【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0023】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0024】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態において、ウェハと言うときは、Si(Silicon)単結晶ウェハを主とするが、それのみではなく、SOI(Silicon On Insulator)ウェハ、集積回路をその上に形成するための絶縁膜基板等を指すものとする。その形も円形またはほぼ円形のみでなく、正方形、長方形等も含むものとする。
【0025】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態1によるマスクブランクの検査方法の意義を明確にするために、まず、EUVL用マスクの構成およびEUV投影露光装置に備わる投影光学系(縮小投影光学系、反射型露光光学系、反射型結像光学系、EUV光学系)の構成について
図1(a)および(b)、ならびに
図2を用いて説明する。
図1(a)はEUVL用マスクの吸収体パターンが形成された面の要部平面図、
図1(b)は同図(a)のA−A線に沿った一部を拡大して示す要部断面図である。また、
図2はEUV投影露光装置の概略図である。
【0027】
図1(a)に示すように、EUVL用マスクMの中央部には、半導体集積回路装置の回路パターンを有するデバイスパターンエリアMDEを有し、周辺部には、EUVL用マスクMの位置合わせのためのマークまたはウエハアライメントマークなどを含むアライメントマークエリアMA1,MA2,MA3,MA4が配置されている。
【0028】
また、
図1(b)に示すように、EUVL用マスクMのマスクブランクは、石英ガラスまたは低熱膨張ガラスからなる基板MSと、基板MSの主面に形成されたモリブデン(Mo)とシリコン(Si)とを交互に積層(例えば各層が40層程度)した多層膜MLと、多層膜ML上に形成されたキャッピング層CAPと、基板MSの裏面(主面と反対側の面)に形成されたEUVL用マスクMを静電チャックするためのメタル膜CFとにより構成されている。基板MSの厚さは、例えば7〜8mm程度であり、多層膜MLの厚さは、例えば300nm程度である。さらに、キャッピング層CAP上にバッファ層BUFを介して吸収体パターンABSが形成されている。吸収体パターンABSの厚さは、例えば50〜70nm程度である。
【0029】
次に、本実施の形態1によるEUVL用マスクを用いるEUV投影露光装置について
図2を用いて説明する。
図2はEUV投影露光装置の概略図である。
【0030】
図2に示すように、光源1から発する中心波長13.5nmのEUV光は、多層膜反射鏡からなる照明光学系2を介してEUVL用マスクMのマスクパターンが形成された面(以下、パターン面という)を照射する。パターン面からの反射光は多層膜反射鏡からなる縮小投影光学系3を通過して、ウェハ4の主面上にEUVL用マスクMのマスクパターンをパターン転写(転写、投影、パターン投影)する。ウェハ4はステージ5に搭載されており、ステージ5の移動とパターン転写との繰り返しにより、ウェハ4の主面上の所望の領域にEUVL用マスクMのマスクパターンを多数転写する。
【0031】
次に、本実施の形態1によるEUVL用マスクのマスクブランクに生じる位相欠陥について
図3(a)および(b)を用いて説明する。
図3(a)は位相欠陥を有するマスクブランクの要部断面図、
図3(b)は位相欠陥を有するマスクブランクに吸収体パターンおよびバッファ層が形成されたEUVL用マスクの要部断面図である。
【0032】
図3(a)に示したマスクブランクの要部断面図は、基板MS上に多層膜MLを被着させる際に、基板MSの主面に微細な窪みが存在したまま上記多層膜MLを被着させた結果、凹形状の位相欠陥PDが生じた一例を示している。
【0033】
この位相欠陥PDを残したままバッファ層BUFおよび吸収体パターンABSを形成すると、
図3(b)に示すように、隣り合う吸収体パターンABSの間にそのまま凹形状の位相欠陥PDが残存する。2〜3nm程度の位相欠陥PDの窪みが存在すると、EUV投影露光装置を用いてウェハの主面上にパターン転写した投影像(転写像、転写パターン)が乱れて、ウェハの主面上の投影像に欠陥が生じる。そのため、EUVL用マスクでは、吸収体パターンABSおよびバッファ層BUFを形成する前のマスクブランクの段階で、マスクブランクに存在する位相欠陥PDを検出する必要がある。
【0034】
次に、本実施の形態1によるマスク検査装置の全体の構成について
図4を用いて説明する。
図4はEUV光を用いてマスクブランクの暗視野検査像を収集するマスク検査装置の全体の構成を示す概略図である。
【0035】
マスク検査装置は、EUV光(EUV検査光、照明光、照射光)BMを検査照明光として用いて暗視野検査像を収集する検査装置である。マスク検査装置は、EUV光BMを発生する光源(EUV光源、プラズマ光源)6、マスクブランクMBを載置するためのマスクステージ7、照明光学系CIO、結像光学系DPO、2次元アレイセンサー(画像検出器)SE、センサー回路8、パターンメモリ9、信号処理回路10、タイミング制御回路11、マスクステージ制御回路12、および装置全体の動作を制御するシステム制御コンピュータ13などで構成されている。また、マスクパターンに関する種々のデータを格納するデータファイル14が備えられている。
【0036】
光源6には、必要に応じて波長選択フィルター、圧力隔壁手段、または飛散粒子抑制手段などが備えられている。結像光学系DPOは凹面鏡L1と凸面鏡L2とから構成され、例えば集光NAが0.2、中心遮蔽NAが0.1、倍率が26倍の暗視野結像光学系を構成するシュバルツシルド光学系である。
【0037】
位相欠陥の有無が検査されるマスクブランクMBは、XYZの3軸方向に移動可能であるマスクステージ7上に載置される。光源6から発する中心波長13.5nmのEUV光BMは、照明光学系CIOを通して収束ビームに変換された後、ビームサイズを調整する開口部APTを通過し、多層膜ミラーPMで折り曲げられてマスクブランクMBの所定の領域を照射する。マスクブランクMBの位置は、マスクステージ7に固定されたミラー15の位置をレーザ測長器16で読み込むことにより、マスクステージ7の位置情報として得られる。この位置情報は位置回路17に送られ、システム制御コンピュータ13で認識することができる。ここで、多層膜ミラーPMは、その位置および角度を制御するミラー姿勢制御手段23によって支えられている。また、他の多層膜ミラーとの交換も可能な構成となっている。
【0038】
一方、ビームスプリッタBSPおよび小領域ミラー(図示は省略)によりEUV光BMの一部を分岐してEUV光用センサー18で光量をモニタし、照明強度補正回路19において信号処理のための閾値を設定することができる。このビームスプリッタBSPは、例えばモリブデン(Mo)とシリコン(Si)とを交互に数対から10対程度積層した多層膜で構成することができる。
【0039】
マスクブランクMBからの反射光のうち位相欠陥PDで散乱した光(散乱光)は結像光学系DPOにおいて捕獲され、結像光学系DPOを介して収束ビームSLIを形成し、2次元アレイセンサーSEに集光する。すなわち、2次元アレイセンサーSEには、マスクブランクMBの暗視野検査像が形成され、その結果、マスクブランクMBに残存する位相欠陥PDは検査像の中で輝点として検出される。検出された位相欠陥PDの位置および欠陥信号の大きさなどの情報は演算部において演算処理されて、記憶装置20に記憶されるとともに、種々の情報をパターンモニタ21または画像出力部22を介して観察することができる。
【0040】
次に、本実施の形態1によるマスクブランクの検査方法について前述の
図4、および
図5を用いて説明する。
図5は結像光学系DPOおよびマスクブランクMBの領域の拡大図である。
【0041】
照明光学系CIOを通じて収束ビームに変換されたEUV光BMは、
図5に示すように、第1の位置に設置された多層膜ミラーPM1または第1の位置とは異なる第2の位置に設置された多層膜ミラーPM2によって折り曲げられてマスクブランクMBの所定の領域を照射し、位相欠陥PDで散乱した散乱光27が拡大光学系DPOに捉えられる。多層膜ミラーPM1および多層膜ミラーPM2のそれぞれの位置および角度は、ミラー姿勢制御手段23によって制御される。
【0042】
図5に示す多層膜ミラーPM1が置かれた第1の位置または多層膜ミラーPM2が置かれた第2の位置は、EUV光BMがマスクブランクMBを照明するにあたり、予めマスクブランクMBにおいてEUV光BMの反射率が最大になる入射角度を求めておき、その入射角度になるようにミラー姿勢制御手段23によって設定された位置である。例えばEUV光BMの反射率が最大になる入射角度が6度であり、多層膜ミラーPM1に入射する直前のEUV光BMがマスクブランクMBの表面に対して平行に導かれる場合は、第1の位置にある多層膜ミラーPM1におけるEUV光BMの入射角度は48度となる。前述したEUV光BMの反射率が最大になる入射角度の算出に際しては、例えばシステム制御コンピュータ13内に入射角度演算手段を設けて、マスク検査装置に入力されるマスクブランクMBを構成する多層膜の周期長の情報またはマスクパターンを露光する投影露光装置の開口数(NA)の情報などから適切な入射角度を求めることができる。また、マスク検査装置に入力される情報が入射角度そのものの場合は、その値を入射角度の算出値として採用しても良い。
【0043】
正反射光25が結像光学系DPOに取り込まれないようにするために、多層膜ミラーMIR1または多層膜ミラーMIR2を挿入して正反射光25を結像光学系DPOの光軸から離れる方向26に引き出している。多層膜ミラーMIR1および多層膜ミラーMIR2のそれぞれの位置および姿勢はミラー姿勢制御手段24によって制御される。また、多層膜ミラーMIR1,MIR2のマスク検査装置への挿入および排出は容易に行うことができる。
【0044】
図5に示す多層膜ミラーMIR1が置かれている位置または多層膜ミラーMIR2が置かれている位置は、正反射光25の入射角度に応じて設定された位置である。引き出した正反射光25は遮断しても良いし、フォトダイオードなどの強度センサー28に照射してその強度をモニタしても良い。正反射光25をモニタして、マスクブランクMBの所定領域内における正反射光25の強度を記憶することにより、反射率分布やマスクブランクMBを構成する多層膜の表面のラフネス分布の情報を得ることができる。
【0045】
このようにして、正反射光25を除いた散乱光27を結像光学系DPOに取り込むことにより、2次元アレイセンサーSE(
図4)に暗視野検査像を形成する。
【0046】
次に、
図6を用いて、検査照明光(EUV光)の主光線の入射角が0度の場合におけるマスクブランクの検査方法について説明する。
【0047】
図6(a)は結像光学系DPOおよびマスクブランクMBの領域の拡大図である。
図6(a)に示すように、EUV光BMは多層膜ミラーPM0によって90度折り曲げられ、マスクブランクMBを照明する主光線の入射角度は0度となる。このとき多層膜ミラーPM0におけるEUV光BMの主光線の入射角度は45度である。EUV光BMの波長は13.5nmであることから、多層膜ミラーPM0に形成されている多層膜の周期長は、45度の入射角度で所望の反射率が得られる10.2nmとなる。マスクブランクMBからの正反射光は多層膜ミラーPM0で遮蔽または偏向されるか、あるいは結像光学系の凸面鏡L2の下面を支える部材で遮断され、結像光学系DPOには入らない。位相欠陥PDで散乱した散乱光27のうち、結像光学系DPOが取り込める角度θinと角度θoutとの間の散乱角度で散乱した散乱光27が結像光学系DPOに取り込まれ、暗視野検査像を形成する。ここで、集光NAはsin(θout)、中心遮蔽NAはsin(θin)で表され、本実施の形態1では角度θinは5.7度、角度θoutは14.5度となる。マスクブランクMBは、6度の入射角度に対して反射率が高くなるように、マスクブランクMBを構成する多層膜の周期長は約6.9nmに設定されているが、入射角度が0度であっても、反射率の低下は4%以下であり、検査の為の所望の反射率は得られる。
【0048】
図6(b)は結像光学系DPOの瞳を示す図であり、符号31は角度θinに対応する中心遮蔽、符号32は角度θoutに対応する集光領域、符号33は散乱光27の通過領域を示している。
【0049】
次に、
図7を用いて、検査照明光(EUV光)の主光線の入射角が9度の場合におけるマスクブランクの検査方法について説明する。
【0050】
図7(a)は結像光学系DPOおよびマスクブランクMBの領域の拡大図である。
図7(a)に示すように、EUV光BMは多層膜ミラーPMによって折り曲げられ、マスクブランクMBへの主光線の入射角度は9度となる。この場合、正反射光25の方向に対して片側の散乱角度である5.5(14.5−9)度から反対側の散乱角度である23.5(9+14.5)度の範囲で散乱する散乱光27を結像光学系DPOで捉えて暗視野検査像を形成する。このとき多層膜ミラーPMにおけるEUV光BMの入射角度は49.5度である。前述の
図6を用いて説明した多層膜ミラーPM0における入射角度とは異なるので、すでに多層膜ミラーPM0が設置してある場合は、多層膜ミラーPM0とは周期長の異なる多層膜ミラーPMに交換する。この多層膜ミラーの交換は、多層膜ミラーを交換する機能を持たせたミラー姿勢制御手段(前述の
図4および
図5に示すミラー姿勢制御手段23)によって行われる。
【0051】
また、この場合、マスクブランクMBで反射する正反射光25の反射角度は、結像光学系DPOが取り込める角度θinと角度θoutとの間にある。そこで、ミラー姿勢制御手段(前述の
図5に示すミラー姿勢制御24)により制御される多層膜ミラーMIRを挿入して正反射光25を結像光学系DPOの光軸から離れる方向26に引き出すようにしている。引き出した正反射光25は遮断しても良いし、フォトダイオードなどの強度センサー28に照射してその強度をモニタしても良い。正反射光25をモニタして、マスクブランクMBの所定領域内における正反射光25の強度を記憶することにより、反射率分布やマスクブランクMBを構成する多層膜の表面のラフネス分布の情報を得ることができる。
【0052】
図7(b)は結像光学系DPOの瞳を示す図であり、前述の
図6(b)と同様に、符号31は角度θinに対応する中心遮蔽、符号32は角度θoutに対応する集光領域、符号33は散乱光27の通過領域を示している。
【0053】
ここで、EUV光BMを反射させ偏向させる多層膜ミラーPMと多層膜ミラーMIRとが挿入されるので、それらは瞳面における散乱光27の通過領域33において領域34,35を遮蔽することになる。しかし、領域34,35の面積は散乱光27の通過領域33に比べて小さく、実質的には検査性能に悪影響は及ぼさない。
【0054】
次に、前述した多層膜ミラーの位置および角度を制御する機能を有するマスク検査装置を用いて位相欠陥を検査するフローを、前述の
図4、および
図8に示す工程図を用いて説明する。
【0055】
<ステップS101>
まず、被検査対象であるマスクブランクMBをマスク検査装置のマスクステージ7上に載置する。
【0056】
<ステップS102>
次に、マスクブランクMBに関する情報をマスク検査装置に入力する。ここで必要な情報は、検査照明光であるEUV光BMに対して反射率が最大となる入射角度である。この値が直接入力されることが望ましいが、最終的に入射角度が定められる情報、例えばマスクブランクを構成する多層膜の周期長、またはマスクパターンを露光する投影露光装置の開口数(NA)などの情報であればよい。
【0057】
<ステップS103>
次に、マスクブランクMBへのEUV光BMの入射角度が、ステップS102において入力された情報に基づいて定められる入射角度と一致するように多層膜ミラーPMの位置と角度を制御する。
【0058】
<ステップS104>
次に、マスクブランクMBの全面に亘る暗視野検査を行う。すなわち光源6から発するEUV光BMを、多層膜ミラーPMを介してマスクブランクMBの被検査領域を照明し、反射光の強度分布を2次元アレイセンサーSEで捉えて暗視野検出信号を取得する。
【0059】
<ステップS105→ステップS106>
ステップS105において、信号処理などの手法で位相欠陥有りと判断された場合は、ステップS106において、欠陥検出情報を記憶装置に格納する。欠陥検出情報とは、例えば検出された欠陥候補の位置座標や検出信号強度などである。
【0060】
<ステップS105→ステップS107>
ステップS105において、信号処理などの手法で位相欠陥無しと判断された場合は、ステップS107において、無欠陥であることの情報を記憶装置に格納する。以上の工程によりマスクブランクMBの検査を終了する。
【0061】
このように、本実施の形態1によれば、適用される露光条件に対応して互いに異なる検査照明光の最適入射角度を有するいずれのマスクブランクに対しても、EUV光の最大反射率を得て、強い散乱光から形成される暗視野検査像を得ることができる。その結果、明瞭な検査信号を得ることができ、検出感度の高い検査を実現することができる。
【0062】
(実施の形態2)
本実施の形態2においては、ミラー姿勢制御手段23により多層膜ミラーPMを適宜選択し、その位置を調整して、様々な入射角度でマスクブランクMBを照明することにより、多様な検査が実現できる例を説明する。ここでは、一例として、結像光学系DPOの集光NAが0.25、中心遮蔽NAが0.1の場合、すなわち角度θinが5.7度、角度θoutが14.5度の場合について説明する。
【0063】
マスクブランクMBを照明するEUV光BMの入射角度が角度θoutより大きい17度の場合のEUV光BMの進行経路を、
図9を用いて説明する。
【0064】
図9(a)は結像光学系DPOおよびマスクブランクMBの領域の拡大図である。EUV光BMの入射角度が17度の場合、マスクブランクMBへの入射角度が大きくなることから、マスクブランクMBの反射率が低下する場合があり、この検査には制約も生じる。しかし、8度以上の入射角度に最適化されたマスクブランクMBについては適用可能性が高い。反射率が極端に低下する場合に限り、検査波長を13.5nmから変化させて適切な検査波長のEUV光BMを用いることにより、反射率を確保することも考えられる。
【0065】
また、マスクブランクMBからの正反射光25は結像光学系DPOには入射せず、結像光学系DPOを支える部材の下側(部材の一部)において遮断される方向に進む。しかし、正反射光25が進む方向に対して片側2.5(17−14.5)度の角度から31.5(17+14.5)度の角度の範囲で散乱する散乱光27を捉えて暗視野検査像を形成する。すなわち、前述した実施の形態1の暗視野検査像(前述の
図7参照)と比べて、片側だけではあるが、より回折角度の大きな散乱光27を利用することになるので、凸形状の高さの高い位相欠陥に対する検査感度が向上する。
【0066】
この場合、
図9(b)に示すように、多層膜ミラーPMは結像光学系DPOの瞳面において符号34で示す領域に位置するので、散乱光27の通過領域33を遮ることはない。結像光学系DPOを実装する為に必要な最低限の部材は、散乱光27の通過領域33の一部を遮ることになるが、実質的には輪帯開口が実現される。なお、使用される入射角度に対して最適な多層膜ミラーPMが選択されることは言うまでもない。
【0067】
ここで、多層膜ミラーMIRを挿入して正反射光25を結像光学系DPOの光軸から離れる方向26に引き出し、フォトダイオードなどの強度センサー28によりその光量を計測することにより、前述した実施の形態1と同様に、反射率のデータ等を並行して得ることができる。
【0068】
次に、マスクブランクMBへの主光線の入射角度を、ほぼ(θin+θout)/2=10.1度に設定する場合を、
図10を用いて説明する。
【0069】
図10(a)は結像光学系DPOおよびマスクブランクMBの領域の拡大図である。この場合、多層膜ミラーPMの位置を設定すると同時に、開口部37を有する遮蔽手段36を新たに設ける。前述した正反射光25を偏向する多層膜ミラーMIRは設けないので、正反射光25をそのまま結像光学系DPOに取り込むとともに、正反射光25に対して±(θout−θin)/2=±4.4度で散乱する散乱光27も開口部37を通過して結像光学系DPOに取り込まれ、この構成で明視野検査が可能となる。
【0070】
図10(b)に示すように、結像光学系DPOが本来有する散乱光の通過領域と比べて開口部37の面積は小さい。従って、この場合、開口数(NA)が0.08(=sin(4.4))の明視野検査光学系となる。なお、ここでは、遮蔽手段36を結像光学系DOPの直下に配置した例を示したが、明視野結像が実現すれば、必ずしも結像光学系DOPの直下でなくても良い。
【0071】
なお、前述した実施の形態1における
図6に示した多層膜ミラーPM0を用いた検査および
図7に示した多層膜ミラーPMを用いた検査、ならびに前述した実施の形態2における
図9に示した多層膜ミラーPMを用いた検査および
図10に示した多層膜ミラーPMを用いた検査では、1枚のそれぞれの多層膜ミラーの姿勢制御または交換によってマスクブランクMBへのEUV光BMの入射角度を制御する。しかし、EUV光BMの入射角度の制御はこれに限定されるものではない。
【0072】
次に、複数の多層膜ミラーを用いてEUV光の入射角度を制御する方法の一例を
図11を用いて説明する。
図11は結像光学系DPOおよびマスクブランクMBの領域の拡大図である。
【0073】
図11に示すように、EUV光BMの入射角度の制御を2枚の多層膜ミラーIM1,IM2により実施しても良い。照明光学系の配置を変更して、光源側から到達するEUV光BMをマスクブランクMBの表面に対して角度を有するものとすることにより、多層膜ミラーIM1,IM2のそれぞれの入射角度の変化量が少なくなり、制御が容易になる。
【0074】
次に、前述した機能を有するマスク検査装置を用いて位相欠陥を検査するフローを、前述の
図9〜
図11に示した概略図、および
図12に示す工程図を用いて説明する。
【0075】
<ステップS201>
まず、被検査対象であるマスクブランクMBをマスク検査装置のマスクステージ上に載置する。
【0076】
<ステップS202>
次に、マスクブランクMBに関する情報をマスク検査装置に入力する。
【0077】
<ステップS203>
次に、検査モードを入力する。検査モードの種類としては、例えば種々の入射角度における暗視野検査、正反射光を散乱光と一緒に取り込む明視野検査、正反射光を別途引き出して実施する反射率分布計測がある。
【0078】
<ステップS204>
次に、検査モードの入力に応じて多層膜ミラーPMまたは多層膜ミラーIM1,IM2を制御して、マスクブランクMBへのEUV光BMの入射角度を設定する。
【0079】
<ステップS205→ステップS210〜ステップ213>
検査モードを選択するステップS205において、暗視野検査が選択されたと判断した場合(モード1)は、ステップS210において、暗視野検査(前述した
図9または
図11を用いて説明した検査)を実施する。なお、暗視野検査には、前述した実施の形態1の
図6または
図7を用いて説明した検査を用いてもよい。
【0080】
ステップS211において位相欠陥有りと判断された場合は、ステップS212において欠陥検出情報を記憶装置に格納し、ステップS211において位相欠陥無しと判断された場合は、ステップS213において無欠陥であることの情報を記憶装置に格納して、検査を終了する。
【0081】
<ステップS205→ステップS220〜ステップ223>
検査モードを選択するステップS205において、明視野検査が選択されたと判断した場合(モード2)は、ステップS220において、明視野検査(前述した
図10を用いて説明した検査)を実施する。
【0082】
ステップS221において位相欠陥有りと判断された場合は、ステップS222において欠陥検出情報を記憶装置に格納し、ステップS221において位相欠陥無しと判断された場合は、ステップS223において無欠陥であることの情報を記憶装置に格納して、検査を終了する。明視野検査では、振幅欠陥(暗欠陥)など局所的に反射率を低下させる欠陥の存在を検知することができる。
【0083】
<ステップS205→ステップS230〜ステップ231>
検査モードを選択するステップS205において、反射率分布計測が選択されたと判断した場合(モード3)は、ステップS230において、正反射光の強度を検出し、ステップS231において、反射率分布の情報を格納して、検査を終了する。反射率が一定であることが明確な場合は、この正反射光の強度分布はマスクブランクの表面ラフネスと等価と考えられる。また、この反射率分布計測(ステップS230)は、暗視野検査(ステップS210)と同時に実施することも可能である。
【0084】
このように、本実施の形態2によれば、マスクブランクMBを照明するEUV光BMの種々の入射角度における暗視野検査、明視野検査、および反射率分布計測を選択して実施することが出来る。位相欠陥、振幅欠陥、またはマスクブランクMBの表面ラフネスを含む多様な検査を実現できるので、マスクブランクMBの様々な欠陥の検出感度を向上させることができる。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0086】
例えば前記実施の形態では、マスクブランクの欠陥検査に用いる欠陥検査方法および欠陥検査装置について説明したが、これに限定されるものではなく、EUVL用マスクの欠陥検査にも適用することができる。