【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、薬物粒子が不溶性である溶媒を用い、その溶媒に可溶な可食性高分子を選択して薬物粒子を含むフィルム状製剤を調製することにより、口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度を持ち、かつ、外観及び触感に優れるフィルム状製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、
水溶性であって極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子(ただし、アポモルフィンを除く)とを含有し、前記薬物粒子の平均粒子径が0.1〜60μmであり、前記薬物粒子は、
前記平均粒子径の標準偏差が9.4μm以下となるように整粒された状態で前記水及び前記極性有機溶媒に可溶性である前記可食性高分子を含む基材内に、均一に分散されているフィルム状製剤である。
また、上記可食性高分子は、常温で固体であることが好ましい。
また、上記可食性高分子は、ポリビニルピロリドン及び/又はヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましい。
また、上記ポリビニルピロリドンは、分子量が2500〜300万であることが好ましい。
また、上記ヒドロキシプロピルセルロースは、分子量が1万〜115万であることが好ましい。
また、上記ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロポキシル基の置換度が50〜100%であることが好ましい。
また、上記極性有機溶媒は、溶解パラメーターが9.7以上であるものであることが好ましい。
また、本発明は、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、
水溶性であって極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子(ただし、アポモルフィンを除く)とを含有するフィルム状製剤の製造方法であって、上記可食性高分子、上記薬物粒子及び極性有機溶媒を含有する薬物分散液を調製し、上記薬物分散溶液の薄層を形成して該薄層を乾燥させる工程を有し、前記薬物粒子の平均粒子径が0.1〜60μmであり、前記薬物粒子は、
前記平均粒子径の標準偏差が9.4μm以下となるように整粒された状態で前記水及び前記極性有機溶媒に可溶性である前記可食性高分子を含む基材内に、均一に分散されているフィルム状製剤の製造方法である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のフィルム状製剤は、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子と、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子とを含有するものである。
ここで、本明細書では、「水及び極性有機溶媒に可溶性である」とは、20℃下において1gの溶質を溶かす水及び極性有機溶媒の量が5mL未満である場合をいい、「極性有機溶媒に不溶性である」とは、20℃下において1gの溶質を溶かす極性有機溶媒の量が100mL以上必要である場合をいう。なお、20℃下において1gの溶質を溶かす極性有機溶媒又は水の量が3mL未満であれば「易溶性である」という表現を用いる。
【0010】
図1は、本発明のフィルム状製剤の実施態様の1例を示す模式図であり、
図1に示すように、有機溶媒に不溶性である薬物粒子1aが、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子を含む基材1b中に分散されている。
【0011】
上記薬物粒子は、基材表面上に又は基材内の特定部位に局在化していることができるが、基材内に均一に分散されていることが好ましい。上記薬物粒子が基材内に均一に分散されることで、口腔内での迅速な薬物の放出が可能となり、また、フィルム状製剤の物理的特性が良好となる。したがって、本発明のフィルム状製剤では、薬物粒子は、被覆、例えばマイクロカプセルで被覆される必要性がなく、薬物粒子の所望の薬物放出能を達成することができる。
【0012】
本発明のフィルム状製剤の厚みとしては特に限定されないが、例えば、30〜300μmであることが好ましい。30μm未満であると、本発明のフィルム状製剤のフィルム強度及び製品の取り扱い性の観点から問題となる可能性があり、300μmを超えると、本発明のフィルム状製剤の口腔内での溶解に時間がかかり、容易に溶解しない可能性がある。
なお、本発明のフィルム状製剤の平面形状としては特に限定されず、例えば、長方形、正方形、円形等の任意の形状が挙げられる。
【0013】
本発明で使用する薬物粒子は、極性有機溶媒に不溶性である溶解特性を持つものである。
本発明のフィルム状製剤は、上記薬物粒子として上記溶解特性を有するものを用いる一方で、該薬物粒子を分散させる可食性高分子として、後述するように水及び極性有機溶媒に対して可溶性であるものを用いる。このような溶解特性を持つ薬物粒子と可食性高分子とを組み合わせて用い、製造時の溶媒として極性有機溶媒を用いることで、本発明のフィルム状製剤は、上記薬物粒子を粒子状で含有させることができ、薬物粒子の粒子径の制御も容易にすることができる。なお、フィルム状製剤中で再結晶した状態で含まれる薬物粒子と、粒子の状態で含まれる薬物粒子とは、当業者であれば、例えば、次の基準に従って、顕微鏡観察により容易に、かつ、明確に見分けることができる。
すなわち、フィルム状製剤中で粒子の状態で含まれる薬物粒子は、かかる粒子が、フィルム状製剤中で自然発生的に形成されることから、無定形と呼ばれることもある不規則かつ不均一な形状及びサイズを有する。これに対し、フィルム状製剤中で再結晶した状態で含まれる薬物粒子は、製造者が製造時に粒径を制御することから、人為的な形状及びサイズを有する。
【0014】
また、上記薬物粒子は、常温にて固体であるものが好ましい。上記薬物粒子が常温で固体であると、本発明のフィルム状製剤中で上記薬物粒子は、粒子としての形態を容易に形成することができる。なお、上記「常温で固体である」とは、20℃で流動性を有しないことを意味する。
【0015】
本発明のフィルム状製剤において、上記薬物粒子の平均粒子径は、0.1〜60μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、各薬物粒子が凝集する可能性があり、フィルム状製剤の柔軟性が部位により不均一となる可能性がある。また、平均粒子径が60μmを超えると、実用的な厚さのフィルム状製剤に含有させた際、製剤の柔軟性がやはり部位により不均一となる可能性がある。
上記薬物粒子の平均粒子径は、0.1〜30μmであることがより好ましい。この範囲にあることで、実用上の厚みにおいて強度及び柔軟性が均一なフィルム状製剤を調製することが可能である。
ここにいう平均粒子径とは、その円相当径の50容量%平均粒子径を意味する。また、上記円相当径とは、投影面積円相当経を意味し、より具体的には、粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径であり、Heywood径とも呼ばれるものである。
上記薬物粒子の平均粒子径が上記の範囲外の場合には、平均粒子径を上記の範囲となるように整粒したものを用いることができる。なお、平均粒子径の調整は、粉砕、乾式粉砕法、湿式造粒法等による造粒、篩や分級機等を用いた分級等により行うことができる。
【0016】
また、薬物粒子、製剤の物理特性及び外観の観点から、上記薬物粒子は、整粒されたものが好ましい。なお、整粒するための技術的手段は公知の手段が挙げられ、例えば、スプレードライング、ジェットミリング等が挙げられる。
また、上記薬物粒子は、製剤の物理特性及び外観の観点からは、マイクロカプセル化される必要性がないものである。マイクロカプセル化されていない薬物粒子は、速溶性の観点から好ましい。
【0017】
本発明において、上記薬物粒子とは、固体薬物塊を意味する。
このような薬物粒子としては、上述した極性有機溶媒に不溶性である溶解特性を有し、経口投与できるものであれば特に限定はない。具体的に挙げるならば、例えば、鎮静剤、去痰剤、下剤、抗癌剤、糖尿病薬、抗パーキンソン病薬、抗鬱薬、精神安定剤、痴呆症薬、降圧剤、高脂血漿薬、片頭痛薬、骨粗鬆治療薬、低血圧治療薬、鎮咳剤、消化性潰瘍用剤、頻尿・排尿障害薬、尿失禁薬、抗潰瘍薬、アレルギー薬、5−HT3受容体拮抗薬(制吐薬)等が挙げられる。
【0018】
上記薬物粒子として、より具体的には、グアヤコールスルホン酸カリウム粒子、グルタチオン(還元型)粒子、アミノフィリン粒子等が挙げられる。
【0019】
また、上記薬物粒子は、苦味のないものが好適ではあるが、苦味のあるものであっても、苦味マスキング技術、例えば、マイクロカプセル化、苦味遮蔽剤、甘味剤、嬌味剤及び芳香剤添加等により好適に使用できる。
【0020】
上記薬物粒子の配合量は、使用する薬物粒子の性質等によっても異なるが、本発明のフィルム状製剤に含まれる固形分の全重量中、0.1〜80重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度を得ることができないことがある。なお、口腔内における水溶性ポリマー依存のネバネバ感、指で触った際の触感において薬物を溶解してフィルムを調製した場合と比較しても明らかな向上は見られなくなることがあるが、実用上は問題ない。一方、80重量%を超えると、上記薬物粒子の粒子径をかなり小さくしない限り、製品の保型性等の問題が出てくることがある。より好ましい上限は60重量%である。60重量%以下であることで、本発明の上記効果をより好適に得ることができる。
【0021】
上記可食性高分子は、本発明のフィルム状製剤の基材を構成する成分であり、フィルム形成能を有するものである。
上記可食性高分子は、水及び極性有機溶媒の双方に可溶性であり、可食性を有するものであれば特に限定されないが、常温で固体であることが好ましい。
このような可食性高分子は、分子量が好ましくは2000〜400万である。2000未満であると、フィルム成型性が乏しく、フィルム状製剤の形状を維持することが困難となる可能性がある。一方、400万を超えると、フィルム状製剤の溶解性が乏しくなり、実用上問題となる可能性がある。より好ましくは2500〜300万である。
【0022】
上記可食性高分子としては、具体的には、ポリビニルピロリドン(以下“PVP”と記す)及び/又はヒドロキシプロピルセルロース(以下“HPC”と記す)が好適に用いられる。
これらの可食性高分子は、水及び極性有機溶媒に充分に可溶性を示すものであり、フィルム状製剤に用いた場合、口腔内において迅速に溶解するということと、製造時に薬物粒子が不溶性である有機溶媒を用いることが可能であることという双方の条件を満たす。それにより、極性有機溶媒に不溶性である薬物粒子を粒子状態でフィルム状製剤の基材中に均一分散担持させることが可能となる。
上記可食性高分子のなかでも、より好ましいのはHPCである。これは、相対湿度に対する吸湿性が、PVPと比較してHPCの方が低く、実用上の観点から好ましいと考えられるからである。
【0023】
上記PVPは、分子量が2500〜300万であることが好ましい。2500未満であると、安定性及び吸湿性が悪くなる恐れがあり、逆に300万を超えると、溶解性が悪くなる恐れがある。より好ましくは2500〜120万であり、更に好ましくは2500〜100万である。
なお、本明細書において、分子量とは重量平均分子量を意味し、ゲル浸透クロマトグラフ分析により得られる。
【0024】
上記HPCは、分子量が1万〜115万であることが好ましい。1万未満であると、吸湿性及び安定性が悪くなる恐れがあり、115万を超えると、溶解性が悪くなる恐れがある。より好ましくは1万〜37万である。
【0025】
上記HPCは、ヒドロキシプロポキシル基の置換度が50〜100%であることが好ましい。50%未満であると、水及び有機溶媒への溶解性が悪くなる恐れがある。なお、上記ヒドロキシプロポキシル基の置換度の測定方法は、第十五改正日本薬局法・医薬品化各条・ヒドロキシプロピルセルロース・定量法に従う。上記HPCのヒドロキシプロポキシル基の置換度は、53.4%以上であることがより好ましい。
【0026】
本発明のフィルム状製剤は、上述した可食性高分子以外に、例えば、水にのみ可溶である可食性高分子又は水にも極性有機溶媒にも不溶性である可食性高分子を適量組み合わせて用いることもできる。このような可食性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、結晶セルロース等の合成高分子化合物、アルギン酸ソーダ、デキストラン、カゼイン、プルラン、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、トラガンカントガム、アカシアガム、アラビアガム、澱粉等の天然物より得られる高分子化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明のフィルム状製剤において、上記可食性高分子の配合量は、フィルム状製剤に含まれる固形分重量全体に対して、1〜80重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、本発明のフィルム状製剤中の上述した薬物粒子の配合量が多くなり過ぎることがあり、該薬物粒子の粒子径をかなり小さくしない限り、製品の保型性等の問題が出てくることがある。一方、80重量%を超えると、口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度を得ることができないことがある。より好適には、10〜70重量%である。
【0028】
本発明のフィルム状製剤は、上述した各物質以外に、所望により香料、嬌味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤、可塑剤(ポリエチレングリコール(PEG)等)等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜使用して差支えない。
【0029】
また、本発明のフィルム状製剤は、所望により、単糖〜六糖の糖及びこれらの糖アルコールの粒子を含むことができる。
本発明のフィルム状製剤は、上記薬物粒子を一旦溶解させるものではないため、これらの糖又は糖アルコールを整粒された形態で含有することができ、フィルム状製剤の物理的特性及び外観を低下させるリスクを低減しつつ、フィルム状製剤に甘味や保湿性を付与することができる。
【0030】
上記単糖類としては、例えば、エリスロース、スレオース等のアルドテトロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキソース、エリスルロース等のケトテトロース、キシルロース、リブロース等のケトペントース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。
また、二糖類としては、例えば、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース等のα−ジグルコシド、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース等のβ−ジグルコシド、ネオトレハロース等のα,β−ジグルコシドの他、ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース)等が挙げられる。
また、三糖類としては、例えば、ラフィノースを挙げることができ、三糖〜六糖のオリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖等が挙げられる。
【0031】
また、単糖の糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール等のテトリトール、D−アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D−イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D−グルシトール(ソルビトール)、マンニトール等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール等が挙げられる。
また、二糖の糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられ、オリゴ糖としては、ペンタエリスリトール、還元麦芽糖水飴などが挙げられる。
【0032】
本発明のフィルム状製剤に口腔内における易溶解性を付与する観点からは、単糖類〜三糖類、及び、それらの糖アルコールが好ましく用いられる。更には、吸湿性の低いラクトース、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、還元パラチノース(イソマルト)がより好ましい。
【0033】
上記単糖〜六糖の糖及びこれらの糖アルコールからとしては、0.1〜60μmの平均粒子径を有する粒子を含むものを用いることが好ましい。0.1μm未満であると、各粒子が凝集する可能性があり、本発明のフィルム状製剤の柔軟性が部位により不均一となる可能性がある。一方、60μmを超えると、実用的な厚さのフィルム状製剤に含有させた際、フィルム状製剤の柔軟性がやはり部位により不均一となる可能性がある。上記糖及び糖アルコールは、0.1〜30μmの平均粒子径を有することがより好ましい。
なお、上記糖及び糖アルコールの平均粒子径は、以下のように、レーザー散乱式粒度分布測定装置により測定した50容量%平均粒子径をいう。
すなわち、0.2重量%のポリオキシエチレンモノラウリン酸エステルのクロロホルム溶液3mL中に、10mgの糖又は糖アルコール粒子を添加し、超音波により充分に分散させた分散液を、レーザー散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−950)における透過率が75〜85%を示すようにクロロホルムに添加し、湿式法により50容量%平均粒子径を測定する。
【0034】
上記糖及び糖アルコールの配合量としては、本発明のフィルム状製剤の固形分全重量に対して1〜80重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、実用的な厚さのフィルム状製剤において、口腔内における溶解プロファイル、フィルム強度、口腔内における水溶性高分子に由来するネバネバ感、手指に取った際の触感において充分な改善が見られず、80重量%を超えると、糖及び糖アルコール粒子の平均粒子径をかなり小さくしない限り、フィルム状製剤の保型性等が低下するおそれがある。上記糖及び糖アルコールの配合量は、10〜60重量%であることがより好ましい。
【0035】
なお、上記糖及び糖アルコールとしては、医薬品用として提供されている市販品を利用するのが便利であり、平均粒子径を上記の範囲となるように整粒したものを利用することもでき、また市販品を平均粒子径が上記の範囲となるように整粒して用いることもできる。なお、平均粒子径の調整は、粉砕、乾式造粒法、湿式造粒法等による造粒、篩や分級機等を用いた分級などにより、行うことができる。
【0036】
上記極性有機溶媒としては、上記可食性高分子を溶解させるが、上記薬物粒子は溶解させないものであればよく、例えば、溶解パラメーターが9.7以上の有機溶媒が好適に用いられる。このような溶解パラメーターを満たす有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、塩化メチレン、アセトン等が挙げられ、より好ましくはエタノールである。これらの極性有機溶媒は、単一溶媒であってもよく、2種以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。
本明細書において「溶解パラメーター」とは、1mol容量の液体が蒸発するために必要な蒸発熱(cal/cm
3)の平方根(SP値)をいう。本発明のフィルム状製剤を製造する際に用い得る有機溶媒の溶解パラメーター及び水の溶解パラメーター値を表1に示した。
なお、本発明において用い得る有機溶媒の溶解パラメーターは、9.7〜20であることが好ましく、9.7〜15であることがより好ましい。溶解パラメーターが9.7未満であると、上記可食性高分子、例えば、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシプロピルセルロースが溶解しない可能性がある。
一方、溶解パラメーターが20を超えると、薬物粒子の種類によっては溶解するおそれがあるため、本発明の目的には好ましくない。
【0037】
【表1】
【0038】
本発明のフィルム状製剤は、例えば次の方法によって製造することができる。
すなわち、まず、所定量の可食性高分子、及び、粉砕、造粒、分級装置等で粒子径を調整した薬物粒子を、上記可食性高分子に対して可溶性の極性有機溶媒、例えばエタノール、プロパノール、アセトン等添加して薬物分散液を調製する。そして、この薬物分散液を、剥離フィルム上に適当量展延乾燥して薄膜を形成し、該薄膜を乾燥させることで、本発明のフィルム状製剤を製造することができる。更に、乾燥させた薄膜は、所望の大きさに裁断し、必要により密封包装し、製品とする。
このような本発明のフィルム状製剤を製造する方法もまた、本発明の1つである。
なお、本発明のフィルム状製剤の製造方法において、薬物分散溶液を調製する際、可食性高分子全量を極性有機溶媒に溶解させた後に薬物粒子を添加すると、その粘性により薬物粒子を充分に分散させることが困難となることがある。このため、本発明のフィルム状製剤の製造方法では、まず、薬物粒子を極性有機溶媒に分散させた後、可食性高分子を溶解させて薬物分散溶液を調製することが好ましい。
【0039】
上記薬物分散液の調製時に溶液中に泡が発生した場合は、一夜放置とか真空脱泡を行うことが好ましい。また、薬物分散溶液の調製に用いられる溶媒は、上記極性有機溶媒のみが好ましいが、微量であれば精製水を加えても差し支えない。