【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、蒸気使用設備の監視システムに係り、その特徴は、
所定の目的で蒸気を消費する蒸気使用機器からなる蒸気使用設備の監視システムであって、
前記蒸気使用機器に付属する蒸気配管に設けられた蒸気トラップの
温度又は振動を検出するトラップ状態検出器と、
前記トラップ状態検出器からの検出信号が入力される信号入力部と、前記入力された検出信号の1つ又は検出信号のうちの予め設定された特定の組み合わせから前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する稼働状況推定部とを備える稼働状況推定手段とから構成される点にある。
【0007】
発明者は知見により、蒸気使用機器からなる蒸気使用設備の監視において、蒸気使用機器の稼働状況を推定するのに、新たに蒸気制御器の状態を監視することで、従来にない観点から蒸気使用機器の稼働状況を推定し得ることを見出した。
【0008】
例えば、蒸気使用機器を出入りする蒸気の状態を制御する蒸気制御器(例えば、蒸気中の凝縮水などのドレンを回収する蒸気トラップ、蒸気配管における蒸気の流れる方向や流量を制御するバルブ、蒸気中の異物を取り除くストレーナなど)に異常が生じた場合、蒸気使用機器を出入りする蒸気が蒸気使用機器の運転に不適切な状態となって(例えば、蒸気配管中にドレンが多量に含まれることとなって蒸気使用機器に大きな負荷がかかる、予定以上の蒸気が蒸気使用機器に導入されるなど)、その結果、蒸気使用機器に不具合が生じる虞が高くなる。また、蒸気制御器と異なる蒸気使用機器の周辺機器に異常が生じた場合でも、その異常に伴い蒸気使用機器に不具合が生じる前に、蒸気制御器に何らかの異常が現れる。従来は、蒸気使用機器に不具合が生じた段階になって、蒸気使用機器の稼働状況の異常が検出されていたが、新たに蒸気制御器の状態を監視すれば、蒸気使用機器に不具合が生じる前の段階である蒸気制御器に異常が生じる段階で、蒸気使用機器の稼働状況の異常を事前に察知することが可能となる。
【0009】
また、蒸気制御器の異常そのものだけでなく、蒸気制御器個々の状態又は複数の蒸気制御器の状態を組み合わせた判定を行うことで、蒸気使用機器に出入りする蒸気が適切なものであるか(その温度やドレンの量など)や、蒸気使用機器を蒸気が適切に通過しているかの判定も可能となって、蒸気使用機器を稼働させても問題ないか、このまま稼働させていても不具合が生じる虞がないかなど、将来の異常発生の可能性といった観点から蒸気使用機器の稼働状況の適否を推定することが可能となる。
【0010】
つまり、上記構成によれば、
トラップ状態検出器により蒸気制御器
のうち蒸気トラップの状態を検出し、稼働状況推定手段において
トラップ状態検出器により検出した検出信号の1つ又は検出信号のうちの予め設定された特定の組み合わせから前記蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、蒸気使用機器を稼働させても問題ないか、このまま稼働させていても不具合が生じる虞がないかなどの判断が可能となって、将来の異常発生の可能性を含めて蒸気使用機器の稼働状況の適否を的確に推定でき、また、蒸気使用機器に不具合が生じる前の段階である蒸気制御器の異常に基づいて蒸気使用機器の異常の兆候を早期に察知することができる。
【0011】
そして、蒸気使用機器の稼働状況の適否を的確に推定できて、蒸気使用機器の異常の兆候を早期に察知することができるから、蒸気使用設備の一部又は全体の運転の停止が必要となる前にその異常に早急に対処することが可能となり、これにより、運転停止による損失を効果的に低減できる。また、異常に早期に対処することにより、対処までの間に発生する異常に伴う運転上の損失を効果的に低減できるとともに、蒸気使用機器等の異常に伴う蒸気使用設備へのダメージも効果的に低減できる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気配管に設けられたバルブ又はストレーナの状態を検出する制御状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記制御状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記制御状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0013】
つまり、上記構成によれば、
蒸気配管に設けられたバルブ又はストレーナを蒸気制御器として第1特徴構成の監視システムに適用することで、
バルブ又はストレーナから検出される検出信号に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定することができるから、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定でき、また、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気配管における蒸気状態を検出する蒸気状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記蒸気状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0015】
つまり、上記構成によれば、蒸気状態検出器により蒸気配管における蒸気状態(圧力や流量など)を検出し、稼働状況推定手段において蒸気状態検出器により検出した検出信号も含めて蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、蒸気使用機器を出入りする蒸気の圧力や流量などを含めた蒸気使用機器の稼働に関連するより多くの情報に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定することができて、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0016】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気使用機器に付属するサブ機器の状態を検出するサブ機器状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記サブ機器状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記サブ機器状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0017】
つまり、上記構成によれば、蒸気使用機器に付属するサブ機器(蒸気使用機器の稼働に関連して動作する機器、蒸気使用機器の稼働を補助する機器など)の状態をサブ機器状態検出器により検出し、稼働状況推定手段においてサブ機器状態検出器により検出した検出信号も含めて蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、サブ機器の状態を含めた蒸気使用機器の稼働に関連するより多くの情報に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定することができて、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0018】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気使用機器の状態を検出する機器状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記機器状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記機器状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0019】
つまり、上記構成によれば、蒸気使用機器の状態を機器状態検出器により検出し、稼働状況推定手段において機器状態検出器により検出した検出信号も含めて蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、蒸気使用機器の状態自体を含めた蒸気使用機器の稼働に関連するより多くの情報に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定することができて、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0020】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定手段は、経時的に入力された前記検出信号を格納する記憶部を備え、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する際に、特定の前記検出信号の経過を利用する点にある。
【0021】
つまり、上記構成によれば、検出信号の経過を利用して蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、前記定常状態にある検出信号の値が異常値を示す、検出信号の値が一定時間を超えて異常値を示す、変化する検出信号の値の傾きが変化する、検出信号の変化パターンが蒸気使用機器の通常稼働時と異なった変化パターンを示すなど、様々な観点での蒸気使用機器の稼働状況の推定が可能となって、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0022】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働時を起点とする前記
トラップ状態検出器の検出結果の変化に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0023】
つまり、上記構成によれば、蒸気使用機器の稼働時を起点とする
トラップ状態検出器の検出結果の変化から、蒸気使用機器に蒸気が問題なく供給されたことを確認するなど、稼働時に着目した蒸気使用機器の稼働状況の推定が可能となって、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0024】
本発明の第8特徴構成は、第1〜第7特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定手段は、前記稼働状況推定部において前記蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知した場合に、所定の警報を行う警報部を備える点にある。
【0025】
つまり、上記構成によれば、察知した異常を早急に蒸気使用設備の管理者などに知らせて、確実にその異常に早急に対処することが可能となり、上記した運転停止による損失、対処までの間の異常に伴う運転上の損失、蒸気使用機器等の異常に伴う蒸気使用設備へのダメージを一層効果的に低減できる。
【0026】
本発明の第9特徴構成は、第1〜第8特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知した場合に、前記入力された検出信号の1つ又は検出信号のうちの予め設定された特定の組み合わせから異常の原因を推定する点にある。
【0027】
つまり、上記構成によれば、稼働状況推定部が異常の原因を推定するから、異常が察知されてから蒸気使用設備の管理者がその異常の原因を推定する手間を省くことができ、これにより、その異常に一層早急に対処することが可能となり、上記した運転停止による損失、対処までの間の異常に伴う運転上の損失、蒸気使用機器等の異常に伴う蒸気使用設備へのダメージを一層効果的に低減できる。
【0028】
本発明の第10特徴構成は、第9特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定部は、前記異常の原因に基づいて異常に対する対処情報を生成する点にある。
【0029】
つまり、上記構成によれば、稼働状況推定部が異常に対する対処情報を推定するから、異常が察知されてから蒸気使用設備の管理者が異常に対する対処情報を推定する手間を省くことができ、これにより、その異常に一層早急に対処することが可能となり、上記した運転停止による損失、対処までの間の異常に伴う運転上の損失、蒸気使用機器等の異常に伴う蒸気使用設備へのダメージを一層効果的に低減できる
。
本発明の第
11特徴構成は、第1〜第
10特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定部は、前記トラップ状態検出器からの検出信号により前記蒸気トラップの詰まり又は温度変化を検出して、前記蒸気トラップの詰まり又は温度変化から前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する構成にしてある点にある。
本発明の第
12特徴構成は、第1〜第
11特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気使用機器は、蒸気を消費することによりドレンが生じるものであり、
前記蒸気トラップは、前記蒸気使用機器で生じたドレンが排出される出口管に設けてあり、前記蒸気使用機器で生じたドレンを排出するものである点にある。