(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体電解質体を燃料極と空気極とで挟持した平板型の燃料電池セルと、前記燃料電池セルの表面に設けた接合部と、金属材で構成され板状をなすセパレータと、から構成され、前記セパレータは、平面視で前記空気極又は前記燃料極を露出させる開口部を有し、該セパレータは開口側端部と該開口側端部と反対側の外周部とを有し、
前記平面視で、前記燃料電池セルと前記セパレータの前記開口部側端部とが前記燃料電池セルの表面に設けられた接合部を介して接合されており、前記セパレータの前記外周部が前記燃料電池セルの外縁部よりも前記燃料電池セルの面外方向に位置してなる燃料電池ユニットにおいて、
前記セパレータは、その主面が対向し、かつ前記燃料電池セルの前記面外方向に軸通する仮想線と前記対向する主面同士が交わるように形成された折曲部を有し、
前記折曲部は、前記空気極又は前記燃料極の端部と前記セパレータの前記外周部との間に形成されている、
ことを特徴とする燃料電池ユニット。
前記セパレータは、複数枚の板材からなり、前記折曲部は、該板材同士が対向し、かつ該板材の端部同士を接合してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した燃料電池ユニットでは、波状やL字状の曲げ構造を有するセパレータを備えているので固体電解質体の面内方向への変形には追従できるものの、面外方向への変形追従には十分に対応できない為、燃料電池スタックの稼動・停止の繰り返しに伴う熱の変動による収縮差や、インターコネクタや集電体を介して燃料電池ユニットをスタックする際にかかる応力などで、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極にクラックが発生するといった問題が生じることがあった。
【0005】
また、金属製のセパレータは厚みが薄いと、耐酸化性が十分に担保されず、セパレータ自体が破損する場合もあった。
【0006】
その場合は、セパレータの耐酸化性の確保の為、セパレータを厚くすることが検討されたが、セパレータの厚さを厚くし過ぎると、セパレータ自体の変形が阻害されることによって燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極にクラックが誘発されるという問題もあった。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極に生じるクラックを抑制し、さらにはセパレータの耐酸化性の不足による破損を防止することで、燃料電池ユニットの長期信頼性を補償することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池ユニットは、固体電解質体を燃料極と空気極とで挟持した平板型の燃料電池セルと、前記燃料電池セルの表面に設けた接合部と、金属材で構成され板状をなすセパレータと、から構成され、
前記セパレータは、平面視で前記空気極又は前記燃料極を露出させる開口部を有し、該セパレータは開口側端部と該開口側端部と反対側の外周部とを有し、前記平面視で、前記燃料電池セルと前記セパレータ
の前記開口部側端部とが前記燃料電池セルの表面に設けられた接合部を介して接合されて
おり、前記セパレータの前記外周部が前記燃料電池セルの外縁部よりも前記燃料電池セルの面外方向に位置してなる燃料電池ユニットにおいて、前記セパレータは、その主面が対向し、かつ前記燃料電池セルの面外方向に軸通する仮想線と前記対向する主面同士が交わるように形成された折曲部を有
し、前記折曲部は、前記空気極又は前記燃料極の端部と前記セパレータの前記外周部との間に形成されている、ことを特徴としている。
【0009】
本発明では、セパレータが上述した折曲部を有しているので、燃料電池ユニットに外部から応力が働いた時や、燃料電池スタックの稼動・停止の繰り返しに伴う熱の変動による収縮差や、燃料電池セルの面外方向の反りよって発生する応力に対してセパレータが追従変形し接合部にかかる力を軽減することで、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極に発生するクラックを防止することができる。
なお、本発明では、セパレータの一方の側面から他方の側面へと向かう連続面における、接合部と接合される側の連続面を、セパレータの「裏面」と定義し、当該主面とは他方の連続面を「主面」と定義する。したがって、セパレータが折り曲げられている場合は、前記主面は対向し得ることとなる。
また、セパレータを複数枚接合して見かけ上、一枚のセパレータを形成したときは、接合後のセパレータにおいて上記定義を適用する。
【0010】
また、前記セパレータは、前記対向する主面と前記仮想線とのなす角がそれぞれ直角であるように形成されてなることを特徴としている。
【0011】
本発明では、対向する主面と仮想線とのなす角がそれぞれほぼ直角で、燃料電池セルの面外方向に加えて面内方向への反りにもセパレータが追従変形し接合部にかかる力を軽減することで、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極に発生するクラックをより防止することができる。上記角度は90度に近づくほどに面外方向への変形に対して接合部にかかる力を軽減できる点で好ましい。特に、上記角度が90度の場合は、直角になるので、接合部にかかる力を最大限に軽減できる点で、より好ましい。
本発明では、対向する主面と仮想線とのなす角が直角であるとは、前記なす角が85〜95°の範囲であることを表す。なお、対向する主面と仮想線のなす各角度は上記範囲内であれば、異なっていてもよい。
【0012】
また、前記セパレータは、複数枚の板材からなり、前記折曲部は、該板材同士が対向し、かつ該板材の端部同士を接合してなることを特徴としている。
【0013】
本発明では、複数枚の板材の端部同士を接合することによって折曲部を有するセパレータを形成することで、1枚のセパレータを折り返すよりも簡単に折曲部を有するセパレータを形成することができる。
【0014】
また、前記セパレータは、1枚の板材からなり、前記折曲部は、該1枚の板材が曲げられてなることを特徴としている。
【0015】
本発明では、1枚の板材を曲げ返すことによって折曲部を有するセパレータを形成することで、低コストで折曲部を有するセパレータを形成することができる。
【0016】
また、前記折曲部と前記接合部とが離間し、かつ前記折曲部が前記接合部よりも燃料電池セルの中心部側へ配置されていることを特徴としている。
【0017】
本発明では、セパレータの折曲部と燃料電池セルの表面上の接合部とを離間し、さらに、折曲部を接合部よりも燃料電池セルの中心部側に配置することで、接合部からフレーム部までのセパレータ長を上記した燃料電池ユニットのセパレータよりも長くすることができる。そのため、セパレータがより発生する応力に追従変形しやすくなり、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極に生じるクラックの発生を抑制する事ができる。
【0018】
また、前記燃料電池ユニットにおいて、前記セパレータの厚みは、0.04mm以上0.3mm以下であることを特徴としている。
【0019】
本発明では、セパレータが構造面で燃料電池セルの面外方向への追従変形能を備えており、セパレータを厚くすることに起因した燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極のクラックの発生を防止可能とされている。また、従来よりもセパレータの厚みを確保することができ、もってセパレータの耐酸化性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明に係る燃料電池スタックは、前記燃料電池ユニットを積層したことを特徴としている。
【0021】
本発明では、燃料電池ユニットを複数積層して燃料電池スタックを形成しており、このような態様の燃料電池スタックでは、燃料電池ユニットを積層した際に発生する応力の発生が特に懸念されるが、本発明は燃料電池ユニットを複数積層して形成する態様の燃料電池スタックに対して特に有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、セパレータが上述した折曲部を有しており、燃料電池ユニットを積層する際に生じる応力や、燃料電池スタックの稼動・停止の繰り返しに伴う熱の変動などによる収縮差や、燃料電池セルの面外方向の反りによって発生する応力に対してセパレータが追従変形し、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極に発生するクラックを防止することができる。
また、セパレータが構造面で燃料電池セルの面外方向への追従変形能を備えていることから、従来よりもセパレータ自体の厚みを確保することができ、もってセパレータの耐酸化性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態及び製造方法を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は、実施例1の燃料電池ユニット10を示す断面図である。燃料電池ユニット10は、YSZ(安定化ジルコニア)からなる平板型の固体電解質体1はLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8Ox(LSCF)からなる空気極2、Ni−YSZからなる燃料極3とで挟持され、平板型の燃料電池セル9と、燃料電池
セル9の固体電解質1の表面で接合部5を介して燃料電池ユニット10に接合される金属材で構成されるセパレータ(SUS)とで構成されている。
【0025】
セパレータ4は
図10に示すように、中央部に開口部を有するSUS430からなる2枚の板材41、42で構成され、2枚の板材のうち、一方は、厚さが0.15mm、縦の長さL1が180mm、横の長さL2が180mmの第1セパレータ41であり、他方が縦の長さL3が縦130mm、横の長さL4が130mmの第2セパレータ42である。なお、第1セパレータ41および第2セパレータ42は共に枠状で開口部を備えており、開口部の大きさは、第一セパレータの開口部および第2セパレータの開口部とも縦120mm、横120mmで、同じ大きさである。また、第1セパレータ41の周縁部には、燃料電池ユニットを複数個積層して燃料電池スタックする際に固定用のボルトが貫く貫通孔が形成されている。
【0026】
第2セパレータ42を、その裏面で固体電解質体1の上面に設けられた、Agを主成分として、さらにTiAlの合金とCrとをそれぞれ1wt%程度添加したロウ材からなる接合部5を介し、固体電解質体1の端部から5mmの長さに渡って固体電解質体1とロウ付け接合(大気中、1020℃、2hour)した。
【0027】
その際、第2セパレータ42の開口部からは、空気極2と固体電解質体1の一部が露出している。また、第1セパレータ41は、第1の開口部から空気極2と固体電解質体1の一部が露出するように、その主面が第2セパレータ42の主面と対向するように重ね合わされている。
【0028】
重ね合わせた第1セパレータ41と第2セパレータ42の開口部側の端部同士をレーザ溶接で接合して溶接部7を形成した。そのため、セパレータ4は、第1セパレータ41と第2セパレータ42の主面同士が対向し、かつ燃料電池セル9の面外方向に軸通する仮想線Aと上記対向する主面同士が交わるように形成された折曲部6を有する。
【0029】
セパレータ4は上述した折曲部6を有するので、仮想線Aの軸線方向に燃料電池セル9が反りやうねり、熱変形を起こした場合であっても、第1セパレータ41と第2セパレータ42の主面間の隙間が折曲部6から外側(貫通孔側)に向かって大きく開くように変形可能であるので、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極でのクラックが発生しにくい。
【0030】
なお、燃料電池セル9に接合されたセパレータ4のうち、可動部の長さt1は、セパレータ4の接合端部から後述する空気極フレーム57及び燃料極フレーム61等からなるフレーム部fまでの長さであり、本実施形態では10mmである。
【0031】
また、
図8に示すような、燃料電池ユニット10を複数個積層してなる燃料電池スタック100は下記のように作成した。
Crofer22Hからなるインターコネクタ兼空気極集電体45、空気極フレーム57、燃料極フレーム65及びマイカからなる絶縁フレーム55、63、上記燃料電池ユニット10、ニッケルの多孔体からなる燃料極側集電体51などを、
図9に示すように積層し、燃料電池ユニット10のセパレータ4や各部材の外周部に形成した貫通孔67、69に固定用のボルト71、73を貫挿させると共に、その先端には各ボルトに対応したナットNを螺合させて締め付けることで一体化して作成した。
なお、上部のインターコネクタ45には、各貫通孔67、69に連通するように、空気の流路となる第1、第2溝75、77が形成されている。従って、一方の貫通孔67から、第1溝75を介して燃料電池セル内の空気流路43に空気が導入され、その空気が空気極2と接触した後に、第2溝77を介して他方の貫通孔69に排出される。
【0032】
また、燃料電池スタック100を構成する燃料電池ユニットは燃料電池ユニット10に限らず、異なる実施形態の燃料電池ユニット11〜15を採用しても良く、各燃料電池ユニットを混在させても良い。
【0033】
(実施例2)
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容は省略する。
図2の燃料電池ユニット11では、1枚の開口部を有する金属板材を折り曲げ加工することで板状セパレータ44の主面が対向するような折曲部6を有するセパレータ44を使用するようにした。
すなわち、板型セパレータ44は、ZMG232Lからなる、厚さが0.15mm、長さが縦180mm、横180mmのセパレータ44を開口部側の端部から5mmの部分を徐々に折り曲げ加工することによって主面同士が対向するようにU字状の折曲部6を形成している。なお、主面同士は互いに平行な位置関係にあり、主面同士間には隙間が形成されている。
【0034】
上記実施例1と同様に固体電解質体1の端部から5mmの長さに渡ってセパレータ44の裏面と固体電解質体1とを接合部5を介してロウ付け接合され、開口部からは空気極2と固体電解質体1の一部が露出している。
【0035】
セパレータ44はU字状の折曲部6を有するので、仮想線Aの軸線方向に燃料電池セルが反りやうねり、熱変形で変形を起こした場合であっても、セパレータの主面間に形成された隙間が折曲部6から外側(貫通孔側)に向かって大きく開くように変形可能であるので、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極でのクラックが発生しにくい。
【0036】
なお、対向するセパレータ主面と仮想線Aとのなす角度は共にほぼ直角である。
また、本実施形態の可動部の長さt2は10mmである。
【0037】
次に燃料電池ユニット10、11の製造方法について説明する。
酸化ニッケル(NiO)粉末60重量部と、イットリアを8モル%固溶させたジルコニア(8YSZ)粉末40重量部を混合して成分原料とし、この成分原料に気孔形成材として人造黒鉛粉を30重量部加え、所定量の分散剤と、有機溶媒(トルエンとメチルエチルケトン(MEK))、可塑剤、バインダーをさらに加え、スラリーとし、該スラリーを用い、ドクターブレード法にて、厚さ200μmのグリーンシートとした。
【0038】
そして、上記グリーンシート7枚を積層圧着し、130mm×130mmに切断して厚さ1300μmの燃料極積層グリーンシートを得た。
【0039】
固体電解質体の原料としては、8YSZ粉末を用いた。この8YSZ粉末100重量部に、バインダーとしてポリビニルアルコール13重量部とブチルカルビトール35重量部をそれぞれ混合して、固体電解質体用スラリーを調製した。
【0040】
この固体電解質体用スラリーを、前記燃料極積層グリーンシートの一方の面上にて、その全面を覆うように、厚さ25μmとなるようにスクリーン印刷し、未焼成の固体電解質体を形成した。
【0041】
この未焼成の積層体の成形体を、1400℃、1時間キープの条件で同時焼成を行うことにより、燃料極3と固体電解質体1からなる積層体の焼結体を得た。
【0042】
空気極2の原料として、平均粒径2μmの市販のLSCF粉末を用いた。
【0043】
そして、このLSCF粉末100重量部に所定量のバインダーを混合して、空気極用スラリーを調整し、上記積層体の焼結体の固定電解質体1上に、スクリーン印刷した。その後、乾燥し、1200℃1時間キープの条件で焼き付けた。
【0044】
これにより、固体電解質体1を燃料極3と空気極2とで挟持した燃料電池セル9が得られた。
【0045】
その後、曲げ加工を施し折曲部6を有するセパレータ4、44を固体電解質体1に重ね合わせ、ロウ材で形成される接合部5にて接合一体化し、燃料電池ユニット10、11を作成した。
【0046】
(実施例3)
次に、実施例3について説明するが、前記実施例と同様な内容は省略する。
実施例2では燃料電池ユニット11のセパレータ44では、折曲部6を1箇所だけ設けたが、実施例3の燃料電池ユニット12では、
図3に示すごとく、折曲部61、折曲部62と、折曲部を2箇所有するセパレータ444を使用するようにした。
【0047】
すなわち、セパレータ44の代わりに、ZMG232Lからなる、厚さが0.15mm、長さが縦180mm、横180mmのセパレータ44を開口部側の端部を2箇所で折り曲げ加工することによってU字状の折曲部61及びU字状の折曲部62を形成し上記同様に固体電解質体1の端部から5mmの長さに渡ってセパレータ444の主面と固体電解質体1とを接合部5を介してロウ付け接合した。
なお、本実施形態では、折曲部61及び折曲部62が互いに逆方向に曲げられ、全体としてZ字状の折曲部を形成しており、折曲部61及び折曲部62は接合部5よりも燃料電池セル9の外部側に配置されている。
また、本実施形態の可動部の長さt3は10mmである。
【0048】
(実施例4)
次に、実施例4について説明するが、前記実施例と同様な内容は省略する。
実施例4は実施例3の変形例であり、
図4の燃料電池ユニット13では、セパレータ444の裏面で固体電解質体1と接合部5を介してロウ付け接合した。
なお、本実施形態では、U字状の折曲部61及びU字状の折曲部62が互いに逆方向に曲げられており、折曲部61及び折曲部62は接合部5よりも上方に配置されている。
また、本実施形態の可動部の長さt4は10mmである。
【0049】
(実施例5)
次に、実施例5について説明するが、前記実施例と同様な内容は省略する。
実施例5は実施例2の変形例であり、
図5の燃料電池ユニット14では、セパレータ44の折曲部6と接合部5とを2.5mm離間することで、折曲部6が接合部5よりも燃料電池セルの中心部側に位置するように接合した。
【0050】
すなわち、ZMG232Lからなる、厚さが0.15mm、長さが縦180mm、横180mmのセパレータ44を開口部側の端部から7.5mmの部分を徐々に折り曲げ加工することによってU字状の折曲部6を形成し、上記同様に固体電解質体1の端部から5mmの長さに渡ってセパレータ44の主面と固体電解質体1とを接合部5を介してロウ付け接合した。
したがって、本実施形態では、折曲部6が接合部5よりも燃料電池セル9の中心側に2.5mm離間して配置されるため、可動部の長さt5は15mmとなる。
【0051】
(実施例6)
次に、実施例6について説明するが、前記実施例と同様な内容は省略する。
実施例6は実施例4の変形例であり、
図6に示すごとく、セパレータ444は、燃料電池セル9の面外方向に軸通する仮想線Aと平行に対向する各主面とのなす角θ1及びθ2が45度になるように折り返されている。
なお、本実施形態では、主面同士は平行であるため、各主面と仮想線Aとのなす角度がそれぞれ45度となっているが、θ1及び/またはθ2は0°<θ≦90°の範囲にあれば良く、θ1とθ2が異なっていても良い。
また、本実施形態の可動部の長さt6は10mmである。
【0052】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
(試験サンプル)
試験サンプルは、上述した実施例1〜実施例6に対応する試験サンプル1〜試験サンプル6を準備した。また、実施例2におけるセパレータの厚みをそれぞれ、0.03mm〜0.32mmと変えたものに対応する試験サンプル7〜試験サンプル12を準備した。
比較例1は
図7に示すごとく、セパレータ444が燃料電池セル9の面内方向に軸通する仮想線Bとのみ対向する主面が交わるように折り返されている試験サンプル13を準備した。
上述した実施例及び比較例に対応した試験サンプルを作製し、これらを用いて荷重試験を行った。荷重試験は、フレーム部に相当する箇所を治具によって固定し、空気極2の全面を圧縮試験機で所定量押圧することとした。各試験サンプルの変位ストロークが0.25mmとなった時点での荷重(N)を、比較例1である試験サンプル13の荷重を100とした場合と比較して、どの程度変動したかを評価した。
なお、測定された荷重の値は小さい程、小さな荷重で大きくストロークが変位する構造であることを示す。すなわち、一定の変位を与えたときに、燃料電池セルに発生する応力が小さいことを意味する。
【0053】
また、上記試験サンプルを用いて熱耐久試験を行った。
熱耐久試験は、燃料電池スタック100を用い、電気炉内に燃料電池スタック100を設置する。その後、電気炉内を850℃まで3時間で昇温し、18時間保持する。次に室温まで3時間で降温する。このサイクルを30回繰り返して実施した。
上記荷重試験及び熱耐久試験の結果を表1に示した。
【0055】
表1に示すように、試験サンプル1〜試験サンプル6及び試験サンプル13のセパレータ厚0.15mmにおいて、試験サンプル13よりも荷重が小さくなり、比較例1を上回る結果となった。特に、実施例5に相当する試験サンプル5が最も良い結果となった。これは、セパレータの可動部の長さt5が、他の実施例に比して長くなった事に起因すると推測される。
【0056】
一方、耐久性については、セパレータ厚0.03mmの試験サンプル7において、酸化に耐えられず、セパレータ自身にクラックが発生したため、不良と判断された。セパレータ厚0.05mmの試験サンプル8においては、本試験では酸化によるセパレータ自身のクラックは確認されなかった。また、試験サンプル12、13において、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極にクラックが発生したため、不良と判断された。試験サンプル12はセパレータ厚0.32mmと厚いため、荷重値(表1)が高く、燃料電池セルに発生する応力が大きい為に、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極にクラックが発生したと考えられる。
試験サンプル13の比較例1は面外方向への変形追従に十分に対応できない為、燃料電池セルに発生する応力が大きく、燃料電池セルと集電体との積層端部近傍の電極にクラックが発生したと考えられる。
【0057】
なお、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲においては種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0058】
例えば本願実施例では、2枚のセパレータを接合して折曲部を有するセパレータを作製したが、それ以上の枚数を用いて作製しても良い。また、折曲部も複数箇所形成しても良い。
【0059】
また、本願実施例は1枚の板材からなるセパレータをベースに各種変形例の説明をしたが、複数枚の板材からなるセパレータであっても同様の変形例は成し得る。
【0060】
また、下述したような材料を用いて形成しても、同様の効果が得られる。
【0061】
固体電解質体の材料としては、上述した材料以外に例えばZrO
2系セラミック、LaGaO
3系セラミック、BaCeO
3系セラミック、SrCeO
3系セラミック、SrZrO
3系セラミック、及びCaZrO
3系セラミック等が挙げられる。
【0062】
燃料極の材料としては、例えば、Ni及びFe等の金属と、Sc、Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO
2系セラミック、CeO
2系セラミック等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物などが挙げられる。また、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属が挙げられる。これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の金属の合金でもよい。更に、これらの金属及び/又は合金と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む)が挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物などが挙げられる。
【0063】
空気極の材料としては、例えば、各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。金属としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。更に、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La
2O
3、SrO、Ce
2O
3、Co
2O
3、MnO
2及びFeO等)が挙げられる。また、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La
1-XSr
XCoO
3系複酸化物、La
1-XSr
XFeO
3系複酸化物、La
1-XSr
XCo
1-YFe
YO
3系複酸化物、La
1-XSr
XMnO
3系複酸化物、Pr
1-XBa
XCoO
3系複酸化物及びSm
1-XSr
XCoO
3系複酸化物等)が挙げられる。
【0064】
セパレータやインターコネクタ、空気極フレームや燃料極フレームの材料としては、耐熱性、化学的安定性、強度等の優れた材料を使用でき、例えばステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金等の耐熱合金等の金属材料が挙げられる。
【0065】
具体的には、ステンレス鋼としては、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。フェライト系ステンレス鋼としては、Crofer22H、Crofer22APU、ZMG232L、SUS430、SUS434、SUS405、SUS444等が挙げられる。マルテンサイト系ステンレス鋼としては、SUS403、SUS410、SUS431等が挙げられる。オーステナイト系ステンレス鋼としては、SUS201、SUS301、SUS305等が挙げられる。更に、ニッケル基合金としては、インコネル600、インコネル718、インコロイ802等が挙げられる。クロム基合金としては、Ducrlloy
CRF(94Cr5Fe1Y
2O
3)等が挙げられる。
【0066】
セパレータを接合する材料(接合部を構成する材料)としては、金属ロウ材やガラスなど、各種の接合材を使用でき、燃料電池の作動温度や寿命特性を勘案し、種々の材料を選択できる。例えばロウ材としては、Niロウ材、
Ag、Agを主成分とする合金、及びAgやAgを主成分とする合金にSiO
2、Al
2O
3、Cr
2O
3、CuOなどから選ばれる金属酸化物を少量(数質量%)添加したロウ材を採用でき、ガラスとしては、CaO−Al
2O
3−SiO
2を主成分とする結晶化ガラスなどを採用できる。