(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751904
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】蒸散装置及び蒸散装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F25D 7/00 20060101AFI20150702BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20150702BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
F25D7/00 Z
E04B1/76 300
F24F5/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-91322(P2011-91322)
(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公開番号】特開2012-225539(P2012-225539A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】松田 克己
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幹夫
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−139451(JP,A)
【文献】
特開2000−352151(JP,A)
【文献】
実開平06−021776(JP,U)
【文献】
特開2004−124574(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3024633(JP,U)
【文献】
特開2008−187312(JP,A)
【文献】
特開2011−074619(JP,A)
【文献】
特開2007−086267(JP,A)
【文献】
特開2003−083656(JP,A)
【文献】
特開平11−083230(JP,A)
【文献】
特開昭57−105669(JP,A)
【文献】
特開2006−138615(JP,A)
【文献】
特表2002−539404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
E04B 1/76
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質素材からなる長尺状の蒸散ブロックと、管内外を連通する複数の小孔を有する給水管とを備え、前記蒸散ブロックには長尺方向に延在する挿通孔が設けられており、前記給水管が前記蒸散ブロックの前記挿通孔に挿嵌されている蒸散装置において、
前記給水管は、
弾性素材により形成されて前記蒸散ブロックの前記挿通孔の径よりも小さい外径を有する外管と、
前記外管の内径よりも大きく、且つ、前記外管の外径よりも小さい外径を有して前記外管内に挿嵌可能な内管とを備え、
前記外管は、前記内管を挿嵌することにより、少なくとも前記挿通孔の径以上の径まで外径を拡径可能であって、前記挿通孔内で前記挿通孔の径と同一の径まで拡径されて前記挿通孔の周壁に密着している
ことを特徴とする蒸散装置。
【請求項2】
前記外管および前記内管は、断面円形状をなしている
ことを特徴とする請求項1記載の蒸散装置。
【請求項3】
前記外管および前記内管は、断面矩形状をなしている
ことを特徴とする請求項1記載の蒸散装置。
【請求項4】
前記外管には複数の第1小孔部が形成されると共に、前記内管には、前記複数の第1小孔部と対向する位置に複数の第2小孔部が設けられ、前記第1小孔部と前記第2小孔部とを一致させることで前記給水管に前記複数の小孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の蒸散装置。
【請求項5】
前記外管には複数の第1小孔部が形成されると共に、前記内管には、網状またはパンチング状に複数の第2小孔部が形成され、前記給水管の前記複数の小孔は、前記第1小孔部と前記第1小孔部に一致する前記第2小孔部とにより形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の蒸散装置。
【請求項6】
前記給水管において、前記複数の小孔による開孔率は前記給水管の一方の端部から他方の端部に亘って段階的に増大している
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の蒸散装置。
【請求項7】
前記外管の内周壁および前記内管の外周壁には、前記外管と前記内管との周方向の位置ずれを防止する位置ずれ防止手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の蒸散装置。
【請求項8】
多孔質素材からなる長尺状の蒸散ブロックと、管内外を連通する複数の小孔を有する給水管とを備え、前記蒸散ブロックには長尺方向に延在する挿通孔が設けられており、前記給水管が前記蒸散ブロックの前記挿通孔に挿嵌されており、
前記給水管は、弾性素材により形成されて前記蒸散ブロックの前記挿通孔の径よりも小さい外径を有する外管と、前記外管の内径よりも大きく、且つ、前記外管の外径よりも小さい外径を有して前記外管内に挿嵌可能な内管とを備えた蒸散装置の製造方法であって、
前記挿通孔に前記外管を挿入する外管挿入工程と、
前記挿通孔に挿入された前記外管内に前記内管を挿嵌することで、前記外管の外径を前記挿通孔の径と同一の径まで拡径して前記外管を前記挿通孔の周壁に密着させる内管挿嵌工程と、を備えている
ことを特徴とする蒸散装置の製造方法。
【請求項9】
多孔質素材からなる長尺状の蒸散ブロックと、管内外を連通する複数の小孔を有する給水管とを備え、前記蒸散ブロックには長尺方向に延在する挿通孔が設けられており、前記給水管が前記蒸散ブロックの前記挿通孔に挿嵌されており、
前記給水管は、弾性素材により形成されて前記蒸散ブロックの前記挿通孔の径よりも小さい外径を有する外管と、前記外管の内径よりも大きく、且つ、前記外管の外径よりも小さい外径を有して前記外管内に挿嵌可能な内管とを備えた蒸散装置の製造方法であって、
前記外管内に前記内管を挿嵌することで、少なくとも前記挿通孔の径以上の径まで前記外管の外径を拡径させる内管挿嵌工程と、
前記内管を挿嵌した前記外管を前記挿通孔に挿嵌して前記挿通孔の周壁に密着させる給水管挿嵌工程と、を備えている
ことを特徴とする蒸散装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質素材からなる部材に含ませた水を蒸散させ、水の蒸発熱によって空気等を冷却する蒸散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸発冷却を利用した冷気導入法が民家等において採用されている。例えば、陽当たりの良い庭と、樹木で覆われた涼しい庭とを部屋の前後に配置し、陽当たりの良い庭の上昇気流により涼しい庭から涼しい空気を誘引し、更に涼しい庭側の入り口に水の入った素焼の壺を置くことにより、その表面からの水の蒸発によって壺の中の水を冷却し、部屋に流入する空気を加湿・冷却する方法が知られている。
【0003】
この種の冷却方法をさらに効率化したものとして、多孔質素材からなる壁やルーバーを水の蒸発熱によって冷却するようにした蒸散装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、多孔質部材の内部に給水管を挿通し、この給水管に小孔を設け、この小孔を介して、給水管に供給した水を多孔質部材内に浸透させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−139451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、多孔質部材内に給水管を挿通し、給水管に形成された小孔を介して適性に水を供給するには、給水管が多孔質部材に密着していなければならない。しかしながら、上記特許文献1には、給水管の設置方法に関して具体的には開示されていない。
【0006】
通常、給水管のような長尺な管材を多孔質部材内に挿通するためには、管材の外径よりも大きな径の貫通孔を予め多孔質部材に形成する必要がある。しかし、その場合、給水管の外壁面と貫通孔の周面との間には隙間が生じるため、小孔を通った水は、この隙間に溜まるか、若しくは瞬時に流下してしまうこととなる。よって、多孔質部材への適正な水の供給は難しい。
【0007】
また、給水管と多孔質部材との間に隙間が生じることを避けるため、予め給水管を組み立て、この給水管の周囲に、コンクリートを打設するように多孔質部材を流し込んで成形することも考えられる。しかし、その場合には、給水管の小孔が塞がれたり、小孔を介して給水管内に多孔質部材が流入し、流入した多孔質部材が固化して給水管を閉塞させたりする虞があり、これによって、給水管から多孔質部材に向けての水供給に支障をきたすことが考えられる。
【0008】
このように、従来の技術では多孔質部材に給水管を密着させることが難しく、多孔質部材に適正に水を供給することは困難であった。
【0009】
そこで本発明は、多孔質部材に適正に水を供給することを可能とする蒸散装置及び蒸散装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る蒸散装置は、多孔質素材からなる長尺状の蒸散ブロックと、管内外を連通する複数の小孔を有する給水管とを備え、蒸散ブロックには長尺方向に延在する挿通孔が設けられており、給水管が蒸散ブロックの挿通孔に挿嵌されている蒸散装置において、給水管は、弾性素材により形成されて蒸散ブロックの挿通孔の径よりも小さい外径を有する外管と、外管の内径よりも大きく、且つ、外管の外径よりも小さい外径を有して外管内に挿嵌可能な内管とを備え、外管は、内管を挿嵌することにより、少なくとも挿通孔の径以上の径まで外径を拡径可能であって、挿通孔内で挿通孔の径と同一の径まで拡径されて挿通孔の周壁に密着していることを特徴とする。
【0011】
この蒸散装置によれば、外管は、内管を挿嵌することにより、少なくとも挿通孔の径以上の径まで外径を拡径可能である。そして、この外管が、内管を挿嵌することにより、挿通孔内で挿通孔の径と同一の径まで拡径されて挿通孔の周壁に密着する。よって、外管と挿通孔の周壁との間に押圧力を発生させた状態で、挿入孔の周壁すなわち多孔質部材である蒸散ブロックに外管を密着させることができる。その結果、給水管の小孔を通して、蒸散ブロックに適正に水を供給することが可能となる。
【0012】
ここで、外管および内管は、断面円形状をなしていると、給水管内に供給された水は、給水管の周方向において略等圧となる。よって、給水管の周方向において、均等に水を供給することが可能となる。
【0013】
また、外管および内管は、断面矩形状をなしていると、外管内に内管を挿嵌する際、外管の辺に内管の辺を合わせることにより、周方向の位置決めが容易となる。
【0014】
また、外管には複数の第1小孔部が形成されると共に、内管には、複数の第1小孔部と対向する位置に複数の第2小孔部が設けられ、第1小孔部と第2小孔部とを一致させることで給水管に複数の小孔が形成されていると好適である。この場合、上記のように外管内に内管を挿嵌してなる二重管構造の給水管においても、小孔を確実に形成することができる。
【0015】
また、外管には複数の第1小孔部が形成されると共に、内管には、網状またはパンチング状に複数の
第2小孔部が形成され、給水管の複数の小孔は、第1小孔部と第1小孔部に一致する第2小孔部とにより形成されると好適である。この場合、第1小孔部が形成された外管に対し内管の位置を厳密に合わせなくても、給水管の小孔を確実に形成することができる。よって、内管の取り付け作業の容易化が図られる。
【0016】
また、給水管において、複数の小孔による開孔率は給水管の一方の端部から他方の端部に亘って段階的に増大していると、蒸散ブロックの長尺方向における一方の端部から他方の端部にかけて給水の際の抵抗を変化させることができる。よって、蒸散ブロックが設置される向きなどに応じて、長尺方向の全体に亘って均等に水が供給されるよう適宜調節することができる。
【0017】
また、外管の内周壁および内管の外周壁には、外管と内管との周方向の位置ずれを防止する位置ずれ防止手段が設けられていると、外管と内管との間において周方向での位置ずれが防止され、内管の挿嵌により、挿通孔の周壁に対して外管を良好に密着させることができる。
【0018】
本発明に係る蒸散装置の製造方法は、多孔質素材からなる長尺状の蒸散ブロックと、管内外を連通する複数の小孔を有する給水管とを備え、蒸散ブロックには長尺方向に延在する挿通孔が設けられており、給水管が蒸散ブロックの挿通孔に挿嵌されており、給水管は、弾性素材により形成されて蒸散ブロックの挿通孔の径よりも小さい外径を有する外管と、外管の内径よりも大きく、且つ、外管の外径よりも小さい外径を有して外管内に挿嵌可能な内管とを備えた蒸散装置の製造方法であって、挿通孔に外管を挿入する外管挿入工程と、挿通孔に挿入された外管内に内管を挿嵌することで、外管の外径を挿通孔の径と同一の径まで拡径して外管を挿通孔の周壁に密着させる内管挿嵌工程と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
この製造方法によれば、外管挿入工程では、外管の外径が挿通孔の径よりも小さい状態で外管が挿入されるので、外管の挿入が容易である。また内管挿嵌工程によって、外管の外径が挿通孔の径と同一の径まで拡径され、外管が挿通孔の周壁に密着させられる。このような簡易な工程により、挿入孔の周壁すなわち多孔質部材である蒸散ブロックに外管を密着させることができる。その結果、給水管の小孔を通して、蒸散ブロックに適正に水を供給することが可能となる。
【0020】
本発明に係る蒸散装置の製造方法は、多孔質素材からなる長尺状の蒸散ブロックと、管内外を連通する複数の小孔を有する給水管とを備え、蒸散ブロックには長尺方向に延在する挿通孔が設けられており、給水管が蒸散ブロックの挿通孔に挿嵌されており、給水管は、弾性素材により形成されて蒸散ブロックの挿通孔の径よりも小さい外径を有する外管と、外管の内径よりも大きく、且つ、外管の外径よりも小さい外径を有して外管内に挿嵌可能な内管とを備えた蒸散装置の製造方法であって、外管内に内管を挿嵌することで、少なくとも挿通孔の径以上の径まで外管の外径を拡径させる内管挿嵌工程と、内管を挿嵌した外管を挿通孔に挿嵌して挿通孔の周壁に密着させる給水管挿嵌工程と、を備えていることを特徴とする。
【0021】
この製造方法によれば、内管挿嵌工程によって、少なくとも挿通孔の径以上の外径を有する給水管が形成される。ここで、給水管の外管は弾性素材により形成されて弾性力を有しているので、その厚さの範囲で収縮し得る。よって、給水管挿嵌工程において、外管は挿通孔からの圧縮力を受けて僅かに収縮することとなり、給水管を押し込んで挿嵌することが可能になる。そして外管は、挿通孔の周壁すなわち多孔質部材である蒸散ブロックに密着することとなる。その結果、給水管の小孔を通して、蒸散ブロックに適正に水を供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多孔質部材である蒸散ブロックに適正に水を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る蒸散装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿っての断面図である。
【
図3】
図1のIII−III線に沿っての断面図である。
【
図5】外管に形成された小孔部を模式的に示す斜視図である。
【
図6】内管に形成された小孔部を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図1の蒸散装置の他の製造手順を示す図である。
【
図9】外管および内管の位置ずれ防止手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
図1に示すように、蒸散ルーバー1は、建物の外壁やベランダ枠等に取り付けられて、建物の周囲の空気や建物内に流入する空気を冷却するための蒸散装置である。蒸散ルーバー1は、例えば上下方向に長尺状とされた略直方体形状の蒸散モジュール2を複数備えている。複数の蒸散モジュール2は、水平方向に並設されている。各蒸散モジュール2は、図示しない支持手段などによって建物の外壁などに支持されると共に、上下方向の軸線回りを揺動可能になっている。蒸散ルーバー1は、各蒸散モジュール2が揺動可能であることにより、換気、通風(ウィンドキャッチャ)、プライバシーの保護、日照調整、耐火、耐風等の各種機能を兼ね備えている。
【0026】
各蒸散モジュール2は、多孔質素材からなる長尺状の蒸散ブロック3を備え、この蒸散ブロック3に含ませた水を蒸散させ、水の蒸発熱(気化熱)によって空気を冷却する。各蒸散ブロック3は、例えば軽量気泡コンクリート(ALC;Autoclaved Lightweight Concrete)からなり、一定量の含水能力を有すると共に、周辺の温湿度環境に応じて含水した水を放散する能力を有している。
【0027】
各蒸散モジュール2は、蒸散ブロック3に水を供給するための円筒状の給水管7を有している。
図2及び
図3に示すように、蒸散ブロック3には長尺方向に延在する断面円形の挿通孔10が設けられている。給水管7は、この挿通孔10内に挿嵌されて、その外周面が挿通孔10の周壁に密着している。
【0028】
給水管7は、挿通孔10の周壁に密着する断面円形状の外管4と、外管4内に挿嵌された断面円形状の内管6と、からなる。すなわち、給水管7は、二重管構造になっている。
【0029】
外管4は、軟質ゴムや軟質樹脂(軟質塩化ビニルやポリオレフィン)等の弾性素材により形成される。外管4は、筒状部4aと底板部4bとから構成される。外管4の外径D1(
図4参照)は、蒸散ブロック3内に挿嵌された状態と、外管4単体の状態とで異なる。より詳しくは、外管4は、その内部に内管6が挿嵌されることにより、径方向外方に伸張し拡径される。外管4の外径D1は、内管6が挿嵌されない状態で、蒸散ブロック3の挿通孔10の径(
図7(a)に示す径da参照)よりも僅かに小さくなっている。外管4の外径D1は、外管4内に内管6を挿嵌することにより、少なくとも挿通孔10の径以上の径まで拡径可能になっている。すなわち、外管4の外径D1は、内管6を挿嵌することにより、挿通孔10の径と同一の径または挿通孔10の径よりも僅かに大きい径まで拡径可能になっている。
【0030】
図4に示すように、内管6は、例えばアルミ等の金属や硬質塩化ビニル等により形成されており、給水管7の長尺形状を維持する芯材としての強度を有している。内管6の外径D2は、外管4の内径d1よりも大きく、且つ、外管4の外径D1よりも小さくなっている。すなわち、内管6の外径D2は、外管4の内径d1よりも僅かに大きくなっている。
【0031】
図5に示すように、外管4の筒状部4aには、全体に亘って複数の小孔部(第1小孔部)11が形成されている。小孔部11は、外管4の厚み方向に貫通しており、外管4内外を連通する。これらの複数の小孔部11の径(若しくは大きさ)は、外管4の下端部から上端部にかけて段階的に大きくなっている。具体的には、外管4の下層部Lcにおいては、比較的小さな下層小孔部11cが形成されている。外管4の上層部Laにおいては、比較的大きな上層小孔部11aが形成されている。外管4の中層部Lbにおいては、下層小孔部11cよりも大きく、上層小孔部11aよりも小さい中層小孔部11bが形成されている。これらの小孔部11a〜11cの配置は、規則的であってもよいし、ランダムであってもよい。外管4において、複数の小孔部11による開孔率は、外管4の下端部から上端部に亘って段階的に増大している。
【0032】
図6に示すように、内管6には、全体に亘って複数の小孔部(第2小孔部)12が形成されている。小孔部12は、内管6の厚み方向に貫通しており、内管6内外を連通する。これらの複数の小孔部12の径(若しくは大きさ)は、内管6の全体に亘って略等しくなっている。すなわち、下層部Lfに形成された下層小孔部12c、中層部Leに形成された中層小孔部12b、及び上層部Ldに形成された上層小孔部12aは、いずれも略等しい径となっている。これらの小孔部12a〜12cの径は、外管4に形成された上層小孔部11aと同等であってもよく、上層小孔部11aより大きくてもよい。また、これらの小孔部12a〜12cの配置は、規則的であってもよいし、ランダムであってもよい。内管6において、複数の小孔部12による開孔率は、内管6の全体に亘って略等しくなっている。この内管6における開孔率は、上述した外管4における開孔率よりも大きくなっている。
【0033】
蒸散ブロック3の周壁に接触するのは外管4であるので、当該外管4に形成される小孔部11は厳密に管理される必要がある一方、当該小孔部11と内管6内に形成される給水スペースSとを連通する内管6の小孔部12は、これらを連通するものであれば良く、外管4の小孔部11ほどには厳密に管理される必要はない。かかる点に鑑みれば、内管6の小孔部12の大きさは、厳密に設定されなくてもよい。小孔部12は、内管6の剛性がある程度保たれた上で、可能な限り大きく、数多く設けられることが好ましい。内管6としては、例えば網状またはパンチングメタル状のパイプを用いることができる。
【0034】
上記構成を有する外管4及び内管6において、小孔部11と小孔部12とを一致させることにより、給水管7に小孔13が形成されている(
図2及び
図3参照)。すなわち、複数の小孔13は、小孔部11と、この小孔部11に一致する小孔部12とによって形成される。小孔13による開孔率は、外管4と同様、給水管7の下端部から上端部に亘って段階的に増大している。
【0035】
蒸散モジュール2では、蒸散ブロック3内に挿嵌された給水管7内の給水スペースSに水が充填され、この水が小孔13を介して蒸散ブロック3内に浸透する。ここで、小孔13の径は、実質的に小孔部11の径によって決められるので、小孔部11による開孔率が外管4の下端部から上端部に亘って段階的に増大することで、上下方向の水圧差があっても、給水管7の全体に亘って均等な水の供給が可能になっている。
【0036】
続いて、蒸散ルーバー1における各蒸散モジュール2の製造方法について説明する。
【0037】
まず、
図7(a)及び(b)に示すように、蒸散ブロック3の挿通孔10に外管4を挿入する(外管挿入工程)。ここでは、外管4の外径D1が挿通孔10の径daよりも僅かに小さいことにより、外管4が挿通孔10内に容易に挿入される。
【0038】
さらに、
図7(c)に示すように、挿通孔10に挿入された外管4内に内管6を挿嵌する(内管挿嵌工程)。内管6の挿嵌により、外管4の外径は挿通孔10の径daと同一の径まで拡径され、外管4の外周面が挿通孔10の周壁に密着する。
【0039】
以上の外管挿入工程および内管挿嵌工程により、給水管7が挿通孔10内に挿嵌されて、蒸散ブロック3に密着した蒸散モジュール2が形成される。
【0040】
以上説明した本実施形態の蒸散ルーバー1によれば、内管6を挿嵌することにより、外管4が挿通孔10内で挿通孔10の径と同一の径まで拡径されて挿通孔10の周壁に密着するので、外管4と挿通孔10の周壁との間に押圧力を発生させた状態で、挿通孔10の周壁すなわち蒸散ブロック3に外管4が密着させられる。その結果、給水管7の小孔13を通して、蒸散ブロック3に適正に水が供給される。
【0041】
また、外管4および内管6が断面円形状をなしているので、給水管7内に供給された水は、給水管7の周方向において略等圧となり、給水管7の周方向において、均等に水が供給される。
【0042】
また、外管4に形成された小孔部11と内管6に形成された小孔部12とを一致させることで給水管7に複数の小孔13が形成されるので、上記のように外管4内に内管6を挿嵌してなる二重管構造の給水管7においても、小孔13が確実に形成される。
【0043】
また、給水管7の複数の小孔13は、小孔部11と小孔部11に一致する小孔部12とにより形成されるので、外管4に対し内管6の位置を厳密に合わせなくても、給水管7の小孔13が確実に形成され、内管6の取り付け作業の容易化が図られている。
【0044】
また、給水管7において、複数の小孔13による開孔率は給水管7の下端部から上端部に亘って段階的に増大しているため、蒸散ブロック3の長尺方向における一方の端部から他方の端部にかけて給水の際の抵抗を変化させることができる。よって、蒸散ブロック3が上下方向に設置されても、長尺方向の全体に亘って均等に水が供給されるよう適宜調節することができる。
【0045】
例えば、蒸散ルーバー1のように蒸散ブロック3を縦向きとした場合、重力により蒸散ブロック3の挿通孔10の下部に水が溜まる一方、挿通孔10の上部で水位が常に上下動を伴うこととなり、これによって蒸散ブロック3の上部には水が供給され難くなりかねないが、上層部Laにおける開孔率を下層部Lcにおける開孔率よりも大きくすることで、給水管7からの給水量を下層部Lcよりも増大させ、蒸散ブロック3の上下での給水量の差を抑制することができる。
【0046】
また、上記の蒸散ルーバー1の製造方法によれば、外管挿入工程では、外管4の外径D1が挿通孔10の径daよりも小さい状態で外管4が挿入されるので、外管4の挿入が容易になっている。また内管挿嵌工程によって、外管4の外径が挿通孔10の径daと同一の径まで拡径され、外管4が挿通孔10の周壁に密着させられるので、このような簡易な工程により、挿通孔10の周壁すなわち蒸散ブロック3に外管4を密着させることができる。その結果、給水管7の小孔13を通して、蒸散ブロック3に適正に水が供給される。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
【0048】
例えば、蒸散ルーバー1は、他の方法によって製造することができる。すなわち、
図8(a)及び(b)に示すように、まず、外管4内に内管6を挿嵌することで、挿通孔10の径da以上の径まで外管4の外径を拡径させる(内管挿嵌工程)。これによって、給水管7が形成される。そして、
図8(c)に示すように、内管6を挿嵌した外管4(給水管7)を挿通孔10に挿嵌して挿通孔10の周壁に密着させる(給水管挿嵌工程)。このような内管挿嵌工程および給水管挿嵌工程により、給水管7が挿通孔10内に挿嵌されて、蒸散ブロック3に密着した蒸散モジュール2が形成される。
【0049】
上記の製造方法によれば、内管挿嵌工程によって、少なくとも挿通孔10の径da以上の外径を有する給水管7が形成される。ここで、給水管7の外管4は弾性素材により形成されて弾性力を有しているので、その厚さの範囲で収縮し得る。よって、給水管挿嵌工程において、外管4は挿通孔10からの圧縮力を受けて僅かに収縮し、給水管7を押し込んで挿嵌することが可能になる。そして外管4は、挿通孔10の周壁すなわち蒸散ブロック3に密着する。その結果、給水管7の小孔13を通して、蒸散ブロック3に適正に水が供給される。
【0050】
また、
図9(a)及び(b)に示すように、外管4Aの内周壁に、長尺方向に延在する凸部14を設け、内管6Aの外周壁に、長尺方向に延在して凸部14に嵌合する凹部16を設けた給水管7Aとしてもよい。これらの凸部14及び凹部16によって位置ずれ防止手段20(
図9(c)参照)を形成してもよい。この位置ずれ防止手段20によって、外管4Aと内管6Aとの間における位置ずれが防止される。よって、外管4Aの小孔部11と内管6Aの小孔部12とを確実かつ容易に一致させることができると共に、内管6Aの挿嵌により、挿通孔10の周壁に対して外管4Aを良好に密着させることができる。
【0051】
また、上記実施形態では、外管4及び内管6が断面円形状である場合について説明したが、
図10(a)及び(b)に示すように、断面四角形(矩形)の外管4B及び内管6Bであってもよい。この場合、四角筒状の給水管7Bを有する蒸散モジュール2Bが形成される。より具体的には、外管4Bの外径D3,D4は、内管6Bが挿嵌されない状態で、蒸散ブロック3Bの挿通孔10Bの径(
図10(c)に示す径db,dc参照)よりも僅かに小さくなっている。外管4Bの外径は、外管4B内に内管6Bを挿嵌することにより、少なくとも挿通孔10Bの径以上の径まで拡径可能になっている。また、内管6Bの外径D5,D6は、外管4Bの内径d3,d4よりも大きく、且つ、外管4Bの外径D3,D4よりも小さくなっている。これにより、断面四角形の給水スペースSBが形成される。
【0052】
このような蒸散モジュール2Bでは、外管4Bおよび内管6Bは、断面矩形状をなしているため、外管4B内に内管6Bを挿嵌する際、外管4Bの辺に内管6Bの辺を合わせることにより、周方向の位置決めが容易となる。よって、外管4Bの小孔部と内管6Bの小孔部とを確実かつ容易に一致させることができる
【0053】
また、上記実施形態では、内管6に小孔部12が形成される場合について説明したが、これに限られず、内管には第2小孔部としてのスリットが形成されてもよい。
【0054】
上記実施形態では、本発明が蒸散ルーバー1に適用される場合について説明したが、例えば、本発明の蒸散装置は、建物の壁に適用されてもよい。この場合、多孔質素材からなる壁内に給水管を設け、壁からの蒸散によって建物自体を冷却することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1…蒸散ルーバー(蒸散装置)、3…蒸散ブロック、4,4A,4B…外管、6,6A,6B…内管、7,7B…給水管、10…挿通孔、11…小孔部(第1小孔部)、12…小孔部(第2小孔部)、13…小孔、20…位置ずれ防止手段。