【実施例】
【0063】
実施例1:健康な若年層での認知課題に対するfMRI反応におけるカカオ・フラバノールの効果
方法
被験体
次に掲げる除外基準の下、18〜30歳の若い女性被験体16名が本研究に参加した:偏頭痛、脳梗塞、高血圧、糖尿病、または神経系または血管系疾患の経歴がなく、タバコ製品を利用しないこと。被験体のすべてが、正常視力及び正常色覚を有し、失読症ではなく、右利きであり、ローマ字を使用する母国語であった。被験体の1日の平均カフェイン摂取量を、食事についてのアンケートに対する回答から推定し、彼女たちのすべてがカフェイン利用の少ないクラスに分類された(<120mg/日)。すべての被験体に、アルコール及びカフェインの摂取、またはfMRIの測定のための各訪問前12時間の薬物の利用を控えるように指示した。地元の医学部の研究倫理委員会(Medical School Research Ethics Committee)は、この研究を許可し、被験体は本研究に参加する前に説明を受けた上での書面による同意を行った。
【0064】
各被験体は、別々に少なくとも14日繰り返された2つのfMRIセッションを受けた。被験体を無作為化し、二重盲検式の均衡方式で、1つのfMRIセッション前の5日間は高フラバノールのカカオ飲料(飲料中に150mgのフラバノール/プロシアニジン)を、別のfMRIセッション前の5日間は低フラバノールのカカオ飲料(飲料中に13mgのフラバノール/プロシアニジン)を摂取させた。被験体は、各スキャンセッションの前5日間の設定期間で、1日1飲料を消費し、最後の飲料をfMRIスキャンのおよそ1.5時間前に消費した。
【0065】
研究計画
番号の奇数−偶数判定課題、及び、子音−母音判断を要する文字課題の2つの課題を行なうため、被験体をあらかじめ訓練した。文字課題では、被験体は、並べられた文字が子音(G、K、M、R)または母音(A、E、O、U)のいずれであるかについて、1つの文字刺激に反応することを習得した。被験体は、母音に反応して左のボタンを、子音に反応して右のボタンを押すように訓練された。数字課題では、奇数(3、5、7、9)または偶数(2、4、6、8)のどちらかの数字に反応する訓練を、それぞれ左及び右のボタン反応を使用して、行なった。
【0066】
被験体は、ひとたび文字及び数字課題のルールに精通すると、fMRI研究において行なわれる文字−数字ペア課題の訓練を受けた。文字及び数字を含む文字−数字ペア課題は、コンピュータ画面上に一斉に表示した(fMRIスキャンでは、投影機及びスクリーンを使用した)。文字−数字ペアは、赤色または青色であった。文字−数字ペアが赤色で提示された場合、被験体は文字に注目し、訓練されたとおり、適切なボタンを押す(すなわち、母音または子音として分類するルールを適用する)ことにより反応するように指示された。文字−数字ペアが青色で提示された場合、彼らは同じように、数字(奇数−偶数の判断)に反応した。
【0067】
この研究では、「スイッチ」課題の定義は、2種類のルール間の変化であり、1つは文字(子音−母音判断)、もう1つは数字(奇数−偶数判断)である。「スイッチ」及び「非スイッチ」状態を含むパラダイムを作出するため、文字−数字ペアをブロックごとに分けた。5つの文字−数字ペアが同色のブロックはすべて「非スイッチ」ブロックである。赤色と青色の刺激を繰り返す(及びそのように課題判断を再構成する)5つの文字−数字ペアのブロックは「スイッチ」ブロックである。ブロック内の各文字−数字ペア間のギャップは3秒であり、全ブロックの所要時間は15秒であった。次に、12秒間の固定間隔 (fixation cross) を設けた(ベースラインの状態)。ブロックを交互に提示した(すなわち、「スイッチ」ブロック、「非スイッチ」ブロック、「スイッチ」ブロック、「非スイッチ」ブロックなど)。ブロック内の文字−数字ペアの提示は、スイッチの価値を高め、fMRIBOLD反応の規模も増大させる助けとなり、ブロック間の12秒の間隔の間にBOLD反応をベースラインに戻すことができる。
【0068】
fMRI研究の前に、被験体は、5ブロックの「スイッチ」及び「非スイッチ」試験を行なうことにより、課題において優秀レベル(competent level)(誤答率5%未満)になるまで訓練された。fMRI研究の間、20ブロックの「スイッチ」試験及び20ブロックの「非スイッチ」試験が本研究で行われ、結果的に研究継続時間の合計は18分であった。
【0069】
fMRIスキャン
3.0T専用スキャナ−をTEMヘッドコイル及びインサートヘッド傾斜コイル(insert head gradient coil)と共に使用した。30ミリ秒のエコー時間(TE)及び1.9kHzの傾斜スイッチング周波数を有するMBEST取得シーケンスを使用して、128×64のマトリックスサイズ、3mmの面内解像度、及び9mmのスライス厚を有するT
2*−重量の冠状エコープラナー画像(EPI)を獲得した。16の連続的な冠状断面を3秒ごとに取得した(TR=3秒)。本研究の被験体のすべてについて、応答時間及び誤答率のデータを記録した。さらには、被験体の心拍数をモニタした。fMRIの研究後、64のスライスEPIのセットを得て、解剖学的局在の補助とした。
【0070】
fMRIデータ処理
SPM99(Friston KJ et al., Neuroimage 1995; 2:166-172) (英国、Wellcome Department of Imaging Neuroscience、統計的パラメトリックマッピング)を使用してfMRIデータを処理した。スキャナから得た未加工のデータを運動補正し、EPIの標準的鋳型に空間正規化された、初回のデータセットに対するすべての有効なスライスの位置ずれを補正した。8mlのFWHM(半値全幅)空間平滑化及び128s高域フィルタでのカットオフが適用された。
【0071】
パラダイムをモデル化したSPM99内に一般線形モデルのデザイン行列を作出した。「スイッチ」及び「非スイッチ」ブロックを12sボックス関数としてモデル化した。次に標準的な血流動態応答関数(canonical haemodynamic response function)及びその時間導関数を用いてパラダイムの経時変化を抽出した。「スイッチ」状態及び「非スイッチ」状態のベースラインに対する統計的パラメトリックマップ(SPM’s)を形成した。さらには、個別の活性化対ベースラインの比較(「スイッチ」対ベースライン及び「非スイッチ」対ベースライン)をマスクとして使用した、P<0.05の補正された有意水準での2つの活性化状態の直接比較(すなわち、ベースラインに対する「スイッチ」、及びベースラインに対する「非スイッチ」)も行った。
【0072】
脳血流(CBF)の測定及び分析
4人の被験体(24〜31歳)についてのこの最初の研究では、脳血流におけるフラバノールの効果の経時変化を評価した。マルチスライス軸の7mmスライス5枚にEPISTAR(Echo-Planar MR Imaging and Signal Targeting with Alternating Radiofrequency)ASL(arterial spin labeling sequence)法を使用して、脳血流(CBF)マップを得た。動脈スピンを抑制するため、拡散強調(b=5mm
2/s)を適用した。ラベリングには双曲正割パルスを使用し、タグ及びコントロールスラブは反転時間(TI)1400ミリ秒で幅9cmであった。タグとコントロールイメージの間の繰り返し時間3秒、でEPISTARシーケンスを実行し、60タグ及びコントロールペアの合計を得た。各被験体は、高フラバノールカカオ飲料(450mgフラバノール)または低フラバノールカカオ飲料の摂取前及び摂取して2、4、及び6時間後に、2回別々に、CBF画像化を受けた。この研究では、fMRIの研究とは対照的に、単回用量の飲料を1回のみ消費した。各CBF測定の後、脳組織の型及び灰白質領域の区分けのためのT
1マップを得た(CBVは通例、血液量を調べるのに用いられる)。
【0073】
脳血流データを、T
1マップから得たマスクを用いて、最初に大脳の灰白質と白質の領域に分けた。次に、灰白質CBFマップをさらに主要血管から栄養を供給されている領域で分けた(参照することにより本明細書に援用される、Yen Y-F et al., Magn Reson Med 2001: 47:921-928を参照)。次いで、平均脳血流の値を、白質および灰白質領域について算出した。灰白質全体の潅流値をここに示す。
【0074】
結果
スイッチパラダイムの課題についての行動結果
応答時間における健全なスイッチコストが観察された。被験体の各々は、文字および数字課題の両方で、数値的に「非スイッチ」状態よりも「スイッチ」状態のほうが遅く、1つの課題ルールからもう一方への持続的な切替え(constant switching)が難しいことを証明した。「スイッチ」及び「非スイッチ」ブロック群の平均応答時間を
図1に示す。スイッチコストの有意性は、「低フラバノール」ではp=5×10
-6、「高フラバノール」ではp=1×10
-6であった。2種類の飲料のスイッチコストには顕著な差異はなかった(p=0.30)。平均スイッチコストは224±25ミリ秒であった。fMRIの研究での40ブロックに及ぶ「スイッチ」及び「非スイッチ」試験の間、被験体が学習効果によって疲労または上達のいずれかになることから、彼らは間違いが多くなるか、少なくなるであろう可能性についても調査した。応答時間の分析は、fMRIセッションの経過中に、有意な疲労/学習効果は生じなかったことを示した(p=0.74)。飲む順番もまた無作為化し、第1と第2のスキャンセッション間の応答時間の比較を行い、これもまた、有意差がないことを示した(p=0.73)。
【0075】
パラダイムを切り替える課題における心拍の結果
低及び高フラバノールカカオ飲料における「スイッチ」及び「非スイッチ」状態についての平均心拍数を表1に示すように測定した。対応のあるt−検定を行い、「スイッチ」及び「非スイッチ」状態の間の心拍数の差異を決定した。両方の飲料において、「スイッチ」状態では「非スイッチ」状態と比較して心拍数が顕著に増加した(「低フラバノール」:「スイッチ」>「非スイッチ」p=0.01;「高フラバノール」:「スイッチ」>「非スイッチ」p=0.0009)。低及び高フラバノール飲料間には顕著な差異は見られなかった。
【0076】
表1:低及び高フラバノール飲料についての「スイッチ」及び「非スイッチ」状態に応答する際の平均心拍数(±SEM)(拍数/分)
【表1】
【0077】
パラダイムを切り替える課題についてのfMRIの結果
図2aは、p<0.05の修正可能性でのスイッチ課題対ベースライン状態の集団統計的パラメトリックマップを示している。ベースライン状態と比較して、「スイッチ」及び「非スイッチ」では、前頭前野内側部及び外側部(前頭前野背外側部(DLPFC)を含む)、頭頂葉皮質、前帯状皮質(ACC)、及び小脳において活性化を示した。「非スイッチ」は
図2aに示していないが、ベースライン状態と比較した「非スイッチ」では、ベースライン状態と比較した「スイッチ」のものと同様の領域を示した。
【0078】
上記概略した脳領域がスイッチ課題と関連があることは、以前から示されている(Lewis PA et al., Curr Opin Neurobiol 2003; 13:250-255; Sohn MH et al., Proc Natl Acad Sci USA 2000; 97:13448-53; Swainson R et al., J Cogn Neurosci 2003; 15:785-99)。さらには、スイッチ課題に加えて、多くの認知神経イメージングの研究が同様のパターンの活性化を示している。これらには、作業記憶(Cabeza et al., Neuroimage 2002: 16:317-330; Postle B et al., Proc Natl Acad Sci USA 1999; 96:12959-12964)、記憶検索(Thompson-Schill SL et al., Proc Natl Acad Sci USA 1997: 94:14792-14797; Wagner AD et al., Neuroimage 2000; 14:1337-1347)、及び算数問題解決課題(Anderson JR et al., Psychonom Bull Rev 2003; 10:241-261; Dehaenae S et al., Science 1999; 284:970-974)が挙げられる。 これらの課題のすべてが、これら2つの領域が高次認知における相補的役割を果たすことを示唆する、前頭葉−頭頂の強力な相互接続を実証している(Petrides M et al., J Comp Neurol 1984; 228:105-116; Schwartz ML et al., J Comp Neurol 1984; 226:403-420)。
【0079】
図2bは、「非スイッチ」課題と比較して、「スイッチ」課題の間は、BOLD反応が有意な向上を示す活性化領域の集団統計マップを示している。この比較から、「スイッチ」状態に対して優先的に活性化されたそれらの脳領域が、前頭前野背外側部及び頭頂葉皮質、さらには前帯状皮質及び小脳において、右半球に大きく局在化していることが判明した。
【0080】
図2aは、休止時のベースラインと比較した「スイッチ」状態の領域を示している。これらは、スイッチ課題の実行に関連する脳のすべての部位であり、したがってそれらには、ボタンを押す操作に対する運動反応など、本課題の異なる態様に関連する領域が含まれうるため、スイッチ課題だけに限定されない。
【0081】
図2a及びbを参照すると、
図2bは、「非スイッチ」状態と比べて「スイッチ」状態の領域の方が大きいことを示している。したがって、これは、(休止時のベースラインに対する「スイッチ」状態)−(休止時のベースラインに対する「非スイッチ」状態)として考えることができる。これは、ボタンを押す操作に対する運動反応などの重要ではない課題の態様が「スイッチ」及び「非スイッチ」の両状態に存在するため、「非スイッチ」から「スイッチ」を差し引くことにより、ボタンを押す運動反応に関連する脳領域が排除されることから、重要な条件である。「スイッチ」−「非スイッチ」状態では、純粋に、スイッチ課題にのみ関連する領域だけが示される。スイッチ課題では、前帯状皮質(ACC)は、課題設定における不一致を検出し(Gehring WJ and Knight RT, Nat Neurosci 2000; 3:516-20)、右前頭葉皮質は無関係の(直前の)反応の抑制に関する働きをし(Aron et al., Trends Cogn Sci 2004:8:170-7)、作業記憶に新規に取り込まれた情報の活性化の維持に関する働きをする(Goldman-Rakic PS, Annu Rev Neurosci 1988; 11:137-156)と考えられる。右後頭頂葉は、空間的または視覚的注意に関与することが示されており(Rushworth MFS et al., J Neurosci 2001; 21: 5262-5271)、一方、小脳は、主にスイッチ課題におけるタイミングの不規則性で活性化されると考えられ、内部のタイミングシステムとしての役割と一致している(Ivry RB, Curr Opin Neurobiol 1996;6:851-7)。
【0082】
「低フラバノール」及び「高フラバノール」状態の間のBOLD信号の変化の統計比較では、「高フラバノール」が、ベースライン状態に対する活性化(「スイッチ」及び「非スイッチ」)、ならびに、ベースラインに対する「スイッチ」をベースラインに対する「非スイッチ」と比較した場合の両方において、有意に大きいBOLD信号変化を生じた。表2は、「低」及び「高」フラバノール飲料を摂取後の、対象とする選択された領域についての、ベースラインと比較した「スイッチ」BOLD応答の信号変化の平均%を示している。
【0083】
表2:低及び高フラバノール飲料の反復投与の摂取後の「スイッチ」状態のベースラインと比較したBOLD反応の信号変化の平均%(±SEM)。高フラバノール飲料ではBOLD反応における著しい増加を示した。
【表2】
【0084】
脳血流(CBF)の経時変化の結果
図3は、低及び高フラバノール飲料の摂取後の灰白質での平均脳血流反応の経時変化を示している。高フラバノール飲料に反応して、摂取後およそ2時間で生じた脳血流反応におけるピークを伴って、脳血流が上昇し、およそ6時間後、CBFはベースラインに戻った。この研究では、fMRI研究では繰り返し用量が与えられたのとは対照的に、急性用量のフラバノールが与えられたことに注目されたい。
【0085】
ASL法の研究は、脳の血管拡張及びCBFの増加を引き起こす、高炭酸ガス血症の影響の測定を目的として、以前に行なわれている。このような研究は、PaCO
2の瞬間的な上昇につながる呼気の息止めに応じて、CBFが30%〜87%上昇することを示している(Li TQ et al., Neuroimage 1999; 10:562-9; Li TQ et al., Neuroimage 1999; 9:243-9; Kastrup A et al., AJNR Am J Neuroradiol 1999; 20:1233-8)。血管拡張性の刺激としての5%CO
2の吸入の直接的影響は、およそ87%の全体的なCBFの上昇を示している(Kastrup A et al., Magn Reson Imaging 2001; 19:13-20)。高フラバノール飲料摂取後2時間における本明細書に示す60%のCBFの変化は、これらの効果と同程度である。
【0086】
実施例2:カカオポリフェノールの行動的影響の評価
方法
研究設計
本研究は、二重盲式のプラセボを比較対照とした、均衡の取れたクロスオーバー法に従い、カカオ飲料中の複数回用量のポリフェノールの認知に関する効果を試験した。参加者(N=30;男性13名、女性17名、平均年齢21.93歳、SEM0.61、年齢範囲18〜35歳)は、特有の、関連性のある健康状態及び食事要因を危険にさらす可能性について、審査を受けた、健康な若年成人であった。研究参加者は5回にわたり研究所を訪れた。最初の訪問は、被験体が手順に習熟するための練習日であり、この訪問は、すべての能力得点が、バッテリーにとって、標準の範囲内にあることを保証する助けにもなった。次の訪問は、状態間の十分なウォッシュ・アウト期間を確保するため、少なくとも3日間は離して行なう、4日間で構成され、被験体は、無作為に、ラテン方格法のセルに割り当てられ、治療順序が指示された。
【0087】
参加者は、最初の試験セッションの最低でも12時間前、及び、その朝から最後の試験セッションが完了するまでの間を通して、カフェイン及びアルコールを控えた。日記を提供し、参加者に、各研究日の最初の試験セッション前24時間の、すべての食事及び飲料の消費を記録させた。参加者には、各研究日の24時間前からフラボノイド含量の高い食事及び飲料を避けるように勧告した。
【0088】
治療
参加者には、別々の機会に、1)36.4mgのカカオポリフェノール(対照)、2)469.3mgのカカオポリフェノール(中程度のCP)、3)902.2mgのポリフェノール(高CP)を含む3種類の飲料が与えられた。いずれの場合も、治療は、2つの小袋入りの粉末を200mlの熱水に混合して構成した。33%カカオ粉末と同様に、飲料にもまた、次のものが含まれていた:脱脂粉乳(59.0%);繊維(5.6%);乳化剤(0.8%);セルロースゲル(0.55%);キサンタン・ガム(0.55%);人工及び天然バニラ(0.1%);及びスクラロース(0.1%)。飲料の消費に5分間の余地が与えられた。
【0089】
各治療用または対照用の小袋の組成は次の通りであった:
【表3】
【表4】
【表5】
【0090】
微量/主要栄養素及びアルカロイドを制御するため、毎回、2つの小包が供給された;高CP飲料用に、高CP製品の2つのパケットが与えられた;中程度のCPには、高CP製品を1パケット、対照製品を1パケット与えられた;対照CPには、対象製品2パケットが与えられた。
【0091】
評価
認知要求バッテリー
この研究では、我々は、「認知要求バッテリー」(CDB)に着手した。参加者には、(i)36.4mgのカカオポリフェノール(対照)、(ii)469.3mgのカカオポリフェノール(中程度のCP)、(iii)902.2mgのポリフェノール(高CP)を含む3種類の飲料が与えられた。研究日には、シリアル・スリーズ(Serial Threes)(2分)、シリアル・セブンズ(Serial Sevens)(2分)、短時間視覚情報処理課題(Rapid Visual Information Processing Task)(RVIP、5分)、及び、精神的要求視覚アナログ尺度(mental demand visual analogue scale)(1分)からなるCDBが含まれた。研究所に現れる際には、カフェイン濃度の分析用に唾液試料を採取した。各研究日に、参加者は各課題を1回体験し、訓練の影響を緩和した。その後、ベースラインセッションを行い、その直後に、5分間認められている、その日の治療を行なった。飲料の消費の終了は、T=0を意味した。吸収に90分間が認められ、その後、参加者は即時セッションにおいてCDBを6回行った後、カフェイン濃度を決定するための2回目の唾液試料を採取した。これらの課題(CDBにおける)の目的は、継続的な認知要求における治療の影響を評価することである。参加者はおよそ1時間の間、繰り返しこのような試験を3回行なうため、セッションにおける全体的な認知に関する負担(load)が増加した。
【0092】
連続引き算
これらの課題は、所定の介入と「精神的な要求」の間の相互作用を評価する。
【0093】
シリアル・セブンズ試験の修正されたコンピュータ化バージョンを使用した(Haskell, C. F. et al., Psychopharmocology, 2005, 179:813-825)。オリジナルの口頭でのシリアル・セブンズ試験には、痴呆用のミニメンタルステート検査 (Mini-Mental State Examination)の一部を含め、多くの形態があるようである。低血糖症の間の認識機能障害の評価に用いられており、また、血中グルコース濃度の上昇と認知能力(cognitive performance)の関係の調査にも用いられている(Kennedy D. O. and Scholey, A. B., Psychopharmacology, 2000, 149:63-71; Scholey, A, B, et al., Physiology & Behavior, 2001, 73:585-592)。
【0094】
現在の研究では、2分間の試験を使用した、連続引き算のコンピュータ化バージョンが行なわれた。シリアル・セブンズの課題では、標準指示画面が参加者に情報を与え、できるだけ早く正確に、与えられた数から7つ逆算し、テンキーボードを使用して各応答を入力する。参加者はまた、間違った場合には、その新しい不正確な数字からの引き算を続けるべきであることを口頭で指示された。800〜999の無作為の開始番号がコンピュータ画面上に現れ、それは最初の応答の入力によって消えた。各3つの数字の応答を、星印で画面上に表されている各数字と共にテンキーボードで入力した。入力キーを押すと各応答の終了が示され、画面上から3つの星印が消去された。課題は、引き算の累計と誤答の数について記録された。応答が誤りの場合は、その後の応答はその新しい数字に関して正しい場合には肯定として記録された。
【0095】
シリアル・スリーズの課題は、引き算の連続回数が3回である点を除けば、シリアル・セブンズとまったく同じである。
【0096】
短時間視覚情報処理課題(Rapid Visual Information Processing Task)
この課題は、向精神薬の診療における認知の影響の研究に幅広く使用されている。参加者は3連続の奇数または3連続の偶数を目的として、連続した数字をモニタした。数字は1分間に100の速度で表され、参加者は、できるだけ素早く応答キーを押すことにより、目的とする文字列の検出に応答した。課題は連続して5分間続き、毎分、8つの正しい目的の文字列が含まれていた。課題は、目的の文字列を正しく検出した%、正しい検出の平均反応時間、及び誤検出警報(false alarm)の数について記録された。
【0097】
主観的尺度(精神的要求視覚アナログ尺度)
課題の各セットの終わりに、参加者は、端に「全然」及び「非常に」と表示された100mmの線上に印をつけることにより、いかに精神的に疲労したと彼らが感じたかについて示すように求められた。
【0098】
結果
結果を
図4(a〜d)に示す。結果は、認知遂行/能力の特定の態様におけるフラバノール/プロシアニジンで補完されたカカオ飲料の有益な効果を示している。
【0099】
実施例3:精神的要求性の低い課題におけるカカオポリフェノールの行動についての急性効果
方法
この研究により、精神的要求性の高い状況とは無関係のカカオポリフェノールの効果を調査し、カカオポリフェノールの効果が、単に精神的要求性の高い状況に限定されるか否かについて評価した。
【0100】
研究に参加する前に、ボランティアはインフォームドコンセント用紙に署名し、医療保険に関する質問書に記入した。すべての参加者は良好な健康状態であり、経口避妊薬を除いて、社会的薬物及び薬物治療がないことを報告した。常習的喫煙者は本研究から除外した。
【0101】
30名の参加者を本研究にスカウトし、目的が、活性成分(その1つはカフェインであって差し支えない)を含むカカオ飲料の認知及び心的状態への影響の調査であることを報告した。参加者は、最初の試験セッションの最低12時間前及び朝から最後の試験セッションが完了するまで、カフェイン及びアルコールを控えた。日記が提供され、参加者は、各研究日の最初の試験セッション前24時間及び/または研究訪問の間ずっと、すべての食事及び飲料消費を記録した。参加者には、各研究日の24時間前からフラボノイド含量の高い食事及び飲料を避けるように勧告した。このフラボノイドの食事を制限する要求は、モニタすべき血漿フラバノール濃度を急激に変化させた。
【0102】
唾液のカフェイン濃度
salivetteを使用して唾液試料を得た。試料は、一晩の節制が順守されたことを確認するため、ベースライン評価の直後に、及び、条件全体にわたる均一なカフェインの吸収を確認するため、各治療後評価セッションの直後に、採取された。唾液試料は、Emitシステム(Syva社製(米国、パロアルト所在))を使用して社内バッチ分析用に解凍するまで、すぐに−20℃で冷凍した。これは、代謝産物としてのカフェインを測定することを意図した酵素免疫測定法であり、カフェインと酵素標識薬との抗体結合部位に対する競争に基づいている。
【0103】
血漿フラバノール濃度
ベースライン評価直後及び治療セッション後90分後、フラバノール濃度を決定するため、2mlの静脈血試料を採取した。これらの血液試料は、EDTAを含むmonovetteを使用して、静脈穿刺により採取した。次に試料を5℃で10分間、3000rpmで遠心分離するまで氷上に保持した。ギルソンピペットを使用して、得られた血漿から1485μlをアンバーチューブ(amber tube)に測り入れた。アスコルビン酸の新鮮な溶液(570mM/100.4mg/ml)を調製し、氷上で光から離して保持した。次に、この溶液15μlを1485μlの血漿に加え、混合し、−70℃で保管した。残念ながら、技術的困難に起因して、これらの試料の分析はできなかった。
【0104】
評価
認知薬物研究(CDR)バッテリー
CDRシステムは、欧州及び北米での500回をはるかに上回る治験に使用され、幅広い物質を使用した機能障害のみならず、認知の改善に感受性であることが示されている。
【0105】
多くの栄養補助食品の摂取の結果として認知機能の改善に感受性であることが以前より判明しているものと同様の、仮編成済みのバッテリーを使用した。システムからのコンピュータ制御された課題の選択は、各試験セッションで存在している試験の平行形式で管理された。提示は、ラップトップ型コンピュータ上のカラーモニタを解して行なわれ、書き言葉の想起試験を除くすべての応答は2ボタン式(はい/いいえ)の応答ボックスを解して記録された。
【0106】
試験の全体的選択は、およそ20分間行なわれ、次の手順で管理された。
【0107】
単語の提示:頻度及び具体性を適合させた、15単語を参加者のモニタに順々に表し、記憶させた。刺激持続時間は1秒、刺激間間隔も同じ。
【0108】
単語の即時想起:参加者は、60秒間、できるだけ多くの単語を記載した。課題は正答と誤答の数を記録した。
【0109】
画像の提示:参加者に、20枚の記憶用の画像を、3秒毎に1枚の速さで、刺激持続時間1秒でモニタに順次提示した。
【0110】
単純反応時間:参加者は、「はい」の単語がモニタに提示されるたびに、できるだけ早く「はい」の応答ボタンを押すように指示された。無作為に1〜3.5秒に変化する刺激持続時間で、50回の刺激が提示された。応答時間をミリ秒で記録した。
【0111】
数字注意(Digit Vigilance)課題:目的の数字を無作為に選択し、モニタ画面の右側にコンスタントに表示した。一連の数字が1分間に80の速さで画面中央に表示され、参加者は、一連の数字が目的の数字と一致するたびに、できるだけ早く「はい」のボタンを押すことが求められた。課題は3分間継続し、刺激−目的の適合が45回あった。課題の測定は、正確さ(%)、応答時時間(ミリ秒)及び誤検出警報の数であった。
【0112】
選択反応時間:「いいえ」または「はい」のいずれかの単語がモニタ上に表示され、参加者は、できるだけ早く関連するボタンを押すことを必要とした。試験は50回あり、刺激語は、1〜3.5秒の不規則に変化する刺激間間隔で、等しい確率で無作為に選択された。応答時間(ミリ秒)及び正確さ(%)を記録した。
【0113】
空間作業記憶:9つの窓のうちの4つに明かりのついた、家の図的表示をスクリーン上に提示した。参加者は明かりのついている窓の位置を覚えるように指示された。その後の36の家の提示では、窓のうちの1つに明かりがつき、参加者はこれがオリジナルの提示における明かりのついた窓の1つと一致するか否かを決定した。参加者は「はい」または「いいえ」の応答ボタンをできるだけ早く押すことによって応答を行った。平均応答時間をミリ秒で測定し、オリジナルおよび新規の(不正解の選択肢)刺激の両方に対する応答の正確さを%で記録した。
【0114】
数字作業記憶:参加者が記憶しておくため、5つの数字を順次提示した。その次に、一連の30の試験用の数字について、参加者がその各々をオリジナルの組に存在したか否かを判断し、「はい」または「いいえ」の応答ボタンをできるだけ早く、それぞれに見合うように押した。これを別の刺激及び試験用数字を用いてさらに2回繰り返した。平均応答時間をミリ秒で測定し、オリジナルおよび新規の(不正解の選択肢)刺激の両方に対する応答の正確さを%として記録した。
【0115】
遅延型単語想起(Delayed Word Recall):参加者は60秒間与えられ、できるだけ多くの単語を記載した。課題は正答数及び誤答数として記録した。
【0116】
遅延型単語認識(Delayed Word Recognition):オリジナルの単語に15の不正解の単語を加え、無作為の順序で1回に1語ずつ提示した。各単語について、参加者は、「はい」または「いいえ」ボタンを、それぞれに見合うようにできるだけ早く押すことにより、単語のオリジナルのリストに含まれていると認識したか否かを示した。平均応答時間をミリ秒で測定し、オリジナルおよび新規の(不正解の選択肢)刺激の両方に対する応答の正確さを%として記録した。
【0117】
遅延型画像認識:オリジナルの画像に20の不正解の画像を加え、無作為の順序で1回に1つずつ提示した。各画像について、参加者は、「はい」または「いいえ」ボタンを、それぞれに見合うようにできるだけ早く押すことにより、オリジナルの組に由来すると認識したか否かを示した。平均応答時間をミリ秒で測定し、オリジナルおよび新規の(不正解の選択肢)刺激物の両方に対する応答の正確さを%として記録した。
【0118】
以下の表は、各課題の評価の情報処理のステージを示している。
【表6】
【表7】
【表8】
【0119】
Bond-Lader視覚アナログ尺度 (Bond A., and Lader M., 1974, The use of analogue scales in rating subjective feelings, British Journal of Psychology, 47:211-218)
この測定は、反意語によって支えられる終点を有する16の視覚アナログ尺度で構成された:敏捷な−緩慢な、穏やかな−興奮した、力強い−弱々しい、混乱した−頭の冴えた、よく調和した−不器用な、不活発な−精力的な、満足した−不満な、不安な−平静な、精神的に鈍い−機転の利く、緊張した−寛いだ、注意深い−夢のような、無能な−堪能な、幸せな−悲しい、敵対した−友好的な、関心のある−退屈した、内向的な−社交的な。これらを組み合わせて3つの「気分」要素:「用心深さ」、「落ち着き」及び「満足」を形成した。
【0120】
精神動態の注意(Psychomoter Vigilance)課題(Dinges D. F., and Powell J. W., 1985, Microcomputer analyses of performance on a portable, simple visual RT task during sustained operations. Behavior Research, Methods, Instruments and Computers, 17:652:655)
精神動態の注意課題(PVT)は、持続した注意力を評価するのに用いられる、単純な持ち運び可能な応答時間課題である。被験体は刺激が現れたらすぐに利き手の親指でボタンを押すように指示された(LED−デジタル・カウンタ)。本研究では、単一PVT試験の継続時間は10分で構成された。眠気も、10段階評価を用いて、応答時間課題の前後に、この装置で評価した。
【0121】
治療
参加者には、別々の機会に、1)36.4mgのカカオポリフェノール(対照)、2)469.3mgのカカオポリフェノール(中程度のCP)、3)902.2mgのポリフェノール(高CP)を含む3種類の飲料が与えられた。いずれの場合も、治療は、2つの小袋入りの粉末を200mlの熱水に混合して構成した。対照の治療は対照CPの2つの小袋で構成され、469.3mg用量は対照小袋1つと高CP小袋1つで構成され、902.2mg用量は2つの高CP小袋で構成された。2種類の小袋の栄養組成は実施例2の表3〜5に示されている。飲料の消費に5分間与えられた。
【0122】
各参加者は、状態間の十分なウォッシュ・アウトを確保するため、少なくとも3日間は離して行なわれた、合計4日間の研究日に参加することが必要とされた。試験は、参加者が互いに視覚的に隔離された、一続きの研究所で行なわれた。初日の最初のセッションに到着次第、参加者は、無作為に、研究の3日間の活動日に亘って治療順序の釣り合いを取った、ラテン方格法を使用した治療計画に割り当てられた。初日には、4回の試験バッテリーの完了が含まれた。これは、訓練の影響を考慮して調製し、試験バッテリー及びその後の訪問時の手順を熟知させるために、行なわれた。
【0123】
参加者は、最初の試験セッションの最低でも12時間前、及び、その朝から最後の試験セッションが完了するまでの間を通して、カフェイン及びアルコールを控えた。日記を提供し、参加者に、各研究日の最初の試験セッション前24時間の、すべての食事及び飲料の消費を記録させた。参加者には、各研究日の24時間前からフラボノイド含量の高い食事及び飲料を避けるように勧告した。訓練日のデータは分析に含めなかった。
【0124】
3日間の各活動日には、4つの同一の試験セッションが含まれた。最初は、投与前試験セッションであり、これはその日のベースライン能力を確立した。その後、すぐにその日の治療のものを摂取した。さらなる試験セッションを、その日の治療物の消費から90分、3時間、及び6時間後に開始した。各試験セッションはおよそ30分間継続し、CDR試験バッテリーの完了、Bond-Lader視覚アナログ気分尺度、10分のPVT、及びsalivetteを使用した唾液試料の採取を含んだ。加えて、投与前セッション及び投与90分後セッションには、CDRバッテリーの完了前に2mlの静脈血漿試料の採血も含まれた。
【0125】
唾液のカフェイン濃度を分析し、カフェインの自制の順守を検査した。
【0126】
最初の統計分析の前に、投与前ベースラインデータの個別の一元配置反復測定ANOVA(one-way repeated measures ANOVAS)を行い、治療前の能力によるベースラインの差異の可能性を確定した。
【0127】
個別の課題の結果における得点を、SPSS12.0.1を使用して、「ベースラインからの変化」として分析した。
【0128】
各測定データを、二元配置反復測定ANOVA(two-way repeated measures ANOVA)[時間(投与から1.5時間、3時間、及び6時間後)×治療(469.3mgCP/902.2mgCP/対照)]によって分析した。
【0129】
結果
各状態における各測定について、投与前の平均ベースライン、及びベースラインの得点からの変化を、F値及び治療効果の可能性(蓋然性)とともに決定した。
【0130】
ベースラインデータからの変化を分析する前に、各結果判定法での3条件すべて(対照、469.3mgCP、902.2mgCP)についての、投与前のベースラインの未処理の平均得点は、一元配置反復測定ANOVAに従った。測定によるベースラインの有意差はなかった。
【0131】
唾液の分析は、0.79μg/mlの平均ベースラインカフェイン値を有し、カフェイン自制の指示が順守されたことを立証した(1μg/mlよりも少し下回る濃度は、一晩のカフェインの自制として報告されている。Evans and Griffith, 1999, Caffeine withdrawal: a parametric analysis of caffeine dosing conditions. The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 289:285-294参照のこと)。治療後の唾液のカフェイン濃度の分析は、治療条件による有意差がないことを示した。
治療後の得点
いずれの測定においても治療後に有意差はなかった。
【0132】
CDR評価バッテリーを構成する課題は、測定する能力は多項目に及ぶが、多くの努力を要しない、単純な課題である。この研究結果は、精神的要求性の低い課題の遂行には、本発明の化合物の効果がないことを示した。