【実施例1】
【0020】
図1は、本発明に係る屋根裏換気用器具を装着する換気瓦の構成を示す、換気瓦の表面側から見た説明用斜視図である。また
図2は、
図1の換気瓦の内部に装着される本発明に係る屋根裏換気用器具の構成を示す説明用斜視図である。
【0021】
図1に示される屋根裏換気用の換気瓦は換気筒部を有し、換気筒部は瓦の裏面側に設けられる第1換気孔と、前記第1換気孔に連なる換気通路と、前記換気通路の内壁に該通路の一部を閉塞し通路に対して略垂直に形成される堰部と、前記換気通路の外気側に形成される第2換気孔と、を備える。100は屋根裏換気用の換気瓦であり、121は換気瓦の表面、122は換気瓦の裏面であり、110は換気筒部であり、101は裏面122側に設けられる第1換気孔であり、102は前記第1換気孔101に連なる換気通路であり、103は換気通路の内壁に該通路の一部を閉塞し通路に対して略垂直に形成される堰部であり、104は換気通路の外気側に形成される第2換気孔である。
図3は本発明に係る屋根裏換気用器具を装着する換気瓦の表面側から見た内部の構成を示す説明用斜視図である。
図3は、換気筒部110の換気通路102の瓦表面側の一部を切断して、換気通路内部の構成を示したものであって、紙面上方に示される屋根裏換気用器具200は、換気筒部110の中に収められる。
【0022】
図2に示されるように、本発明の屋根裏換気用器具は、
図1における換気瓦の第1換気孔101に直接嵌め込まれる換気用器具本体部と、
図1における換気瓦の第1換気孔101の一部を気温に応じて開閉し、その結果換気通路102が開閉・遮断される第1換気孔開閉部と、換気瓦の堰部103に直接固定される中仕切り部と、換気瓦の第2換気孔104を塞ぐ金網装着部と、を有する。ここで200は屋根裏換気用器具であり、210は換気用器具本体部であり、220は第1換気孔開閉部であり、230は中仕切り部であり、240は金網装着部である。
図1に示されるように、換気用器具本体部210は換気瓦の第1換気孔101に嵌め込まれ固定され、第1換気孔開閉部220と中仕切り部230と金網装着部240は換気通路102内に収められる。
図1及び
図2に示される本発明に係る屋根裏換気用器具200は、換気瓦の換気筒部内部に装着されて、屋根裏換気用器具の形状記憶合金製のバネ部(
図2の223参照)が空気の温度変化に伴って伸縮することにより、野地板の開口部と屋根裏換気用器具付換気瓦の間の空気の流れを調整して自然に屋根裏の換気を行い得ることを特徴とする。
【0023】
図2に示されるように換気用器具本体部210は、換気瓦100の第1換気孔101と類似の形状を有し、第1換気孔開閉部220は、前記換気用器具本体部210に設けられる開閉用開口部と前記開閉用開口部に設置される蓋部と、前記蓋部の換気通路側に設置されるバネ部と前記バネ部を固定するバネ保持部と、を有する。221は換気用器具本体部210に設けられる開閉用開口部であり、222は開閉用開口部に設置される蓋部であり、223は蓋部の換気通路側に設置されるバネ部であり、224はバネ部を固定するバネ保持部である。なお
図2におけるバネ保持部224の形状は例示であって、これに限定されるものではない。
【0024】
バネ部223は、バネ周辺の気温に依存して収縮・伸長する形状記憶合金製であって、蓋部222は、バネ部223周辺の気温が高い時には前記バネ部が収縮して蓋が開けられ、逆に、バネ部223周辺の気温が低い時には前記バネ部が伸長して蓋が閉じられる構造を有する。また、前記蓋部222は
図2に示されるように、雨水が斜めに吹き上げてくるような悪天候の状況下であっても雨水が換気通路内部に入り込むことを防止するために、蓋部222の水上側が固定され、水下側がバネ223に引っ張られて換気筒部内に向かって開く構造になっている。本発明の屋根裏換気用器具200は、バネ周辺の気温に応じて形状記憶合金製のバネ部223が伸縮し、第1換気孔開閉部220が開閉されることにより、野地板の開口部と前記第1換気孔開閉部を通じて自然に屋根裏の換気を行い得ることを特徴とする。
【0025】
中仕切り部230は、換気用器具本体部210の1辺に一体化して略垂直に形成され、換気瓦堰部103の換気通路に対する垂直面と類似の形状を有し、また装着の際には堰部103に密着固定して設置されるために、屋根裏換気用器具200は換気筒部内で安定して装着できる。
【0026】
金網装着部240は、中仕切り部230に一方の端を固定されて換気瓦の第2換気孔104まで到達する細長の矩形板であって、固定されない側の端は折り曲げられて第2換気孔104を塞ぐ金網を装着することが可能である。241は金網装着部240の細長形状の腕部であり、242は該腕部241の固定されない側の端であって折り曲げられた部分である。242はステンレス製の雨水等侵入防止用金網をネジ止めで固定する用に孔が設けられる。ステンレス製の金網は
図2では省略されているが、雨水や鼠等の小動物が瓦内部に侵入することの防止に役立つ。
【0027】
図4は、屋根裏換気用器具200を装着する換気瓦の裏面側の構成を示す説明用斜視図である。
図4の紙面上方に示される屋根裏換気用器具は、瓦の裏側の第1換気孔101に装着される。また、この屋根裏換気用器具200が装着された状態は
図5で示され、
図5は、屋根裏換気用器具を装着された換気瓦を裏面側から見たときの瓦内部の構成を示す説明用斜視図である。屋根裏換気用器具200は、
図4に示されるように換気用器具本体部210の形状は、瓦裏面122の第1換気孔101の形状と類似しているため、
図5に示されるように、装着された屋根裏換気用器具の第1換気孔開閉部220の蓋部222が閉じる場合は瓦裏面122の第1換気孔101は塞がれて空気の流通は遮断される。
【0028】
図6は、本発明に係る屋根裏換気用器具を装着された換気瓦の裏面側から見た説明用平面図である。
図6は換気瓦に屋根裏換気用器具200を装着され、バネ部223が伸びて蓋部223が閉じているため、瓦裏面の第1換気孔101は塞がれている。屋根裏換気用器具200はバネ部223以外はステンレス製である。また図示されていないが、第2換気孔104には、金網装着部240に固定することで容易にステンレス製の金網を装着することができる。
【0029】
図7は本発明に係る屋根裏換気用器具を装着する換気瓦を屋根に葺いた様子を示す説明用斜視図である。本発明の屋根裏換気用器具を装着する換気瓦を設置する場所と設置する換気瓦の数は個々の屋根の形状と屋根の面積に勘案して効果的に配置する。
【0030】
夏季と冬季では、屋根に葺かれた瓦表面の温度には大きく相違があり屋根裏の空間の温度も相当異なるため、屋根裏の空間の温度に応じて屋根裏換気用器具の第1換気孔開閉部を開閉できることにより、気温に応じた屋根裏の効率的な換気が実現できる。夏季は屋根に降り注ぐ日射量が多いために、屋根に葺かれた瓦の温度は外気温より相当に高いものになり、屋根裏の空間の温度の上昇を招き、空気自体の熱伝導率は低いものの、徐々に、天井の下の屋内空間の温度の上昇を、招くこととなるので、屋根裏の空間の空気を換気すると、天井の下の屋内空間の温度の上昇を防止できる。逆に、冬季は、屋根裏の空間を換気しないことにより、天井の下の屋内空間の中の熱が外気に放出されてしまうことを防止できる。また、一般的な日本家屋においては断熱不足や気密性の不足によって、冬季には暖房による室内温度の上昇に伴い、室内の空気の熱伝導や空気の対流によって、屋根裏空間の温度の上昇が招かれ、それにより室内の暖房が切られた後に夜間に温度が下がることで屋根裏空間に結露を引き起こす場合が多く見られるが、屋根裏の空間の温度に応じて屋根裏換気用器具の第1換気孔開閉部を開閉できることにより、自然に屋根裏の空間の適度な換気が行われることで結露を防止することができて、家屋の耐久性を高める効果が期待できる。
また、天気によっても屋根に降り注ぐ日射量は変化し、晴れのときは屋根に降り注ぐ日射量は多いために瓦表面の温度は高くなるが、逆に雨の時は屋根に降り注ぐ日射量は少ないために瓦表面の温度は低くなろ。故に天気によっても瓦表面からの熱伝導に大きな差が生じて屋根裏空間の温度も変化する。従って、晴れのときには気温に応じて屋根裏換気用器具の第1換気孔開閉部が開閉して屋根裏の空間の空気を換気するが、雨量の多い時には屋根裏空間の温度は比較的低いために、屋根裏換気用器具の第1換気孔開閉部を閉じるまたは開口度合いが少ないと考えられ、これによって雨水の屋根裏への浸入防止も期待できる。
【0031】
図8は本発明に係る屋根裏換気用器具付換気瓦を屋根に葺く際に使用する野地板用保護板の構成を示す説明用斜視図である。屋根裏換気用器具付換気瓦を屋根に葺く際には、換気瓦を葺く位置の野地板および野地板の上に貼られるルーフィングと呼ばれる樹脂製の下葺き材の適切な位置に開口部が設けられるが、悪天候の場合には該開口部から雨水が屋根裏の中に侵入することも想定される。そのため強風・豪雨等により換気瓦から開口部を通じて雨水が屋根裏に浸入することを未然に防止するために、野地板の開口部を保護することが有効であると考えられる。そこで発明者は、換気瓦を設置する際に野地板の開口部を保護するための野地板用保護板を設置する方法を考えた。また、瓦は焼き物であるため換気筒部の換気孔の位置は瓦毎に微妙に異なるが、該野地板用保護板を使用することによって、瓦毎に異なる換気孔の位置と野地板の開口部の位置合わせの微調整が容易にできて、屋根裏換気用器具付換気瓦装置を屋根に設置する作業時間の短縮が図れる。
【0032】
図8において、矢印Uは水上方向を示し、矢印Dは水下方向を示す。
図9,10,11においても同様である。また
図9は本発明に係る屋根裏換気用器具付換気瓦を屋根に葺く際に使用する野地板用保護板の表面側(換気瓦に接する面側)の構成を示す説明用正面図である。
【0033】
図8に示されるように、野地板用保護板はステンレス製であって、第1保護板と第2保護板から構成され、第1保護板の第2保護板と接していない側の面は、野地板の上に敷かれるルーフィングと呼ばれる樹脂製の下葺き材に接している。300は野地板用保護板であり、310は第1保護板であり、320は第2保護板である。前記第1保護板310は、前記野地板の開口部に対峙する第1矩形孔部と、前記第1保護板310の水上側の長辺に雨水の浸入防止用に前記瓦側への立ち上がり縁部と、第1矩形孔部の水上側の長辺に雨水の浸入防止用に野地板側への折り曲げ縁部と、を備える。311は第1矩形孔部であり、312は第1保護板310の水上側の長辺に設けられる瓦側への立ち上がり縁部であり、313は第1矩形孔部311の水上側の長辺に設けられる野地板側への折り曲げ縁部である(
図11参照)。314は野地板用保護板を野地板に設置する際のネジ孔であり、第1保護板310の角近辺に4箇所設けられる。また屋根裏換気用器具付換気瓦を配置する位置に対応して、野地板の上に敷かれたルーフィングに設置された瓦桟410(
図12参照)に挟まれた適切な位置に野地板の開口部が設けられるが、該野地板の開口部420(
図12参照)の上に野地板用保護板の第1保護板310がネジ等で固定される。
【0034】
また第2保護板320は前記第1保護板の上に配置され、第1矩形孔部より開口面積が小さく第1矩形孔部に含まれる大きさの第2矩形孔部を有する。野地板上で固定されている第1保護板に対して、第2保護板320は、前記第2矩形孔部が左右にスライドして孔の位置を調整することを可能とする構造である。321は第2矩形孔部であり、324は第2保護板320を左右にスライドさせ得るためのネジ孔部分であって、
図8に示されるように第2保護板320の長辺付近に4箇所設けられる。
このような構成の野地板用保護板を用いる理由は、瓦は焼き物であるために換気瓦の換気筒部の換気孔の位置、特に第1換気孔101の大きさおよび位置は瓦毎に微妙に異なる。そのために、屋根裏換気用器具付換気瓦を設置する際に野地板の開口部と換気瓦の換気孔の位置を合わせることは容易ではなく、特に新築工事と異なり屋根のリフォームの場合には、既存の瓦の中に屋根裏換気用器具付換気瓦を設置するため、孔の位置を合わせをする作業を効率的に行うことは容易でないが、野地板用保護板300の第2保護板320を左右にスライドさせることによって、瓦毎に異なる第1換気孔101の位置調整が容易にできて、設置時間の短縮化が図れるからである。
【0035】
第2保護板320は第2矩形孔部321の水下側の長辺に、第2換気孔104から入り込む雨水をできる限り野地板に凍み込ませないための受け皿部を備え、該受け皿部は、その外周に前記瓦側への立ち上がり縁を有し、第1矩形孔部を通過して野地板側に傾斜する形状を有し、更に雨水の浸入防止用として前記第2矩形孔部の前記水下側長辺以外の外周部に前記瓦側への立ち上がり縁を有している。322は受け皿部であり、323は受け皿部の水下側の長辺以外の外周に設けられる瓦側への立ち上がり縁であり、325は第2矩形孔部321の受け皿部322を取り付ける長辺以外の外周部に設けられる瓦側への立ち上がり縁である(
図11参照)。このように屋根裏換気用器具付換気瓦を屋根に設置する際に、瓦の第1換気孔の位置および大きさに対応して容易に第2矩形孔部の位置調整をすることを可能とする野地板用保護板を使用することにより、雨水等の野地板の開口部から屋根裏への侵入を防止する効果が期待できる。
水下(みずしも)側の長辺以外の外周に立ち上がり縁を設置し、水下(みずしも)側には上がり縁を設置しない理由は、水上(みずかみ)側への雨水等の浸入を防止し、水下側の長辺以外の外周に立ち上がり縁より堰きとめられた水を水下側に流すためである。
【0036】
図9は本発明に係る屋根裏換気用器具付換気瓦を屋根に葺く際に使用する野地板用保護板の表面側(換気瓦に接する側)の構成を示す説明用正面図である。
また、
図10は本発明に係る屋根裏換気用器具付換気瓦を屋根に葺く際に使用する野地板用保護板の裏面側(野地板に接する側)の構成を示す説明用平面図である。
図8及び
図10に示されるように、受け皿322は第2矩形孔部321の水下側の長辺に溶接等により固定され、その面積は第1矩形孔部よりは小さく第2矩形孔部321よりは少し大きく、水上側の長辺が水下側長辺より若干長い台形形状である。
また、
図11は屋根裏換気用器具付換気瓦を屋根に葺く際に使用する野地板用保護板の構成を示すための説明用A―A切断線断面図である。
図11において、矢印Uが水上側、矢印Dが水下側を示し、紙面右側が野地板側、紙面左側が瓦側を示している。
図11に示されるように、受け皿322は第1矩形孔部を通過して野地板側に少し傾斜している。また第2矩形孔部321の受け皿322が設置される長辺以外の外周には瓦側への立ち上がり縁323を備えている。なお、この受け皿322の形状は例示であってこれに限定されるものではなく、第1矩形孔部及び第2矩形孔部から雨水が屋内に漏れることを阻むために有効な形状であればよい。
図11に示されるように、第1保護板310の水上側の長辺の瓦側への立ち上がり縁部312及び第1矩形孔部311の水上側の長辺の野地板側への折り曲げ縁部313の形状も同様に雨水の浸入防止用に有効である。
【0037】
図12は該野地板用保護板を本発明に係る屋根裏換気用器具付換気瓦を配置する場所に設置する様子を示す説明用斜視図である。
図12に示されるように、前記野地板用保護板300は、野地板の上に設置される瓦桟410に挟まれた領域の、屋根裏換気用器具付換気瓦を配置する位置に設けられる野地板の開口部の上に設置・固定され、換気瓦は該野地板用保護板の上に設置される。410は野地板の上の瓦桟である。具体的には、第2矩形孔部321の位置を瓦の第1換気孔101の位置に合うように第2保護板320を左右にスライドさせて微調整する。図には示されていないが野地板用保護板300は、屋根裏換気用器具付換気瓦と野地板に挟まれた空間に配置されている。
【0038】
図13は野地板用保護板300の上に本発明に係る屋根裏換気用器具付換気瓦を設置する様子を示す説明用斜視図である。400は屋根の棟部である。
図13に示すように屋根裏換気用器具付換気瓦100は、屋根の棟部400付近に設置される。屋根裏空間の効率的な空気の流れを作るために空気の出口と入口が必要とされることから、屋根裏換気用器具付換気瓦100は屋根の正面に向かって左右2つで1セットとするために、屋根の表面積に応じて偶数個が設置される。また、屋根裏換気用器具付換気瓦100は屋根裏換気のための換気孔面積の合計、即ち、屋根裏換気用器具のバネ部が収縮して蓋が開けられる際の第1換気孔開閉部220と蓋部222との隙間、及び野地板用保護板の第2矩形孔部321と受け皿322との隙間の面積の合計値が、家屋の天井面積の1600分の1以上になるように、屋根裏換気用器具付換気瓦の配置される個数が決められる。