(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751875
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20150702BHJP
H01R 13/658 20110101ALI20150702BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
H01R13/658
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-61995(P2011-61995)
(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公開番号】特開2012-199051(P2012-199051A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100166110
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 巧也
(72)【発明者】
【氏名】中山 光一
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 毅
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−123584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40−13/645
H01R 13/648−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に接続される端子金具と、前記端子金具を収容するハウジングと、前記ハウジングを覆うシールドシェルと、前記電線の外周に取り付けられて前記ハウジング内を防水するゴム栓と、を備え、前記シールドシェルには、前記電線を通すための電線挿通穴が設けられているシールドコネクタにおいて、
前記ゴム栓が、パッキンと、該パッキンに一体化された樹脂部材と、で構成されており、
前記樹脂部材に、円筒部と、該円筒部の外周面から鍔状に突出した鍔部と、が設けられ、
前記円筒部の軸方向一端部よりも軸方向他端部側に前記鍔部が設けられ、
前記円筒部の前記軸方向一端部が前記電線挿通穴内に位置付けられ、前記鍔部の前記一端部側の面が前記電線挿通穴を構成する外縁の前記他端部側の面に当接している
ことを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項2】
前記樹脂部材に、前記円筒部の軸方向他端部から延設され、内外径が前記円筒部よりも小さい第2円筒部が設けられ、
前記パッキンに、前記円筒部の内周に配置された内周筒部と、該内周筒部から突出して前記電線の外周面に密着する内周リップと、前記第2円筒部の外周に配置された外周筒部と、該外周筒部から突出して前記ハウジングの内面に密着する外周リップと、が設けられ、
前記第2円筒部と前記内周リップとの間に間隔が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記鍔部が、前記ハウジングと前記電線挿通穴の外縁との間に挟まれている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具を収容したハウジングをシールドシェルで覆ったシールドコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来のシールドコネクタを示す断面図である(特許文献1を参照。)。このシールドコネクタ340は、電線330の端末に接続された端子金具303と、端子金具303を収容したハウジング311と、ハウジング311を覆ったシールドシェル312と、電線330の外周に取り付けられてハウジング311内を防水するゴム栓341と、を備えている。また、電線330は図示しない筒状の編組導体で覆われており、即ち電磁シールドされており、前記編組導体はシールドシェル312に電気接続されている。
【0003】
上記端子金具303は、金属板にプレス加工等が施されることによって得られるものであり、相手方のコネクタの端子金具に電気接続される電気接触部331と、電線330に電気接続される電線接続部334と、が設けられている。
【0004】
上記ハウジング311には、絶縁性の樹脂で構成されたハウジング本体315が設けられている。このハウジング本体315には、端子金具303、端子金具303と接続された電線330の端部、電線330の外周に取り付けられたゴム栓341、が収容されるキャビティ317が設けられている。
【0005】
上記シールドシェル312は、導電性の金属で構成されている。このシールドシェル312には、ハウジング本体315の後端部に重なる底板323と、底板323の外縁から立設した円環部322と、が設けられている。また、底板323には、電線330を通すための電線挿通穴327が設けられている。
【0006】
上記ゴム栓341は、ゴム製のゴム栓本体342と、ゴム栓本体342に埋設された硬質の樹脂部材343と、で構成されている。また、樹脂部材343には、ゴム栓本体342の軸方向一端部からゴム栓本体342外部に突出した延出部344が設けられている。このゴム栓341は、ゴム栓本体342の軸方向一端部がシールドシェル312における電線挿通穴327の外縁に当接し、延出部344が電線挿通穴327内に位置付けられるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−123584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来のシールドコネクタ340においては、以下に示す問題があった。即ち、シールドコネクタ340は、ゴム栓本体342の一端部をシールドシェル312における電線挿通穴327の外縁に当接させることで、ゴム栓341がキャビティ317から抜け出ることを防止する構成であるが、ゴム栓本体342は弾性変形する部材であるので、ゴム栓本体342の一端部を電線挿通穴327の外縁に当接させるだけでは、ゴム栓341がキャビティ317から抜け出る可能性があるという問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、ゴム栓がハウジングから抜け出ることを確実に防止できるシールドコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、電線の端末に接続される端子金具と、前記端子金具を収容するハウジングと、前記ハウジングを覆うシールドシェルと、前記電線の外周に取り付けられて前記ハウジング内を防水するゴム栓と、を備え、前記シールドシェルには、前記電線を通すための電線挿通穴が設けられているシールドコネクタにおいて、前記ゴム栓が、パッキンと、該パッキンに一体化された樹脂部材と、で構成されており、前記樹脂部材に、円筒部と、該円筒部の外周面から鍔状に突出した鍔部と、が設けられ、
前記円筒部の軸方向一端部よりも軸方向他端部側に前記鍔部が設けられ、前記円筒部の
前記軸方向一端部が前記電線挿通穴内に位置付けられ、前記鍔部
の前記一端部側の面が前記電線挿通穴
を構成する外縁
の前記他端部側の面に当接していることを特徴とするシールドコネクタである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記樹脂部材に、前記円筒部の軸方向他端部から延設され、内外径が前記円筒部よりも小さい第2円筒部が設けられ、前記パッキンに、前記円筒部の内周に配置された内周筒部と、該内周筒部から突出して前記電線の外周面に密着する内周リップと、前記第2円筒部の外周に配置された外周筒部と、該外周筒部から突出して前記ハウジングの内面に密着する外周リップと、が設けられ、前記第2円筒部と前記内周リップとの間に間隔が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記鍔部が、前記ハウジングと前記電線挿通穴の外縁との間に挟まれていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、前記円筒部の軸方向一端部が前記電線挿通穴内に位置付けられ、前記鍔部が前記電線挿通穴の外縁に当接しているので、ゴム栓がハウジングから抜け出ることを確実に防止できるシールドコネクタを提供することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、前記第2円筒部と前記内周リップとの間に間隔が設けられているので、ゴム栓を電線に装着する際に内周リップが第2円筒部に押し付けられることを回避でき、そのために、内周リップが切れることを防止できる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、前記鍔部が、前記ハウジングと前記電線挿通穴の外縁との間に挟まれているので、ゴム栓がハウジングから抜け出ることを確実に防止できる上にゴム栓がハウジング内で位置ずれすることを防止できるシールドコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態にかかるシールドコネクタを示す斜視図である。
【
図4】
図1に示されたシールドコネクタの分解図である。
【
図5】
図1に示されたシールドコネクタを構成するゴム栓の斜視図である。
【
図6】
図5に示されたゴム栓を構成する樹脂部材の斜視図である。
【
図7】
図5に示されたゴム栓を構成するパッキンの斜視図である。
【
図8】
図5に示されたゴム栓の変形例を示す斜視図である。
【
図10】従来のシールドコネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態にかかるシールドコネクタを、
図1〜7を参照して説明する。
【0018】
シールドコネクタ1は、
図1〜4に示すように、電線2の端末に接続される複数の端子金具3と、複数の端子金具3を収容するハウジング4と、ハウジング4を覆うシールドシェル5と、電線2の外周に取り付けられてハウジング4内を防水する複数のゴム栓6と、電線2を覆った筒状の編組導体11をシールドシェル5に固定するためのリング10と、ハウジング4に取り付けられる防水パッキン9と、を備えている。また、
図3においては、端子金具3及び電線2の図示を省略している。
【0019】
上記電線2は、芯線と該芯線を被覆した絶縁被覆とで構成された断面円形の被覆電線である。この電線2は、端部において絶縁被覆が皮むきされて芯線が露出している。また、電線2は、ゴム栓6を装着する際にゴム栓6の後述する内周リップ71を損傷させないようにするために皮むきされた箇所の先端がさらに面取りされている。また、電線2は、筒状の編組導体11で覆われることにより電磁シールドされる。
【0020】
上記端子金具3は、金属板にプレス加工等が施されることによって得られるものであり、相手方のコネクタ(不図示)の端子金具に電気接続される電気接触部31と、電線2の芯線に電気接続される電線接続部32と、が設けられている。また、電線接続部32には、電気接触部31に連なった底板33と、底板33の幅方向両端部から立設した一対の圧着片34と、が設けられている。この電線接続部32は、底板33上に電線2の芯線を位置付けて、一対の圧着片34で前記芯線をかしめるようにして該芯線を圧着する。
【0021】
上記ハウジング4は、絶縁性の合成樹脂で構成されており、複数のキャビティ40が設けられたハウジング本体41と、ハウジング本体41の外周から環状に突出したフランジ部42と、が設けられている。キャビティ40には、端子金具3と、端子金具3に接続された電線2の端部と、該電線2の外周に取り付けられたゴム栓6と、が収容される。また、ハウジング本体41の
図2中左側の端部には、図示しない相手方のコネクタのハウジングが嵌合する。また、防水パッキン9は、ゴムなどの弾性変形自在な合成樹脂で環状に形成されており、フランジ部42に設けられた凹溝内に取り付けられている。
【0022】
上記シールドシェル5は、導電性の金属で構成されている。このシールドシェル5は、ハウジング本体41の後端側、即ち相手方のコネクタから離れた側、を覆う第1覆い部52と、フランジ部42を覆う第2覆い部53と、が設けられている。また、第1覆い部52には、各キャビティ40から引き出された各電線2を通すための電線挿通穴50が複数設けられている。
【0023】
上記ゴム栓6は、
図5に示すように、ゴムなどの弾性変形自在な合成樹脂で構成されたパッキン7と、このパッキン7よりも硬質で弾性変形し難い合成樹脂で構成された樹脂部材8と、で構成されている。これらパッキン7と樹脂部材8とは、インサート成形等により一体化されている。
【0024】
上記樹脂部材8には、
図6などに示すように、円筒部80と、該円筒部80の外周面の一部から鍔状に突出した一対の鍔部81と、円筒部80の軸方向他端部から延設され、内外径が円筒部80よりも小さい第2円筒部82と、が設けられている。
【0025】
上記パッキン7には、円筒部80の内周に配置された内周筒部70と、該内周筒部70から突出して電線2の外周面に密着する内周リップ71と、第2円筒部82の外周に配置された外周筒部72と、該外周筒部72から突出してハウジング4の内面、即ちキャビティ40を形成する面、に密着する外周リップ73と、が設けられている。また、内周リップ71及び外周リップ73は、円環状に形成されている。また、内周リップ71及び外周リップ73は、それぞれ2つずつ設けられている。
【0026】
このようなゴム栓6は、
図3に示すように、円筒部80の軸方向一端部が電線挿通穴50内に位置付けられ、一対の鍔部81が電線挿通穴50の外縁51に当接している。また、一対の鍔部81は、ハウジング本体41の後端部、即ち相手方のコネクタから離れた側の端部、と電線挿通穴50の外縁51との間に挟まれている。さらに、円筒部80の軸方向一端部及び一対の鍔部81以外の部分がキャビティ40内に位置付けられている。
【0027】
本発明では、硬質な樹脂で構成された一対の鍔部81を電線挿通穴50の外縁51に当接させることにより、ゴム栓6がハウジング4のキャビティ40から抜け出ることを確実に防止できる。また、一対の鍔部81をハウジング本体41の後端部と電線挿通穴50の外縁51との間に挟むことにより、ゴム栓6がハウジング4のキャビティ40内で位置ずれすることを防止できる。このように、本発明では、シールドシェル5を用いてゴム栓6がハウジング4から抜け出ることを防止しており、専用のゴム栓抜け止め部材を使用していないので、部品点数を少なくすることができる。
【0028】
さらに、本発明では、ゴム栓6をハウジング4の防水目的だけでなく、端子金具3をハウジング4に固定するために用いている。即ち、シールドコネクタ1は、端子金具3に接続された電線2にゴム栓6を取り付け、該ゴム栓6をハウジング4とシールドシェル5とで挟んで固定することにより、ハウジング4に係止ランスを設けずとも端子金具3をハウジング4に固定することができる。即ち、ゴム栓6によって端子金具3がハウジング4のキャビティ40から抜け出ることを防止できる。また、ハウジング4には、端子金具3の抜け止めを行う係止ランスが設けられていない。このような構成により、ハウジング4を小型化することができる。
【0029】
上記リング10は、
図2に示すように、シールドシェル5の第1覆い部52の外周に取り付けられて、第1覆い部52との間に編組導体11の端部を挟む。
【0030】
前述した構成のシールドコネクタ1は、以下のように組み立てられる。まず、ハウジング4のフランジ部42に防水パッキン9を取り付ける。そして、端部の絶縁被覆を皮むきして面取りした電線2をシールドシェル5の電線挿通穴50に通し、この電線2をゴム栓6の内側に通す。そして、電線2の芯線を端子金具3の電線接続部32で圧着する。そして、これら端子金具3、ゴム栓6、電線2をハウジング4のキャビティ40に挿入する。そして、シールドシェル5をハウジング4に取り付け、このシールドシェル5の第1覆い部52に編組導体11の端部を被せ、該編組導体11の端部をリング10で固定することにより前述したシールドコネクタ1が得られる。
【0031】
また、本発明のシールドコネクタ1は、前述したゴム栓6の代わりに
図8,9に示すゴム栓106を用いることも可能である。また、
図8,9において、前述したゴム栓6と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
上記ゴム栓106は、ゴムなどの弾性変形自在な合成樹脂で構成されたパッキン107と、このパッキン107よりも硬質で弾性変形し難い合成樹脂で構成された樹脂部材8と、で構成されている。これらパッキン107と樹脂部材8とは、インサート成形等により一体化されている。
【0033】
上記パッキン107には、円筒部80の内周に配置された内周筒部70と、該内周筒部70から突出して電線2の外周面に密着する内周リップ71a,71bと、第2円筒部82の外周に配置された外周筒部72と、該外周筒部72から突出してハウジング4の内面に密着する外周リップ73と、が設けられている。また、内周リップ71a,71b及び外周リップ73は、円環状に形成されている。また、内周リップ71a,71b及び外周リップ73は、それぞれ2つずつ設けられている。
【0034】
さらに、
図9に示すように、2つの内周リップ71a,71bのうち第2円筒部82寄りの内周リップ71bは、第2円筒部82から離れた位置に設けられている。即ち、第2円筒部82と内周リップ71bとの間には間隔Kが設けられている。また、電線2は、矢印Cに沿ってゴム栓106の内側に通される。
【0035】
このように、本発明のゴム栓106は、第2円筒部82と内周リップ71bとの間に間隔Kが設けられ、内周リップ71bが第2円筒部82から離れた位置に設けられているので、電線2を通す際に内周リップ71bが第2円筒部82に押し付けられることを回避でき、そのために、内周リップ71bが切れることを防止できる。よって、前述したように電線2の端部における絶縁被覆に面取り加工を施すことを省略できる。
【0036】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 シールドコネクタ
2 電線
3 端子金具
4 ハウジング
5 シールドシェル
6,106 ゴム栓
7,107 パッキン
8 樹脂部材
50 電線挿通穴
51 外縁
80 円筒部
81 鍔部