(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751903
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】マグネットヨーク及び直流電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/17 20060101AFI20150702BHJP
H02K 23/04 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
H02K1/17
H02K23/04
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-90444(P2011-90444)
(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公開番号】特開2012-227978(P2012-227978A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】清水 正明
【審査官】
森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−050980(JP,U)
【文献】
特開昭63−087161(JP,A)
【文献】
特開2003−061272(JP,A)
【文献】
特開2006−034089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/17
H02K 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のヨークに間隙をおいて等分にされた複数のマグネットで4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を構成する直流電動機のマグネットヨークであって、
前記複数のマグネットの内周側には、等間隔で複数の溝部が形成されると共に、各マグネットには少なくとも一つ以上の非磁束部が形成され、該非磁束部を境に両側は異極とされ、
前記各マグネットは、前記複数の溝部の各々が同じ周方向幅でかつ、回転軸を中心として周方向に沿って同じ角度で前記間隙を置いて配置され、
前記各マグネット間の間隙は、他のマグネットの前記溝部または前記非磁束部のいずれかが回転軸を中心に180°対向する位置に配置されたことを特徴とするマグネットヨーク。
【請求項2】
前記複数のマグネットは、第1マグネット、第2マグネット、第3マグネットから構成され、
前記第1マグネットと、前記第2マグネットと、前記第3マグネットには、それぞれ内側に向けた三つの溝部が形成され、
前記第1マグネットに形成された溝部のうち中央部に位置する溝部が第1非磁束部とされると共に、該第1非磁束部を境に両側が異極とされ、
前記第2マグネットに形成された溝部のうち一つが第2非磁束部とされ、
前記第3マグネットに形成された溝部のうち一つが第3非磁束部とされ、
前記第2非磁束部と前記第3非磁束部とは180°対向した位置に配置され、
前記第1非磁束部は、前記第2マグネットと前記第3マグネットとの間のマグネットの間隙の位置と、180°対向した位置に配置されると共に、該間隙が第4非磁束部とされたことを特徴とする請求項1記載のマグネットヨーク。
【請求項3】
前記磁極は、着磁によって構成され、時計回りに第1マグネット、第2マグネット、第3マグネットとしたときに、前記第1マグネットと前記第3マグネットとの間の間隙を基点として、4極(略90°)の着磁をしてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネットヨーク。
【請求項4】
前記複数のマグネットは、第1マグネットと、第2マグネットと、第3マグネットから構成され、前記第1マグネットと、前記第2マグネットと、前記第3マグネットには、それぞれ内側に向けた七つの溝部が形成され、
前記第1マグネットに形成された七つの溝部のうち二つの溝部が、第1非磁束部及び第2非磁束部とされると共に、これら各々の非磁束部を境に両側は異極とされ、
前記第2マグネットに形成された七つの溝部のうち三つの溝部が第3非磁束部、第4非磁束部、第5非磁束部とされ、
前記第3マグネットに形成された七つの溝部のうち二つの溝部が第6及び第7非磁束部とされ、
前記第1非磁束部と前記第5非磁束部とは180°対向した位置に配置され、
前記第4非磁束部は、前記第1マグネットと前記第3マグネットとの間のマグネットの間隙の位置と、180°対向した位置に配置されると共に、前記第1マグネットと前記第3マグネットとの間の間隙は第8非磁束部とされたことを特徴とする請求項1記載のマグネットヨーク。
【請求項5】
前記磁極は、着磁によって構成され、時計回りに前記第1マグネット、前記第2マグネット、前記第3マグネットとしたときに、前記第1マグネットと前記第3マグネットとの間の間隙を基点として、8極(略47.5°)の着磁をしてなることを特徴とする請求項4に記載のマグネットヨーク。
【請求項6】
前記複数のマグネットは、時計回りに第1マグネット、第2マグネット、第3マグネット、第4マグネット、第5マグネット、第6マグネットとから構成され、
前記第1マグネット、前記第2マグネット、前記第3マグネット、前記第4マグネット、前記第5マグネット、前記第6マグネットには、それぞれ内側に向けた三つの溝部が形成され、
各々のマグネットに形成された溝部のうち一つは、非磁束部とされると共に、これら各非磁束部を境に両側は異極とされ、前記非磁束部の間には、前記溝部及び前記間隙で二つ間隔をおいて、形成されたことを特徴とする請求項1記載のマグネットヨーク。
【請求項7】
前記溝部のうち前記第1マグネットに形成された溝部のうち三つ目に位置する溝部が第1非磁束部とされ、
前記第2マグネットに形成された溝部のうち二つ目の溝部が第2非磁束部とされ、
前記第3マグネットに形成された溝部のうち一つ目の溝部が第3非磁束部とされ、
前記第4マグネットに形成された溝部のうち三つ目の溝部が第5非磁束部とされ、
前記第5マグネットに形成された溝部のうち二つ目の溝部が第6非磁束部とされ、
前記第6マグネットに形成された溝部のうち一つ目の溝部が第7非磁束部とされ、
前記第1非磁束部と前記第5非磁束部は、180°対向した位置に配置され、
前記第1マグネットと前記第6マグネットとの間隙を第8非磁束部とし、前記第3マグネットと前記第4マグネットの間隙を第4非磁束部とし、
前記第1マグネットと前記第6マグネットとの間隙と前記第3マグネットと前記第4マグネットの間隙とを中心として対称に配置されていることを特徴とする請求項6記載のマグネットヨーク。
【請求項8】
前記磁極は、着磁によって構成され、時計回りに第1マグネット、第2マグネット、第3マグネット、第4マグネット、第5マグネット、第6マグネットとしたときに、前記第1マグネットと前記第6マグネットとの間の間隙を基点として、8極(略47.5°)の着磁をしてなることを特徴とする請求項4に記載のマグネットヨーク。
【請求項9】
前記非磁束部を除く前記溝部及び前記間隙とは、各々の配置によって生ずる磁気特性が各々同じとなっていることを特徴とする請求項1,2,4,6,7のいずれか一項に記載のマグネットヨーク。
【請求項10】
前記請求項1乃至9のいずれか一項のマグネットヨークを備えたことを特徴とする直流電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットヨーク及び直流電動機に係り、特に、部品点数を減少させると共に低騒音化が可能なマグネットヨーク及び該マグネットヨークを備えた直流電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ステータにマグネットを使用した直流電動機(DCモータ)を小型化したり、コギングトルクを減少させる為には、例えば2極から4極にするように、極数を増やすことが考えられる。このように、極数を増やすには、マグネットをリング形状にし、多極着磁する技術(例えば特許文献1)、極数分だけマグネットの個数をヨークに配置する技術(例えば特許文献2)などが知られている。
【0003】
特許文献1の技術のように、マグネットをリング形状とする技術は、マグネットの製造の難易度が上がり、また磁場成形時の異方性度が向上できないなどの理由により、磁力が向上しないという課題がある。
特許文献2の技術のように、マグネットの個数を極数分だけ配置する技術は、極数に応じてマグネットの個数が増えるため、部品点数の増加と、ヨークへの固定作業工数の増加となり、マグネットの製造面及びヨークへの固定作業面のコストが増えていくという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−43031号公報
【特許文献2】特開2004−28083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、マグネットの性能を落さず、部品点数やコストを下げ、極数より少ないマグネットである4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を3個のマグネットによって構成できるマグネットヨーク及び直流電動機を提供することにある。
本発明の他の目的は、マグネットの数を減らしても、コギングトルクが高くならず、製造における作業効率を向上させると共に、多極化によるコスト上昇を低減させることのできるマグネットヨーク及び直流電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明のマグネットヨークによれば、円筒状のヨークに間隙をおいて等分にされた複数のマグネットで4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を構成する直流電動機のマグネットヨークであって、前記複数のマグネットの内周側には、等間隔で複数の溝部が形成されると共に、各マグネットには少なくとも一つ以上の非磁束部が形成され、該非磁束部を境に両側は異極とされ、前記各マグネットは、前記
複数の溝部の
各々が同じ
周方向幅で
かつ、回転軸を中心として周方向に沿って同じ角度で前記間隙を置いて配置され、
前記各マグネット間の間隙は、他のマグネットの前記溝または前記非磁束部のいずれかが回転軸を中心に180°対向する位置に配置されたこと、により解決される。
より詳しくは、前記複数のマグネットは、第1マグネット、第2マグネット、第3マグネットから構成され、前記第1マグネットと、前記第2マグネットと、前記第3マグネットには、それぞれ内側に向けた三つの溝部が形成され、前記第1マグネットに形成された溝部のうち中央部に位置する溝部が第1非磁束部とされると共に、該第1非磁束部を境に両側が異極とされ、前記第2マグネットに形成された溝部のうち一つの溝部が第2非磁束部とされ、前記第3マグネットに形成された溝部のうち一つの溝部が第3非磁束部とされ、前記第2非磁束部と前記第3非磁束部とは180°対向した位置に配置され、前記第1非磁束部は、前記第2マグネットと前記第3マグネットとの間のマグネットの間隙の位置と、180°対向した位置に配置されると共に、該間隙が第4非磁束部とされて構成すると好適である。
さらに前記磁極は、着磁によって構成され、時計回りに
第1マグネット、
第2マグネット、
第3マグネットとしたときに、前記第1マグネットと前記第3マグネットとの間の間隙を基点として、4極(略90°)の着磁をすると好適である。
【0007】
以上のように、極数より少ないマグネットによって4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を構成できるもので、例えば上述のように4極を3個のマグネットで構成し、前記複数のマグネットの内周側には、等間隔で複数の溝部が形成されると共に、各マグネットには少なくとも一つ以上の非磁束部が形成され、該非磁束部を境に両側は異極とされ、前記各マグネットは、前記溝部と同じ幅及び角度で前記間隙を置いて配置され、これらの前記間隙と前記各溝部は、円周方向に沿って同じに形成することで、3個のマグネットでありながら、着磁及び内周溝入れで、4極等価な磁極が構成できる。つまり、極数より少ないマグネットによって4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を構成(例えば4磁極を3個のマグネットで分割して構成)しても、マグネット間の間隙と非磁性部を含む等間隔の溝を設定することにより、磁束の無い箇所を周方向に均一化できる。
【0008】
また、前記複数のマグネットは、第1マグネットと、第2マグネットと、第3マグネットから構成され、前記第1マグネットと、前記第2マグネットと、前記第3マグネットには、それぞれ内側に向けた七つの溝部が形成され、前記第1マグネットに形成された七つの溝部のうち二つの溝部が、第1非磁束部及び第2非磁束部とされると共に、これら各々の非磁束部を境に両側は異極とされ、前記第2マグネットに形成された七つの溝部のうち三つが第3非磁束部、第4非磁束部、第5非磁束部とされ、前記第3マグネットに形成された七つの溝部のうち二つが第6及び第7非磁束部とされ、前記第1非磁束部と前記第5非磁束部とは180°対向した位置に配置され、前記第4非磁束部は、前記第1マグネットと前記第3マグネットとの間のマグネットの間隙の位置と、180°対向した位置に配置されると共に、前記第1マグネットと前記第3マグネットとの間の間隙は第8非磁束部とされるように構成することもできる。
このとき、前記磁極は、着磁によって構成され、時計回りに前記第1マグネット、前記第2マグネット、前記第3マグネットとしたときに、前記第1マグネットと前記第3マグネットとの間の間隙を基点として、8極(略47.5°)の着磁をするように構成する。
【0009】
以上のように、極数より少ないマグネットによって4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を構成できるもので、例えば上述のように8極を3個のマグネットで構成し、前記複数のマグネットの内周側には、等間隔で複数の溝部が形成されると共に、各マグネットには少なくとも一つ以上の非磁束部が形成され、該非磁束部を境に両側は異極とされ、前記各マグネットは、前記溝部と同じ幅及び角度で前記間隙を置いて配置され、これらの前記間隙と前記各溝部は、円周方向に沿って同じに形成することで、3個のマグネットでありながら、着磁及び内周溝入れで、8極等価な磁極が構成できる。つまり、極数より少ないマグネットによって4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を構成(例えば8磁極を3個のマグネットで分割して構成)しても、マグネット間の間隙と非磁性部を含む等間隔の溝を設定することにより、磁束の無い箇所を周方向に均一化できる。
【0010】
また、前記複数のマグネットは、時計回りに第1マグネット、第2マグネット、第3マグネット、第4マグネット、第5マグネット、第6マグネットとから構成され、前記第1マグネット、前記第2マグネット、前記第3マグネット、前記第4マグネット、前記第5マグネット、前記第6マグネットには、それぞれ内側に向けた三つの溝部が形成され、各々のマグネットに形成された溝部のうち一つは、非磁束部とされると共に、これら各非磁束部を境に両側は異極とされ、前記非磁束部の間には、前記溝部及び前記間隙で二つ間隔をおいて、形成されるように構成することもできる。
この場合、より具体的には、前記溝部のうち前記第1マグネットに形成された溝部のうち三つ目に位置する溝部が第1非磁束部とされ、前記第2マグネットに形成された溝部のうち二つ目の溝部が第2非磁束部とされ、前記第3マグネットに形成された溝部のうち一つ目の溝部が第3非磁束部とされ、前記第4マグネットに形成された溝部のうち三つ目の溝部が第5非磁束部とされ、前記第5マグネットに形成された溝部のうち二つ目の溝部が第6非磁束部とされ、前記第6マグネットに形成された溝部のうち一つ目の溝部が第7非磁束部とされ、前記第1非磁束部と前記第5非磁束部は、180°対向した位置に配置され、前記第1マグネットと前記第6マグネットとの間隙を第8非磁束部とし、前記第3マグネットと前記第4マグネットの間隙を第4非磁束部とし、前記第1マグネットと前記第6マグネットとの間隙と前記第3マグネットと前記第4マグネットの間隙とを中心として対称に配置されている構成とすることができる。
このとき、前記磁極は、着磁によって構成され、時計回りに
第1マグネット、
第2マグネット、
第3マグネット、
第4マグネット、
第5マグネット、
第6マグネットとしたときに、前記第1マグネットと前記第6マグネットとの間の間隙を基点として、8極(略47.5°)の着磁を行なう。
【0011】
以上のように構成しても、極数より少ないマグネットによって4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を構成できるもので、例えば上述のように8極を6個のマグネットで構成し、前記複数のマグネットの内周側には、等間隔で複数の溝部が形成されると共に、各マグネットには少なくとも一つ以上の非磁束部が形成され、該非磁束部を境に両側は異極とされ、前記各マグネットは、前記溝部と同じ幅及び角度で前記間隙を置いて配置され、これらの前記間隙と前記各溝部は、円周方向に沿って同じに形成することで、6個のマグネットでありながら、着磁及び内周溝入れで、8極等価な磁極が構成できる。つまり、極数より少ないマグネットによって4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を構成(例えば8磁極を6個のマグネットで分割して構成)しても、マグネット間の間隙と非磁性部を含む等間隔の溝を設定することにより、磁束の無い箇所を周方向に均一化できる。
【0012】
上記の各構成において、前記非磁束部を除く前記溝部及び前記間隙とは
、各々の配置によって生ずる磁気特性が各々同じとなっているように構成されている。
【0013】
また前記課題は、本発明の直流電動機によれば、請求項1乃至9のいずれか一つのマグネットヨークを備えたことにより解決される。このような直流電動機は、前記したマグネットヨークの作用効果を備えたものとなる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明のマグネットヨーク及び直流電動機によれば、マグネット性能を落さず、4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を、マグネット数を少なくして、磁極より少ない個数のマグネットで分割して構成しても、マグネット間の間隙と非磁性部を含む等間隔の溝を設定することにより、磁束の無い箇所を周方向に均一化できるため、コギングトルクを減少させつつ、部品点数を下げることが可能となる。
このように、マグネット個数が減らせるので、直流電動機に使うマグネットのコストを低減させると同時に、マグネットをマグネットヨークに組付する作業とコストを低減することが可能となる。
また、コギング次数の場合、基本次数を高くすることにより、防振をし易くすると共に、高調波共振を回避することが可能となるため、回転振動がなめらかになり、低騒音化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る第1の実施形態の直流電動機の構成を説明する概略説明図である。
【
図2】本発明に係る第2の実施形態の直流電動機の構成を説明する概略説明図である。
【
図3】本発明に係る第3の実施形態の直流電動機の構成を説明する概略説明図である。
【
図4】本発明に係る直流電動機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下に説明する構成、手順等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1は、第1の実施形態の直流電動機の構成を説明する概略説明図であり、
図1に示すように、直流電動機10は、固定子20と、回転子としての電機子30とを備えている。そして、固定子20は、円筒状のマグネットヨーク22を備えており、このマグネットヨーク22の内周面には、4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を、マグネット数を少なくして、構成されるものである。
具体的には、n=1の場合について説明すると、この場合は4磁極となり、4磁極を3個のマグネットで構成する例として、3個の永久磁石からなる第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26が、間隙27a,27b,27cを介して固着され、円筒状のマグネットヨークに等分にされた第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26で4磁極を構成している。
【0017】
上記各第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26は、周方向の長さが互いに同等に設定された円弧状に形成されている。
また上記第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26は、その内周側に等間隔で複数の溝部24a,24b,24c、25a,25b,25c、26a,26b,26cが形成され、この溝部24a,24b,24c、25a,25b,25c、26a,26b,26cは、上記間隙27a,27b,27cの幅と角度(溝部角と間隙角)と、円周方向に沿って同じになっている。
この第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26は、上記溝部24a,24b,24c、25a,25b,25c、26a,26b,26cを含めて、射出成形によって、成形される。なお材料としてはマグネットを構成する公知の材料を用いることができる。
【0018】
そして、第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26が、マグネットヨーク22の内周面に固着されることで、マグネットヨーク22の内周に亘って円環状に配設される。すなわち、これらマグネット24,25,26は、マグネットヨーク22の内周面に等角度(120°)ごとに均等に配置・固着されている。
つまり、第1マグネット24と、第2マグネット25と、第3マグネット26とは、各溝部24a,24b,24c、25a,25b,25c、26a,26b,26cと同じ幅及び角度の間隙27a,27b,27cを置いて円周方向に沿って配置されている。
各溝部24a,24b,24c、25a,25b,25c、26a,26b,26cは、着磁磁極の間の位置、第1マグネット24と第2マグネット25と第3マグネット26と間の間隙に相対する180°の位置、第1マグネット24と第2マグネット25と第3マグネット26とが同一溝となる位置に形成されている。
【0019】
より詳しく説明すると、上記第1マグネット24には、
図1で示すように、中央部に位置する溝部24bを第1非磁束部とされている。そして、この溝部(第1非磁束部)24bを境に両側は異極とされている。つまり、第1マグネット24において、溝部24a側と溝部24c側とは異なる磁極とされている。本実施形態では、溝部24a側(
図1において反時計回り方向の側)をS極、溝部24c側(
図1において時計回り方向の側)をN極としている。
【0020】
また上記第2マグネット25に形成された溝部25a,25b,25cのうち一つである溝部25aを第2非磁束部とされている。そして、第2マグネット25の溝部(第2非磁束部)25aより、第1マグネット24側と、溝部25b,25c側とは、異なる磁極とされている。本実施形態では、第1マグネット24側(
図1において反時計回り方向の側)をN極、溝部25b,25c側(
図1において時計回り方向の側)をS極としている。
【0021】
さらに上記第3マグネット26に形成された溝部26a,26b,26cのうち一つである溝部26cを第3非磁束部とされている。そして、第3マグネット26の溝部(第3非磁束部)26cより、第1マグネット24側と、溝部26a,26b側とは、異なる磁極とされている。本実施形態では、溝部(第3非磁束部)26cを境として第1マグネット24側(
図1において時計回り方向の側)をS極、溝部26a,26b側(
図1において反時計回り方向の側)をN極としている。
【0022】
そして、上記溝部(第2非磁束部)25aと上記溝部(第3非磁束部)26cとは、マグネットヨーク22の内周において、180°対向した位置に配置されている。また上記溝部(第1非磁束部)24bは、第2マグネット25と第3マグネット26との間の間隙27cとマグネットヨーク22の内周において180°対向した位置に配置されている。このとき、間隙27cは非磁束部として、第4の非磁束部を構成する。
【0023】
従って、間隙27a,27b,27cを置いて円周方向に沿って配置された溝部24a,24b,24c、25a,25b,25c、26a,26b,26cを有するマグネット24,25,26は、各着磁部において、
・S極:第1マグネット24の溝部24bを境にして溝部24a側(
図1において反時計回り方向の側)と、溝部(第3非磁束部)26cを境として第1マグネット24側(
図1において時計回り方向の側)、第2マグネット25の溝部(第2非磁束部)25aを境として溝部25b,25c側(
図1において時計回り方向の側)の2箇所、
・N極:溝部24bを境として溝部24c側(
図1において時計回り方向の側)と第2マグネット25の溝部25aを境として第1マグネット24側(
図1において反時計回り方向の側)と、第3マグネット26の溝部(第3非磁束部)26cを境として溝部26a,26b側(
図1において反時計回り方向の側)の2箇所、が、それぞれS極とN極を交互に配置されたものとなっている。つまり、本実施形態では、磁極数を「4」としている。
【0024】
上記第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26のS極及びN極については、4極(略90°)で、第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26のエッジまで異方性配向によって着磁させ、異方性磁石としている。このとき、本実施形態では、1つのマグネット間の間隙である間隙27aの中心を起点とし、4極着磁している。なお、上述した非磁束部を除く溝部及び間隙は、同じ磁気特性となっているものである。
【0025】
以上のように構成することによって、9つの溝部24a,24b,24c、25a,25b,25c、26a,26b,26c及び3つの間隙27a,27b,27cによって12の溝部及び間隙を構成することができる。そして、これら12の溝部及び間隙は、上述したように幅と角度(溝部角と間隙角)と、円周方向に沿って同じになっている。
【0026】
各マグネット24,25,26の内周側には、電機子30が回転可能に収容されている。電機子30は、回転軸32を有している。回転軸32には、電機子コア(以下、単に「コア」とする)33が固定されている。コア33は10個のティース、即ち第1〜第10ティース33a〜33jを有し、各ティース33a〜33j間には10個のスロット、即ち第1〜第10スロット34a〜34jが形成されている。なお、第1スロット34aは第1ティース33aと第10ティース33jの間のスロットとし、第1ティース33a〜第10ティース33j及び第1スロット34a〜第10スロット34jは、
図1において時計回り方向に順に配置されている。
【0027】
(第2の実施形態)
図2は第2の実施形態の直流電動機の構成を説明する概略説明図であり、この第2の実施形態では、固定子20のマグネットヨーク22の内周面には、4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を、マグネット数を少なくして、構成されるが、第2の実施形態では、n=2の場合について説明する。この場合は8磁極となり、8磁極を3個のマグネットで構成する。なお、本実施形態では、固定子20のマグネットヨーク22について記述しており、回転子30を省略している。また、以下の実施形態において、特に説明なく前記第1の実施形態と同一符号を付しているものは、前記第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0028】
第2の実施形態では、3個の永久磁石からなる第1マグネット74、第2マグネット75、第3マグネット76が、間隙27a,27b,27cを介して固着され、円筒状のマグネットヨーク22に等分にされた第1マグネット74、第2マグネット75、第3マグネット76で8磁極を構成している。第1マグネット74、第2マグネット75、第3マグネット76には、それぞれ内側に向けた七つの溝部(74a〜74g、75a〜75g、76a〜76g、)が形成されている。
【0029】
上記第1マグネット74に形成された七つの溝部74a〜74gのうち二つをおいた三つ目の溝部74cと、更にこの溝部74cから二つおいた三つ目の溝部74fの二つの溝部74c及び溝部74fが、第1非磁束部及び第2非磁束部とされている。そして、これら非磁束部を境に両側は異極とされている(
図2では、S極、N極、S極)。
また、第2マグネット75に形成された七つの溝部75a〜75gのうち三つの溝部75a,75d,75gが第3非磁束部、第4非磁束部、第5非磁束部とされている。これらも、非磁束部(溝部75a,75d,75g)を境に両側は異極とされている(
図2では、S極、N極、S極)。
さらに、第3マグネット76に形成された七つの溝部76a〜76gのうち二つの溝部76b,76eが第6非磁束部及び第7非磁束部とされている。これら非磁束部(溝部76b,76e)を境に両側は異極とされている(
図2では、N極、S極、N極)。
そして、第1非磁束部(溝部74c)と第5非磁束部(溝部75g)とは180°対向した位置に配置され、第2非磁束部(74f)と第6非磁束部(76b)とは180°対向した位置に配置され、第3非磁束部(溝部75a)と第7非磁束部(溝部76e)とは180°対向した位置に配置されている。
さらに、第4非磁束部(75d)は、第1マグネット74と第3マグネット76との間の間隙27aの位置と、180°対向した位置に配置されており、この間隙27a(つまり第1マグネット74と第3マグネット76との間の間隙)は第8非磁束部(間隙27a)とされているものである。
【0030】
上記第1マグネット24、第2マグネット25、第3マグネット26のS極及びN極については、8極(略47.5°)で、着磁によって構成され、時計回りに第1マグネット74、第2マグネット75、第3マグネット76のエッジまで異方性配向によって着磁させ、異方性磁石としている。このとき、本実施形態では、1つのマグネット間の間隙である間隙27aの中心を起点とし、8極着磁している。なお、上述した非磁束部を除く溝部及び間隙は、同じ磁気特性となっているものである。
【0031】
(第3の実施形態)
図3は第3の実施形態の直流電動機の構成を説明する概略説明図である。この第2の実施形態では、固定子20のマグネットヨーク22の内周面には、4n磁極(nは3の倍数を除く自然数)を、マグネット数を少なくして構成されるが、第3の実施形態では第2の実施形態と同様に、n=2の場合について説明する。この場合は8磁極となり、8磁極を6個のマグネットで構成する例としている。なお、本実施形態でも、固定子20のマグネットヨーク22について記述しており、回転子30を省略している。
【0032】
本実施形態では、複数のマグネットとして、時計回りに永久磁石からなる第1マグネット81、第2マグネット82、第3マグネット83、第4マグネット84、第5マグネット85、第6マグネット86の6個のマグネットから構成した例である。
第1マグネット81、第2マグネット82、第3マグネット83、第4マグネット84、第5マグネット85、第6マグネット86は、間隙29a〜29fを介して円筒状のマグネットヨーク22に等分で固着され、これら第1マグネット81、第2マグネット82、第3マグネット83、第4マグネット84、第5マグネット85、第6マグネット86には、それぞれ内側に向けた三つの溝部81a〜81c、82a〜82c、83a〜83c、84a〜84c、85a〜85c、86a〜86cが形成されている。
各々のマグネット81〜86に形成された溝部81a〜81c、82a〜82c、83a〜83c、84a〜84c、85a〜85c、86a〜86cのうち、それぞれ一つの溝部81c、82b、83a、84c、85b、86aは、それぞれ非磁束部とされている。そして、これら各非磁束部(溝部81c、82b、83a、84c、85b、86a)を境に両側は異極とされている(
図3で示すように、時計周りにS極、N極、S極・・・)。
そして、これら非磁束部(溝部81c、82b、83a、84c、85b、86a)の間には、溝部及び間隙で二つ間隔をおいて、形成されている。
【0033】
より詳しくは、第1マグネット81に形成された溝部81a〜81cのうち時計周りに三つ目に位置する溝部81cが第1非磁束部とされ、第2マグネット82に形成された溝部82a〜82cのうち二つ目の溝部82bが第2非磁束部とされ、第3マグネット83に形成された溝部83a〜83cのうち一つ目の溝部83aが第3非磁束部とされ、第4マグネット84に形成された溝部84a〜84c、のうち三つ目の溝部84cが第5非磁束部とされ、第5マグネット85に形成された溝部85a〜85cのうち二つ目の溝部85bが第6非磁束部とされ、第6マグネット86に形成された溝部86a〜86cのうち一つ目の溝部86aが第7非磁束部とされている。
また第1マグネット81と第6マグネット86との間隙29aを第8非磁束部とし、第3マグネット83と第4マグネット84の間隙29dを第4非磁束部としている。
そして、第1非磁束部(溝部81c)と第5非磁束部(溝部84c)は、180°対向した位置に配置されている。第1マグネット81〜第6マグネット86は、第1マグネット81と第6マグネット86との間隙29aと第3マグネット83と第4マグネット84の間隙29dとを結ぶ線を中心として対称に配置されている。
【0034】
上記第1マグネット81、第2マグネット82、第3マグネット83、第4マグネット84、第5マグネット85、第6マグネット86のS極及びN極については、8極(略47.5°)で、着磁によって構成され、時計回りに第1マグネット81〜第6マグネット86のエッジまで異方性配向によって着磁させ、異方性磁石としている。このとき、本実施形態では、1つのマグネット間の間隙である間隙29aの中心を起点とし、8極着磁している。なお、上述した非磁束部を除く溝部及び間隙は、同じ磁気特性となっているものである。
【0035】
図4は、直流電動機10の断面図であり、直流電動機10は、上記各構成のうち所定のマグネットヨーク22を除いて、公知の構成とすることが可能である。例えば、直流電動機10は、マグネットヨーク22内に、一端側が直流電動機10の出力軸となる回転軸32と、この回転軸32に、巻線35が巻回された電機子コア33及び整流子40を固定してなる電機子30を配設したものである。そして、回転軸32を回転可能に支承する軸受51,51と、整流子40に摺接するブラシ42と、マグネットヨーク22の整流子40側の開口を閉塞するエンドプレート60等を構成要素としているものである。
【0036】
以上のように構成された直流電動機10によれば、擬似スロットをマグネット側の溝部で作るため、例えば第1の実施形態である4極‐10スロットでは、コギング次数の場合、60次(12溝×10スロットの最小公倍数)となるために、基本次数を高くすることにより、防振をし易くすると共に、高調波共振を回避することが可能となる。また、トルクリップル次数は20次となる。この場合、溝部と溝部のない部分との間で、溝部がある部分では、溝部が空間を作るため、ギャップに加えて、固定子20と電機子30のすき間が、より大きくなる。従って、溝部を設けた個所では磁束の流れに対する“抵抗”が大きくなり、固定子20からの磁束は溝部をよけて電機子30側に流れる。こうした磁束の変化により、溝部のない部分での発生するトルクリップル波形と、溝部のある部分で発生するトルクリップル波形が逆位相に近くなる。
そのため、これらを合成したトルクリップル波形は振幅が0に近づき、トルクリップルを小さくすることが可能となる。なお、この関係については、8極‐10スロットでも同様である。
【符号の説明】
【0037】
10 直流電動機、20 固定子、22 マグネットヨーク、24a〜24c,25a〜25c,26a〜26c,74a〜74g、75a〜75g、76a〜76g,81a〜81c,82a〜82c,83a〜83c,84a〜84c,85a〜85c,86a〜86c 溝部、27a,27b,27c,29a,29b,29c,29d,29e,29f 間隙、24b,74c,81c 溝部(第1非磁束部)、25a,74f,82b 溝部(第2非磁束部)、26c,75a,83a 溝部(第3非磁束部)、27c,29d 間隙(第4非磁束部)、75d 溝部(第4非磁束部)、75g,84c 溝部(第5非磁束部)、76b,85b 溝部(第6非磁束部)、76e,86a 溝部(第7非磁束部)、27a,29a 間隙(第8非磁束部)、24,74,81 第1マグネット、25,75,82 第2マグネット、26,76,83 第3マグネット、84 第4マグネット、85 第5マグネット、86 第6マグネット、30 電機子、32 回転軸、33 電機子コア、33a〜33j ティース、34a〜34j スロット、35 巻線、40 整流子、42 ブラシ、51 軸受、60 エンドプレート