特許第5751874号(P5751874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751874
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】コネクタの端子仮係止構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/41 20060101AFI20150702BHJP
   H01R 13/40 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   H01R13/41
   H01R13/40 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-61994(P2011-61994)
(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公開番号】特開2012-199050(P2012-199050A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100166110
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中山 光一
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 毅
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−181729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40−13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子の板状の電気接触部の前端側から長手方向中間部にかけて、該電気接触部の板幅方向に沿う面と板厚方向に沿う面との交差部分に切欠部が設けられ、該電気接触部の長手方向中間部における該切欠部の終端に段差部が設けられ、該板厚方向に沿う面が該切欠部によって板厚方向に幅狭に形成され、該段差部を始端として該段差部の後方に続く該板厚方向に沿う面が幅広に形成されて圧入部分を成し、ハウジングの孔部に該電気接触部が該段差部の位置まで挿入されて仮係止され、該圧入部分が該孔部に圧入されることを特徴とするコネクタの端子仮係止構造。
【請求項2】
前記電気接触部の前端側に面取部が設けられ、該面取部に前記切欠部が一体に続いたことを特徴とする請求項1記載のコネクタの端子仮係止構造。
【請求項3】
前記切欠部と前記段差部が前記電気接触部の上下左右の四方の交差部分に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタの端子仮係止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに端子を圧入固定させる前に仮係止させるコネクタの端子仮係止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばハイブリッドカーを含む電気自動車のインバータとモータ間の電気的接続に特許文献1に記載されたコネクタ(図示せず)を用いることが提案されている。
【0003】
このコネクタは、背面側に三つの並列な端子収容開口を有する絶縁樹脂製の略L字状のコネクタハウジングと、端子収容開口からコネクタハウジング内に挿入される略L字板状の三つの端子とそれに接続された各電線と、各端子をコネクタハウジング内に押圧するボス部を有する絶縁樹脂製の各ホルダとを備えたものである。
【0004】
各端子の先端側の電気接触部はコネクタハウジングのスリット状の孔部内に挿入され、孔部から外部に導出された電気接触部の先端側の円孔に相手側コネクタの各端子(バスバー)がボルト締めで接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−349026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のコネクタにおいては、端子をコネクタハウジングの孔部に挿入した状態でホルダで押圧して固定させているが、例えば、端子固定用のホルダを用いない場合は、図6のコネクタ41のように、各端子31〜33の円弧状の先端部31a〜33aの左右両端31b〜33bを絶縁樹脂製のハウジング42の孔部43の幅狭の開口端43aに圧入気味に仮係止させ、その状態で各端子31〜33を不図示の圧入治具(機械)でさらに押圧して孔部43に本圧入させる。
【0007】
図7の如く、本圧入と同時に、例えば中央の端子32の幅方向中央の前後の突起13,15や、左右の端子31,33の前側の突起15がハウジング42の突壁18bに係合して、各端子31〜33が位置決め及び抜け防止される。仮係止は例えば複数(三つ)の電線付き端子31〜33を工程内で本圧入(本係止)までの間にハウジング42から脱落させないための手段である。
【0008】
しかしながら、上記図6のコネクタ41にあっては、端子31〜33の仮係止位置がばらつきやすく、機械で圧入する際に、円弧状の先端部31a〜33aに続く長い真直部(圧入部分)31c〜33cがハウジング42の孔部43に摺動しつつ孔部43の内面を削ったり、大きな摺動抵抗で端子31〜33が最後まで圧入されずに不完全挿入を起こして、相手側のバスバーとのねじ締め接続(結合)を上手く行えなくなるといった懸念があった。
【0009】
また、端子31〜33の仮係止における圧入構造を廃止して、例えば端子31〜33の幅方向両側に不図示の仮係止突起を設けた場合には、ハウジング42に仮係止突起を所定の挿入ストローク位置まで逃がす(干渉を防ぐ)溝等の逃がし部が必要になり、端子31〜33の幅方向の肥大化と共に、ハウジング42の構造が複雑化・高コスト化するという懸念があった。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑み、ハウジングへの端子の仮係止を位置ずれなく且つ簡素な構造でスムーズ且つ確実に行うことができると共に、ハウジングへの端子の圧入をスムーズ且つ確実に行うことのできるコネクタの端子仮係止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るコネクタの端子仮係止構造は、端子の板状の電気接触部の前端側から長手方向中間部にかけて、該電気接触部の板幅方向に沿う面と板厚方向に沿う面との交差部分に切欠部が設けられ、該電気接触部の長手方向中間部における該切欠部の終端に段差部が設けられ、該板厚方向に沿う面が該切欠部によって板厚方向に幅狭に形成され、該段差部を始端として該段差部の後方に続く該板厚方向に沿う面が幅広に形成されて圧入部分を成し、ハウジングの孔部に該電気接触部が該段差部の位置まで挿入されて仮係止され、該圧入部分が該孔部に圧入されることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、端子の電気接触部の前半部分における板厚方向に沿う面が切欠部によって幅狭に形成されているので、電気接触部の前半部分がハウジングの孔部に低摩擦抵抗でスムーズに挿入され、段差部が孔部に圧入を開始する時点で(板厚方向に沿う幅広の面すなわち電気接触部の後半の圧入部分の前端が孔部に圧入を開始する時点で)大きな摩擦抵抗を生じて電気接触部の挿入が停止することで、端子が前後方向の位置ずれなくハウジングに仮係止され、次いで端子が圧入治具等で挿入方向に強く押圧されて、電気接触部の後半の圧入部分が孔部に圧入される。圧入部分は電気接触部の長さの半分程度と短いので、圧入が容易に且つ確実に行われる。
【0013】
請求項2に係るコネクタの端子仮係止構造は、請求項1記載のコネクタの端子仮係止構造において、前記電気接触部の前端側に面取部が設けられ、該面取部に前記切欠部が一体に続いたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、ハウジングの孔部に電気接触部の前端部がその面取部によって引っ掛かりなくスムーズに挿入され、次いで前端部に続く電気接触部の幅方向両側部分が、面取部に続く切欠部によって低摩擦でスムーズに挿入される。前端側の面取部とそれに続く切欠部とはプレス加工で同時に形成可能である。
【0015】
請求項3に係るコネクタの端子仮係止構造は、請求項1又は2記載のコネクタの端子仮係止構造において、前記切欠部と前記段差部が前記電気接触部の上下左右の四方の交差部分に設けられたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、上下左右の切欠部で電気接触部の板厚方向に沿う面が板厚方向中央で幅狭に形成されて、孔部への電気接触部の前半部分の挿入が一層スムーズに行われると共に、上下左右の段差部で電気接触が位置ずれなく一層確実に仮係止される。さらに、上下左右の段差部で電気接触部の後半の圧入部分がハウジングの孔部に上下方向の曲げ力等の発生なく均一な力で一層スムーズ且つ確実に圧入される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、端子の電気接触部を長手方向中間部の段差部までハウジングの孔部に低力でスムーズに挿入して、段差部で前後方向の位置ずれ(位置のばらつき)なく確実に仮係止させることができる。また、電気接触部の両側部すなわち板厚方向に沿う面に仮係止突起を設けないので、仮係止突起を設ける場合に較べて、端子の幅方向の肥大化や構造の複雑化を防止できると共に、ハウジングに仮係止突起に対する逃がし部を設ける必要がなく、ハウジングの構造も簡素化することができる。さらに、端子の前端側に仮係止部を設ける場合に較べて、段差部から後方の圧入部分の長さが半分程度に短くなるので、孔部に電気接触部を短時間でスムーズに且つ圧入不足なく最後まで確実に圧入することができ、相手端子との接続を確実に行わせることができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、端子の電気接触部を前端側から長手方向中間側の段部まで面取部と切欠部とで引っ掛かりなくスムーズに挿入することができる。また、切欠部を前端側の面取部と同時に低コストで簡単にプレス成形することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、端子の電気接触部の上下左右の段差部でハウジングの孔部への仮係止を一層位置ずれなく確実に行わせることができると共に、上下左右の段差部に続く圧入部分で孔部への圧入をぐらつき等なく一層確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るコネクタの端子仮係止構造の一実施形態を示す平面図である。
図2】端子の仮係止部を示す図1のA−A断面図である。
図3】端子をハウジングに仮係止させた状態を示す横断面図である。
図4】端子をハウジングに本係止(本圧入)させたコネクタの組立状態を示す斜視図である。
図5】コネクタを機器に取付接続した状態を示す斜視図である。
図6】従来のコネクタの端子仮係止構造の一形態を示す横断面図である。
図7】端子の本係止状態を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図5は、本発明に係るコネクタの端子仮係止構造の一実施形態を示すものである。
【0022】
図1(平面図)の如く、三つの各端子1〜3が幅方向に並列に配置され、各端子1〜3の水平な板状の電気接触部4の幅方向の両側部において、電気接触部4の長手方向中間部(ほぼ中央)に段差部5が設けられると共に、段差部(段差面)5から電気接触部4の円弧状の先端部6にかけて両側部にテーパ面取形状の幅広の切欠部7が設けられ、切欠部7は円弧状の先端部6のテーパ状面取部6aに続いている。
【0023】
図2図1のA−A断面図)の如く、段差部(段差面)5と切欠部7とは、各電気接触部4の板厚方向の上下において設けられ、一つの電気接触部4は上下左右の計四つの段差部(段差面)5と切欠部7とを有している。電気接触部4の先端(前端)側から長手方向中間部にかけて、電気接触部4の幅方向に沿う上下(表裏)の面8と板厚方向に沿う側面(面)9との交差部分に各切欠部7が設けられ、電気接触部4の長手方向中間部における各切欠部7の終端に段差部5が設けられている。
【0024】
上下左右の各切欠部7は、電気接触部4の上下の水平(平行)な面8から電気接触部4の両側部の板厚方向中央に向かうテーパ状の傾斜面(符号7で代用)を有し、傾斜面7の終端に直交して正面視で三角形状の垂直な段差面5が形成されている。上下の傾斜面7は電気接触部4の板厚方向中央において板厚方向に幅狭な垂直な側面(面)9aを介して続いている。電気接触部4の側部に切欠部7を形成することによって段差面(段部)5が構成されている。幅狭の側面9aをなくして上下の傾斜面7をV字状に連続させることも可能である。
【0025】
切欠部7は電気接触部4の側部の上下のエッジを不図示のプレス金型の上下の傾斜面で強く押圧(圧縮)することで容易に形成される。電気接触部4は断面横長矩形状であるので、電気接触部4の断面形状の四隅に図2の正面視で傾斜面7を長辺とした略直角三角形状の段差面5が構成される。図2の左右上側の傾斜面7は図1の円弧状先端部6の上側のテーパ状面取部6aに続き、図2の左右下側の傾斜面7は図1の円弧状先端部6の不図示の下側のテーパ面取部(6a)に続いている。
【0026】
図1の例では、段差部5の後方において電気接触部4の両側部に小さなテーパ面取10を設けているので、正確には図2の段差面5は三角形状ではなく台形状となり、幅広の傾斜面7の斜め上側にほぼ平行に幅狭な傾斜面(テーパ面取)10が位置する。小さなテーパ面取10を形成しない場合は段差面5は三角形状となる。何れの場合も段差部5の後方に続く側面9は板厚方向に幅広に形成された圧入部分9となる。
【0027】
図1において、各端子1〜3は電気接触部4から上向きに立ち上げられた垂直な電線接続部(圧着部)11を有する。各端子1〜3は水平な電気接触4と垂直な電線接続部11とで側面視で略L字状に構成されている。本例において、右側の端子3の電気接触部4は電線接続部11に対して右寄りに大きく偏心し、左側の端子1の電気接触部4は電線接続部11に対して左寄りに小さく偏心し、中央の端子2の電気接触部4は電線接続部11に対して偏心なく位置し、各電線接続部11は左右方向に等ピッチで且つ前後方向のずれなく配置されている。
【0028】
右側の端子3は電気接触部4の後端側から左側に突出した長い当接板12を有し、左側の端子1は電気接触部4の後端側の左右に突出した短い当接板14を有し、中央の端子2は電気接触部4の後端側に上向きの突起(当接部)13を有し、突起13は前端に垂直な当接面13aを有し、各電気接触部4は先端側のボルト挿通用の孔部21の後側に突起15を有し、各突起15は後端に垂直な係止面15aを有し、前側に傾斜面15bを有している。各突起13,15については図7で説明したものと同様である。前側の各突起15の前端の左右両側に段差部5が位置している。なお、明細書で上下前後左右の方向性は説明の便宜上のものであり、必ずしもコネクタ16(図4)の取付方向と一致するとは限らない。
【0029】
図3(横断面図)の如く、絶縁樹脂製のハウジング17の水平方向の各孔部18に各端子1〜3の電気接触部4が途中まですなわち段差部5の位置まで若干圧入気味に挿入されて仮係止される。仮係止は、上下の段差部5の間の幅狭な側面9a(図2)が孔部18の側面(符号18で代用)に接触する摩擦抵抗で行われる。
【0030】
段差部5の後方に続く断面横長矩形状の(切欠部7のない)電気接触部4の後半部分(圧入部分9)が孔部18に圧入を開始する直前に仮係止が完了する。電気接触部4の前半部分は、上下左右の切欠部7によって狭められた幅狭の側面9a(図2)で孔部18の側面に低摩擦抵抗で摺接することで、小さな力でスムーズに孔部18に挿入される。
【0031】
幅狭の側面9aをなくして上下の傾斜面7をV字状に連続させた場合は、側部先端が孔部18の内面に線接触してさらに小さな摩擦抵抗で摺接する。特許請求の範囲の「板厚方向に沿う面9が切欠部7によって板厚方向に幅狭に形成され」の構成は、この「V字状」を含むものである。
【0032】
段差面5は孔部18の後端に引っ掛かり気味に接触して摺動摩擦抵抗を増大させ、それ以上の電気接触部4の挿入を停止させる。段差部5によって端子1〜3の仮係止位置が正確に規定される。電気接触部4の長手方向中間部(電気接触部4の長さのほぼ半分程度の位置)まで孔部18に挿入されることで、小さな摩擦抵抗であっても仮係止力が発揮されて、ハウジング17からの電線付き端子1〜3の脱落が防止される。
【0033】
図3の如く、ハウジング17の横長の略矩形筒状の収容部(周壁)19の後壁20に端子挿入用の横長矩形状(スリット状)の各孔部18が設けられ(孔部18の周囲の壁部を符号18aで示す)、壁部18aの後端に近接ないし接して仮係止状態の各端子1〜3の段差部5が位置する。左右の壁部18aの間には端子1〜3の前側の突起15を通過させる壁部分18bが位置する。
【0034】
各端子1〜3の後端側の当接部12〜14はハウジング17の収容部19の後壁20の後面の後方に大きな隙間22を存して位置する。図3には各端子1〜3の電線接続部4は表されていない。各孔部18はハウジング17の後半の収容部23内の隔壁24で仕切られた各収容室(空間)25に連通し、各収容室25内に各端子1〜3の電線接続部11(図1)が収容される。
【0035】
図3の各端子1〜3の電気接触部4を仮係止状態から不図示の圧入治具を用いて大きな力で前方に押圧することで、各端子1〜3の段差部5から後方に続く真直で板厚方向に幅広な圧入部分9が孔部18の上下左右の圧入用の壁部18aの内面に沿って圧入される。それと同時に各端子1〜3の前側の突起15(図1)が孔部18の上側の内壁18bを乗り越えて、各端子1〜3の後側の当接部12〜14がハウジング17の収容部19の後壁20の後面に当接して、それ以上の端子1〜3の圧入が阻止される。
【0036】
端子1〜3の仮係止部(段差部)5から後方に続く真直で板厚方向に幅広な圧入部分9は、従来(図7)の端子31〜33の仮係止部(円弧状の前端部の左右両側部分)31b〜33bから後方に続く真直な圧入部分31c〜33cよりも圧入方向に半分程度に短く形成されているので(圧入ストロークが短いので)、圧入作業が容易であり、圧入時間が短縮され、且つ不完全圧入がなくなり端子1〜3が最後まで確実に圧入され、圧入部分9がハウジング17の孔部18の内面を過度に削るといった不具合も解消する。端子1〜3が所定のストロークで最後まで完全に圧入されることで、相手側の不図示のバスバーとのねじ締め接続が位置ずれなく確実に行われる。
【0037】
また、仮係止用の不図示の突起を端子1〜3に設けた場合に必要となる仮係止位置までの逃がし部をハウジング17に設ける必要がないので、ハウジング17の構造が簡素化・低コスト化される。図3で符号29は環状の防水パッキンを示す。
【0038】
図4は、ハウジング17の孔部18(図3)への各電線26付き端子1〜3の本圧入を終えて、ハウジング17の外側に導電金属製のシールドシェル27やシールドリング28や防水パッキン29を装着すると共に、ハウジング17の電線導出側に合成樹脂製のホルダ30を装着した状態を示すものである。「本圧入」とは電気接触部の前半を若干圧入気味に手指等で挿入する仮圧入に対応したものである。
【0039】
ハウジング17は前側の収容部(周壁)19と後側の収容部23とで成り、前側の収容部19内に各端子1〜3の電気接触部4が並列に突出して位置し、各電気接触部4のボルト挿通孔21の下側に機器34(図5)の不図示の相手側バスバーが接触して位置する。各電気接触部4の突起15は収容部19の上側の後壁35の下側に位置する。突起15に対する係止用の壁部18b(図3)は上側の壁部35の少し後方に位置する(図7参照)。端子1〜3の段差部5は突起15の左右両側に位置し、段差部5の前方に上下左右の切欠部7が位置する。
【0040】
ハウジング17の前半の収容部19はシールドシェル27の鍔壁27aで覆われ、ハウジング17の後半の上向きの収容部23はシールドシェル27の筒状壁27bで覆われて、収容部23の左右の突起36が筒状壁27bの孔37に係止される。ホルダ30は前後分割式でシールド電線26を前後から挟むように相互に係止される。
【0041】
図5の如く、モータやインバータといった機器34内の不図示の各バスバー(相手端子)に上方から図4の各端子1〜3がボルト締めで接続された後、ハウジング17(図4)の前半の収容部19の上部開口が導電金属製のカバー38で封止され、カバー38はシールドシェル27の鍔壁27aの孔部39と共に機器34の導電金属製のケース(符号34で代用)にボルト締めされる。図4のパッキン29は機器34の不図示の孔部の内面に密着する。コネクタ16は機器直付けコネクタとして機能する。
【0042】
なお、上記実施形態においては、端子1〜3に本係止用の突起15を設けたが、突起15を設けずに、ハウジング17の孔部18への電気接触部4の圧入のみで端子1〜3を固定させることも可能である。また、各端子1〜3の円弧状の先端部6に代えて、台形状や矩形状(先端が直線形状)等の先端部(6)を形成することも可能である。
【0043】
また、端子1〜3の切欠部7は上下左右の四つに限らず、上側の左右のみ又は下側の左右のみに計二つ設けることも可能である。この場合も切欠部7の終端に仮係止用の段差部5が設けられ、切欠部(傾斜面)7によって電気接触部4の板厚方向に沿う挿入用の幅狭の面(9a)が形成される。
【0044】
また、電気接触部4の前半部分を後半部分よりも若干幅狭に形成することで、前半部分を圧入気味ではなく殆ど摺動抵抗なく(前半部分の側面9aと孔部18の内面との摩擦抵抗なく)ハウジング17の孔部18に挿入し、前半部分の切欠部7の終端の段差部5すなわち後半部の前端を孔部18に少し押し込んで圧入することで端子1〜3を仮係止させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るコネクタの端子仮係止構造は、例えばハイブリッドカーを含む電気自動車における三相電極の端子を絶縁性のハウジングにスムーズ且つ確実に仮係止させて、搬送時等の端子の脱落を防止し、次工程で端子をスムーズ且つ確実にハウジングに本圧入させるために利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1〜3 端子
4 電気接触部
5 段差部
6a 面取部
7 切欠部
8 板幅方向に沿う面
9 板厚方向に沿う面(圧入部分)
16 コネクタ
17 ハウジング
18 孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7