特許第5751805号(P5751805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751805
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】虫よけ清掃用シートおよび清掃具
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/17 20060101AFI20150702BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20150702BHJP
   A47L 1/15 20060101ALI20150702BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20150702BHJP
   A01N 37/18 20060101ALI20150702BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20150702BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20150702BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   A47L13/17 A
   A47L13/16 A
   A47L1/15
   A01N53/00 508A
   A01N37/18 Z
   A01N31/06
   A01N25/34 A
   A01P17/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-256538(P2010-256538)
(22)【出願日】2010年11月17日
(65)【公開番号】特開2011-125694(P2011-125694A)
(43)【公開日】2011年6月30日
【審査請求日】2013年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2009-262410(P2009-262410)
(32)【優先日】2009年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大島 務
(72)【発明者】
【氏名】猪口 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】三好 一史
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−075924(JP,A)
【文献】 特開平10−007505(JP,A)
【文献】 特開2006−158771(JP,A)
【文献】 特表2008−512143(JP,A)
【文献】 特開2006−166931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 1/15
A47L 13/16−17
A01N 25/34
A01N 31/06
A01N 37/18
A01N 53/08
A01P 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)虫よけ成分を0.1〜20質量%、及び(B)紫外線吸収剤を0.1〜5質量%と、(C)油性溶剤を10質量%以上含有する油剤を不織布に含浸させたことを特徴とする虫よけ清掃用シート。
【請求項2】
前記(C)油性溶剤が、20℃で液状のパラフィン系炭化水素、αオレフィン及びαオレフィン誘導体から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の虫よけ清掃用シート。
【請求項3】
前記不織布の目付けが、30〜200g/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の虫よけ清掃用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラスや網戸等の被清掃面の汚れを除去しやすく、かつ同時に虫よけ効果を付与することができる虫よけ清掃用シートおよび清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間、家々から漏れ出る光に誘引された虫が窓ガラスや網戸に飛来し、非常に不快であるとともに、付着した虫の死骸によって、ガラス面が汚れ見苦しくなる。このような昆虫の飛来に対して、従来では、誘蛾灯による誘引殺虫や、粘着テープなどによる捕獲、殺虫剤による駆除などが行われていた。また最近では、窓ガラスや網戸用の虫よけ剤が市販されているが、いずれも使用前に処理面をきれいにしてから使用する方法になっているため、面倒である。
特許文献1および2には、窓ガラスやショーウインドーに塗布することで透明被膜を形成し、害虫の侵入を阻止する組成物が提供されている。しかしこれらの特許技術には、塗布面をきれいにする効果はなく、処理前に塗布面の汚れを取り除いておく必要がある。
また、特許文献3には、網戸の撓みに追従して清掃シートを確実に接触させることができる清掃具と片面側から両面を同時に清掃可能な網戸用清掃シートが提供されており、該網戸用清掃シートには、乾燥後に、被清掃面の表面をコーティングするワックス成分や防虫成分が配合されている。
しかし、特許文献3に記載されている網戸用清掃シートは、不織布自重の500%以上の洗浄液が含浸されたウェットタイプのシートであり、ウェットタイプのシートの場合、一度拭き取った汚れが洗浄液によって再度網面に押し出されることから、何度拭いても汚れが拭き取れないという問題があった。またウェットタイプのシートに防虫剤を配合するには、可溶化するための界面活性剤が必要となるが、防虫効果を出すために防虫剤を多く配合しようとすると、界面活性剤を多量に必要となり、界面活性剤を多量配合すると、拭き取り性が悪くなり洗浄力がより悪くなる。また、拭き取り性を考えると防虫剤および界面活性剤はあまり配合できず、充分な虫よけ効果が期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許 第3770963号
【特許文献2】特許 第4119647号
【特許文献3】特開2008−212267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、窓ガラスや網戸等の汚れ落としと虫よけ効果の付与を同時にできる虫よけ清掃用シートおよび清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。(1)(A)虫よけ成分を0.1〜20質量%、及び(B)紫外線吸収剤を0.1〜5質量%と、(C)油性溶剤を10質量%以上含有することを特徴とする虫よけ清掃用シート。(2)前記(C)油性溶剤が、20℃で液状のパラフィン系炭化水素、αオレフィン及びαオレフィン誘導体から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(1)に記載の虫よけ清掃用シート。(3)前記不織布の目付けが、30〜200g/mであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の虫よけ清掃用シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明では虫よけ清掃用シートの含浸油剤として、虫よけ成分又は紫外線吸収剤と油性溶剤を配合し、本含浸油剤を不織布に含浸することで、高い洗浄効果を得るとともに、清掃後の被清掃面に虫よけ効果を付与することが可能であることを見出したものである。
また、前記被清掃面に対し、虫よけ効果が長期間に渡って持続するドライタイプの虫よけ清掃用シートで、拭き取り時に手が汚れることがない。
また、本発明の虫よけ清掃用シートは、握りやすい把手部と、シートを固定するための切り込み又は溝部を有している発泡樹脂製のアプリケーターに装着して使用することができる。本アプリケーターに、本発明の虫よけ清掃用シートを使用することで、簡便に広範囲の網戸や窓などを適度な力で必要十分な量の虫よけ成分を含む油剤を付着させ、清掃することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】側面に虫よけ清掃用シートを挟みこむための切り込みを設けた本発明の清掃具を示す斜視図である。
図2図1の清掃具に虫よけ清掃用シートを取り付けた状態を示す説明図である。
図3】上面に虫よけ清掃用シートを挟みこむための切り込みを複数設けた清掃具を示す説明図である。
図4図3の清掃具に虫よけ清掃用シートを取り付けた状態を示す説明図である。
図5】上面に虫よけ清掃用シートを挟みこむための溝を設けた清掃具を示す説明図である。
図6図5の清掃具に虫よけ清掃用シートを取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0009】
本発明に用いる不織布は、含浸油剤を充分含浸することができ、清掃に耐えうる強度を持つものであれば、特に制限なく使用することが可能である。特に好ましい不織布としては、例えば、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、サクション不織布、ヒートボンド不織布、メルトブロー不織布等が挙げられ、その一部もしくは全部に分割繊維を使用しても良い。
不織布を形成する繊維組成は、適宜選定することができ、レーヨン、ポリオレフィン、ポリエステル、パルプ等の繊維を単独で、又は、積層して用いることができるが、レーヨンとポリオレフィン繊維を積層させたシートがより好ましい。
さらに本発明に用いられる不織布は、30〜200g/mの目付けであることが望ましい。目付けが小さすぎると不織布として使用した際に、破れの原因となるし、大きすぎると清掃面に力が伝わり難く、実用性の乏しいものとなってしまう。
【0010】
本発明で用いられる油性溶剤としては、いずれのものも使用可能であるが、20℃で液体である油性溶剤がより好ましい。一例としてはパラフィン系炭化水素であるノルマルパラフィンやイソパラフィン、鉱物油、シリコーンオイル、合成油、動物油、植物油、αオレフィン又はαオレフィン誘導体等が挙げられ、これらの油性溶剤を単品または混合して用いることができる。αオレフィンの具体的な例としては、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなどが挙げられ、αオレフィン誘導体の具体的な例としては、2−オクチル−1−ドデセンが挙げられる。
特に、パラフィン系炭化水素、αオレフィン又はαオレフィン誘導体は、汚れ吸着性や潤滑性が良いため、より好ましく用いられる。
【0011】
上記油性溶剤としては、上記の1種または2種以上が油剤全体の70質量%以上99.5質量%以下で含有されるものが好適に使用される。
【0012】
本発明で用いられる虫よけ成分としては、各種の虫よけ成分が使用可能である。
中でも、ピレスロイド系殺虫剤や各種の忌避成分、各種の忌避香料が好適に用いられる。
ピレスロイド系殺虫剤としては、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、トラロメトリン、アレスリン、プラレトリン、レスメトリン、エンペントリン、テラレスリン、トランスフルトリン、フタルスリン、フラメトリン、シフルトリン、イミプロトリン、プロフルトリン、メトフルトリン等が挙げられる。
各種の忌避成分としては、ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル[以降、IR3535と称す]などが例示される。
【0013】
忌避性香料としては、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ヒバ油、ラベンダー油、オレンジ油、グレープフルーツ油、シダーウッド油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、ハッカ油、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、デヒドロリナロール、テルピネオール、メントール、メンタン、p−メンタン−3,8−ジオール、カンフェン、メチルサリシレート、ピネン、リモネン、ゲラニオール、ボルネオール、ゲラニルフォーメート等が挙げられる。
【0014】
本発明ではこれらの虫よけ成分を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
本発明の虫よけ清掃用シートには、紫外線吸収剤を配合することもできる。紫外線吸収剤を配合することにより、夜間に光に誘引されて飛来する虫を抑制する効果を付与することができる。光に誘引される昆虫(走行性昆虫)が最も誘引される波長は360nm付近であるため、最大吸収波長が300〜400nmの紫外線吸収剤を配合することが好ましい。
最大吸収波長が300〜400nmの紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどが挙げられる。
このうちt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンは、油性溶剤への溶解性に優れ、より好適に使用できる。
【0016】
本発明では、虫よけ成分が油剤全体の0.1〜20質量%、紫外線吸収剤が油剤全体の0.1〜5質量%となるような範囲で配合されるのがより好ましい。虫よけ成分や紫外線吸収剤が0.1質量%未満の場合、充分な虫よけ効果が得られず、虫よけ成分が20質量%を超える場合や紫外線吸収剤が5質量%を超える場合は、被清掃面を拭いたときのすべりが悪くなり、好ましくない。
【0017】
また、上記油剤のシートへの含浸量は、1m当たり5〜25gが好ましい。5g未満では、充分な汚れ落とし効果や虫よけ効果が得られず、25gを超えると被清掃面、特に窓ガラスに使用したときに、ギラギラした拭きすじが残り、見苦しくなるため好ましくない。
【0018】
本発明の虫よけ清掃用シートには、上記の虫よけ剤、紫外線吸収剤や油性溶剤以外にも、本発明の特徴を損なわない範囲で、適宜、他の添加物を配合することができる。例えば、殺菌剤、防腐剤、除菌剤、消臭剤、帯電防止剤、防汚剤、水性溶剤、香料などが挙げられる。
【0019】
本発明の清掃具は、弾性のある発泡樹脂製のスポンジでできており、手で握りやすいように横断面がΩ状の把手部と、この把手部の下部に連続する直方体の拭取り部とから構成されている。さらに拭き取り部の側面または上面に、虫よけ清掃用シートを固定するための切り込みまたは溝部を有している。
弾性のある発泡樹脂製のアプリケーターの材質としては、適度な弾力があり作業性がよいものであればいずれであってもよいが、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。このうち、弾力性や、形状の復元性などからウレタン樹脂が特に好ましい。
【0020】
また上記拭き取り部の側面または上面の切り込みまたは溝部は、虫よけ清掃用シートがしっかり固定できるものであればいずれの形状であってもよいが、虫よけ清掃用シートが1cm以上差し込める深さがあることが好ましい。
【0021】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の虫よけ清掃用シートについて、更に詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
表1、表2に示す組成の実施例および比較例を調製し、レーヨン/ポリエステル/レーヨンのスパンレース不織布(目付け:70g/m)に1m当たり15gになるよう含浸し、ドライタイプの虫よけ清掃用シートを作製した。(比較例2〜4については、シート重量に対して5倍量を含浸し、ウェットタイプの清掃用シートを作製した。)これらの清掃用シートを図5の清掃具に巻装して、虫よけ効果および洗浄効果を評価した。
<虫よけ効果>
(1)ガラス箱法
1辺が30cmの正方形のガラス板でガラスの箱を作り、側面4枚のうち2枚を供試シートで2往復拭き取った(処理区)。このガラスの箱の中に、アカイエカ約20匹を放し、各側面にとまる虫の数を観察し、以下の式により忌避率を求めた。求められた忌避率により、◎、○、△、×の4段階で評価した。

:忌避率90%以上 ○:忌避率70%以上90%未満
△ :忌避率40%以上70%未満 ×:忌避率40%未満
忌避率(%)=(A−B)/A×100
(A:無処理区にとまった虫の数 B:処理区にとまった虫の数)
(2)実地試験(夜間)
夜間、蛍光灯を点けた状態(カーテン無し)で、供試シートで2往復拭き取った窓ガラス(90×90cm)に集まってきた虫の数を観察し、無処理区と比較した。観察時間は1時間とした。
◎:虫が全く寄りつかない ○:無処理区より明らかに虫が少ない
△:無処理区より虫がやや少ない ×:無処理区と同程度
<洗浄力試験>
一般家庭の汚れた窓ガラスおよび網戸を供試シートで拭いたあとの汚れの落ち具合を○、△、×で評価した。
○:きれいに落ちる △:汚れが少し残る ×:汚れが残る
【0023】
【表1】



【0024】
【表2】




【0025】
試験の結果、本発明の虫よけ清掃用シートは、虫よけ効果が高く、窓ガラスや網戸の汚れに対して高い洗浄効果が認められた。
【0026】
本発明の虫よけ清掃用シートは、あらかじめ処理面をキレイにしておく必要がなく、拭き取るだけの簡単な操作で、汚れ落としと虫よけ効果の付与を同時に行うことができるため非常に有用である。
【0027】
次に、本発明の清掃具の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。図1〜6は本発明の一実施形態に係る清掃具の斜視図である。図1、3、5に示すように、本発明の清掃具本体1は、横断面がΩ状の把手部2と、この把手部2の下部に連続する直方体の拭き取り部3、さらに、拭き取り部3の側面または上面に虫よけ清掃用シート6を取り付けるための切り込み部4または溝部5を備えている。
本発明において把手部2と拭き取り部3は、図1のように、硬さの異なる2種の発泡樹脂製スポンジを張り合わせて作製してもよく、また図3および図5のように、把手部2と拭き取り部3を一体的に作製してもよい。
図1では、拭き取り部の側面に直線的に切り込み部4を備えている。図3では、拭き取り部の上面に4箇所、切り込み部4を備えている。図5では、拭き取り部の上面に、溝部5を備えている。溝部5は、虫よけ清掃用シート6が外れにくいよう、くの字に成形されている。
図2、4、6は、虫よけ清掃用シート6を取り付けた状態の斜視図である。
【0028】
窓ガラスや網戸などの垂直面を掃除する場合、虫よけ清掃用シートのみを手で持って使用すると、シートが撚れるなどして非常に使いにくく、また網戸の掃除では、力を入れすぎて網戸を撓ませたり、傷めてしまうことがあるが、本発明の清掃具を用いることにより、簡単に窓ガラスや網戸などの掃除を行うことができるので、非常に有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 清掃具本体
2 把手部
3 拭き取り部
4 切り込み部
5 溝部
6 虫よけ清掃用シート


図1
図2
図3
図4
図5
図6