ガラスナノワイヤは、様々な形状のものが包含されてよく、さらに、金属ガラスの種類により各種の形態のものが許容されるが、例えば、ナノスケールの、細線、ファイバー(ナノファイバー)、フィラメント、ロッド(ナノロッド)、シリンダー(ナノシリンダー)などが挙げられる。
本金属ガラスナノワイヤは、直線形、分岐形、ねじれ形、コイル形又はスパイラル形などのいずれであってもよいが、例えば、直線形、円柱状のものなどを挙げることができる。該金属ガラスナノワイヤの形状は、金属ガラスの種類により各種の形態のものにすることができるし、許容されるもので、例えば、細線の断面の形状は、円形、楕円形、西洋梨形など、適宜、任意の形状とすることもできるが、好適には円形又は楕円形のものである。
【0026】
当該金属ガラスナノワイヤにおいては、細線の直径は1000nm以下の大きさであり、典型的には、500 nm以下の大きさ、あるいは、200 nm以下の大きさ、ある場合には、150 nm以下の大きさあるいは120 nm以下の大きさ、具体的には100 nm以下の大きさや90 nm以下の
大きさ、さらには、85 nm以下の大きさや80 nm以下の大きさ、別の場合には、75 nm以下
の大きさあるいは70 nm以下の大きさ、より具体的には65 nm以下の大きさや60 nm以下の
大きさ、もっと典型的な場合では、55 nm以下の大きさや50 nm以下の大きさをもつもの、さらには、45 nm以下の大きさや40 nm以下の大きさ、あるいは、35 nm以下の大きさや30 nm以下の大きさ、また、20 nm以下の大きさ、さらには、15 nm以下の大きさ、さらに別の場合では、10 nm以下の大きさ、あるいは、5 nm以下の大きさをもつものが挙げられる。
該細線の直径は、金属ガラスの種類により各種のサイズとすることも可能であり、1000nm以下の大きさの中から、様々なサイズとすることも可能であり、例えば、10 nm以下の大
きさとか、5 nm以下の大きさのものも包含される。当該金属ガラスナノワイヤの細線長さとしては、1μm以上とすることも可能であり、5μm又はそれ以上、10μm又はそれ以上、20μm又はそれ以上、30μm又はそれ以上、50μm又はそれ以上のものも包含され、例えば、0.1mm又はそれ以上、0.25mm又はそれ以上、0.5mm又はそれ以上、1.0cm又はそれ以上のも
のも得られる。
【0027】
当該金属ガラスナノワイヤにおいては、アスペクト比(線材の径のサイズ対長さの比)は、適宜、任意の値のものとすることができるし、さらに、金属ガラスの種類により各種の値とすることも可能であり、例えば、1:75〜1:500,000の範囲、あるいは、1:100〜1:450,000の範囲、ある場合には、1:250〜1:400,000の範囲、別の場合では、1:500〜1:5,000
の範囲で選択することができる。
典型的な例では、本発明の金属ガラスナノワイヤのアスペクト比は、例えば、1:1,000
〜1:500,000の範囲、あるいは、1:2,000〜1:450,000の範囲、ある場合には、1:1,000〜1:400,000の範囲、別の場合では、1:2,000〜1:400,000の範囲で選択することができる。
別の具体的な態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤのアスペクト比は、例えば、1:1,000〜1:10,000の範囲、あるいは、1:10,000〜1:450,000の範囲、ある場合には、1:1,000〜1:2,000の範囲、別の場合では、1:1,000〜1:5,000の範囲で選択することができる。
具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ100〜500nmで、細線の長さがおおよそ75〜20,000μmのものが挙げられる。別の具体例では、本金属ガラ
スナノワイヤは、直径がおおよそ10〜100nmで、細線の長さがおおよそ100〜15,000μmの
ものが挙げられる。
【0028】
さらに、別の具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ40〜120nmで、細線の長さがおおよそ500〜13,000μmのものが挙げられる。また、別の具体
例では、本金属ガラスナノワイヤは、直径がおおよそ40〜100nmで、細線の長さがおおよ
そ250〜13,000μmのものが挙げられる。さらなる具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ100〜500nmで、細線の長さがおおよそ400〜7,500μmのも
のが挙げられる。また、別の具体例では、本金属ガラスナノワイヤは、直径がおおよそ35〜50nmで、細線の長さがおおよそ500〜14,000μmのものが挙げられる。また、さらなる具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ60〜80nmで、細線の長さがおおよそ80〜150μmのものが挙げられる。また、別の具体例では、本金属ガラスナノワイヤは、直径がおおよそ80〜110nmで、細線の長さがおおよそ150〜450μmのものが挙げられる。
上記金属ガラスナノワイヤなどの線材の太さは、必ずしも全て同一である必要はなく、ある程度は大小であるものも包含されてよい。
【0029】
当該金属ガラスナノワイヤにおいては、細線の直径は1000nm以下の太さであり、典型的には100nm以下の太さをもつものが挙げられる。細線の長さは1cm以上とすることも可能であり、それ以上のものも包含される。アスペクト比は、適宜、任意の値とすることができる。これらのサイズは金属ガラスの高温の過冷却液体領域における粘性に依存するので、金属ガラスの種類により各種の値とすることが可能である。例えば、先端の直径が100nm
、元径が1000nmの場合、平均直径は550nmであるが、全長を1cmとした場合、アスペクト比は1:18,182となる。
【0030】
一つの具体的な態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤは、リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、移動式熱加熱フィラメントを当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させ、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて、製造することができる。別の具体的な態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤは、リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、上下端に電極を固定し通電と破断直前に通電を遮断し、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて製造することができる。さらに、一つの具体的な態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤは、リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、当該リボン状または棒状の金属ガラス試料をレーザー加熱し、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて製造することができる。
【0031】
より好ましい態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤは、以下に説明する金属ガラスナノワイヤ製造装置を利用して、それを製造できる。
該金属ガラスナノワイヤ製造装置は、金属ガラス試料の酸化を防止できる雰囲気を達成する筐体、当該筐体内に配置されており且つリボン状または棒状の金属ガラスをその端部で上下に固定せしめる少なくとも二つの固定具、下端部の固定具を牽引する荷重付与装置、
(a) 当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させることのできる移動式熱加熱フィラメント、
(b)当該試料上下端の固定具に固定され且つ通電と通電の遮断のできる電極、又は
(c)当該リボン状または棒状の金属ガラス試料を加熱できるレーザー
のいずれか一を備え、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せ
しめて、金属ガラスナノワイヤを製造することができるものである。
【0032】
当該金属ガラスナノワイヤ製造装置に備えられた筐体は、排気口を備えており、該排気口を介して排気装置により、その内部に置いた加工用金属ガラス材料の周囲雰囲気を、実質的に真空環境とすることができる。したがって、当該筐体は、通常、当該分野で知られている真空室、減圧室などの筐体であってよい。該排気装置としては、減圧ポンプ、真空ポンプなどのが包含されてよく、排気口は当該排気装置に連結されている。該排気装置は、例えば、機械式真空ポンプ、運動量輸送式の真空ポンプ、例えば、金属製のタービン翼を持った回転体であるロータが高速回転し、気体分子を弾き飛ばすことによりガスを排気するポンプであるターボ分子ポンプ(ターボモレキュラーポンプ、Turbo Molecular Pump; TMP)などを包含するものであってよい。
【0033】
当該筐体は、その筐体内に配置されており且つリボン状または棒状の金属ガラスをその端部で上下に固定せしめる少なくとも二つの固定具、並びに出発金属ガラス材料の下端部の固定具を牽引する荷重付与装置を備えることができる。
当該金属ガラスナノワイヤ製造装置は、また、当該筐体内に配置された当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させることのできる移動式熱加熱フィラメント、当該試料上下端の固定具に固定され且つ通電と通電の遮断のできる電極、及び/又は、当該リボン状または棒状の金属ガラス試料を加熱できるレーザーを備えることができる。
前記加熱フィラメントとしては、例えば、タングステンフィラメントのコイルなどが挙げられ、加熱用電流供給回路により電力供給を受けているものであってよい。
出発の金属ガラス材料の下端部にかける荷重は、錘を利用した重力加重であってもし、牽引式の機械的な加重するものであってもよく、さらに、各装置の移動、温度制御、電流供給、パワーの賦与などは、制御装置によって行われるものであることもできる。
【0034】
以下に、具体的な装置を参照しながら、代表的な製造処理工程を説明する。
図2(a)には、試料をほぼ中心部に配置固定できるスペースを有している真空室を有し
ているほぼ円筒形のチャンバー型の装置が示されている。該装置には、排気口があり、ポンプでチャンバー内を実質的に真空状態にできる。かくして、重力荷重下における熱フィラメント接触法を
図2(a)に示す。リボン状または線状金属ガラス試料の下端に重りを固
定して荷重を加え、上端はチャンバーの天井に固定した。真空中で予め熱せられたフィラメントをリボンに接触するまで水平に移動することにより局所的な急加熱を実現している〔
図2(b)〕。表面酸化を抑えるため真空中で加熱を実施する。温度がガラス転移温度以
上に到達すると粘性流動変形によってリボンが切断されるが、局部的には
図2(c)のような液体架橋状態が生じ、高温における試料の粘性率と荷重条件に依存してナノワイヤが生成される。リボン下側は熱源から瞬時に切り離されるので急冷条件が満たされ、その結果アモルファス相の維持が可能になる。
【0035】
通電加熱法を
図3(a)に示す。リボン状試料上下端に電極を固定し、
図2と同様に荷重
を加える。予備実験で、電圧を一定の割合で増加させた際の電流値を測定しておいて、適切な条件を選択するようにしてもよい。例えば、電力増加に伴い加熱温度が上昇するとリボン形状にくびれが発生した。更に電力が増加すると高温加熱による粘性低下が生じ破断に至るが、破断直前に電圧(電流)を遮断することによりナノワイヤが生成できる。
【0036】
レーザー加熱法を
図3(b)に示す。ミリ秒からナノ秒以下までパルス幅を調整できるレ
ーザーは、急速加熱・冷却を実現できるので、結晶化の回避、即ちアモルファス相の維持という点から理想的な熱源である。また、照射領域内では均一な加熱を行うことができる。予備実験を実施したところ、大気中において金属ガラスリボンならびに径1ミリの棒状
試料に対してレーザー照射加熱に成功している。その結果、0.5〜4.0 msのパルス幅で0.5
〜20 Jの熱量を与えることにより試料が切断可能であることを確認している。従って、ナノワイヤ表面酸化を防止するため真空中で荷重を加えながら加熱を実施することでナノワイヤの作製が可能である。
【0037】
本金属ガラスナノワイヤは、ナノマテリアル(NMS)の鍵となる材料であり、電極材、モ
ーター材料、ナノエレクトリニクス材料、ナノ医療デバイス、ナノセンサー、オプティカル材料などとして有用である。金属ガラスナノワイヤは、例えば、磁気材料、セミコンダクターの配線、電極材などを含め、医療機器、ナノテクノロジー応用機器、磁気材料、エレクトリニクス機器などにおいて利用できる。本金属ガラスナノワイヤ、金属ガラスナノロッドなどは、その機械的強度が局所的な欠陥・転位に影響されず、ナノ領域において超高強度材料、超弾性伸び材料として有用である。
【0038】
金属ガラス、特にはバルク金属ガラスは、粘い金属であり、高い引張強度、大きな弾性限界値を示し、破壊強度も大きく、高靭性を示すなど、高硬度、高弾性で、非常に高強度の材料で、優れた耐食性、耐磨耗性を示す。金属ガラスは、低ヤング率を示し、平滑性、転写性も有する材料で、高比表面積材料でもあり、高透磁率、耐傷性もあり、磁性材料としても有望である。金属ガラスは、その優れた機械強度、耐食性、表面平滑性、精密鋳造性、超塑性などの優れた特性を生かし、それを電磁弁、アクチュエータ、スプリング部材、位置センサー、受信センサー、磁気センサー、張力センサー、歪センサー、トルクセンサー、圧力センサーなどの用途利用も期待され、内視鏡・ロータブレータ・血栓吸引カテーテルなどの医療機器、精密工学機器、産業用小型・高性能デバイスを含めた産業機器、検査ロボット、産業用ロボット、マイクロファクトリーなどへの応用も考えられている。
金属ガラス材料は、さらに、例えば、切削工具、バネ材料、高周波トランス、チョークコイル、高速機構部材、精密機械部品、精密光学部材、宇宙材料、電極材料、燃料電池部材、輸送機器部材、航空機部材、精密医療機器、原子力プラント、生体材料、化学プラントなどへの用途・適用が期待できる。したがって、金属ガラスナノワイヤなどは、上記金属ガラスの特性を生かす分野やマイクロマシーンや半導体・精密電子部品の分野など広範な分野での利用が期待される。
【0039】
ナノワイヤはナノ電子機械システム構築を行う際の重要な構成材料要素である。よって、金属ガラスの持つ超高強度、超弾性伸び、超軟磁性などの優れた特性を、ナノ領域で、本発明の金属ガラスナノワイヤなどを使用して活用することが可能であり、ナノ電子機械システムの基板材料としてのみでなく、ナノ磁気センサー、数cmまでの長さの金属ガラスナノワイヤなどでは先端医療器具に利用でき、例えば、ナノワイヤの径が100nm程度のも
のであれば人細胞と比較して十分に小さいので、痛みなどを伴わずに人体への侵入を可能にできるので、センサーとして患部からの直接的な診断や、周辺細胞に影響を及ぼすことなく患部細胞にのみ電流刺激を行って活性化したり、悪性腫瘍を破壊したりすることなども可能となる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0040】
図2に示された装置を使用して、金属ガラスナノワイヤの生産を試みた。
図2に示された装置は、試料をほぼ中心部に配置固定できるスペースを有している真空室を有するほぼ円筒形のチャンバー型装置である。該装置には、排気口があり、ポンプでチャンバー内を
実質的に真空状態にできる。該装置は、重力荷重下における熱フィラメント接触法を実施できるものである。チャンバー内で、リボン状または線状金属ガラス試料の下端に重りを固定して荷重を加え、上端はチャンバーの天井に固定した。真空中で予め熱せられたフィラメントをリボンに接触するまで水平に移動することにより局所的な急加熱を実現している(
図2(b))。表面酸化を抑えるため真空中で加熱を実施する。温度がガラス転移温度
以上に到達すると粘性流動変形によってリボンが切断されるが、局部的には
図2(c)のような液体架橋状態が生じ、高温における試料の粘性率と荷重条件に依存してナノワイヤが生成される。リボン下側は熱源から瞬時に切り離されるので急冷条件が満たされ、その結果アモルファス相の維持が可能になる。
【0041】
本実施例で使用する金属ガラスリボン試料は、メルトスピニング法で調製された。
図2の装置において、真空チャンバー内に金属ガラスリボンの上下端を固定し、表1で示す条件にて、タングステンフィラメントを用いて加熱した。当該フィラメントを水平方向に移動せしめ、金属ガラスリボンに熱が伝わるように操作した。該リボン試料にかける荷重は、1.70gの重りを使用し、16.7mNの垂直の一定の荷重がかかるようにした。真空チ
ャンバー内は、ターボ分子ポンプを使用して排気処理して真空状態の雰囲気にせしめた。
フィラメントの温度は試料接触前に放射温度計(放射率0.35)用いて測定を行い、加熱温度が所定の温度になるように調整された。加熱されたフィラメントが試料に接触し、粘性流動による加工が行われる。その際、ガラス転移温度以上に急加熱されるが、加工の始まるガラス転移温度は素材合金組成によって異なる。
図2Cで示すように一度に数本の金属ガラスナノワイヤが得られた。この条件で得られた金属ガラスナノワイヤは、直径100nm、長さ0.5mm以上であった。
【0042】
【表1】
【0043】
Zr
48Cu
32Ag
8Al
8Pd
4の金属ガラスナノワイヤは、走査電子顕微鏡(scanning electoron microscope; SEM)で観察したところ、一つの例では、長さが500マイクロメータ以上であり、直径がおおよそ数100 nm程度であり、一様な形態的特徴を示すものであり、そのナノワイヤの末端部には如何なる触媒クラスターも現れていなかった。また、エネルギー分散型X線分光分析装置(energy dispersive X-ray spectroscopy)で分析した結果、Zr, Cu, Al, Ag, Pdを含有していることが示され、出発試料の組成と同じであることが確認された。SEM観察で、おおよそ230 nm〜おおよそ290 nmの直径を有し、500マイクロメータ以上の長さを有する金属ガラスナノワイヤが得られていることが認められた。
【実施例2】
【0044】
実施例1と同様、
図2に示された装置を使用して、Zr基金属ガラスナノワイヤの生産を
試みた。 本実施例で使用する金属ガラスリボン試料は、メルトスピニング法で調製された。フィラメントへの電力量は、0.23Wに下げて処理された。
Zr
65Cu
15Ni
10Al
10の金属ガラス組成において、加熱温度973Kにて直径60nmまで、長さ0.5mmまでの金属ガラスナノワイヤが得られた。
本金属ガラスナノワイヤは、SEMで観察したところ、上記サイズであり、一様な形態的
特徴を示すものであり、そのナノワイヤの末端部には如何なる触媒クラスターも現れていなかった。また、エネルギー分散型X線分光分析装置で分析した結果、出発試料の組成と同じであることが確認された。
【実施例3】
【0045】
これまでに以下の金属ガラス材料に対して、本発明における
図2の手法を用いてナノワイヤ作製の実施に成功している。
(1)Pd基金属ガラス
Pd
40Cu
30Ni
10P
20の金属ガラス合金組成において、以下の条件にて処理し、以下の形状
のナノワイヤが得られた(
図1)。
金属ガラスリボン形状:断面0.03×0.8 mm
2、長さ約3 cm
荷重:152 mN
雰囲気:1.2×10
-8 Torr以下の真空
フィラメントへの電力量:0.145 W
フィラメント温度(放射温度計により測定):450〜550℃
金属ガラスナノワイヤ
直径:最小で40 nm
長さ:最長で1.3 cm
【0046】
(2)Fe基金属ガラス
Fe
76(Si
0.3B
0.5P
0.2)
24の金属ガラス合金組成において、以下の条件にて処理し、以下
の形状のナノワイヤが得られた。
金属ガラスリボン形状:断面0.03×0.8 mm
2、長さ約3 cm
荷重:131 mN
雰囲気:5.4×10
-8 Torr以下の真空
フィラメントへの電力量:0.364 W
フィラメント温度(放射温度計により測定):725〜775℃
金属ガラスナノワイヤ
直径:最小で70 nm
長さ:最長で100マイクロメータ
【0047】
(3)Au基金属ガラス
Au
49Ag
5.5Pd
2.3Cu
26.9Si1
6.3の金属ガラス合金組成において、以下の条件にて処理し、以下の形状のナノワイヤが得られた。
金属ガラスリボン形状:断面0.03×0.8 mm
2、長さ約3 cm
荷重:243 mN
雰囲気:5.2×10
-8 Torr以下の真空
フィラメントへの電力量:0.066 W
フィラメント温度(放射温度計により測定):約300℃
金属ガラスナノワイヤ
直径:最小で100 nm
長さ:最長で250マイクロメータ
【0048】
これらの金属ガラスナノワイヤは、SEMで観察したところ、上記サイズであり、一様な
形態的特徴を示すものであり、そのナノワイヤの末端部には如何なる触媒クラスターも現れていなかった。また、エネルギー分散型X線分光分析装置で分析した結果、出発試料の組成と同じであることが確認された。
実施例においてはサイズが幅0.8〜1mm、厚さ20〜50μm、長さ3cmのリボン状試料を用
いたが、これは実験を簡便に実行するためのサイズである。
Pd基金属ガラスを用いると、
図1に示すような長さ1cm以上の金属ガラスナノワイヤ
が得られた。
【0049】
フィラメントの温度は試料接触前に放射温度計(放射率0.35)用いて測定を行い、加熱温度が500〜700℃になるように調整された。加熱されたフィラメントが試料に接触し、粘性流動による加工が行われる。その際、ガラス転移温度以上に急加熱されるが、加工の始まるガラス転移温度は素材合金組成によって異なる。例えば、Pd基金属ガラスで代表的なPd
40Cu
30Ni
10P
20のガラス転移温度は561 K 〔N. Nishiyama, A. Inoue, and J.Z. Jiang,
Appl. Phys. Lett. 78, 1985 (2001)〕であり、Zr基金属ガラスで代表的なZr
65Al
10Ni
10Cu
15では652 K 〔Y. Kawamura, T. Shibata, and A. Inoue, Appl. Phys. Lett. 71, 779
(1997)〕である。
【0050】
ナノワイヤ表面酸化防止と熱フィラメント維持のため、作製チャンバー雰囲気は10
-8Torr以下の真空が望ましい。リボン試料下端には17〜243 mNの範囲の応力を印加したが、ナノワイヤ生成における応力依存性は確認できなかった。したがって、リボン状試料がフィラメントに対して垂直接触を可能とするような配置を与える程度の応力で構わない。