(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751844
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】圧電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 41/338 20130101AFI20150702BHJP
H01L 41/332 20130101ALI20150702BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20150702BHJP
H01L 41/18 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
H01L41/338
H01L41/332
H03H3/02 C
H03H3/02 D
H01L41/18 101A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-9397(P2011-9397)
(22)【出願日】2011年1月20日
(65)【公開番号】特開2012-151317(P2012-151317A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2014年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】多田 耕三
(72)【発明者】
【氏名】奥野 正敏
(72)【発明者】
【氏名】桜井 秀昌
(72)【発明者】
【氏名】田中 博己
【審査官】
境 周一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−091685(JP,A)
【文献】
特開2009−184810(JP,A)
【文献】
特開2010−178169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00−41/47
H03H 3/007−3/06
H03H 9/00−9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子をベース基板上に搭載してなる圧電デバイスの製造方法であって、
圧電材料からなる圧電素子ウエハ内に前記圧電素子を一体的に形成する工程と、
前記圧電素子ウエハ内に一体的に形成された前記圧電素子をウエハ状態のまま前記ベース基板に接合する工程と、
前記ベース基板に接合された前記圧電素子を前記圧電素子ウエハから分離させる工程と、
前記ベース基板に接合された前記圧電素子を除く領域の前記圧電素子ウエハを取り除く工程と、を有し、
前記圧電素子を前記圧電素子ウエハから分離させる工程において、前記ベース基板に接合された前記圧電素子を前記ベース基板側へ押さえ付けた状態で、前記ベース基板に接合された前記圧電素子を除く領域の前記圧電素子ウエハと前記ベース基板とを相対的に離反させて前記圧電素子と前記圧電素子ウエハとの接続部に応力を発生させ、当該応力により前記接続部を破断させて前記圧電素子を前記圧電素子ウエハから分離させると同時に前記圧電素子ウエハを取り除くことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記圧電素子ウエハを真空吸着により取り除くことを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子をベース基板上に搭載してなる圧電デバイスが周知の如く知られており、その製造方法として、以下に示すものが知られている。
図4は従来技術における圧電デバイスの製造方法を模式的に示す斜視図で、ここに示す製造方法では、まず、圧電材料からなる平板状の圧電素子ウエハ1内にエッチング等の加工技術や蒸着等の成膜技術を適宜用いて圧電素子2を一体的に形成し、続いて、圧電素子ウエハ1内に一体的に形成された圧電素子2に上方から機械的圧力を付与することで、圧電素子2と圧電素子ウエハ1とを繋ぐ梁状の接続部3を破断させて圧電素子2を個片化すると同時に、個片化した圧電素子2を予め圧電素子ウエハ1の下方に配置した整列用トレイ4の素子収納用凹部4a内にそのまま落とし込んで整列させ、その後、真空吸着等により整列用トレイ4から圧電素子2を1つずつ取り出して、ベース基板5上の予め導電性接着剤等の接合部材6が配された領域に搭載する。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−135131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術における圧電デバイスの製造方法では、圧電素子ウエハから分離させた圧電素子を整列用トレイに一旦整列させ、更にそこから圧電素子を1つずつ取り出してベース基板上へ移載(搭載)する必要があり、生産性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、生産性の良い圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
圧電素子をベース基板上に搭載してなる圧電デバイスの製造方法であって、前記圧電素子を圧電素子ウエハ内に一体的に形成する工程と、前記圧電素子ウエハ内に一体的に形成された前記圧電素子をウエハ状態のまま前記ベース基板に接合する工程と、前記ベース基板に接合された前記圧電素子を前記圧電素子ウエハから分離させる工程と、前記ベース基板に接合された前記圧電素子を除く領域の前記圧電素子ウエハを取り除く工程と、を有
し、前記圧電素子を前記圧電素子ウエハから分離させる工程において、前記ベース基板に接合された前記圧電素子を前記ベース基板側へ押さえ付けた状態で、前記ベース基板に接合された前記圧電素子を除く領域の前記圧電素子ウエハと前記ベース基板とを相対的に離反させて前記圧電素子と前記圧電素子ウエハとの接続部に応力を発生させ、当該応力により前記接続部を破断させて前記圧電素子を前記圧電素子ウエハから分離させると同時に前記圧電素子ウエハを取り除く圧電デバイスの製造方法とする。
【0007】
前記圧電素子ウエハを
真空吸着により取り除
く圧電デバイスの製造方法とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧電素子ウエハから分離した圧電素子を整列用トレイに整列させる必要はなく、また、整列用トレイからベース基板へ移載する必要もないため、その分の工数を削減することができ、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施例における圧電デバイスの製造方法を模式的に示す斜視図(実施例1)
【
図3】本発明の一実施例における圧電デバイスの製造方法を模式的に示す斜視図(実施例2)
【
図4】従来技術における圧電デバイスの製造方法を模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、同一又は相当の要素には同一の符号を付してある。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明の一実施例における圧電デバイスの製造方法を模式的に示す斜視図、
図2は圧電デバイスの側面断面図である。本実施例において製造する圧電デバイスは、
図2に示すような、平板状のベース基板5上に音叉型の圧電素子2を搭載してキャップ状の蓋部材7で気密封止したパッケージ型の圧電デバイスであり、製造する際には、まず、
図1に示すように、水晶等の圧電材料からなる平板ウエハ状の圧電素子ウエハ1内に、エッチング等の加工技術や蒸着等の成膜技術を適宜用いて、素子として動作可能な状態の圧電素子2を複数一体的に形成する(工程1)。この時、圧電素子2は、梁状の接続部3を介して片持支持状に圧電素子ウエハ1に接続された状態とされる。なお、圧電素子2と圧電素子ウエハ1との接続形態はこれに限定されず、例えば、圧電素子2が複数の接続部3を介して圧電素子ウエハ1に接続される形態や、圧電素子2の外周全てが圧電素子ウエハ1に接続されるような形態も取り得る。
【0029】
次に、圧電素子2が一体的に形成された圧電素子ウエハ1と、予め圧電素子2の搭載予定領域に導電性接着剤や金属ろう材等の接合部材6が配された平板ウエハ状のベース基板5とを、圧電素子2がベース基板5上の搭載予定領域に位置するように互いに位置決めをした上で主面同士を突き合わせて配置し、その状態で接合部材6を溶着又は硬化させるために必要な加熱等の処理を適宜行い、接合部材を6介して圧電素子2をベース基板5に接合する(工程2)。
【0030】
なお、圧電素子ウエハ1とベース基板5の位置決めは、それらのうち何れか一方にピンを設け、それを他方に設けた孔部に係合させることで互いの位置決めを行う所謂「ピンアライメント」やカメラを用いた画像認識等により行われる。
【0031】
また、圧電素子2のベース基板5への接合は、必ずしも接合部材6を介して行う必要はなく、圧電素子2とベース基板5との機械的接続が行えるのであればその他の手段を用いても構わず、例えば、表面活性化接合により圧電素子2をベース基板5に直接接合するような形態も取り得る。
【0032】
また、ベース基板5はウエハ状である必要はなく、予め製品領域毎に切断した個片状のものを整列用トレイに整列させておき、そこに圧電素子ウエハ1を突き合わせるようにしてもよい。
【0033】
ここで、圧電素子2のベース基板5への搭載は、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させることなくウエハ状態のまま行われるため、従来のように圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させて整列用トレイ4に一旦整列させ、更にそこからベース基板5上へ移載する工程が省略される。
【0034】
また、圧電素子2はフォトリソグラフィー等の微細加工技術を用いて圧電素子ウエハ1内に高い位置精度で形成されていることから、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離せずにそのままベース基板5に接合することで、その高い位置精度を保ったまま圧電素子2をベース基板5上に搭載することができる。
【0035】
次に、圧電素子2と圧電素子ウエハ1との接続部3にレーザーを照射又は機械的圧力を付与し、接続部3を切断又は破断させて圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させる(工程3)。
【0036】
なお、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させるその他の方法としては、ダイシング、エッチング、サンドブラスト等が適宜選択され得る。
【0037】
次に、圧電素子2が切り離されて不要となった、圧電素子2を除く領域の圧電素子ウエハ1を、真空吸着や把持治具(ロボットハンド)等によりベース基板5から離反させてベース基板5上から取り除く(工程4)。
【0038】
ここで、圧電素子ウエハ1をベース基板5上から取り除く手段として真空吸着を用いれば、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させる際に発生した切断屑の除去も同時に行うことができる。
【0039】
その後の工程としては、ベース基板5の圧電素子2が搭載された側の面に、各圧電素子2を個別に収容する複数の凹部が一体的に形成されたウエハ状の蓋部材(不図示)を接合し、その後、ベース基板5と蓋部材との接合体をダイシング等により製品領域毎に切断して個片化し、
図2に示すような圧電デバイスを得る。
【0040】
なお、ベース基板5と蓋部材の個片化は、上述のように互いをウエハ状態で接合した後に一括して行う必要はなく、例えば、ベース基板5に蓋部材7を接合する前に、予めベース基板5と蓋部材7とをそれぞれ個別に個片化しておき、個片化したベース基板5と蓋部材7同士を接合するような形態も取り得る。
【実施例2】
【0041】
図3は本発明の一実施例における圧電デバイスの製造方法を模式的に示す斜視図である。前述の実施例1では、圧電素子2をベース基板5に接合した後、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から一旦分離させてから、圧電素子2を除く領域の圧電素子ウエハ1をベース基板5上から取り除いているのに対し、本実施例2では、圧電素子2をベース基板5に接合した後、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させるのと同時に、圧電素子2を除く領域の圧電素子ウエハ1をベース基板5上から取り除いている。具体的には、まず、実施例1と同様に、圧電素子ウエハ1内に圧電素子2を一体的に形成する工程と、圧電素子2が一体的に形成された圧電素子ウエハ1をベース基板5に突き合せて圧電素子2をベース基板5に接合する工程を順次行う。
【0042】
その後、必要に応じて圧電素子2にのみ上方から治具(不図示)を当接させるなどして圧電素子2をベース基板5側へ適度に押さえ付けた上で、圧電素子2を除く領域の圧電素子ウエハ1を真空吸着や把持治具(ロボットハンド)等によりベース基板5から離反させ、それにより生じるせん断応力により圧電素子2と圧電素子ウエハ1との接続部3を破断させて圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させると同時に、圧電素子2を除く領域の圧電素子ウエハ1をベース基板5上から取り除く。以降の工程は、実施例1と同様である。
【0043】
本実施例2では、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させるのと同時に、圧電素子2を除く領域の圧電素子ウエハ1をベース基板5上から取り除いているため、実施例1のようにそれぞれの工程を別々に行うよりも工程を簡略化することができる。
【0044】
なお、圧電素子2のベース基板5に対する接合力が十分大きい場合には、圧電素子ウエハ1をベース基板5から離反させる際に、必ずしも圧電素子2を治具等でベース基板5側へ押さえ付けておく必要はない。
【0045】
また、圧電素子ウエハ1をベース基板5から離反させる際の圧力で圧電素子2の接合位置がずれたりしないのであれば、圧電素子ウエハ1をベース基板5から離反させる工程を、圧電素子2をベース基板5に完全に接合する前、即ち、圧電素子2の接合に接合部材6を用いる場合には、接合部材6を完全に溶着又は硬化させる前に行い、その後に圧電素子2をベース基板5に完全に接合するようにしてもよい。
【0046】
また、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離し易くするため、圧電素子ウエハ1をベース基板5から離反させる工程の前に、予め圧電素子2と圧電素子ウエハ1との接続部3を、ダイシング、エッチング、レーザー等により、圧電素子2が圧電素子ウエハ1から分離し易くなるように加工したり(溝や貫通孔の形成等)、破断し易くなるように改質(脆弱化)したりしてもよい。
【0047】
また、本実施例2の変形例として、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させると同時に圧電素子2を除く領域の圧電素子ウエハ1をベース基板5上から取り除く工程を、以下の工程に置き換えてもよい。即ち、圧電素子2をウエハ状態のままベース基板5に接合した後、圧電素子2の形成領域をレジスト層により保護した上で圧電素子ウエハ1全体をエッチングし、レジスト層で覆われていない領域の圧電素子ウエハ1を溶解させて消失させることにより、圧電素子2を圧電素子ウエハ1から分離させると同時に、圧電素子2を除く領域の圧電素子ウエハ1をベース基板5上から取り除く。
【0048】
この変形例では、圧電素子2と圧電素子ウエハ1とを強引に引き離すようなことがないため、圧電素子2の位置ずれ、脱離、切断不良(クラック)等が生じる虞はない。
【0049】
以上、実施例を挙げて本発明について説明したが、本発明はそれら実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、圧電素子2は、圧電素子ウエハ1内に複数形成されていなくともよく、少なくとも1つ形成されていればよい。また、圧電素子2の材料は、水晶に限らず、その他種々のものが適宜選択され得る。また、圧電素子ウエハ1とベース基板5の形状は、接合のし易さからすれば、共に平板状であることが望ましいが、物理的に接合が能な形状であれば、その他の形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 圧電素子ウエハ
2 圧電素子
3 接続部
4 整列用トレイ
4a 素子収納用凹部
5 ベース基板
6 接合部材
7 蓋部材