特許第5751731号(P5751731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5751731
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】蒸気使用設備の監視システム
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20150702BHJP
   F01D 25/32 20060101ALI20150702BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20150702BHJP
   F16T 1/48 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   F01D25/00 W
   F01D25/00 V
   F01D25/00 P
   F01D25/32 C
   F01D25/32 A
   G05B23/02 T
   G05B23/02 302T
   F16T1/48 C
   F16T1/48 D
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-107079(P2014-107079)
(22)【出願日】2014年5月23日
【審査請求日】2014年6月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】土岩 仙明
(72)【発明者】
【氏名】白石 知行
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−52412(JP,A)
【文献】 特開2010−204801(JP,A)
【文献】 特開2011−145846(JP,A)
【文献】 特開2011−70635(JP,A)
【文献】 特開2011−59790(JP,A)
【文献】 特開2011−208799(JP,A)
【文献】 特開2011−60269(JP,A)
【文献】 特開2011−196997(JP,A)
【文献】 特開2011−141188(JP,A)
【文献】 特開昭63−105204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F01D 25/32
F16T 1/48
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の目的で蒸気を消費する蒸気使用機器からなる蒸気使用設備の監視システムであって、
前記蒸気使用機器に付属する蒸気配管に設けられた蒸気トラップの温度又は振動を検出するトラップ状態検出器と、
前記トラップ状態検出器からの検出信号が入力される信号入力部と、前記入力された検出信号の1つ又は検出信号のうちの予め設定された特定の組み合わせから前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する稼働状況推定部とを備える稼働状況推定手段とから構成される監視システム。
【請求項2】
前記蒸気配管に設けられたバルブ又はストレーナの状態を検出する制御状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記制御状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記制御状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記蒸気配管における蒸気状態を検出する蒸気状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記蒸気状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する請求項1又は2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記蒸気使用機器に付属するサブ機器の状態を検出するサブ機器状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記サブ機器状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記サブ機器状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項5】
前記蒸気使用機器の状態を検出する機器状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記機器状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記機器状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項6】
前記稼働状況推定手段は、経時的に入力された前記検出信号を格納する記憶部を備え、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する際に、特定の前記検出信号の経過を利用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項7】
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働時を起点とする前記トラップ状態検出器の検出結果の変化に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する請求項1〜6のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項8】
前記稼働状況推定手段は、前記稼働状況推定部において前記蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知した場合に、所定の警報を行う警報部を備える請求項1〜7のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項9】
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知した場合に、前記入力された検出信号の1つ又は検出信号のうちの予め設定された特定の組み合わせから異常の原因を推定する請求項1〜8のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項10】
前記稼働状況推定部は、前記異常の原因に基づいて異常に対する対処情報を生成する請求項9に記載の監視システム。
【請求項11】
前記稼働状況推定部は、前記トラップ状態検出器からの検出信号により前記蒸気トラップの詰まり又は温度変化を検出して、前記蒸気トラップの詰まり又は温度変化から前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する構成にしてある請求項1〜10のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項12】
前記蒸気使用機器は、蒸気を消費することによりドレンが生じるものであり、
前記蒸気トラップは、前記蒸気使用機器で生じたドレンが排出される出口管に設けてあり、前記蒸気使用機器で生じたドレンを排出するものである請求項1〜11のいずれか1項に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気使用機器からなる蒸気使用設備の監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気使用機器からなる蒸気使用設備において、蒸気使用機器が故障した場合には、その蒸気使用機器の修理や交換、さらに、その修理や交換に伴う蒸気使用設備の運転の停止が必要となり、これにより修理費や交換費がかかるとともに、本来蒸気使用設備の運転により得られていた利益を失うこととなって、極めて大きな損失が生じる。
【0003】
従来、これに対し、蒸気使用機器の状態(例えば蒸気タービンの場合は回転数など)や蒸気使用機器を出入りする蒸気の圧力や流量などの蒸気状態をオンラインで監視し、これらの変化から蒸気使用機器が故障に至る前に蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知して、蒸気使用機器が故障まで至ることを防止していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の方法から察知される異常は、蒸気使用機器に何らかの不具合が起こっていることに基づく異常であり、蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知して、蒸気使用機器の故障を未然に防止できたとしても、蒸気使用機器について何らかの不具合は生じてしまっている。その結果、不具合の点検・対処のために一部又は全体の運転を停止しなければならず、運転停止による損失は避けられない問題があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、蒸気使用機器の稼働状況の適否を的確に推定できて、蒸気使用機器の異常の兆候を早期に察知することができる蒸気使用設備の監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、蒸気使用設備の監視システムに係り、その特徴は、
所定の目的で蒸気を消費する蒸気使用機器からなる蒸気使用設備の監視システムであって、
前記蒸気使用機器に付属する蒸気配管に設けられた蒸気トラップの温度又は振動を検出するトラップ状態検出器と、
前記トラップ状態検出器からの検出信号が入力される信号入力部と、前記入力された検出信号の1つ又は検出信号のうちの予め設定された特定の組み合わせから前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する稼働状況推定部とを備える稼働状況推定手段とから構成される点にある。
【0007】
発明者は知見により、蒸気使用機器からなる蒸気使用設備の監視において、蒸気使用機器の稼働状況を推定するのに、新たに蒸気制御器の状態を監視することで、従来にない観点から蒸気使用機器の稼働状況を推定し得ることを見出した。
【0008】
例えば、蒸気使用機器を出入りする蒸気の状態を制御する蒸気制御器(例えば、蒸気中の凝縮水などのドレンを回収する蒸気トラップ、蒸気配管における蒸気の流れる方向や流量を制御するバルブ、蒸気中の異物を取り除くストレーナなど)に異常が生じた場合、蒸気使用機器を出入りする蒸気が蒸気使用機器の運転に不適切な状態となって(例えば、蒸気配管中にドレンが多量に含まれることとなって蒸気使用機器に大きな負荷がかかる、予定以上の蒸気が蒸気使用機器に導入されるなど)、その結果、蒸気使用機器に不具合が生じる虞が高くなる。また、蒸気制御器と異なる蒸気使用機器の周辺機器に異常が生じた場合でも、その異常に伴い蒸気使用機器に不具合が生じる前に、蒸気制御器に何らかの異常が現れる。従来は、蒸気使用機器に不具合が生じた段階になって、蒸気使用機器の稼働状況の異常が検出されていたが、新たに蒸気制御器の状態を監視すれば、蒸気使用機器に不具合が生じる前の段階である蒸気制御器に異常が生じる段階で、蒸気使用機器の稼働状況の異常を事前に察知することが可能となる。
【0009】
また、蒸気制御器の異常そのものだけでなく、蒸気制御器個々の状態又は複数の蒸気制御器の状態を組み合わせた判定を行うことで、蒸気使用機器に出入りする蒸気が適切なものであるか(その温度やドレンの量など)や、蒸気使用機器を蒸気が適切に通過しているかの判定も可能となって、蒸気使用機器を稼働させても問題ないか、このまま稼働させていても不具合が生じる虞がないかなど、将来の異常発生の可能性といった観点から蒸気使用機器の稼働状況の適否を推定することが可能となる。
【0010】
つまり、上記構成によれば、トラップ状態検出器により蒸気制御器のうち蒸気トラップの状態を検出し、稼働状況推定手段においてトラップ状態検出器により検出した検出信号の1つ又は検出信号のうちの予め設定された特定の組み合わせから前記蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、蒸気使用機器を稼働させても問題ないか、このまま稼働させていても不具合が生じる虞がないかなどの判断が可能となって、将来の異常発生の可能性を含めて蒸気使用機器の稼働状況の適否を的確に推定でき、また、蒸気使用機器に不具合が生じる前の段階である蒸気制御器の異常に基づいて蒸気使用機器の異常の兆候を早期に察知することができる。
【0011】
そして、蒸気使用機器の稼働状況の適否を的確に推定できて、蒸気使用機器の異常の兆候を早期に察知することができるから、蒸気使用設備の一部又は全体の運転の停止が必要となる前にその異常に早急に対処することが可能となり、これにより、運転停止による損失を効果的に低減できる。また、異常に早期に対処することにより、対処までの間に発生する異常に伴う運転上の損失を効果的に低減できるとともに、蒸気使用機器等の異常に伴う蒸気使用設備へのダメージも効果的に低減できる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気配管に設けられたバルブ又はストレーナの状態を検出する制御状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記制御状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記制御状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0013】
つまり、上記構成によれば、蒸気配管に設けられたバルブ又はストレーナを蒸気制御器として第1特徴構成の監視システムに適用することで、バルブ又はストレーナから検出される検出信号に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定することができるから、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定でき、また、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気配管における蒸気状態を検出する蒸気状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記蒸気状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0015】
つまり、上記構成によれば、蒸気状態検出器により蒸気配管における蒸気状態(圧力や流量など)を検出し、稼働状況推定手段において蒸気状態検出器により検出した検出信号も含めて蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、蒸気使用機器を出入りする蒸気の圧力や流量などを含めた蒸気使用機器の稼働に関連するより多くの情報に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定することができて、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0016】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気使用機器に付属するサブ機器の状態を検出するサブ機器状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記サブ機器状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記サブ機器状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0017】
つまり、上記構成によれば、蒸気使用機器に付属するサブ機器(蒸気使用機器の稼働に関連して動作する機器、蒸気使用機器の稼働を補助する機器など)の状態をサブ機器状態検出器により検出し、稼働状況推定手段においてサブ機器状態検出器により検出した検出信号も含めて蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、サブ機器の状態を含めた蒸気使用機器の稼働に関連するより多くの情報に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定することができて、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0018】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気使用機器の状態を検出する機器状態検出器を備え、
前記信号入力部には、前記機器状態検出器からの検出信号も入力され、
前記稼働状況推定部は、前記機器状態検出器からの検出信号も含めた検出信号に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0019】
つまり、上記構成によれば、蒸気使用機器の状態を機器状態検出器により検出し、稼働状況推定手段において機器状態検出器により検出した検出信号も含めて蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、蒸気使用機器の状態自体を含めた蒸気使用機器の稼働に関連するより多くの情報に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定することができて、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0020】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定手段は、経時的に入力された前記検出信号を格納する記憶部を備え、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する際に、特定の前記検出信号の経過を利用する点にある。
【0021】
つまり、上記構成によれば、検出信号の経過を利用して蒸気使用機器の稼働状況を推定するから、前記定常状態にある検出信号の値が異常値を示す、検出信号の値が一定時間を超えて異常値を示す、変化する検出信号の値の傾きが変化する、検出信号の変化パターンが蒸気使用機器の通常稼働時と異なった変化パターンを示すなど、様々な観点での蒸気使用機器の稼働状況の推定が可能となって、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0022】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働時を起点とする前記トラップ状態検出器の検出結果の変化に基づいて前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する点にある。
【0023】
つまり、上記構成によれば、蒸気使用機器の稼働時を起点とするトラップ状態検出器の検出結果の変化から、蒸気使用機器に蒸気が問題なく供給されたことを確認するなど、稼働時に着目した蒸気使用機器の稼働状況の推定が可能となって、これにより、蒸気使用機器の稼働状況の適否を一層的確に推定することができるとともに、蒸気使用機器の異常の兆候の早期察知を一層的確なものにできる。
【0024】
本発明の第8特徴構成は、第1〜第7特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定手段は、前記稼働状況推定部において前記蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知した場合に、所定の警報を行う警報部を備える点にある。
【0025】
つまり、上記構成によれば、察知した異常を早急に蒸気使用設備の管理者などに知らせて、確実にその異常に早急に対処することが可能となり、上記した運転停止による損失、対処までの間の異常に伴う運転上の損失、蒸気使用機器等の異常に伴う蒸気使用設備へのダメージを一層効果的に低減できる。
【0026】
本発明の第9特徴構成は、第1〜第8特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定部は、前記蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知した場合に、前記入力された検出信号の1つ又は検出信号のうちの予め設定された特定の組み合わせから異常の原因を推定する点にある。
【0027】
つまり、上記構成によれば、稼働状況推定部が異常の原因を推定するから、異常が察知されてから蒸気使用設備の管理者がその異常の原因を推定する手間を省くことができ、これにより、その異常に一層早急に対処することが可能となり、上記した運転停止による損失、対処までの間の異常に伴う運転上の損失、蒸気使用機器等の異常に伴う蒸気使用設備へのダメージを一層効果的に低減できる。
【0028】
本発明の第10特徴構成は、第9特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定部は、前記異常の原因に基づいて異常に対する対処情報を生成する点にある。
【0029】
つまり、上記構成によれば、稼働状況推定部が異常に対する対処情報を推定するから、異常が察知されてから蒸気使用設備の管理者が異常に対する対処情報を推定する手間を省くことができ、これにより、その異常に一層早急に対処することが可能となり、上記した運転停止による損失、対処までの間の異常に伴う運転上の損失、蒸気使用機器等の異常に伴う蒸気使用設備へのダメージを一層効果的に低減できる
本発明の第11特徴構成は、第1〜第10特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記稼働状況推定部は、前記トラップ状態検出器からの検出信号により前記蒸気トラップの詰まり又は温度変化を検出して、前記蒸気トラップの詰まり又は温度変化から前記蒸気使用機器の稼働状況を推定する構成にしてある点にある。
本発明の第12特徴構成は、第1〜第11特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記蒸気使用機器は、蒸気を消費することによりドレンが生じるものであり、
前記蒸気トラップは、前記蒸気使用機器で生じたドレンが排出される出口管に設けてあり、前記蒸気使用機器で生じたドレンを排出するものである点にある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】蒸気使用機器の稼働状況の推定の概要図
図2】第1実施形態の説明図
図3】第2実施形態の説明図
図4】第3実施形態の説明図
図5】第3実施形態の説明図
図6】第4実施形態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る蒸気使用設備の監視システムMによる蒸気使用機器の稼働状況の推定の概要を図1に示す。図1は、蒸気制御器1(蒸気トラップやバルブ、ストレーナなど)を備える蒸気配管2とサブ機器3とが付属している蒸気使用機器4の稼働状況を推定する監視システムを示す。なお、サブ機器3は、例えば、蒸気使用機器の稼働に関連して動作する機器や、蒸気使用機器の稼働を補助する機器などで、具体的には、蒸気使用機器としての蒸気タービンと連結するコンプレッサーやポンプなどである。
【0032】
各蒸気制御器1には蒸気配管2に備えた蒸気制御器1の状態を検出する制御状態検出器D1が装備されている。蒸気配管2には蒸気配管2における蒸気状態を検出する蒸気状態検出器D2が装備されている。サブ機器3及び蒸気使用機器4にはサブ機器3及び蒸気使用機器4の状態を検出する機器状態検出器D3(サブ機器状態検出器を含む)が装備されている。
【0033】
監視システムMは、制御状態検出器D1、蒸気状態検出器D2、機器状態検出器D3、並びに、各状態検出器D1〜D3からの検出信号σiが入力される信号入力部S1と、入力された検出信号σiに基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定する稼働状況推定部S2と、経時的に入力された検出信号σiを記憶する記憶部S3と、稼働状況推定部S2での推定結果に応じて所定の警報を行う警報部S4とを備える稼働状況推定手段Sから構成される。
【0034】
この監視システムMでは、制御状態検出器D1からの検出信号σ1〜σ4、蒸気状態検出器D2からの検出信号σ5,σ6、及び、機器状態検出器D3からの検出信号σ7,σ8が信号入力部S1に入力される。そして、この監視システムでは、入力された検出信号σ1〜σ8の1つ又は検出信号σ1〜σ8のうちの予め設定された特定の組み合わせから稼働状況推定部S2が蒸気使用機器の稼働状況を推定する。例えば、図1に示すように、検出信号σ1,σ4を組み合わせたモニタリング項目M1、検出信号σ2に基づくモニタリング項目M2、検出信号σ3,σ7,σ8を組み合わせたモニタリング項目M3、検出信号σ5,σ6を組み合わせたモニタリング項目M4を検出信号σ1〜σ8から作成し、これらモニタリング項目M1〜M4に基づいて蒸気使用機器の稼働状況を推定する。蒸気使用機器の稼働状況の異常を察知した場合には、警報部S4により所定の警報を行うとともに、入力された検出信号σiの1つ又は検出信号σiのうちの予め設定された特定の組み合わせから異常の原因を推定し、その異常の原因に基づいて異常に対する対処情報を生成する。
【0035】
稼働状況推定部S2における異常の原因の推定や対処情報の推定は、例えば、記憶部S3に予めモニタリング項目と異常の原因との対応表や異常の原因とその対処方法との対応表などを記憶しておき、これら対応表を参照することにより行えばよい。
【0036】
また、稼働状況推定部S2での蒸気使用機器の稼働状況の推定において、必要に応じて、記憶部S3に記憶された検出信号σiから特定の検出信号σiの経過を利用したり、蒸気使用機器4の稼働時を起点とする制御状態検出器D1の検出結果の変化を利用してもよい。
【0037】
警報部S4における警報は、アラームを報知して蒸気使用設備の管理者に蒸気使用機器の稼働状況の異常が察知されたことを示す、図示しない出力手段により蒸気使用機器の稼働状況の異常が察知されたことやその異常の原因・対処情報を出力する、又は、蒸気使用設備の管理者や管理業者のコンピュータや携帯電話などの通信端末に蒸気使用機器の稼働状況の異常が察知されたことやその異常の原因・対処情報などを送信するなどにより行う。
【0038】
本発明に係る上記監視システムMでは、蒸気使用機器4の稼働状況を推定するのに、蒸気使用機器4を出入りする蒸気の状態を制御する蒸気制御器1の状態を用いることで、蒸気使用機器4に出入りする蒸気が適切なものであるか(その温度やドレンの量など)や、蒸気使用機器4を蒸気が適切に通過しているかを推定することができ、これにより、蒸気使用機器4を稼働させても問題ないか、このまま稼働させていても不具合が生じる虞がないかなどの判断が可能となって、蒸気使用機器4の稼働状況の適否を的確に推定できる。また、蒸気使用機器4に不具合が生じる前の段階として生じる蒸気制御器1の異常を察知することができるため、蒸気使用機器4の異常の兆候を早期に察知することができる。
【0039】
次に、本発明に係る蒸気使用設備の監視システムによる蒸気使用機器の稼働状況の推定について、以下の第1〜第4実施形態を例に説明する。
【0040】
〈第1実施形態〉
図2は蒸気使用機器としての第1蒸気タービン10まわりの構成図である。この第1蒸気タービン10はコンプレッサー11による液体燃料Lの生成に用いられる。
【0041】
第1蒸気タービン10はサブ機器としてのコンプレッサー11と連結してあり、蒸気配管12から第1蒸気タービン10に蒸気Stが供給されることによりコンプレッサー11は駆動する。このコンプレッサー11の駆動によりガス管13からコンプレッサー11に供給される燃料ガスFが所望の液体燃料Lに圧縮生成される。そして、生成された液体燃料Lは液体燃料管14を通じて排出される。蒸気入口管12から第1蒸気タービン10に供給された蒸気Stは蒸気出口管15を通じて排出される。また、第1蒸気タービン10に供給される蒸気Stの量は蒸気制御器としての調節バルブ16により調節可能に構成されている。
【0042】
第1蒸気タービン10及びコンプレッサー11は、蒸気使用機器としての第2蒸気タービン17と連結されたタービンポンプ18及びモーター19により駆動するモータポンプ20と潤滑油管21を介して接続されている。第2蒸気タービン17に蒸気入口管22から蒸気Stが供給されることによりタービンポンプ18は駆動する。蒸気入口管22から第2蒸気タービン17に供給された蒸気Stは蒸気出口管23を通じて排出される。これらタービンポンプ18及びモータポンプ20の駆動により、第1蒸気タービン10及びコンプレッサー11に潤滑油Oが供給される。潤滑油Oが安定的に供給されることにより、第1蒸気タービン10及びコンプレッサー11は円滑に駆動する。
【0043】
また、基本的には、第1蒸気タービン10及びコンプレッサー11への潤滑油Oの供給はモータポンプ20が行い、潤滑油Oの供給圧力が設定値以下になった場合に、タービンポンプ18による潤滑油Oの供給も行う。このため、潤滑油Oの供給圧力が設定値以下になった場合に、蒸気制御器としての調節バルブ24の調節によりタービンポンプ18に所定の運転をさせるのに必要な量の蒸気Stが第2蒸気タービン17に供給される。なお、潤滑油Oの供給をモータポンプ20でのみ行う場合でも、調節バルブ24の調節により暖気のためのスローロール運転を行う程度の蒸気Stが第2蒸気タービン17に供給される。
【0044】
なお、この第1実施形態では、蒸気入口管12,22と蒸気出口管15,23が図1における蒸気配管2に相当し、コンプレッサー11、ガス管13、液体燃料管14、タービンポンプ18、モーター19、モータポンプ20、潤滑油管21が図1におけるサブ機器3に相当する。
【0045】
第1蒸気タービン10の蒸気入口管12及び蒸気出口管15には蒸気状態検出器D2としての圧力計25,26が装備されており、各場所を流れる蒸気Stの圧力が検出される。さらに、第1蒸気タービン1の蒸気入口管12には蒸気状態検出器D2としての流量計27が装備されており、そこを流れる蒸気Stの流量が検出される。コンプレッサー11のガス管13及び液体燃料管14、並びに、潤滑油管21には機器状態検出器D3としての圧力計28〜31が装備され、各場所を流れる燃料ガスF、液体燃料L、潤滑油Oの圧力が検出される。さらに、コンプレッサー11の液体燃料管14には機器状態検出器D3(サブ機器状態検出器)としての流量計32が装備されており、液体燃料Lの流量が検出される。また、第1蒸気タービン10と接続された機器状態検出器D3(サブ機器状態検出器)としての回転数計33により第1蒸気タービン10の回転数が検出される。また、モータポンプ20には機器状態検出器D3(サブ機器状態検出器)としての温度振動センサ34が装備されており、モータポンプ20の温度や振動が検出される。そしてこれら検出器25〜34で検出された各種情報は稼働状況推定手段Sに送信される。
【0046】
第1蒸気タービン10の蒸気入口管12及び蒸気出口管15、第2蒸気タービン17の蒸気入口管22及び蒸気出口管23、並びに、第2蒸気タービン17には蒸気制御器としての蒸気トラップT1〜T6が配備されている。そして、蒸気トラップT1〜T6には、状態情報(温度、振動など)を検出するための制御状態検出器D1(トラップ状態検出器)がそれぞれ装備されている。この制御状態検出器D1で検出した各蒸気トラップT1〜T6の状態情報は稼働状況推定手段Sに送信される。
【0047】
監視システムMでは、制御状態検出器D1や検出器25〜34から送信される検出信号は稼働状況推定手段Sの信号入力部S1に入力され、入力された検出信号に基づいて稼働状況推定部S2において蒸気使用機器としての第1及び第2蒸気タービン10,17の稼働状況の推定が行われる。
【0048】
第1及び第2蒸気タービン10,17の稼働状況の推定におけるモニタリング項目として次のようなものがある。
(1)蒸気入口管12の圧力計25及び流量計27、蒸気出口管15の圧力計26、ガス管13の圧力計28、液体燃料管14の圧力計29及び流量計32、第1蒸気タービン10の回転数計33からの検出信号に基づいて第1蒸気タービン10及びコンプレッサー2の動作を確認する
(2)潤滑油管21の圧力計30からの検出信号に基づいてモータポンプ20の動作を確認する
(3)タービンポンプ18の稼働時における潤滑油管21の圧力計31からの検出信号に基づいてタービンポンプ18の動作を確認する
(4)モーター19の温度振動センサ34からの検出信号に基づいてモーター19の動作を確認する
【0049】
さらに、この監視システムMでは、制御状態検出器D1からの検出信号に基づいて、次のような項目を監視する。
(5)第1蒸気タービン10のスタンバイ時において、蒸気トラップT1及びT2のドレン滞留の有無を確認して、第1蒸気タービン10が即稼働可能状態にあるか(例えば、ウォーターハンマーが発生する危険性)を確認する
(6)第1蒸気タービン10の稼働中において、蒸気トラップT1及びT2のドレン滞留の有無を確認して、第1蒸気タービンに供給される蒸気におけるドレン混入の危険性を確認する
(7)第1蒸気タービン10の稼働時において、蒸気トラップT1及びT2の温度が適切に変化するかを確認して、第1蒸気タービン10に蒸気が問題なく供給されたことを確認する
(8)第2蒸気タービン17のスタンバイ時において、蒸気トラップT3〜T6のドレン滞留の有無を確認して、第2蒸気タービン17が即稼働可能状態にあるか(例えば、ウォーターハンマーが発生する危険性)を確認する
(9)第2蒸気タービン17の稼働中において、蒸気トラップT3〜T6のドレン滞留の有無を確認して、第2蒸気タービン17に供給される蒸気におけるドレン混入の危険性を確認する
(10)第2蒸気タービン17の稼働時において、蒸気トラップT3〜T6の温度が適切に変化するかを確認して、第2蒸気タービン17に蒸気が問題なく供給されたことを確認する
(11)液体燃料管14の流量計32からの検出信号から液体燃料Lの流量の低下が検出された場合において、蒸気状態検出器D2としての蒸気入口管12及び蒸気出口管15の圧力計25,26における第1蒸気タービン10に対する蒸気の入出圧力、制御状態検出器D1からの蒸気トラップT1及びT2の温度に基づく蒸気の温度、並びに、機器状態検出器D3としての第1蒸気タービン10の回転数計33における第1蒸気タービン10の回転数から第1蒸気タービン10のタービン効率を算出し、タービン効率に基づいて液体燃料Lの流量低下の原因が蒸気側とガス側とのいずれにあるかを判断する
【0050】
この監視システムMでは、以上のような(1)〜(11)のモニタリング項目を総合的に判断して、蒸気使用機器としての第1及び第2蒸気タービン10,17の稼働状況の推定が行われる。特に、この監視システムMでは、第1及び第2蒸気タービン10,17の稼働状況の推定に、制御状態検出器D1からの検出信号も用いているため、従来にない上記(5)〜(11)のモニタリング項目のような蒸気使用機器が即稼働可能状態にあるかの確認、供給蒸気のドレン混入の危険性の確認、蒸気使用機器の稼働時の蒸気の流れの確認、異常の原因の推定などが可能となっている。
【0051】
〈第2実施形態〉
図3は蒸気使用機器Usとしての蒸気タービン40まわりの構成図を示す。この蒸気タービン40は蒸気使用設備における廃熱ボイラー(図示しない)への蒸気発生用の水の供給に用いられる。
【0052】
蒸気タービン40まわりは、蒸気タービン40と連結されたタービンポンプ41、モーター42により駆動するモータポンプ43により構成される。タービンポンプ41はメイン配管44と連通する蒸気入口管45から蒸気タービン40に蒸気Stが供給されることにより駆動する。これらタービンポンプ41及びモータポンプ43の駆動により、給水管47を通じて廃熱ボイラーへ蒸気発生用の水Wが供給される。蒸気入口管45から蒸気タービン40に供給された蒸気Stは蒸気出口管46を通じて排出される。蒸気タービン40に供給される蒸気Stの量は蒸気制御器としての調節バルブ48により調節可能に構成されている。
【0053】
基本的には、廃熱ボイラーの蒸気発生用の水Wの供給はモータポンプ43が行い、水Wの供給圧力が設定値以下になった場合にタービンポンプ41による水Wの供給も行われる。このため、水Wの供給圧力が設定値以下になった場合にのみ、調節バルブ48の調節によりタービンポンプ41に所定の運転をさせるのに必要な量の蒸気Stが蒸気タービン40に供給される。水Wの供給をモータポンプ43でのみ行う場合は、蒸気入口管45からの蒸気Stの供給は行われない。なお、蒸気出口管46の蒸気Stにより蒸気タービン40が暖気される。
【0054】
タービンポンプ41、並びに、タービンポンプ41の入口側の給水管47a及び出口側の給水管47bには、蒸気Stを通過させて設置箇所と蒸気Stとを熱交換させるトレース配管49がそれぞれ設けられている。そして、このトレース配管49への蒸気Stの供給と供給蒸気Stの遮断を適宜繰り返すことにより、又は通過させる蒸気量や蒸気Stの温度を変化させることにより、そこを流れる水Wの温度が適温に保たれる。供給蒸気Stから変化し、トレース配管49に滞留した復水や凝縮水などのドレンは、各トレース配管49に装備された蒸気トラップT11〜T13により排出される。
【0055】
なお、この第2実施形態では、蒸気入口管45、蒸気出口管46が図1における蒸気配管2に相当し、タービンポンプ41、モーター42、モータポンプ43、給水管47が図1におけるサブ機器3に相当する。トレース配管49は図1における蒸気配管2と蒸気使用機器4を兼ねる。
【0056】
メイン配管44には蒸気状態検出器D2としての圧力計50及び流量計51が装備されており、圧力計50及び流量計51によりメイン配管44から蒸気入口管45に供給される蒸気Stの圧力及び流量が検出される。給水管47には機器状態検出器D3(サブ機器状態検出器)としての圧力計52が装備されており、圧力計52により廃熱ボイラーへ供給される蒸気発生用の水Wの吐出圧力が検出される。蒸気タービン40には機器状態検出器D3としての回転数計53が装備されており、回転数計53により蒸気タービン40の回転数が検出される。モーター42には機器状態検出器D3(サブ機器状態検出器)としての電流計54が装備されており、電流計54によりモーター42の電流値が検出される。また、モーター42には機器状態検出器D3(サブ機器状態検出器)としての温度振動センサ55が装備されており、モーター42の温度や振動が検出される。これら検出器50〜55で検出された各種情報は稼働状況推定手段Sに送信される。
【0057】
トレース配管49に加え、メイン配管44、並びに、蒸気タービン40の蒸気入口管45及び蒸気出口管46にも蒸気トラップT(T7〜T10)は配備されている。そして、各蒸気トラップT(T7〜T13)には、状態情報(温度、振動など)を検出するための制御状態検出器D1(トラップ状態検出器)が装備されている。この制御状態検出器D1で検出した各蒸気トラップTの状態情報は稼働状況推定手段Sに送信される。
【0058】
監視システムMでは、制御状態検出器D1や検出器50〜55から送信される検出信号が稼働状況推定手段Sの信号入力部S1に入力され、入力された検出信号に基づいて稼働状況推定部S2において蒸気使用機器としての蒸気タービン40の稼働状況の推定が行われる。
【0059】
蒸気タービン40の稼働状況の推定におけるモニタリング項目として次のようなものがある。
(イ)メイン配管の圧力計50及び流量計51、蒸気タービン40の回転数計53からの検出信号に基づいて蒸気タービン40の動作を確認する
(ロ)給水管47の圧力計52、モーター42の電流計54及び温度振動センサ55からの検出信号に基づいてモーター42及びモータポンプ43の動作を確認する
【0060】
さらに、この監視システムMでは、制御状態検出器D1からの検出信号に基づいて、次のような項目を監視する。
(ハ)蒸気タービン40のスタンバイ時において、蒸気トラップT7〜T10のドレン滞留の有無を確認して、蒸気タービン40が即稼働可能状態にあるか(例えば、ウォーターハンマーが発生する危険性)を確認する
(ニ)蒸気タービン40の稼働中において、蒸気トラップT7〜T10のドレン滞留の有無を確認して、蒸気タービン40に供給される蒸気におけるドレン混入の危険性を確認する
(ホ)蒸気タービン40の稼働時において、蒸気トラップT9の温度が適切に変化するかを確認して、蒸気タービン40に蒸気が問題なく供給されたことを確認する
(へ)蒸気トラップT11〜T13のドレン滞留の有無を確認して、トレース配管49の動作を確認して、冬季などにおける給水管47の凍結可能性を確認する
【0061】
この監視システムMでは、以上のような(イ)〜(へ)のモニタリング項目を総合的に判断して、蒸気使用機器としての蒸気タービン40の稼働状況の推定が行われる。特に、この監視システムMでは、蒸気タービン40の稼働状況の推定に、制御状態検出器D1からの検出信号も用いているため、従来にない上記(ハ)〜(へ)のモニタリング項目のような蒸気使用機器が即稼働可能状態にあるかの確認、供給蒸気のドレン混入の危険性の確認、蒸気使用機器の稼働時の蒸気の流れの確認、給水管47の凍結可能性の確認などが可能となっている。
【0062】
〈第3実施形態〉
図4は蒸気使用機器としての加熱装置60まわりの構成図を示す。この加熱装置60中を通る蒸気配管61,62に高温の蒸気が流れることにより、加熱装置60中の加熱対象物(図示しない)が加熱される。
【0063】
加熱装置60中を通る蒸気配管61の出口側61aには、それぞれ、上流側から順に、温度センサ63、上流側バルブ64、ストレーナ65、蒸気トラップT、下流側バルブ66が配備されている。ストレーナ65は、それぞれ、バルブ67を備える排出管68と接続してあり、ストレーナ65で回収された異物は排出管68を通じて排出される。そして、ストレーナ65と蒸気トラップTにはそれぞれ状態情報(温度、振動など)を検出するための制御状態検出器D1が装備されている。この制御状態検出器D1で検出した各蒸気トラップTの状態情報は稼働状況推定手段Sに送信される。なお、図示は省略するが、蒸気配管62の出口側も蒸気配管61の出口側61aと同様の構成となっている。また、各蒸気配管61,62にはこれらの他、図示しない圧力計や流量計が配備されている。
【0064】
監視システムMでは、ストレーナ65及び蒸気トラップTに装備した制御状態検出器D1、温度センサ63などから送信される検出信号が稼働状況推定手段Sの信号入力部S1に入力され、入力された検出信号に基づいて稼働状況推定部S2において蒸気使用機器としての加熱装置60の稼働状況の推定が行われる。
【0065】
加熱装置60では、加熱温度が一定に保たれるように蒸気量などの制御が行われているが、何らかの不具合により温度センサ63からの検出温度が許容範囲を超えて変化した場合は、警報が発せられ、安全及び点検のために加熱装置60の運転が停止する。
【0066】
これに対し、本発明に係る監視システムMでは、蒸気使用機器としての加熱装置60の稼働状況を推定するのに、ストレーナ65及び蒸気トラップTの状態を検出する制御状態検出器D1の検出信号を用いているため、温度センサ63で温度異常が検出される前にストレーナ65及び蒸気トラップTから加熱装置60の稼働状況の異常の兆候を早期に察知することができる。これにより、加熱装置60の運転が停止する前に異常に対処することが可能となる。
【0067】
例を挙げて説明すると、図5は蒸気トラップTが詰まった場合におけるストレーナ65及び蒸気トラップTに装備した制御状態検出器D1と温度センサ63とからの検出信号の経時変化を示す。図5において、taは蒸気トラップTが詰まった時点、tbは蒸気トラップTに変化が生じた時点、tcはストレーナ65に変化が生じた時点、tdは温度センサ63から低温の温度異常が察知される時点を示す。図5から明らかなように、温度センサ63における検出信号から温度異常が察知される前に、ストレーナ65及び蒸気トラップTにおける検出信号の変化から何らかの異常の兆候を察知できる。特に蒸気トラップTにおける検出信号は、蒸気トラップTが詰まってすぐに何らかの異常の兆候を察知できる。
【0068】
〈第4実施形態〉
図6は蒸気使用機器としての熱交換器70まわりの構成図を示す。この熱交換器70に入口管71から高温の蒸気を導入して、内部の熱交換部70aで熱交換を行う。そして、出口管72から熱交換後の蒸気、又は、熱交換により生じたドレンが熱交換器70から排出される。出口管72を流れるドレンは出口管72に設けた蒸気トラップTから排出される。蒸気トラップTには状態情報(温度、振動など)を検出するための制御状態検出器D1(トラップ状態検出器)が装備されている。この制御状態検出器D1で検出した蒸気トラップTの状態情報は稼働状況推定手段Sに送信される。また、熱交換器70には温度センサ73が装備されており、温度センサ73により検出された温度も稼働状況推定手段Sに送信される。
【0069】
監視システムMでは、制御状態検出器D1、温度センサ73から送信される検出信号が稼働状況推定手段Sの信号入力部S1に入力され、入力された検出信号に基づいて稼働状況推定部S2において蒸気使用機器としての熱交換器70の稼働状況の推定が行われる。
【0070】
熱交換器70において、例えば、蒸気トラップTに詰まりが生じた場合、出口管72を流れるドレンは蒸気トラップTから有効に排出されず、その結果として図6に示すように熱交換器70の内部に次第にドレンが溜まり、蒸気による熱交換部70aでの熱交換面積が減少して熱交換が阻害される。そして、ドレンが溜まり続けると最悪の場合熱交換器の破損につながる。
【0071】
このようなドレンの滞留が起こると、熱交換器70に温度異常が起こるため、温度センサ73により温度異常が検出されて、熱交換器70の破損の前にドレン滞留の不具合が生じていることが察知される。そして、温度異常が察知された場合、ドレン滞留を解消するために熱交換器70の運転が停止する必要が生じる。これは、温度センサ73により温度異常が検出されるのが、ドレン滞留の原因である蒸気トラップTの詰まりが生じた時点でなく、蒸気トラップTの詰まり後、一定時間が経過してドレンの滞留がある程度進行した後であるためである。
【0072】
これに対し、本発明に係る監視システムMでは、蒸気使用機器としての熱交換器70の稼働状況を推定するのに、蒸気トラップTの状態を検出する制御状態検出器D1の検出信号を用いているため、蒸気トラップTの詰まりが生じた時点で異常を察知することができて、蒸気使用機器の異常の兆候を早期に察知することができる。
【0073】
なお、本発明に係る蒸気使用設備の監視システムによる蒸気使用機器の稼働状況の推定の手段は、上記第1〜第4実施形態に示したものに限られず、対象の蒸気使用設備に応じて適宜決定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の蒸気使用設備の監視システムは各種分野における種々の蒸気使用設備の監視に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
M 監視システム
D1 制御状態検出器、トラップ状態検出器
D2 蒸気状態検出器
D3 機器状態検出器、サブ機器状態検出器
σi 検出信号
S 稼働状況推定手段
S1 信号入力部
S2 稼働状況推定部
S3 記憶部
S4 警報部
1 蒸気制御器
2 蒸気配管
3 サブ機器
4 蒸気使用機器
T 蒸気トラップ
【要約】
【課題】蒸気使用機器の稼働状況の適否を的確に推定して、蒸気使用機器の異常の兆候を早期に察知する。
【解決手段】蒸気使用機器4からなる蒸気使用設備の監視システムMであって、蒸気使用機器4に付属する蒸気配管2に設けられた蒸気制御器1の状態を検出する制御状態検出器D1と、制御状態検出器D1からの検出信号σiが入力される信号入力部S1と、入力された検出信号σiの1つ又は検出信号σiのうちの予め設定された特定の組み合わせから蒸気使用機器4の稼働状況を推定する稼働状況推定部S2とを備える稼働状況推定手段Sとから構成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6