【実施例】
【0062】
実施例
トータルで4つの実験由来の結果を示す。最初の2つのデータセットは、ウマ血清に基づく組成物中のIL-6の安定化を示す。IL-6は、常に、低濃度(24〜60 pg/mL)および高濃度(126〜357 pg/mL)として記載される2種の濃度で試験される。第3のデータセットはウマ血清およびヒト血清中の安定化を示す。第4のデータセットは、3 %血清タンパク質を含む水性組成物中のIL-6の安定性に対する化合物の負の影響を示す。
【0063】
該組成物はHepes (50 mM)とともに血清を含む。RocheのElecsys IL-6 Immunoassay (Id. 05109442190)を使用してIL-6を測定した。TTABは化合物テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、CAS番号1119-97-7に関する。DTABは化合物ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、CAS番号1119-94-4に関する。HTABは化合物ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、CAS番号57-09-0に関する。
【0064】
Roche DiagnosticsのElecsys 2010分析計ですべての測定を実施した。Roche Diagnostics Elecsys 2010 Immunoassay Systemはイムノアッセイ分析のための全自動化されたソフトウェア制御システムである。それは、分析のための各種試験を使用する定量的および定性的in vitro測定用に設計されている。検出システムは、電極およびアナライト特異的標識抗体を使用する電気化学発光技術に基づく。すべての測定で使用される試薬はRocheのElecsys IL-6アッセイ、cat.no. 05109442190である。このアッセイでは、いわゆるサンドイッチ原理を使用する。詳細を以下に記載する。
【0065】
・第1のインキュベーション: 30μLのサンプルをビオチン化モノクローナルIL-6特異的抗体とインキュベートする。
【0066】
・第2のインキュベーション: ルテニウム錯体およびストレプトアビジンコーティング微粒子で標識されたモノクローナルIL-6特異的抗体を加えた後、抗体はサンプル中の抗原とサンドイッチ複合体を形成する。
【0067】
・反応混合物を測定セル中に吸引し、そこで微粒子は電極の表面に磁気によって捕捉される。そして未結合物質をProCellで除去する。そして電極に電圧をかけると、化学発光による発光が誘発され、光電子増倍管によってそれを測定する。
【0068】
・2点較正によって装置特異的に作製された検量線(calibration curve)によって結果を決定し、試薬バーコードによってマスター曲線を提供する。すべての濃度値は、検量線を使用して生のシグナル値から算出する。参照値は第1の測定(0日目)のものを100 %に設定した。分析計は各サンプル中のアナライト濃度(pg/mL)を自動的に算出する。すべての他の計算はMicrosoft Excel 2003を使用して行った。
【0069】
実施例1
・2種の濃度のIL-6 (24.4〜42.9 pg/mLおよび126.8〜234.2 pg/mL)を、ウマ血清に基づく組成物中で調製した。
【0070】
・各IL-6濃度について6個のアリコートを調製した。第1のアリコートに0.05% TTABを混ぜ、第2のアリコートに0.1 % TTABを混ぜ、第3のアリコートに0.15 % TTABを混ぜ、第4のアリコートに0.2 % TTABを混ぜ、第5のアリコートに0.25 % TTABを混ぜ、第6のアリコートに0.5 % TTABを混ぜた。
【0071】
・12のアリコート全部から、Elecsys IL-6イムノアッセイを使用してIL-6の濃度を測定した。IL-6の添加後30分以内に測定を実施した。このIL-6測定はこの実験での参照として機能した。第1の測定が実施された0日目の参照値を100 %に設定した。
【0072】
12アリコート全部を2〜8℃で5日まで保存した。1、4および5日後にサンプルを採取し、IL-6に関して測定した。5日後、低濃度のIL-6 (24.4〜42.9 pg/ml)を使用すると、0.15 % TTAB〜0. 25 % TTABの濃度を使用したIL-6の回収は依然として88 %〜94 %の範囲であり、0.5 % TTABの濃度では回収は72 %でしかなく、0.05 % TTABの濃度では82 %であった。高濃度のIL-6 (126.8〜234.2 pg/ml)を使用すると、0.15 % TTAB〜0.25 % TTABで回収は90〜94 %の範囲であり、一方、0.5 % TTABの濃度ではIL-6の回収は77 %でしかなく、0.05 % TTABの濃度では85 %であった。
【0073】
詳細な結果を
図1に示す。この実験は、回収%を測定することによって決定した、IL-6に対するTTABの濃度依存的安定化効果を明らかに示す。最良の安定化は0.2 %および0.25 % TTABで観察される。対照的に、0.5% TTABは安定性の低下をもたらす。
【0074】
実施例2
・2種の濃度のIL-6 (43.7〜60.8 pg/mLおよび258.5〜347.5 pg/mL)を、ウマ血清に基づく組成物中で調製した。
【0075】
・各IL-6濃度について3個のアリコートを調製した。第1のアリコートをネガティブコントロールとして使用し、それは未変化のままであり、第2のアリコートに0.2 % TTABを混ぜ、第3のアリコートに0.25 % TTABを混ぜた。
【0076】
・6つのアリコート全部から、Elecsys IL-6イムノアッセイを使用してIL-6の濃度を測定した。IL-6の添加後30分以内に測定を実施した。このIL-6測定は、この実験で、2〜8℃で23日保存されたサンプルの参照として機能した。
【0077】
・6つのアリコート全部を2〜8℃で23日まで保存した。1、3、4および23日後にサンプルを採取し、IL-6に関して測定した。6つのアリコート全部の第1のサンプルを採取したとき(0日目)の参照の回収値を100 %に設定した。
【0078】
・サンプルの23日の保存後、低濃度のIL-6 (43.7〜60.8 pg/mL)において、0.2 % TTABで回収値は依然として93 %であり、0.25 % TTABでは94 %であった。アリコート中でTTABを使用しなかった場合、サンプルの23日間の保存後に回収値は74 %に低下する。
【0079】
・高濃度のIL-6 (258.5〜347.5 pg/mL)を使用すると、回収値は依然として0.2 % TTABで95 %であり、0.25 % TTABで96 %である。アリコート中でTTABを使用しなかった場合、サンプルの23日間の保存後に回収値は78 %に低下する。
【0080】
詳細な結果を
図2に示す。この実験は、IL-6の回収%に関する、0.2 %および0.25 % TTABで観察される安定化効果を明らかに確認する。TTABを含まないネガティブコントロールは安定性の減少を示す。
【0081】
実施例3a
・2種の濃度のIL-6 (29.1〜44.1 pg/mLおよび169.1〜241.8 pg/mL)を、ヒト血清に基づく組成物中で調製した。
【0082】
・各IL-6濃度について4個のアリコートを調製した。第1のアリコートをネガティブコントロールとして使用し、それは未変化のままであり、第2のアリコートに0.2 % TTABを混ぜ、第3のアリコートに0.2 % DTABを混ぜ、第4のアリコートに0.2 % HTABを混ぜた。
【0083】
・8つのアリコート全部から、Elecsys IL-6イムノアッセイを使用してIL-6の濃度を測定した。IL-6の添加後30分以内に測定を実施した。このIL-6測定はこの実験での参照として機能した。
【0084】
・8つのアリコート全部を2〜8℃で30日まで保存した。1、2、3、7、16および30日後にサンプルを採取し、IL-6に関して測定した。最初の測定を実施したとき(0日目)のアリコートの参照の回収値を100 %に設定した。式C
10〜C
18-アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物(I)の化合物の添加の正の効果は、アリコートの30日間の保存後に依然として存在している。ネガティブコントロールは低濃度のIL-6で28 %の回収値を示し、0.2 % TTAB、0.2 % DTABまたは0.2 % HTABを含むアリコートの回収値は依然として40〜52 %の範囲である。高濃度のIL-6で同じ効果が観察され、ネガティブコントロールは、低濃度のIL-6で27 %の回収値を示し、0.2 % TTAB、0.2 % DTABまたは0.2 % HTABを含むアリコートの回収値は39〜48 %の範囲である。
【0085】
詳細な結果を
図3aに示す。この実験は、ヒト血清に基づく組成物中で0.2 % TTABまたは0.2 % DTABまたは0.2 % HTABで観察される安定化効果を明らかに示す。化合物を含まないネガティブコントロールは安定性の減少を示す。
【0086】
実施例3b
・2種の濃度のIL-6 (33.6〜44.1 pg/mLおよび187.2〜268.3 pg/mL)を、ウマ血清に基づく組成物中で調製した。
【0087】
・各IL-6濃度について4個のアリコートを調製した。第1のアリコートをネガティブコントロールとして使用し、それは未変化のままであり、第2のアリコートに0.2 % TTABを混ぜ、第3のアリコートに0.2 % DTABを混ぜ、第4のアリコートに0.2 % HTABを混ぜた。
【0088】
・8つのアリコート全部から、Elecsys IL-6イムノアッセイを使用してIL-6を測定した。IL-6の添加後30分以内に測定を実施した。該IL-6測定はこの実験での参照として機能した。
【0089】
・8つのアリコート全部を2〜8℃で30日まで保存した。1、2、3、7、16および30日後にサンプルを採取し、IL-6に関して測定した。
【0090】
・最初の測定を実施したとき(0日目)のアリコートの参照の回収値を100 %に設定した。式C
10〜C
18-アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物(I)の化合物の添加の正の効果は、アリコートの30日間の保存後に依然として存在している。ネガティブコントロールは低濃度のIL-6で79 %の回収値を示し、0.2 % TTAB、0.2 % DTABまたは0.2 % HTABを含むアリコートの回収値は依然として93〜95 %の範囲である。高濃度のIL-6で同じ効果が観察され、ネガティブコントロールは、低濃度のIL-6で80 %の回収値を示し、0.2 % TTAB、0.2 % DTABまたは0.2 % HTABを含むアリコートの回収値は89〜93 %の範囲である。
【0091】
詳細な結果を
図3bに示す。この実験は、ウマ血清に基づく組成物中で0.2 % TTABまたは0.2 % DTABまたは0.2 % HTABで観察される安定化効果を明らかに示す。化合物を含まないネガティブコントロールは安定性の減少を示す。
【0092】
実施例4
・Rocheから市販されている、3 %血清タンパク質を含む水性溶液(Universal Diluent, Cat.No. 03183971122)中で2種の濃度のIL-6 (41.4〜53.1 pg/mLおよび237.7〜285.0 pg/mL)を調製した。
【0093】
・各IL-6濃度について4個のアリコートを調製した。第1のアリコートをネガティブコントロールとして使用し、それは未変化のままであり、第2のアリコートに0.2 % TTABを混ぜ、第3のアリコートに0.2 % DTABを混ぜ、第4のアリコートに0.2 % HTABを混ぜた。
【0094】
・8つのアリコート全部から、Elecsys IL-6イムノアッセイを使用してIL-6の濃度を測定した。IL-6の添加後30分以内に測定を実施した。このIL-6測定はこの実験での参照として機能した。
【0095】
・8つのアリコート全部を2〜8℃で30日まで保存した。7、16および30日後にサンプルを採取し、IL-6に関して測定した。
【0096】
・最初の測定を実施したとき(0日目)のアリコートの参照の回収値を100 %に設定した。式C
10〜C
18-アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物(I)の化合物の添加の負の影響は、アリコートの7日の保存後にすでに観察される。ネガティブコントロールは低濃度のIL-6で98 %の回収値を示し、0.2 % TTAB、0.2 % DTABまたは0.2 % HTABを含むアリコートの回収値は60〜81 %の範囲でしかない。高濃度のIL-6で同じ影響が観察され、ネガティブコントロールは96 %の回収値を示し、0.2 % TTAB、0.2 % DTABまたは0.2 % HTABを含むアリコートの回収値は59〜81 %の範囲でしかない。
【0097】
詳細な結果を
図4に示す。この実験は、水性溶液中のIL-6の安定性に対するTTAB、またはDTABまたはHTABの負の影響を明らかに示した。
【0098】
実施例5
・ウマ、ウシまたはマウス血清(203.1〜254.2 pg/mL)および4 Hepesバッファーに基づく溶液にIL-6を加えた。
【0099】
・各IL-6調製物について2個のアリコートを調製した。第1のアリコートをネガティブコントロールとして使用し、それは未変化のままであり、第2のアリコートに0.225 % TTABを混ぜた。
【0100】
・6つのアリコート全部から、Elecsys IL-6イムノアッセイを使用してIL-6を測定した。IL-6の添加後30分以内に測定を実施した。このIL-6測定はこの実験での参照として機能した。
【0101】
・6つのアリコート全部を2〜8℃で7日保存した。7日後にサンプルを採取し、IL-6に関して測定した。
【0102】
詳細な結果を
図5に示す。この実験は、ウマ、ウシおよびマウス血清に基づく組成物中のIL-6の安定性に対するTTABの正の効果を明らかに示した。それはまた、ウシ血清中のIL-6の安定性に対するTTABの負の影響も示す。
【0103】
説明中で引用される参考文献
説明中で引用される特許文献
・EP 1566437
・EP 1882944
・US 20040157218
・WO 2009048962
・EP 1242576
・EP 0467337
説明中で引用される非特許文献
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