特許第5751811号(P5751811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751811
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】打刻工具
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/02 20060101AFI20150702BHJP
   B25D 5/02 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B21D22/02 A
   B25D5/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-265638(P2010-265638)
(22)【出願日】2010年11月29日
(65)【公開番号】特開2012-115848(P2012-115848A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】岩本 成生
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−171275(JP,A)
【文献】 特公昭49−049567(JP,B1)
【文献】 実開平04−065828(JP,U)
【文献】 特開平07−144233(JP,A)
【文献】 特開平05−221107(JP,A)
【文献】 米国特許第02455270(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/02
B25D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒状に形成されたケーシングと、
前記ケーシング内にて同ケーシングの軸線方向に相対変位可能に配置されたウエイト体と、
前記ウエイト体に対して前記ケーシング内における一方の端部側に同ケーシングに対して相対変位可能に配置され、軸体の一方の端部に被加工物の表面に打刻痕を形成するための打刻部が前記ケーシングの前記一方の端部から露出して形成されるとともに同軸体の他方の端部側に前記ウエイト体に対向する面状の受け部が形成された打刻ピンと、
前記ウエイト体に対して前記ケーシング内における他方の端部側に隣接配置されて同ウエイト体に磁気的に吸着するとともに前記打刻ピンの前記受け部に直接的または間接的に支持されて同打刻ピンの前記ケーシングの前記他方の端部側への相対変位とともに同他方の端部側に前記ウエイト体とともに相対変位する永久磁石と、
前記ウエイト体に対して前記ケーシングにおける前記他方の端部側に直接的または間接的に支持されて同他方の端部側に前記相対変位する前記ウエイト体に接触して前記相対変位を規制するウエイトストッパーと、
前記ウエイト体に対して前記ケーシングにおける前記他方の端部側に同ウエイト体と対向配置された状態で直接的または間接的に支持されるスプリング受け体と、
前記ウエイト体と前記スプリング受け体との間に配置されて前記スプリング受け体に対して前記ウエイト体を押し返す圧縮スプリングからなる打刻スプリングとを備えることを特徴とする打刻工具。
【請求項2】
請求項1に記載した打刻工具において、
前記ウエイト体は、前記打刻ピンにおける前記他方の端部側が摺動可能に貫通して前記永久磁石に達する貫通孔を有し、
前記永久磁石は、前記貫通孔を塞ぐ大きさに形成されて同貫通孔上に配置されていることを特徴とする打刻工具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した打刻工具において、さらに、
前記永久磁石から前記打刻ピンの軸線方向に延びる案内軸と、
前記案内軸を前記打刻ピンの軸線方向に摺動可能に支持する案内スリーブとを備えることを特徴とする打刻工具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した打刻工具において、さらに、
前記永久磁石と前記スプリング受け体との間に磁石戻しスプリングを設けたことを特徴とする打刻工具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した打刻工具において、さらに、
前記打刻ピンにおける前記打刻部の周囲に、同打刻部を覆うカバースリーブを設けたことを特徴とする打刻工具。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した打刻工具において、
前記スプリング受け体は、前記ケーシング対してネジ嵌合することにより同ケーシングの軸線方向に変位可能であることを特徴とする打刻装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した打刻工具において、
前記打刻スプリングは、前記打刻ピンにおける前記受け部に接した前記ウエイト体と同ウエイト体に対向する前記スプリング受け体との互いの対向面間の距離以下の長さに形成されていることを特徴とする打刻工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面に点状の打刻痕を形成するための打刻工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金,プラチナ,真鍮,アルミニウムおよびステンレス鋼などの被加工物の表面に複数の点状の打刻痕を形成して画像を形成する画像形成装置においては、点状の打刻痕を形成する打刻工具をソレノイドによって駆動している(下記特許文献1参照)。また、炭素鋼などの被加工物に穴あけ加工を行うに際して穴あけ加工位置に点状の打刻痕からなるマーキングを形成するための工具として所謂オートポンチが知られている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−160836号公報
【特許文献2】特開2004−188540号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された画像形成装置においては、打刻工具がソレノイドによって駆動されるためソレノイドの発熱により打刻力が不安定と成り易いとともに、ソレノイドを駆動するための機械的および制御的な構成が必要となって画像形成装置の構成が複雑化するという問題があった。また、上記特許文献2に記載されたオートポンチにおいては、バネの圧縮に際して軸体がバネの弾性力を受けながら倣い面上を摺動するため、摺動部分が摩耗してオートポンチの耐久性を低下させるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、画像形成装置の構成を簡単にしつつ打刻力を安定させることができ、摩擦接触部分の摩耗による耐久性の低下を抑えることができる打刻工具を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、略筒状に形成されたケーシングと、ケーシング内にて同ケーシングの軸線方向に相対変位可能に配置されたウエイト体と、ウエイト体に対してケーシング内における一方の端部側に同ケーシングに対して相対変位可能に配置され、軸体の一方の端部に被加工物の表面に打刻痕を形成するための打刻部がケーシングの前記一方の端部から露出して形成されるとともに同軸体の他方の端部側にウエイト体に対向する面状の受け部が形成された打刻ピンと、ウエイト体に対してケーシング内における他方の端部側に隣接配置されて同ウエイト体に磁気的に吸着するとともに打刻ピンの受け部に直接的または間接的に支持されて同打刻ピンのケーシングの前記他方の端部側への相対変位とともに同他方の端部側にウエイト体とともに相対変位する永久磁石と、ウエイト体に対してケーシングにおける前記他方の端部側に直接的または間接的に支持されて同他方の端部側に相対変位するウエイト体に接触して相対変位を規制するウエイトストッパーと、ウエイト体に対してケーシングにおける前記他方の端部側に同ウエイト体と対向配置された状態で直接的または間接的に支持されるスプリング受け体と、ウエイト体とスプリング受け体との間に配置されてスプリング受け体に対してウエイト体を押し返す圧縮スプリングからなる打刻スプリングとを備えることにある。
【0007】
この場合、例えば、請求項2に記載したように、前記打刻工具において、ウエイト体は、打刻ピンにおける前記他方の端部側が摺動可能に貫通して永久磁石に達する貫通孔を有し、永久磁石は、前記貫通孔を塞ぐ大きさに形成されて同貫通孔上に配置されているとよい。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、打刻工具は、永久磁石に吸着したウエイト体が打刻スプリングの弾性力に抗しながらウエイトストッパーまで相対変位することにより永久磁石と分離されて打刻スプリングの弾性力によって打刻ピンを強打する。これにより、打刻工具は、画像形成装置の構成を簡単にしつつ打刻力を安定させることができ、摩擦接触部分の摩耗による耐久性の低下を抑えることができる。
【0009】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記打刻工具において、さらに、永久磁石から打刻ピンの軸線方向に延びる案内軸と、案内軸を打刻ピンの軸線方向に摺動可能に支持する案内スリーブとを備えることにある。これによれば、永久磁石を精度良く打刻ピンの軸線方向に案内することができる。
【0010】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記打刻工具において、さらに、永久磁石とスプリング受け体との間に磁石戻しスプリングを設けたことにある。これによれば、ウエイト体と分離後、永久磁石を精度良くウエイト体側に変位させることができる。
【0011】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記打刻工具において、さらに、打刻ピンにおける打刻部の周囲に、同打刻部を覆うカバースリーブを設けたことにある。これによれば、打刻ピンによって被加工物を打刻した際における破砕物の飛散を防止することができる。
【0012】
また、請求項6に係る本発明の他の特徴は、前記打刻工具において、スプリング受け体は、ケーシング対してネジ嵌合することにより同ケーシングの軸線方向に変位可能であることにある。これによれば、ケーシングの軸線方向におけるスプリング受け体の位置を調整することにより打刻スプリングの圧縮変形量を調整することができるため、打刻ピンの打刻力の強さを調整することができる。
【0013】
また、請求項7に係る本発明の他の特徴は、前記打刻工具において、打刻スプリングは、打刻ピンにおける受け部に接したウエイト体と同ウエイト体に対向するスプリング受け体との互いの対向面間の距離以下の長さに形成されていることにある。これによれば、打刻ピンによって被加工物を打刻した際に打刻スプリングが伸びきってウエイト体を押圧しなくなるため、打刻後の打刻ピンによる被加工物の押圧が解消されて被加工物の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る打刻工具の外観構成を概略的に示す一部破断正面断面図である。
図2図1に示す打刻工具を被加工物に押し込んだ状態を示す一部破断正面断面図である。
図3図1に示す打刻工具が被加工物に打刻する瞬間の状態を示す一部破断正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る打刻装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る打刻工具100の外観構成を概略的に示す一部破断正面断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この打刻工具100は、金,プラチナ,真鍮,アルミニウムおよびステンレス鋼などの被加工物WKの表面に複数の点状の打刻痕を形成してこれらの打刻痕の集合により画像を形成する画像形成装置において打刻痕を形成する工具として用いられるものである。
【0016】
(打刻工具100の構成)
打刻工具100は、鋼製のケーシング101を備えている。ケーシング101は、略円筒状に形成されており、一方の先端部の外側に先端キャップ102がネジ嵌合しているとともに、他方の端部の内側にウエイトストッパー103がネジ嵌合している。先端キャップ102は、鋼材を有底円筒状に形成して構成されており、底部中央部にカバースリーブ104が貫通する貫通孔が形成されている。
【0017】
ウエイトストッパー103は、鋼材を円筒状に形成して構成されており、ケーシング101の内周部にネジ嵌合することにより同ケーシング101の内周部から内側にリング状に張り出した状態で取り付けられている。このウエイトストッパー103の図示上端の開口部は、小径に形成されており、同小径部の内周部に雌ネジが形成されている。
【0018】
カバースリーブ104は、鋼材を円筒状に形成して構成されており、先端キャップ102の底部に形成された貫通孔に摺動自在に嵌まり込んでいる。このカバースリーブ104の筒内には、打刻ピン105が軸線方向に摺動可能な状態で配置されている。打刻ピン105は、被加工物WKに対して点状の打刻痕を形成するための刃物であり、超硬合金を軸状に形成して構成されている。この打刻ピン105には、一方の端部に被加工物WKの表面に打刻痕を形成するための打刻部105aが形成されるとともに他方の端部に面状の受け部105bが形成されている。
【0019】
打刻ピン105における受け部105b側の軸線上には、押し上げピン106が配置されている。押し上げピン106は、鋼製の軸部材であり、ウエイト体107によって支持されている。ウエイト体107は、ケーシング101内において打刻ピン105の軸線方向に沿って相対変位して打刻ピン105の受け部105bを強打するための錘であり、鋼材を略円柱状に形成して構成されている。このウエイト体107は、中央部に貫通孔が形成されており、この貫通孔に前記押し上げピン106が摺動可能な状態で貫通している。
【0020】
ウエイト体107における打刻ピン105とは反対側の面(図示上面)上には、永久磁石108が配置されている。永久磁石108は、ウエイト体107に形成された貫通孔より大きな外径の円柱状に形成されたネオジム磁石であり、ウエイト体107に形成された貫通孔を塞ぐ位置に配置されている。これにより、ウエイト体107と永久磁石108とは磁気的に吸着している。この永久磁石108の図示上面には、打刻ピン105の軸線方向に沿って伸びる案内軸109がナット109aによって固定されている。案内軸109は、鋼製の軸部材であり、スプリング受け体110に形成された案内スリーブ111によって支持されている。
【0021】
スプリング受け体110は、鋼材を筒部と同筒部の一端部がフランジ状に張り出した鍔部とを有した略円筒状に形成して構成されており、前記鍔部をケーシング101内におけるウエイト体107の上面に対向させた向きでウエイトストッパー103に支持されている。このスプリング受け体110の筒部の外周面には、ウエイトストッパー103の内周面に形成されて雌ネジと噛合う雄ネジが形成されている。すなわち、スプリング受け体110は、ウエイトストッパー103にネジ嵌合することにより同ウエイトストッパー103を介してケーシング101に対してケーシング101の軸線方向の位置が調整可能な状態で取り付けられている。このスプリング受け体110の内周部には、案内軸109が摺動可能に貫通する案内スリーブ111が形成されている。
【0022】
ウエイト体107の図示上面における永久磁石108の外側には、同ウエイト体107の図示上面とスプリング受け体110の鍔部との間に打刻スプリング112が設けられている。打刻スプリング112は、鋼線材を螺旋状に巻いた弾性体である。この打刻スプリング112は、ウエイト体107が打刻ピン105の受け部105bに接触する変位可能最下端位置において、スプリング受け体110の鍔部とウエイト体107の上面との互いの対向面間の距離以下の長さに形成されている。また、ナット109aの図示上面と案内スリーブ110のスプリング受け体110の鍔部との間には、磁石戻しスプリング113が設けられている。磁石戻しスプリング113は、鋼線材を螺旋状に巻いた弾性体である。
【0023】
(打刻工具100の作動)
次に、上記のように構成した打刻工具100の作動について説明する。まず、作業者は、図示しない画像形成装置、被加工物WKおよび打刻工具100をそれぞれ用意する。次に、作業者は、画像形成装置の図示しない加工テーブル上に被加工物WKをセットするとともに、同画像形成装置における図示しない主軸に打刻工具100を取り付ける。この場合、打刻工具100は、打刻部105aが被加工物WKに対向する向きで図示しないコレットにケーシング101を把持させて画像形成装置の主軸に取り付けられる。
【0024】
次に、作業者は、画像形成装置における図示しない入力装置を操作することにより、被加工物WKに対して打刻工具100による打刻加工処理を開始させる。この指示に応答して、画像形成装置は、主軸を被加工物WK側に変位させることにより打刻工具100を被加工物WKの表面に接近させて押し付ける。この場合、打刻工具100の先端部から露出する打刻ピン105の打刻部105aが被加工物WKの表面に接すると、図2に示すように、打刻ピン105の変位が停止するとともに同打刻ピン105に対してケーシング101が被加工物WK側に変位する。
【0025】
このため、打刻ピン105および同打刻ピン105の受け部105b上に配置された押し上げピン106に対してウエイト体107および同ウエイト体107に磁気的に吸着している永久磁石108が打刻ピン105側に向って変位する。これにより、打刻ピン105は、押し上げピン106を介して永久磁石108の底面を支持する。すなわち、ウエイト体107および同ウエイト体107に磁気的に吸着している永久磁石108は、押し上げピン106を介して打刻ピン105に突き当ることにより打刻ピン105側への変位が停止する。また、ケーシング101に取り付けられたカバースリーブ104は、ケーシング101とともに被加工物WK側に変位して被加工物WKの表面に押し付けられて打刻部105aの周囲を覆う。
【0026】
そして、さらにケーシング101が被加工物WK側に変位することにより、ケーシング101取り付けられたウエイトストッパー103および同ウエイトストッパー103を介して取り付けられたスプリング受け体110が打刻ピン105に向ってそれぞれ変位する。このため、ウエイト体107とスプリング受け体110との間に配置された打刻用コイルスプリング112は、打刻ピン105に永久磁石108を介して支持されたウエイト体107と、同ウエイト体107に向って変位するスプリング受け体110との圧縮によって弾性的に圧縮変形する。そして、この場合、打刻スプリング112を圧縮するウエイト体107およびスプリング受け体110は、打刻スプリング112の弾性力を受けて摩擦摺動することなく打刻スプリング112を圧縮している。
【0027】
また、この打刻スプリング112の圧縮変形とともにウエイトストッパー103の下端部がウエイト体10の上面に向って接近する。そして、さらにケーシング101が被加工物WK側に変位することにより、ウエイトストッパー103の下端部がウエイト体10の上面を押圧する。この場合、図3に示すように、永久磁石108がウエイト体107を磁気的に吸着する吸着力より大きな力でウエイトストッパー103がさらに被加工物WK側に変位することにより、ウエイト体107が永久磁石108から離脱する。これにより、打刻スプリング112の圧縮状態が開放されるため、ウエイト体107は打刻スプリング112の弾性力によって打刻ピン105側に勢い良く押し出される。
【0028】
そして、打刻ピン105側に押し出されたウエイト体107が打刻ピン105の受け部105bを強打することにより、打刻ピン105の打刻部105aが被加工物WKの表面を強打する。これにより、被加工物WKの表面に点状の打刻痕が形成される。また、ウエイト体107が永久磁石108から離脱することにより、磁石戻しスプリング113の圧縮状態も開放されるため、永久磁石108は磁石戻しスプリング113の弾性力によってウエイト体107側に押し出される。これにより、永久磁石108が打刻スプリング112に磁気的に吸着して引っ掛かることが防止される。
【0029】
一方、ウエイト体107が打刻ピン105側に変位すると、打刻スプリング112は圧縮変形が解消された状態となる。この場合、打刻スプリング112は、ウエイト体107の上面とスプリング受け体110との間の距離以下の長さに形成されているため、ウエイト体107の上面とスプリング受け体110との間において完全に伸びきった状態となる。このため、打刻ピン105は、被加工物WKの打刻後においては被加工物WKを押圧しない。これにより、打刻後の被加工物WKにさらに打刻部105aが押し付けられることによる被加工物WKの損傷が防止される。
【0030】
そして、被加工物WKへの1回の打刻が終了した後、画像形成装置は主軸を被加工物WKから離隔させる方向に変位させる。これにより、打刻工具100は、図1に示す初期の状態に復帰する。そして、画像形成装置は、再度被加工物WKに対して打刻痕を形成する場合には、再び、主軸を被加工物WKに向けて変位させる。すなわち、画像形成装置は、打刻工具100を被加工物WKの表面に押し付けるとともにその後離隔させる動作のみで被加工物WKの表面に打刻痕を形成することができる。
【0031】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、打刻工具100は、永久磁石108に吸着したウエイト体107が打刻スプリング112の弾性力に抗しながらウエイトストッパー103まで相対変位することにより永久磁石108と分離されて打刻スプリング112の弾性力によって打刻ピン105を強打する。これにより、打刻工具100は、画像形成装置の構成を簡単にしつつ打刻力を安定させることができ、摩擦接触部分の摩耗による耐久性の低下を抑えることができる。
【0032】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態においては、打刻ピン105は、押し上げピン106を介して永久磁石108を支持した。しかし、打刻ピン105は、押し上げピン106を一体成形することにより永久磁石108を直接支持するようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、ウエイトストッパー103は、ケーシング101に対してネジ嵌合により取り付けられている。しかし、ウエイトストッパー103は、ケーシング101に一体成形されていてもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては、スプリング受け体110は、ウエイトストッパー103を介してケーシング101に取り付けられている。しかし、スプリング受け体110は、ウエイトストッパー103またはケーシング101に一体成形されていてもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、案内軸109および案内スリーブ111を設けた。しかし、案内軸109および案内スリーブ111は、永久磁石108をより精度良くケーシング101の軸線方向に変位させるためのものであり、必ずしも必要なものではない。
【0037】
また、上記実施形態においては、磁石戻しスプリング113を設けた。しかし、磁石戻しスプリング113は、永久磁石をより精度良くウエイト体107側に変位させるためのものであり、必ずしも必要なものではない。
【0038】
また、上記実施形態においては、カバースリーブ104を設けた。しかし、カバースリーブ104は、打刻ピン105によって被加工物WKを打刻した際における破砕物の飛散を防止するためのものであり、必ずしも必要なものではない。
【0039】
また、上記実施形態においては、打刻スプリング112は、ウエイト体107の上面とスプリング受け体110との間の距離以下の長さに形成されている。しかし、打刻スプリング11の長さをウエイト体107の上面とスプリング受け体110との間の距離よりも長い長さに設定することにより、被加工物WKの打刻後において被加工物WKをさらに押圧することもできる。
【符号の説明】
【0040】
WK…被加工物、
100…打刻工具、101…ケーシング、102…先端キャップ、103…ウエイトストッパー、104…カバースリーブ、105…打刻ピン、105a…打刻部、105b…受け部、106…押し上げピン、107…ウエイト体、108…永久磁石、109…案内軸、109a・・・ナット、110…スプリング受け体、111…案内スリーブ、112…打刻スプリング、113…磁石戻しスプリング。
図1
図2
図3