(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮像条件設定部は、前記心室の大きさの変化を示す変化量が所定の閾値より小さくなる期間を検出し、検出した期間を前記心臓の動きが少ない時相として特定する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記撮像条件設定部は、前記心室の大きさの変化を示す変化量の最大値に所定の割合を乗じることによって当該最大値より小さい値を算出し、算出した値を前記閾値として用いる、請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記撮像条件設定部は、前記心室の大きさの変化を示す変化量が前記閾値より小さくなる期間を複数検出した場合には、検出した複数の期間のうち最も長い期間を前記心臓の動きが少ない時相として特定する、請求項4又は5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記撮像条件設定部は、前記心室の大きさの変化を示す変化量が前記閾値より小さくなる期間が一つも検出されなかった場合には、一つ以上の期間が検出されるまで、前記閾値を段階的に大きくしながら期間の検出を繰り返す、請求項4〜6のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【実施例1】
【0012】
最初に、実施例1に係るMRI装置に関する説明に先立ち、従来のMRI装置におけるデータ収集方法および従来の心臓MR検査の流れについて説明しておく。
【0013】
まず、従来のMRI装置におけるデータ収集方法について説明する。
図1は、従来のMRI装置におけるデータ収集方法を説明するための図である。
図1は、前記した非特許文献1に記載されているような、冠状動脈撮像に代表される心周期における特定の心時相のデータを収集するMRI装置の撮像法の一例を示している。
【0014】
図1の「心電波形」および「パルスシーケンス」に示すように、例えば、従来のMRI装置は、被険者(被検体)の心電波形よりR波を検出し、一定の遅延時間Tdが経過した後にデータ収集を開始することによって、心臓の動きの少ない時相、一般には、心室拡張期あるいは緩徐流入期と呼ばれる時相のデータのみを収集する。
【0015】
ここで、
図1の「左心室容積」は、心臓の動きに対応する物理量の一例として、左心室容積の一心周期内の変化を表している。この「左心室容積」に示すように、心室容積の平坦な部分は心臓の動きの少ない時相に対応しており、この時間にデータ収集を行うことによって、心臓の動きの影響による画質の低下を抑えることが可能になる。
【0016】
具体的には、このMRI装置は、
図1に示すように、心臓の動きが少なくなる開始時刻Tsから心臓が再び動き出す時刻Teまでの間、データ収集を行う。撮像時のパルスシーケンスは、R波を起点として時刻Tsにデータ収集を開始し、Twの期間にデータ収集を行い、時刻Teにデータ収集を終了するように組み立てられる。ここで、Tw=Te−Tsである。R波からの遅延時間TdはTsに設定され、一心拍内に収集可能なデータライン数Nはパルスシーケンスの繰り返し時間をTRとするとN=Tw/TRとなる。
【0017】
例えば、3次元のデータ収集を行う場合を考える。スライス枚数すなわちスライスエンコード数Kzを60、位相エンコード方向のマトリクス数Kyを120とすると、画像再構成に必要なデータライン数はKz×Ky=60×120=7200である。ここで、一心周期内で心臓の動きが少ない時間Te−Tsを100msecとすると、パルスシーケンスの繰り返し時間TRが5msecであれば、1心拍で100/5=20ラインのデータ収集が可能である。したがって、画像再構成に必要な全データを収集するために必要な心拍数は7200/20=360心拍となり、1心拍を1秒とすると、360秒=6分で撮像が完了することになる。
【0018】
なお、一般的には、心臓の動き以外に患者の呼吸による動きも考慮する必要があり、呼吸による体動の影響の少ないデータを選択的に収集する手法と組み合わせると実際の撮像時間はこれよりも延長する。また、冠状動脈撮像や心筋遅延造影などの場合には画像のコントラストを向上させるためのインバージョンパルス、T2強調プリパレーションパルス、MTC(Magnetization Transfer Contrast)パルス、定常状態への到達を促進するためのダミーショット、脂肪信号を抑制するための脂肪抑制パルス、呼吸性体動を検出するためのパルスなどの準備がデータ収集前に行われる。
図1では、これらの準備期間をプリパルスとして示している。
【0019】
ここで、心拍動の小さくなる時間TsからTeは、被検者の心拍数に依存することが知られている。そこで、前記した非特許文献2に記載されているような、安定した画質を得るための手法として、パルスシーケンスの組み立てに必要なTdおよびTwを患者ごとに設定する方法が提案されている。この方法は、冠状動脈撮像などに先立って、心臓の動きが視認できる断面のシネ画像を収集し、冠動脈の偏移が小さい時相を視覚的に確認して上記のTd、TwおよびNを求め、本撮像のパルスシーケンスの撮像パラメータとして検査ごとに操作者が設定する手法である。
【0020】
一般的に、冠状動脈撮像は、心臓MR検査においてそれ自体単独で行われることは少ない。例えば、虚血性心疾患診断のためのMRI検査では、通常一回の検査で、(1)局所心筋壁運動の評価および心機能計測のためのシネ撮像、(2)心筋への血液供給を評価するための造影潅流(パーフュージョン)撮像、(3)心筋梗塞診断のための心筋遅延造影撮像が組で行われ総合的な心臓の画像診断が行われ、さらに、虚血性心疾患の原因となる冠状動脈の狭窄部位を特定するために、(4)冠状動脈撮像が追加される。
【0021】
(4)の冠状動脈撮像が一連の検査の中に含まれるか否かは、使用される装置のハードウェアおよびソフトウェアの性能、その施設の検査方針、一患者あたりに費やす検査時間などにより決まる。また、(2)の心筋パーフュージョン検査は、負荷試験を必要とすることおよび画像の評価方法が確立していないことなどから、実施されない場合も多い。また、(3)の心筋遅延造影は、技術的な難易度は低いが、造影剤の使用が必須なので実施されないこともある。これらと比較し、(1)のシネ撮像は、造影剤を必要とせず、ほとんどの装置で簡便に心筋の動きや心機能の評価が可能なため、虚血性心疾患のMR検査ではほぼ全ての場合に施行される最も基本的な撮像である。
【0022】
次に、従来の心臓MR検査の流れについて説明する。
図2は、従来の心臓MR検査の流れを示すフローチャートである。
図2は、上記の(1)から(4)までの検査を行う一連の虚血性疾患診断MR検査の一例を示している。
図2に示すように、例えば、MRI装置は、まず、位置決め用画像を収集した後(ステップS1)、心基部から心尖部まで左心室の輪切りに相当するいわゆる短軸の複数スライスをシネ撮像する(ステップS2)。
【0023】
続いて、MRI装置は、心筋パーフュージョン(ステップS3)、および、遅延造影撮像(ステップS4)を行う。これら心筋パーフュージョンおよび遅延造影撮像においては、シネ撮像と同じ短軸像が撮像される。
【0024】
ここで、従来の検査方法では、冠状動脈撮像を行う前に、MRI装置が、短軸像をもとに冠状動脈を確認できる四腔断面などを位置決めしてシネ撮像し(ステップS5)、操作者が、撮像された画像を連続的に表示させて目視にて冠状動脈の動きが少ない時相を判断して、冠状動脈撮像のための遅延時間および一心拍内のデータ収集時間を撮像条件として設定する(ステップS6)。そして、この後に、MRI装置が、設定された撮像条件に基づいて、冠状動脈撮像を行う(ステップS7)。
【0025】
上記の心臓MR検査において、撮像条件を設定する工程(ステップS6)では、通常、20−50枚程度の各心時相の画像のうち拡張期の画像を順に比較しながら、動脈の位置変化が少ない期間を目視にて判断するという作業が必要であり、被検体である患者を装置内に拘束する時間が延長するという不都合が生じていた。また、この判断は操作者に依存するため、冠状動脈撮像の画質の安定性に影響をおよぼす場合があった。さらに、この工程では、ここで得られた結果をもとに、前述したTdおよびTwを撮像パラメータとする冠状動脈撮像の撮像条件を検査ごと(患者ごと)に設定するという作業も必要であり、総検査時間の短縮および冠状動脈検査の再現性確保のためには、この工程を自動化することが望まれている。
【0026】
このような課題を解決するため、実施例1では、従来のように、冠状動脈撮像を行う前に改めてシネ撮像を行って、操作者が視覚的に心拍動の少ない時間を判断して撮像条件を設定するのではなく、MRI装置が、心臓MR検査においてほぼ全ての場合に施行される一回のシネ撮像に基づいて、自動的に撮像条件を設定するようにしている。
【0027】
具体的には、実施例1に係るMRI装置は、複数の時相ごとに撮像された被検体Pの心臓の画像(シネ画像)から少なくとも一つの心拍内における心室の大きさの経時的な変化量を計測し、計測した変化量に基づいて心臓の動きが少ない時相を特定し、特定した時相に基づいて撮像条件を設定する。
【0028】
これにより、実施例1では、特別な撮像の追加や操作者による判断を必要とせずに、心臓の動きの少ないタイミングを自動的に決定することができるようにしている。
【0029】
以下、かかるMRI装置について詳細に説明してゆく。まず、実施例1に係るMRI装置の構成について説明する。
図3は、実施例1に係るMRI装置100の構成を示す図である。
図3に示すように、このMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9および計算機システム10を備える。
【0030】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0031】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルが、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、例えば、静磁場と同方向とする。
【0032】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0033】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する装置である。寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備えた装置であり、後述する寝台制御部5による制御のもと、天板4aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0034】
寝台制御部5は、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されたコイルであり、送信部7から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0035】
送信部7は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを内蔵する装置である。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変調部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。これらの各部の動作の結果として、送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。
【0036】
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されたコイルであり、上記の高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8によって受信された出力信号は、受信部9に入力される。受信部9は、受信RFコイル8からの出力信号に基づいて磁気共鳴信号データを生成する装置である。
【0037】
計算機システム10は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う装置であり、インタフェース部11、データ収集部12、再構成部13、記憶部14、表示部15、入力部16および制御部17を有している。
【0038】
インタフェース部11は、これらの接続された各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を行う処理部である。このインタフェース部11には、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7、受信RFコイル8および受信部9等が接続される。
【0039】
データ収集部12は、受信部9から出力されるデジタル信号を、インタフェース部11を介して収集する処理部である。このデータ収集部12は、収集したデジタル信号、すなわち磁気共鳴信号データを記憶部14に格納する。
【0040】
再構成部13は、記憶部14に記憶された磁気共鳴信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成を実行し、被検体P内における所望の画像データを生成する処理部である。
【0041】
記憶部14は、データ収集部12によって収集された磁気共鳴信号データと、再構成部13によって生成された画像データなどを、患者毎に記憶する記憶部である。例えば、この記憶部14には、シネ撮像によって撮像された複数スライスのシネ画像などが保存される。
【0042】
表示部15は、制御部17による制御のもと、画像データ等の各種の情報を表示する装置である。この表示部15としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0043】
入力部16は、操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける装置である。この入力部16としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0044】
制御部17は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、本実施形態のMRI装置100を総括的に制御する処理部である。例えば、この制御部17は、操作者や後述する撮像条件設定部17bによって設定された撮像条件に基づいて各部を駆動することにより、心電波形に同期した心臓撮像が行われるようにMRI装置100を制御する。この心臓撮像に関連する機能部としては、制御部17は、心室変化量計測部17aと、撮像条件設定部17bとを有する。
【0045】
心室変化量計測部17aは、複数の時相ごとに撮像された被検体Pの心臓の画像から少なくとも一つの心拍内における心室の大きさの経時的な変化を計測する処理部である。具体的には、この心室変化量計測部17aは、まず、複数の時相ごとに連続的に撮像された左室短軸のシネ画像を記憶部14から読み出し、読み出したシネ画像から心筋輪郭を自動的に抽出する。
【0046】
ここで、心室変化量計測部17aが心筋輪郭を自動的に抽出するための方法としては、例えば、特許第366892号に開示されている手法のような公知の手法が用いられる。特にシネ撮像は、通常、定常状態自由歳差運動(SSFP(Steady State Free Precession))法によって収集されるが、この手法は心筋と心腔内血液とのコントラストが高いので、輪郭を自動的に抽出することは容易である。
【0047】
図4は、心室変化量計測部17aによる輪郭抽出を説明するための図である。
図4は、左室の心尖部から心基部までの複数スライス(
図4に示す「1」〜「N」)の複数時相のシネ画像と、上述した方法により抽出された左室心筋内膜の輪郭とをそれぞれ表している。
図4に示すように、心室変化量計測部17aは、複数スライスおよび複数時相の全ての左室の画像から心筋内膜の輪郭を抽出する。
【0048】
続いて、心室変化量計測部17aは、一つの時相について、スライスごとに、内膜輪郭の内側の面積を算出し、算出した面積にスライス厚を乗じることによって、スライスごとの左室容積を算出する。そして、心室変化量計測部17aは、算出した全てのスライスごとの左室容積を合算することによって、当該時相における左室容積を算出する。
【0049】
その後、心室変化量計測部17aは、全ての時相について、上記で説明した左室容積の算出を行うことによって、時相と左室容積との関係を示す情報を生成する。
図5は、心室変化量計測部17aにより得られる時相と左室容積との関係を示す図である。心室変化量計測部17aは、
図5に示すような、一心拍内における左室容積の経時的な変化を示す情報を生成する。なお、この情報は、心機能を反映するパラメータのひとつであり、実施例1における目的とは別に、心臓検査の中で一般に測定されるものである。
【0050】
続いて、心室変化量計測部17aは、上記で生成された時相と左室容積との関係を示す情報に基づいて、時相ごとに、当該時相における左室容積と一つ前の時相における左室容積との差分の絶対値を算出することによって、時相と左室容積変化量との関係を示す情報を生成する。
図6は、心室変化量計測部17aにより得られる時相と左室容積変化量との関係を示す図である。心室変化量計測部17aは、
図6に示すような、一心拍内における左室容積変化量の経時的な変化を示す情報を生成する。
【0051】
図6に示す曲線において、時間変化に対する左室容積変化量の変化の少ない期間(
図6に示す「静止期間」)が、心臓の動きが少ない時相となる。
【0052】
撮像条件設定部17bは、心室変化量計測部17aにより計測された心室の大きさの変化に基づいて心臓の動きが少ない時相を特定し、特定した時相に基づいて撮像条件を設定する処理部である。具体的には、この撮像条件設定部17bは、心室変化量計測部17aによって生成された時相と左室容積変化量との関係を示す情報に基づいて、心臓の動きが少ない時相を特定し、特定した時相に基づいて、心臓撮像における撮像条件を設定する。
【0053】
図7は、撮像条件設定部17bによる時相の特定を説明するための図である。
図7は、
図6に示した、心室変化量計測部17aによって生成された時相と左室容積変化量との関係を示している。例えば、撮像条件設定部17bは、
図7に示す曲線上で、時間原点より一定の時間が経過した後(
図7に示す(1))で、左室容積変化量があらかじめ定められた値より小さい値(
図7に示す(2))となる時刻を特定することによって、
図1に示したTsおよびTeに相当するR波からの時間を算出する。
【0054】
そして、撮像条件設定部17bは、算出したTsおよびTeに基づいて、心臓撮像における撮像条件を設定する。例えば、冠状動脈撮像を行う場合には、撮像条件設定部17bは、撮像条件を設定するために必要となる、R波からの遅延時間Td、および、一心拍内のデータライン数Nを、それぞれ、Td=TsおよびN=Tw/TR(ここで、Twは、
図7に示すようにTw=Te−Tsで算出される。)として算出し、算出したTdおよびNの値を用いて撮像条件を設定する。
【0055】
次に、実施例1に係るMRI装置100による心臓MR検査の流れについて説明する。
図8は、実施例1に係るMRI装置100による心臓MR検査の流れを説明するフローチャートである。なお、ここでは、
図2に示したMR検査と同様の検査を行う場合について説明する。
【0056】
図8に示すように、心臓MR検査では、実施例1に係るMRI装置100は、まず、位置決め用画像を収集した後(ステップS11)、心基部から心尖部まで左心室の輪切りに相当するいわゆる短軸の複数スライスをシネ撮像する(ステップS12)。
【0057】
続いて、MRI装置100は、心筋パーフュージョン(ステップS13)、および、遅延造影撮像(ステップS14)を行う。これら心筋パーフュージョンおよび遅延造影撮像においては、シネ撮像と同じ短軸像が撮像される。
【0058】
ここで、MRI装置100は、上記の心筋パーフュージョンおよび遅延造影撮像と並行して、後に続く冠状動脈撮像における撮像条件設定を行う(ステップS15)。この撮像条件の設定については、後に詳細に説明する。そして、MRI装置100は、設定された撮像条件に基づいて、冠状動脈撮像を行う(ステップS16)。
【0059】
次に、
図8に示した撮像条件設定の処理手順を説明する。
図9は、
図8に示した撮像条件設定の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示すように、この撮像条件設定では、計算機システム10において、心室変化量計測部17aが、左室短軸のシネ画像から左室心筋内膜の輪郭を抽出し(ステップS21)、時相ごとに左室容積を算出し(ステップS22)、さらに、左室容積の経時的変化を計測する(ステップS23)。
【0060】
そして、撮像条件設定部17bが、心室変化量計測部17aによって計測された左室容積の経時的変化に基づいて、心臓の動きが少ない時相を特定し(ステップS24)、特定した時相に基づいて、冠状動脈撮像における撮像条件を設定する(ステップS25)。
【0061】
このように、実施例1に係るMRI装置100によれば、
図2に示した従来の心臓MR検査のように、冠状動脈撮像を行う前に改めてシネ撮像を行って、操作者が視覚的に心拍動の少ない時間を判断して撮像条件を設定するのではなく、心臓MR検査においてほぼ全ての場合に施行される一回のシネ撮像に基づいて、自動的に撮像条件を設定することができる。
【0062】
上述してきたように、実施例1では、心室変化量計測部17aが、複数の時相ごとに撮像された被検体Pの心臓の画像から少なくとも一つの心拍内における心室の大きさの経時的な変化を計測する。また、撮像条件設定部17bが、心室変化量計測部17aにより計測された心室の大きさの変化に基づいて心臓の動きが少ない時相を特定し、特定した時相に基づいて撮像条件を設定する。したがって、特別な撮像の追加や操作者による判断を必要とせずに、心臓の動きの少ないタイミングを自動的に決定することが可能になる。
【0063】
これにより、例えば、冠状動脈の動きを観察するための追加の撮像及びこれに必要な位置決めの時間、さらに冠状動脈の動きの少ない時間を目視により確認し、撮像条件を設定する時間を省くことができる。また、撮像条件を自動的に設定することにより、操作者による判断の差に起因する画質の変動を抑えることが可能になる。
【0064】
なお、上記実施例1では、左室全体をカバーする複数スライスの心シネ画像(心臓のシネ画像)を撮像して、左室の容積を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限られるわけではない。すなわち、心臓の動きが小さい時相を自動的に判断するという本発明の目的においては、必ずしも容積のデータが必要であるわけではない。そこで、例えば、左室短軸の一断面あるいは複数断面を用いて断面積曲線を作成し、その断面積曲線を容積曲線の代わりに用いるようにしてもよい。
【0065】
また、検査プロトコルによっては、短軸以外のシネ撮像をする場合も考えられる。その場合には、例えば、左室長軸の面積を測定したり、四腔断面の左室面積の測定をしたりすることによって代替することも可能である。さらに、心シネを全く撮像しない場合には、冠状動脈撮像に先立って左室短軸の一断面を撮像し、輪郭自動抽出から面積を測定すればよい。この場合には、冠状動脈撮像の撮像条件設定のための特殊撮像を1スライスだけ追加することとなるが、従来の目視による判断と比較すれば、検査時間、撮像の再現性向上の効果が得られることになる。
【0066】
また、上記実施例1では、冠状動脈撮像における撮像条件を設定する場合について説明したが、本発明はこれに限られるわけではなく、心電波形に同期してデータ収集を行う他の撮像における撮像条件を設定する場合にも、同様に適用することができる。心電波形に同期してデータ収集を行う撮像としては、例えば、FBI(Fresh Blood Imaging)と呼ばれる非造影血管撮像がある。
【0067】
このFBIでは、まず、MRI装置を用いて、同一スライスで複数時相のデータを収集して、時相が異なる複数の画像を撮像する準備用スキャンを行う。その後、撮像された複数の画像から収縮期および拡張期の適切な時相を決定して、収縮期の画像と拡張期の画像とをそれぞれ撮像する。こうして得られた画像の差分画像を作成することによって、動脈の画像と静脈の画像とをそれぞれ分けて作成することができる。かかるFBIにおいて、前述した準備用スキャンに本発明を適用すれば、FBIの検査時間を短縮するとともに、画質が安定した血管画像を得ることができるようになる。
【0068】
また、上記実施例1では、撮像条件設定部17bが、あらかじめ定められた閾値を用いて、心臓の動きが少ない時相を特定する場合について説明した。しかし、心室の大きさの変化は個人差があるため、閾値を固定値とした場合には、心室の大きさの変化量が標準よりも大きい被検体を撮像する際に、変化量が閾値を下回る期間が検出できない可能性もある。
【0069】
そこで、例えば、撮像条件設定部17bが、心室の大きさの変化を示す変化量の最大値に所定の割合(例えば、10%など)を乗じることによって当該最大値より小さい値を算出し、算出した値を閾値として用いるようにしてもよい。これにより、心室の大きさの変化量に応じて閾値が変わるので、被検体ごとの体質や症状に応じて、心臓の動きの少ないタイミングを適切に決定することが可能になる。
【0070】
さらに、例えば、撮像条件設定部17bが、心室の大きさの変化を示す変化量が閾値より小さくなる期間を複数検出した場合には、検出した複数の期間のうち最も長い期間を心臓の動きが少ない時相として特定してもよい。これにより、心臓の動きが最も安定した時相でデータを収集することが可能になり、より画質が良い画像を得ることができる。
【0071】
また、さらに、撮像条件設定部17bが、心室の大きさの変化を示す変化量が閾値より小さくなる期間が一つも検出されなかった場合には、一つ以上の期間が検出されるまで、閾値を段階的に大きくしながら期間の検出を繰り返してもよい。この場合、例えば、撮像条件設定部17bは、まずは、ある心拍において心室の大きさの変化量の最大値を測定し、その最大値の10%に相当する値を閾値として設定する。そして、撮像条件設定部17bは、設定した閾値より変化量が小さくなる期間が一つも検出されなかった場合には、一つ以上の期間が検出されるまで、最初に測定した最大値に対する割合を1%ずつ増やしながら、段階的に閾値の設定を繰り返す。これにより、さらに柔軟に被検体の個人差に対応することが可能になる。
【0072】
以上、実施例1として、本発明をMRI装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるわけではなく、他の画像診断装置にも同様に適用することができる。そこで、以下では、実施例2として、本発明をX線CT装置に適用した場合を説明する。
【0073】
図10は、実施例2に係るX線CT装置200の構成を示す図である。
図10に示すように、このX線CT装置200は、架台装置210と、寝台装置220と、コンソール装置230とを備える。
【0074】
架台装置210は、被検体PにX線を照射して投影データを収集する。この架台装置210は、高電圧発生部211と、X線管212と、X線検出器213と、データ収集部214と、回転フレーム215と、架台駆動部216とを有する。
【0075】
高電圧発生部211は、X線管212に高電圧を供給する。X線管212は、高電圧発生部211により供給される高電圧によりX線を発生する。X線検出器213は、被検体Pを透過したX線を検出する。データ収集部214は、X線検出器213により検出されたX線を用いて投影データを生成する。
【0076】
回転フレーム215は、円環状に形成されており、高速でかつ連続的に回転する。この回転フレーム215は、X線管212とX線検出器213とを被検体Pを挟んで対向するように支持している。架台駆動部216は、回転フレーム215を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線管212およびX線検出器213を旋回させる。
【0077】
寝台装置220は、架台装置210内の撮像位置に被検体Pを移動する。この寝台装置220は、天板221と寝台駆動装置222とを有する。天板221は、撮像実施時に被検体Pが載置される板である。寝台駆動装置222は、天板221をスライス方向へ移動する。
【0078】
コンソール装置230は、X線CT装置200の操作に関する各種の指示を操作者から受け付けるとともに、架台装置210画像によって収集された投影データから画像を再構成する。このコンソール装置230は、入力装置231と、表示装置232と、スキャン制御部233と、前処理部234と、投影データ記憶部235と、画像再構成処理部236と、画像データ記憶部237と、システム制御部238とを有する。
【0079】
入力装置231は、マウスやキーボードなどを有し、X線CT装置200に対する指示を操作者から受け付ける。例えば、この入力装置231は、撮像に際して操作者から撮像条件の入力を受け付けたり、撮像開始の指示を受け付けたりする。ここでいう撮像条件には、例えば、X線の照射間隔、撮影時間、X線管へ供給される管電流などが含まれる。
【0080】
表示装置232は、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイを有し、各種情報を表示する。例えば、この表示装置232は、後述する画像データ記憶部237によって記憶された画像データや、操作者から各種指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などを表示する。
【0081】
スキャン制御部233は、後述するシステム制御部238による制御のもと、システム制御部238から指示された撮影条件に基づいて高電圧発生部211、データ収集部214、架台駆動部216および寝台駆動装置222を駆動することによって、被検体Pの心臓にX線を照射して、投影データを収集する。
【0082】
前処理部234は、データ収集部214によって生成された投影データに対して感度補正などの前処理を行う。投影データ記憶部235は、前処理部234により前処理された投影データを記憶する。画像再構成処理部236は、後述するシステム制御部238による制御のもと、投影データ記憶部235により記憶された投影データから画像データを再構成する。
【0083】
画像データ記憶部237は、画像再構成処理部236によって再構成された画像データを記憶する。例えば、この画像データ記憶部237には、複数の時相ごとに撮像された被検体Pの心臓のシネ画像などが保存される。
【0084】
システム制御部238は、架台装置210、寝台装置220およびコンソール装置230の動作を制御することによって、X線CT装置200の全体制御を行う。実施例2では、このシステム制御部238が、特に、心室変化量計測部238aおよび撮像条件設定部238bを有する。
【0085】
心室変化量計測部238aは、実施例1で説明した心室変化量計測部17aと同様の機能を有する。具体的には、この心室変化量計測部238aは、複数の時相ごとに連続的に撮像された左室短軸のシネ画像を画像データ記憶部237から読み出し、読み出したシネ画像に基づいて、心室変化量計測部17aと同様に、心室の大きさの経時的な変化を計測する。
【0086】
ここで、例えば、心室変化量計測部238aは、心臓のシネ画像として、本撮像の前に行われた準備撮像において、本撮像に比べて低い線量のX線を照射することによって撮像された心臓全体の画像を用いる。または、心室変化量計測部238aは、心臓のシネ画像として、本撮像の前に行われた準備撮像において、本撮像に比べて狭い範囲にX線を照射することによって撮像された心臓の部分的な画像を用いてもよい。いずれの場合でも、検査を通して被検体Pに照射されるX線の量を減らすことが可能になる。
【0087】
撮像条件設定部238bは、実施例1で説明した撮像条件設定部17bと同様の機能を有する。具体的には、この撮像条件設定部238bは、心室変化量計測部238aによって計測された心室の大きさの変化に基づいて、撮像条件設定部17bと同様に、心臓の動きが少ない時相を特定し、特定した時相に基づいて撮像条件を設定する。
【0088】
ここで、例えば、撮像条件設定部238bは、特定した時相のデータを収集する際に被検体Pに照射されるX線の線量が一心拍内における他の時相のデータを収集する際と比べて高くなるように撮像条件を設定する。または、撮像条件設定部238bは、一心拍内における他の時相のデータを収集する際に被検体に照射されるX線の線量がゼロとなるように撮像条件を設定する。これにより、被検体Pに照射されるX線の量を必要最低限に抑えることができる。
【0089】
上述してきたように、実施例2では、心室変化量計測部17aが、複数の時相ごとに撮像された被検体Pの心臓の画像から少なくとも一つの心拍内における心室の大きさの経時的な変化を計測する。また、撮像条件設定部17bが、心室変化量計測部17aにより計測された心室の大きさの変化に基づいて心臓の動きが少ない時相を特定し、特定した時相に基づいて撮像条件を設定する。したがって、実施例1と同様に、特別な撮像の追加や操作者による判断を必要とせずに、心臓の動きの少ないタイミングを自動的に決定することが可能になる。
【0090】
なお、上記実施例において図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。